地生態学からみた 日本の植生isbn978-4-8299-6540-5 ndc471 2018年11月中旬発売...

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地生態学からみた 日本 植生 “植物はなぜそこにあるのか” 高山のコマクサ、火山のシラタマノキ、太平 洋側山地のブナ、河原のカワラノギク、湿原のシデコブシなど、個々の植物の分布には 限りがあり、場所が変われば別の種に移り変わる。その謎を地形・地質や自然史をベー スに解き明かす‘地生態学’の方法を使い、具体的事例を取り挙げて詳しく紹介。自 然全体を「つながり」の視点で読み解くための目の付け所や手順がわかる。 定価:本体 6,000 円+税 A5 判 上製 448 ページ ISBN978-4-8299-6540-5 NDC471 2018 年 11 月中旬発売 本書の特長 ❶日本全国約 30 カ所の自然景観(植生)の成り立ちを解説 ❷地生態学に基づく調査方法やデータを詳しく紹介 ❸自然環境の保全アプローチに関する示唆が満載 ❹多数の図表を駆使した解説 ❺自然ガイドの手引きとして活用できる有用で豊富な情報 ❻参考となる文献情報が充実 小泉武栄 ご回覧ください ※表紙はイメージです 高山から低地、河川まで調査事例が満載。 生態学、ランドスケープエコロジー、林学、自然地理学、 ジオパークなどの関係者や自然ガイドの必読文献 小泉武栄(こいずみ たけえい) 1948 年長野県飯山市生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得。理学博士。東京学芸大学教授を経て現在、名誉教授。専門は自然地 理学、地生態学。著書に『山の自然学』(岩波新書)、『日本の山はなぜ美しい』(古今書院)、『自然を読み解く山歩き』(JTBパブリッシ ング)、『ここが見どころ日本の山』(文一総合出版)、『登山と日本人』(KADOKAWA)、『日本の山と高山植物』(平凡社新書)など多数。 文一総合出版

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Page 1: 地生態学からみた 日本の植生ISBN978-4-8299-6540-5 NDC471 2018年11月中旬発売 本書の特長 日本全国約30カ所の自然景観(植生)の成り立ちを解説

  地生態学からみた

日本の植生“植物はなぜそこにあるのか” 高山のコマクサ、火山のシラタマノキ、太平洋側山地のブナ、河原のカワラノギク、湿原のシデコブシなど、個々の植物の分布には限りがあり、場所が変われば別の種に移り変わる。その謎を地形・地質や自然史をベースに解き明かす‘地生態学’の方法を使い、具体的事例を取り挙げて詳しく紹介。自然全体を「つながり」の視点で読み解くための目の付け所や手順がわかる。

定価:本体6,000 円+税 A5判 上製 448ページISBN978-4-8299-6540-5 NDC471

2018年 11月中旬発売

★本書の特長❶日本全国約 30カ所の自然景観(植生)の成り立ちを解説❷地生態学に基づく調査方法やデータを詳しく紹介❸自然環境の保全アプローチに関する示唆が満載❹多数の図表を駆使した解説❺自然ガイドの手引きとして活用できる有用で豊富な情報❻参考となる文献情報が充実

小泉武栄 著

ご回覧ください

※表紙はイメージです

高山から低地、河川まで調査事例が満載。生態学、ランドスケープエコロジー、林学、自然地理学、ジオパークなどの関係者や自然ガイドの必読文献

小泉武栄(こいずみ たけえい)1948年長野県飯山市生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得。理学博士。東京学芸大学教授を経て現在、名誉教授。専門は自然地理学、地生態学。著書に『山の自然学』(岩波新書)、『日本の山はなぜ美しい』(古今書院)、『自然を読み解く山歩き』(JTB パブリッシング)、『ここが見どころ日本の山』(文一総合出版)、『登山と日本人』(KADOKAWA)、『日本の山と高山植物』(平凡社新書)など多数。

文一総合出版

Page 2: 地生態学からみた 日本の植生ISBN978-4-8299-6540-5 NDC471 2018年11月中旬発売 本書の特長 日本全国約30カ所の自然景観(植生)の成り立ちを解説

86 第Ⅱ部 高山帯の地生態学

図1–4 植生図

木曽駒ヶ岳(本岳)

風衝地植物群落雪田植物群落

無植生地(残雪跡)人による植生破壊地

階段状構造土雪食凹地(雪窪)岩塊地(強風地型)岩塊地(雪窪型)

ハイマツ群落

中岳

2956 m

2933 m

100 m

100 m

図1–5 地形分類図

下記にご記入のうえ、お近くの書店にご注文下さい。

地生態学からみた日本の植生 の購入を申し込みます定価:本体6,000 円+税 ISBN978-4-8299-6540-5購

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株式会社 文一総合出版 〒 162-0812 東京都新宿区西五軒町 2–5 TEL. 03–3235–7341 FAX. 03–3269–1402 https://www.bun-ichi.co.jp/

はじめに序章 生物多様性と地生態学第Ⅰ部 地生態学概論 第1章 地生態学とは何か 第2章 地生態学の歴史  第3章 地生態学の流れ 日本の地生態学 第4章 地生態学の課題と手順 第Ⅱ部 高山帯の植生 第1章 中央アルプス木曾駒ヶ岳高山帯の自然景観  第2章 北アルプス白馬岳の植生   第 1 節 白馬連峰の高山荒原植物群落   第 2 節  白馬連峰鉢ヶ岳の蛇紋岩強風地の植生   第 3 節  鉢ヶ岳の花崗斑岩地と砂岩・頁岩地の植生  第3章  花崗岩からなる中央アルプス檜尾岳の植生  第4章  北アルプス蝶ヶ岳の植生分布と地質条件  第5章  南アルプス赤石岳の植生分布と地質条件 第6章 白馬岳高山帯「節理岩」における植生遷移と斜面発達  コラム レバノン山脈の地形と植生と川 第Ⅲ部 山地帯・丘陵帯の植生 第1章  奥多摩三頭山・ブナ沢における森林の立地 第2章 飯豊山地の風食と植物群落  第3章 東北日本の多雪山地における地すべり起源の植物群落  第4章  多摩地域におけるカンアオイ類の分布と

地形の生い立ち コラム 東京のカタクリは氷期からの生きた化石 第Ⅳ部 火山の植生 第1章 遷移途中の火山植生から推定した御嶽の噴火活動  第2章 磐梯山爆発カルデラ内の植生分布  第3章 乗鞍火山の高山植生 コラム  八ヶ岳連峰、硫黄岳・横岳鞍部におけるコマクサの分布第Ⅴ部 蛇紋岩・橄欖岩地、石灰岩地の植生 第1章 アポイ岳の植生  第2章 早池峰山の植生 コラム 秋吉台と平尾台のカルストを比較する第Ⅵ部 永久凍土地域の植生 第1章 大雪山・小泉岳の植生 第2章 極北の島・エルズミア島の植生 第3章 黄河源流地域の植生 コラム  アカエゾマツとミズバショウのつくる静かな空間   ─北海道根室半島落石岬 第Ⅶ部 ニュージーランドの自然 第1章 ニュージーランドの氷河と植生─日本との対比を通じて 第2章  北島・トンガリロ国立公園の自然を読む第Ⅷ部 河川と水辺の植生 第1章 40 年ぶりによみがえった多摩川のカワラノギク  コラム 東海丘陵要素植物群の分布と地質の成り立ち  第2章 渥美半島のシデコブシ  コラム 沖縄県・具志頭海岸の植生分布 コラム  伊豆半島・大瀬崎の礫洲に成立したビャクシンの林おわりに引用文献

目 次197

第1章 �奥多摩・三

頭山のブナ沢における

地質・地形と森林の立

研究のきっかけ

私は大学院時代からず

っと高山帯で地質と植

生分布の関わりを研究

してき

たが、調査を進めるう

ちに、高山帯より低く

、森林に覆われた山地

帯では地

質の影響はどのように

表れるのだろうかとい

うことが疑問になって

きた。秩

父の山のような低い山

を歩いていても石灰岩

地やチャートがあると

、そこだ

け突出したり、植物が

乏しかったりするため

、その存在を知ること

ができる。

蛇紋岩地についても同

様なことがいえる。し

かしながらただ山地帯

の山に

ついては、それまで詳

しい調査をした体験が

ないため勝手がわから

ない。そ

こで当時共同で調

査を行うことの多

かった鈴木由告氏

に相談したところ

ちょうど今、奥多摩の

三頭山で河畔林の調査

を始めたところなので

、そこが

いいかもしれないと、

三頭山を紹介してくだ

さった。そこで清水長

正氏や学

生諸君を交え、どんな

テーマが成立するかを

、2,3日一緒に歩いて

検討した。

その結果、地質によっ

て斜面の険しさが異な

り、土壌やその上に載

る森林の

タイプが違うというこ

とが予察的に確かめら

れたので、いくつかの

テーマを

設定し、並行して調査

を始めた。しかし残念

なことに、調査を始め

ていくら

もたたないうちに鈴木

由告氏は病を得て入院

され、彼が中心になっ

て進めて

きた河畔林の調査は、

私のゼミの女子学生が

テーマをいただいて進

めること

になった。

1.ブナ沢の地形・地

質、斜面形と樹木の分

三頭山は東京の奥多摩

湖の南に位置する標高

1,528 mの山である

。この山

では標高1,120 m

ほどにある三頭の大滝

が遷急点になっていて

、滝より上流

側は滝の下方に比べて

相対的になだらかな山

地を形成している。大

滝より上

流側の地質は、中生代

白亜紀の小仏層群に属

する砂岩・硬砂岩と、

それに貫

入した石英閃緑岩から

なるが、主要な沢であ

る三頭沢においても支

流のブナ

沢においても、両者の

間にははっきりとした

地形や土壌の違いがあ

り、そこ

87第 1章 中央アルプス木曾駒ヶ岳高山帯の自然景観

2.植生分布と地形分類

現地調査と空中写真の判読により、最初に植生図(図 1–4)と地形分類図(図 1–5)を作成した。植生図は高山帯の極相植生にあたるハイマツ群落と、それ以外の群落に分けて示した。冬場は広い鞍部を西からの強風が吹き抜けるため、植生図の左側一帯は風

衝植物群落が優勢で、それを囲むようにハイマツが分布する。ただし強風地でも斜面上の岩塊の背後など、ちょっとした凸部の背後に丈の低いハイマツが点々と現れる。その東には登山者による人為的な植被の破壊地が広がる。残念なことだが、昔の登山者が野放図な歩き方をしたため、広い面積にわたって植被が破壊されてしまった。これに続く部分は、強風地から吹き払われてきた雪が堆積する場所にあた

図1–6 階段状構造土

図1–7 木曽駒ヶ岳の階状土の断面

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