「すざく」衛星を用いた「すざく」衛星を用いた ia型超新星の起源解明と...

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「すざく」衛星を用いた Ia型超新星の起源解明と 宇宙における非平衡 プラズマ物理学の開拓 山口 弘悦(やまぐち ひろや) NASA ゴダードスペースフライトセンター および メリーランド大学カレッジパーク校

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Page 1: 「すざく」衛星を用いた「すざく」衛星を用いた Ia型超新星の起源解明と 宇宙における非平衡 プラズマ物理学の開拓 山口 弘悦(やまぐち

「すざく」衛星を用いたIa型超新星の起源解明と宇宙における非平衡プラズマ物理学の開拓

 山口 弘悦(やまぐち ひろや)NASA ゴダードスペースフライトセンターおよび メリーランド大学カレッジパーク校

Page 2: 「すざく」衛星を用いた「すざく」衛星を用いた Ia型超新星の起源解明と 宇宙における非平衡 プラズマ物理学の開拓 山口 弘悦(やまぐち

手前味噌で恐縮ですが...

NASA/GSFCの最高奨励賞 Robert H. Goddard Award (個人部門)を今月受賞します。

日米協力ミッション「すざく」の科学成果がSPSS (JAXA)・NASAの両機関から

評価いただけたことを誇りに思います。

Page 3: 「すざく」衛星を用いた「すざく」衛星を用いた Ia型超新星の起源解明と 宇宙における非平衡 プラズマ物理学の開拓 山口 弘悦(やまぐち

謝辞を兼ねて...

本研究は「すざく」なしには絶対に成し得ませんでした。

「すざく」の開発・運用に関わられた全ての皆様、 学生時代からご指導いただいた 小山 勝二 先生、『XIS』の地上試験と初期運用で特にお世話になった 中嶋 大さん、松本 浩典さん、鶴 剛さん、林田 清さん 戦友の勝田 哲さんに、厚く御礼を申し上げます。

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謝辞を兼ねて...

本研究は、米国の研究者とのコラボレーションなしには絶対に成し得ませんでした。

日本学術振興会の海外特別研究員制度に深甚の謝意を表します。

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日本のX線天文衛星

はくちょう(1979年)

てんま(1983年)

ぎんが(1987年)

あすか(1993年)

すざく(2005年)

ひとみ(2016年)

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「すざく」の主力検出器『XIS』

X線CCD = 「撮像分光」が可能な検出器大学院時代は地上較正と初期機上較正に専念

CCDの性能を極限まで引き出し史上最高の輝線検出能力を実現

CCD素子部XISカメラ全体

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ライバル衛星との性能比較すざく(日本)

XMM-Newton(欧州) Chandra(米国)

高空間分解能

高エネルギー分解能

すざく Chandra すざく Chandra

「すざく」はより「物理」を引き出す衛星(主観ですが)

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Ia型超新星の研究

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白色矮星の核融合暴走による爆発現象大きさが地球程度、質量が太陽程度の「縮退星」

© Richard W. Pogge

白色矮星地球

Ia型超新星

炭素(C)+

酸素(O)

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Ia型重力崩壊型

- ニュートリノ生成- ブラックホール・ 中性子星の起源

- 爆発的元素合成(鉄の主要起源)- 明るさがほぼ一様

炭素(C)+

酸素(O)

Page 11: 「すざく」衛星を用いた「すざく」衛星を用いた Ia型超新星の起源解明と 宇宙における非平衡 プラズマ物理学の開拓 山口 弘悦(やまぐち

Ia型超新星 =「宇宙の標準光源」

宇宙の加速膨張を発見(2011年ノーベル物理学賞)

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.25, 0.750.25, 0 1, 0

赤方偏移 Z

見かけの等級

距離大

距離小

後退速度大後退速度小

Supernova Cosmology ProjectKnop et al. (2003)

物質のみの宇宙

ダークエネルギーが卓越する宇宙

16

18

20

22

24↑物質密度パラメータ

↑ダークエネルギー密度パラメータ

ΩΜ, ΩΛ

Page 12: 「すざく」衛星を用いた「すざく」衛星を用いた Ia型超新星の起源解明と 宇宙における非平衡 プラズマ物理学の開拓 山口 弘悦(やまぐち

Ia型超新星 =「宇宙の標準光源」

宇宙の加速膨張を発見(2011年ノーベル物理学賞)

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.25, 0.750.25, 0 1, 0

赤方偏移 Z

見かけの等級

距離大

距離小

後退速度大後退速度小

Supernova Cosmology ProjectKnop et al. (2003)

物質のみの宇宙

ダークエネルギーが卓越する宇宙

16

18

20

22

24↑物質密度パラメータ

↑ダークエネルギー密度パラメータ

ΩΜ, ΩΛ

爆発メカニズムが全くわかっていない「明るさ一様」は単なる経験則

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現代宇宙物理学における最重要課題の一つ(米国科学アカデミー)

© STFC/David Hardy © NASA

Single Degenerate (SD) 説伴星からの質量降着

伴星(太陽のような普通の星)

主星(白色矮星)

Double Degenerate (DD) 説白色矮星同士の合体

親星の進化(爆発に至る過程)すら未解明

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超新星残骸 Tycho(1572年爆発)母銀河NGC 4526

これが超新星

超新星(爆発の直後)遠方銀河・可視光

超新星残骸天の川銀河に多数・X線

距離が近く、重元素組成を詳しく調査できる

© NASA/HST/High-Z Supernova Search Team © NASA/CXC

研究方法:「超新星残骸」のX線観測

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100.5X線エネルギー (keV)

1 2 5

X線強度 O

Ne

Mg

Si

Fe

S

Ar Ca

CrFe

Ni

研究方法:「超新星残骸」のX線観測

各重元素の輝線から、その生成量を決定

超新星残骸N103BのX線スペクトル

Page 16: 「すざく」衛星を用いた「すざく」衛星を用いた Ia型超新星の起源解明と 宇宙における非平衡 プラズマ物理学の開拓 山口 弘悦(やまぐち

形成初期の白色矮星 SDシナリオ(質量降着)

0.6~0.8 Msun 1.0 Msun

1.2 Msun 1.4 Msun

元素合成に着目して “SD vs DD” を解決

SD: 爆発時に高密度コアで 電子捕獲 (p + e- → n + νe)   ➔ 中性子数増大

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形成初期の白色矮星 SDシナリオ(質量降着)

0.6~0.8 Msun 1.0 Msun

1.2 Msun 1.4 Msun

元素合成に着目して “SD vs DD” を解決

DDシナリオ(白色矮星の合体)

SD: 爆発時に高密度コアで 電子捕獲 (p + e- → n + νe)   ➔ 中性子数増大

DD: 爆発中の電子捕獲なし   ➔ 中性子数不変

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12C 16O

56Fe

元素合成に着目して “SD vs DD” を解決

12C 16O 56Ni

陽子 6 8 28

中性子 6 8 28

56Ni

~ 80日

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12C 16O

56Fe

~ 80日

+ 中性子

58Ni

55Co

55Mn

55Co 56Ni 58Ni

陽子 27 28 28

中性子 28 28 30

元素合成に着目して “SD vs DD” を解決

~ 2.7年

電子捕獲が起こると55Mnや58Niが増える!

56Ni

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Ia型超新星残骸 3C 397

Yamaguchi et al. 2015, ApJL, 801, L31

わし座 距離 ~ 33,000 光年年齢 ~ 1200 年

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3C 397MnCr

Fe

Ni

X線エネルギー (keV)5 6 7 8 9

TychoMn

CrFe

Ni

X線エネルギー (keV)5 6 7 8 9

KβFe

3C 397 Tycho

大量の Mn と Ni を発見

電子捕獲反応の観測証拠(世界初)

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「すざく」はX線観測にしかできない方法でIa型超新星の起源を解明した

© STFC/David Hardy © NASA

Single Degenerate (SD) 説爆発時の電子捕獲あり

伴星(太陽のような普通の星)

主星(白色矮星)

Double Degenerate (DD) 説電子捕獲なし

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メリーランド大

アストロアーツ

NASA

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非平衡プラズマの奥深い物理

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3C 397MnCr

Fe

Ni

X線エネルギー (keV)5 6 7 8 9

超新星残骸の元素量測定は簡単ではない(正しくできるのは世界で数人)

輝線強度(スペクトル)

元素量

放射過程の物理的理解が不可欠

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(i) K殻のポテンシャルより高いエネルギーを持つ自由電子 と (ii) L殻・M殻に多数の束縛電子を残す低電離イオン が共存

K殻L殻

M・N殻

K殻L殻

M殻

中性 (未電離) アルゴン状 ネオン状 ヘリウム状 水素状

温度

イオン化エネルギー

多価イオンの原子構造

300 K (室温) 106 K 107 K 108 K

~10 eV ~0.1 keV ~1 keV ~10 keV

平衡プラズマならこれらが卓越若い超新星残骸に多く存在(電離が進みきっていないため)

超新星残骸(X線プラズマ)の典型的な電子温度

プラズマ温度と鉄イオンの電離度の関係

問題点:プラズマの「電離非平衡」

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Κα輝線

自由電子

自由電子の衝突 内殻電離 蛍光放射

K殻L殻

M殻

「内殻過程」が起こる!

非平衡プラズマの複雑な物理が超新星残骸の元素量測定を困難に

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6400

6500

6600

6700

0 10 15 20Charge Number

Ener

gy [e

V]

5

Fe Kα 輝線中心エネルギー

8 9 10 11log(n t [cm-3 s])e

アルゴン状中性ネオン状

電離階数

エネルギー

(eV

)

電子遷移と放射の物理を解く米国の理論原子物理学者と連携(海外学振) ➔ 非平衡プラズマのX線放射モデルを構築  ➔ 元素量の精密測定を初めて実現

例:鉄イオンの蛍光輝線エネルギーを電離階数ごとに算出

「すざく」は量子物理学の発展に寄与した

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12 16 17 18 19 20 21 22 23 240

N103B

0519-69.0

0509-67.5

W49BCas A

N132D

Sgr A East

N63A

SN 1987AN49

G292.0+1.8

G350.1-0.3

IC 443

Kepler

TychoG344.7-0.1

G352.7-0.1

RCW86

SN 1006

G0.61+0.01

6400 6500 6600 6700

110

100

1000

G1.9+0.3鉄K殻輝線の強度 L

K (1

040 p

hoto

ns s

-1)

鉄輝線中心エネルギー (eV)

鉄イオンの電離階数

銀河系のIa型SNRLMCのIa型SNR銀河系のII型SNRLMCのII型SNR

G337.2-0.7

G349.7+0.2

3C 397

DEM L71

Ia型

重力崩壊型

「すざく」は非平衡プラズマの難点を利点に変えた 

鉄Kα蛍光を利用した新しい天体分類法

Ia型理論予想

塵の中で爆発

電離が早く進む

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5.5 6 6.5 7 7.5 8 X線エネルギー (keV)

X線強度

鉄Kβ蛍光を利用した超低電離プラズマ診断Κα輝線(L殻から)

Κβ輝線(M殻から)

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0 10 15 200

0.05

0.1

0.15

Charge Number5

Flux

Rat

io Fe Kβ/Kα 輝線強度比

ネオン状(3p電子なし)

アルゴン状(3p電子6個)中性

電離階数

Kβ/

Kα強度比

K殻L殻

M殻

ネオン状

K殻L殻

M殻

アルゴン状

M殻電子多数

鉄Kβ蛍光を利用した超低電離プラズマ診断Κα輝線(L殻から)

Κβ輝線(M殻から)

Page 32: 「すざく」衛星を用いた「すざく」衛星を用いた Ia型超新星の起源解明と 宇宙における非平衡 プラズマ物理学の開拓 山口 弘悦(やまぐち

ティコ(Tycho)の超新星残骸カシオペア座

距離 ~ 10,000 光年1572年に爆発

ティコ・ブラーエ

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鉄Kβ蛍光輝線を初めて検出Kα

X線エネルギー (keV)5 6 7 8 9

X線強度

クロムマンガン

Kβ鉄ニッケル

~ 6.43 keV

~ 7.10 keV

K殻L殻

M殻

K殻L殻

M殻

ネオン状

アルゴン状

Yamaguchi et al. 2014, ApJ, 780, 136

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X線エネルギー (keV)5 6 7 8 9

X線強度

Kβ鉄高階電離鉄(Fe~16+)

低電離鉄(Fe~8+)

KαとKβは別起源!

K殻L殻

M殻

K殻L殻

M殻

ネオン状

アルゴン状

「すざくの結果で一番面白く教訓的」by 小山先生 KβはKαの “付属物” に過ぎないと長らく思われていた

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10光年北西

宇宙物理学的意義 ①

逆行衝撃波の進行方向

逆行衝撃波

順行衝撃波

爆発中心

未加熱の鉄 低電離鉄高電離鉄

超新星残骸の内側 超新星残骸の外側

逆行衝撃波の現在位置と加熱直後のプラズマ状態を知る手段を初めて提供した

等高線:Fe Kαカラー:Fe Kβ

Page 36: 「すざく」衛星を用いた「すざく」衛星を用いた Ia型超新星の起源解明と 宇宙における非平衡 プラズマ物理学の開拓 山口 弘悦(やまぐち

宇宙物理学的意義 ②「無衝突電子加熱」の観測証拠 

K殻イオン化ポテンシャル(電離に必要なエネルギー) IK ≈ 7 keV

自由電子の温度(内部エネルギー) kTe ≳ IK

強いKβ蛍光 ➔ kTe ≳ IK ≈ 7 keV

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宇宙物理学的意義 ②「無衝突電子加熱」の観測証拠 

強いKβ蛍光 ➔ kTe ≳ IK ≈ 7 keVVs = 5000 km/s ➔ kTe = (3/16)meVs2 ≈ 0.03 keV

5000 km/s 0.03 keV

陽イオン

自由電子

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「すざく」は宇宙特有の非平衡現象を多数発見した

宇宙物理学的意義 ②「無衝突電子加熱」の観測証拠 

電磁場を介したエネルギー輸送

陽イオン

自由電子

強いKβ蛍光 ➔ kTe ≳ IK ≈ 7 keVVs = 5000 km/s ➔ kTe = (3/16)meVs2 ≈ 0.03 keV

Page 39: 「すざく」衛星を用いた「すざく」衛星を用いた Ia型超新星の起源解明と 宇宙における非平衡 プラズマ物理学の開拓 山口 弘悦(やまぐち

ディスカバー誌天文月報・物理学会誌

ハーバードプレスサイト

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研究成果のまとめ– Ia型超新星に伴う電子捕獲の証拠を特定 ➔ 親星の進化解明に向けて大きな一歩

– 非平衡プラズマの内殻過程を初めて計算 ➔ 超新星残骸の元素量精密測定を実現 ➔ 物理学としても重要な諸現象を発見

「すざく」のポテンシャルを最大限に引き出せた

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100.5X線エネルギー (keV)

1 2 5

X線強度

「すざく」

超新星残骸N103BのX線スペクトル(実データ)

X線超精密分光の時代が到来

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100.5X線エネルギー (keV)

1 2 5

X線強度

X線超精密分光の時代が到来

超新星残骸N103Bの予想スペクトル

− 飛躍的な精度で元素量測定・プラズマ診断− 予想外の発見も必ずもたらされる

「ひとみ」

Page 43: 「すざく」衛星を用いた「すざく」衛星を用いた Ia型超新星の起源解明と 宇宙における非平衡 プラズマ物理学の開拓 山口 弘悦(やまぐち

「すざく」から学んだフィロソフィー – 基礎物理に忠実に – 自然の声を聞き逃さない  (データを隅々まで見る)

 ➔「ひとみ」のサイエンスにも活かし、   X線天文の伝統を次に繋ぎたい

「すざく世代」として研究できたことを 誇りに思います!