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日本における オープンソースの歴史 情報と地域 オープンソースと地域振興 中央大学 飯尾 淳

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Page 1: 日本における オープンソースの歴史開発者が参加する勉強会からトレンド分析 – J. Iio, “Technology Trends Indicated in “The IT Study Meeting Calendar”,”

日本におけるオープンソースの歴史

情報と地域 オープンソースと地域振興

中央大学 飯尾 淳

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日本におけるOSSの歴史 情報と地域 オープンソースと地域振興 2

日本発のOSSは42件?

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FLOSS-JP/Asia survey 2003

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自己紹介● 中央大学 文学部 社会情報学専攻 教授

飯尾 淳(いいお じゅん)– 経歴:1994年から,株式会社三菱総合研究所に19

年勤務.同社 主席研究員を経て,2013年,中央大学文学部社会情報学専攻准教授,2014年から現職

– 2009年から東京農工大学客員准教授を兼務● 博士(工学),技術士(情報工学部門)● HCD-Net認定 人間中心設計専門家

● 専門分野– ソフトウェア工学,画像処理,オープンソースソフ

トウェア,ユーザインタフェース,情報教育,等

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OSSとの関わり● 2000年,未踏ソフト

ウェア創造事業– 動画処理ライブラリを

作った● OSSとして公開

● 背景:– g新部氏の存在– OpenCV

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OSSとの関わり(続き)● 日本政府がOSSに肩

入れ– 貿易不均衡格差の是正

● 「オープンソースと政府」(右図)– 当時の上司,先見の明

があった!(現在は閉鎖 … orz)

● 50本以上のOSS関連プロジェクトを実施

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OSSとの関わり● 日本OSS推進フォーラムメンバとして

– デスクトップ利用推進に向けて尽力 … したが,力及ばず

● 「ChromeOSがAndroidと統合されていく」というニュースを聞いて,感慨深い

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大まかな傾向?● Open Source Softwareのトレンド

– 80年代 … Free Software Foundation (FSF)– 90年代後半 … Open Source Initiative (OSI)– 00年代 … Webアプリ全盛時代

● C/Sシステムからクラウドへ– 10年台 … クラウド + IoT?

● このへん … 古すぎてもはやどうでもいい

● このへん … 新しいので資料はある

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FLOSS Stories PJの概要● FLOSSとは

– Free / Libre / Open Source Software を称してFLOSSと呼びます

● フリーソフトウェア,オープンソースソフトウェアに関する歴史をまとめようとしています

● 奇しくも(プロジェクトを始めた)2013年は … – JUS(日本UNIXユーザ会)30周年– Ruby 20周年– インターネットの商用利用開始 20周年

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危機感

※各画像はネットより拝借しました

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危機感

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20090831/336240/ より※下線は飯尾による

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関連プロジェクト

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関連プロジェクト● Networking History BOF @ IETF● APNIC History Project● JPNIC インターネット歴史年表

– BoFのレポート記事は下記で読めますhttp://internet.watch.impress.co.jp/docs/event/20131129_625642.html

※ 画像は上記記事より

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海外の事例● Kilnam et al., “Korean Internet History

Project”● “The Internet History Project”

– http://www.nethistory.com/● J. Ryan, “A History of the Internet and the

Digital Future”● R. H. Zakon, “Hobbes' internet timeline”

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海外の事例

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有名な本

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プロジェクト・メンバー● 風穴 江

– サイボウズ株式会社「tech@サイボウズ式」編集部

● 八田 真行– 駿河台大学 経済学部 専任講師

● 塚越 健司– 学習院大学 法学部 政治学科 講師

● 飯尾 淳– 中央大学 文学部 社会情報学専攻 教授

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プロジェクトの活動● 90年代の情報を中心に聞き取り調査

– 年表形式でまとめる予定

● これまで,10名弱にインタビュー実施

● 他にも,様々な方にインタビューを予定– 自薦・他薦問わず,「これは!」という方,募集中

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キーパーソンの抽出Ruby!

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90年代のLinux/BSD動向● Linuxは草の根コミュニティが,BSDは学術コミュニティが支えていた?

● BSDコミュニティ– ネットワークインフラが整備されていた前提で

● リソースが各地に分散,集められるスキルと環境が!– 情報収集,コミュニケーションはネット中心

● Linuxコミュニティ– CDによる回覧,ネットを前提としない

● リソースを集中させ,とにかく「使える」ように!

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なぜ企業がLinuxを支持したか● BSDはBSDI社がサポートしていた

– ユーザランドまで含めて厳格管理● Linuxは自由度が高かった

– ディストリビューション作成ビジネス– SIへ組込みやすかった– 各企業は90年代に独自に展開方法を模索(してい

た「らしい」)– 国際化 → Unixの辿ってきた道を…

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シグマ計画の隠れた影響● シグマ計画とは…

– 失敗したプロジェクトとして認識されている– 多くのFLOSS関係者を(影で)育てた

● 例:– GWM

● ウィンドウマネージャ– Wnn

● 日本語入力システム– GWMもWnnも,企業を経由してシグマ計画の資金

が流れている

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公開研究会実施(11/27)

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まとめ1● 90年代の歴史を知る複数人の人物に,当時の状況を聞き取るインタビューを実施

● 「オーラル・ヒストリー」として,分析● いままで明らかにされていなかった知見を確認することができた

● 課題– インタビュー対象がまだ少ない– 定性的な確認はOK,定量的な妥当性は?

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もう一つの動向研究● OSS研究の動向

– ソフトウェア工学領域の研究– 社会科学研究者によるコミュニティ研究

● 人的ネットワーク分析など– SNSやCGMなど

● 開発者が参加する勉強会からトレンド分析– J. Iio, “Technology Trends Indicated in “The IT StudyMeeting Calendar”,” Proc. WSSM2014, 590–595, 2014.

– その他,学際領域的研究例● ライセンスに関する法学的研究● 経済効果など経済学,経営学の領域における研究

● 技術を支える人材に着目

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分析の対象● 仮説:

「OSSに関するコミュニティや技術者の発する情報を分析することで,同分野の技術動向を浮かび上がらせることができる」

● 対象のイベント– 「オープンソースカンファレンス(OSC)」

● 2004年から,全国各地で開催● 2015年3月開催分までを対象に(約100回,152件)

– 規模感:● 1,000人〜 (東京開催)● 〜1,00人 (地方開催)

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オープンソースカンファレンス

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プログラム例

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分析の手順1. 発表タイトルの取得

– OSC過去のタイムテーブルからダウンロード– <a>タグをキーとしてタイトルを半自動で取得

2. データのクリーニング– 発表以外のコマ削除,言葉のゆらぎ修正,複数コマ

の統合など3. 英単語の抽出

– 英単語トレンドの分析用として4. 日本語単語の抽出

– 日単語トレンドの分析用として

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バッチ処理例

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英文キーワードの抽出結果

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和文キーワードのクラスタリング● 出現頻度空間

– 横軸に各イベント,– 縦軸に和文キーワード

● クラスタリング– 同空間におけるキーワード間の距離を用いてクラスタリングを実施

– キーワードの関連性から,デンドログラムを構成

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英文キーワードのトレンド

● 注目すべき点– Linux, OSS, Webといった基本的なキーワード,DB関連,CMSなどが頻出,人気は高い

– OpenStack, CloudStackなど,クラウド関連技術が後半に登場

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和文キーワードのトレンド

● 注目すべき点– 傾向は英文キーワードと同様– 紹介,入門,開発,最新,技術など,一般名詞も– 「クラウド」という単語が後半に登場

● その具体例が,英文キーワードのOpenStackなど

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まとめ2● 10年来続けられてきたOSCというOSS関連イベントの発表タイトルに着目

● タイトルに含まれるキーワード分析により,OSS業界のトレンドを確認

● ざっくりした傾向を確認することができた

● 課題– イベントの性質上,若干のノイズが含まれる(某

OSの例など)– 今回は日本国内に特化した分析,海外との比較は?