木材の標準試験体のヤング率測定法の比較lab.agr.hokudai.ac.jp/woosci/timeng/theses/pdf/2011/2011...1...
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目次
1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2 供試材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3 試験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3.1 各種ヤング率測定法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3.2 試験体の長さによる影響の評価試験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
3.3 FAKOPP による応力波の伝播経路の評価試験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・6
4 結果と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
4.1 試験体の長さによる影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
4.1.1 各種動的ヤング率の比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
4.1.2 各種動的ヤング率と静的ヤング率の比 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
4.1.3 応力波伝播法によるヤング率の誤差と縦振動法の比ヤング率の関係 ・・・・・22
4.1.4 FAKOPP による測定誤差の計算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
4.2 FAKOPP による応力波の伝播経路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
6 引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
7 謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
1
1 はじめに
木材のヤング率は, 木材の変形性能を示す重要な基礎常数であるが, 同時に樹種に関わらず強
度と相関が高いとされており, 材の強度性能を非破壊的に予測するための有効な材質指標となっ
ている(1)。近年では資源の有効活用, 適正な加工制御, 生産の自動化, 製品の品質保証などの観点
から計測機器による非破壊試験のニーズが増してきた(2)。以前は曲げ剛性試験によってヤング率
を測定する方法が一般的であったが, 近年ではより簡便で初期費用が少なくて済み, 非破壊的な
測定を可能とする動的試験に注目が集まっている。
生物材料であるがゆえに大きな変動性を持つ木材を工業製品の一つとしてとらえると, 強度
区分が極めて重要である。従来は目視等級区分によって行われていたが, 熟練したスキルが必要,
人間の力に依る方法であるために長い時間連続的に行うことが難しいなどのデメリットがある。
そこで動的試験を利用した合理的な機械等級区分システム確立のために研究が行われている(3)。
一般には, 動的ヤング率は静的ヤング率より 5~10%程度大きな値を示すと言われている。その理
由として粘弾性体である木材に静的試験を適用した場合, 応力の大きさや負荷時間の影響で粘性
流動の影響が避けられないためとされている。ところが長さ 30cm の無欠点小試験体を用いてヤ
ング率を測定し場合, 動的ヤング率は静的ヤング率よりも約 27%(4), 3.85m の挽板を用いた場合
は約 4%(5)大きいという結果が報告されている。静的ヤング率はせん断付加たわみを含んで計算さ
れているので, スパン中央のたわみのうち.曲げたわみに対するせん断たわみの比をαとすると,
αは E / G および h / l の関数で表される(6)。E / Gは樹種固有の値で. h / l はスパンに対する材せ
いの比で, JIS 試験では 1 / 14 となっている。
2
2
5
6
l
h
G
Eα
αE
αIδ
Pl
Iδ
PlE
114848
b
b
3
m
3
ここで δ m:全たわみ.δ b:曲げたわみ
下記の式を用いてせん断付加たわみの影響を除しても寺西の実験結果は 12%と依然動的ヤン
グ率と静的ヤング率の比に大きな開きがある。そこで動的試験の測定には試験体の長さが影響し
ているのではないかという仮説を立て実験を行った。
動的試験によるヤング率測定では, 主に応力波伝播速度法, 超音波振動法, 縦振動法, たわみ振
動法の研究が行われている。応力波伝播法は以前より立木や木材製品の非破壊試験手法に向けた
基礎もしくは実用化に向けた研究が行われており, 国内では池田らによってスギ林分の評価と平
角製材への適用が試みられた(7)。 藤澤らは伝播速度の測定に FAKOPP を用い立木の応力波伝播
速度を測定し丸太の動的ヤング率との相関関係を明らかにしている(8)(9)。元々FAKOPP は木材内
部の腐朽を調査する機器として利用されていたが, 比較的廉価であり取り扱いが容易であること
から材質評価法の1つとして FAKOPP を用いた応力波伝播法が林木育種センターを中心に広ま
っていった(10)。応力波と同様に超音波の伝播速度から立木の材質評価を行った実験もある(11)。
しかし動的試験の実施方法は静的試験のように JIS に定められているわけではなく各々の経験
に基づいて行われているのが現状である。最も一般的な動的試験法である縦振動法では試験体内
の断面平均の縦ヤング率を評価するのに対し, 曲げ試験法やたわみ振動法では試験体の梁せい方
(1)
(2)
3
向のヤング率の分布の影響を受けた値, すなわち曲げヤング係数を評価している。それにもかか
わらず各種動的ヤング率を混同している例も見られる。
本研究では市販のハンディータイプの測定器を用い, 標準試験体の長さを変化させ, 各種ヤン
グ率測定法を比較し求められるヤング率の関係を明らかにした。
2 供試材料
広葉樹環孔材 2 樹種(ミズナラ, ニセアカシア), 広葉樹散孔材 4 樹種(ハードメープル, ナナ
カマド, シンジュ, シナノキ), 針葉樹 4 樹種(トドマツ, カラマツ, スプルース, イチョウ)の
計 10 樹種の製材から断面 20×20mm , 長さ 900mm(一部の樹種については 800mm)の無欠点試
験体を各樹種6体ずつ採材した。これら製材の採材高さは不明である。
また, それとは別にスギ製材から断面 100×100mm, 長さ 800mm の心去り角材を3本採取し
た。
3 試験方法
3.1 試験体の長さによる影響の評価試験
応力波伝播法
応力波の伝播時間の測定には FAKOPP(ハンガリー国アルナス社製)を用いた。木口面にセン
サーを打ち付け, 鉄製のハンマーでスタートセンサーを打撃して伝播時間を測定し, 次式から動
的ヤング率(E sw)を求めた。
4
𝐸𝑠𝑤 = 𝑉2𝜌
ここで, V:音速, ρ:密度
超音波伝播法
超音波の伝播時間の測定には Wood Pole Tester(NTT REC 社製)を用いた。木口面にセンサ
ーを押し当て, 伝播時間を測定し, 次式から動的ヤング率(E us)を求めた。
𝐸𝑢𝑠 = 𝑉2𝜌
ここで, V:音速, ρ:密度
縦振動法
材の中央を指で固定し, 木製の鉢で木口面を打撃した。マイクロホンを用いて振動音を拾い 2ch
小型 FFT 分析器(SA-78)を用いて FFT 解析し, 得られた1次固有周波数から動的ヤング率(Elf)
を計算した。
𝐸𝑙𝑓 = 4𝑙2𝜌𝑓𝑟2
ここで, l:試験体長さ, ρ:密度, fr:固有振動数
(3)
(4)
(5)
5
たわみ振動法
両端自由曲げ振動の節の位置で支持し, 材の中央を打撃する。材端にマイクロホンを設置し, 縦
振動法と同様に 2ch 小型 FFT 分析器(SA-78)を用いて FFT 解析し, 得られた1次固有周波数
から動的ヤング率(Edf)を計算した。
𝐸𝑑𝑓 =48𝜋2𝑙2𝜌𝑓𝑟2
4.374ℎ2
ここで, l:試験体長さ, ρ:密度, h:試験体の高さ, fr:固有振動数
曲げ破壊試験
スパン 280mmの中央集中荷重により.荷重と変位を自動的にコンピュータに記録した。そのデ
ータから曲げヤング率(Eb)を次式から求めた。
𝐸𝑏 =∆𝑃𝑙3
48𝐼∆𝑦
ここで, ⊿P:比例域における上限荷重と下限荷重との差, I:断面 2 次モーメント,
⊿y:⊿P に対するスパン中央のたわみ
比例限度は 0.1 P maxと 0.4 P maxの間において決定した剛性係数(P/δ)が 2%低下した点とし
た。
(6)
(7)
6
3.2 試験体の長さの影響
無欠点試験体については, 長さ 800mm から両木口面を 50mmずつ切り落とし 100mm刻みで
長さ 300mm になるまで短くしていった。各長さで応力波伝播法, 超音波伝播法, 縦振動法, たわ
み振動法を行った。そして長さ 300mmで上記の動的試験を行った後, 容量 100kN の万能試験機
を用い, JIS-Z-2101「木材の試験方法」に準じた方法で曲げ破壊試験を行った。
3.3 FAKOPP による応力波の伝播経路
スギ角材については, まず①木口面の上から縦 10mm, 横 50mmの点 A(図 1)の両木口面に
ファコップのセンサーを打ち込み伝播速度を測定した。次に②材の側面(上側)に間隔 800mm
で斜め 45°でセンサーを打ち込み伝播速度を測定し, センサーの片方を固定し 100mm 刻みで長
さ 300mmになるまで短くしていき, 各長さで伝播速度を測定した。その後, 図 1 の下面から
10mm切削し②を行うという過程を断面の高さが 20mmになるまで繰り返した。
50mm
10mm
点A
図 1 試験体の木口面
7
4 結果と考察
4.1 試験体の長さによる影響
4.1.1 各種動的ヤング率の比較
図 2 に試験体の長さが動的試験によるヤング率評価に与える影響を示す。応力波伝播法のヤン
グ率は試験体の長さが短くなるにつれてヤング率が減少していく傾向が見られた。そして 80cm
を越えた辺りから安定した値をとるようになった。たわみ振動法は樹種によって試験体の長さが
短いほどヤング率が減少しているものもあるが, その減少幅は Eswに比べると小さい。縦振動法
ではどの樹種についても安定した値をとり試験体の長さの影響が見られなかった。超音波伝播法
では比較的長さの影響がないと言える安定した値をとるが, 個体間でバラツキが大きく 70cmを
越えたあたりからヤング率が減少する傾向が見られるものもあった。これは超音波は材中の減衰
が大きいことが原因だと考えられる。また 30cm よりも短い材に超音波振動法を適用すると速度
精度が格段に悪くなり急激に速度が低下することが知られている(12)。本実験で行った試験体の長
さの範囲では縦振動法が一番安定したヤング率測定法だと言える。
8
図 2 試験体の長さの影響が各種ヤング率の測定法に及ぼす影響(トドマツ)
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80 90
応力波
G1
G2
G3
G4
G5
G6
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80 90
超音波
G1
G2
G3
G4
G5
G6
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80 90
縦振動
G1
G2
G3
G4
G5
G6
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80 90
たわみ振動
G1
G2
G3
G4
G5
G6
ヤング率
G
Pa
試験体の長さ cm
9
図 2 続き(シナノキ)
5
7
9
11
13
15
17
30 40 50 60 70 80 90
応力波
I1
I2
I3
I4
I5
I6
5
7
9
11
13
15
17
30 40 50 60 70 80 90
超音波
I1
I2
I3
I4
I5
I6
5
7
9
11
13
15
17
30 40 50 60 70 80 90
縦振動
I1
I2
I3
I4
I5
I6
5
7
9
11
13
15
17
30 40 50 60 70 80 90
たわみ振動
I1
I2
I3
I4
I5
I6
ヤング率
G
Pa
試験体の長さ cm
10
図 2 続き(スプルース)
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80
応力波
Y1
Y2
Y3
Y4
Y5
Y6
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80
超音波
Y1
Y2
Y3
Y4
Y5
Y6
5
7
9
11
13
30 40 50 60 70 80
縦振動
Y1
Y2
Y3
Y4
Y5
Y6
5
7
9
11
13
30 40 50 60 70 80
たわみ振動
Y1
Y2
Y3
Y4
Y5
Y6
ヤング率
G
Pa
試験体の長さ cm
11
図 2 続き(カラマツ)
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90
応力波
F1
F2
F3
F4
F5
F6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90
超音波
F1
F2
F3
F4
F5
F6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90
縦振動
F1
F2
F3
F4
F5
F6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90
たわみ振動
F1
F2
F3
F4
F5
F6
ヤング率
G
Pa
試験体の長さ cm
12
図 2 続き(ハードメープル)
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90
応力波
J1
J2
J3
J4
J5
J6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90
超音波
J1
J2
J3
J4
J5
J6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90
縦振動
J1
J2
J3
J4
J5
J6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90
たわみ振動
J1
J2
J3
J4
J5
J6
ヤング率
G
Pa
試験体の長さ cm
13
図 2 続き(ミズナラ)
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90
応力波
E1
E2
E3
E4
E5
E6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90
超音波
E1
E2
E3
E4
E5
E6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90
縦振動
E1
E2
E3
E4
E5
E6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90
たわみ振動
E1
E2
E3
E4
E5
E6
ヤング率
G
Pa
試験体の長さ cm
14
図 2 続き(イチョウ)
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80
応力波
Z1
Z2
Z3
Z4
Z5
Z6
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80
超音波
Z1
Z2
Z3
Z4
Z5
Z6
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80
縦振動
Z1
Z2
Z3
Z4
Z5
Z6
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80
たわみ振動
Z1
Z2
Z3
Z4
Z5
Z6
ヤング率
G
Pa
試験体の長さ cm
15
図 2 続き(シンジュ)
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80 90
応力波
H1
H2
H3
H4
H5
H6
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80 90
超音波
H1
H2
H3
H4
H5
H6
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80 90
縦振動
H1
H2
H3
H4
H5
H6
5
7
9
11
13
15
30 40 50 60 70 80 90
たわみ振動
H1
H2
H3
H4
H5
H6
ヤング率
G
Pa
試験体の長さ cm
16
図 2 続き(ニセアカシア)
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80
応力波
W1
W2
W3
W4
W5
W6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80
超音波
W1
W2
W3
W4
W5
W6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80
縦振動
W1
W2
W3
W4
W5
W6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80
たわみ振動
W1
W2
W3
W4
W5
W6
ヤング率
G
Pa
試験体の長さ cm
17
図 2 続き(ナナカマド)
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80
応力波
X1
X2
X3
X4
X5
X6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80
超音波
X1
X2
X3
X4
X5
X6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80
縦振動
X1
X2
X3
X4
X5
X6
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80
たわみ振動
X1
X2
X3
X4
X5
X6
ヤング率
G
Pa
試験体の長さ cm
18
4.1.2 各種動的ヤング率と静的ヤング率の比
図 3 に試験体の長さが 30cm の時の静的ヤング率と各種動的ヤング率の関係を示した。いずれ
も正の相関が認められ R2は高い値を示した。一般に動的ヤング率は振動による微小な速い変位で
ヤング率を求めているので粘性流動の影響が小さく, また力学的な周波数分布も関係するであろ
うという報告(13)(14)もあり静的ヤング率より大きな値を示すと言われているが, Esw/Ebは 1.0022
と差がないことが確認できた。一方で Eus/Ebは 1.4094 であった。ある含水率以上では応力波, 超
音波の速度が変化するという実験結果があるが(15), 今回の実験の範囲での含水率は両波の速度は
変わらない。これを考慮すると, Eswと Eusの誤差も機器の測定システムに原因があると考えられ
る。また Edf/Eb は Elf/Ebより小さいことがわかった。たわみ振動法では打撃方向の曲げ振動を計
測しているため試験体の梁せい方向のヤング率の分布の影響を反映しており, Edfは Ebと同様に
せん断付加たわみの影響を含んだ値であるため Edfは Elfよりも Ebに本質的に近いヤング率を示
すためだと考えられる。試験体の長さを 20cm, 30cm, 40cm と変化させ, それぞれで静的曲げ試
験とたわみ振動法を行った実験では全ての樹種において試験体の長さの影響は見られなかった(16)。
本実験では無欠点標準試験体を用いており強度とヤング率の相関は高いことが知られているが,
強度が試験体の弱点部の強度に大きく影響されるのに対し, ヤング率は試験体全体としての変形
量や振動特性から求められることが多い。節やその他強度上の欠点を含む木材では, 比較的均質
な無欠点試験体と比べ強度とヤング係数との相関が相対的に低くなるのが普通である。そのため
機械等級区分だけでは機械的に測定不能な材端部や材の破壊を支配する局部的な欠点を感知でき
ないために, 目視等級区分法を併用することが多い。そこで平井らは, 節の影響を感知できずその
19
ような材の曲げ強さを縦振動法から推定する場合, 過渡的振動過程において生じる波形の乱れを
相図によって比較し曲げ強さとヤング率の関係を求めることが可能であるという報告をしている
(17)。表 1 に試験体の長さが 30cm の時の応力波伝播法のヤング率と音速・密度の関係を示した。
応力波伝播法のヤング率と密度には正の相関関係が見られる。これは過去の J.llic の研究結果と
同様である(18)。
20
図 3 各種動的ヤング率と静的ヤング率の関係
y = 1.0022x
R² = 0.8755
0
5
10
15
20
0 2 4 6 8 10 12 14 16
y = 1.4094x
R² = 0.9141
0
5
10
15
20
25
0 2 4 6 8 10 12 14 16
y = 1.2265x
R² = 0.8612
0
5
10
15
20
0 2 4 6 8 10 12 14 16
y = 1.1305x
R² = 0.9022
0
5
10
15
20
0 2 4 6 8 10 12 14 16
静的ヤング率 GPa
GPa
動的ヤング率
G
Pa
21
表 1 試験体の長さが 30cm の時の応力波伝播法のヤング率と音速・密度の関係
E30
(GPa)
伝播速度
(V/m)
密度
(kg/m3)
ハードメープル 14.07 4332 749
ミズナラ 13.38 4055 814
カラマツ 11.07 4289 600
ニセアカシア 10.80 3720 780
トドマツ 9.19 4918 380
イチョウ 9.02 4076 542
シンジュ 9.01 4003 559
ナナカマド 8.98 3701 656
スプルース 8.56 4431 437
シナノキ 8.46 4470 423
図 4 試験体の長さが 30cm の時の応力波伝播法によるヤング率と音速・密度の関係
y = -20.048x + 4405
R² = 0.0122
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
0.00 5.00 10.00 15.00
伝播速度
m/s
y = 59.543x - 16.527
R² = 0.6147
0
200
400
600
800
1000
0.00 5.00 10.00 15.00
密度
kg/m
3
ヤング率 GPa
22
4.1.3 応力波伝播法によるヤング率の誤差と縦振動法の比ヤング率の関係
図 2 でわかるように縦振動法が試験体の長さの影響を一番受けにくく安定した値をとる。そこ
で表 2 に各樹種の縦振動法の比ヤング率, 試験体の長さが 80cm と 30cm の時の応力波伝播法に
よるヤング率の比, 同様にたわみ振動法のヤング率の比を示す。縦振動法のヤング率とは材中を
伝わる音速と同義である。縦振動法の比ヤング率と 80cm と 30cm の Eswの比には正の相関が見
られた。音速の大きい樹種ほど 80cm と 30cm の Eswの比(誤差)が大きくなる。音速にはミク
ロフィブリル傾角の大きさが影響しているという報告もある(18)。上述の通り FAKOPP は元々木
材内部の腐朽を診断するために R 方向に用いていた。木材の R 方向は L 方向に比べて比ヤング率
が小さいことが知られている。すなわち比ヤング率の大きい L 方向への用途は期待されていない
と考えられる。
一方で Edf比は樹種ごとに全く異なり様々な材質指標を用いても相関関係を示すことはできな
かったが, 針葉樹について誤差が大きくなる傾向が確認できた。
23
表 2 縦振動法による比ヤング率と、試験体の長さが 80cm と 30cm の時の
応力波伝播法, たわみ振動法によるヤング率の比の関係
縦振動法の
比ヤング率
(GPa)
Esw80
/Esw30
Edf80
/Edf30
トドマツ 32.8 1.28 1.10
シナノキ 26.2 1.24 1.09
スプルース 24.1 1.22 1.16
カラマツ 22.4 1.23 1.10
ハードメープル 22.4 1.18 1.06
ミズナラ 19.5 1.21 1.08
イチョウ 19.3 1.14 1.06
シンジュ 18.3 1.18 1.11
ニセアカシア 16.1 1.21 1.04
ナナカマド 15.1 1.15 1.01
図 5 縦振動法による比ヤング率と、試験体の長さが 80cm と 30cm の時の
応力波伝播法によるヤング率の比の関係
y = 0.0064x + 1.0649
R² = 0.6299
1.12
1.14
1.16
1.18
1.2
1.22
1.24
1.26
1.28
1.3
0 5 10 15 20 25 30 35
Esw
80/E
sw30
縦振動法による比ヤング率 GPa
24
4.1.4 FAKOPP による伝播時間の測定誤差の計算
樹種ごとに音速が異なっても, また試験体の長さが異なっても生まれる測定誤差は同量である。
そこで表 2 で縦振動法の比ヤング率が一番大きいトドマツと一番小さいナナカマドを例に
FAKOPP の測定誤差を計算した。FAKOPP の実測値から測定誤差を除くと, 試験体の長さに関わ
らず Eswの値は一定になると考えられ, 両樹種共に 10~13µsec の測定誤差で 80cm と 30cm の時
の Eswが等しくなることがわかった。図 4 には超音波の伝播時間と応力波の伝播時間の差を示し
た。応力波の伝播時間に FAKOPP の測定誤差を足すとおおよそ超音波の伝播時間と同じになる。
この測定誤差が FAKOPP のサンプリング周波数に起因するものなのか, またはピーク検出のア
ルゴリズムに起因するものなのかは不明であるが, 音速の大きい樹種ほど伝播時間が短くなり測
定誤差の影響がヤング率の計算に影響してくるために表 1 のような傾向が生まれたと考えること
ができる。10~13µsec の測定誤差を考慮した伝播時間からヤング率を計算すると, 30cm の時は実
測値に比べトドマツで 42~60%, ナナカマドで 30~41%増加し, 80cm の時でもトドマツで
15~21%, ナナカマドで 11~14%増加してしまうので注意が必要である。
25
表 3 FAKOPP の測定誤差
トドマツ 80cmの測定誤差
30cの測
定誤差 5µsec 6 7 8 9 10 11 12 13
5µsec 1.209 1.227 1.245 1.264 1.283 1.302 1.322 1.342 1.363
6 1.167 1.184 1.202 1.220 1.238 1.257 1.276 1.295 1.315
7 1.126 1.142 1.159 1.176 1.194 1.212 1.231 1.249 1.269
8 1.085 1.101 1.117 1.134 1.151 1.168 1.186 1.204 1.223
9 1.045 1.061 1.076 1.092 1.109 1.126 1.143 1.160 1.178
10 1.006 1.021 1.036 1.052 1.067 1.083 1.100 1.117 1.134
11 0.968 0.982 0.997 1.012 1.027 1.042 1.058 1.074 1.091
12 0.930 0.944 0.958 0.972 0.987 1.002 1.017 1.033 1.049
13 0.894 0.907 0.920 0.934 0.948 0.962 0.977 0.992 1.007
シナノキ 80cmの測定誤差
30cmの
測定誤差 5µsec 6 7 8 9 10 11 12 13
5µsec 1.133 1.148 1.163 1.178 1.193 1.209 1.225 1.242 1.259
6 1.097 1.111 1.125 1.140 1.155 1.171 1.186 1.202 1.218
7 1.061 1.075 1.089 1.103 1.118 1.133 1.148 1.163 1.179
8 1.026 1.040 1.053 1.067 1.081 1.095 1.110 1.125 1.140
9 0.992 1.005 1.018 1.031 1.045 1.059 1.073 1.087 1.102
10 0.958 0.970 0.983 0.996 1.009 1.022 1.036 1.050 1.064
11 0.925 0.937 0.949 0.961 0.974 0.987 1.000 1.014 1.027
12 0.892 0.904 0.915 0.927 0.940 0.952 0.965 0.978 0.991
13 0.860 0.871 0.882 0.894 0.906 0.918 0.930 0.943 0.955
26
表 3 続き
スプルー
ス 80cmの測定誤差
30cmの
測定誤差 5µsec 6 7 8 9 10 11 12 13
5µsec 1.100 1.114 1.128 1.142 1.157 1.172 1.187 1.203 1.219
6 1.065 1.079 1.092 1.106 1.120 1.135 1.150 1.165 1.180
7 1.031 1.044 1.057 1.071 1.084 1.098 1.113 1.127 1.142
8 0.997 1.010 1.023 1.036 1.049 1.063 1.077 1.091 1.105
9 0.964 0.976 0.989 1.001 1.014 1.027 1.041 1.054 1.068
10 0.932 0.943 0.955 0.968 0.980 0.993 1.006 1.019 1.032
11 0.900 0.911 0.923 0.934 0.946 0.959 0.971 0.984 0.997
12 0.868 0.879 0.890 0.902 0.913 0.925 0.937 0.950 0.962
13 0.837 0.848 0.859 0.870 0.881 0.892 0.904 0.916 0.928
カラマツ 80cmの測定誤差
30cmの
測定誤差 5µsec 6 7 8 9 10 11 12 13
5µsec 1.125 1.136 1.150 1.164 1.179 1.194 1.209 1.225 1.241
6 1.089 1.100 1.113 1.127 1.142 1.156 1.171 1.186 1.201
7 1.055 1.066 1.079 1.092 1.106 1.120 1.135 1.149 1.164
8 1.022 1.032 1.045 1.058 1.071 1.085 1.099 1.113 1.127
9 0.989 0.999 1.011 1.024 1.037 1.050 1.064 1.077 1.091
10 0.957 0.967 0.979 0.991 1.003 1.016 1.029 1.042 1.056
11 0.925 0.935 0.946 0.958 0.970 0.982 0.995 1.008 1.021
12 0.894 0.903 0.914 0.926 0.938 0.949 0.962 0.974 0.987
13 0.864 0.872 0.883 0.894 0.906 0.917 0.929 0.941 0.953
27
表 3 続き
ハードメ
ープル 80cmの測定誤差
30cmの
測定誤差 5µsec 6 7 8 9 10 11 12 13
5µsec 1.075 1.088 1.101 1.115 1.129 1.143 1.157 1.172 1.187
6 1.042 1.054 1.067 1.080 1.094 1.107 1.121 1.136 1.150
7 1.009 1.021 1.034 1.046 1.059 1.073 1.086 1.100 1.114
8 0.977 0.989 1.001 1.013 1.026 1.039 1.052 1.052 1.078
9 0.945 0.957 0.968 0.980 0.992 1.005 1.018 1.030 1.044
10 0.914 0.925 0.936 0.948 0.960 0.972 0.984 0.996 1.009
11 0.883 0.894 0.905 0.916 0.928 0.939 0.951 0.963 0.975
12 0.853 0.864 0.874 0.885 0.896 0.907 0.919 0.930 0.942
13 0.824 0.834 0.844 0.854 0.865 0.876 0.887 0.898 0.910
ミズナラ 80cmの測定誤差
30cmの
測定誤差 5µsec 6 7 8 9 10 11 12 13
5µsec 1.114 0.839 0.849 0.859 0.869 0.879 0.890 0.901 0.912
6 1.468 1.105 1.118 1.131 1.145 1.158 1.172 1.187 1.201
7 1.425 1.073 1.085 1.098 1.111 1.125 1.138 1.152 1.166
8 1.383 1.041 1.053 1.066 1.078 1.091 1.104 1.118 1.131
9 1.341 1.010 1.022 1.034 1.046 1.059 1.071 1.084 1.097
10 1.301 0.979 0.990 1.002 1.014 1.026 1.039 1.051 1.064
11 1.260 0.949 0.960 0.971 0.983 0.994 1.006 1.019 1.031
12 1.220 0.919 0.930 0.940 0.952 0.963 0.975 0.986 0.998
13 1.181 0.889 0.900 0.910 0.921 0.932 0.943 0.955 0.967
28
表 3 続き
イチョウ 80cmの測定誤差
30cmの
測定誤差 5µsec 6 7 8 9 10 11 12 13
5µsec 1.031 1.071 1.083 1.095 1.107 1.120 1.132 1.146 1.159
6 0.972 1.009 1.020 1.031 1.043 1.055 1.067 1.079 1.092
7 0.943 0.979 0.990 1.001 1.012 1.024 1.036 1.048 1.060
8 0.915 0.950 0.960 0.971 0.982 0.993 1.005 1.005 1.028
9 0.887 0.921 0.931 0.942 0.953 0.963 0.974 0.986 0.997
10 0.860 0.893 0.903 0.913 0.923 0.934 0.944 0.955 0.966
11 0.833 0.865 0.875 0.884 0.894 0.905 0.915 0.926 0.936
12 0.807 0.838 0.847 0.856 0.866 0.876 0.886 0.896 0.907
13 0.781 0.811 0.820 0.829 0.838 0.848 0.858 0.867 0.877
シンジュ 80cmの測定誤差
30cmの
測定誤差 5µsec 6 7 8 9 10 11 12 13
5µsec 1.086 1.169 1.182 1.196 1.210 1.224 1.239 1.254 1.269
6 1.048 1.128 1.141 1.154 1.168 1.181 1.195 1.210 1.224
7 1.018 1.095 1.108 1.121 1.134 1.147 1.161 1.175 1.189
8 0.988 1.063 1.076 1.088 1.101 1.114 1.127 1.127 1.154
9 0.959 1.032 1.044 1.056 1.068 1.081 1.094 1.107 1.120
10 0.930 1.001 1.012 1.024 1.036 1.048 1.061 1.073 1.086
11 0.902 0.970 0.981 0.993 1.004 1.016 1.028 1.041 1.053
12 0.874 0.940 0.951 0.962 0.973 0.985 0.996 1.008 1.020
13 0.846 0.910 0.921 0.932 0.943 0.954 0.965 0.977 0.988
29
表 3 続き
ニセアカ
シア 80cmの測定誤差
30cmの
測定誤差 5µsec 6 7 8 9 10 11 12 13
5µsec 1.118 1.130 1.142 1.154 1.166 1.179 1.191 1.204 1.218
6 1.088 1.100 1.112 1.123 1.135 1.148 1.160 1.173 1.186
7 1.059 1.071 1.082 1.094 1.105 1.117 1.129 1.142 1.154
8 1.031 1.042 1.053 1.064 1.075 1.087 1.099 1.099 1.123
9 1.003 1.013 1.024 1.035 1.046 1.057 1.069 1.080 1.092
10 0.975 0.985 0.996 1.006 1.017 1.028 1.039 1.050 1.062
11 0.948 0.958 0.968 0.978 0.988 0.999 1.010 1.021 1.032
12 0.921 0.930 0.940 0.950 0.960 0.971 0.981 0.992 1.003
13 0.894 0.903 0.913 0.923 0.933 0.943 0.953 0.963 0.974
ナナカマド 80cmの測定誤差
30cmの
測定誤差 5µsec 6 7 8 9 10 11 12 13
5µsec 1.117 1.129 1.141 1.153 1.165 1.177 1.190 1.202 1.215
6 1.089 1.100 1.111 1.123 1.135 1.147 1.159 1.171 1.184
7 1.060 1.071 1.082 1.094 1.105 1.117 1.129 1.141 1.153
8 1.032 1.043 1.054 1.065 1.076 1.087 1.099 1.099 1.122
9 1.004 1.015 1.025 1.036 1.047 1.058 1.069 1.081 1.092
10 0.977 0.987 0.997 1.008 1.018 1.029 1.040 1.051 1.062
11 0.950 0.960 0.970 0.980 0.990 1.001 1.011 1.022 1.033
12 0.924 0.933 0.943 0.953 0.963 0.973 0.983 0.994 1.004
13 0.897 0.907 0.916 0.926 0.935 0.945 0.955 0.965 0.976
30
図 4 超音波と応力波の伝播時間の差(=超音波-応力波)
0
2
4
6
8
10
12
14
30 40 50 60 70 80 90 100
トドマツ
G1
G2
G3
G4
G5
G6
0
2
4
6
8
10
12
14
16
30 50 70 90
シナノキ
I1
I2
I3
I4
I5
I6
0
2
4
6
8
10
12
14
30 40 50 60 70 80
スプルース
Y1
Y2
Y3
Y4
Y5
Y6
試験体の長さ cm
時間差
s
31
図 4 続き
-4
-2
0
2
4
6
8
10
12
14
16
30 50 70 90
カラマツ
F1
F2
F3
F4
F5
F6
0
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90 100
ハードメープル
J1
J2
J3
J4
J5
J6
-5
0
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90 100
ミズナラ
E1
E2
E3
E4
E5
E6
試験体の長さ cm
時間差
s
32
図 4 続き
0
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80
イチョウ
Z1
Z2
Z3
Z4
0
5
10
15
20
30 40 50 60 70 80 90 100
シンジュ
H1
H2
H3
H4
H5
H6
4
9
14
19
30 40 50 60 70 80
ニセアカシア
W1
W2
W3
W4
W5
W6
試験体の長さ cm
時間差
s
34
4.2 FAKOPP による応力波の伝播経路
図 5 に FAKOPP のセンサー間の距離を変えながら材の厚さを薄くしていった時の伝播速度を
示す。もしセンサーを斜めに打った場合の伝播経路が弧を描くとすると, 材の厚さが薄くなるほ
どセンサーを平行に打ち込んだ伝播速度に近くなると考えられるが, センサーを木口面に地面に
平行に打ち込んだ場合の伝播速度と斜めに打ち込んだ場合の伝播速度の間には大きな差は見られ
なかった。よって FAKOPP のセンサーの打ち込み角度によらず伝播経路は最短距離を通ること
がわかった。前の 4.1 の実験で試験体の長さによってヤング率が変化すると述べたが, 今回も同様
のことが確認できた。
35
4000
5000
20 30 40 50 60 70 80 90 100
90cm 80cm 70cm 60cm
50cm 40cm 30cm
図 5 応力波の伝播経路
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試験体の厚さ cm
はセンサー間距離 cm
伝播速度
m
/s
角材 1
角材 2
角材 3
はセンサーを木口面に垂直に打った時の伝播速度
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5 まとめ
10 樹種に対して試験体の長さを変化させながら動的試験を 4 種類, そして最後に静的試験を行
い各種ヤング率測定法の比較を行った。また FAKOPP を用いた応力波の伝播経路についても実
験を行った。その結果, 得られた知見は以下の通りである。
(1) 本研究で行ったような試験体の大きさでは縦振動法が一番安定した値をとるヤング率測
定法である。また応力波伝播法ではセンサー間の距離が約 80cm 以上でないと安定した
値が得られない。
(2) 試験体の長さが 30cm の時の応力波伝播法によるヤング率計算では, ヤング率の大きさ
と材の密度は正の相関を示した。
(3) 動的ヤング率と静的ヤング率との関係は.樹種グループに関わらず高い相関が見られた。
(4) 縦振動法による比ヤング率が大きいほど, 試験体の長さが 30cm と 80cm の時の応力波
伝播法によるヤング率の差が大きくなる。またその原因は FAKOPP による測定誤差に
あると考えられ, その大きさは 10~13µsec 程度である。FAKOPP での実測値から測定誤
差の影響を除くと, Wood Pole Tester での超音波の伝播時間とほぼ等しくなった。
(5) FAKOPP による応力波の伝播経路は, センサーの打ち込み角度に依らない。
37
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