日本の伝統文化 - tips.smrj.go.jp · 1.「日本の伝統文化」とは? •...
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1.「日本の伝統文化」とは?
• お正月は初詣に行き、彼岸に墓参りし、ハロウィーンで仮装し、クリスマスにはプレゼントを交換するか?
• 結婚式、お葬式は何式?• 職場のコピー機や工場の機械に名前を付けたり、声をかけたりするか?
• 職場に神棚を置いたり、お札を貼ったりしているか?
• 初物を意識して食べるか?3
日本の伝統文化とは?• 神社、寺院• 仏像• 曼荼羅図、襖絵• 城跡、古墳、貝塚• 埴輪、土偶• 富士山、三保松原• 東尋坊、秋吉台• オオサンショウウオ、イリオモテヤマネコ• 屋久島スギ、三春滝ザクラ• 野島断層、鳥取砂丘• 化石• 能、狂言、歌舞伎、文楽、落語、講談• 柿右衛門、江戸小紋、蒔絵、和紙• マタギの狩猟用具、養蚕・製糸用具• お祭り、神楽、田植踊
• 茅葺、畳、邦楽器、漆掻き用具、歌舞伎床山・大道具・小道具・衣裳
• 茶道
• 生け花
• 書道
• 盆栽
• 和食
• 囲碁、将棋
• 蹴鞠
• 流鏑馬、相撲
• 合気道
• 花火
• 短歌、俳句
• 詩吟
• 民謡
• 和太鼓
• 温泉4
=文化財
文化財の種類
• 有形文化財:建造物、美術工芸品• 無形文化財:演劇、音楽、工芸技術等• 民俗文化財:風俗慣習、民俗芸能、民俗技術やこれらに用いられる衣服、器具、家屋など
• 記念物:遺跡、名勝地、動物、植物、地質鉱物• 文化的景観:地域における人々の生活または生業及び当該地域の風土により形成された景観地
• 伝統的建造物群:宿場町、城下町、農漁村等• 文化財の保存技術• 埋蔵文化財
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歴 史
• 7世紀に推古天皇と聖徳太子が創建• 670年に焼失するが、7世紀後半から8世紀初頭に再建
• 当初は鎮護国家の寺として天皇家が保護したが、12世紀ころから庶民の間で聖徳太子を尊崇する信仰が広まり、太子創建の寺として繁栄
• 明治維新後一時衰えたが1897年に古社寺保存法が制定され、1895年から1985年の91年間にわたり保存修理事業を実施
• 1993年、「法隆寺地域の仏教建造物」として日本最初の世界文化遺産に登録
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特徴1=世界最古の木造建築
1. 金堂、五重塔などは、中国や朝鮮にも残存しない初期の仏教建築様式、しかもその構造・形式はほぼ創建当時のまま
2. 骨格部分と内部に使われている木材は7~8世紀の再建当初のもの
3. 当初の部材を損ねないで建物を解体、修理し、再び組み立てることが可能
4. 創建当初の位置をほとんど動いていない
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特徴2=仏教文化の宝庫
• 境内:史跡• 建造物:国宝18棟、重要文化財29棟• 美術工芸品:国宝20件(金堂釈迦三尊像、百済観音(観音菩薩立像)、玉虫厨子など)、重要文化財122件(聖徳太子像、金剛力士立像、日光・月光菩薩立像、大般若経、百万塔など)
• 年間を通じた法要などの行事(2月5日:三蔵会、3月22~24日:お会式など)
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例2:正倉院宝物
• 「正倉」=奈良、平安時代に中央、地方の官庁、大寺で重要な物品を収めた建物
• 「正倉院」とはもともと「正倉がいくつも集まっている一廓」という意味だったが、現在は東大寺の一棟のみ残っている(国宝)
• 聖武天皇、光明皇后等の遺愛の品、東大寺の重要な法会に用いられた仏具などを保管
• 明治以降、内務省→農商務省→宮内省→宮内庁が管轄
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特徴3:「伝世品」
• 日本以外の博物館等で展示されている美術工芸品はほとんど出土品
=遺跡などを掘って出てきたもの、日常品が多い、墳墓の副葬品は盗掘される場合が多い
• 伝世品=先人が意識して残してきたもの、残す段階で価値付けがなされている
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謎の多い作品
• 平安末期~鎌倉初期(12~13世紀)の製作• 作者:長らく鳥羽僧正覚猷と伝えられてきたが、近年では(1)寺院に属する絵仏師、(2)宮廷絵所の絵師の2説が有力
• 墨画による絵巻物• 4巻あるが、内容が明確でないだけでなく、各巻の間に明確なつながりがなく、筆致・画風も異なる
• 現在高山寺所蔵、しかしどのような経路を経て高山寺へ来たかは不明
• 断簡や模本が各地で所蔵されている• 平成21~25年にかけて解体修理
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特徴4:擬人化
• 動物が人間のような行動を取っている=動物にも人間と同じ感情が宿っていると考える
動物の姿を通して人間に向けたメッセージを
効果的に伝える
• 表現や内容から「マンガのルーツ」と見る人も
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例4:人形浄瑠璃文楽
○三者一体で演じられる人形劇• 大夫(たゆう):語り手• 三味線:太棹(ふとざお)• 人形遣い:3人=主遣い(頭と右手)、左遣い(左手)、足遣い
• 1955年、国の重要無形文化財に指定• 各個認定(人間国宝)6名、人形浄瑠璃文楽座座員を総合認定
• 2003年、ユネスコ無形文化遺産に登録20
能、歌舞伎等との関係
• 能の作品を元に作られた文楽の作品「橋弁慶」→「鬼一法眼三略巻」(五段目「五條橋」、その後歌舞伎でも上演)
• 文楽で先に初演され、歌舞伎でも上演されるようになった作品
「仮名手本忠臣蔵」「義経千本桜」「菅原伝授手習鑑」「曽根崎心中」「女殺油地獄」など
• 能から歌舞伎に取り入れられ、その後文楽でも上演されるようになった作品
「安宅」→「勧進帳」→「勧進帳」「道成寺」→「京鹿子娘道成寺」→「日高川入相花王」「関寺小町」→「関寺小町」→「花競四季寿」より「関寺小町」
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特徴5:異文化の吸収と独自性の発揮
• 三味線:中国→琉球を経て日本へ、芸能の内容に応じて細分化するとともに、地方でも独特の発展
• 語り:13世紀の琵琶法師による平家物語などの語り物から発展
• 人形:古代の土偶に遡る
• 浄瑠璃姫の物語を題材に三味線と語りが一体となり、さらに人形遣いが加わって今日の形へ
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例5:和紙
• 4~5世紀 中国から紙が伝来?
• 6~7世紀 製紙技術が伝来
• 8世紀以降 紙の国産化
• 原材料:麻、楮、三椏、雁皮など• 平安以降日本独特の製紙技術が各地で発達• 文房具だけでなく建具、扇子、衣類、寝具などにも利用
• 2014年11月:ユネスコ無形文化遺産に登録「和紙:日本の手漉和紙技術」
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• 楮http://www.nandemo-zukan.net/plant/p_detail.php?plant_id=26655
• 三椏http://www.tbg.kahaku.go.jp/recommend/illustrated/result.php?pn=9&p=1&name=ミツマタ&mode=easy&order=staff
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重要無形文化財各個認定(人間国宝)
• 九代岩野市兵衛:越前奉書越前和紙の中で最高級、かつては公文書に用いられ、現在は木版画に使用
• 谷野剛惟:名塩雁皮紙泥を混ぜて漉くのが特徴、屏風、衾等に使用、神社仏閣の修復に欠かせない
• 濵田幸雄:土佐典具貼紙貴金属の包装紙、ちぎり絵などの手芸用紙のほか、バチカンのシスティーナ礼拝堂の天井画や「最後の審判」等の修復にも使用
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特徴6:自然素材の活用、技術力の高さ
• 原材料の植物の太く長い繊維を漉くことで絡ませて紙として作る、薬品などは使用しない
(洋紙は木材をすりつぶしてから加工、繊維が細く短い上、紙の劣化を進める薬品も多用)
• 保存性が高いex. 吉田家文書
• 加工も容易で様々な用途に使用可30
3.日本の伝統文化の特殊性と普遍性
• 法隆寺:世界最古の木造建築仏教文化の宝庫
• 正倉院宝物:伝世品• 鳥獣人物戯画:擬人化• 人形浄瑠璃文楽:異文化の吸収と独自性の
発揮
• 和紙:自然素材の活用、高い技術力
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日本の歴史における外国からの文化輸入
600~615年 遣隋使
630~839年 遣唐使
10~13世紀 日宋貿易
1274,1281年 元寇
15世紀 日明貿易
1543~17世紀初め 南蛮貿易
1639年 鎖国
1854年 開国
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古今和歌集、源氏物語など
水墨画、茶など
能、狂言など
文楽、歌舞伎、俳句、浮世絵など
日本の伝統文化の普遍性
1. 儒教の要素=「論語」は現在でも道徳や倫理の古典として人気
2. 仏教の要素=寺社建築、仏像、経典、絵画、華道等
3. 禅宗(道教)の要素=能、茶道など
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日本人の倫理観、価値観にもそれぞれ大きな影響
日本の伝統文化の独自性1. 歴史の長さ=戦争による破壊や盗難などに遭うことなく、1000年を超えて現在まで保存されている文化財が多い2. 神道の影響=多神教、仏教やキリスト教等の一神教とも共存3. 豊かな自然と四季=日本人の色彩感覚、味覚、嗅覚などに影響4. 他国の文化の受容、消化、独自化:「国風化」=一見日本の国民性、風土に合わないものでも受け入れ、継承する中で自分たちに合った形へと改変したり、自分たちに合う要素のみ選択
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法隆寺 出雲大社
鳥獣人物戯画
水墨画 琳派 文楽 能 お祭り 茶道 和歌俳句
儒教 ○
仏教 ○ ○? ○
禅宗 ○? ○ ○ ○
歴史の長さ
○ ○
神道 ○ ○? ○ ○
自然四季
○ ○ ○ ○ ○ ○
国風化 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
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4.日本の伝統文化をどう外国人に伝えるか
Q なぜ神社では手を打つのに、お寺で打ってはいけないのか?
Q 大仏のポーズの意味は?
Q 抹茶を飲む前になぜ器を回すのか?
Q なぜこの男と女は心中しなければならないのか?
Q 歌舞伎の「見え」の意味は?
Q 横綱の土俵入りの仕草の意味は?
などなど
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実例1:観光サービスの活用
○自分たちも観光客のつもりで利用
○観光名所におけるガイドツアー
○イヤホンガイド
• 博物館、美術館など• 国立劇場、歌舞伎座など• 英語版もあり○アプリ、タッチパネル、体験コーナーも
○土産物(グッズ類)も併せて活用
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実例2:「日本の食」の活用
• 食材、調理法については予習• 高級店よりも、地元住民に人気の店へ• B級でもOK(洋食屋、ラーメン屋など)• 商店街の八百屋、魚屋、肉屋、パン屋などをめぐるのも効果的
• 伝統的な文化が今日まで受け継がれていることを実感できる
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実例3:俳句の活用
On a journey, ailing,My dreams wander about a withered moor芭蕉「旅に病んで 夢は枯野を かけめぐる」
On a journey, aiding,***’s dreams wander all over the world
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実例4:日本遺産
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地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産(Japan Heritage)」に認定するとともに,ストーリーを語る上で不可欠な魅力ある有形・無形の文化財群を地域が主体となって総合的に整備・活用し,国内外に戦略的に発信することにより,地域の活性化を図る。
ロゴマーク制作:佐藤卓
平成27年度日本遺産認定の例
• 群馬県(桐生市など)かかあ天下-ぐんまの絹物語-
• 福井県(小浜市、若狭町)海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群~御食国(みけつくに)若狭と鯖街道~
• 京都府(宇治市など)日本茶800年の歴史散歩
• 兵庫県(篠山市)丹波篠山デカンショ節-民謡に乗せて歌い継ぐふるさとの記憶
• 鳥取県(三朝町)六根清浄と六感治癒の地~日本一危ない国宝干渉と世界屈指のラドン泉~
• 愛媛県、高知県、徳島県、香川県「四国遍路」~回遊型巡礼路と独自の巡礼文化~
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私たちにできること1. 私たちは伝統文化の専門家ではない• 専門家でない以上、全ての質問に完璧に答える必要はない• わかることは真摯に説明し、わからないことは素直に「わからない」と言う
• 専門家などより詳しい人に紹介するのもOK2. 自分に身近なもの、好きなものを知り、それを自分の言葉で説明できるようにしておく
• ネットに頼り過ぎない• 地元の図書館、郷土資料館等の活用3. 言葉で足りない部分は実物、実体験で• 過剰な説明より本人に感じてもらい、考えてもらった方が効果的な場合も
• 伝統文化の力を信じる4. まずは我が国の伝統文化を大切に
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