昇圧コンバータにおける平滑コンデンサの小型化を...

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電気学会論文誌 D(産業応用部門誌) IEEJ Transactions on Industry Applications Vol.135 No.1 pp.1–10 DOI: 10.1541/ieejias.135.1 昇圧コンバータにおける平滑コンデンサの小型化を目的とした 負荷電流フィードフォワード制御 学生員 武井 大輔 上級会員 藤本 博志 フェロー 洋一 Load Current Feedforward Control of Boost Converter for Downsizing the Output Filter Capacitor Daisuke Takei , Student Member, Hiroshi Fujimoto , Senior Member, Yoichi Hori , Fellow A boost converter is used to supply high voltage to the load in various industrial applications. Generally, boost converters have a large output filter capacitor to suppress the output voltage variation, and this leads to a considerable increase in the size of the system. In this paper, a load current feedforward control of boost converter is proposed. The proposed methods suppress voltage variation compared to feedback control and enable the reduction of output filter capacity. The simulation and experimental results show the eectiveness of the proposed methods. キーワード:昇圧コンバータ,非最小位相連続時間システム,平滑コンデンサ小型化,電圧変動抑制,負荷電流フィードフォ ワード制御 Keywords: boost converternonminimum-phase continuous-time systemdownsizing of output filter capacitorvoltage variation suppressionload current feedforward control 1. はじめに 昇圧コンバータは直流電圧を昇圧して出力する電力変換 器であり,ハイブリッド車や太陽光モジュール等の産業機 器に用いられている。一般に,コンバータに用いられてい る平滑コンデンサは出力電圧変動を抑制するために大容量 のものが用いられており,システム全体に対する体積占有 率が高く,システムの小型化を阻害している。 平滑コンデンサ小型化の研究として,制御による小型化 がある。一例として,AC-DC-AC システムにおける,コン バータとインバータを用いた平滑コンデンサの入出力電流 制御 (1) (2) や, モータドライブにおけるインバータ制御 (3) (4) がある。これらは,システムの入力電力と出力電力を常に 等しくするように変換器を制御し,平滑コンデンサ小型化 を実現している。また,文献 (5)– (6) では過渡応答時の電圧 変動量と平滑コンデンサ容量小型化の関係について述べら れている。ここで,文献 (5) では,AC-DC-AC システムに おいて,片方の変換器の情報をもう片方の変換器にフィー ドフォワードすることで平滑コンデンサの小容量化が可能 になることが示唆されている。また,文献 (6) では電圧変動 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 277–8561 千葉県柏市柏の葉 5–1–5 Department of Frontier Science, The University of Tokyo 5–1–5, Kashiwanoha, Kashiwa 277–8561 を高速に抑圧することにより,平滑コンデンサ容量を小型 化できることが述べられている。そのため昇圧コンバータ においては,負荷電流によるフィードフォワード制御によ り電圧変動を抑制し,平滑コンデンサを小型化することが できると考えられる。しかしながら,これらの文献では電 圧変動を抑制するためのフィードフォワード制御と平滑コ ンデンサ小容量化の関係については述べられていない。ま た,昇圧コンバータには制御入力から出力電圧の連続時間 での伝達関数に不安定零点が存在するため (7) ,単純に逆プ ラントを用いてフィードフォワード制御をすることができ ない。 本稿では,不安定零点を持つ昇圧コンバータにおける電 圧変動に対して,フィードフォワードを実現するための近 似逆モデルを用いたフィードフォワード制御器により電圧 変動抑制を行う。また,本稿で提案するフィードフォワー ド制御器は未来の値を入力する必要があるため,センサで 計測した値をそのまま扱うと遅れが発生してしまう。その ため,フィードフォワード制御器の遅れが生じないよう,負 荷電流の未来値を予見して制御に用いる。提案したフィー ドフォワード制御器により電圧変動をより高速に抑制し, 平滑コンデンサの小型化が実現できることを示す。シミュ レーションと実験により,提案法の有効性を確認する。 c 2015 The Institute of Electrical Engineers of Japan. 1

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電気学会論文誌 D(産業応用部門誌)IEEJ Transactions on Industry ApplicationsVol.135 No.1 pp.1–10 DOI: 10.1541/ieejias.135.1

論 文

昇圧コンバータにおける平滑コンデンサの小型化を目的とした

負荷電流フィードフォワード制御

学生員 武井 大輔∗ 上級会員 藤本 博志∗ フェロー 堀 洋一∗

Load Current Feedforward Control of Boost Converterfor Downsizing the Output Filter Capacitor

Daisuke Takei∗, Student Member, Hiroshi Fujimoto∗, Senior Member, Yoichi Hori∗, Fellow

A boost converter is used to supply high voltage to the load in various industrial applications. Generally, boostconverters have a large output filter capacitor to suppress the output voltage variation, and this leads to a considerableincrease in the size of the system. In this paper, a load current feedforward control of boost converter is proposed. Theproposed methods suppress voltage variation compared to feedback control and enable the reduction of output filtercapacity. The simulation and experimental results show the effectiveness of the proposed methods.

キーワード:昇圧コンバータ,非最小位相連続時間システム,平滑コンデンサ小型化,電圧変動抑制,負荷電流フィードフォ

ワード制御

Keywords: boost converter,nonminimum-phase continuous-time system,downsizing of output filter capacitor,voltage variationsuppression, load current feedforward control

1. はじめに

昇圧コンバータは直流電圧を昇圧して出力する電力変換

器であり,ハイブリッド車や太陽光モジュール等の産業機

器に用いられている。一般に,コンバータに用いられてい

る平滑コンデンサは出力電圧変動を抑制するために大容量

のものが用いられており,システム全体に対する体積占有

率が高く,システムの小型化を阻害している。

平滑コンデンサ小型化の研究として,制御による小型化

がある。一例として,AC-DC-ACシステムにおける,コンバータとインバータを用いた平滑コンデンサの入出力電流

制御 (1) (2)や, モータドライブにおけるインバータ制御 (3) (4)

がある。これらは,システムの入力電力と出力電力を常に

等しくするように変換器を制御し,平滑コンデンサ小型化

を実現している。また,文献 (5)– (6)では過渡応答時の電圧変動量と平滑コンデンサ容量小型化の関係について述べら

れている。ここで,文献 (5)では,AC-DC-ACシステムにおいて,片方の変換器の情報をもう片方の変換器にフィー

ドフォワードすることで平滑コンデンサの小容量化が可能

になることが示唆されている。また,文献 (6)では電圧変動

∗ 東京大学大学院新領域創成科学研究科

277–8561 千葉県柏市柏の葉 5–1–5Department of Frontier Science, The University of Tokyo5–1–5, Kashiwanoha, Kashiwa 277–8561

を高速に抑圧することにより,平滑コンデンサ容量を小型

化できることが述べられている。そのため昇圧コンバータ

においては,負荷電流によるフィードフォワード制御によ

り電圧変動を抑制し,平滑コンデンサを小型化することが

できると考えられる。しかしながら,これらの文献では電

圧変動を抑制するためのフィードフォワード制御と平滑コ

ンデンサ小容量化の関係については述べられていない。ま

た,昇圧コンバータには制御入力から出力電圧の連続時間

での伝達関数に不安定零点が存在するため (7),単純に逆プ

ラントを用いてフィードフォワード制御をすることができ

ない。

本稿では,不安定零点を持つ昇圧コンバータにおける電

圧変動に対して,フィードフォワードを実現するための近

似逆モデルを用いたフィードフォワード制御器により電圧

変動抑制を行う。また,本稿で提案するフィードフォワー

ド制御器は未来の値を入力する必要があるため,センサで

計測した値をそのまま扱うと遅れが発生してしまう。その

ため,フィードフォワード制御器の遅れが生じないよう,負

荷電流の未来値を予見して制御に用いる。提案したフィー

ドフォワード制御器により電圧変動をより高速に抑制し,

平滑コンデンサの小型化が実現できることを示す。シミュ

レーションと実験により,提案法の有効性を確認する。

c⃝ 2015 The Institute of Electrical Engineers of Japan. 1

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負荷電流 FFによるコンデンサ小型化(武井大輔,他)

Cc

v

loadi

E

r L

ini

Fig. 1. Configuration of boost converter

2. 昇圧コンバータのモデル化

本稿においては,電気自動車やハイブリッド車のように,

昇圧コンバータにインバータを介してモータ負荷が接続さ

れているシステムを仮定する。昇圧コンバータの回路図を

図 1に示す。ここで,E:入力電圧,r:リアクトル巻線抵抗, L:リアクトルのインダクタンス, C:コンデンサ容量, iin:昇圧コンバータ入力電流, vc:昇圧コンバータ出力電圧, iload:昇圧コンバータ負荷電流である。ここでは,

インバータを含めたモータ負荷は iload の電流源で表してい

る。通常,電気自動車用等のモータドライブシステムにお

ける駆動モータは電流センサを用いて電流ベクトル制御に

より駆動される。そのため,本稿で想定しているアプリケー

ションにおいては iload は測定が可能であるとする。本章で

は昇圧コンバータのモデルについて説明する。

〈2・1〉 状態空間平均化法によるモデル化 本稿では,

昇圧コンバータの上アームと下アームのスイッチを交互に

スイッチングすることを仮定する。このため,昇圧コンバー

タは負荷の大きさに依存せずに電流連続モードで動作する。

状態空間平均化法を用いてモデル化を行うと,電流連続モー

ドにおける状態方程式は式 (1), (2)で表される。

ddt

x(t) = f (x(t),u(t)) =

rL iin(t) − d(t)

L vc(t) + EL

d(t)C iin(t) − 1

C iload(t)

(1)

vc(t) = [0 1]x(t) · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (2)

x(t) := [iin(t) vc(t)]T , u(t) := [d(t) iload(t)]T

ここで,d(t)はデューティ比と定義し,d(t) = 1− d(t)とする。式 (1),(2)より,昇圧コンバータは非線形システムである。本稿では,線形制御理論を用いて制御器を設計する

ために平衡点周りで線形化を行う。平衡点を x = X, u = Uとする。平衡点の変動がキャリア周期より十分に遅いと仮

定すると,小信号モデルである式 (3),(4)が得られる。

ddt∆x(t) = ∆A∆x(t) + ∆B∆u(t) · · · · · · · · · · · · · · · · · (3)

∆vc(t) = ∆c∆x(t) · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (4)

∆A =[∂ f (X,U)∂x

]T=

− rL −D

LDC 0

∆B =[∂ f (X,U)∂u

]T=

−VcL 0

IinC − 1

C

, ∆c = [0 1]

x(t) := X + ∆x(t), ∆x(t) := [∆iin(t) ∆vc(t)]T

u(t) := U + ∆u(t), ∆u(t) := [∆d(t) ∆iload(t)]T

X := [Iin Vc]T ,U := [D Iload]T

ここで,平衡点においては f (X,U) = 0であることから,式(5), (6)を得る。

rIin − DVc + E = 0 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (5)

DIin − Iload = 0 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (6)

また,式 (5),式 (6)より,Iin,Dを Vc, Iload で表すと式 (7),(8)を得る。なお,Dは二通りあるが,0≤D≤1かつ値が大きい方を選択する。

D =E +√

E2 − 4rVcIload

2Vc· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (7)

Iin =Iload

D=

2VcIload

E +√

E2 − 4rVcIload

· · · · · · · · · · · · · · (8)

式 (3),(4)より,∆d(s),∆iload(s)から ∆iin(s),∆vc(s)までの伝達関数を求めると,式 (9)を得る。 ∆iin(s)

∆vc(s)

= ∆Pi1(s) ∆Pi2(s)∆Pv1(s) ∆Pv2(s)

∆d(s)∆iload(s)

(9)

∆Pi1(s) =bi1s + bi0

s2 + a1s + a0· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (10)

∆Pi2(s) =ci0

s2 + a1s + a0· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (11)

∆Pv1(s) =bv1s + bv0

s2 + a1s + a0· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (12)

∆Pv2(s) =cv1s + cv0

s2 + a1s + a0· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (13)

a1 :=rL,a0 :=

D2

LC,bi1 := −Vc

L

bi0 := − IinDLC,bv1 =

Iin

C,bv0 =

rIin − DVc

LC

ci0 :=D

LC,cv1 := − 1

C,cv0 := − r

LCさらに,式 (3),(4)をキャリア周期 T にて零次ホールドに基いて離散化すると,状態方程式と伝達関数は以下の式

で表される。

∆x[k + 1] = ∆Ad∆x[k] + ∆Bd∆u[k] · · · · · · · · · · · · (14)

∆vc[k] = ∆cd∆x[k] · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (15) ∆Ad ∆Bd

∆cd O

:=

e∆AT ∆A−1(e∆AT − I)∆B∆c O

:=

∆ad11 ∆ad12 ∆bd11 ∆bd12

∆ad21 ∆ad22 ∆bd21 ∆bd22

0 1 O

2 IEEJ Trans. IA, Vol.135, No.1, 2015

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負荷電流 FFによるコンデンサ小型化(武井大輔,他)

Output voltage Vc [V]

Load c

urr

ent I lo

ad [A

]

80 90 100 110 1202

4

6

8

10

Zero

zv1 [kra

d/s

]

10

20

30

40

50

60

Fig. 2. zero zv1 of ∆Pv1

Table 1. Parameters of boost converterDC-bus voltage E 50 V

Winding resistance r 101 mΩ

Inductance L 250 µH

〈2・2〉 平衡点に対する零点の影響 本節では,∆Pv1(s),∆Pv2(s)の零点について考察する。∆Pv1(s),∆Pv2(s)の零点zv1,zv2 は式 (7),(8)を用いて Vc,Iload の関数とすると式

(16),(17)で表される。

zv1 = −bv0bv1=

E(E +√

E2 − 4rVcIload)2LVcIload

− 2rL· · · (16)

zv2 = −cv0cv1= − r

L· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (17)

式 (16),(17)より,zv1 は平衡点 Vc,Iload によって変化す

る。一方で,zv2は回路パラメータで決まる安定零点となる。式 (7),(8)を満たしつつ Vc,Iload を変化させた場合の zv1の変化を図 2に示す。ここで,昇圧コンバータのパラメータは表 1のものを用いた。図 2で示した平衡点の範囲においては zv1 は Vc,Iload の値によらず不安定零点となる。Vc

,Iload が大きいほど不安定零点は速くなる。

3. 負荷電流の模擬

本稿では昇圧コンバータの負荷を電流でモデル化して制

御系設計を行うため,任意の負荷変動に対して有効であると

考えられる。そこで,本稿では単相フルブリッジインバー

タで任意の負荷変動を発生させる。ハイブリッド車や太陽

光モジュールのように昇圧コンバータの負荷側にインバー

タが接続される例があるため,負荷をインバータで模擬す

るのは妥当であると考える。

回路図を図 3(a)で示す。ここで,Rl:負荷抵抗,Ll:負荷

リアクトルのインダクタンス, vinv:インバータ出力電圧,

iinv:インバータ出力電流である。以下では単相フルブリッジインバータのモデル化と制御系について説明する。変調

率をmと定義すると,vinv(t) = m(t)vc(t)である。このとき,連続時間の状態方程式は以下の式で表される。

diinv(t)dt

= −Rl

Lliinv(t) +

1Ll

m(t)vc(t) · · · · · · · · · · · · · · (18)

式 (18)を PWMホールドによって離散化する (8)。

xinv[k + 1] = ainvxinv[k] + binv[k]∆T [k] · · · · · · · · · · (19)

lR

lL

invi

invv

loadi

cv

(a) Circuit

][kv

T

c

inverter][ki

inv][kT∆

][zCinv

+ −

+

+

]1[*

+kiinv

invcz

1−

)]([1

invinvazIkb

−−

][kvc

T

1 ][kiload

(b) Block diagram

 

Fig. 3. Load current simulator

yinv[k] = cinvxinv[k] · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (20)

ainv = e−RlTLl ,binv[k] =

vc[k]Ll

e−RlT2Ll

cinv = 1,xinv[k] = iinv[k]

また,後の制御系設計で用いる昇圧コンバータ負荷電流

iload[k] はキャリア周期 T のリプルが生じ,計測が困難である。しかしながら,iload[k]は T のうちのオン時間 ∆T [k]に流れる iinv[k] の平均値であると考えられる。そのため,iload[k]は以下の式で表される。

iload[k] =∆T [k]

Tiinv[k] · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (21)

単相フルブリッジインバータは図 3(b)で示される 2自由度制御系により,インバータ電流 iinv[k]を制御する。フィードフォワード制御器には式 (19),(20)より,シングルレートPTC (9)で設計する。また,フィードバック制御器は式 (18)のプラントモデルと制御器が極零相殺するように式 (22)のPI制御器とした。これを T で Tustin変換により離散化したものをフィードバック制御器として用いる。

Cinv(s) =Lls + Rl

τinvs, τinv = 1 [ms] · · · · · · · · · · · · · · (22)

4. 制御器設計

本章では従来のフィードバック制御器に加え,負荷変動

に伴う電圧変動を抑制するためのフィードフォワード制御

器設計について述べる。

〈4・1〉 従 来 法 従来法として,∆d(s)から ∆vc(s)までの伝達関数である式 (12)に対して,フィードバック制御器として PID制御器を 4重根配置するように設計する。ブロック図は図 4で表される。

C f b(s) = Kp +Ki

s+

Kd sτbcs + 1

· · · · · · · · · · · · · · · · · · (23)

3 IEEJ Trans. IA, Vol.135, No.1, 2015

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負荷電流 FFによるコンデンサ小型化(武井大輔,他)

Boost

Converter

+

][*

kvc][kvc

][zCfb

+

][kd fb∆

D

+

][kiload

Current

source load

simulator

]1[*

+kiinv

Fig. 4. Voltage control of the conventional method

Boost

Converter

+

][*

kvc][kvc][kd

][zCfb

+

][kd fb∆

D

+

Current

source load

simulator

]1[*

+kiinv

][kd ff∆

][zCff

+

][kiload∆

+

][kiload

loadI

Fig. 5. Voltage control of proposed method 1 and 2

式 (23)を T で Tustin変換し,C f b[z]を得る。〈4・2〉 提案法1 一般に,昇圧コンバータには連続

系において不安定零点があり,デューティ比 ∆d(s)から出力電圧 ∆vc(s) までの伝達関数である式 (12) の零点は不安定零点である。不安定零点をもつシステムに対するフィー

ドフォワード制御器として,提案法 1では零位相差追従制御 (ZPETC) (10)によってフィードフォワード制御器を設計す

る。状態空間平均化法と零次ホールドを用いて表される式

(14)の離散時間状態方程式より,デューティ比 ∆d[k]と負荷電流 ∆iload[k]から電圧 ∆vc[k]までの伝達関数は次式で表される。

∆vc[k] =bdv1z + bdv0

z2 + ad1z + ad0∆d[k]

+cdv1z + cdv0

z2 + ad1z + ad0∆iload[k] · · · · · · · · · · · · · · · · (24)

ad1 = −(∆ad11 + ∆ad22)

ad0 = ∆ad11∆ad22 − ∆ad12∆ad21

bdv1 = ∆bd21, bdv0 = ∆ad21∆bd11 − ∆ad11∆bd21

cdv1 = ∆bd22, cdv0 = ∆ad21∆bd12 − ∆ad11∆bd22

式 (24) より,∆iload[k] から ∆vc[k] への応答を ∆d[k] によって相殺することを考える。すわなち,∆vc[k] = 0とおいたとき,∆iload[k]の変動に対して ∆d[k]によって補償する。このとき,∆d[k]から ∆iload[k]までの伝達関数は次式で表される。

∆P[z] =∆iload[k]

∆d[k]= −bdv1z + bdv0

cdv1z + cdv0=

N[z]D[z]· · · · · · (25)

ZPETCにおいては,指令値から出力までの位相差を 0にするので,次式が成り立つ。

∆P[z]Czpetc[z] =N[z]N[z−1]

N2[1]· · · · · · · · · · · · · · · · · · · (26)

式 (25),(26)より,プロパーなフィードフォワード制御器Czpetc[z]は次式で表される。

Czpetc[z] =D[z]N[z−1]

zN2[1]· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (27)

〈4・3〉 提案法2 提案法 1は零位相特性を持つが,振幅特性には誤差が生じる。一方で,不安定零点が非常に速

い場合,不安定零点によるシステムへの影響は小さい。そ

のため,不安定零点を無視したモデルに対して完全追従制

御法 (11)によってフィードフォワード制御器設計を行う。式

(9),(12),(13)より,∆d(s)と ∆iload(s)から ∆vc(s)までの伝達関数は式 (28)で表される。

∆vc(s) =bv1s + bv0

s2 + a1s + a0∆d(s)

+cv1s + cv0

s2 + a1s + a0∆iload(s) · · · · · · · · · · · · · · · · (28)

∆iload(s)から ∆vc(s)への応答を ∆d(s)により相殺することを考える。このとき,∆d(s)から ∆iload(s)までの伝達関数は次式で表される。

∆P(s) =∆iload(s)

∆d(s)= −bv1s + bv0

cv1s + cv0· · · · · · · · · · · · · · · (29)

∆P(s)は不安定零点をもつ。そこで,最小位相系の伝達関数 ∆PMP(s)と nu(s)に分解し,∆PMP(s)に対するフィードフォワード制御器を設計する。

∆P(s) = ∆PMP(s)nu(s) · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (30)

∆PMP(s) = − bv0cv1s + cv0

· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (31)

nu(s) =bv1bv0

s + 1 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (32)

∆PMP(s)を T で零次ホールドで離散化すると式 (33), (34)となる。

xptc[k + 1] = ad xptc[k] + bduptc[k] · · · · · · · · · · · · · (33)

yptc[k] = cd xptc[k] · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (34) ad bd

cd 0

= e−cv0cv1

T − bv0cv1

(e−cv0cv1

T − 1)1 0

xptc[k] = ∆iload[k], uptc[k] = ∆d[k] である。式 (33) より,フィードフォワード制御器 Cptc[z]は式 (35)となる。

∆d f f [k] = Cptc[z]∆iload[k + 1] · · · · · · · · · · · · · · · · · (35)

Cptc[z] =1bd

(−adz−1 + 1) · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (36)

ここで,∆iload[k + 1]は 1サンプル先の負荷電流を用いるため,実際に計測することはできない。そのため,実際

には 1サンプルの制御入力の遅れが生じてしまう。〈4・4〉 提案法3 提案法 2では現サンプルの負荷電流 iload[k]を昇圧コンバータのフィードフォワード制御に用いており,遅れが生じていた。そこで,提案法 3では単相フルブリッジインバータの電流指令値から 1サンプル先の負

4 IEEJ Trans. IA, Vol.135, No.1, 2015

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負荷電流 FFによるコンデンサ小型化(武井大輔,他)

Boost

Converter

+

][*

kvc][kvc][kd

][zCfb

+

][kd fb∆

D

+

Current

source load

simulator

]1[*+kiinv

Converter load

current prediction

1−z

]2[*+kiinv

]1[ˆ +kiload

][kd ff∆

][zCff

+

+

][kiload

loadI

][kd ff∆

Error

compensation

+ +][kicomp

]1[*+kiload

Fig. 6. Feedforward control of proposed method 3

荷電流を推定し,遅れなく昇圧コンバータのフィードバッ

ク制御器に用いる。与えられた 2サンプル先のインバータ電流指令値 i∗inv[k + 2]から 1サンプル先のコンバータ負荷電流 iload[k + 1]を推定する。ただし,iload[k + 1]の計算には vc[k + 1]が必要となるが,1サンプル先の値であり計測できない。このため,サンプル間での電圧変動は小さいも

のとみなし,代わりに vc[k]を計算に用いる。

iload[k + 1] =∆T ∗[k + 1]

Ti∗inv[k + 1] · · · · · · · · · · · · (37)

∆T ∗[k + 1] =1 − ainvz−1

Tbinv[k]i∗inv[k + 2] · · · · · · · · · · · · · (38)

ここで,実際にはプラントのモデル化誤差が存在するため,

推定値に誤差が含まれてしまう。そこで,推定値に現サン

プルにおけるコンバータ負荷電流 iinv[k]とコンバータ負荷電流推定値の差分 icomp[k]を補償する。icomp[k]は以下の式で計算される。

icomp[k] = iinv[k] − i∗load[k] · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (39)

iload[k + 1]と icomp[k]の和である i∗load[k + 1]を提案法 2で用いたフィードフォワード制御器に入力する。i∗load[k + 1]は次式で表される。

i∗load[k + 1] = iload[k + 1] + icomp[k] · · · · · · · · · · · · · (40)

以上の提案法 3のブロック図を図 6に示す。提案法 3では,1サンプル先の負荷電流 i∗load[k + 1]を推定するためにインバータの電流指令値を 1サンプル遅らせる必要がある。一般には,インバータのキャリア周波数は

非常に大きい。キャリア周波数が 10 kHzの場合,電流制御の遅れである 1サンプルは 0.1 msと非常に小さい値となる。実際のシステムでは,モータの電流制御の指令値を 1サンプル遅らせることで,C f f [z]の理想的な制御入力を得ることができる。

〈4・5〉 平衡点の設定 以上のモデルは平衡点まわり

の小信号モデルであるため,平衡点を設定する必要がある。

Table 2. Parameters of boost converterDC-bus voltage E 50 V

Output voltage reference v∗c 100 V

Winding resistance r 101 mΩ

Inductance L 250 µH

Carrier Frequency fc 10 kHz

Load Inductance Ll 9.80 mH

Load Resistance Rl 8.05 Ω

本稿では,すべての平衡点は負荷変動前のものを用いる。式

(41),(42)のように,Vc,Iload はそれぞれ指令値電圧 vc∗と

負荷変動前の負荷電流 i∗load を扱う。また,残り 2つの平衡点 D,Iinに関しては,式 (7),(8)を満たすように導出する。

Vc = v∗c · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (41)

Iload = i∗load =∆T ∗

Ti∗inv · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (42)

本稿においては後述するように,平衡点はある動作点に

おけるものを用いる。これは平衡点の変動による制御器へ

の影響は小さいからである。しかしながら実際には負荷変

動等による平衡点の変動が大きい場合,制御器の平衡点か

らのずれが大きく,制御性能が悪化する。この場合には,平

衡点を逐次更新することにより動作点からの平衡点のずれ

を補正する必要がある。逐次更新した平衡点から制御器を

逐次更新して制御に用いる場合,下記の手順で行う。

( 1) 平衡点 Iin[k],Vc[k],D[k], Iload[k]を求める( 2) 平衡点の値からC f f [z]の分子多項式,分母多項式

の係数を計算し,C f f [z]の制御器を更新する。( 3) 更新された制御器を用いて,制御器の入力から

∆d f f [[k]を求め,フィードフォワード制御器の出力として用いる。

5. シミュレーション

フィードフォワード制御器による電圧変動抑制効果につ

いて,シミュレーション結果から評価する。昇圧コンバー

タのパラメータは表 2のものを用いる。昇圧コンバータの閉ループ極は −500 rad/s (4重根)とした。〈5・1〉 負荷変動に対する応答性 t = 0 ms で負荷変動を発生させたときのシミュレーションの結果を図 7に示す。単相フルブリッジインバータにおけるインバータ電流

を図 7(d)のよう指令値に対して追従するように制御し,昇圧コンバータの負荷変動を模擬している。本節では平滑コ

ンデンサの容量を C = 1600 µFとした。従来法では出力電圧フィードバック制御のみであり,大

きな電圧変動が起こっている。これは,負荷変動の速さに対

してフィードバック制御器の帯域が十分高くないためであ

る。一方,提案法では電圧変動が大きく減少している。電

圧変動抑制の効果は提案法 1, 提案法 2, 提案法 3の順に大きい。従来法と電圧指令値からの電圧変動幅を比較すると,

提案法 1は 90.6 %,提案法 2は 93.8 %,提案法 3は 97.3 %の電圧変動が抑制された。今回のシミュレーションでは,

負荷変動前の不安定零点が 33.9 krad/sの速い零点である。

5 IEEJ Trans. IA, Vol.135, No.1, 2015

Page 6: 昇圧コンバータにおける平滑コンデンサの小型化を …hflab.k.u-tokyo.ac.jp/papers/2015/IEEJD_takei.pdf電気学会論文誌D(産業応用部門誌) IEEJ Transactions

負荷電流 FFによるコンデンサ小型化(武井大輔,他)

−5 0 5 10 15 20 2594

95

96

97

98

99

100

101

102

Time [ms]

Vo

lta

ge

vc [

V]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(a) Output Voltage

−5 0 5 10 15 20 25−0.2

−0.1

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

Time [ms]

Vo

lta

ge

err

or

vc* −

vc [

V]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(b) Output Voltage (zoom)

−5 0 5 10 15 20 250.48

0.5

0.52

0.54

0.56

0.58

Time [ms]

Duty

ratio d

[−

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(c) Duty ratio

−5 0 5 10 15 20 252

3

4

5

6

7

8

9

Time [ms]

Curr

ent i lo

ad [A

]

conventionalproposed1proposed2proposed3proposed3(prediction)

(d) Converter load current

−5 0 5 10 15 20 25

6

7

8

9

10

Time [ms]

Curr

ent i in

v [A

]

conventionalproposed1proposed2proposed3reference

(e) Inverter current

Fig. 7. Simulation results of voltage variation suppression against load variation (C = 1600 µF)

−5 0 5 10 15 20 2582

87

92

97

100

102

Time [ms]

Voltage v

c [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(a) C = 1600 µF

−5 0 5 10 15 20 2582

87

92

97

100

102

Time [ms]

Voltage v

c [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(b) C = 1200 µF

−5 0 5 10 15 20 2582

87

92

97

100

102

Time [ms]

Voltage v

c [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(c) C = 800 µF

−5 0 5 10 15 20 2582

87

92

97

100

102

Time [ms]

Voltage v

c [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(d) C = 400 µF

−5 0 5 10 15 20 25−0.2

−0.1

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

Time [ms]

Voltage e

rror

vc* −

vc [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(e) C = 1600 µF (zoom)

−5 0 5 10 15 20 25−0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

Time [ms]

Voltage e

rror

vc* −

vc [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(f) C = 1200 µF (zoom)

−5 0 5 10 15 20 25

−0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

Time [ms]

Voltage e

rror

vc* −

vc [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(g) C = 800 µF (zoom)

−5 0 5 10 15 20 25−0.5

0

0.5

1

1.5

2

Time [ms]

Voltage e

rror

vc* −

vc [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(h) C = 400 µF (zoom)

Fig. 8. Simulation results of voltage variation suppression when small output filter capacitor is used

そのため,不安定零点を無視してフィードフォワード制御

器を設計する提案法 2は提案法 1よりも精度が高いと考えられる。また,提案法 1,提案法 2ではフィードフォワード制御器に対して遅れのある iload[k]を入力として用いたのに対して,提案法 3では遅れのない i∗load[k + 1]を用いているため,電圧変動が更に抑制されている。

〈5・2〉 小容量平滑コンデンサでの比較 平滑コンデ

ンサの容量を 1600 µFから 1200,800,400 µFに変え,各制御手法を比較する。シミュレーション結果を図 8に示す。平滑コンデンサの容量が小さいほど,電圧変動が大きくなっ

ていく。しかしながら,いずれの条件においても,従来法

より提案法の方が電圧変動を抑制している。平滑化コンデ

ンサ容量が小さい場合でも,5.1節で得られた変動幅抑制の割合とほぼ同じ効果が得られていることがわかる。負荷電

流フィードフォワード制御を用いることで電圧変動が大幅

に抑制できるため,結果として平滑化コンデンサの小容量

化が実現できる。

6. 実 験

シミュレーションと同じ条件で実験を行った。図 11に

6 IEEJ Trans. IA, Vol.135, No.1, 2015

Page 7: 昇圧コンバータにおける平滑コンデンサの小型化を …hflab.k.u-tokyo.ac.jp/papers/2015/IEEJD_takei.pdf電気学会論文誌D(産業応用部門誌) IEEJ Transactions

負荷電流 FFによるコンデンサ小型化(武井大輔,他)

−5 0 5 10 15 20 2594

95

96

97

98

99

100

101

102

Time [ms]

Vo

lta

ge

vc [

V]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(a) Output Voltage

−5 0 5 10 15 20 25

−0.6

−0.4

−0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

Time [ms]

Vo

lta

ge

err

or

vc* −

vc [

V]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(b) Output Voltage (zoom)

−5 0 5 10 15 20 250.48

0.5

0.52

0.54

0.56

0.58

Time [ms]

Duty

ratio d

[−

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(c) Duty ratio

−5 0 5 10 15 20 252

3

4

5

6

7

8

9

Time [ms]

Curr

ent i lo

ad [A

]

conventionalproposed1proposed2proposed3proposed3(prediction)

(d) Converter load current

−5 0 5 10 15 20 25

6

7

8

9

10

Time [ms]

Curr

ent i in

v [A

]

conventionalproposed1proposed2proposed3reference

(e) Inverter current

Fig. 9. Experiment results of voltage variation suppression against load variation (C = 1600 µF)

−5 0 5 10 15 20 2582

87

92

97

100

102

Time [ms]

Voltage v

c [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(a) C = 1600 µF

−5 0 5 10 15 20 2582

87

92

97

100

102

Time [ms]

Voltage v

c [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(b) C = 1200 µF

−5 0 5 10 15 20 2582

87

92

97

100

102

Time [ms]

Voltage v

c [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(c) C = 800 µF

−5 0 5 10 15 20 2582

87

92

97

100

102

Time [ms]

Voltage v

c [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(d) C = 400 µF

−5 0 5 10 15 20 25

−0.5

0

0.5

1

Time [ms]

Voltage e

rror

vc* −

vc [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(e) C = 1600 µF (zoom)

−5 0 5 10 15 20 25

−0.5

0

0.5

1

1.5

Time [ms]

Voltage e

rror

vc* −

vc [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(f) C = 1200 µF (zoom)

−5 0 5 10 15 20 25−1

−0.5

0

0.5

1

1.5

2

Time [ms]

Voltage e

rror

vc* −

vc [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(g) C = 800 µF (zoom)

−5 0 5 10 15 20 25−1

−0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

Time [ms]

Voltage e

rror

vc* −

vc [V

]

conventional

proposed1

proposed2

proposed3

(h) C = 400 µF (zoom)

Fig. 10. Experiment results of voltage variation suppression when small output filter capacitor is used

Boost

Converter

DC Power

Supply

Single Phase Inverter

(Load)

ControllerPE-Expert3 , MywayPlus Corporation

][kd ][kvc

][kiinv

][kT∆

Fig. 11. Experimental setup

実験機の概要を示す。昇圧コンバータの入力電源には直流

安定化電源を用いた。単相インバータは 3章で述べた制御系により電流制御を行った。

〈6・1〉 負荷変動に対する応答性 5.1節と同じ条件で実験を行った。結果を図 9に示す。従来法と比べて提案法では電圧変動は抑制している。ここで提案法 3では,モデル化誤差を補償した 1サンプル先の推定値を用いており,昇圧コンバータの出力電圧推定値は計測値とほぼ一致して

いる。負荷電流フィードフォワード制御を用いた場合の電

圧変動幅は,従来法と比べて提案法 1では 79.8 %,提案法2 では 81.2 %, 提案法 3 は 84.1 % 減少している。シミュレーションと比較して電圧変動幅や整定時間が悪化してい

るが,これはパラメータ誤差によるものと考えられる。

7 IEEJ Trans. IA, Vol.135, No.1, 2015

Page 8: 昇圧コンバータにおける平滑コンデンサの小型化を …hflab.k.u-tokyo.ac.jp/papers/2015/IEEJD_takei.pdf電気学会論文誌D(産業応用部門誌) IEEJ Transactions

負荷電流 FFによるコンデンサ小型化(武井大輔,他)

〈6・2〉 小容量平滑コンデンサでの比較 5.2 節のシミュレーションと同じ条件で実験を行った。なお,実験に

おいては複数の電解コンデンサを用いて任意のコンデンサ

容量を得ている。結果を図 10 に示す。シミュレーションの場合と同じく,コンデンサの容量を小さくしていくと電

圧変動幅が大きくなっているが,従来法に比べると提案法

を用いた場合の方が電圧変動が抑制されている。平滑化コ

ンデンサを小容量化した場合,パラメータ誤差によって容

量ごとの提案法の効果にばらつきがあるものの,従来法と

比較して電圧変動を抑圧できている。

7. 平滑コンデンサの最小容量決定法

5,6章より,負荷電流フィードフォワード制御による電圧変動抑圧効果の有効性を示した。平滑コンデンサ容量設

計においては,状態空間平均化法によりモデル化が可能で

ある固有周波数となる上で,発生しうる負荷電流変動量と

フィードバック制御器の極より,発生する電圧変動がシス

テムの耐圧内に収まるような平滑コンデンサの容量を決定

する。そのため,状態空間平均化法が適用できる平滑コン

デンサの下限値や,負荷変動量から電圧変動幅が計算でき

る関係式は平滑コンデンサの最小容量を決定するのに非常

に有効である。本章では,昇圧コンバータの固有周波数と

キャリア周波数の関係から,平滑コンデンサ容量下限値を

算出する。また,文献 (6)で用いられた負荷電流変動量,出力電圧変動量,フィードバック制御器の極と平滑コンデン

サ容量の関係式を求め,フィードバック制御とフィードフォ

ワード制御を用いた場合における電圧変動幅について考察

する。

〈7・1〉 状態空間平均化法を考慮したコンデンサ容量の下限値 昇圧コンバータは状態空間平均化法をモデル化

しており,昇圧コンバータの固有周波数 ω0は ∆Pv1(s)の分母多項式から計算することで次式のように表される。

ω0 =

√D

2

LC− r2

4L2 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (43)

状態空間平均化法を用いたモデル化はキャリア周波数より

昇圧コンバータの固有周波数が十分大きい場合に成立する。

また,式 (43)はデューティ比 Dの関数として表される。一般的には vc = Eの状態から昇圧するため,D = 0 (D = 1)におけるω0がキャリア周波数より十分大きい必要がある。表

2のパラメータより,状態空間平均化法が適用できる最小容量Cminにおける昇圧コンバータの固有周波数をキャリア周

波数の 0.1倍と仮定すると,最小容量CminはCmin = 101 µFとなる。平滑コンデンサの容量が Cmin より小さくなると,

状態空間平均化法を用いたモデル化が成り立たなくなるた

め,ある負荷変動に対する電圧変動が十分に抑圧でき,平

滑コンデンサが小型化できたとしても,Cmin がコンデンサ

容量の下限値となる。

〈7・2〉 負荷変動量に対する電圧変動量の定式化 従来

法における ∆iload(s)から ∆vc(s)までの伝達関数 G f b(s)は

400 800 1200 16000

5

10

15

20

Capacitance C [µF]

Vo

lta

ge

va

ria

tio

n |∆

vcfb

| [V

]

caluculationsimulationexperiment

(a) conventional method

400 800 1200 16000

0.5

1

1.5

2

2.5

3

Capacitance C [µF]

Volta

ge

variatio

n |∆

vcff| [V

]

caluculationsimulationexperiment

(b) proposed method 3

Fig. 12. Comparison voltage variation with each results

以下の式で表される。ただし,ωは閉ループ伝達関数の極

である。

G f b(s) =∆vc(s)∆iload(s)

=∆Pv2(s)

1 +C f b(s)∆Pv1(s)

=s(τ f bs + 1)(cv1s + cv0)

τ f b(s − ω)4

=1C−s(τ f bs + 1)(s + r

L )τ f b(s − ω)4 · · · · · · · · · · · · · · · (44)

∆iload(s) のステップ応答に対する ∆vc(s) の最大変動電圧∆vc を求める。負荷電流変動の大きさを ∆ivariation とする

G f b(s)∆ivariation/sを逆ラプラス変換すると式 (45)を得る。

∆vc(t) = −∆ivariation

C1

6τ f bteωt(k f b2t2 + k f b1t + k f b0

)· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (45)

k f b2 = τ f bω2 −( r

Lτ f b + 1

)ω +

rL

k f b1 = −6τ f bω + 3( r

Lτ f b + 1

)k f b0 = 6τ f b

式 (45)より,電圧変動幅が最大となる時刻を t f b における

電圧変動幅 |∆vc| = |∆vc f b|は式 (46)で得られる。

|∆vc f b| =K f b

C|∆ivariation| · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (46)

K f b =t f beωt f b

6τ f b(k f b2t f b

2 + k f b1t f b + k f b0)

式 (46)より,ある平衡点における |∆vc f b|は |∆ivariation|, ω,Cの関数となる。同様に,提案法 3のフィードフォワード制御における ∆iload(s)から ∆vc(s)までの伝達関数 G f f (s)を求

8 IEEJ Trans. IA, Vol.135, No.1, 2015

Page 9: 昇圧コンバータにおける平滑コンデンサの小型化を …hflab.k.u-tokyo.ac.jp/papers/2015/IEEJD_takei.pdf電気学会論文誌D(産業応用部門誌) IEEJ Transactions

負荷電流 FFによるコンデンサ小型化(武井大輔,他)

める。不安定零点を無視した理想的な連続系フィードフォ

ワード制御器 C f f (s)は式 (31)の逆システムで表される。

C f f (s) = −cv1s + cv0bv0

· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (47)

これより,G f f (s)は次式で表される。

G f f (s) =∆Pv2(s) + ∆Pv1(s)C f f (s)

1 +C f b(s)∆Pv1(s)

=1C

bv1bv0τ f b

s2(τ f bs + 1)(s + rL )

(s − ω4)· · · · · · · · · (48)

提案法 3のある平衡点における |∆vc f f |, |∆ivariation|, ω,Cの関係式は以下の式で表される。

|∆vc f f | =K f f

C|∆ivariation| · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (49)

K f f = −bv1t f f eωt f f

6bv0τ f b(k f f 3t f f

3 + k f f 2t2f f

+k f f 1t f f + k f f 0)

k f f 3 = −τ f bω3 +

( rLτ f b + 1

)ω2 − r

k f f 2 = 9τ f bω2 − 6

( rLτ f b + 1

)ω + 3

rL

k f f 1 = −18τ f bω + 6( r

Lτ f b + 1

)k f f 0 = 6τ f b

式 (46),(49)で得られた電圧変動幅 |∆vc f b|, |∆vc f f |と,5,6章で得られた結果を比較した。結果を図 12に示す。ただし計算で必要な平衡点は負荷変動前の点を用いている。従

来法では,C の値が大きい場合,|∆vc f b|の計算値,シミュレーション値,実験値の差は小さい。一方,Cが小さくなるほどそれぞれの |∆vc f b|の値の差が大きくなっている。計算値は負荷電流のステップ応答に対する出力電圧の応答から

得られる。一方,シミュレーションと実験においては 1 msの一次遅れのステップ入力であるため,計算値より |∆vc f b|の値が低くなっている。しかしながら,式 (46)を用いることで,ある程度の電圧変動幅を精度よく見積もることがで

きている。また,提案法 3の場合においても,|∆vc f f |はシミュレーション,実験で得られた値と計算値で概ね一致して

いる。計算値とシミュレーション値,実験値の差は平衡点

のずれやパラメータ誤差等による影響であると考えられる。

〈7・3〉 閉ループ極,不安定零点変化時における解析 本

節では,閉ループ伝達関数の極や不安定零点の値の変化によ

る,従来法と提案法 3を用いた場合の電圧変動量について,式 (46),(49)を用いて評価する。図 13に結果を示す。図13(a)–(c)は 5, 6章で動作させた負荷変動前の平衡点における計算結果であり,zv1 = 33.9 krad/sの不安定零点である。図 13(d)–(e)の平衡点は Vc = 100 V, Iload = 12 Aとして,残りの平衡点 Iin,Dは式 (8), (7)から求めている。この平衡点では zv1 = 7.10 krad/sの不安定零点である。図 13(a),(d)は従来法を用いた場合における,Cに対する |∆vc f b|/|∆ivariation|のグラフであり,図 13(b),(e)は提案法 3における結果である。また,図 13(c),(f)は従来法の電圧変動量に対する

提案法 3の電圧変動量 |∆vc f f |/|∆vc f f |である。図 13より,|∆vc f f |/|∆vc f b|の値は ωが速いほど,C が大きいほど小さくなる。これは |∆vc f b|がωが速くなるほど小さくなるからである。一方,|∆vc f f |は ωの速さにはほとんど依存しない。従来法では ωを速くするほど電圧変動幅は

小さくなるが,一般的に閉ループ極を速くするほど安定余

裕が減少してしまう。一方で,提案法 3の場合では極の速さによらず,大きな電圧変動幅の抑圧が可能である。

また,zv1 の速さで比較した場合,zv1 が速い場合の方が|∆vc f f |/|∆vc f b|の値が小さくなり,従来法に比べて提案法 3の変動抑圧効果が大きい。これは制御系設計において zv1は速い零点として影響が小さいものと仮定して設計していた

ためであり,zv1が遅い場合には無視した零点の影響を受けてしまうものであると考えられる。しかしながら,従来法

と比べると提案法を用いた場合の方が電圧変動幅を抑圧で

きている。

8. ま と め

本稿では,非最小位相系である昇圧コンバータに対して,

近似的な逆システムを用いたフィードフォワード制御によ

り,負荷変動に伴う電圧変動を抑制効果できることをシミュ

レーション及び実験により検証した。また,昇圧コンバー

タの負荷電流が予見できる場合,フィードフォワード制御

器の入力とすることでさらに電圧変動が抑制できることを

確認した。提案法を用いることで,従来法と比べて電圧変

動を抑制できていることがシミュレーション及び実験から

確認できた。さらに小容量の平滑コンデンサを用いた検討

も行い,平滑コンデンサが小容量の場合でも提案法が有効

であることが示された。提案法は平滑コンデンサの容量に

よらず高い電圧変動抑制効果を得られるため,電圧変動を

抑制するために確保している平滑コンデンサ容量の削減が

期待できる。

今後の課題としては,パラメータ変動に対しても有効な制

御系の構築や,電流不連続モードへの応用等が挙げられる。

文 献

( 1) J. -S. Kim and S. -K. Sul: “New Control Scheme for AC-DC-AC ConverterWithout DC Link Electrolytic Capacitor”, PESC’93 Record, pp.300–306,1993.

( 2) B. Gu and K. Nam: “A DC-Link Capacitor Minimization Method ThroughDirect Capacitor Current Control”, IEEE Trans. Ind. Electron., Vol.42, No.2, pp. 573–581, 2006.

( 3) H. Lamsahel and P. Mutschler: “Permanent Magnet Drives with Re-duced DC-Link Capacitor for Home Appliances”, Proc. 35rd Annu. Conf.IEEE(IECON), pp.725–730, 2009.

( 4) K. Inazuma, H. Utsugi, K. Ohishi and H. Haga: ”High-Power-Factor Single-Phase Diode Rectifier Driven by Repetitively Controlled IPM Motor”, IEEETrans. Ind. Electron., Vol.60, No. 10, pp. 4427–4437, 2013.

( 5) J. Xu, and Y. Sato: “A Method to Determine Minimum DC-link Capaci-tance in PWM Rectifier-Inverter Systems”, T.IEEJapan, Vol. 133-D, No.8,pp.804–811, 2013 (in Japanese).徐進・佐藤之彦:「PWM 整流回路-インバータシステムにおける直流リンクコンデンサの最小容量決定法」, 電学論 D, Vol.133, No.8,pp.804–811, 2013.

( 6) T. Shibuya, and J. Itoh: “An Evaluation of Optimal Design of Capacitance by

9 IEEJ Trans. IA, Vol.135, No.1, 2015

Page 10: 昇圧コンバータにおける平滑コンデンサの小型化を …hflab.k.u-tokyo.ac.jp/papers/2015/IEEJD_takei.pdf電気学会論文誌D(産業応用部門誌) IEEJ Transactions

負荷電流 FFによるコンデンサ小型化(武井大輔,他)

100 1000 20000

5

10

15

Capacitance C [µF]

|∆v

cfb

| / |∆

i variation| [V

/A]

ω = −500 rad/s

ω = −1000 rad/s

ω = −2000 rad/s

ω = −3000 rad/s

(a) Conventioal method (zv1 = 33.9 krad/s)

100 1000 20000

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

Capacitance C [µF]

|∆v

cff| / |∆

i variation| [V

/A]

ω = −500 rad/s

ω = −1000 rad/s

ω = −2000 rad/s

ω = −3000 rad/s

(b) Proposed method 3 (zv1 = 33.9 krad/s)

100 1000 20000

0.05

0.1

0.15

Capacitance C [µF]

|∆v

cff| / |∆

vcfb

| [−

]

ω = −500 rad/s

ω = −1000 rad/s

ω = −2000 rad/s

ω = −3000 rad/s

(c) |∆vc f f |/|∆vc f b | (zv1 = 33.9 krad/s)

100 1000 20000

1

2

3

4

5

6

7

8

Capacitance C [µF]

|∆v

cfb

| /

|∆i v

aria

tio

n| [

V/A

]

ω = −500 rad/s

ω = −1000 rad/s

ω = −2000 rad/s

ω = −3000 rad/s

(d) Conventioal method (zv1 = 7.10 krad/s)

100 1000 20000

0.5

1

1.5

2

Capacitance C [µF]

|∆v

cff| /

|∆i v

aria

tio

n| [

V/A

]

ω = −500 rad/s

ω = −1000 rad/s

ω = −2000 rad/s

ω = −3000 rad/s

(e) Proposed method 3 (zv1 = 7.10 krad/s)

100 1000 20000

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

Capacitance C [µF]

|∆v

cff| /

|∆v

cfb

| [

−]

ω = −500 rad/s

ω = −1000 rad/s

ω = −2000 rad/s

ω = −3000 rad/s

(f) |∆vc f f |/|∆vc f b | (zv1 = 7.10 krad/s)

Fig. 13. Caluculated voltage variation compared with conventional and proposed method 3

High Speed of a Control Response”, IEEJ, SPC-12-026, pp151–156, 2012(in Japanese).渋谷貴之・伊東淳一:「制御応答の高速化による直流コンデンサ容量の

最小化の検討」,電学半導体電力変換研究会, SPC-12-026, pp.151–156,2012.

( 7) Z. Chen, W. Gao, J. Hu, and X. Ye: “Closed-Loop Analysis and CascadeControl of a Nonminimum Phase Boost Converter”, IEEE Trans. PowerElectron., Vol.26, No.4, pp.1237–1252, 2011.

( 8) K. P. Gokhale, A. Kawamura, and R. G. Hoft:“Deat beat microprocessorcontrol of PWM inverter for sinusoidal output wavefortm synthesis”, IEEETrans. Ind. Appl., Vol.23, No. 3, pp.901–910, 1987.

( 9) H. Fujimoto, Y. Hori, and A. Kawamura: “Perfect Tracking Control MethodBased on Multirate Feedforward Control”, T. SICE, Vol.36, No.9, pp766–772, 2000 (in Japanese).藤本博志・堀洋一・河村篤男:「マルチレートフィードフォワード制

御を用いた完全追従制御法」,計測自動制御学会論文集, Vol.36, Vo.9,pp.766–772, 2000.

(10) M. Tomizuka: “Zero Phase Error Tracking Algorithm for Digital Con-trol”, Trans. ASME, Jounal of Dynamic Systems, Mesurement, and Control,Vol.109, pp.65–68, 1987.

(11) K. Fukushima, H. Fujimoto and S. Nakagawa: “Short-Span Seeking Controlof Hard Disk Drive with Vibration Suppression PTC”, T.IEEJapan, Vol.126-D, No. 6, pp.706–712, 2006(in Japanese).福島啓介・藤本博志・中川真介:「制振 PTCによる磁気ディスク装置のショートスパンシーク制御」,電学論 D, Vol.126, No.6, pp.706–712,2006.

武 井 大 輔 (学生員) 1989 年 2 月 9 日生。2012 年 3 月東

北大学情報知能システム総合学科卒業。同年 4月

東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネル

ギー工学専攻博士課程前期 (修士課程)に進学。昇

圧コンバータの制御に関する研究に従事。

藤 本 博 志 (上級会員) 1974年 2月 3日生。2001年東京大

学大学院工学系研究科電気工学専攻博士課程修了。

博士(工学)。同年長岡技術科学大学工学部電気

系助手。2002年~2003年,米国 Purdue大学工学

部機械工学科客員研究員。2004 年横浜国立大学

大学院工学研究院講師。2005 年同助教授,2007

年同准教授。2010 年東京大学大学院准教授。制

御工学,モーションコントロール,マルチレート

制御,ナノスケールサーボ,電気自動車の運動制御,モータとイン

バータの高性能制御,ビジュアルサーボに関する研究に従事。2001年

および 2013 年,IEEE Trans. IE最優秀論文賞, 2010 年 Isao Takahashi

Power Electronics Award, 2010 年計測自動制御学会著述賞などを受賞。

IEEE上級会員,計測自動制御学会,日本ロボット学会,自動車技術会

各会員。

堀 洋 一 (フェロー) 1955年 7月 14日生。1978年東京大

学工学部電気工学科卒業,1983年同大学院博士課

程修了。助手,講師,助教授を経て,2000年 2月

電気工学科教授。2008年 4月より東京大学大学

院新領域創成科学研究科教授。この間,1991年~

1992 年,カリフォルニア大学バークレー校客員

研究員。専門は制御工学とその産業応用,特に,

モーションコントロール,メカトロニクス,電気

自動車などの分野への応用研究。電気学会産業応用部門元部門長,自

動車技術会技術担当理事,日本能率協会モータ技術シンポジウム委員

長,キャパシタフォーラム会長などを勤めている。IEEE Fellow,自動

車技術会,計測自動制御学会,システム制御情報学会,日本ロボット

学会,日本機械学会,パワーエレクトロニクス学会などの会員。1993

年,2001年および 2013 年,IEEE Trans. on Industrial Electronics最優

秀論文賞,2010年産業応用部門高憲章,2011年電気学会業績賞など

を受賞。

10 IEEJ Trans. IA, Vol.135, No.1, 2015