「民法改正総ざらい ① 」~公益法人改革三法につ …3 (2)法人格...

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1 「民法改正総ざらい①」~公益法人改革三法について~ 発表者:弁護士 宗野恵治 第1 公益法人改革三法の成立と民法改正 ・「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(一般法) ・「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(認定法) ・「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認 定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(整備法) 以上の3法が平成18年5月26日に成立し、同年6月2日に公布された。こ れら3法は平成20年12月1日までに施行される予定であり、現行のいわ る公益法人の移行期間は施行日より5年間とされている。 新法の施行により、一般社団・財団法人及び公益社団法人・財団法人という 新制度に移行し、民法から公益法人に関する規定が大幅に削除ないし改正さ れ、従来の民法法人の根拠は失われることになり、民法には法人法定主義(民 法33条)など通則的な規定が5か条のみ残されることとなる(別紙1参照) なお、中間法人法も廃止され、中間法人は一般社団法人制度に統合されるこ とになっている。

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「民法改正総ざらい①」~公益法人改革三法について~

発表者:弁護士 宗野恵治

第1 公益法人改革三法の成立と民法改正

・「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(一般法)

・「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(認定法)

・「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認

定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(整備法)

以上の3法が平成18年5月26日に成立し、同年6月2日に公布された。こ

れら3法は平成20年12月1日までに施行される予定であり、現行のいわゆ

る公益法人の移行期間は施行日より5年間とされている。

新法の施行により、一般社団・財団法人及び公益社団法人・財団法人という

新制度に移行し、民法から公益法人に関する規定が大幅に削除ないし改正さ

れ、従来の民法法人の根拠は失われることになり、民法には法人法定主義(民

法33条)など通則的な規定が5か条のみ残されることとなる(別紙1参照)。

なお、中間法人法も廃止され、中間法人は一般社団法人制度に統合されるこ

とになっている。

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第2 現行の公益法人制度との違い(ポイント)

(現行制度) (新制度)

◎法人設立等の主務官庁制・許可主義 ◎主務官庁制・許可主義を廃止(準則主義)

◎法人の設立と公益性の判断が一体的 ◎法人の設立と公益性の判断を分離

(主務官庁による認定・許可) (内閣総理大臣又は都道府県知事による認定)

第3 新制度の概要について

1 一般社団法人・一般財団法人

(1)一般社団・財団法とは

一般社団・財団法は、剰余金の分配を目的としない社団又は財団について 、

その行なう事業の公益性の有無にかかわらず、準則主義(登記)により簡

便に法人格の取得することができる一般的な法人制度を創設し、その設

立、組織、運営及び管理について定めるものである。

民法の社団法人・財団法人

◎法人の設立 一

主務官庁の許可 体

◎公益性の判断 的

主務官庁の自由裁量

②公益性の認定(認定法)

【公益社団法人・公益財団法人】

一般社団法人・一般財団法人からの申請に対

して、民間有識者からなる合議制の機関(公

益認定等委員会)の意見に基づき内閣総理大

臣又は都道府県知事が認定

(公益認定を受けても法人格は一般社団・財

団法人のまま)

①法人の設立(一般社団・財団法人法)

【一般社団法人・一般財団法人】

登記のみで設立(準則主義)分離

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(2)法人格

会社と同じく準則主義(登記)により法人格を取得。

(3)設立

【一般社団法人】

社員となろうとする者2名以上が共同して定款を作成し、公証人の認証を

受けなければならない(一般法10、13)。

【一般財団法人】

設立者が定款を作成し、公証人の認証を受けなければならず(一般法15

2、155)、設立時に拠出される財産の価額の合計額は300万円を下

回ってはならない(153②)。

(4)組織

【一般社団法人】

必要的機関:社員総会、理事/任意的機関:理事会、監事、会計監査人

・理事会を置かない場合、代表理事の選任は必ずしも必要ではなく、理事

は法人の業務を執行する権限を有し、原則として各理事が法人を代表す

る(一般法77①②)が、代表理事を定めた場合はそれ以外の理事は代

表権を失う(一般法77①)。

・理事会を置く場合には、業務執行の決定は理事会が行ない、その業務執

行の決定に基づき、代表理事又は業務執行理事が法人の業務を執行する

(一般法91①)。代表理事は理事会が必ず選定しなければならない。理

事会又は会計監査人をおく場合には監事を置く必要がある。

・大規模一般社団法人(最終事業年度における貸借対照表上の負債額が2

00億円以上)には会計監査人の設置が義務付けられている。

◎一般社団法人が公益性認定を受けるには、必ず理事会及び監事を置く必

要がある。

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【一般財団法人】

必要的機関:評議員、評議員会、理事、理事会、監事

/任意的機関:会計監査人

・理事の権限は、理事会が設置された一般社団法人と同様。

◎評議員及び評議員会は、概ね一般社団法人の社員及び社員総会に相当する

権限(理事等の選解任や定款変更、計算書類の承認等の法人の基本的を決

議する権限など)を持つ機関である。これは、一般財団法人では主務官庁

による監督がなく、一般社団法人のような社員総会もないため、業務執行

機関である理事が目的に反する恣意的な運営を行なうことが懸念される

ため、理事を牽制・監督する役割を担わせるために新設された。

・評議員も法人の役員であり、財団とは委任関係にあり、報酬も定款で定め

る必要がある。評議員の任期は原則4年であるが、定款の規定で6年まで

伸長することができる(一般法174①)。評議員は3人以上選任する必

要があり、その選任及び解任の方法は定款で定める必要があるが、理事の

業務執行を監督するという地位に鑑み、評議員を理事又は理事会が選任す

るものとすることはできない(一般法153③)。

・大規模一般財団法人(内容は大規模一般社団法人と同様)については、

会計監査人の設置が義務付けられている(一般法171)。

2 公益社団法人・公益財団法人(公益性認定)

◎公益目的事業を行なう一般社団法人・一般財団法人は公益認定を受ける

ことにより、それぞれ公益社団法人・公益財団法人になることができる。

・公益目的事業とは、「学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に

掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与す

るもの」(認定法2四)とされているが、公益認定を受けるためには、公

益目的事業を主たる目的とする他に、認定法5条各号に掲げる要件を全

て充たし、かつ同法6条の欠格事由のいずれにも該当しないことが必要。

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・公益認定等を行なう行政庁は、内閣総理大臣又は都道府県知事とされて

いるが、公益認定や公益法人に関する監督等について、行政庁は内閣府

に設置される公益認定等委員会又は都道府県に設置される同様の合議制

の機関に諮問し、その答申に基づいて行なうのが原則。

第4 現行公益法人の新制度への移行・その手続きについて

1 経過措置

◎現行の公益法人は、平成20年12月1日(予定)の施行日から自動的

に「特例民法法人」となり、5年間の移行期間中は存続できる(整備法

40①、42①)。そして、特例民法法人の間は、従前の公益法人と同じ

取扱いがなされ、業務の監督は現行の主務官庁とされている(整備法)。

◎移行期間中は従来の「社団法人」「財団法人」の名称の使用は可能。

・新法での新たな制度(基金の募集や合併)の利用は認められるが、財団

に対する純資産300万円の規制の適用はない。

◎5年間の移行期間中に移行の認定・許可の申請をしなかった、又は移行

の認定・許可を得られなかった法人は移行期間満了の日に解散したもの

とみなされる(整備法46)

⇒ みなし解散の適用を受けないためには、5年の移行期間内に、以下

のいずれかの法人類型への移行手続を完了する必要がある。

・新しい公益社団法人・公益財団法人⇒下記2参照

・新しい一般社団法人・一般財団法人⇒下記3参照

・一旦解散した上で、他の法人類型(NPO法人・学校法人等)に移行

(※但し、一旦清算しなければならないので、残余財産の処分について定款又は寄

付行為の制約があり、また主務官庁の許可を要する(民法72)ことがある)

2 公益認定を受け、新しい公益社団法人・公益財団法人に移行する場合

行政庁に「認定」申請を行い、

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①定款変更案が一般法、認定法及び政令・省令の規定に合致すること

②認定法第5条における公益認定の基準に適合するものであること

の2要件を充たし、認定後2週間以内に登記を行ない、その届出を行なう

ことで、公益社団法人、財団法人に移行できる。

◎不認定の場合も移行期間中であれば何度でも申請することができるが、

移行期間終了間際に申請し、不認定になると処分通知を受けた日に解散

したものとみなされる点が要注意。

3 公益認定を受けず、新しい一般社団法人・財団法人に移行する場合

行政庁に「認可」申請を行い、

①定款変更案が一般法及びその政令・省令の規定に適合すること

②純資産額一定額超の法人は作成した公益目的支出計画が適正で、かつ計

画を確実に実施すると認められるものであること

の2要件を充たし、認可後2週間以内に登記を行ない、その届出を行なう

ことで、一般社団法人・財団法人に移行できる。

◎公益目的支出計画が完了するまでは「移行法人」(整備法123①)とし

て行政庁の監督を受けることになる。公益目的財産額が0になり、行政

庁の確認(整備法124)を経て、一般社団法人・財団法人への移行が

完了することになる。不認可の場合の取扱は、前述の2と同様。

※ 公益目的支出計画の作成・実施とは?

仮にその法人が認可を受けたときに解散するとした場合、旧民法72条

の規定による残余財産の額に相当するもの(公益目的財産額)について

は、本来公益目的のために費消すべきであり、一般社団・財団に承継さ

れるべきでないとの趣旨から、認可にあたり、公益目的財産額を社会に

還元するための計画を作成し、その計画に基づいて支出を行なうことと

されている。

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4 中間法人の取扱い(参考)

【有限責任中間法人】

自動的に一般社団法人に移行し、一般法の適用を受ける(整備法2①)。

ただし、「一般社団法人」という文字を使用する旨の定款変更が必要。

【無限責任中間法人】

有限責任中間法人と異なり、1年以内に移行の登記申請をしないと解散し

たものとみなされる(整備法37①)点に注意が必要。

第三者に対する責任の違いから移行手続は有限責任中間法人よりも複雑

になっている(債権者保護手続など、整備法32)

※中間法人も一般社団法人に移行すれば、認定法による公益認定を受ける

ことも可能。

以 上

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「民法改正総ざらい②」~担保法制改正の要点について~

発表者:弁護士 曾我裕介

第1 改正の背景

従前、執行妨害は民事執行法の改正や裁判例の積み重ねによって抑制され

てきたが、執行妨害を画策して不法な利益を獲得しようとする動きはその態

様を巧妙に変化させ、潜行的なものとなって抵当権者や買受人の権利を侵害

するようになった。そのため、さらなる執行妨害対策が必要とされた。

また、「バブル崩壊」に伴い、不良債権の早期処理も要請されることとな

った。

そのような背景のもとで、権利実現の実効性を確保すべく、担保物権及び

その実行としての執行手続に関する法制についての見直しがなされた(平成

15年8月1日公布・平成16年4月1日施行)。

第2 改正の概要

1 雇用関係の先取特権

(1) 旧法は、先取特権によって担保される債権の範囲について、

①期間を6ヶ月に限定

②主体を雇い人に限定

③被担保債権の範囲を給料に限定

としていた(旧法308条)。

(2) 改正法は、それを

①期間の限定を撤廃

②主体を請使用人に拡大

③被担保債権の範囲を雇用関係に基づいて生じた債権に拡大

することとした(現行法308条)。

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2 指名債権の債権質

(1) 旧法は、債権質の設定にあたっては、債権証書が存在する場合には

その交付が効力発生要件としていた(旧法363条)。

(2) 改正法は、質入債権が譲渡に証書の交付を要する証券的債権である

場合に限って、証書の交付を質権設定の効力発生要件とすることにし、

指名債権の場合には、その債権につき債権証書があるときであっても、

その証書の交付を要しないこととした(現行法363条)。

3 担保不動産収益執行手続

(1) 旧民事執行法は、担保権の実行については、債務者所有の不動産の

収益から債権を回収する制度を設けていなかった。

(2) 改正民事執行法は、担保権者が担保不動産の収益から優先弁済を受

けるための強制管理類似の手続として、担保不動産収益執行の手続を

新設した。

改正民法は、その実体法上の根拠規定として、被担保債権について

不履行があったときは、抵当権の効力が天然果実及び法定果実に及ぶ

ことを明らかにした(現行法371条)。

4 抵当権消滅請求

(1) 旧法の滌除制度では、

①主体は所有権、地上権、永小作権を取得した第三者(旧法378条)

②抵当権者に抵当権実行に先立つ通知義務を課し(旧法381条)、

第三取得者はその通知を受けるまで滌除権を行使できる(旧法38

2条1項)

③抵当権者が対抗措置を採る際に、増加競売義務(増加買受義務)を

課す(旧法384条2項)

④対抗措置としての抵当権者の競売申立期間は滌除の通知から1ヶ月

(旧法383条3号、384条1項)

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とされていた。

(2) 改正法は、名称を「抵当権消滅請求」に変更し、

①主体を所有権取得者に限定(現行法379条)

②抵当権実行の事前通知制度を廃止し、第三取得者が抵当権消滅請求

をなし得る時期を、競売開始決定に係る差押えの効力が生じるまで

の間に改めた(現行法382条)

③増価競売義務(増加買受義務)を廃止

④競売申立期間を通知から2ヶ月間に伸張(現行法384条1号)

⑤競売で買受人が現れず、競売手続が取り消されても、承諾擬制の効

果は生じない(現行法384条4号括弧書)

こととした。

5 一括競売

(1) 旧法は、抵当権設定後に建物を築造したのが抵当権設定者である場

合に限り、その建物を土地と一括して競売することを認めていた(旧

法389条)。

(2) 改正法は、建物を築造した主体の如何にかかわらず、建物所有者が

底地の抵当権者に対抗できる占有権原を有する場合を除き、一括競売

を認めることとした(現行法389条)

6 短期賃貸借

(1) 旧法は、短期賃貸借、すなわち、一定期間を超えない賃貸借は、抵

当権の登記後に登記したものであっても抵当権者に対抗することがで

きるとしていた(旧法395条)。

(2) 改正法は、

①短期賃貸借制度を廃止

②登記した賃貸借は、その登記前に登記がされたすべての抵当権者が

同意をし、その同意について登記があるときは、これをもってその

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同意をした抵当権者に対抗できる(抵当権者同意制度 現行法38

7条)

③抵当権者に対抗することができない賃貸借により建物を使用収益す

る者であって、競売手続の開始前より使用収益する者または強制管

理もしくは担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした

賃貸借により使用収益する者は、買受人の買受けの時から6ヶ月を

経過するまではその建物を買受人に引き渡すことを要しない(建物

引渡猶予制度 現行法395条)

こととした。

7 根抵当権

(1) 旧法は、根抵当権の元本確定事由として、「担保すべき元本が生じ

ないことになったとき」という事由を設けていた(旧法398条ノ2

0第1項1号)。

(2) 改正法は、

①上記の確定事由を削除

②元本確定期日の定めがある場合を除き、根抵当権者はいつでも元本

の確定を請求することができ、請求時に確定の効果が認められる(現

行法398条の19第2項、3項)

こととした。

以上

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「民法改正総ざらい③」~保証について~

発表者:弁護士 竹内千賀子

第1 保証に関する改正

1 改正の背景

保証金額や保証期限に定めのない包括根保証契約の問題点として、保証

人に過大な責任を負わせる可能性のあることや、経営者の新たな事業展開

や再起を妨害することが指摘されていた。

そこで、保証人が負担する責任を予測可能な範囲に限定するなど保証制

度の適正化を図るため、平成16年12月1日民法改正法が公布され、平

成17年4月1日から施行された(別紙3)。

2 改正の内容

(1) 保証の要式行為化

改正前、保証契約の締結は口頭でも可能であったが、改正によって書

面で締結しなければその効力を有しないとされた(446条2項)。なお 、

電磁的記録によってなされたときも、書面によってなされたものとみな

されることとされている(同条3項)。

この要式行為化については、以下に述べる貸金等根保証契約に限らず、

全ての保証について適用される。

(2) 貸金等根保証契約の新設

改正法では、貸金等根保証契約という類型が新設された(465条の

2~465条の5)。

貸金等根保証契約とは、以下の①~③の要件を充たす契約である(4

65条の2第1項)。

① 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(根

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保証契約)であること

② その債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによ

って負担する債務(貸金等債務)が含まれるものであること

③ 保証人が法人でないこと

(3) 貸金等根保証契約の規制

貸金等根保証契約に該当する場合には、以下のような規制が定められ

ている。

ア 根保証契約の極度額規制

貸金等根保証契約の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関

する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及

びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額につい

て、その全部に係る極度額を限度として、その履行する責任を負うも

のとされている(465条の2第1項)。

もっとも、貸金等根保証契約は、極度額の定めを書面でしなければ

無効である(同条2項、3項)。

イ 元本確定期日(保証期限)の規制

① 主債務の元本確定期日の定めがある場合において、その元本確定

期日がその貸金等根保証契約の締結の日から5年を経過する日よ

り後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、

無効である(465条の3第1項)。

② 元本確定期日の定めがない場合には、その元本確定期日はその貸

金等根保証契約の締結の日から3年を経過する日とする(同条2

項)。

③ 元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日

がその変更をした日から5年を経過する日より後の日となるとき

は、その元本確定期日の変更は無効である(同条3項本文)。

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なお、元本確定期日の定め及びその変更については、書面でし

なければ無効である(同条4項)。

ウ 元本確定事由

以下の場合には、貸金等根保証契約の主債務の元本が確定する。

① 債権者が、主債務者又は保証人の財産について、金銭の支払を目

的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てた

とき(465条の4第1号)。

② 主債務者又は保証人が破産手続開始の決定を受けたとき(同条2

号)。

③ 主債務者又は保証人が死亡したとき(同条3号)

(3) 保証人が法人である根保証契約の求償権

保証人が法人である根保証契約であって、主債務の範囲に貸金等債務

が含まれるものにおいて、以下の場合には、その根保証契約の保証人の

主債務者に対する求償権についての保証契約は無効である(465条の

5)。

① 465条の2第1項の極度額の定めがないとき

② 元本確定期日の定めがないとき

③ 元本確定期日の定め若しくはその変更が465条の3第1項若し

くは第3項の規定を適用するとすればその効力を生じないものであ

るとき

(4) 経過措置

改正法施行前に締結された既存の包括根保証契約については、保証契

約の要式性、極度額、保証人が法人である場合の特則における求償保証

契約の規制については、原則として新法は適用されない。

改正に伴う主な経過措置は、以下のとおりである。

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ア 貸金等根保証契約のうち元本確定日の定めのない既存契約

改正法の施行日から起算して3年を経過する日が元本確定日(改正

法附則4条3項)・・・平成20年4月1日

イ 貸金等根保証契約のうち元本確定日の定めのある既存契約

① 極度額の定めがある

施行日から起算して5年を経過する日が元本確定日(同附則4

条2項2号)・・・平成22年4月1日

② 極度額の定めがない

施行日から起算して3年を経過する日までに元本が確定しな

いものは、3年を経過する日が元本確定日(同項1号)

・・・平成20年4月1日

3 問題点

今回の改正では、保証人の資力に見合った極度額を設定するための客観

的な基準は定められず、金融機関の内部基準や債権者との話し合いによる

のみとなっている。

また、保証人に対して、主債務の残高や債務者の資力状態などを通知す

る義務等も定められていない。保証人の保護としてはまだまだ不十分な内

容といえる。保証人がこれら情報を入手できることは、保証人保護の目的

に適うことは勿論、金融機関側からみても、最終的には債権回収不能とい

うリスクを軽減することになるといえる。

これらの観点から、保証制度に関しては更に法整備の余地があるといえ

よう。

以上

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「民法改正総ざらい④」~動産・譲渡担保の対抗要件~

発表者:弁護士 千明諒吉

第 1 改正の背景及び経緯

1 改正の背景

民法上の債権譲渡の第三者対抗要件:確定日付ある証書による債務者への通

知又は債務者の承諾(民467条)

平成10年6月 平成10年法律第104号「債権譲渡の対抗要件に関する

民法の特例等に関する法律」(以下「旧法」)の制定へ

→債権譲渡登記による対抗要件具備が可能となる

平成16年11月 平成16年法律第148号「債権譲渡の対抗要件に関す

る民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律」(以

下「改正法」)の制定(平成17年10月3日施行)

・ 集合債権譲渡担保や債権の流動化・証券化等の場合に、

個別に上記手続をとることは極めて困難

・ 債権の流動化の推進の動きが高まるとともに、第三者対

抗要件具備方法の簡素化を求める要望も強くなる

・ 不動産価値の継続的下落や個人保証への過度の依存を見

直す必要性の認識が広まったことにより、企業の保有す

る動産や債権を活用した資金調達方法に注目が集まる

・ 動産譲渡の対抗要件が占有改定(民183条)のみであっ

たため、二重譲渡/即時取得等との関係での権利確保に問

題があり、活用困難

・ 債権譲渡についても、旧法下では債務者が必要的登記事

項とされていたため債務者不特定の将来債権譲渡に関

する対抗要件具備が不可能

- 17 -

(改正法の骨子)

(1) 動産譲渡:: 法人の行う動産譲渡について公示性に優れた登

記による公示制度を創設し、登記による対抗要件具備

を可能とする

(2) 債権譲渡:: 債務者不特定の将来債権譲渡についても登記に

より第三者対抗要件を備えることを可能とする

2 改正法の概要

(1) 動産譲渡登記制度

ア 動産譲渡の対抗要件につき、民法の定める対抗要件具備方法による

ほか、登記により対抗要件を具備することを可能とした。

① 動産に限定なし: 集合物に限られず、高額の機械等も適用

対象

但し、貨物引換証等の処分証券、自動車

等の登録動産については除外

② 目的に限定なし:: 担保目的に限られない(流動化・証券化

の局面を想定)

占有を維持しない質権、物権が移転しな

い所有権留保及びリースは対象外

③ 所在地に限定なし:: 日本に所在するものに限られない

イ 登記は民178条の引渡しと同等の効力しか有しない

=登記は引渡しに優越しない1

1 このような整理がなされた背景としては、譲受人は取引前にデューディリジェンスを行うことがDDが

可能であること、濫用のおそれがあること、対抗要件理論との整合性を確保すべきこと等が挙げられる。

高額の機械等については、実務の発展により、事実上、即時取得の防止が図られることも期待されてい

- 18 -

① 譲渡の登記を行っても、後発譲渡により即時取得される危険

② 譲渡の登記を行っても、先行譲渡に劣後する危険

③ 対抗要件具備の時間的先後関係の明確化の意味合いが強い

ウ 代理占有者に対する配慮

登記上の譲受人から引渡請求を受けた際には異議催告を行うこと

ができ、期間内に異議なければ譲受け人に引き渡すことにより免責

される。

エ 登記申請及び登記情報の開示方法

① 共同申請

② 人的編成主義: 法人ごとに登記を編成

(2) 債権譲渡登記制度

ア 民法の定める対抗要件具備方法によるほか、登記により対抗要件を

具備することを可能とする

① 建物賃料の譲渡の場合は債権譲渡登記と抵当権設定登記の前

後で優劣を判断

② 建物が譲渡された場合は既存の賃貸借契約については債権譲

渡登記が優先する

③ 新たに締結された賃貸借契約についてまで効力が及ぶかは TBD

イ 債務者保護(第三者対抗要件と債務者対抗要件の分離)

① 二重弁済の危険の防止

弁済請求時に登記事項証明書の交付又は債務者の承諾が必

要で、これがなされる前は譲渡人に支払うことにより免責。

る。

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② 抗弁切断の危険を防止

抗弁権の切断の判断基準時は、債務者に対する通知又は債務

者の承諾の時とされる。

なお、譲渡禁止特約の抗弁は破ることができない。

ウ 登記申請及び登記情報の開示方法

① 登記事項: 債務者不特定の将来債権の譲渡も可能に

債務者不特定の債権譲渡につき、債務者を必要的登記事項と

しないこととされ、将来債権の譲渡については、債権総額が登

記事項から除かれた。

これにより、例えば、将来の建物賃料、有線放送受信料、商

品販売代金、クレジット債権等も譲渡が可能に。

② 債務者のプライバシー保護

登記事項証明書の開示請求権者を譲渡当事者、債務者その他

の利害関係人、譲渡人の使用人に限定(譲渡人の使用人を追加)

③ 債権譲渡登記事項概要ファイル

債権譲渡登記を譲渡人の登記簿に記録する制度を廃止し、債

権譲渡登記事項概要ファイルを創設。

誰でも記録事項の証明書の交付を請求することが可能。

以上

20

「民法改正総ざらい ⑤」~民法(債権法)改正について~

発表者:弁護士 宝田恵理子

第1 改正動向の概要

1 背景

民法は制定から110年が経過しており、当時の社会経済情勢と現代の社

会経済情勢との間には大きな変化が生じている。

→個別の条文の不都合性のための改正という側面より、民法(債権法)を

今日の社会情勢に適合させるための改正という側面が強いため、制定以

来110年にわたる判例・学説の展開等を踏まえ、民法(債権法)全体

を抜本的に見直す。

2 ⺠法( 債権法) の「⾒直し」

上記のように、民法(債権法)の改正へ動きは個別の条文の不都合性に

よるものが大きいわけではなく、特定の具体的条文の改正が念頭にあるわ

けではない。そこで、法務省の現在の立場は、あくまで民法(債権法)改

正の要否を検討するための民法(債権法)の「見直し」作業を行うという

ものである2。

また、このような理由から、現時点で法務省による公式な勉強会、検討

会又は研究会等や法制審議会は組織されていない。

本民法(債権法)改正が実際に行われるとなれば、法務省史上最大級の改

正となると予想されるものの、法務省として公式に具体的な改正事項、スケ

ジュール等は現時点では発表されていない。

2 内閣府規制改革会議横断的制度ワーキンググループ第1回基本ルール TF(平成19年4月6日)におけ

る法務省民事局参事官室参事官筒井健夫氏の発言(議事録11~12頁参照。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/minutes/wg/2007/0406/summary0406.pdf)。

- 21 -

3 対象範囲

法務省作成の資料3によれば(以下「法務省資料」という。)、民法第3編

(債権)のうち第1章(総則)及び第2章(契約)〔民法399条~696

条〕を重点的に見直すとのことである。また、見直される契約と深く関連す

る民法第1篇(総則)についても必要に応じて見直していくということであ

る。

すなわち、現段階で見直しの対象となっているのは主に契約法であり、不

法行為、不当利得、事務管理といった部分は見直しの対象とはされていない 。

もっとも、他の部分の改正(改正が必要と判断されるならば)との整合性を

図る限度での見直しの可能性はある。

4 スケジュール

法務省資料によれば、民法(債権法)見直し作業は、第1段階である準

備的研究と第2段階である法制審議会を中心とする検討という2段階に分

かれている。

現在は、第1段階にあり、平成21年3月を目処に第2段階へ移行する

予定のようである4。

3 『民法(債権法)の抜本的見直しの作業について』(内閣府規制改革会議横断的制度ワーキンググルー

プ第1回基本ルールTF(平成19年4月6日)に法務省民事局参事官室参事官筒井健夫氏より提出された

法務省作成資料)。http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/minutes/wg/2007/0406/item_070406_01.pdf

4 内閣府規制改革会議横断的制度ワーキンググループ第1 回基本ルール TF(平成19年4月6日)におけ

る法務省民事局参事官室参事官筒井健夫氏の発言(議事録3頁参照。http://www8.cao.go.jp/kisei-

kaikaku/minutes/wg/2007/0406/summary0406.pdf)。

- 22 -

第2 ⺠法( 債権法) 改正検討委員会

1 委員会概要

民法(債権法)改正検討委員会(以下「本委員会」という。)は、民法(債

権法)の改正の基本方針(以下「改正基本方針」という。)を作成すること

を目的として、有志の民法学者を中心として平成18年年10月に組織され

た委員会であり、32名の委員がいる(平成19年年10月現在)。本委員

会はあくまで任意の委員会であり、法務省が公的に組織した委員会ではな

く、本委員会の改正基本方針に法務省が拘束されるものではない。

もっとも、本委員会の発起人には法務省民事局参事官が含まれていること

や、法務省の民法(債権法)見直し作業が、本委員会の改正基本方針の結果

を踏まえて行うことを前提としていることからも、本委員会が提出する改正

基本方針は、法務省が将来的に提出する民法(債権法)改正法案へ重大な影

響を及ぼすものと考える。

本委員会ウェブサイト:

http://www.shojihomu.or.jp/saikenhou/indexja.html

2 準備会及び検討事項

本委員会は、5つの準備会に分けて具体的な検討を行っており、本委員会

のHPによれば、各準備会の検討テーマは以下の通りである。

第1準備会 ・ 債権の目的

・ 債務不履行の責任等

・ 契約の効力

・ 契約の解除

・ その他

第2準備会 ・ 法律行為(「条件及び期限」を除く)

・ 契約の成立

・ 贈与、売買、交換

- 23 -

3 その他主な検討事項

(1) パンデクテン方式を維持するか否か

(2) 特別法の民法への編入

(3) 商法の商行為規定の民法への編入

(4) 「債権」や「消費者」概念の取扱い

4 スケジュール

原則として年3回の全体会議が開催され、平成21年年3月末までに改正

基本方針の改正基本方針の成案を作成する5。

なお、全体会議の議事録はその都度HP上に掲載されるとのことである。

以上

・ その他

第3準備会 ・ 債権者代位権、詐害行為取消権

・ 多数当事者の債権及び債務

・ 債権の譲渡

・ その他

第4準備会 ・ 消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託、組合、終身

定期金、和解

・ その他

第5準備会 ・ 条件及び期限

・ 期間の計算

・ 時効(消滅時効)

・ 債権の消滅

・ その他

5 民法(債権法)改正検討委員会第1回全体会議議事録8頁参照。

24

「民法改正総ざらい⑥」

~親族編・相続編をめぐる改正動向について~

発表者:弁護士 橋本尚子

第1 改正動向の概要

1 背景

民法の親族編、相続編は、昭和22年に抜本的な改正が行われたあと、

昭和62年の特別養子制度の創設、平成11年の成年後見制度の導入に関

する改正はあったものの、夫婦や親子といった制度の根幹にかかわる改正

は行われていない。

しかし、以下のような理由から、親族編、相続編についても、大幅な改

正が必要なのではないかという議論がなされ、改正に向けた具体的な動向

もみられる。

<親族編・相続編の改正が必要とされる理由>

①家族のあり方の変化

②科学技術の進歩(生殖補助医療、DNA鑑定等)

③現在の親族編・相続編に内在する法技術的な問題

(わかりにくさ、手続法とは必ずしも整合が取れていないこと)

④特別法や判例法理を体系的に取り込む必要性

2 改正動向

平成8年には、法制審議会が公表した「民法の一部を改正する法律要綱

案」が国会審議に付されたものの、改正には至らなかった。また、平成1

9年には、民法772条を議員立法により改正しようとする動きがあった。

- 25 -

第2 民法の一部を改正する法律要綱

第一 婚姻の成立

一 婚姻適齢

男女とも満18歳。

二 再婚禁止期間

前婚の解消又は取消しの日か

ら100日。前婚の解消又は取

消しの日以後に出産した場合、

出産の日以降は再婚可。

男は満18歳。女は満16歳。

前婚の解消又は取消しの日から六

箇月。前婚の解消又は取消しの前か

ら懐胎していた場合は、その出産の

日から再婚可。

第二 婚姻の取消し

一 再婚禁止期間違反の婚姻

前婚の解消若しくは取消しの

日から100日を経過し、又は

女が再婚後に懐胎したときは、

その取消しの請求ができない。

不適法な婚姻として取消しの請

求ができる。

第三 夫婦の氏

一 選択的夫婦別氏制度

婚姻の際に定めるところに従

い、夫若しくは妻の氏、又は各

自の婚姻前の氏を称する。

二 夫婦別氏の場合の子の氏

婚姻の際に、夫又は妻の氏を子

が称する氏として定める。

婚姻の際に定めるところに従い、

夫又は妻の氏を称する。

第四 子の氏

一 嫡出である子の氏

父母の氏又は、父母が、子が称 父母の氏を称する。

- 26 -

する氏として定めた氏を称す

る。

二 養子の氏

養親の氏を称する。氏を異にす

る夫婦が共に養子をするとき

は、養親が、配偶者の嫡出子を

養子にする場合は、養親とその

配偶者が、子が称する氏として

定めた氏を称する。

ただし、養子が婚姻によって氏

を改めた者であるときは、婚姻

の際に定めた氏を称すべき間

は、その氏を称する。

三 子の氏の変更

子が父又は母と氏を異にする

場合でも、子の父母が氏を異に

する夫婦であって子が未成年

者であるときは、父母の婚姻中

は、特別の事情がない限り、子

の氏の変更をすることができ

ない。

子の出生後に婚姻をした父母

が氏を異にする場合で、子が、

父母の婚姻の際に子が称する

氏として定められた氏と異な

る氏を称するときは、父母の婚

姻中に限り、届け出により父又

養親の氏を称する。ただし、養子

が婚姻により氏を改めた者につ

いては、婚姻の際に定めた氏を称

すべき間は、この限りではない。

- 27 -

は母の氏を称することができ

る。ただし、父母の婚姻後に子

が氏を改めた場合はこの限り

ではない。

第五 夫婦間の契約取消権

一 現行法の削除

民法754条を削除。 夫婦間の契約は、婚姻中、いつで

も、夫婦の一方から取り消すこと

ができる。

第六 協議上の離婚

一 子の監護に必要な事項の定め

父母が協議上の離婚をすると

きは、子の監護者、面接交渉、

子の監護に関する費用の分担

その他の監護について必要な

事項を協議により定める。

二 離婚後の財産分与

家庭裁判所は、離婚後の当事者

間の財産上の衡平を図るため、

当事者双方がその協力によっ

て取得し、又は維持した財産の

額及びその取得又は維持につ

いての各当事者の寄与の程度、

婚姻の期間、婚姻中の生活水

準、婚姻中の協力及び扶助の状

況、各当事者の年齢、心神の状

況、職業及び収入その他一切の

父母が協議上の離婚をするとき

は、子の監護をすべき者、その他

監護について必要な事項を協議

により定める。

家庭裁判所は、当事者双方がその

協力によって得た財産の額その

他一切の事情を考慮して、分与さ

せるべきかどうか並びに分与の

額を定める。

- 28 -

事情を考慮し、分与させるかど

うか並びに分与の額及び方法

を定めるものとする。

各当事者の寄与の程度が異な

ることが明らかでないときは、

相等しいものとする。

第七 裁判上の離婚

一 離婚原因

(ア)不貞行為

(イ)悪意の遺棄

(ウ)配偶者の生死が3年以上明

らかでないとき

(エ)5年以上継続して婚姻の本

旨に反する別居をしている

とき

(オ)(ウ)、(エ)のほか、婚姻

関係が破綻して回復の見込

みがないとき

但し、(ア)、(イ)の場合は、

婚姻関係が回復の見込みのな

い破綻に至っていないときは、

この限りではない。

二 裁量棄却

裁判所は、一の場合であって

も、離婚が配偶者又は子に著し

い生活の困窮又は耐え難い苦

痛をもたらすときは、離婚の請

一号 不貞行為

二号 悪意の遺棄

三号 配偶者の生死が3年以上

明らかでないとき

四号 配偶者が強度の精神病に

かかり回復の見込みがな

いとき

五号 その他婚姻を継続し難い

重大な事由があるとき

裁判所は、一号から四号の事由が

ある場合でも、一切の事情を考慮

して婚姻の継続を相当を認める

ときは、離婚の請求を棄却するこ

- 29 -

以上、左欄は「法律案要綱」、右欄は現行法

求を棄却することができる。

(エ)又は(オ)の場合で、離

婚を請求する者が、配偶者に対

する協力及び扶助を著しく怠

っていることにより、離婚請求

が信義に反するときも同様。

とができる。

第八 失踪宣告による婚姻の解消

一 失踪宣告取消しの効力

再婚後になされた失踪の宣告

の取消しは、失踪の宣告による

前婚の解消の効力に影響を及

ぼさない。

二 姻族関係の終了

再婚後になされた失踪の宣告

の取消しにより、前婚による姻

族関係は終了する。

再婚後に失踪の宣告の取消しが

なされると、前婚が復活し、重婚

状態が生じる。

再婚後に失踪の宣告の取消しが

なされても、前婚による姻族関係

は、当然には終了しない。

第九 失踪宣告の取消しと親権

一 失踪宣告取消しと親権

再婚後に失踪の宣告の取消し

がなされても、子は父母の共同

親権に服するのではなく、単独

親権のまま。

再婚後に失踪の宣告の取消しが

なされると、前婚が復活し、子は

父母の共同親権に服する。

第十 相続

一 相続分

非嫡出子の相続分は嫡出子の

相続分と同等。

非嫡出子の相続分は嫡出子の相

続分の二分の一。

- 30 -

第3 民法772条等の改正をめぐる動向

1 いわゆる「300日問題」

現在の民法では、婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生

まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定すると定められているため、前

夫の子でない子も、戸籍上は、前夫の子であると記載されることになる。

そのような戸籍の記載を好まない親が、子の出生届を提出せず、相当数の

戸籍のない子が存在するという事態が生じている。

2 改正動向

平成19年4月頃、与党のプロジェクトチームを中心に、民法722条

の改正法案(医師の証明書やDNA鑑定の活用により不都合を解消しよう

とするもの)を国会に提出する動きがあったが、保守的な議員らの反対に

より、法案提出には至らなかった。

第4 参考

1 民法改正委員会

ジュリストに内田貴教授を中心とする民法改正委員会の家族法改正に関

する議論が紹介されており、議論の対象となった点については、今後、改

正が予想される(No.1324、No.1325「特別座談会 家族法の改

正に向けて」)。

2 議論の対象となった点

今回紹介された議論のうち、議論の対象となった点を、例としていくつ

か挙げる(ただし、今回、議論の対象となった点は多岐にわたり、その内

容も様々であるため、以下に挙げた点が、議論の全体像を示すものではな

- 31 -

いことを予め断っておく)。

<婚姻法・離婚法>

子の氏:夫婦別性の場合でも子の氏は統一すべき

離婚原因:民法の一部を改正する法律要綱で示されている案のうち、い

わゆる過酷条項は削除して信義則条項のみを残す

法定財産制:夫婦財産契約における登記を効力要件とする

財産分与:清算的な側面と生活保障的な側面を区別する

婚姻費用分担:夫婦財産契約によっては変更することができない強行的

な制度とする

<実親子法>

母子関係:代理母に関する規定を置く

父子関係:「嫡出推定⇔嫡出否認」ではなく「父子関係を決定する規定⇔

父子関係否認」という形の規定を置く

認知:子や母の同意を要件とすべきか否か

夫の死後の凍結生死の利用による出産の場合に死後認知を認める

か否か

<親権法>

親権の行使:親権行使が子の福祉に反する場合、親権行使を制限する

親権行使の態様に裁判所や行政が介入する仕組みを設ける

懲戒権:懲戒権に関する規定を削除し体罰の禁止を規定する

以上

(別紙1)

- 32 -

公益法人改革3法施行後の民法関連条文

(法人の成立 等)

第三十三条 法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。

2 学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営む こ

とを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律 そ

の他の法律の定めるところによる。

(法人の能力)

第三十四条 法人は、法令の規定に従い、定款 その他の基本約款 で定められた目的の 範

囲内において、権利を有し、義務を負う。

(外国法人)

第三十五条 外国法人は、国、国の行政区画及び 外国会社 を除き、その成立を認許しな

い。ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。

2 前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同 一

の私権を有する。ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中 に

特別の規定がある権利については、この限りでない。

(登記)

第三十六条 法人及び外国法人は、この法律その他の法令の定めるところにより、登記

をするものとする。

(外国法人の登記)

第三十七条 外国法人(第三十五条第一項ただし書に規定する外国法人に限る。以下 こ

の条において同じ。)が日本に事務所を設けたときは、三週間以内に、その事務所の所

在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。

一 外国法人の設立の準拠法

二 目的

三 名称

四 事務所の所在場所

五 存続期間を定めたときは、その定め

六 代表者の氏名及び住所

2 前項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、三週間以内に、変更の登記をしな け

ればならない。この場合において、登記前にあっては、その変更をもって第三者に対 抗

することができない。

(別紙1)

- 33 -

3 代表者の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分 命

令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされたときは、その登記を し

なければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。

4 前二項の規定により登記すべき事項が外国において生じたときは、登記の期間は、

その通知が到達した日から起算する。

5 外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登 記

するまでは、第三者は、その法人の成立を否認することができる。

6 外国法人が事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登 記

をし、新所在地においては四週間以内に第一項各号に掲げる事項を登記しなければな ら

ない。

7 同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記す れ

ば足りる。

8 外国法人の代表者が、この条に規定する登記を怠ったときは、五十万円以下の過 料

に処する。

第三十八条から第八十四条まで 削除公益法人改革3法施行後の民法関連条文

(法人の成立 等)

第三十三条 法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。

2 学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営む こ

とを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律 そ

の他の法律の定めるところによる。

(法人の能力)

第三十四条 法人は、法令の規定に従い、定款 その他の基本約款 で定められた目的の 範

囲内において、権利を有し、義務を負う。

(外国法人)

第三十五条 外国法人は、国、国の行政区画及び 外国会社 を除き、その成立を認許しな

い。ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。

2 前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同 一

の私権を有する。ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中 に

特別の規定がある権利については、この限りでない。

(登記)

第三十六条 法人及び外国法人は、この法律その他の法令の定めるところにより、登記

をするものとする。

(別紙1)

- 34 -

(外国法人の登記)

第三十七条 外国法人(第三十五条第一項ただし書に規定する外国法人に限る。以下 こ

の条において同じ。)が日本に事務所を設けたときは、三週間以内に、その事務所の所

在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。

一 外国法人の設立の準拠法

二 目的

三 名称

四 事務所の所在場所

五 存続期間を定めたときは、その定め

六 代表者の氏名及び住所

2 前項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、三週間以内に、変更の登記をしな け

ればならない。この場合において、登記前にあっては、その変更をもって第三者に対 抗

することができない。

3 代表者の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分 命

令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされたときは、その登記を し

なければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。

4 前二項の規定により登記すべき事項が外国において生じたときは、登記の期間は、

その通知が到達した日から起算する。

5 外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登 記

するまでは、第三者は、その法人の成立を否認することができる。

6 外国法人が事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登 記

をし、新所在地においては四週間以内に第一項各号に掲げる事項を登記しなければな ら

ない。

7 同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記す れ

ば足りる。

8 外国法人の代表者が、この条に規定する登記を怠ったときは、五十万円以下の過 料

に処する。

第三十八条から第八十四条まで 削除

(別紙 2)

- 35 -

担保法改正に関する新旧対照条文

第三百六条

次に掲げる原因によって生じた債権を

有する者は、債務者の総財産について先

取特権を有する。

一 ・・・

二 雇用関係

三 ・・・

第三百八条

雇用関係の先取特権は、給料その他債

務者と使用人との間の雇用関係に基づい

て生じた債権について存在する。

第三百五十九条

前三条の規定は、設定行為に別段の定

めがあるとき、 又は担保不動産収益執行

の開始があったときは 、適用しない。

第三百六十三条

債権であってこれを譲り渡すにはその

証書を交付することを要するものを質権

の目的とするときは、質権の設定は、そ

の証書を交付することによって、その効

力を生ずる。

第三百七十一条

抵当権は、その担保する債権について

不履行があったときは、その後に生じた

抵当不動産の果実に及ぶ。

第三百六条

左ニ掲ケタル原因ヨリ生シタル債権ヲ有

スル者ハ債務者ノ総財産ノ上ニ先取特権

ヲ有ス

一 ・・・

二 雇人ノ給料

三 ・・・

第三百八条

雇人給料ノ先取特権ハ債務者ノ雇人ガ

受クベキ最後ノ六个月間ノ給料ニ付キ存

在ス

第三百五十九条

前三条ノ規定ハ設定行為ニ別段ノ定ア

ルトキハ之ヲ適用セス

第三百六十三条

債権ヲ以テ質権ノ目的ト為ス場合ニ於

テ証書アルトキハ質権ノ設定ハ其証書ノ

交付ヲ為スニ因リテ其効力ヲ生ズ

第三百七十一条

前条ノ規定ハ果実ニハ之ヲ適用セズ但

抵当不動産ノ差押アリタル後又ハ第三取

得者ガ第三百八十一条ノツウチヲヲ受ケ

タル後ハ此限ニ在ラズ

②第三取得者ガ第三百八十一条ノ通知ヲ

受ケタルトキハ其後一年内ニ抵当不動産

ノ差押アリタル場合ニ限リ前項但書ノ規

(別紙 2)

- 36 -

第三百七十九条

抵当不動産の第三取得者は、第三百八

十三条の定めるところにより、抵当権消

滅請求をすることができる。

第三百八十条

主たる債務者、保証人及びこれらの者

の承継人は、 抵当権消滅請求 をすること

ができない。

第三百八十一条

抵 当 不 動 産 の 停 止 条 件 付 第 三 取 得 者

は、その停止条件の成否が未定である間

は、 抵当権消滅請求 をすることができな

い。

(削除)

第三百八十二条

抵当不動産の第三取得者は、抵当権の

実行としての競売による差押えの効力が

発生する前に、抵当権消滅請求をしなけ

ればならない。

定ヲ適用ス

第三百七十八条

抵当 不動産ニ 付キ所有 権、地上 権又ハ

永小作権ヲ取得シタル第三者ハ第三百八

十二条乃至第三百八十四条ノ規定ニ従ヒ

抵当権者ニ提供シテ其承諾ヲ得タル金額

ヲ払渡シ又ハ之ヲ供託シテ抵当権ヲ滌除

スルコトヲ得

第三百七十九条

主タル債務者、保証人及ヒ其承継人ハ

抵当権ノ滌除 ヲ為スコトヲ得ス

第三百八十条

停止条件附第三取得者ハ条件ノ成否未

定ノ間ハ 抵当権ノ滌除 ヲ為スコトヲ得ス

第三百八十一条

抵当権者ガ其抵当権ヲ実行セント欲ス

ルトキハ予メ第三百七十八条ニ掲ゲタル

第三取得者ニ其旨ヲ通知スルコトヲ要ス

第三百八十二条

第三取得者ハ前条ノ通知ヲ受クルマデ

ハ何時ニテモ抵当権ノ滌除ヲ為スコトヲ

②第三取得者ガ前条ノ通知ヲ受ケタルト

キハ一个月内ニ次条ノ送達ヲ為スニ非ザ

レバ抵当権ノ滌除ヲ為スコトヲ得ズ

③前条ノ通知アリタル後ニ第三百七十八

条ニ掲ゲタル権利ヲ取得シタル第三者ハ

前項ノ第三取得者ガ滌除ヲ為スコトヲ得

ル期間内ニ限リ之ヲ為スコトヲ得

(別紙 2)

- 37 -

第三百八十三条

抵当不動産の第三取得者は、 抵当権消

滅請求 をするときは、登記をした各債権

者に対し、次に掲げる書面を送付しなけ

ればならない。

一 ・・・

二 ・・・

三 債権者が 二箇月以内に抵当権を実

行し て 競 売 の 申 立 を し な い とき は 、

抵当 不動産の 第三取得 者が第一 号に

規定 する代価 又は特に 指定した 金額

を債 権の順位 に従って 弁済し又 は供

託すべき旨を記載した書面

第三百八十四条

次に掲げる場合には、前条各号に掲げ

る書面の送付を受けた債権者は、抵当不

動産の第三取得者が同条第三号に掲げる

書面に記載したところにより提供した同

号の代価又は金額を承諾したものとみな

す。

一 その債権者が前条各号に掲げる書

面の 送付を受 けた後二 箇月以内 に抵

当権 を実行し て競売の 申立てを しな

いとき。

二 その債権者が前号の申立てを取り

下げたとき。

三 第一号の申立てを却下する旨の決

定が確定したとき。

四 第一号の申立てに基づく競売の手

続を取り消す旨の決定(民事執行法

第百八十八条において準用する同法

第六十三条第三項若しくは第六十八

条の三第三項の規定又は同法第百八

十三条第一項第五号の謄本が提出さ

れた場合における同条第二項の規

第三百八十三条

第三 取得者カ 抵当権ヲ 滌除セン ト欲ス

ルトキハ登記ヲ為シタル各債権者ニ左ノ

書面ヲ送達スルコトヲ要ス

一 ・・・

二 ・・・

三 債権 者カ一个 月内ニ次 条ノ規定 ニ

従ヒ 増価競売 ヲ請求セ ザルトキ ハ第

三取 得者ハ第 一号ニ掲 ケタル代 価又

ハ特 ニ指定シ タル金額 ヲ債権ノ 順位

ニ従 ヒテ弁済 又ハ供託 スヘキ旨 ヲ記

載シタル書面

第三百八十四条

債権者ガ前条ノ送達ヲ受ケタル後一个

月内ニ増価競売ヲ請求セザルトキハ第三

取得者ノ提供ヲ承諾シタルモノト看做ス

②増価競売ハ若シ競売ニ於テ第三取得者

ガ提供シタル金額ヨリ十分ノ一以上高価

ニ抵当不動産ヲ売却スルコト能ハザルト

キハ十分ノ一ノ増価ヲ以テ自ラ其不動産

ヲ買受クベキ旨ヲ附言シ第三取得者ニ対

シテ之ヲ請求スルコトヲ要ス

(別紙 2)

- 38 -

定による決定を除く。)が確定したとき。

第三百八十五条

第三百八十三条各号に掲げる書面の送

付を受けた債権者は、前条第一号の申立

てをするときは、同号 の期間内に、債務

者及び抵当不動産の譲渡人にその旨を通

知しなければならない。

第三百八十六条

登記をしたすべての債権者が抵当不動

産の第三取得者の提供した代価又は金額

を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得

者がその承諾を得た代価又は金額を払い

渡し又は供託したときは、抵当権は、消

滅する。

第三百八十七条

登記をした賃貸借は、その登記前に登

記をした抵当権を有するすべての者が同

意をし、かつ、その同意の登記があると

きは、その同意をした抵当権者に対抗す

ることができる。

②抵当権者が前項の同意をするには、そ

の抵当権を目的とする権利を有する者そ

の他抵当権者の同意によって不利益を受

け る べ き 者 の 承 諾 を 得 な け れ ば な ら な

い。

第三百八十九条

抵当権の設定後に抵当地に建物が築造

されたときは、抵当権者は、土地ととも

にその建物を競売することができる。た

だし、その優先権は、土地の代価につい

てのみ行使することができる。

②前項の規定は、その建物の所有者が抵

当地を占有するについて抵当権者に対抗

第三百八十五条

債権者ガ増価競売ヲ請求スルトキハ前

条ノ期間内ニ債務者及ヒ抵当不動産ノ譲

受人ニ之ヲ通知スルコトヲ要ス

第三百八十六条

増価競売ヲ請求シタル債権者ハ登記ヲ

為シタル他ノ債権者ノ承諾ヲ得ルニ非ザ

レバ其請求ヲ取消スコトヲ得ズ

第三百八十七条

抵当 権者ガ第 三百八十 二条ニ定 メタル

期間内ニ第三取得者ヨリ債務ノ弁済又ハ

滌除ノ通知ヲ受ケザルトキハ抵当不動産

ノ競売ヲ請求スルコトヲ得

第三百八十九条

抵当権設定ノ後 其設定者ガ抵当地ニ建

物ヲ築造シタルトキハ 抵当権者ハ土地ト

共ニ 之ヲ競売スルコトヲ得 但其優先権ハ

土地ノ代価ニ付テノミ之ヲ行フコトヲ得

(別紙 2)

- 39 -

することができる権利を有する場合に

は、適用しない。

第三百九十五条

抵当権者に対抗することができない賃

貸借により抵当権の目的である建物の使

用又は収益をする者であって次に掲げる

もの ( 次 項 に お い て 「 抵 当 建 物 使 用 者 」

という。)は、その建物の競売における 買

受人の買受けの時から六箇月を経過する

までは、その建物を買受人に引き渡すこ

とを要しない。

一 競売手続の開始前から使用又は収

益をする者

二 強制管理又は担保不動産収益執行

の管 理人が競 売手続の 開始後に した

賃貸借により使用又は収益をする者

②前項の規定は、買受人の買受けの時よ

り後に同項の建物の使用をしたことの対

価について、買受人が抵当建物使用者に

対し相当の期間を定めてその一箇月分以

上の支払の催告をし、その相当の期間内

に履行がない場合には、適用しない。

第三百九十八条の十九

根抵当権設定者は、根抵当権の設定の

時から三年を経過したときは、担保すべ

き元 本 の 確 定 を 請 求 す る こ と が で き る 。

この 場 合 に お い て 、 担 保 す べ き 元 本 は 、

その請求の時から二週間を経過すること

によって確定する。

②根抵当権者は、いつでも、担保すべき

元本の確定を請求することができる。こ

の場合において、担保すべき元本は、そ

の請求の時に確定する。

③前二項の規定は、担保すべき元本の確

第三百九十五条

第六百二条ニ定メタル期間ヲ超エザル

賃貸借ハ抵当権ノ登記後ニ登記シタルモ

ノト雖モ之ヲ以テ抵当権者ニ対抗スルコ

トヲ得但其賃貸借ガ抵当権者ニ損害ヲ及

ボストキハ裁判所ハ抵当権者ノ請求ニ因

リ其解除ヲ命ズルコトヲ得

第三百九十八条の十九

根抵当権設定者ハ根抵当権設定ノ時ヨ

リ三年ヲ経過シタルトキハ担保スベキ元

本ノ確定ヲ請求スルコトオヲ得 但担保ス

ベキ元本ノ確定スベキ期日ノ定アルトキ

ハ此限ニ在ラズ

②前項ノ請求アリタルトキハ担保スベキ

元本ハ其請求ノ時ヨリ二週間ヲ経過シタ

ルニ因リテ確定ス

(別紙 2)

- 40 -

定すべき期日の定めがあるときは、適用

しない。

第三百九十八条の二十

次に掲げる場合には、根抵当権の担保

すべき元本は、確定する。

一 根抵当権者が抵当不動産について

競売 若し くは担保 不動産収 益執行 又

は第 三百七十 二条にお いて準用 する

第三 百四条の 規定によ る差押え を申

し立 てたとき 。ただし 、競売手 続 若

しく は担保不 動産収益 執行手続 の開

始又は差押えがあったときに限る。

二 根抵当権者が抵当不動産に対して

滞納処分による差押えをしたとき。

三 根抵当権者が抵当不動産に対する

競売 手続の開 始又は滞 納処分に よる

差押 えがあっ たことを 知った時 から

二週間を経過したとき。

四 債務者又は根抵当権設定者が破産

手続開始の決定を受けたとき。

②前項第三号 の競売手続の開始若しくは

差押え又は 同項第四号 の破産手続開始の

決定の効力が消滅したときは、担保すべ

き元本は、確定しなかったものとみなす 。

ただし、元本が確定したものとしてその

根抵当権又はこれを目的とする権利を取

得した者がるときは、この限りでない。

第三百九十八条ノ二十

左ノ場合ニ於テハ根抵当権ノ担保スベ

キ元本ハ確定ス

一 担保スベキ債権ノ範囲ノ変更、取

引ノ 終了其他 ノ事由ニ 因リ担保 スベ

キ元 本ノ生ゼ ザルコト ト為リタ ルト

二 根抵当権者ガ抵当不動産ニ付キ競

売又 ハ第三百 七十二条 ニ於テ準 用ス

ル第 三百四条 ノ規定ニ 依ル差押 ヲ申

立タ ルトキ但 競売手続 ノ開始又 ハ差

押アリタルトキニ限ル

三 (新条文の二号と同じ)

四 (新条文の三号と同じ)

五 (新条文の四号と同じ)

②前項第四号 ノ競売手続ノ開始若クハ差

押又ハ 同項第五号 ノ破産ノ宣告ノ効力ガ

消滅シタルトキハ担保スベキ元本ハ確定

セザリシモノト看做ス但元本ガ確定シタ

ルモノトシテ其抵当権又ハ之ヲ目的トス

ル権利ヲ取得シタル者アルトキハ此限ニ

在ラズ

別紙3

41

新 旧 対 照 条 文(抜粋)

第4款 保証債務

第1目 総則

(新条文)

(保証人の責任等)

第446条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をす る

責任を負う。

2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の 知

覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機によ る

情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書 面

によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

(旧条文)

第446条 保証人ハ主タル債務者カ其債務ヲ履行セサル場合ニ於テ其履行ヲ為ス責

ニ任ス

(新設条文)

第2目 貸金等根保証契約

(貸金等根保証契約の保証人の責任等)

第465条の2 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以 下

「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を 受

けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保 証

人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人は、主た る

債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるす べ

てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その

全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2 貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じな い。

3 第446条 第2項及び第3項の規定は、貸金等根保証契約における第1項に規定 す

る極度額の定めについて準用する。

(貸金等根保証契約の元本確定期日)

第465条の3 貸金等根保証契約において主たる債務の元本の確定すべき期日(以 下

「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその貸 金

等根保証契約の締結の日から5年を経過する日より後の日と定められているときは、そ

の元本確定期日の定めは、その効力を生じない。

別紙3

42

2 貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元 本

確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、そ の

貸金等根保証契約の締結の日から3年を経過する日とする。

3 貸金等根保証契約における元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元 本

確定期日がその変更をした日から5年を経過する日より後の日となるときは、その元 本

確定期日の変更は、その効力を生じない。ただし、元本確定期日の前2箇月以内に元 本

確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日 か

ら5年以内の日となるときは、この限りでない。

4 第446条 第2項及び第3項の規定は、貸金等根保証契約における元本確定期日 の

定め及びその変更(その貸金等根保証契約の締結の日から3年以内の日を元本確定期 日

とする旨の定め及び元本確定期日より前の日を変更後の元本確定期日とする変更を除

く。)について準用する。

(貸金等根保証契約の元本の確定事由)

第465条の4 次に掲げる場合には、貸金等根保証契約における主たる債務の元本

は、確定する。

1.債権者が、主たる債務者又は保証人の財産について、金銭の支払を目的とする 債

権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。ただし、強制執行又は 担

保権の実行の手続の開始があったときに限る。

2.主たる債務者又は保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。

3.主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

(保証人が法人である貸金等債務の根保証契約の求償権)

第465条の5 保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸

金等債務が含まれるものにおいて、第465条の2 第1項に規定する極度額の定めが な

いとき、元本確定期日の定めがないとき、又は元本確定期日の定め若しくはその変更 が

第465条の3 第1項若しくは第3項の規定を適用するとすればその効力を生じない

ものであるときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権について の

保証契約(保証人が法人であるものを除く。)は、その効力を生じない。

附 則 (平成 16 年12 月1日法律第 147号)

(経過措置の原則)

第2条 この法律による改正後の民法(以下「新法」という。)の規定は、次条及び

附則第4条(第3項及び第5項を除く。)の規定による場合を除き、この法律の施行 前

に生じた事項にも適用する。ただし、この法律による改正前の民法の規定によって生 じ

た効力を妨げない。

別紙3

43

(保証契約の方式に関する経過措置)

第3条 新法第 446 条第 2項及び第 3項の規定は、この法律の施行前に締結された

保証契約については、適用しない。

(貸金等根保証契約に関する経過措置)

第4条 新法第 465 条の 2及び第 465 条の 3(第 2項を除く。)の規定は、この

法律の施行前に締結された貸金等根保証契約(新法第 465 条の 2第1項に規定する 貸

金等根保証契約をいう。以下同じ。)については、適用しない。

2 この法律の施行前に締結された貸金等根保証契約であって元本確定期日(新法第

465 条の 3第1項に規定する元本確定期日をいう。以下同じ。)の定めがあるもの の

うち次の各号に掲げるものの元本確定期日は、その定めにかかわらず、それぞれ当該 各

号に定める日とする。

1.新法第465条の2第1項に規定する極度額(以下この条において単に「極度 額」

という。)の定めがない貸金等根保証契約であって、その元本確定期日がその定め に

よりこの法律の施行の日(以下この条において「施行日」という。)から起算して 3

年を経過する日より後の日と定められているもの 施行日から起算して3年を経過

する日

2.極度額の定めがある貸金等根保証契約であって、その元本確定期日がその定め に

より施行日から起算して5年を経過する日より後の日と定められているもの 施行

日から起算して5年を経過する日

3 この法律の施行前に締結された貸金等根保証契約であって元本確定期日の定めが

ないものについての新法第465条の3第2項の規定の適用については、同項中「元 本

確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じ な

い場合を含む。)」とあるのは「元本確定期日の定めがない場合」と、「その貸金等 根

保証契約の締結の日から3年」とあるのは「この法律の施行の日から起算して3年」と

する。

4 施行日以後にこの法律の施行前に締結された貸金等根保証契約における元本確定

期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日より 後

の日となるときは、その元本確定期日の変更は、その効力を生じない。

5 この法律の施行前に新法第465条の4各号に掲げる場合に該当する事由が生じ

た貸金等根保証契約であって、その主たる債務の元本が確定していないものについて

は、施行日にその事由が生じたものとみなして、同条の規定を適用する。

6 この法律の施行前に締結された新法第465条の5に規定する保証契約について

は、同条の規定は、適用しない。

7 前項の保証契約の保証人は、新法第465条の5に規定する根保証契約の保証人

の主たる債務者に対する求償権に係る当該主たる債務者の債務について、次の各号に 掲

げる区分に応じ、その元本確定期日がそれぞれ当該各号に定める日より後の日である 場

合においては、その元本確定期日がそれぞれ当該各号に定める日であるとしたならば 当

該主たる債務者が負担すべきこととなる額を限度として、その履行をする責任を負う。

1.当該根保証契約において極度額の定めがない場合 施行日から起算して3年を 経

過する日

別紙3

44

2.当該根保証契約において極度額の定めがある場合 施行日から起算して5年を 経

過する日

8 第6項の保証契約の保証人は、前項の根保証契約において元本確定期日の定めが

ない場合には、同項各号に掲げる区分に応じ、その元本確定期日がそれぞれ当該各号 に

定める日であるとしたならば同項の主たる債務者が負担すべきこととなる額を限度と

して、その履行をする責任を負う 。