地域福祉活動計画の 意義と方法 · 市場原理 共感原理....

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1 地域福祉活動計画の 意義と方法 駒澤大学 川上富雄 中央区地域福祉活動計画策定委員会 説明資料 計画とは何か 計画・・・・ある事を行うために、あらかじめ方法や 順序などを考えること。また、その考えの 内容。もくろみ。 (大辞泉)

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Page 1: 地域福祉活動計画の 意義と方法 · 市場原理 共感原理. アソシエーション型 コミュニティ型. 地域福祉活動計画で開発・育成 地域福祉

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地域福祉活動計画の意義と方法

駒澤大学 川上富雄

中央区地域福祉活動計画策定委員会説 明 資 料

計画とは何か

計画・・・・ある事を行うために、あらかじめ方法や順序などを考えること。また、その考えの内容。もくろみ。 (大辞泉)

PC6
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資料 3
Page 2: 地域福祉活動計画の 意義と方法 · 市場原理 共感原理. アソシエーション型 コミュニティ型. 地域福祉活動計画で開発・育成 地域福祉

3

社会福祉援助は課題の解決

ニーズ(課題) 社会福祉支援課題の的確な把握(情

報収集)と分析

3

的確な目標設定と計画

に基づく課題解決

そもそも、全ての社会福祉援助の基本構造は・・・

アセスメント

ケアマネジメント

課題把握 課題分析 目標設定

計画計画遂行評価

個人対象も地域対象も計画的援助の手順は同様

計画実施

4

目標と計画と評価� 課題や問題意識に対して、「本来こうあるべき」「解決・改善されるべき」という目標が設定される。

� その目標を「いつ」「だれが」「どうやって」達成するのか(目標に近づくための戦略と戦術)を明らかにしたものが計画。

� 計画を実施してみて、目標にどれくらい近づいたか・達成されたかが評価となる

目標

評価計画

課題・問題

よって、「目標」「計画」には課題解決につながる具体的なものが掲げられ盛り込まれる必要

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問題(課題)解決のための計画

� 原因志向型問題・・・明確な目標がありながらそれを達成できない「逸脱問題」「未達問題」であり、なぜ達成できなかったのかを考え修正する問題類型

� 探索型問題・・・現状をよりよくしようとか、より強化しよう、より効率を上げようとする改善・強化のための問題類型

� 設定型問題・・・新たに出てきた問題にどう対応するかや、「この先どうするか」という、過去や現状を引きずっていない環境変化に対応した新しい体制を目標として考える問題類型。設定型問題はさらに「開発問題」と「回避問題」の2つにわけられる

5

前期計画の評価に基づき目標・方法(計画)の

再検討

新たに出てきたニーズへの対応策、新たな役割期待への対応策

事業のスクラップ&ビルド、組織機構再編、業務プロセスの改善による効率化・迅速化

計画化

地域福祉計画・地域福祉活動計画に取り上げられるべき問題群

� 前期計画の評価に基づく目標再設定と計画再策定(原因志向型問題)

� 高齢少子・無縁社会化に伴う古典的福祉法制では対応できない生活問題やニーズの多様化・拡大(設定型問題)

� 「制度の壁」「情報の壁」「意識の壁」を取り除くための取り組み(探索型問題)

� 多様な生活問題を受け止められる相談体制と伴走型支援体制の構築(探索型問題)

� 生活困窮者自立支援法/生活保護法改正/介護保険改正(地域包括ケアシステム構築)など新たな制度への対応(設定型問題) 6

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地域福祉計画・活動計画に影響を与える変数・要素

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地域のニーズ対応

アンケート調査・ヒア

リング・懇談会等から

浮かび上がった現状

の課題見直しや、新規対応が必要な課題

制度政策との関連

制度改正等に伴う新

たな事業への取り組

みや、組織機構の改

編、他機関との連携の必要などへの対応

他計画との関係

自治体の総合計画や

高齢者(介護保険事

業)計画・障害・児童

等の計画との整合・連動等への配慮

地域福祉計画地域福祉活動計画

今なぜ地域福祉計画・活動計画か?~新しい公共と地域福祉~

� 多様化・複雑化する社会問題に、国が法律を作り網羅的に対応する福祉国家的政策は限界に

� 様々な権限が地方自治体へと移行し、計画策定によりデザインを描けるローカルガバナンスの時代に

� 公が担っていた施策を、地域・ボランティア・NPO・コミュニティビジネスなどソーシャル・キャピタルと協力・協働して担う「新しい公共」へとパラダイム転換

� 2000年の社会福祉法第4条「地域福祉の推進」や、2008年「地域福祉のあり方検討会報告」には、こうした理念が盛り込まれている

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福祉分野における「新しい公共」が地域福祉地域福祉計画・活動計画は、それを計画的に整備・推進しようとするもの

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地域福祉計画と地域福祉活動計画

2000年の法改正による地域福祉計画が出てくるまで、行政による地域福祉

計画という考え方はなく、「地域福祉」を推進する「計画」は社協が主導して

策定し、推進するもの・・・という理解が一般的であった。それ故に、2000年

以前の社協計画の中には「地域福祉計画」と呼称しているものもある。2000

年以降は社会福祉法で「地域福祉計画」といえば行政計画と位置づけられ

たため、社協の計画は民領域の活動を自主的にとりまとめたものとして策

定され、名称も「地域福祉活動計画」と呼称するようになっている。

10

地域福祉活動計画とは� 住民が主体となって活動を行うための参加計画

� 社協による住民活動支援の役割も含む(・・・けれども、決して「社協(の)活動計画」ではない)

� 法制度の根拠はなく、自主的に策定されるもの

� 住民の「暮らしにくさ」「生活問題」等を幅広く取り上げ、それらの中から公約数的(優先順位を付けた)課題に絞り、住民がどのように関わり解決していくか、社協がそれをどう支援・応援するのかの方策をまとめたもの

� 内容として、①地域のあり方へのビジョン(こういう地域でありたいという思い、理念)、②まちの諸課題の現状(アンケート調査や懇談会、ヒアリング)、③いつまでにその課題をどのような状態にするか(解決も含めて)という目標、④そのために誰が何をするかという方策・役割分担・財源(実施計画)などが盛り込まれる

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地域福祉計画とは(社会福祉法第109条の規定)

市町村は、~中略~地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項※を一体的に定める計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者その他社会福祉に関する活動を行う者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、その内容を公表するものとする。

※次に掲げる事項

1地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項2地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項3地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項

地域福祉計画・地域福祉活動計画・小地域福祉活動計画の関係・位置

地域福祉計画

地域福祉活動計画

公領域

民領域

NPO活動、ボランティア活動、地域活動など

企業の社会貢献活動、コミュニティビジネス、まちづくり、自主防災、安全安心、などなど

� 医療、保健との総合化・一体的体制づくり

� 教育、就労、住宅、交通など関連施策との連携

行政

社協等

住民参加 小地域福祉活動計画

高齢者施策

児童施策

障害者施策

低所得施策

その他の福祉策

策定への参加

活動への参加

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課題解決のための

社会資源の種類と開発

フォーマルケア

インフォーマルケア社

資源

市場原理

共感原理アソシエーション型

コミュニティ型

地域福祉活動計画で開発・育成

地域福祉計画で支援

行政のイン

フォーマルケア

への関わりは基

盤整備責任・ケ

アシステム構築責任部分である

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地域福祉活動計画の概要(わが町の課題解決のための5W1Hを明らかにすること)

様々な住民の不安/生活課題

行政・社協による直接的対応住民参加による対応

社協の役割

支援 充実・働きかけ

理念・目標(まちのあるべき像・思い)

解決・改善

「計画書を作る事業」に終わらせず、計画を実施し、理念を実現する事業に取り組めているか・・・が課題。実施過程のモニタリング(監視)と評価が重要

地域福祉計画との共有・連携

乖離

社協発展・

強化計画の部分

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個別

ニーズ

の発見

アセス

メント

援助目標

計画策定

(サービス調整)

個別援助

実施

個別

問題

解決

地域ニーズ

の検証・

分析

地域資源

の把握

ニーズの普遍化

住民福祉教育

地域組織化

ボランティア育成

ボランティア組織化

当事者の仲間づくり

インフォー

マル資源

の開発

ソーシャル

アクション

活動支援

安定化

拡大化

ネットワーキング(機関・団体間連携)・

ケアシステム構築(効率的問題解決

/多問題対応力強化)

他専門

機関との

連携

生活全般の診断

地域援助の展開

個別援助の展開

ソーシャルワークの実践フロー

地域アセスメント

自立支援

地域ケアシ

ステム構築

コミュニティ再構築

自組織の機能強化

地域福祉計画・活動計画書の構成

� ① 地域の問題・課題の状況

� ② 地域福祉の目標

(問題・課題の解決像)

� ③ 具体的に取り組む事業・開発資源や

組織編成・システム構築

� ④ ③を、誰が、どのように、いつまでに

進めるのか

� ⑤ 人・財源の手当てや推進組織体制

� ⑥ 計画評価方法

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実施計画(アクションプラン)

計画の体系

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地域福祉計画・活動計画策定における住民参加

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地域福祉(活動)計画策定における住民参加

� 地域福祉活動計画は、「住民活動の計画」であるので、その策定過程への「住民参加」が大原則

� 行政・社協・専門家等が自分の思いで作成し、住民に押し付けるものではない

� 現状を把握し、意見を出し合い、あり方との乖離(生活課題・社会問題)をみつけ分析し、その解決方策や役割分担を話し合う・・・という過程が、終始「住民参加」「住民主体」の下で進められることが重要

� 住民だけでは担いきれない課題を、しかるべき機関にどのように伝えていくかの方策も盛り込まれる

� 計画策定過程への住民参加そのものが、住民の自覚と活動参加意欲を引き出し、活動母体の組織化にも発展していく(住民のエンパワメント/主体的住民の育成過程でもある)

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地域福祉(活動)計画策定における住民参加の意義

住民との合意形成単なるニーズの表出だけにとどまる

参加でなく、社会福祉サービスの提

供体制やサービス利用に至るアク

セス等の自立生活支援体制(提供

システム)の決定、そして実際に運

用するソーシャルワーク・ケアワー

ク実践へのモニタリングや苦情解決

のあり方(モニタリングシステム)の

決定、それらにおける役割分担の

決定など重要なものである。これら

いずれも利用主体であり参加主体

でもある住民を抜きにしては決定す

ることができない、とりわけ当事者を中心とした参加が重要になる。

住民の福祉教育計画策定を通じて様々な生活課題を

あぶり出し、その解決について住民が

一緒に考える場面づくりを行い、地域

における住民の偏見や差別の解消、

相互理解をはかるとともに、住民の福

祉理解や参加を促す重要な啓発を行

う。福祉教育的効果を実態化していく

ためには、単なる情報提供や担い手

としての役割依頼にとどまらず、策定

過程において計画実施や進行管理の

主導権を住民に積極的に委譲してい

くこ必要があり、委譲される権限を担

いうる力量の育成・支援も並行して取り組まれなければならない。

住民主体形成(活動主体、利用者主体、計画策定主体)

20

住民とは誰か

� 当然、生活課題を抱える住民、いわゆる当事者の参加が不可欠

� ここでいう当事者とは決して障害者や高齢者等の組織や親の会・家族会といった協議の当事者を指しているのではなく、生活課題を抱えるあらゆる人たちの参加を意味する

� 当事者参加はニーズ把握の側面でだけではなく、利用者主体形成の側面からも強調される必要

� 当事者を中心とした住民参加と一般住民の参加は区別して別々に取り組まれるべきものではなく、交流を深め相互に理解と学習をしつつ展開され、いわゆる心理的環境改善や心のバリアを取り除く機会とする必要

� 児童福祉対策を児童視点で考えることも・・・

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地域福祉(活動)計画策定における住民参加の具体的方法

� 社協の中に計画策定委員会や作業部会等を設置し、計画内容について合意形成を図りながら策定。また委員会傍聴の促進

� 計画策定のアドバルーンを上げる意味でも愛称公募など

� 住民アンケートなどにより、地域の現状、住民ニーズ、住民意識などを把握

� 住民懇談会などにより、地域の現状、住民ニーズ、住民意識などを把握

� 当事者アンケートなどにより、当事者が抱える課題に焦点を絞ってニーズ把握

� 当事者懇談会や当事者(団体)ヒアリングなどにより、当事者が抱える課題に焦点を絞ってニーズ把握

� 新たなニーズを把握する当事者参加の工夫(小中高校生へのアンケート、懇談会など)

� 公聴会や広報紙により計画策定状況をPRし意見募集

� 策定過程は常に晒され、住民の合意形成の下で策定

住民は何を担うのか?

� 制度的な(フォーマル)サービス(法令に基づくサービス)例)生保、施設、在宅、

・・・・利用要件アリ

� 非制度的な(インフォーマル)サービス

(法令に基づかないサービス)例)住民・ボランティア活

動、営利サービス・・・利用要件ナシ

「心」や「気持ち」の問題・ニーズ対応は、共感原理に基づく自助・共助が不可欠

住む

費やす

働く

育てる

癒す

遊ぶ

学ぶ

交わる

第13次国民生活審議会「国民生活指標」(PLI)

他にも生活分類の指標・枠組みは色々あるが、一例として

「住民参加」「住民参加」と言うけれど

一方、「孤独」

ニーズへの対

応は公的には対応しにくい

24時間見守り・

介護をしてと言われても無理

過剰期待や

強制は避け、

役割分担を意識した連携・協力要請が肝要

より豊かに生きる部分

=憲法13条保障

生活の基盤を支える部分=憲法25条保障

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自立支援の考え方と地域福祉� 「日常的・継続的支援体制による伴走型援助の必要」「住民活動には住民活動の独自の価値・論理がある」と言いましたが・・・

� 住居・仕事・生活費を国がお世話すればいいんでしょ・・・・・・・という話にはならない!!

(2002年から始めたホームレス支援活動で) 当初は、生活保護受給の支援を行ったのですが、路上からアパート生活に移った人たちの中に、寂しさからアルコール依存となり、数名が誰にも看取られずに死んでいきました。

「人は経済的自立のみでは幸せになれない」という現実に直面し、社会に復帰し、継続した地域での生活を営むためには「誰かとつながっていること」が重要だと思い知らされたのです。自分が誰かに大切だと思われている実感、大切な誰かが居るという実感がその人にあれば、生きていくうえで大きな力となるのです。

「NPO法人岡山ホームレス支援きずな」ニュースレターNo.20 2014.3

理事豊田佳菜枝さんの投稿記事より引用

公助

共助

単なる補完ではない

「公助」「共助」「近助」「自助」の位置と機能

自助

近助(共助の一部)

共助

(互助)

公助

アソシエーション型のボランティア活動コミュニティ型の地区社協や町内会活動

地区社協や町内会自治会よりも、さらに身近な「向こう三軒両隣」のお付き合い・永年の関係性の延長での、よりきめ細かな見守り支え合い活動

本人自身の取り組み、家族や親族での支え合いや、貯蓄に(お金でのサービス購入)よる対応

社会保障制度による支援

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ウエッブ夫妻(S&B Webb)の「繰出梯子理論」

� ウエッブの繰出梯子理論(Extension Ladder theory)は、国民の最低生活の維持には、普遍性、公正性、完全性、継続性が要求されるため、財政的基盤の安定した国家責任(=公営)に於いて行われるのが最良であるが、それを下部構造としつつ、民営社会福祉の「発明と創意」「特定のケースに充分な援助を与えられる点」「強い宗教的感化」などの利点を挙げ、上部構造として民間(=私的)の存在意義を重要視するもの

(S&B Webb『産業民主制論』(1897年)

民間

公営

先駆性、開

拓性、ニッチ

性、精神性、宗教性、等

安定性、継続

性、普遍性、公平性、等

S.R.アーンスタイン「市民参加の8階梯」

8 住民によるコントロール(citizen control)

事業や組織の運営に住民が自治権を持っている状態

市民権力(citizen power)

7 委任されたパワー(delegated power)

住民側により大きな決定権が与えられている状態

6 パートナーシップ(partnership)

住民と権力者との間で決定権が共有されている状態

5 懐柔(placation)

住民の参加は認めるが決定権限は権力者が保留する状態

形式的参加

(tokenism)4 意見聴取

(consultation)意見反映の有無は不明なアンケート調査やワークショップの実施

3 お知らせ(informing)

一方的な情報提供(パンフレット、ポスター)や形式的な公聴会

2 セラピー・慰め(therapy)

住民の不満感情を宥めるガス抜きとしての参加 非参加

(被支配)(nonparticip

ation)1 操り(manipulation)

決定事項への誘導、住民参加の泊付け、アリバイ作りのための参加

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地域福祉計画・地域福祉活動計画策定体制と策定過程

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地域福祉(活動)計画策定体制の一例

計画策定委員会(親委員会)

作業・調整委員会

障害部会

低所得部会

児童部会

高齢部会

一人親部会

地区部会

策定

事務局

(PT)

コンサ

関連部署

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開始期(策定委員

会・部会招

集~調査・

ヒアリング・

懇談会等実施)

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地域福祉(活動)計画策定期間の目安

� 一般的に、計画策定の構想~計画書完成までは2年程度は必要

準備期(策定体制・

手法・期間

などの下拵え)

2ヶ月程度 6ヶ月程度

作業期(ニーズ分

析~計画素

案作成~広

報・中間報

告・公聴会・

パブリックコメント等)

仕上期(素案修正

~第二次広

報・中間報

告・公聴会・

パブリックコメント等)

完成期(議会・予算

などの調整、

実施体制整

備、計画書

印刷・ダイ

ジェスト版印刷等)

6ヶ月程度 6ヶ月程度 4ヶ月程度

成(発

表・

説明会)

地域アセスメントの必要性(個別支援との関係で整理すると)

� 個別支援では、要援護者のニーズアセスメントが一般的� その結果を基に、援助目標と援助計画が立てられ、援助が展開� アセスメント情報は共有され保管され更新される� エンパワメントの観点から、アセスメントや援助計画策定過程に当事者自身が参加したりセルフケアマネジメントが重視

個別支援

� 「ただ何となく」「漠然と」関わればよいというのでなく、地域アセスメントの見立てに基づき、援助目標(仮説)や援助計画を策定し、科学的に介入していくことが期待� 地域アセスメントは地域福祉推進の基本技術・必須業務であり、専門職は管轄する全ての地区について地域アセスメントを実施する� コミュニティ・エンパワメントの観点から、住民と協働で地域アセスメントを行う必要

地域支援

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支援する(=地域アセスメントの)圏域は?

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市町村地域福祉活動計画

小地域福祉活動計画

地域診断の枠組み・項目(案)①地理的・歴史的・社会的・文化的・政治的概要

・行政区域、面積、地形、気候、土地利用状況、地域交通、住宅等の状況、歴史・経済・産業・風景、犯罪、疾病、自治会長選出システムや住民意識、学区や道路や行政境界による住民意識分断など、担当地区の概要、地図(地理的・行動的地域の特徴、資源、拠点などを書き込んだもの)も作成

②人口・世帯統計(経年推移も)

・年齢別、男女別、世帯数、人数、居住形態累計、など統計的概要

③要援護者の状況と地域課題

・身体障害、知的障害、精神障害、高齢者、高齢者のみ世帯、高齢者単身世帯、ひとり親世帯、生保、福祉資金、児童、民生委員、福祉委員等、統計的把握だけでなく各担当者が把握しているケース/個別ニーズも、住民の不安、不便の声(福祉に限らず)

④福祉・保健・医療関係機関の設置および事業活動の状況

・専門職の状況

⑤インフォーマルな組織や活動

・ボランティア・市民活動団体・自助グループ等の活動状況ならびに企業・NPOなどの活動状況、地域団体・人材(地域のキーとなる団体・人物)

⑥特記事項(視診の評価、住民・団体同士の葛藤など)

過去30年程の経年推移や、他地区・自治体・都道府県平均データ等との比較も

資源の状況(強み)

課題の

状況(弱み)

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地域診断シート (神奈川県社協版)

� 地区名

� ①主な公共施設

� ②福祉・保健・医療関係機関等

� ③地域特性(ハード面・ソフト面の概況)

� ④ボランティア・市民活動団体・自助グループ等の活動状況ならびに企業・NPOなどの活動状況

� ⑤地域団体・人材(地域のキーとなる団体・人物)

� ⑥地域課題

� ⑦自社協や先輩職員の地域課題への取り組み

� ⑧関係者へのヒアリング内容

� ⑨相関関係図(要援護者と住民活動など)

� ⑩自分自身の地域課題についての感想

� ⑪自分が社協職員として今後取り組んで行きたいこと

神奈川県座間市社協が開発したアセスメントシート

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地域課題の炙り出し・明確化(=分析)順位付けと活動方針・内容検討(=計画化)

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地域アセスメントの視点と枠組み

③地区視診(まち点検+α)

①様々な統計データ

④インタビュー・懇談(当事者の声)

地域アセスメント

②様々な資源のリストアップ

人材育成・活動母体組織化・活動開始等の実践

36

小地域福祉活動計画(地区社協計画)の策定

� 市町村域よりもさらに小さな、学区、町内会・自治会、地区社協等の単位で策定される計画

� これらを全市町村域で集約したものを「○○市地域福祉活動計画」としているところもある

� 小地域福祉活動計画は法的根拠や規定はないので、決まった体裁や様式はない。計画書は、数十頁の冊子になることもあるし、プリント1枚で収まる場合もある

� 基本要素は「課題」「目標」「対策・方法」「資源」「期間」(5W1H)があれば計画書

� 地域福祉活動計画と概ね同様の手順で策定される

地域アセスメントを地域住民が行え

るようになれば(力が付けば)、住民

自身の手による小地域福祉活動計画の策定も視野に入ってくる

島根県社協・静岡市社協等で強力に策定を推進

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〔補論〕

社協の本務と「社協・生活支援活動強化方針」

38

社協の法的根拠(社会福祉法第109条)

市町村社会福祉協議会は、一又は同一都道府県内の二以上の市町村の区域内において次に掲げる事業を行うことにより地域福祉の推進を図ることを目的とする団体であって、・・・(以下省略)

一 社会福祉を目的とする事業の企画及び実施二 社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助三 社会福祉を目的とする事業に関する調査、普及、宣伝、連絡、調整及び助成

四 前三号に掲げる事業のほか、社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図るために必要な事業

(社協の記述に関しては)「厳密な活動領域や事業範囲の規定を設けるべきではない」「制限列記にならないよう」

(木村忠二郎 「社会福祉事業法の解説」 1951 時事通信社)

社協活動の無限性・柔軟性を担保

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39

地域住民、社会福祉を目的とする事業

を経営する者及び社会福祉に関する活動

を行う者は、相互に協力し、福祉サービス

を必要とする地域住民が地域社会を構成

する一員として日常生活を営み、社会、経

済、文化その他あらゆる分野の活動に参

加する機会が与えられるように、地域福祉の推進に努めなければならない。

社協が推進すべき「地域福祉」とは?~社会福祉法第4条「地域福祉の推進」~

40

多様な「地域福祉の推進」方法

�地域福祉の到達点や推進方法は様々

� だから、地域・住民・ニーズ立脚主義が大切

地方ごとに、市町村ごとに、地区・集落ごとに、住民の福祉課題・ニーズのみならず、その背景となる環境・地理・条件・生活様式・価値意識も違えば、目指すべき地域福祉像も違う。さらには、地域福祉像にいたる道(社協の活動・援助・方法)も無数・無限にある

皆、登る山、ルート、登り方が違う

市町村内の、地区ごとの、集落ごとの地域課題や住民ニーズを把握できているか?

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41

地域・住民・ニーズに立脚した事業・活動を展開するために

(前頁の続き)

� だから、地域・住民・ニーズ立脚主義が大切

� 要援護者を含む地域住民の「困難」と「思い」への気づきが出発点(「困った人は困っている人である」勝部麗子さん)

� インタビュー、座談会、調査、踏査、視診、統計、地図などを通じた地域アセスメントが必要

ソーシャルワーク/ケアマネジメントの出発点が、利用者アセスメン

トであるのと同様。その対象が「個人」か「地域(住民)」かが違う

だけ。地域に関わるために必須。住民と一緒に行う場合もある

使命:地域福祉の推進「新・社協基本要項」

「これからの地域福祉のあり方研究会報告」

「全社協福祉ビジョン2011」

「社協職員行動原則」

「社協・生活支援活動強化方針」

ボラン

ティア

タ|

デイサ|ビス

居宅

支援

老人クラブ事

務局

日常生

立支

事業

・・・

ソーシャルワーク(特にコミュニティワーク)

社協の使命と各部門・各事業の関係

地域福祉の

推進・社協の

使命を全員が意識した業務遂行が必要=意識改革・組織改革

等を全職員が理解し、使命実現に向けた行動・思考をすることが求められる

館管理

発展強化計画

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社協はソーシャルワーク機関

� 社協は、住民のニーズに機敏・きめ細かく柔軟に対応し、様々な方策を駆使し問題解決を図ろうとするソーシャルワークの専門援助機関である。

� 社協の職員は、個のニーズを課題の普遍化を行い、地域に投げかけ、解決に取り組む、「地域を基盤としたソーシャルワーク(=コミュニティ・ソーシャルワーク)」を担う、ソーシャルワーク専門職である。

� さらには、限定的領域での特定・定型的な援助実践ではないため、広範な知識・関心に加え、鋭敏なセンス、高度な技術が必要

福祉制度適用の執行官としての仕事論・役割ではなく、「地域住民」が抱える「生活課題」全般への対応を目指す

福祉制度の外に生活・地域・社会問題がいっぱい~無縁社会化により深刻・重度な問題として顕在化・先鋭化~

高齢者福祉制度

制度が対応していない生活上の細々した諸問題

住民生活

ストレス・虐待・暴力

孤立/孤独死

多重債務

訪問販売・詐欺等の経済被害

ひきこもり・

ニート/不登校

・保健室登校

滞日外国人

ホームレス

アルコール・ギャンブル等依存

累犯障害者/

出所者

自殺

非正規雇用失業・就労困難

同和問題

HIV・ハンセン病等の難病

犯罪被害者

etcゴミ屋敷・ネコ屋敷

ひとり親世帯児童

児童福祉制度

障害者福祉制度

その他福祉制度

介護疲れ

昼間独居

子育て

財産・家計

の管理差別・無理解

家屋管理

閉じこもり

外出・移動

性的マイノリティ

災害弱者支援・災害への備え

潜在的知的障害者・発達障

害者の社会的不適応・排除

潜在的貧困

潜在的認知症高齢者

セルフ

ネグレクト

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社協・生活支援活動強化方針①~地域における深刻な生活問題の解決や孤立防止に向けた社協活動の方向生~(2012.11.06/全社協)

①あらゆる生活課題への対応私たちは、地域住民から寄せられる多様な生活課題を受け止め、地域を基盤にして解決につなげる支援やその仕組みづくりを行います。とりわけ、経済的困窮やひきこもり、孤立、虐待諺権利侵害など潔刻な地域の生活課題について、地域住民、民生委員・児童委員、社会福祉施設、専門機関、ボランティア・NPO団体や行政など地域における幅広い協働・連携の場づくりや仕組みづくりを行い、その解決や予防に向けて取り組みます

②相談・支援体制の強化私たちは、生活福祉資金貸付事業や日常生活自立支援事業、ボランティア活動、心配ごと相談事業及び総合相談事業などの実績を活かし、総合相談・生活支援への取り組みを一層強化します。

③アウトリーチの徹底私たちは、これまでのコミュニティワークや個別支援の実践を基礎に、アウトリーチ(地域に出向いていくこと)を徹底し、制度の狭間や支援につながりにくい生活課題を発見し、問題解決に向けた事業展開と支援のネットワークづくりに取り組みます。

④地域のつながりの再構築私たちは、民生委員・児童委員及び社会福祉施設との連携のもと、小学校区や自治会、町内会などを単位とする小地域における住民主体の福祉活動を一層強化するとともに、ボランティア・市民活動センター(担当)の取り組みと一体となって、ボランティア・NPO団体、地域の各種団体との協働の取り組みを広げ、地域のつながりの再構築を図り、だれをも排除しない地域社会づくりを進めます。

⑤行政とのパートナーシップ私たちは、地域における深刻な生活課題への総合相麟。生活支援体制の構築、さらには日常生活自立支援事業、

成年後見制度等の権利擁護への体制整備などについて行政に協議や働きかけを進めます。また、地域福祉計画と地域福祉活動計画の一体的な策定をすすめ、行政とのパートナーシップによる地域福祉施策の充実に取り組みます。

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社協・生活支援活動強化方針②~地域における深刻な生活問題の解決や孤立防止に向けた社協活動の方向生~(2012.11.06/全社協)

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