乳幼児期における抑制機能の発達とその神経基盤...について説明する.抑制機能を測定する代表的な課題は,ストループ課題(stroop,...
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乳幼児期における抑制機能の発達とその神経基盤
森口佑介 1), 2)
1) 上越教育大学大学院学校教育研究科, 2) 科学技術振興機構さきがけ
要旨
抑制機能とは,当該の状況で優位な行動を意図的に抑止する能力のことを指す。本論文
では,抑制機能の初期発達とその神経基盤について,最新の研究を参照しながらレビュー
する。まず,抑制機能とはいかなるものなのか,発達心理学において抑制機能がどのよう
に定義されるかについて紹介した後に,乳児期・幼児期それぞれにおける抑制機能の発達
に関する心理学的研究について,その測定手法を中心に概観する。次に,抑制機能の発達
の神経基盤に関する研究を紹介する。特に,乳児期については前頭前野の成熟との関連に
ついて,幼児期については最新のニューロイメージング研究を参照にしながら議論をする。
最後に,抑制機能の初期発達に関する研究の問題点に触れ,この研究領域の今後の方向性
を示す。
1. はじめに
ブレーキがない自動車を想像してみよう.アクセルを踏むことで自動車は発進するし,
加速もできる.何の障害物もない,長く続く直線道路では問題は生じないだろう.しかし,
迷宮のように入り組んだ道路を持ち,周りには他の自動車で溢れる都市部ではそうはいか
ない.ブレーキがなければ割り込んできた自動車との衝突を回避できないし,進路変更も
難しくなる.同様に,もし我々の行動にブレーキがなければ,他者との衝突は避けられな
いし,状況に応じて行動を変化させることもできないであろう.このようなヒトの行動に
おけるブレーキを,抑制機能(inhibition, inhibitory control)という.抑制機能は,いつどの
ように発達するのだろうか.また,いかなる神経基盤にその発達は支えられているのだろ
うか.本論文では,このような問題についての最新の知見を紹介する.
2.抑制機能とは
2―1 抑制機能
一般的に,抑制機能とは,当該の状況で優位な行動を意図的に抑止する能力と定義され
る.例えば,いつもは右に曲がる道で,「右に曲がる」という行動を抑止し,左に曲がるこ
とに必要とされる能力である.抑制機能と関わる認知心理学的なモデルとしては,Shallice
らの SAS(Supervisory Attentional System)モデルがあげられる[44].このモデルは注意
に関するモデルであり,必ずしも抑制機能を説明するモデルではないが,概念的には近い
と考えられるので簡潔に紹介する.このモデルは,行動に関わるスキーマがいかに選択さ
れるかを 2つのレベルから説明する.スキーマは,様々な入力によって引き起こされるが,
特に Shalliceらは,知覚的な入力の重要性を強調している.つまり,外的対象などを知覚
することによりスキーマが惹起するということである.現実の世界では,様々な知覚から,
様々なスキーマが活性化するが,実際に行動に反映させられるスキーマは 1つである.
Shalliceらによれば,ここに,2つのレベルの選択過程が潜むという.1つは,コンテンシ
ョンスケジューリング(contention scheduling)と呼ばれるもので,複数のスキーマが活性化
した際(1つのスキーマが,顔を右に向ける,もう 1つのスキーマは,顔を左に向けるなど
の場合),それらのスキーマは互いに競合し,抑制しあい,最終的に1つのスキーマのみが
行動として表出されるという.これは受動的な選択過程であり,当該の状況で優位な行動
が産出されるということである.もう 1つのレベルが SASと呼ばれる能動的・自律的な過
程であり,抑制機能の概念に近い.この SASにより,我々はあるスキーマを意識的に選択
できるという.例えば,スキーマ Aとスキーマ Bが混在する状況で,スキーマ Aが当該
の状況に適切だが,過去の経験からスキーマ B が惹起されやすいとする.この際,能動的
にスキーマ Aを選ぶ過程に SASが関わっているとされる.
抑制機能は認知心理学的にこのように説明されるが,次に実際の研究で使用される課題
について説明する.抑制機能を測定する代表的な課題は,ストループ課題(Stroop, 1935)
である(図 1a)[51].この課題では,参加者は,書かれている文字の色を答えるように教示
される.文字の意味が,文字の色と関係の無い場合(中立文字),参加者は容易に文字の色
を答えることができる.しかしながら,文字の意味がその色と関係あり,しかも異なる場
合(不一致文字),参加者は困難を示す.例えば,赤色の「あお」という文字,緑色の「き
いろ」という文字の色を答えるような場合である.これは,文字の意味が,文字の色を答
えることを阻害するためであり,参加者は文字の意味を答える傾向(優位な行動)を抑制
しなければならない.
ストループ課題と並んでよく用いられる課題が,Go/Nogo課題やストップシグナル課題
である[1][34].ストップシグナル課題では,ある刺激が提示されたときに,参加者は優位な
反応を抑制しなければならない.例えば,まず,参加者は 24の語を提示され,キー押しで
その語を生物か非生物に分類させられる.ここで,参加者は「分類する」という優位な反
応を形成する.次の段階では,同様に分類するように求められるのだが,25%程度の試行
において,刺激がビープ音を伴う.この試行では,参加者は分類(優位な行動)してはな
らない.この試行において,キー押しを抑制できるかどうかを検討する.
2―2 発達心理学における抑制機能
近年の発達心理学において,抑制機能の発達は注目されている研究領域の 1つである.
その理由としては,抑制機能の発達が社会性の発達と密接に関連していることや,抑制機
能の発達に問題を抱える場合,様々な場面で支障が出ることが明らかになりつつあること
などが挙げられる(詳細は,森口(2008) [38]などを参照).
現在の発達心理学では,抑制機能をいくつかのサブカテゴリに分ける試みを行っている
(概略は表1参照).成人の認知心理学的研究[14]と発達心理学研究ではその分類が異なるた
め,本論文では後者のみ紹介する.Carlson & Moses(2001) [7] によると,抑制機能は,遅
延抑制と葛藤抑制に分類される.遅延抑制とは,課題内で,ある行動を抑制し,そのまま
待つことを可能にする能力のことを指す.例えば,実験者が子どもにプレゼントを持って
くるが,後で渡すと告げ,子どもがその間待てるかどうかを調べる満足の遅延(delay of
gratification)などがある[37].一方,葛藤抑制とは,課題内で競合する反応がある場合,優
位な反応を抑制し,劣位の反応を産出する能力を指す.ストループ課題などがこちらに含
まれる.遅延抑制ではある反応 Aをするか否かという点が検討されるのに対して,葛藤抑
制では反応 Aをするか反応 Bをするかという点が検討される.Garon, Bryson & Smith
(2008) [15]は,抑制機能を単純反応抑制(simple response inhibition)と複雑反応抑制
(complex response inhibition)に分類しているが,おおよそ前者は遅延抑制,後者は葛藤
抑制に該当する.
Zelazo & Müller (2002) [61]は,抑制機能を含む高次の認知的制御能力をクールとホットの 2
つに分類している.彼らによると,抽象的な問題解決などに関わる,より認知的な制御に
必要なものが「クール」であり,情動や動機などが関わる問題で必要とされる制御が「ホ
ット」である.具体的には,ストループ課題や Go/Nogo 課題などはよりクールな側面と関
わっており,満足の遅延やギャンブル課題[22]はホットな側面と関わっているとされている.
Carlson らは反応形態の違いから抑制機能を分類しており,Zelazo らは情動的な側面を
含むか否かという点で抑制機能を分類している.この 2 つの分類方法は概念的には異なる
ものの,ホットな抑制機能は課題の構造が単純であり,クールな抑制機能は課題の構造が
複雑であることも多い.また,クールな側面に比べると,ホットな側面に関する研究はあ
まり報告されていないのが現状である.これらのことから,以降ではクール・ホットとい
う区別には触れず,抑制機能を遅延抑制と葛藤抑制に分類して議論を進めていく.
3.乳幼児期における抑制機能の発達
本節では,乳幼児期における抑制機能の発達について概観する.遅延抑制・葛藤抑制の
分類は主に幼児期の研究を対象にしたものであり,乳児を対象にした研究ではこの分類は
あまり用いられないため,乳児期については抑制機能で表記を統一する.
3―1.乳児期における抑制機能の発達
抑制機能の発達研究は,幼児期以降が主であり[38] [39],乳児期における知見はそれほど多
くはない.しかし,近年乳児を対象にした研究が増えつつある.もっともよく用いられる
課題は,AB課題である[47] [54].この課題では,箱 Aに玩具を隠し,乳児に探索させる.こ
れを数試行繰り返すことで,箱 A を探すという行動が優位になる.その後に,乳児の目の
前で箱 Bに玩具を隠し,乳児に再び探索させる.Diamond(2002)[10]によると,この課題
を通過するためには,乳児はどこに玩具が隠されているかを数秒に亘り心の中で保持する
能力(ワーキングメモリ)と,以前に玩具を見つけた場所を探す傾向を抑制する能力(抑
制機能)が必要であるという.この課題で,9 ヶ月に達しない乳児は箱 A を探索し続けて
しまう.優位な行動を抑制することができないのである.12 ヶ月ころまでに正しい探索が
できるようになる.
また,対象探索課題もよく用いられる[8].この課題では,玩具が透明の箱の中に置かれる.
その箱は,前面は空いておらず,側面の一箇所のみが空いている.つまり,前面から玩具
を見ることはできるが,そのまま手を伸ばしても玩具は取れない.玩具が見える面と,手
を伸ばして玩具を取ることのできる面が異なるのである.この課題では,前面に手を伸ば
す傾向を抑制する能力が必要とされる.6-8ヶ月児は,前面に手を伸ばしてしまい,その傾
向を抑制できない.月齢を追うごとに,その傾向を抑制し,側面から玩具をとれるように
なる.そして,12 ヶ月ころまでには,ほとんど困難なくこの課題を通過することができる
という[9].これらの研究結果から,1歳前後に抑制機能の初期発達が見られることが示唆さ
れる.
近年は上記のような探索行動を指標とするものに加えて,乳児の視線行動を指標とする
研究がなされている.Kovács & Mehler (2009) [30]は,視線測定装置を用いて 7か月児の抑
制機能を検討した.この視線切り替え課題は 2 つの段階から構成された.第 1 段階では,
聴覚的な刺激(3音節無声音)が提示された数秒後に,画面上に存在する 2つの四角のうち
の一方にアニメーション(報酬)が提示された.つまり,音声が聞こえると一方に(例えば
右の四角)にアニメーションが出るということを乳児に学習させた.この後,第 2 段階で
は,乳児は新しい聴覚刺激が提示された.この新しい聴覚刺激を提示された後は,アニメ
ーションが第 1 段階とは異なる場所に提示された.つまり,第 1 段階の聴覚刺激後に右の
四角にアニメーションが出たとしたら,第 2 段階の聴覚刺激後には左の四角にアニメーシ
ョンが提示された.乳児は第 1 段階で,一方の四角(この場合,右)を向くことを学習し
ているため,第 2 段階では,その反応を抑制し,もう一方の四角を見なければならない.
実験の結果,第 2段階においても,7か月児は第 1段階でアニメーションが提示される側の
四角を見続けてしまった.
また,Holmboe et al. (2009) [20]は,サッケードを指標とした Freeze-Frame課題におい
て,9か月児の抑制機能を検討した.この課題では,乳児は画面中央にアニメーション(報
酬)を提示される.アニメーション提示中に,画面の周辺領域にディストラクタを提示さ
れる.もし乳児がディストラクラを注視すると,画面中央のアニメーションが動かなくな
る.乳児はアニメーションの続きが見たければ,ディストラクタを注視する行動を抑制し
なければならない.この実験には,アニメーションが魅力的な試行と退屈な試行が含まれ
ていたが,前者において乳児は有意にディストラクタを注視しなかった.また,実験の進
行とともに乳児はディストラクタを注視しなくなった.
これらの注視時間を指標とした研究では特定の月齢の乳児のみが対象となっているため,
どの時期に抑制機能の発達的変化が起こるかは明らかではない.しかしながら,このよう
な研究が進展すれば,探索行動よりも早期の抑制機能の発達を検討できる可能性がある.
3-2.幼児期における抑制機能の発達
幼児期における抑制機能の発達に関しては,多くの報告がある.まず,遅延抑制につい
ては,2歳ころまでに著しく発達するという報告がある.Kochanskaら[26] [27]は非常に単純
な”don’t”パラダイムで遅延抑制の発達を検討している.この研究では,養育者が乳幼児に
対して,彼らが望む行動(魅力的な玩具を触る)を抑止するように教示した.1歳前後の乳
児が玩具に注視した場合には,40%程度しか玩具を触ることを抑止できなかったのに対し
て,22か月児や 33か月児はほぼそれらの行動を抑止することができた.
遅延抑制は,満足の遅延でも測定される.上述のように,この課題では幼児は報酬を得
るために一定の時間待たなければならないが,Calrson(2005) [6]によれば,2 歳児の半数が
20 秒程度しか待てないのに対して,ほとんどの 3 歳児が 1 分待つことができ,4 歳児は 5
分程度待つことができるという.
葛藤抑制については,Go/Nogo 課題で測定される.幼児を対象とした研究では,Luria
のライト課題がその始まりと言える[35].この課題では,幼児はスクリーンが青いときには
ボールを掴み,スクリーンが赤いときにはボールを掴まないように教示される.3歳の子ど
もはスクリーンが赤いときにもボールを掴んでしまうが,5歳ころまでにこの課題を通過す
ることができるようになるという.また,近年では新しい Go/Nogo 課題が開発されている
[13] [33] [50].この課題では,いくつかの箱が用意され,その箱の蓋に,2種類の絵が描かれて
いる.子どもは,ある絵が描いてある箱には,報酬(ステッカーなど)が入っており,別
の絵が描いてある箱には報酬が入っていないことが告げられ,報酬が入っている箱のみ開
けるように教示される.その結果,年尐の子どもは全ての箱を開ける傾向があるが,5歳こ
ろまでに成績が向上し,報酬の入っていない箱を開ける傾向を抑制できるという.
ストループ課題を幼児向けに修正した課題も用いられている.まず,最も広く用いられ
ている課題は,昼・夜課題である(図 1B)[16] [49].この課題では,幼児は月を描いたカー
ドと太陽を書いたカードを提示される.幼児は,太陽のカードを提示されたら,「夜」,月
のカードを提示されたら,「昼」と反応するように教示される.太陽のカードでは「昼」,
月のカードでは「夜」と反応しやすいが,その傾向を抑制しなければならない.この課題
では,3歳から 5 歳にかけて反応の正答率が向上し,3.5 歳から 4.5歳にかけて反応潜時が
有意に減尐するという.但し,筆者の経験上,我が国ではこの課題はあまりうまくいかな
いことがある.昼・夜課題よりは,幼児は白いカードを提示されたら「黒」と,黒いカー
ドを提示されたら「白」というように求められる白・黒課題や同様の構造を持った赤・青
課題のほうが日本の幼児には適切のように思える[45] [49].この他にも,物体の名前と色を答
える際に,名前を答えるという優位な反応を抑制して色を答えさせるという色・物体スト
ループ課題[48]など様々な課題がある.結果は概ね一致しており,3歳の子どもは優位な反応
を抑制することが難しいが,5,6歳ころまでに成績が劇的に向上する.
また,Dimensional Change Card Sort課題(DCCS)も広く用いられている課題である
(図 2) [23] [42] [60].この課題が葛藤抑制を測定しているか否かについては議論があるが,本論
文でも重要な課題であるので紹介する.この課題では,色・形などの 2 つの属性を含むカ
ードを用いる.まず,「赤い星」と「青いコップ」のカードを用意し,これをターゲットと
する.参加児にこのターゲットとは色と形の組み合わせが異なる「青い星」と「赤いコッ
プ」を提示し,それらを分類するように求める.第 1段階では,2つの属性のうち1つのル
ール(例えば,色)で分類させ,第 2段階では,1つ目とは異なるルールで分類させる(例
えば,形).大半の 4・5歳児はこの課題に通過できるが,3歳児は第 2段階でも,最初のル
ールでカードを分類してしまう.例えば,第 1 段階で,色ルールを用いると,第 2 段階で
形ルールを用いるべきときにも,色ルールに固執してしまう.
このように幼児期の遅延抑制・葛藤抑制の発達に関する知見は近年急速に蓄積されつつ
ある.いずれも,3 歳から 4・5 歳ころにかけて著しい発達を見せることが明らかになって
いる.次節では,このような抑制機能の発達がいかなる神経基盤に支えられているかにつ
いて検討する.
4.乳幼児における抑制機能の神経基盤
近年のニューロイメージング研究から,成人の抑制機能の神経基盤は比較的明らかにな
りつつある.それらの研究によると,上述の Go/Nogo 課題において優位な反応を抑制する
際には,右の下前頭回を中心としたネットワークが強い活動を見せるという[1].また,スト
ループ課題においては,前部帯状回や前頭前野背外側部において強い活動が見られること
が報告されている[46] [62].そのため,本節では乳幼児の抑制機能が,前頭前野の成熟と関連
しているか否かについて検討する.
4-1. 乳児における抑制機能の神経基盤
乳児期における抑制機能の発達にかかわるニューロイメージング研究は,これまでほと
んど報告されていない.そのため,本節ではまず乳児期における前頭前野の発達に関連す
る知見を紹介し,その後に抑制機能の発達に関わる研究を紹介する.
前頭前野は,他の領域と比べても,最も成熟するのが遅い領域だと考えられている.例
えば,Golden(1981)[19]は,12歳から 15歳までは前頭前野は機能しておらず,24歳こ
ろになってようやく成熟すると主張している.この主張とは必ずしも時期は一致しないが,
神経生理学的な証拠も,前頭前野の成熟が遅いことを示してきた.例えば,前頭前野の髄
鞘形成は青年期まで続くし[57],前頭前野の新陳代謝および脳電位活動の変化は青年期まで
続く[31] [52].また,シナプスは,発達早期に互いに結合した後,不要なものが除去されてい
くというプロセスを辿るが,その時期が,成熟が早い視覚野に比べると,前頭前野は数年
遅いことが知られている[21].近年のMRI研究もこの結果を支持しており,前頭前野周辺領
域の灰白質の成熟には他の領域に比べて比較的長く時間がかかることが示されている[17]
[18].
もっとも,前頭前野の成熟が他の領域と比べると長い期間を要するのは確かだが,その
成熟は発達早期から始まっている.例えば,ヒトの前頭前野のⅢ層にある樹状突起は,生
後 7.5ヶ月から 12ヶ月にかけて著しく成長するという[28].このような変化は 1歳から 2歳
の間にかけてはあまり見られないが[10],2歳から 5歳にかけて,再び著しい成長が見られ
る[43].これらの知見を考慮すると,前頭前野は生後早期から青年期に至るまで長い期間を
かけて成熟することが示唆される。
乳児の抑制機能の神経基盤と密接に関わるのは,Diamondらによるアカゲザルを用いた
研究である.彼女達は, AB課題と前頭前野との関連を調べた. Diamond &
Goldman-Rakic(1989)[12]は,健常なアカゲザルと,両側の前頭前野背外側領域を除去し
たアカゲザルに AB課題を与えた.その結果,健常なサルはヒトの 12ヶ月児と同様に正し
く箱 Bを探索することが可能だったが,前頭前野を除去されたサルは,9ヶ月未満のヒト
乳児と同様に,箱 A を探索し続けてしまった.この結果からの類推になるが,ヒト乳児が
この課題を通過する際にも,前頭前野背外側部の活動が関与している可能性が示された.
同様に,前頭前野背外側部を除去されたサルは,対象探索課題の成績が下がることが報告
されている[9].さらに,前頭前野において重要な神経伝達物質であるドーパミンの脳内レ
ベルが,アカゲザルが対象探索課題などを通過する際に,増加するという報告もある[4] [5].
乳児の抑制機能を脳の機能的な側面から検討したものが近年いくつか報告されている.
Bell & Fox(1992)[3]は,脳波(EEG)を指標として,乳児を対象に,AB課題と前頭前野
の活動の関連を検討した.その結果,AB課題の成績と,前頭領域や頭頂領域の 6-9Hzの
EEGパワーが相関していることが示された.また,直接的に抑制機能を検討しているわけ
ではないが,Baird et al. (2002) [2]は,近赤外分光法(NIRS)を用いて,探索課題中の前頭
葉の活動を調べた.この研究では,乳児に玩具を与え遊ばせた後にその玩具を乳児から取
り上げ,布の下に隠した.隠した後の遅延時間中の乳児の脳活動を調べた.乳児は 2回実
験室を訪れており,隠された玩具を探索できなかった場合(1回目の訪問)とできた場合(2
回目の訪問)の脳活動の違いが検討された.その結果,正しく探索できた場合において,
前頭領域の活動が有意に高まったことが示された.但し,この実験は抑制機能というより
は,ワーキングメモリの研究といったほうがよいかもしれない.
このように,乳児の抑制機能の神経基盤と関わる研究は報告されているものの,直接的
に調べた研究はほとんど報告されていない.今後の研究の進展が待たれるところである.
4-2. 幼児における抑制機能の神経基盤
幼児の抑制機能の神経基盤に関する知見もこれまでほとんど報告されてこなかったが,
近年葛藤抑制に関わる研究が進みつつある.まず,Bellらが EEGを用いて検討を行ってい
る.Wolf & Bell(2004)[55]は,4歳児に昼・夜課題を含むストループ課題を 2つ与え,課
題中の EEGを計測し,課題を遂行していないときの EEG と比較した.その結果,前頭領
域において課題中に 6-9 Hzの EEGパワーが増加したことが示された.
また,筆者らは NIRS を用いてより直接的に幼児の葛藤抑制の神経基盤を検討した.以
下にその研究の概要を示す.
4-2-1.横断的検討
先述のとおり,DCCS 課題において,3 歳児は第 2 段階において第 1 段階で用いたルー
ルを使用し続けてしまう.4,5 歳児はそのような行動を抑制し,正しくカードを分類する
ことができる.このような幼児の振る舞いは,前頭葉損傷の患者の行動と類似している.
前頭葉損傷の患者は,Wisconsin Card Sorting Test(WCST)という DCCS同様にルールの
切り替えが求められる課題において,最初に用いたルールの使用を抑制することができな
い[36].これらの知見を考慮して,我々は DCCS課題の成績と前頭前野外側部の活動の活動
との間に関連があるという仮説を立て,その仮説を検討した.
まず,我々は横断的な研究を実施した[40].3歳児,5歳児,成人に研究に参加してもらい,
それぞれに DCCS 課題を与えた.1 つ目のルールを用いる第 1 段階と 2 つ目のルールを用
いる第 2 段階に加えて,3,5 歳児には白いカードを分類してもらうコントロール段階を設
け,コントロール段階と DCCS 課題中の脳活動を比較した.通常の NIRS研究では,参加
者が安静状態にしているレスト段階を設け,そのレスト段階と課題を実施している段階の
脳活動を比較する.しかしながら,研究対象が幼児であり安静状態を保つことが難しいと
考えられたため,幼児にはレスト段階の代わりにコントロール段階を与えた.成人のWCST
を用いたニューロイメージング研究を踏まえ[29],下前頭領域をターゲットとした.
行動レベルでは,5 歳児と成人は DCCS 課題をほぼ完ぺきに遂行した.3 歳児は,15 人
中 6 人がルールの切り替えに失敗した(表 2).脳活動レベルでは,5 歳児と成人はほぼ同じ
ような活動を示した.彼らは,第 1 段階においても第 2 段階においても,コントロール課
題(成人はレスト)に比べて,両側の下前頭領域を有意に活動させた(図 3).3 歳児は,全
体として,いずれの段階においても,ターゲット領域を有意に活動させなかった(図 4).
さらに我々は,3 歳児を DCCS 課題に通過するか否かで 2 つの群に分類し,通過した群
を通過群,通過しなかった群を固執群とした.そして,両群の脳活動にいかなる特徴があ
るかを検討した.その結果,通過群においては,第 1 段階・第 2 段階の両段階を通じて,
右の下前頭領域において有意な活動が認められた(図 5a).一方,固執群は,両側の下前頭
領域を活動させることがなかった(図 5b).むしろ,一部において有意に活動が低下してい
た.これらの研究結果から,右の下前頭領域の活動が,DCCS 課題の成績と関連している
ことが示唆された.しかしながら,その関連がいかなるものなのかは解釈が難しい.とり
わけ,本研究で見られた前頭領域の活動が,DCCS 課題におけるルールの抑制と関連して
いるかという点が問題になる.事実,我々が 3 歳児の通過群や 5 歳児において,第 1 段階
と第 2 段階における下前頭領域の活動を比較したところ,活動の強さに有意な差が認めら
れなかった.
この研究結果の 1 つの解釈は,下前頭領域の活動はルールの抑制ではなく,ルールの保
持に関連しているというものである.しかしながら,固執群の幼児は,第 2 段階には通過
できなかったものの,第 1 段階には通過できている.もし下前頭領域の活動がルールの保
持に関連しているのだとすると,彼らは第 1 段階においては下前頭領域の活動をさせるは
ずである.しかしながら,実際には固執群は第 1 段階においてもターゲット領域を活動さ
せていない.我々の解釈は,第 2 段階において正しくルールを抑制するためには,第 1 段
階において既にターゲット領域を活動させておかなければならないというものである.言
い換えると,第 1 段階と第 2 段階における持続的な右の下前頭領域の活動が,正しいルー
ルの抑制に寄与しているという解釈である.
また,3歳児の通過群と 5歳児・成人の脳活動の違いも興味深いところである.3歳児は
右の下前頭領域のみを活動させているが,5歳児は両側を活動させることでより効率よく課
題を遂行しているのかもしれない.
以上の 2つの点に関して,横断的な研究からはあまり強い結論を導くことができない.1
つ目の点については,固執群の幼児が課題を通過したときに同様に下前頭領域の持続的な
活動を示すか,2つ目の点に関しては,通過群の幼児が 4歳や 5歳になったときに 5歳児と
同様の脳活動を示すか,という点を検討する必要がある.そのため,我々は縦断的な検討
を実施した.
4-2-2.縦断的検討
DCCS 課題と下前頭領域の活動の関連をさらに検討するため,研究1に参加した 3 歳児
に約 1年後に再び研究に参加してもらった[41].使用した実験刺激以外の研究デザインは,3
歳時点(Time 1)と 4歳時点(Time 2)は同じであった.まず,行動レベルでは,3歳時点と比
べて,第 2段階の成績が有意に向上した.特に,固執群の幼児は,Time 2では全員 DCCS
課題を通過することができた(表 2).次に,脳活動レベルでは,全体として,Time 2にお
いては Time 1よりも下前頭領域に強い活動が見られた.Time 1においては下前頭領域に
有意な活動が見られなかったのに対して,Time 2においては,第 1段階において両側の下
前頭領域,第 2段階において左の下前頭領域において有意な活動が認められた.
次に,通過群と固執群の脳活動をそれぞれ検討した.通過群においては,Time 1では第
1段階・第 2段階ともに右の下前頭領域を有意に活動させたのに対して,Time 2では両側
の下前頭領域を有意に活動させた.この活動パタンは研究 1 の 5 歳児の結果と酷似してお
り,DCCS 課題においては,右の下前頭領域から両側の下前頭領域の活動へと発達すると
いう発達経路があるように思えた.しかしながら,話はそのように単純ではない(図 6).
固執群の幼児の脳活動を調べると,Time 2において左の下前頭領域を第 1段階においても
第 2 段階においても有意に活動させていたのである.つまり,早期から DCCS 課題に通過
した幼児たち(通過群)は右のターゲット領域を活動させたのに対して,比較的遅くにDCCS
課題に通過した幼児(固執群)は,左のターゲット領域を活動させたのである.
この結果から,研究1の最後で挙げた 2 つのポイントについて考察する.まず,第 1 段
階から第 2 段階にかけての下前頭領域の持続的な活動が DCCS 課題におけるルールの抑制
に重要であるという可能性は支持された.但し,「右の」下前頭領域という点は修正しなけ
ればならない.右か左のいずれかの下前頭領域の活動が,ルールの抑制や切り替えに重要
であるようだ.また,2つ目の,右のターゲット領域から両側へ発達するというモデルも部
分的には支持された.通過群の幼児にはこの発達経路はあてはまる.しかし,固執群の幼
児はこのような発達経路を描かないようである.彼らは,課題通過時に左の下前頭領域を
活動させた.このような脳活動の左右差が何を反映しているかは現時点では明らかではな
い.1つの可能性としては,課題通過の方略の違いを反映しているのかもしれない.つまり,
固執群の幼児は,早期から課題に通過できる通過群の幼児とは異なった方略(例えば言語
的方略)を用いて,DCCS課題に取り組んでいるのかもしれない.いずれにしても,DCCS
課題での葛藤抑制に関わる脳活動には個人差があり,発達経路にも個人差がある可能性が
示された.
5.まとめと展望
本論文では,乳幼児期における抑制機能の発達とその脳内機構に関する最新の知見につ
いて紹介してきた.全体として,以下のようにまとめることができる.まず,乳児につい
ては,心理学的研究・ニューロイメージング研究ともにまだまだ研究が十分ではない.こ
れらの根本的な原因は,乳児を対象にした課題が不足しているという点にあると思われる.
近年乳児の視線を指標とした課題が検討され始めているため,これらの課題の信頼性や妥
当性を十分検討したうえで,乳児期における抑制機能の発達について検討する必要がある
と考えられる.また,幼児期については心理学的な知見が十分であるにもかかわらず,ニ
ューロイメージング研究は始まったばかりである.幼児の脳計測は必ずしも容易ではない
が,NIRSや EEGなどの幼児にも適用しやすい脳計測手法を用いて,彼らの抑制機能の神
経基盤について調べていかなければならない.
また,今後は乳児期と幼児期の抑制機能の発達がいかに関連しているかについても検討
していく必要がある.これまでは,AB課題を中心とした乳児期の研究と幼児期の抑制機能
研究は比較的独立して行われてきた.その結果,乳児期と幼児期の連続性についてはほと
んど検討されていないし,1歳から 3歳ころまでの研究もあまり報告されていない.理論的
には,Zelazo の意識の発生モデルにおいて,これらの連続性や,乳児と幼児の抑制機能の
違いについての議論が行われてはいる[58].しかしながら,実証的な知見は不足しており,
むしろ,Wolf & Bell (2007) [56]の縦断的研究によると,8か月児の抑制機能課題(AB課題を
修正したもの)の成績は,その子らが 4 歳になったときの抑制機能課題(昼・夜課題)の成
績を予測しないという.今後は,脳活動を測定する研究を含めて,乳幼児期の抑制機能の
発達が本当に連続したものなのか否かについての実証的な検討を行う必要がある.そのた
めにも,乳児から幼児に至るまで適用範囲の広い課題を作成する必要があると思われる.
本論文でも紹介した視線計測装置を用いた課題などはその候補としてあげられるかもしれ
ない[20] [30] .
最後に,近年の抑制機能研究においてもっとも注目されている介入研究に触れておきた
い.Diamond らはヴィゴツキーの理論を背景にした[11],Lillard らは[32]モンテッソーリの
理論をもとにした認知的制御能力(抑制機能を含む)の訓練プログラムを開発している.
また,Klingberg ら [24] [25] [53]は注意欠陥多動性症候群の子どもなどを対象にしたプログラ
ムを開発し,その方法を定型発達の子どもにも応用している.これらの介入方法が抑制機
能の向上に一部有効であることが認められているが,長期的にどのような影響を持つのか
については十分な検討が行われていない.また,これらの方法が,本質的に抑制機能を向
上させているのか,単純に研究内で与えられた課題を解くための代替方略を与えているの
かも不明である[59].このような介入は,抑制機能の発達に困難を抱える子どもへの応用を
目的としたものであり,社会的な意義も大きい.だからこそ,安易にこれらの方法を取り
入れるのではなく,慎重かつ科学的に精査し,その妥当性を評価していく必要があると思
われる.
謝辞
本論文の草稿に適切なコメントをいただきました大神田麻子先生(日本学術振興会・神戸
大学),篠原郁子先生(愛知淑徳大学)に御礼を申し上げます。また,本論文で紹介した研
究の実施にあたりご指導・ご協力いただきました,開一夫先生(東京大学),松田剛先生(東
京大学),松中玲子様(東京大学)に心より感謝いたします。これらの研究は,日本学術振
興会特別研究員特別研究員奨励費および科学研究費補助金([代表:開一夫]および[代表:
森口佑介])の助成を受けて実施されました。
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表1. 本研究における乳幼児の抑制機能の枠組み
表 2
DCCS 課題の成績.課題に失敗した人数を記した.
図1. ストループ課題 a)成人向け,b)幼児向けの昼・夜課題
a)
b)
あお きいろ みどり
図 2 Dimensional Change Card Sort 課題
図 3. 5歳児の脳活動.番号は NIRSにおけるチャンネルを示す。国際 10/20法における F7, F8
に該当する領域が,本研究におけるターゲット領域(下前頭領域).
図 4. 3 歳児全体の脳活動. 番号は NIRS におけるチャンネルを示す。国際 10/20法における
F7, F8 に該当する領域が,本研究におけるターゲット領域(下前頭領域).
図 5. 3 歳児の脳活動. a)通過群, b)固執群. 番号は NIRS におけるチャンネルを示す。国際
10/20法における F7, F8 に該当する領域が,本研究におけるターゲット領域(下前頭領域).
図 6. Time 1から Time 2 にかけての脳活動領域の変化.赤い部分が有意に活動した領域.