日本学術会議シンポジウム 「植物を活かす」 ー植物を利用した … ·...
TRANSCRIPT
日本学術会議シンポジウム
「植物を活かす」 ー植物を利用したグリーンイノベーションに向けてー
植物コミュニティー・シンポジウム事務局日本学術会議植物分科会委員長
福田裕穂
資料1-1
1
報告日本学術会議シンポジウム
「植物を活かす」ー植物を利用したグリーンイノベーションに向けてー
2
日本学術会議シンポジウム 「植物を活かす」ー植物を利用したグリーンイノベーションに向けてー
•開催日:2010年5月29日(於:日本学術会議講堂)
•主催:日本学術会議•共催:日本植物学会・日本植物生理学会・日本植物細胞分子生物学会・日本育種学会・
日本生物工学会・日本光合成学会・日本作物学会・理研植物科学研究センター•後援:文部科学省・経済産業省・農林水産省
【主旨】
新成長戦略基本方針「グリーンイノベーション大国戦略」に植物科学を基盤とした研究開発とそ
のようよう展開は不可欠である。社会ニーズを捉え植物科学研究力を活かしたシーズを生み出していく
ための問題点を明確化し意識を共有するために、日本の植物科学コミュニティが一同に会し、企業サイド、
行政サイドと議論をする(企業サイド5名、アカデミアサイド5名による講演と行政サイドも加えたパネル討
論)
。同時に、公開でおこなうことにより、こうした運動に、異分野の人材や若手研究者を巻き込む。
高い植物基礎科学力 社会のニーズシーズ グリーンイノベーション
植物科学研究
素粒子・宇宙論
感染症免疫研究
ポストゲノム研究
食糧
CO2吸収太陽光
エネルギー
素材
環境
企業5名アカデミア5名
サイエンスマップ20063
産業界からの期待と指摘/アカデミアのシーズ
光合成効率改善や呼吸抑制などの機能解明
遺伝子組換え技術を活用した新
規エネルギー作物の開発研究
「環境浄化」と「金属リサイクル」に
資する開発研究
植物科学研究からの理論に裏付けられた品
種開発、栽培技術開発、光合成や糖代謝研
究、ゲノム情報の活用研究
食料生産 バイオマス・新素材生産 環境修復・資源回収
期待:
産業界からの指摘:
21世紀には人口増加、化石資源の減少、温暖化、環境汚染、水不足などの地球規模の問題はますます深
刻化する。欧米だけでなく中国、インドなどのアジア諸国やグローバル企業の植物科学、植物バイオテク
ノロジーへの投資と国際的な共同研究はますます加速される。→このままでは日本は取り残されかねない。
産業利用のためには既存の石油
由来の素材と同等もしくはそれ
以上の能力が必要
セルロース系バイオエタノールの
利用拡大には環境適合性、供給安
定性、経済性を満たすことが必須
他の作物へ横展開するため
に植物機能の普遍性と多様
性への理解が必要
アカデミア:メタボローム研究の進展
による成分評価の革新
葉での油生産増大に関
連する遺伝子の発見
カドミウム土壌修
復植物の作成
藻類などを用いたCO2固定可能の改善
4
花粉症緩和米の研究の場合
基礎研究
応用研究実用化商業化
知の探求として
の基礎研究
死の谷を越える応用を目指した
基礎研究(研究者の強い意志)
生研機構:新事業創出研究開発事業
アグリ・ヘルス実用化
研究促進プロジェクト
植物研究の成果の実用化を考える時、必ず超えなければいけないダーウィンの海=GMOの社会的認知の問題
ダーウィンの海に特化したプロジェクト
スギ花粉症治療を対象として、医薬品としての安定
生産技術の確立、医薬品の承認申請に必要な動物実
験等による有効性・安全性評価及び治験を実施
継続したファン
ディングの重要性
5
日本学術会議シンポジウム 「植物を活かす」ー植物を利用したグリーンイノベーションに向けてー
•来場者数:460名
「議論内容とまとめ」
•個々の学術研究を結んで社会に活きる応用研
究を進めるために最先端研究拠点ネットワーク
が必要
•異分野との融合研究を植物科学側から発信
•基礎研究から応用研究への展開における研究
者の意識改革の必要性
•次世代を担う若手研究者の育成
•良いシーズを選び出しニーズとマッチングさせ
るTLOの必要性
6
「植物機能活用による二酸化炭素資源化に指向した基礎研究」の推進アクションプラン
植物研究者コミュニティからの提言
植物科学によるグリーンイノベーション植物機能の活用による、二酸化炭素の資源化、バイオマス増産および地球環境の保全と修復の基盤技術
植物科学と異分野の連携・融合研究推進実用植物の栽培・分析を体系的に行う研究体制の強化
植物科学を積極的にアピールし、成果のもたらす利益について国民目線で説明遺伝子組換え技術について正確な情報を発信し、生物多様性の的確な保全を担保した研究活動を推進
最先端の研究拠点ネットワークにより世界から広く優秀な若手人材を集め、人材交流、知識循環を促進国際的な最先端研究環境を創出し、国内およびアジア諸国の次世代研究者を育成
世界レベルの技術基盤を有している大学・研究所を、オール・ジャパン体制の元、「植物科学」研究基盤を一層強化個々の研究基盤をネットワーク化し、コミュニティ全体の研究を加速遺伝子組換え植物の大規模野外試験の実施拠点の整備
(3)戦略的研究予算の重点投資の方向性
(4)社会とのコミュニケーション
(2)オール・ジャパンに整備された研究基盤
(5)人材の育成
(1)人的資源を最大限に活かすための体制整備
研究基盤を舞台に、「植物科学」コミュニティ内の研究ネットワークを構築農学系、工学系、産業界の研究者との異分野連携戦略、規制対応など産官学の共同システムの構築世界的連携(Global Plant Councilなど)の推進
温室効果ガスを効果的に削減するなど地球規模の環境問題を解決しつつ、我が国の産業や雇用の創出を図り経済成長を促
すため、自然エネルギー(太陽光)で二酸化炭素を吸収し有用物質に変換する植物機能の活用研究・開発が必要。「光合成効率の向上」「バイオマス・有用物質の効率的生産」「資源の回収と循環やバイオリファイナリー」の技術創出
に目標を絞り研究を推進。
7
参考資料
• 最先端研究基盤整備事業
「低炭素社会実現に向けた植物研究の推進のための基盤整備」
実施計画と運営体制に関して
• 「植物機能活用」による二酸化炭素資源化に指向した研究開発の推 進に関しての提案
8
◎環境の変化・食糧不足・バイオマス利用の需要により、植物科学研究に対する要求が多様化◎ネットワーク型の特色ある拠点の連携により、オールジャパン体制で植物科学研究の推進を総合的にアプローチ
■従来のモデル植物の知識を基にした植物解析基盤に、最先端の先端計測機器を整備することで、植物の未知機能を引出し、多様な植物の機能理解と利用に貢献。
■各拠点のネットワーク化を強化し、アジア植物計測の中枢になるとともに、各拠点で先導的研究を若手研究者が連携して推進。
低炭素社会
食糧問題解消
農水省等(森林総研、産総研等)
産業界化学産業・製紙産業
製紙会社、樹木育種機関①乾燥地・塩害地で生育可能な植物の開発、ポプラ・
ユーカリなど遺伝子組換樹木を海外圃場で育種②木質の理解により、バイオマスの生産性・分解性を
向上
製紙会社、樹木育種機関、バイオ産業
①光合成の炭素固定効率に関わる遺伝子の解明、及び改変
技術の開発によりCO2
固定量を増大
②資源化できる新規植物バイオマスの創出
バイオマス化学産業(バイオプラスチック・バイオ燃料)
①植物利用の新素材(バイオプラスチック)等のバイオ製
品の生産量向上②遺伝子の解明により植物でしか作れない有用化合物
(医薬品等)を生産
新素材・植物工場CO2
固定・資源化バイオマス増産
◎石油代替の植物バイオマスから化学製品原料、バイオプラスチック、バイオ燃料につなげる革新的バイオプロセスを確立
◎CO2
排出量削減に資するグリーンテクノロジー産業を創出
●既存の連携体制を基に、新たな連携プログラムと連携体制を強化
●基礎からイノベーションを目指す若手研究者の育成に貢献
●既存の連携体制を基に、新たな連携プログラムと連携体制を強化
●基礎からイノベーションを目指す若手研究者の育成に貢献
アジア連携中国(南京林業大)
マレーシア(マレーシア工科大)
遺伝子組換樹木を海外圃場で育種
■モデル植物(シロイヌナズナ)を用いて植物そのも
のの理解は深化
■しかし、植物共通機能の理解に留まっている。
■モデル植物(シロイヌナズナ)を用いて植物そのものの理解は深化
■しかし、植物共通機能の理解に留まっている。
低炭素社会実現に向けた植物研究の推進のための基盤整備
現在の課題
■シロイヌナズナの理解から、多様な植物の機能理解へ
■多様な植物の実際の育成環境への実用化、CO
2
の固定
化・資源化の促進を目指す
■シロイヌナズナの理解から、多様な植物の機能理解へ■多様な植物の実際の育成環境への実用化、CO2
の固定化・資源化の促進を目指す
新たな展開
■我が国の植物科学研究は、世界トップレベル。高い潜在能力を有する拠点が存在。
(例)国際的な標準モデル植物である「シロイヌナズナ」の全ゲノムデータの解析に成功(日本は25%を解読)
日本の主導で、米の生育改良に役立つイネの全ゲノム解読を完了
理化学研究所篠崎一雄氏は、過去10年の植物科学研究分野の論文引用数で世界第1位
■我が国の植物科学研究は、世界トップレベル。高い潜在能力を有する拠点が存在。
(例)国際的な標準モデル植物である「シロイヌナズナ」の全ゲノムデータの解析に成功(日本は25%を解読)日本の主導で、米の生育改良に役立つイネの全ゲノム解読を完了理化学研究所篠崎一雄氏は、過去10年の植物科学研究分野の論文引用数で世界第1位
現 状
地球環境保全
ストレス応答研究拠点(岡山大)
形質転換植物研究拠点(筑波大)
西日本拠点(奈良先端大・京大)植物タンパク質の網羅的機能解析*タンパク質高性能解析システム
610百万円
中部日本拠点(名古屋大・基生研)植物の画像解析
*光合成特性解析用イメージング解析システム
280百万円
東日本拠点(理研・東大・東北大)植物代謝物の網羅的解析(メタボローム等)*ワイドターゲット植物メタボロー
ムMS分析システム
460百万円
既存のオールジャパンの連携体制
基盤の相互利用により基礎から応用まで一気通貫で農作物に成果を展開
植物の多様な未知機能の抽出
が可能な先端基盤を整備
網羅性・精密性・計測速度の
次世代化を図り、様々な植物
の機能理解と実利用へ
初年度所要額:
27億円事業総額:
27億円
研究体制
9
植物科学研究基盤ネットワークの実施体制
メタボロームなどの統合解析
形質転換
形質評価
推進委員会・外部有識者で構成
・外部からの助言、指導
各拠点間の事業推進に関する協議調整。
若手、女性、地域などの個別研究者の基盤利用を支援人材養成を積極的に推進
技術講習会、ワークショップなどを進めて新世代の研究手法を広げる仕組みを作成。次世代の研究ポテンシャルのグ
リーンイノベーションに向けた活用を促進。
若手・女性研究者からの連携基盤を活用する優れた研究提案をサポートするシステムを検討
国内外の若手・女性研究者が、世界トップレベルの研究者が担う最先端研究基盤を活用し、植物の光合成機能やバイオマス生産性向上に関する優れた研究成果を生みだすシステムを構築。
事務局(理研)・プロジェクト全体のサポート
・推進委員会、評価委員会等に関わる事務・HP作成、シンポジウム開催、広報活動
・技術講習会、ワークショップの開催支援・若手への支援や情報窓口
若手、女性の参加促進
器官、細胞解析
海外研究者の参加促進
【基盤強化後の実施体制】 運営委員会・シンポジウム等広報活動の企画
・各拠点間の事業推進に関する協議調整・他省庁や産業界との連携を推進
・プロジェクト全体の基本方針や全体計画の策定・必要に応じ目的別WGの設置
10
「植物機能活用」による二酸化炭素資源化に指向した研究開発の推進
ストレス応答研究拠点(岡山大)
形質転換植物研究拠点(筑波大)
西日本拠点(奈良先端大・京大)
中部日本拠点(名古屋大・基生研)東日本拠点(理研・東大・東北大)
光合成効率の向上・バイオマスの効率的生産
植物の多様な機能の改変と新機能創成
植物科学によるグリーンイノベーション植物機能の活用による、二酸化炭素の資源化、
バイオマス増産および地球環境の保全と修復の基盤技術
最先端研究基盤を結集したオールジャパンの研究体制国際連携、産業界・他省庁研究機関との連携を推進
世界トップレベルの植物研究により植物機能の最大
活用と新機能を設計する技術開発を推進
光合成機能および環境耐性機能の増強による生産性の向上 植物機能による地球環境の保全・修復、リファイナリー技術の開発
光合成機能増強、環境耐性機能強化 植物体内の物質循環・情報伝達の理解と利用
理研の連携研究プログラム
•バイオマス増産•CO2資源化の促進•実用植物展開
•新バイオ素材•汚染環境の修復•資源循環・回収
•モデル植物における光合成基本システムの分子的理解•多様な環境に適応した非モデル植物の持つ多様な光合
成や代謝システムの発見•遺伝子や代謝物の探索技術による、有用物質生産の鍵
因子特定と改変•劣化環境に適応し生産性を維持する植物の創成に向け
た技術基盤の創出•少数のモデル植物から多種多様な非モデル植物への実
用展開
•バイオマス生産機能を画期的に増強する技術基盤の創出•吸収二酸化炭素からバイオマスや有用物質を効率的に生
産する技術基盤の創出•資源の回収と循環やバイオリファイナリーを効率化する
技術基盤の創出•劣化環境、汚染環境を修復する植物の創成に向けた技術
基盤の創出•バイオ燃料、バイオ素材の開発のための技術開発•化学工学、システム工学と連携した新バイオ素材の研究
開発
産業振興に資する植物機能の活用策
として、悪化しつつある地球環境を
保全・修復する技術基盤の創出を目
標にした研究の推進が必要。地球規模の物質循環とリンクした植
物体内の物質循環・情報伝達を解明
し、「光合成効率の向上」と「バイ
オマス・有用物質の効率的生産」を
実質的に繋げることが課題。
地球規模の環境問題を解決しつつ、産
業や雇用の創出を図り経済成長を促す
には、二酸化炭素を吸収し有用物質に
変換する植物の機能を活用するための
研究開発が必要。光合成システムの理解と改変、環境耐
性植物のゲノム設計技術の確立、多様
な非モデル植物への展開が課題。
光合成能増強、有用物質生産、環
境耐性の鍵因子による植物機能の
改変や新機能設計多様な植物種の機能利用と改変に
よる植物生産性の総合的な向上
植物の物質循環の理解と改変によ
る環境修復、資源回収および新素
材開発異分野連携による植物バイオマス
利用分野の拡大
11