亜臨界・超臨界流体を用いた食品関連物質の抽出な...

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亜臨界・超臨界流体を用いた食品関連物質の抽出ならびに 微粒子化 誌名 誌名 日本食品工学会誌 = Japan journal of food engineering ISSN ISSN 13457942 巻/号 巻/号 191 掲載ページ 掲載ページ p. 1-8 発行年月 発行年月 2018年3月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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亜臨界・超臨界流体を用いた食品関連物質の抽出ならびに微粒子化

誌名誌名 日本食品工学会誌 = Japan journal of food engineering

ISSNISSN 13457942

巻/号巻/号 191

掲載ページ掲載ページ p. 1-8

発行年月発行年月 2018年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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「H本食品工学会誌」,Vol.19, No. 1, pp. 1-8, March. 2018 DOI: 10.11301/jsfe.18512

◇◇◇解説 (2016年度日本食品工学会研究賞)◇◇◇

亜臨界・超臨界流体を用いた

食品関連物質の抽出ならびに微粒子化

後藤 元信

名古屋大学大学院工学研究科物質プロセス工学専攻

Extraction and Particulation of Food Related Materials Using Sub-and

Supercritical Fluids

Motonobu GOTO

Department of Materials Process Engineering, Graduate School of Engineering, Nagoya University, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya 464-8603, Japan

Supercritical fluids have been applied for food related material processing including decaffeination

of coffee and hop extraction for beer production. Fundamental properties of sub-and supercritical

fluids are briefly explained in this article. Solubility of solutes in supercritical fluids is the most

important property in separation process. Extraction process using supercritical carbon dioxide from

solid feed material is reviewed. Fractionation of liquid mixture is also important area for food industry

such as separation of lipids and essential oils. Recently, subcritical water is applied for extraction

process for natural materials. Hybrid extraction process of supercritical carbon dioxide and liquid

water was proposed for simultaneous extraction of polar and nonpolar components and successfully

applied food related materials. Supercritical carbon dioxide has been applied for fine particle

production of natural materials such as carotenoids. In situ micronization of subcritical water extracts

was also explained.

Keywords: Supercritical fluid, Extraction, Fractionation, Particle formation, Natural material

1. 緒 -l[I

1988年から超臨界流体に関する研究,とくに食品関連

分野への適用の研究開発を行ってきた. ここでは固体

超臨界二酸化炭素による抽出は 1970年代にドイツに からの抽出,液体の分画および微粒子化技術を中心に

おいてコーヒー豆の脱カフェインの工業的利用が始 概説する.

まって以来,ホップエキスの抽出を始め,紅茶の脱力

フェイン,香料・色素の抽出などが欧米を中心に実用 2. 亜臨界・超臨界流体の特性

化された最近では実用化の主流はアジアに移ってき

ており,韓国のゴマ油や台湾のコメの洗浄,台湾での

天然薬用物質の抽出などの実用プロセスが稼働してい

る.溶媒としては,超臨界二酸化炭素抽出に加えて,

さらに 50から 100MPa程度の高圧の二酸化炭素によ

る抽出,亜臨界水による抽出,超臨界二酸化炭索と液

体の水の 2相系溶媒での抽出,二酸化炭素が溶解し膨

潤した有機溶媒での抽出など新しい抽出法が研究開発

されている. とくに,グリーン溶媒の観点から二酸化炭

素と水を用いる抽出技術は注目されている.著者らは

(受付 2018年1月16日,受理2018年3月28)

〒464-8603 愛知県名古屋市千種区不老町

Fax: 052-789-3389, E-mail: [email protected]

2.1 臨界点近傍の流体の物性

超臨界流体技術の実用プロセスの大部分が抽出分離

に関するものであるため,多くの成書が出版されてい

る [1—10]. 超臨界流体抽出分離は基本的には固体ある

いは液体から超臨界流体を溶媒とする抽出分離である

が,選択的な分離のために,向流抽出塔や吸着剤,膜

分離を用いるプロセスなどがある.超臨界流体抽出に

おいては, 1) 被抽出物の超臨界流体への溶解度, 2)

助溶媒であるエントレーナの効果, 3)抽出操作条件(温

度,圧力,溶媒流速,粒子径など)の最適化, 4) 原料

の前処理, 5) 抽出過程の速度解析, 6) 抽出装置の最

適化などの検討を要する.

固体からの抽出は対象とする溶質の超臨界流体への

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後藤元信

溶解度に係る相平衡ならびに拡散過程からなる物質移

動が重要な因子となる.一般に超臨界二酸化炭素に対

する溶解度と分子構造との関係については次のような

ことがいえる [11]. 1)極性が高いほど溶解度は小さい.

例えば,水酸基が増えるにつれて極性が高くなる.水

酸基をメチル化することにより極性が下がり,それに

つれて溶解度も大きくなる. 2) 分子量の増加に伴い溶

解度が減少する. 3) 側鎖は溶解度を増加させる. 4)

不飽和結合は溶解度を増加させる. 5) 芳香族は溶解度

を減少させる. 6) 極性の低い低分子量の物質は完全に

溶解する.

二酸化炭素は臨界温度 31.1℃,臨界圧力 7.4MPaで

あり,水はそれぞれ 374.2℃と22.1MPaである.超臨

界二酸化炭素は無極性に近い溶媒であるため,高分子

量の分子や極性の高い分子は超臨界二酸化炭素への溶

解度は低いため,溶質と超臨界流体の分子間相互作用

を増加させる物質であるエントレーナを添加すること

もある.通常は二酸化炭素より極性の大きい物質が用

トロールできる.

2.2 亜臨界・超臨界流体中での溶解度

超臨界二酸化炭素中での天然物を含む各種物質の溶

解度は成書にまとめられている [13]. しかし,超臨界

二酸化炭素あるいは亜臨界水中での天然物の溶解度

データの実測値は極めて限られており,推算も容易で

はない.そこで,天然物の溶解度の相間に多く用いら

れる方法に Chrastilモデルがある [14]. このモデルは

溶質の溶解度を超臨界流体の密度と両対数プロットで

直線となる関係で相間させるもので,溶質が溶媒の K

個の分子と溶媒和して溶媒流体と平衡にあるという仮

定を甚にしており,次式で相関される.

a=△ H/R

b=-ln{M//(M叶 kMc)l+q

(2a)

(2b)

sは溶質の溶解度, pは流体密度, K溶媒和分子数, qは

定数, Msと見は溶質と溶媒の分子量である.

一方,溶解度を評価する手法に溶解度パラメータが

ある.ヒルデブラント (Hildebrand)の溶解度パラメー

タは次式で与えられる.

;}={ (△ H -RT)/V}112 (3)

亜臨界・超臨界状態の温度・圧力での溶媒と溶質の溶

解度パラメータの値が近いとき,溶解度が大きくなる

という概念によるもので多くの分野で使われている.

さらに,その概念を拡張したものにハンセン (Hansen)

の溶解度パラメータ(三次元溶解度パラメータ)があ

る [15]. これは,蒸発のエネルギーを分散項ぬ,極性

項釣,水素結合項 c}hの3つに分割したものである.

いられる.食品関連のエントレーナとしてはエタノー

ルや水などを使うことができる.超臨界二酸化炭素中 ここで,

に水が存在する場合,水への二酸化炭素の溶解度は比

較的低温では圧力とともに増加し,二酸化炭索の溶解

により炭酸が生成し,水の pHが3程度まで下がる.一

方,二酸化炭索への水の溶解度は圧力とともに減少し

たあと,増加し 20MPa以上ではほぼ一定 (2.9X 10―3

g-H20 I g-C02) となる.

水の比誘電率を有機溶媒と比較すると,常温常圧の

水の比誘電率は約 80であるため,極性が高く,極性の

低い有機物質は溶解しにくいが,高温高圧での液体の

水は 2~30程度の比誘電率となり,有機溶媒の比誘電

率の値に相当するため,有機物質が溶解する.そのため,

亜臨界状態の水は有機物質の溶解に対して有機溶媒に

匹敵する溶解性を有し,その溶解性は温度によりコン

紆=tげ+ば+討 (4)

ふ=(△Ev,JV)l/2 (5)

△恥は溶質あるいは溶媒の蒸発エネルギーである.

天然物の物性値データは限られており,グループ寄

与法などを用いて推算する必要がある. Srinivasらは

Hansen溶解度パラメータを使って溶解度の考察をして

いる [16].Table 1の値は天然物中の成分の溶解度パラ

メータを示している [16].

超臨界流体の溶解度パラメータは次式で計算できる.

Bfluid = 1.25 (Pc) 112(Pr,fluid/ Pr,liquid) (6)

凡は臨界圧力, Pr.fluidは臨界点の値で還元した密度,

Pr.liquidは液体状態で還元した密度 (~2.6-3.1) である.

二酸化炭素については溶解度パラメータは常温常圧で

ln(s) =k In(p) +a/T+b (1)

ここで

0.31 MPa112であり,圧力の増加とともに 18MPa112程

度まで大きくなる.

2. 超臨界二酸化炭素抽出

2.1 抽出速度

固体原料からの抽出過程は①細胞組織への溶媒の浸

透②成分(溶質)の溶解,③溶質の細胞内から表面

への固体マトリックス中の移動,④溶質の流体境膜内

での拡散による流体本体への移動などからなり,③の

物質移動過程が律速となる場合が多い.

種子からのオイルの抽出などの場合のように原料中

の溶質含有量が高いとき,溶質の超臨界流体中への溶

解度が律速となり,飽和濃度で抽出され,その後,固

体粒子内部の物質移動の影響を受けるため,抽出速度

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超臨界流体による抽出・微粒子化 3

Table 1 Solubility parameter of components in natural materials [16].

Hydrogen-

Dispersion bonding

solubility Polar solubility solubility Total solubility

parameter, ad parameter, SP parameter, Bh pa『ameter,ふOleoresin (MPalf2) (MPal/2)

Curcumin 23.2 7.88 Dihydrocapsaicin 20.7 6.32 Capsaicin 19.6 6.01 Piperine 19.4 7.10 Capsanthin 17.5 4.64

Lutein 17.5 3.97

Violaxanthin

laureate ester 18.0 4.83 Zeaxanthin laureate ester 17.8 4.52

Lutein stearate

ester 17.6 3.78 Capsorubin 17.8 3.6 Lutei n stearate

diester 17.5 3.62 Cryptoxanthin

laureate ester 17.4 3.50 a-carotene 17.1 2.39

が徐々に減少する.コーヒー豆からのカフェインの抽

出やハーブからの精油の抽出などのように原料中の溶

質含有量が少ないときは,抽出初期から物質移動の影

響を受けることが多い.抽出速度の理論研究は抽出過

程の解析や装置設計において菫要であり,多くの研究

がなされてきている.著者らは天然物の固体原料が充

填された抽出槽に溶媒を連続的に流して抽出されるプ

ロセスについて,物質収支と原料固体内での溶解平衡

や拡散などを考慮した抽出速度モデルを構築し,各種

天然物について抽出速度の解析を行った [7].

2.2 超臨界二酸化炭素抽出の食品への応用 [6,7]

2.2.1 固体抽出

コーヒー豆からの脱カフェインプロセスがドイツで

1978年にブレーメンの HAG社で実用化されて以来,

コーヒーや紅茶からのカフェイン抽出プラントが欧米

で建設されてきている.コーヒー豆の場合は,生豆から

水をエントレーナとして超臨界二酸化炭素でカフェイ

ンを選択的に抽出した後に,焙煎により香味成分が生

成して脱カフェインコーヒーが製造されるため,コー

ヒーの風味を損なうことなくカフェインが除去できる.

米国の大型プラントではロックバルブを用いたコー

ヒー豆の供給・抜出しによる擬似連続処理が使われて

いる.最近では我が国でも脱カフェイン製品に対する関

心が高くなっており,カフェインレスコーヒーを始め,

カフェインレス紅茶,カフェインレス緑茶が市販される

など,新たな市場となってきている.一方,我が国では

焙煎コーヒー豆からのコーヒーフレーバーの抽出が超

(MPa呵 (MPalf2)

16.8 29.5

10.8 24.1 10.5 22.9 8.16 22.6 10.2 20.6 9.98 20.4

7.79 20.2

7.53 19.7

7.14 19.3 6.01 19.0

4.91 18.4

5.40 18.4 5.54 18.0

臨界二酸化炭索を用いて行われており,低沸点から高

沸点まで香味成分をバランスよく高濃度に含有した香

味力価の強い優れた品質の抽出物(脂肪油と香味成分

の混合物)が得られ,主に缶コーヒーや乳飲料向けフ

レーバーの甚礎ベース香料素材として利用されている.

もう 1つの主要な実用化プロセスとしてホップエキ

スの抽出があり,欧米を中心に大型プラントが存在し

ている.ホップはビールの主要原料の 1つであり,超

臨界二酸化炭索によるホップエキス抽出の主目的は,

苦み成分である a酸(フムロン)の劣化防止,貯蔵スペー

ス削滅などである.ホップエキスはソフトレジンとハー

ドレジンで構成される)レブリンを主成分としており,

a酸およびB酸(ルブロン)はソフトレジンの主要成

分である.超臨界二酸化炭素によりソフトレジンと精

油はいずれもほぼ 100%抽出できる.

我が国では多品種対応型の中規模プラントがスパイ

ス,香料,色素などの抽出を対象に建設されている.

近年は中国,韓国,台湾を中心に東アジアでの実用化

プラントの建設が急速に進んでいる. とくに,中国で

は漢方医薬を対象に工業化開発が進んでおり,多くの

プラントが建設されている.唐辛子にはカロテノイド

系のカプシカム色素と辛味成分であるカプサイシノイ

ドが含まれる.唐辛子からの色素と辛味成分の抽出が

我が国で実用化されている.色素は超臨界二酸化炭索

抽出を利用して製造されており,超臨界流体抽出は辛

味成分などの除去に使われている.インドではスパイ

スの抽出が盛んに行われており,我が国にも抽出物が

輸入されている.

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後藤元信

成分を分画して抽出するためには,抽出条件を変え

て選択的に抽出し,分画する方法と全成分が抽出され

る条件で抽出し,分離回収槽を多段にして分画する方

法がある.香料成分の抽出に伴い,ワックス類も抽出

される場合が多いため,第 1段分離槽でワックス類を

回収し,第 2段分離槽で香料成分を回収される.アロ

マテラピー用の精油も超臨界二酸化炭素抽出の製品が

多くなってきている.魚節類,焙焼魚介類,発酵調味

料などからのフレーパーの抽出に超臨界流体抽出が適

用され,抽出物は調味料,調理加工系の食品や香料の

素材として利用されている.

抽出物が目的ではなく,不要物を除去した抽出残流

が目的となる場合もある .例 えば,台湾における米か

らの農薬除去 (90t/day) やスペインやフランスにおけ

るワインボトルのためのコルクからの不要成分の除去

(18 m3X3塔)などは非常に大きい抽出設備で処理され

ている.これは天然のコルクに含まれているトリクロ

ロアニソールがワインの質を低下させることを防ぐた

めに超臨界二酸化炭素で除去するものである.

2.2.2液体混合物の分画

魚油などの水産脂質中に含まれる n-3系不飽和脂肪

酸の主なものはエイコサペンタエン酸 (EPA) とドコ

サヘキサエン酸 (DHA) であり,サプリメントとして

も多く販売されている.超臨界流体技術を利用した

EPAとDHAの精製については古くから検討されてき

ているテーマである.一般に耐酸化性,溶解性の向上

のために,メチルあるいはエチルエステル化した脂肪

酸を原料として用いる.飽和あるいは二甫結合の数が 2

以下の不飽和物を包接除去するためにニシン油を尿素

処理した脂肪酸エチルエステル混合物を原料として超

臨界二酸化炭素による 2塔式連続抽出プロセスや,

EPAや DHAなどの高度不飽和脂肪酸を硝酸銀水溶液

で抽出したのち,超臨界抽出塔により DHAを濃縮する

複合化プロセスが提案されている.ビタミン Eである

トコフェロールは大豆油の脱臭残清などから製造され

ており,向流抽出塔を用いる超臨界二酸化炭素抽出プ

ロセスによりトコフェロールの精製が可能で,中国で

実用化された [9].

柑橘類の果皮の圧搾により得られるシトラスオイル

はテルペン類と含酸素化合物(アロマ成分),色素など

からなっており,香料などの生産においてはテルペン

類を除去し,含酸素化合物を濃縮工程(脱テルペン)

が必要となる.従来法の水蒸気蒸留,減圧蒸留,溶媒

抽出に代わる方法として超臨界二酸化炭素抽出が検討

されている.超臨界二酸化炭素への溶解度差が小さい

ため,単抽出では十分な分離が得られないため,通常

は充填層向流抽出塔が用いられる.抽出塔により,オ

レンジオイル,レモンオイル ベルガモットオイルに

ついて,含酸素化合物を数倍に濃縮することができて

いる. 一方,含酸素化合物がシリカゲルに選択的に吸

着されることを利用して,超臨界二酸化炭素中で吸脱

着を行うプロセスも検討されており ,圧カスイング操

作により連続的に分離することができ,高度に濃縮し

たオイルが得られている [2].

2.2.3高圧超臨界流体抽出

超臨界二酸化炭素抽出プロセスは従来 30MPa程度ま

での圧力が用いられてきたが,近年はより高圧の二酸

化炭素を用いる抽出プロセスが増えてきている. Fig. 1

はトリアシルグリセロールの超臨界二酸化炭素に対す

る溶解度を示したもので,温度,圧力とともに溶解度

は増加し,とくに, 70℃以上の高温では圧力の上昇に

伴って,急激に溶解度が増加することがわかる.この

溶解度の圧カ ・温度依存性を利用するトリアシルグリ

セロールの分離プロセスが実現できる. 80℃で圧力を

77 MPaから 70MPaに低下させることによって,溶解

度が 12wt%減少する.また,等圧 (77MPa) において,

温度を 80℃から 60℃に低下することにより,溶解度は

17wt%減少しており,この溶解度の変化挙動が分離に

利用できる. 一般に高圧にすることにより溶解度が上

昇し,低圧ではエントレーナを用いないと溶解しない

天然物成分についても,高圧にすることで溶解させる

ことができる.

実際に,キサントフィル,カロテン,クルクミンな

どの疎水性のカロテノイドの溶解度は分子量が大きい

ため極性が低くても溶解度は比較的小さいが,圧力が

高いほど溶解度は高くなり, 50MPaでは溶解度が飛躍

的に大きくなる.微細藻類や海洋生物に含まれるカロ

テノイドであるアスタキサンチンの 70℃で異なる圧力

下での超臨界二酸化炭素抽出では,高圧において抽出

収率が高くなり, 55MPaにおいて 80%の収率が得ら

れている [17]. トマト果皮からのリコピンの抽出にお

いて圧力と温度の増加に伴い溶解度が向上し, 90℃,

50 MPaにおいて効率的に抽出できる [18].

高圧における超臨界二酸化炭素への溶解に関する溶

25

茎a, 10

tlO

吝ro 5 ・ト;::―

゜゚ 20 40

50℃

60 80 100 120 140

Pressure, MPa

Fig. 1 Solubility of triacylglycerol in supercritical CO2.

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超臨界流体による抽出・微粒子化 5

解度パラメータを用いた研究が報告されている [19].

二酸化炭素自体の溶解度パラメータと比較すると Table

1に示された物質は極性を有するものが多く,その溶解

度パラメータの値は大きいため,溶解度を上げて抽出

するためには 50MPaの高圧が必要なことがわかる例

えば, Bカロテンとルテインについてみると 10MPa

から 30MPaと圧力が上がると二酸化炭素の溶解度パラ

メータの増加により溶解度が大幅に増加することが予

測できる. さらに 60MPa以上の圧力では完全混合領域

に入ることから,高圧での抽出は極めて有効であるこ

とが示唆される.

オーストリアの Natex社から 5リットル 100MPaの

装置がインド,中国をはじめ各国に納入されており,

20リットルX3甚の 100MPaの実生産設備が台湾で稼

働しており,天然薬効成分の抽出が行われている.韓

国で稼働しているゴマ油の抽出プラントは 3000リット

ルX2基で設計圧力 80MPaである.また, ドイツの

Uhde社は 2リットル 250MPaの抽出装置を用いて様々

な原料からの抽出を報告している.従来法と高圧超臨

界二酸化炭索抽出法を対比すると,高圧抽出法の特徴

は,抽出効率向上とともに,二段分離による精密分離

が可能なことである.つまり,高圧抽出では複数の目

的成分の製品化が可能となる.

3. 亜臨界水抽出

亜臨界水 (100-374℃の高温高圧水)を有機溶媒の

代わりに抽出溶媒として用いる方法が検討されてきて

いる.水は温度の上昇に伴い物性が変化し,前述のよ

うに比誘電率が小さくなるため,極性の減少と温度の

上昇に伴い,常温の水への溶解度に比べ有機物の溶解

度が数桁上昇する.

超臨界二酸化炭素にはエントレーナを加えないと極

性物質が溶解しないが,亜臨界水には極性物質が溶解

するため,動植物成分の抽出や多環芳香族成分などの

抽出などに適用されている.一方,高温では分解反応

などが起こるため,温度を選ぶことで抽出溶媒と同時

に反応媒体として作用させることができる.

植物への適用については,エッセンシャルオイルな

どの抽出からセルロースなどの分解に至るまで適用可

能である.エッセンシャルオイル類の抽出においては

抽出温度により成分の選択性を変えることができ,高

温ではテルペン類も抽出されるのに対して 100-150℃

程度ではテルペン類に比べて含酸索化合物が選択的に

抽出される.従来法の水蒸気蒸留では主にテルペン類

が得られるのと対照的である. したがって,亜臨界水

抽出では脱テルペン化した良質のエッセンシャルオイ

ルを得ることができる.

Srinivasらはハンセン溶解度パラメータを用いてビタ

ミン B3やフラボノイドなどの生理活性物質の亜臨界水

と亜臨界エタノールヘの溶解について考察し,抽出挙

動に対して溶解度の観点からの理論的根拠を示してい

る [16].

亜臨界水による抽出過程で反応が関与する場合も十

分に考えられる.水蒸気蒸留においても酢酸リナロイ

ルはリナロールに加水分解されて,芳香成分に寄与す

る場合があるように,生成物の質が向上する場合もあ

る. 200℃以上の高温ではセルロースやトリアシルグリ

セロールの加水分解が起こる.反応による部分的な低

分子化を利用した高分子成分の可溶化・抽出を利用す

ることも可能であり,著者らは鹿角霊芝や大麦からの

Bグルカンの抽出 [23]や柑橘果皮からのペクチンの亜

臨界水による抽出 [24]において高分子の低分子化によ

る分子量の制御の可能性を示している.

4. 二酸化炭素と水の 2相系混合溶媒による

抽出プロセス

超臨界二酸化炭索抽出では原料を乾燥するという前

処理をしたのちに抽出されることが多い.原料の水分

含量が高いと,原料固体内での二酸化炭索と目的物と

の接触が不十分となり,抽出が妨げられることが多い.

目的物質の極性によっては,アルコールや水を二酸化

炭素に溶解する範囲内で添加して,抽出溶媒の極性を

調整することで目的物の溶解度を増加させる方法が用

いられる.一方,コーヒー生豆からのカフェインの抽

出プロセスでは水で膨潤させた生豆から抽出すること

によりカフェインを除去できる. この場合は豆の中の

水にカフェインが溶解し,固体表面まで拡散し,表面

で超臨界二酸化炭素に溶解すると考えられ,水の存在

が重要な役割を果たす.

著者らは Fig.2に示すように液体の水と超臨界二酸

化炭素が抽出槽内で共存する 2相混合溶媒によるハイ

ブリッド抽出プロセスを提案した [20]. 超臨界二酸化

炭素と高圧水を抽出溶媒として用い,抽出槽内で原料

に対して,それぞれを向流に接触させ,極性の小さい

物質は二酸化炭素側に,極性の大きい物質は水側に分

離して抽出するものであり,水が連続相の場合や二酸

化炭素が連続相の場合が可能である.本方式は,目的

物質の比揮発度制御を利用するものであり,朝鮮ニン

ジンからの残留農薬(無極性)とニンジンエキス(極性),

およびコーヒー生豆からのカフェイン(無極性)とポ

リフェノール(極性) [21,221, 柑橘果皮からの無極性

フラボノイドと極性フラボノイドの同時抽出が確認さ

れている.

グリーン溶媒として超臨界二酸化炭素と高温高圧水

を使用する機能性成分抽出処理のプラットフォームが

構築できる. Fig. 3は二酸化炭素と水のみの使用による

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6

後藤元信

一 一国回 疇

Fig. 2 Hybrid extraction process using supercritical carbon dioxide and liquid water.

ものであり,超臨界二酸化炭素抽出,高温高圧水抽出

あるいはハイブリッド抽出などによって,天然物から

機能性成分を抽出する.まず超臨界二酸化炭素を用い

て,無極性・弱極性物質であるテルペノイド,油脂な

どを抽出し,次いで,ハイブリッド方式あるいは高温

高圧水によって,配糖体,糖(多糖体など),タンパク

などの極性物質を抽出する.このように,グリーン溶

媒抽出プラットフォームは,機能性食品素材を効率的

に抽出する指針を示すものであり,その工業生産プロ

セス化の基盤となるものである.

5. 超臨界貧溶媒法による微粒子化

超臨界流体を利用した微粒子調製法にはいくつかあ

る [6,7]. 物理的方法と化学的方法があるが,物理的方

法では超臨界流体を良溶媒として機能する急速膨張法

と貧溶媒として機能する貧溶媒化法に大別される.急

速膨張法は膨張前の相状態の違いにより ,超臨界溶体

急速膨張 (RESS) 法とガス飽和溶体粒子創製 (PGSS)

法などがある.貧溶媒化法には超臨界流体と溶液の混

合方法の違いから,溶液に対して超臨界流体を導入す

る回分式である GAS法,超臨界流体に対して連続的に

Supercritical CO2 Extraction

Fig. 3 Green solvent platform for natural material separation

using supercritical carbon dioxide and subcritical water.

溶液を導人する半回分式である SAS法,超臨界流体と

溶液を同時に導人する連続式である SEDS法に分ける

ことができる.

化学的方法では反応晶析法である超臨界水熱合成法

とマイクロエマルション法がある.微粒子製造の基本

は過飽和度の制御であり, 一般に過館和度が大きい場

合には核形成が核成長に優先することで微粒子が生成

する. したがって,超臨界二酸化炭素場での微粒子製

造においては①ポリマーなどの微粒子原料の超臨界二

酸化炭素場での相分離挙動,②温度・圧カ・溶媒組成

の変化に伴う溶媒特性の変化に基づく凝固挙動,③液

滴の押出を支配する因子の把握が重要となる.

著者らは貧溶媒化法である SEDS法を用いた天然物

の微粒子化を検討してきたこれは,有機溶媒に溶解

させた溶質を超臨界二酸化炭素と混合することで,貧

溶媒化により溶質が析出し,溶媒が除去された溶質微

粒子が得られるものである.本手法により各種カロテ

ノイドあるいはカロテノイドと多糖類や高分子の複合

体のナノ粒子化を行った. Fig. 4はfJカロテンと fJシ

Fig. 4 {] -carotene/cyclodextrin composite nanoparticles.

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超臨界流体による抽出・徴粒子化 7

クロデキストリンの複合体の粒子であり, 50nm程度の

ものが得られている (25]. ルテインやリコピンなどの

カロテノイドやクルクミンなどの単体の微粒子や多糖

体やポリマーとの複合微粒子などが本手法により得る

ことができた [26]. さらに,カロテノイドなどのトラ

ンス体/シス体の異性化を利用することで,形態の制

御された微粒子を得る方法についても検討している.

6. 水熱抽出物の微粒子化

前述の亜臨界水抽出で得られる抽出物は常温の水に

は溶解しにくい場合が多く,抽出物の水溶液は常温で

は沈殿を生じ,溶質は沈殿として得られる ことが多い.

そのため,亜臨界水で抽出したものを噴霧乾燥法によ

り微粒子を得にくい.そこで,亜臨界抽出と同時に高

温ガスと混合して噴霧することにより,微粒子化する

手法を開発した.亜臨界水抽出装置の出口に高温高圧

ガス(空気,窒素)を混合して減圧噴霧することで高

温の抽出溶液をそのまま噴霧乾燥して微粒子を回収す

ることで抽出—微粒子化の連続プロセスが可能となる.

Fig. 5は鹿角霊芝の抽出物を処理したものであり, B

グルカンを主成分とする微粒子が得られている [27].

1) Y. Arai (ed.); "Supercritical Fluid (Chourinnkairyuutai no

subete)", Technosystem, Tokyo, 2002.

2) M. Goto; "Handbook of Supercritical Fluid for Food

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超臨界流体の適応事例のほとんどは食品関係であり, 6) R. Fukuzato, M. Goto; "Practical Supercritical Fluid

とくにアジア諸国での実用化の進展が目覚ましい.超 Technology Oitsuyou Chourinkai Gijutsu)", Bunrigijutukai,

臨界二酸化炭索だけでなく亜臨界水や両者の複合プロ Kanagawa, 2012.

セスにより対象範囲も増えてきており,環境と人体へ 7) M. Goto; "Innovations in Supercritical Fluid Technology -

の安全のためのグリーン溶媒としての超臨界流体が見 Principle and Application of Novel Process -"(in Japanese),

7. 結 -[l

著者らは超臨界流体技術の実用化を促進するために,

2013年に三菫県内に設立 された超臨界技術センター株

式会社 (http://www.sctc.eo.jp/) の立ち上げに関わり,

我が国での超臨界流体技術の実用化に貢献したいと考

えている.超臨界技術センターでは 2017年に我が国初

の超臨界二酸化炭素による脱カフェインコーヒーの生

産が開始された

引 用 文 献

直されてきていることに加え, 二酸化炭素と水のみを Corona, Tokyo, 2014.

用いる 分離プロセスは有機溶媒を使わないために今後 8) M. Mukhopadhyay; "Natural Extracts Using Supercritical

拡大すると予測できるハラル食品への対応も可能であ Carbon Dioxide", CRC Press, 2000.

り,今後の進展が期待される . 9) J. L. Martinez (Ed.) ; "Supercritical Fluid Extraction of

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2008.

10) M.A. A. Meireles (Ed.); "Extracting Bioactive Compounds

for Food Products, Theory and Applications", CRC Press,

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15kV XS,000 5μm 0000 31 32 SEI

Fig. 5 Microparticles obtained by subcritical water extraction

from Ganoderma lucidum.

11) D. Steytler; "Supercritical Fluid Extraction and its

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8

後藤元信

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要 旨

コーヒーの脱カフェインやビールのホップの抽出な

ど超臨界流体は食品関連物質に適用されている.ここ

では亜臨界・超臨界流体の基礎的特性を概説する.超

臨界流体中への溶質の溶解度は分離プロセスにおいて

もっとも重要な要素である.固体原料からの超臨界二

酸化炭素による抽出プロセスについて説明する.脂質

や精油の分離のように液体混合物の分画も重要な分野

である.近年,天然物の抽出プロセスにおいて亜臨界

水も適用されている.超臨界二酸化炭素と液体の水を

用いたハイブリッド抽出プロセスを極性,無極性物質

の同時抽出法として提案し,食品関連物質の抽出に応

用した.カロテノイドなどの天然物の超臨界二酸化炭

素を用いた微粒子化法について説明した.亜臨界水抽

出物をその場で微粒子化する手法についても解説した.

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