最新スマートフォンの ims...

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アンリツテクニカル No. 90 Mar. 2015 (1) 最新スマートフォンの IMS サービステスト技術 1 まえがき 近年の移動通信端末市場では,先進機能を搭載したスマート フォンと新興国へ向けた普及価格帯のスマートフォンの 2 種類のト レンド化,また,ウェアラブル端末や M2M(Machine to Machine) 向け車載モジュールなどの多様化も推し進められ,端末数は世界 規模で拡大の一途をたどっている。その結果,移動通信ネットワー ク側のキャパシティ拡張や利用の効率化が課題となっている。一方 LTE(Long Term Evolution)の普及により,VoLTE(Voice over LTE) による音声サービスがはじまりつつある。VoLTE の導入に よって,これまで回線交換網上で提供されていた音声サービスをパ ケット交換網上のサービスに移行できるため,ネットワークリソースの 効率化を推進することができる。さらに VoLTE の基盤技術となる IMS(Internet protocol Multimedia Subsystem)サービスでは, プレゼンスやチャット,ファイル転送など,音声サービス以外のマル チメディアサービスを可能とする RCS(Rich Communication Suite) のような,付加価値サービスの導入が計画されている。こう いった状況より,携帯端末から接続するサービスに関しても All IP でのサービスが目前となっていることは明らかである。このように大 きな変革期にある移動通信サービスにおいて,IMS サービスの品 質確保にはさまざまな課題が存在する。 2 IMS サービスの品質確保に向けた課題 2.1 サービスの多様化 IMS サービスは従来のインターネット電話で使用されている VoIP(Voice over IP)技術を利用する。VoIP ではインターネット通信技 術の標準化団体による RFC を参照しているため,そのテスト環境につ いても P2P(Peer to Peer)もしくはクライアントサーバの構築のみで確 立することが可能であった。しかし,IMS サービスを提供する携帯端末 のように移動通信を行う場合,この RFC を基本に,より移動技術に着 目した視点での評価が必要になることから,VoLTE つまり over LTE テスト環境が望まれている。例えば,単純な音声品質評価だけでなく Web ブラウジング中の音声通話,緊急呼コール時の終端技術,ローミ ング技術,SRVCC(Single Radio Voice Call Continuity)のような既 設の 3G 網とのシームレスなサービス利用が着目される。 2.2 仕様の多様化 主にスマートフォンで展開している IMS サービスは,3GPPGSMARFCOMA などさまざまな規格を参照し,多くの機能を 実現している。また,オペレータや端末ベンダごとに対応しているプ ロトコルメッセージの内容が異なり,さまざまなテスト環境や条件が 必要とされる。品質評価をする際には,多くの分野の知識を習得す る必要があり,統合的なテスト環境の構築を困難にしている。 2.3 求められる高品質な IMS サービス All IP 化に伴い,すてのサービスがパケット交換網で提供され る。例えば,インターネット上の Web ブラウジング,音声通話や Video 通話,ファイルの転送,といったさまざまなサービスを合的 に利用することが可能となる。しかし,個々のサービスに対して適切 な品質が管理できなかった場合,音声通話や Video 通話において こえなかったり,途れたりすることが発生する可能がある。 これらの品質確保のため QoS(Quality of Service)技術が定義れており,この QoS 技術の評価も要な課題となる。 3 品質確保への要求 3.1 サービスの多様化 的な IMS Regist シーケンスを1 す。VoLTE はイン ターネット通信技術をベースにした VoIP の拡張のため,従来の LTE 線シグリング部(1(上)で確立したパケット交換網 上での SIP シグリング部(1(下)から構される。 これらのシグリングを評価するためには,LTE 線シグリン グと SIP シグリングを時に実現できるテスト環境がめられる。 最新スマートフォンの IMS サービステスト技術 IMS Services Test Technorogy for the leading-edge Smartphone 佐藤 Tsuyoshi Sato松山泰之 Yasuyuki Matsuyama後藤拓磨 Takuma Goto 旨] 移動通信ネットワークにおいて,All IP 化に向けた基技術として IMS 用され,今後 VoLTE 導入拡大時 線アクセス方存しないシームレスなサービス提供,キャリア携したサービスの提供,さらには QoS 制御技術とみ合わせたネットワークリソースの効率利用とサービス品質向上の相互実現などが期され ている。MD8475A シグリングテスタでは,これら IMS サービスにて目される点にフォースし,移動通信 サービス向けの試験ソリューシンの一環として,IMS サービス試験機能を開した。 8

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アンリツテクニカル No. 90 Mar. 2015 (1) 最新スマートフォンの IMS サービステスト技術

1 まえがき

近年の移動通信端末市場では,先進機能を搭載したスマート

フォンと新興国へ向けた普及価格帯のスマートフォンの 2 種類のト

レンド化,また,ウェアラブル端末や M2M(Machine to Machine)

向け車載モジュールなどの多様化も推し進められ,端末数は世界

規模で拡大の一途をたどっている。その結果,移動通信ネットワー

ク側のキャパシティ拡張や利用の効率化が課題となっている。一方

で LTE(Long Term Evolution)の普及により,VoLTE(Voice over

LTE)による音声サービスがはじまりつつある。VoLTE の導入に

よって,これまで回線交換網上で提供されていた音声サービスをパ

ケット交換網上のサービスに移行できるため,ネットワークリソースの

効率化を推進することができる。さらに VoLTE の基盤技術となる

IMS(Internet protocol Multimedia Subsystem)サービスでは,

プレゼンスやチャット,ファイル転送など,音声サービス以外のマル

チメディアサービスを可能とする RCS(Rich Communication

Suite)のような,付加価値サービスの導入が計画されている。こう

いった状況より,携帯端末から接続するサービスに関しても All IP

でのサービスが目前となっていることは明らかである。このように大

きな変革期にある移動通信サービスにおいて,IMS サービスの品

質確保にはさまざまな課題が存在する。

2 IMS サービスの品質確保に向けた課題

2.1 サービスの多様化

IMS サービスは従来のインターネット電話で使用されている

VoIP(Voice over IP)技術を利用する。VoIPではインターネット通信技

術の標準化団体による RFC を参照しているため,そのテスト環境につ

いても P2P(Peer to Peer)もしくはクライアントサーバの構築のみで確

立することが可能であった。しかし,IMSサービスを提供する携帯端末

のように移動通信を行う場合,この RFC を基本に,より移動技術に着

目した視点での評価が必要になることから,VoLTEつまりover LTEの

テスト環境が望まれている。例えば,単純な音声品質評価だけでなく

Web ブラウジング中の音声通話,緊急呼コール時の終端技術,ローミ

ング技術,SRVCC(Single Radio Voice Call Continuity)のような既

設の 3G網とのシームレスなサービス利用が着目される。

2.2 仕様の多様化

主にスマートフォンで展開している IMS サービスは,3GPP,

GSMA,RFC,OMA などさまざまな規格を参照し,多くの機能を

実現している。また,オペレータや端末ベンダごとに対応しているプ

ロトコルメッセージの内容が異なり,さまざまなテスト環境や条件が

必要とされる。品質評価をする際には,多くの分野の知識を習得す

る必要があり,統合的なテスト環境の構築を困難にしている。

2.3 求められる高品質な IMS サービス

All IP化に伴い,すべてのサービスがパケット交換網で提供され

る。例えば,インターネット上の Web ブラウジング,音声通話や

Video 通話,ファイルの転送,といったさまざまなサービスを複合的

に利用することが可能となる。しかし,個々のサービスに対して適切

な品質が管理できなかった場合,音声通話や Video通話において

良く聞こえなかったり,途切れたりすることが発生する可能性がある。

これらの品質確保のため QoS(Quality of Service)技術が定義さ

れており,この QoS 技術の評価も重要な課題となる。

3 品質確保への要求

3.1 サービスの多様化

一般的な IMS Regist シーケンスを図 1 に示す。VoLTEはイン

ターネット通信技術をベースにした VoIP の拡張のため,従来の

LTE 無線シグナリング部(図 1(上))で確立したパケット交換網

上での SIP シグナリング部(図 1(下))から構成される。

これらのシグナリングを評価するためには,LTE 無線シグナリン

グと SIP シグナリングを同時に実現できるテスト環境が求められる。

最新スマートフォンの IMS サービステスト技術

IMS Services Test Technorogy for the leading-edge Smartphone

佐藤 剛 Tsuyoshi Sato,松山泰之 Yasuyuki Matsuyama,後藤拓磨 Takuma Goto

[要 旨] 移動通信ネットワークにおいて,All IP化に向けた基礎技術として IMSが採用され,今後 VoLTE導入拡大時

の無線アクセス方式に依存しないシームレスなサービス提供,キャリア間で連携したサービスの提供,さらには

QoS 制御技術と組み合わせたネットワークリソースの効率利用とサービス品質向上の相互実現などが期待され

ている。MD8475A シグナリングテスタでは,これら IMS サービスにて注目される点にフォーカスし,移動通信

サービス向けの試験ソリューションの一環として,IMS サービス試験機能を開発した。

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アンリツテクニカル No. 90 Mar. 2015 (2) 最新スマートフォンの IMS サービステスト技術

図 1 IMS Regist

(P-CSCF Discovery(上),SIP シグナリング(下))

また,SRVCC の評価を実現する上では,図 2 のように LTE,

W-CMDA,EPC,CS,IMS の複合的な構成を提供する必要がある。

図 2 SRVCC Architecture

3.2 仕様の多様化

VoLTE の評価を行う上で,評価用のシナリオを作成するには,

多くの規格情報やオペレータ仕様を把握する必要があり,シナリオ

作成に多くの労力を必要とする。SIP シグナリング部の評価を行う

場合は,LTE 無線シグナリング部においてステートマシンとして動

作するテスト環境を提供する必要がある。また,音声品質を評価す

る場合は,SIP シグナリング部,LTE 無線シグナリング部共に簡易

的なパラメータ設定で VoLTE 接続できる環境を提供し,テスト環境

を容易に実現することが望まれる。

また,音声通話やパケット接続状態の把握において,各シグナリン

グのプロトコルメッセージを確認するにも規格の把握が必要なため,評

価の対象としている部分を直感的に把握できる画面表示が望まれる。

3.3 求められる高品質な IMS サービス

音声サービスを利用する際の SIP シグナリングおよび音声デー

タ通信はリアルタイム性を要求されるため,Web ブラウジングや

FTP転送のような従来のパケット通信サービスと比べて優先度が高

くなるべきであり,QoS 技術に準じたベアラ管理が重要なポイントと

なる。LTE での QoS は QCI(QoS Class Identifier)によって管理

されており,例えばインターネット用の APN を利用する際には

QCI=9(数値によりパケット通信の優先度が定義されている。表 1

参照),IMS 用の APN に接続する際には QCI=5 といったように,

ネットワークは端末が要求するサービスに沿った default EPS

bearer を確立する。SIP シグナリング用の無線ベアラの確立により,

IMS/VoLTE クライアントから音声サービスを発呼すると図 3 のよう

な IMS セッションプロシージャが行われ音声データ用のベアラを確

立する。音声ベアラは QCI=1,つまり最優先度を持つベアラとして

SIP シグナリング用の default EPS beaer に dedicated EPS

bearer としてリンクされる。

これらの QoS に関する試験条件を簡易に設定/表示できるテス

ト環境を提供する必要がある。

表 1 QoS 一覧

QCIResource

Type Priority level

Packet Delay

Budget

Packet Error Loss

Rate Example Services

1

GBR

2 100 ms 10−2 Conversational Voice

2 4 150 ms 10−3 Conversational Video(Live Streaming)

3 3 50 ms 10−3 Real Time Gaming

4 5 300 ms 10−6 Non-Conversational Video (Buffered Streaming)

5

Non-GBR

1 100 ms 10−6 IMS Signalling

6 6 300 ms 10−6

Video (Buffered Streaming)

TCP-based (e.g., www, e-mail, chat, ftp, p2p file shar-ing, progressive video, etc.)

7 7 100 ms 10−3

Voice, Video (Live Streaming)

Interactive Gaming

8 8

300 ms 10−6

Video (Buffered Streaming)

TCP-based (e.g., www, e-mail, chat, ftp, p2p file shar-ing, progressive video, etc.)

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アンリツテクニカル No. 90 Mar. 2015 (3) 最新スマートフォンの IMS サービステスト技術

図 3 Mobile origination procedure

4 MD8475A の取り組み

MD8475A シグナリングテスタは,移動体端末向けのテスト環境

を提供する基地局シミュレータであり,LTE や W-CDMA,

TD-SCDMA,GSM,CDMA2000 などのマルチ通信方式に対応

している。MD8475A 上で IMS サービスを組み合わせることで

LTE をはじめとするマルチシステム携帯端末の試験,特にユーザ

の実使用に沿ったセル間移動時のサービスや通信機能の品質を

課題とするテスト環境を容易に構築できるように,SmartStudio と

いう試験アプリケーションを提供している。

図 4 MD8475A シグナリングテスタ

図 5 SmartStudio のメイン画面

4.1 サービスの多様化

SmartStudio はシグナリングテスタ単体で完結した IMS ネット

ワーク環境を提供する。そのため,図 6 に示すようなセル規制や移

動中の通信をシミュレートするための基地局送信出力の時間変化

を GUI 上で設定することにより,実ネットワークでは評価が困難で

ある準正常系,異常系の試験や,実ネットワークでの試験が困難な

緊急呼試験,無線環境の変化によるセル間移動試験,もしくは対

向ユーザの外的要因に起因する SRVCC のようなモビリティ試験を

手 軽 に 行 う こ と が で き る 。 ま た , 最 先 端 の 通 信 方 式 で あ る

LTE-Advanced で導入された Carrier Aggregation 下での

VoLTE のテスト環境構築も可能となる。

図 6 SmartStudio を用いたセル規制時のモビリティ試験

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アンリツテクニカル No. 90 Mar. 2015 (4) 最新スマートフォンの IMS サービステスト技術

SmartStudio でのモビリティ試験は IMS Services 画面(図 7)

で試験端末の接続状態を確認しながら SmartStudio のハンドオー

バ操作を行う。IMS サービス状況に応じて通常の SRVCC,通話状

態になる前での a-SRVCC,緊急呼接続中での SRVCC といった実

使用場面をイメージした特定シーケンスの確認を可能とした。

図 7 SmartStudio の IMS Services 画面

4.2 仕様の多様化

SmartStudio は簡易的なパラメータ設定で容易にテスト環境を

構築することができるステートマシンベースのアプリケーションを実

現している。3.2 で述べたように各規格情報やオペレータのパラ

メータ仕様に基づいて VoLTE 評価シナリオを作成するには多くの

時間と労力を必要とするが,SmartStudio が提供する LTE や

IMS 関連のパラメータを変更するだけで評価したい環境構築がで

きる。例えば,サービス品質のひとつの要素である VoLTE 通話時

の電池の持ち時間の評価では,安定した通話状態が続くような定

常時の通話試験だけでなく,走行試験のような複雑なシーケンスパ

ターンのシミュレーション環境を構築しようとする場合に応用できる。

走行試験での複数セル間を移動する不安定な通話状態を実網か

ら取得した統計データを用いてモデル化し,Multiple PDN を

ベースとした定期的なモビリティ動作を発生させるなど,無線ベアラ

と IMS サービスのステートを組み合わせることで容易に実現可能と

した。SmartStudio はステートマシンである特長を生かしてこのよう

な複雑な自動試験系の構築を可能とするため,モデル化したシミュ

レーションパターンを増やすことで,都市部の市街地や地方都市な

どを走行中の消費電流測定のような測定環境に左右されやすく再

現性の困難な試験への応用も検討できる。

図 8 IMS Emergency Call

実使用を想定したシミュレータの使用が有効な例として,

SIM/UIM が無効な場合の緊急呼や Limited Service 状態時の

緊急呼がある。SmartStudio は Attach 時に国や地域ごとに異な

る Emergency Category および Emergency Number をリストに

追加登録可能である。また,携帯端末が SIM/UIM を認識せず認

証を行うことができない場合に,自動的に認証シーケンスをスキッ

プして接続するシーケンスを追加している。特別なカテゴライズの

SIM/UIM や実網ではテストが困難な Emergency Number と

[Police] , [Ambulance] , [Fire Brigade] , [Marine Guard] ,

[Mountain Rescue],拡張可能な Spare ビットなどの Category を

組み合わせたテスト環境の構築を可能とした。

図 9 Emergency Number List

また,MD8475A を 2 台使用し,それぞれの MD8475A で

VoLTE シミュレーション環境を構築することで,2台の IMS 端末を

エンドツーエンドで接続可能とした。異なるオペレータ間で連携し

て移動端末に統一化されたサービスを提供することは IMS サービ

スの目的の一つであるため,今後増えるであろうオペレータ間での

相互運用を想定した場合の試験や,フィールドで発生した問題の

再現検証,問題検出・解析などに有効な手段となりうる。

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アンリツテクニカル No. 90 Mar. 2015 (5) 最新スマートフォンの IMS サービステスト技術

図 10 2台対向試験

SmartStudio が提供している IMS サービス群と試験機能を以

下に示す。

表 2 SmartStudio IMSサービス群

サーバ サービス概要

CSCF(Call Session Control Funciton)

VoLTEや SMS over IMS試験を行うための標準的なサーバ機能に加え,音声データを

ループバックする機能を備える。 IPsecにも対応。

DHCPv6(Dynamic Host Configuration Protocol v6)

ネットワークに参加するノードに IPv6アドレスの割り当てや,DNS/SIPサーバアドレスの通知を行う。

DNS(Domain Name Server)

DNSキャッシュサーバとして動作する。

NDP(Neighbor Dis-covery Protocol)

RS(Router Solicitation)に対してRA(Router Advertisement)を送信する機能や,周期的に RAを送信する機能を備える。

NTP(Network Time Protocol)

NTP リクエストに対して時刻情報を送信し,端末とMD8475Aの時刻を同期させる。

PSAP(Public Safety Answering Point)

IMS Emergency試験を行うための緊急応答機関(PSAP)を模擬するための UA機能と音声データをループバックする機能を備える。

XCAP(XML configu-ration access protocol)

XML形式のファイルデータ(XCAP ドキュメント)の更新,参照,削除などの操作が行える。

4.3 求められる高品質な IMS サービス

SmartStudio は移動端末ユーザの実際の操作,すなわち Web

ブラウジングや音声サービスを利用する際に複数のベアラ起動が

要求されるような場面を想定して,PDN 情報一覧とEPS bearer起

動画面を一画面上に配置し,そこで特長的なサービスパラメータを

管理している。

図 11 PDN情報一覧

また,SmartStuido では,図 12 に示す画面で,サービスのパ

ケット通信条件やそのサービスのQoS設定を設定可能とする。これ

により,さまざまなQoSを制御したサービスの品質評価や通信状態

を評価可能とする。

図 12 Serviceパラメータ設定(上)

TFTパラメータ設定(下)

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アンリツテクニカル No. 90 Mar. 2015 (6) 最新スマートフォンの IMS サービステスト技術

5 むすび

サービスや仕様の多様化が進む IMS サービスのテスト技術とし

て,品質課題に着目した試験が可能となった。また,移動体通信と

しての特色となるモビリティ試験,緊急呼試験といった観点との組

み合わせや,IMS サービスにおいて重要性の高いオペレータ間で

の相互運用を考慮した試験ソリューションを実現した。

IMS サービスはさらなるマルチメディアサービスが拡張できるよう

考慮されているため,今後より効率化が求められる All IP 化の流れ

とともにさまざまな試験ニーズや技術課題が生じることが想定される。

スマートフォンに代表される携帯端末の技術課題解決と品質向上

に寄与できるよう,市場動向を捉えつつ,ソリューションを提供でき

るよう取り組んでいく。

参考文献

1) 田中,松山,後藤:

“移動体通信端末の試験装置及び試験方法”,

特開 2013-009254(2013.1)

執筆者

佐 藤 剛

R&D統轄本部

商品開発本部

第 2商品開発部

松 山 泰 之

R&D統轄本部

商品開発本部

第 2商品開発部

後 藤 拓 磨

アンリツエンジニアリング㈱

第一事業本部

モバイルシステム部

公知

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