月刊 4 - kkc · 2016. 4. 7. · ~「2016...

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440 April 4 2016 社会広聴アンケート 企業に対する肯定的評価は37%、否定的評価は14% -第19回「生活者の“企業観”に関するアンケート」調査結果- 社会の出来事に鋭く反応する生活者の企業観 中島経営法律事務所 弁護士 中島 茂 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性 ウェーバー・シャンドウィック  最高経営責任者(CEO)     アンディ・ポランスキー リーダーのコミュニケーションの目的は人を動かすこと コミュニケーション・コンサルタント 川村秀樹 ANGLE (一社)生命保険協会広報部長 山根康史 第38巻第4号通巻440号2016年4月1日発行(毎月1回1日発行)1980年10月23日第3種郵便物認可

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Page 1: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

440April

月刊 4

2016年

◆社会広聴アンケート 企業に対する肯定的評価は37%、否定的評価は14% -第19回「生活者の“企業観”に関するアンケート」調査結果-

社会の出来事に鋭く反応する生活者の企業観 中島経営法律事務所弁護士 中島 茂

◆企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性 ウェーバー・シャンドウィック  最高経営責任者(CEO)    アンディ・ポランスキー

リーダーのコミュニケーションの目的は人を動かすこと コミュニケーション・コンサルタント 川村秀樹

◆ANGLE (一社)生命保険協会広報部長 山根康史

第38巻第4号通巻440号2016年4月1日発行(毎月1回1日発行) 1980年10月23日第3種郵便物認可

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国内1日 電力小売りの全面自由化6日 2月の景気動向指数速報(内閣府)

8日2月の国際収支速報(財務省)3月の景気ウォッチャー調査(内閣府)3月の消費動向調査結果(内閣府)

20日 2015年度と3月の貿易統計(財務省)28日 3月の失業率(総務省)

海外1日 3月の米雇用統計(米労働省)5日 2月の米貿易収支(米商務省)13日 3月の米小売売上高(米商務省)13 ~ 14日 G20財務相・中央銀行総裁会議(ワシントン)15日 1~3月期の中国GDP速報(中国国家統計局)26 ~ 27日 FOMC(米連邦公開市場委員会)(米FRB(連邦準備制度理事会))28日 1~3月期の米GDP速報(米商務省)29日 3月の米個人所得・消費統計(米商務省)

4 月の動き

今 月 の 表 紙

コマツは、桜の名所づくりや花のまちづくりを進める公益財団法人日本花の会の活動を支援し、美しく潤いのある地域環境づくりを推進している写真は、コマツビル屋上庭園にある、シダレザクラ

『経済広報』では、裏表紙に関連する写真・イラストを表紙に

掲載しています。

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NEW

月の動き

発行/一般財団法人経済広報センター 国内広報部   東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館 TEL:03-6741-0021印刷/三葉株式会社 TEL:03-3294-4751※本誌掲載の記事・写真・イラスト・図版の無断掲載を禁じます。

2016年4月号目次社会広聴アンケート

企業に対する肯定的評価は37%、否定的評価は14%-第19回「生活者の“企業観”に関するアンケート」調査結果-

2

社会の出来事に鋭く反応する生活者の企業観中島 茂(中島経営法律事務所 弁護士)

7

視点・観点

悲観大国、日本~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8

企業広報研究

PRにおける“クリエイティビティー”の重要性アンディ・ポランスキー(ウェーバー・シャンドウィック 最高経営責任者(CEO))

10

リーダーのコミュニケーションの目的は人を動かすこと川村秀樹(コミュニケーション・コンサルタント)

12

グループ広報戦略 5

日本コカ・コーラの広報・パブリックアフェアーズ活動日本コカ・コーラ(株) 14

ANGLE

これからもずっと安心社会実現のために山根康史((一社)生命保険協会 広報部長)

17

経済広報センター活動報告

グローバル化したサプライチェーンに潜むリスク越守丈太郎(トムソン・ロイター・マーケッツ(株) 市場開発本部 次長)

18

国際プロジェクト紹介⑨

ビジネス・スピーカー・シリーズ第16回会合をコロラド州デンバーで開催 20

コーポレートステートメント

Foresightinsight日本ユニシスグループ 21

企業PRの「明日のヒント」 vol.4

トップに聞いておきたい質問リスト岡本純子(コミュニケーションストラテジスト/(株)グローコム 代表)

24

連載

経済広報センターNEWS 22企業広報ニュース(広報トピックス/ Book) 25企業・団体のCSR活動(コマツ) 裏表紙4月の動き 表紙裏

12016年4月号〔経済広報〕

Page 4: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

企業に対する肯定的評価は37%、否定的評価は14%-第19回「生活者の“企業観”に関するアンケート」調査結果-

経済広報センターは、社会が企業をどのように評価しているか、社会の信頼を獲得するためには何が必要か

を調査するため、1997年度から毎年、“企業観”に関するアンケート調査を実施している。

2015年度は、例年同様、「企業に対する認識」や「企業に対する信頼度」といった生活者の総合的な企業観の

ほか、「企業評価の際の情報発信者の信用度」について調査した。また、新たに、生活者が企業評価の際の情報

源として、どのような媒体を利用しているかを調査するに当たり、時代の変化に合わせ、「新聞(ウェブ版)」や

「ソーシャルメディア」の項目を追加し、その結果を取りまとめた。

調査対象は全国の様々な職種、世代で構成される社会広聴会員のうちインターネットで回答可能な3060

人。1618人が回答し、回答率は52.9%だった。調査期間は2015年11月12日から11月24日。

回答者の属性は、男女別では男性(723人、44.7%)、女性(895人、55.3%)。世代別では29歳以下(47人、2.9%)、

30歳代(194人、12.0%)、40歳代(258人、15.9%)、50歳代(524人、32.4%)、60歳以上(595人、36.8%)。職業別では、

会社員・団体職員・公務員(667人、41.2%)、会社役員・団体役員(77人、4.8%)、自営業・自由業(119人、7.4%)、

パートタイム・アルバイト(211人、13.0%)、専業主婦・夫(280人、17.3%)、学生(15人、0.9%)、無職・その

他(249人、15.4%)。

企業の果たす役割や責任として最も重要度が高いのは「安全・安心で優れた商品・サービス・技術を適切な価格で提供する」

企業の果たす役割や責任の重要度を項目ごとに調査したところ、「安全・安心で優れた商品・サービス・技術を

適切な価格で提供する」が第1位で「非常に重要である」が82%。続いて「社会倫理に則した企業倫理を確立・順守

する」(56%)、「不測の事態が発生した際に的確な対応を取る」(56%)で、「非常に重要である」が5割を超えている。

■企業に対する認識 - 企業の果たす役割や責任の重要度(全体)

1

安全・安心で優れた商品・サービス・技術を適切な価格で提供する社会倫理に則した企業倫理を確立・順守する不測の事態が発生した際に的確な対応を取る経営の透明性を確保し、情報公開を徹底する

雇用を維持・創出する先進的な技術・研究開発に取り組む

利益を確保し、納税する省資源・省エネや環境保護などに取り組む

事業継続計画(BCP)の策定など、平常時から危機管理に取り組む社員の育成やワークライフバランスに取り組む

地域社会と共生する株主に利益を還元する

メセナ(スポーツ・文化・芸術支援)や社会貢献などに取り組む

■非常に重要である ■重要である ■あまり重要ではない ■重要ではない ■分からない

0 2010 40 60 80 100%30 50 70 90

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64

69

69

69

55

(単一回答)

*小数点以下第1位四捨五入のため、合計が100%とならない場合もある。

〔経済広報〕2016年4月号2

社会広聴アンケート

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「安全・安心で優れた商品・サービス・技術を適切な価格で提供している」と83%が回答

企業の果たす役割や責任について、企業がどの程度対応していると思うかを調査した。「安全・安心で優れた商

品・サービス・技術を適切な価格で提供する」は「対応している(対応している/ある程度)」との認識が83%と高い。

また、「雇用を維持・創出する」は「対応している(対応している/ある程度)」が51%で前回調査(2014年度44%)

から、7ポイント上昇している。一方、「社会倫理に則した企業倫理を確立・順守する」は「対応していない(あまり

/対応していない)」が58%で前回調査(2014年度53%)から、5ポイント上昇、「経営の透明性を確保し、情報公開

を徹底する」も62%(2014年度56%)で、「対応していない(あまり/対応していない)」が6ポイント上昇している。

■企業に対する認識 - 企業の対応状況(全体)

企業に対する肯定的評価37%が、否定的評価14%を大きく上回っているものの、肯定的評価は、2年ぶりに減少

企業に対する信頼度は、肯定的評価37%(「信頼できる」2%、「ある程度信頼できる」35%)が、前回調査同様、

否定的な評価14%(「信頼できない」1%、「あまり信頼できない」13%)を大きく上回っている。

しかしながら、肯定的評価が2年ぶりに減少している(2014年度43%、2013年度35%)。

■企業に対する信頼度 (年度別・全体)

企業が信頼を獲得するための最も重要な事項は「安全・安心で優れた商品・サービス・技術を適切な価格で提供する」が85%

企業が社会からの信頼を今後さらに勝ち得ていくための重要事項としては、「安全・安心で優れた商品・サービ

2

3

安全・安心で優れた商品・サービス・技術を適切な価格で提供する先進的な技術・研究開発に取り組む

利益を確保し、納税する省資源・省エネや環境保護などに取り組む

株主に利益を還元する雇用を維持・創出する地域社会と共生する

社会倫理に則した企業倫理を確立・順守する経営の透明性を確保し、情報公開を徹底する

事業継続計画(BCP)の策定など、平常時から危機管理に取り組む不測の事態が発生した際に的確な対応を取る社員の育成やワークライフバランスに取り組む

メセナ(スポーツ・文化・芸術支援)や社会貢献などに取り組む

■対応している ■ある程度対応している ■あまり対応していない ■対応していない ■分からない

0 20 40 60 80 100%10 30 50 70 90

9

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7

5

3

3

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2

3

2

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47

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47

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29

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14 1

3

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6

5

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3

3

3

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12

10

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12

13

1

4

9

6

4

6

(単一回答)

*小数点以下第1位四捨五入のため、合計が100%とならない場合もある。

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100%

2015年度(n=1618)

2014年度(n=1696)

2013年度(n=1801)

2

2

2

35 49 13 1

1

1

41 48 9

33 51 14

■信頼できる ■ある程度信頼できる ■普通 ■あまり信頼できない ■信頼できない

(単一回答)

*小数点以下第1位四捨五入のため、合計が100%とならない場合もある。

4

2016年4月号〔経済広報〕 3

社会広聴アンケート

Page 6: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

ス・技術を適切な価格で提供する」が85%と最も多い。次いで、「雇用を維持・創出する」と「社会倫理に則した企

業倫理を確立・順守する」が45%と並んでいる。

世代別で見ると、「社会倫理に則した企業倫理を確立・順守する」「経営の透明性を確保し、情報公開を徹底す

る」は、世代が上がるにつれて重要視される傾向がある。一方、29歳以下・30歳代では「社員の育成やワークラ

イフバランスに取り組む」が多く挙げられている。

■企業が信頼を勝ち得るための重要事項(年度別・全体)

企業評価の際の情報源としては、「新聞(紙面)」に次いで「テレビ」。若い世代を中心に「新聞(ウェブ版)」の利用が進む

企業を評価する際の情報源としては、「新聞(紙面)」が最も高く78%。次いで、「テレビ」が66%となっている。

世代別で見ると、「新聞(紙面)」「テレビ」では、世代が高くなるほど利用度が高く、「新聞(ウェブ版)」では世代が

低くなるほど利用度が高くなっている。「雑誌・書籍」では、60歳以上の世代が突出して高く(45%)、「企業が運営

するインターネットサイト」では、49歳以下で3割以上(30 ~ 38%)となっている。

■企業評価の際の情報源(全体)

5

■2015年度(n=1618)

■2014年度(n=1696)

■2013年度(n=1801)

安全・安心で優れた商品・サービス・技術を適切な価格で提供する

雇用を維持・創出する

社会倫理に則した企業倫理を確立・順守する

経営の透明性を確保し、情報公開を徹底する

不測の事態が発生した際に的確な対応を取る

先進的な技術・研究開発に取り組む

利益を確保し、納税する

社員の育成やワークライフバランスに取り組む

省資源・省エネや環境保護などに取り組む

地域社会と共生する

株主に利益を還元する

事業継続計画(BCP)の策定など、平常時から危機管理に取り組む

メセナ(スポーツ・文化・芸術支援)や社会貢献などに取り組む

0 20 40 60 80 100%10 30 50 70 90

8585

87454948

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322

(4つまでの複数回答)

新聞(紙面)

テレビ

雑誌・書籍企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)の

インターネットサイト企業が運営するインターネットサイト

新聞(ウェブ版)企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)の

ソーシャルメディア*企業が発行する刊行物(会社案内、CSRレポート、

アニュアルレポートなど)企業が運営するソーシャルメディア*

その他0 20 40 60 80 100%10 30 50 70 90

66

78

35

36

26

23

22

20

3

2

(4つまでの複数回答)

*ソーシャルメディアフェイスブックやツイッター、LINE、ユーチューブ、ブログなどオンライン上でユーザー同士が情報を交換(送受信)することによって成り立つメディアや、インターネット上で情報発信するブログなどの総称

〔経済広報〕2016年4月号4

社会広聴アンケート

Page 7: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

■企業評価の際の情報源(世代別)

テレビ新聞(紙面)

新聞(ウェブ版)企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)のインターネットサイト

企業が運営するインターネットサイト雑誌・書籍

企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)のソーシャルメディア*

企業が発行する刊行物(会社案内、CSRレポート、アニュアルレポートなど)企業が運営するソーシャルメディア*

その他

・29歳以下

・30歳代

・40歳代

・50歳代

・60歳代

新聞(紙面)テレビ

企業が運営するインターネットサイト新聞(ウェブ版)

企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)のインターネットサイト雑誌・書籍

企業が発行する刊行物(会社案内、CSRレポート、アニュアルレポートなど)企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)のソーシャルメディア*

企業が運営するソーシャルメディア*

その他

新聞(紙面)テレビ

企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)のインターネットサイト雑誌・書籍

企業が運営するインターネットサイト新聞(ウェブ版)

企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)のソーシャルメディア*

企業が発行する刊行物(会社案内、CSRレポート、アニュアルレポートなど)企業が運営するソーシャルメディア*

その他

新聞(紙面)テレビ

企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)のインターネットサイト雑誌・書籍

企業が運営するインターネットサイト新聞(ウェブ版)

企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)のソーシャルメディア*

企業が発行する刊行物(会社案内、CSRレポート、アニュアルレポートなど)企業が運営するソーシャルメディア*

その他

新聞(紙面)テレビ

雑誌・書籍企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)のインターネットサイト企業以外(マスコミや情報提供会社、生活者など)のソーシャルメディア*

企業が発行する刊行物(会社案内、CSRレポート、アニュアルレポートなど)企業が運営するインターネットサイト

新聞(ウェブ版)企業が運営するソーシャルメディア*

その他

0 20 40 60 80 100%10 30 50 70 90

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2

2

*ソーシャルメディアフェイスブックやツイッター、LINE、ユーチューブ、ブログなどオンライン上でユーザー同士が情報を交換(送受信)することによって成り立つメディアや、インターネット上で情報発信するブログなどの総称

(4つまでの複数回答)

2016年4月号〔経済広報〕 5

社会広聴アンケート

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企業評価に際して、「メディアからの発信」は8割を超える人が信用

企業評価の際に利用する情報の発信者の信用度について、「メディアからの発信(ニュースや記事などの報道)」

は81%が、「信用する(信用する/ある程度)」と回答。次いで、「企業からの発信(企業ホームページ、各種刊行物、

ソーシャルメディアなど)」も72%が「信用する(信用する/ある程度)」と回答している。 k

■企業評価の際の情報発信者の信用度(全体・世代別)

(文:国内広報部主任研究員 西田大哉)

6

全体29歳以下30歳代40歳代50歳代60歳以上

全体29歳以下30歳代40歳代50歳代60歳以上

全体29歳以下30歳代40歳代50歳代60歳以上

全体29歳以下30歳代40歳代50歳代60歳以上

全体29歳以下30歳代40歳代50歳代

60歳以上

・メディアからの発信(ニュースや記事などの報道)

・企業からの発信(企業ホームページ、各種刊行物、ソーシャルメディアなど)

・専門家(大学教授、有識者、評論家など)のコメントや評価

・一般生活者からの評判(ソーシャルメディア、クチコミなど)

・タレントなど著名人のコメントや評価

0 20 40 60 80 100%10 30 50 70 90

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2 57 30 11 0

7 68 23 2 1

5 73 20 2 0

6 77 15 11

7 75 15 2 0

5 67 24 3 1

11 66 19 4 0

9 65 22 3 1

5 74 17 3 2

3 67 25 3 2

4 64 28 4 1

6 59 29 5 2

6 53 30 11 0

6 52 34 7 2

3 64 24 5 3

4 57 31 5 3

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3 50 36 7 3

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5 54 33 7 2

0 11 48 37 2

2 21 38 36 2

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0 17 45 33 5

0 10 45 42 2

1 9 54 35 2

*小数点以下第1位四捨五入のため、合計が100%とならない場合もある。

■信用する  ■ある程度信用する  ■あまり信用しない  ■信用しない  ■分からない

(単一回答)

〔経済広報〕2016年4月号6

社会広聴アンケート

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社会の出来事に鋭く反応する生活者の企業観中島 茂(なかじま・しげる)中島経営法律事務所 弁護士 

「安全・安心・適正価格」は企業の永遠不変の課題

今回のアンケート調査でも「企業の果たす役割や

責任」の圧倒的な第1位は、「安全・安心で優れた

商品・サービス・技術を適切な価格で提供する」こ

とであった(「非常に重要」82%)。実はこの項目は

1997年度の開始以来、「商品・サービスの提供」「事

業を通じての貢献」と表現を変えながらも、一貫し

て第1位だ。「安全・安心・適正価格」は、もはや「永

遠不変の課題」といってよい。企業の進むべき道は、

ここにくっきりと示されている。

高まる「情報開示」への期待

「企業の果たす役割や責任」として注目すべきは、

前回調査では第5位(39%)であった「経営の透明

性・情報開示」が、「雇用の維持・創出」を抜いて第4

位(44%)に上昇していることだ。背景には不祥事

の多発がある。前回の調査が行われた2014年11月

以降、「北陸新幹線談合事件」(11月)、「食品異物混入

事件」(12月)が起き、2015年に入ってからは「免震

ゴムデータ偽装事件」(3月)、「電機会社不正会計事

件」(5月)、「杭工事データ流用事件」(10月)などが

起きている。いずれも、国民の生活に大きな影響を

与える性質のものである。「平時から情報公開が徹底

されていれば、これらの不祥事は防げたはずだ」。

「万一不祥事が発生した場合は、そのときこそ積極

的な情報公開が必要だ」。アンケート結果にはそう

した生活者の期待が込められている。

不祥事多発による企業に対する信頼度の低下

残念ながら、「企業に対する信頼度」が前回の43%

から37%に低下してしまった。前述のような、世

間の注目を集める企業不祥事が相次いだことによ

る、やむを得ない調査結果である。不祥事の発生件

数や内容に対して、生活者はこれほどに鋭く反応し

ている。そのことを企業はあらためて厳粛に受け止

める必要がある。「企業の果たす役割や責任」として

同率(56%)で第2位となっている、「企業倫理の確

立」と「不測の事態が発生した際の的確な対応」は単

なる標語ではない。企業が生活者の信頼を勝ち得る

ための実践項目なのだ。

「世代別」「職業別」に見た企業に対する信頼度

企業に対する信頼度を「世代別」「職業別」に見る

と、企業が姿勢を正さなければならない重要なポイ

ントがあることに気づく。企業に対する信頼度を

「世代別」に見ると、ほかの世代が30%台であるの

に「29歳以下」が45%と極めて高いこと、「職業別」に

見ると、ほかの職業が30%台、40%台であるのに

対して「学生」が53%と唯一、高い数値を示してい

ることだ。若い世代や学生の企業に対する信頼度は

断然、高い。その信頼のまなざしを企業は決して裏

切ってはならない。そうした「覚悟」を持つことが企

業倫理の確立の上では大切なことだ。 k

2016年4月号〔経済広報〕 7

社会広聴アンケート

Page 10: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

悲観大国、日本~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~

「エデルマン・トラストバロメーター」は、政府、企業、メディア、NGO/NPOに対するグローバルな信

頼度調査で、今年で16年目となる。「2016 エデルマン・トラストバロメーター」は世界28カ国、3万3000

人以上を対象に、2015年10月13日から11月16日にかけて実施された。詳細は以下の通りである。

震災以降回復の兆しを見せない、日本人の自国に対する信頼度

東日本大震災が発生する以前は、日本人の自国に

対する信頼度は、調査対象国の中で比較的中間レベ

ルに位置し、数ある企業の不祥事や、頻繁に国の首

相が代わるといった事実があったにもかかわらず、

日本人の自国に対する信頼度が極めて低いといった

ことはなかった。しかし、震災後、それは一変し

た。例を挙げれば、政府に対する知識層注1の信頼

度は、震災前の51%から、震災後は25%に急落し

た。政府高官/規制当局者に対する信頼度において

は、63%から8%となり、調査史上最大の下落率

を記録した。「国民の自国に対する信頼度ランキン

グ」注2において、前回調査の知識層の信頼度は、調

査対象国中最下位となり、今回の調査結果において

も同様に最下位となった。日本人は依然として、自

国を信頼していないのである。

5年後の経済状況が改善していると答えた日本人は2割以下で世界最低

5年後といえば、日本はオリンピック・パラリン

ピックを迎える。開催国として、もっと楽観的に

なってもいいように思うが、「あなたご自身とご家

族の経済的な見通しについて、5年後の状況はどう

なっていると思いますか?」という問いに対し、良

くなっていると答えた日本人回答者は2割以下で、

知識層19%(グローバル平均:55%)、一般層15%

(グローバル平均:47%)とかなり低く、世界最低

の結果となった。震災後に急落した日本人の自国に

対する信頼度は、そう簡単に回復できるものではな

いようである。

世界的に広がる信頼の格差と影響力の逆転

「2016 エデルマン・トラストバロメーター」では、

世界レベルで組織に対する信頼度に上昇が見られ

た。しかし、知識層と一般層注3の組織に対する信

頼度を比べてみたところ、それには大きな差がある

ことが明らかになった。信頼の格差が顕著に見ら

れた国は、米国(19ポイント)、英国(17ポイント)、

フランス、インド、オーストラリア(16ポイント)

である。日本においては3ポイントと、知識層と一

般層の間に大差はないものの、所得別に分析した

データにおいては、上位25%と下位25%の間に17

ポイントもの差があり、他先進国同様に大きな格差

があることが明らかになった。これは何を意味して

いるのだろうか? 各情報源に対する信頼度を見る

と、世界で最も利用されている情報源は、オンライ

ン検索エンジン(71%)、テレビ(69%)、ソーシャ

ル・ネットワーキングサイト(67%)で、最も利用

されている情報源の上位3つのうち2つが、自分と

注1:知識層:25 ~ 64歳で、学歴が大卒以上。同世代と比較して世帯収入が上位25%以内。メディアに日常的に触れ、ビジネスに関するニュースに関心を持っている層を指す。

注2:国民の自国に対する信頼度ランキング:企業、政府、メディア、NGO/NPOに対する各国国民の信頼度の平均値。

注3:一般層:全回答者から知識層を除いた回答者を指す。

〔経済広報〕2016年4月号

視点・観点

8

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同等の人が影響を与えているメディアである。ス

ポークスパーソンに対する信頼度においても、世

界では「自分のような人」に対する信頼度は63%で、

前回から6ポイント上昇しており、一般社員にお

いても52%で、CEOに対する信頼度(49%)を上

回っている。すなわち、ピア・ツー・ピアのコミュ

ニケーションによる影響力が拡大しているのであ

る。このデジタルが発達した現代においては、エ

リートや有力者とされる人々よりも、一般層の方が

力を持っている。今、米国の大統領選挙で何が起

こっているかを考えれば、これは明らかだろう。

日本人は世界一自分が働いている会社を信頼していない

最も衝撃的な調査結果のひとつが、「自分が働いて

いる会社を、正しい行いをするという点において、

信頼していますか?」という問いに対して、「信頼し

ている」と答えた日本人回答者は4割で、調査対象

国において、世界最低だったということである。こ

れまで、終身雇用制度が育むと想定されていた愛社

精神や、長時間残業を厭わず献身的に働くライフス

タイルからは、全く想像できない結果である。日本

は、社会の均一性が強く暗黙知の共有を前提とした

高コンテクスト社会であるといわれているが、「日本

人同士だから言わなくても分かるだろう」といった

コミュニケーションは、もはや成り立たない。ま

た、CEOへの信頼を構築する上で、「従業員を大切

にする」ことの重要性と実際のパフォーマンスにつ

いて調査したところ、「重要である」と答えた日本人

回答者は43%であったのに対し、「実行できている」

と回答したのはほんの6%で、37ポイントもの開

きがあった。この調査結果は、経営者にとっての警

鐘であり、社員とのエンゲージメントをいかに確立

するかが、今後のビジネスを成功に導くかどうかの

大きなカギであるといえるだろう。

社会問題への取り組みが社員の賛同を得ることに繋がる

では、どうすれば社員の賛同を得られるのだろう

か? 本調査結果によると、社会問題に取り組んで

いる企業の社員と、そうでない企業の社員の間に

は、企業へのエンゲージメントにおいて、大きな差

があることが明らかになった。具体的には、「自社の

戦略と目標の達成に尽力している」と答えた社員は、

社会問題に取り組んでいない企業においては41%

であるのに対し、社会問題に取り組んでいる企業

では73%で、32ポイントもの大差が見られた。同

様に、「勤め先として自社を他人に薦めますか?」と

いう問いに対しても、29ポイントもの差があった。

グローバルの調査結果でも、これほどの差は見られ

ない。優秀な人材を確保し、維持するためにも、ま

た、社員のモチベーションを上げて、生産性を高め

るためにも、良き企業市民として社会的責任を果た

すことが重要であるといえる。

経営者に求められているものとは

経営者に求められる資質において、「正直」「倫理

的」「有能」といった要素が世界で求められているの

に対し、日本で最も求められているのは「決断力」で

ある。また、本調査結果によると、世界においても

日本においても、経営者に対する信頼を築く上で、

個人的価値観や、これまでの過去に関する情報が重

要であることが明らかになっている。経営者は、ま

ず、正直で倫理的な対話を通じて、自身の理念を伝

え、自身の価値観に対する理解を深める必要があ

る。また、利益追求のみならず、社会的意義のある

行動を通して社会に貢献することが、社員とのエン

ゲージメントを確立し、社員の賛同を得ることに繋

がる。悲観大国日本において信頼を勝ち取るために

は、新たなレベルでのコミュニケーションが必要と

されているのかもしれない。 k

2016年4月号〔経済広報〕

視点・観点

9

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PRにおける“クリエイティビティー”の重要性アンディ・ポランスキーウェーバー・シャンドウィック 最高経営責任者(CEO)

■聞き手:佐桑 徹 経済広報センター 常務理事・国内広報部長

ウェーバー・シャンドウィックは、世界81カ国でPRコンサルティングサービスを提供するグローバルな

PRコンサルティング会社である。同社は、広告メディアのAd Ageが毎年発表するエージェンシーリストで

PR会社として唯一2年連続で受賞するなど、PRの領域を超えたクリエイティビティーやイノベーションに

ついて高い評価を得ている。同社の最高経営責任者(CEO)のアンディ・ポランスキー氏が2月下旬に来日し

た機会に、PRにおけるクリエイティビティーの重要性について聞いた。

様々なスペシャリストが生み出すクリエイティビティー

■クリエイティビティーを取り入れたPRコンサル

ティングを行っていると伺っているが、どのよう

なことか。

ポランスキー 昨今のPR業界では、どれだけ周囲

の人々を巻き込んでいけるかというエンゲージメン

トが重視されている。人々が情報を得るチャネル、

プラットフォームが多様化しており、PR会社とし

ては、様々な分野で専門性の高い人材をそろえるこ

とが、クライアントのニーズに合ったサービスを提

供するために不可欠である。当社は、デジタルやS

NS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、

ブランディングなど、今までにない幅広いPRの

サービスを提供できる会社であると自負している。

当社の社員には、マーケティングや広報、ジャーナ

リスト、危機管理やそれぞれの国や地域の法務事情

に詳しい弁護士など幅広い専門知識を持つスペシャ

リストが在籍しており、それが当社の強みとなって

いる。

当社のSNS分野、コンテンツマーケティング分

野での戦略プランニングは世界トップレベルである

と自負している。核となるのは従来のPR分野だ

が、その周辺の新しい領域にも力を入れている。そ

うした戦略と計画の連携は、ますます重要になって

きている。また、最近、組織を抜本的に再編し、社

内でのコラボレーションやチームの連携をより促進

してクリエイティビティーをさらに高める体制を整

えた。

SNSなどを活用したクリエイティブな広報戦略を

■グローバルな観点から見ると、日本企業はどのよ

うに評価されているか。

ポランスキー 日本企業は今、世界中から注目され

ている。2020年に東京オリンピック・パラリンピッ

クが開催されるからだ。当社は、東京やそのほかの

都市のオリンピック誘致をサポートしたが、過去の

経験からすると、いずれの主催都市も開催まで世界

中から注目を浴び続ける。企業はまさにこの機会を

生かして、自らの知名度や認知度を向上させるため

にグローバルなコミュニケーションを強化すべき

だ。

〔経済広報〕2016年4月号10

企業広報研究

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■日本企業がブランド力を上げるためにはどうすれ

ばよいか。

ポランスキー 日本企業の目の前には大きなチャン

スがある。だが、世の中の動きが複雑化している

今、そのチャンスに対するアプローチの仕方を間

違えると、他社との差別化や、強力なブランドを構

築することは難しいだろう。そのためにはクリエ

イティビティーに富んだ多様なアプローチが必要に

なってくる。今後、グローバル市場で、世界的な知

名度を獲得するためには、国内市場で顧客を引き付

けていたときとは違う、今まで経験してこなかった

ようなリスクをとった斬新なアプローチが求められ

るだろう。既に日本企業の中にも、世界へ向けてデ

ジタルやSNSを活用したクリエイティブな広報戦

略を取り始めた企業も出てきている。

■それはどのような戦略か。

ポランスキー 当社は、日本だけではなく、グロー

バル企業のクライアントを多数抱えている。それら

の経験を踏まえて、企業がデジタルやSNSを活用

したクリエイティブな広報戦略を実施するために、

従来のメディアリレーションズだけではなく、より

幅広い対象に向けたコンテンツの制作や、成果の測

定、ブランドマーケティングなどを提供することが

できる。また、最近は特に、企業の風評が重視され

ており、会社がどのように受け止められているかに

よって、マーケティング戦略が変わる。そのような

様々な要因を網羅した形で、複雑な環境の中、企業

がどのような方向性を取っていけばよいかの指針を

提供できる。単にクリエイティブなソリューション

を提供するだけではなく、ステークホルダーからど

のような圧力があり、企業の風評にどのような影響

が出ているかの分析や、その影響に対する解決策は

何か、といった戦略の策定をサポートすることがで

きる。

心に響くアプローチがカギ

■国内だけでなく、グローバルにステークホルダー

とのエンゲージメントを高めていくためにはどう

すればよいか。

ポランスキー 今まで、長年にわたり多くの企業は

ブロードキャスト型の広告に頼っていた。ペイドメ

ディアを使い、あらゆる人に一斉配信をしていた。

一方、近年、消費者は様々な手段、アプローチで企

業情報を取得しようとしている。そのような状況下

では、企業は消費者と強いエンゲージメントを築く

ことが重要である。もちろん、従来と変わらず、ペ

イドメディアは重要なメディアであるが、それだけ

にとどまらず、アーンド、オウンドメディアを組み

合わせ、様々なプラットフォームやメディアをフル

に活用したエンゲージメントを築くことが重要だ。

特に、デジタル、モバイルユーザーに向けて心に響

くようなアプローチができるかが今後の大きなカギ

になる。

■グローバルなエンゲージメントといっても、欧

米、アジアではエンゲージメントの仕方が異なる

のではないか。

ポランスキー その通りだ。企業は何のために存在

しているのか、また、グローバルで共通して伝えて

いきたいと思う内容は何かといったメッセージを世

界で一貫して発信すべきだ。しかし、その一方で、

世界の国・地域によってエンゲージメントの仕方は

変えていかなければならない。消費者は、ブランド

の裏にある企業がどのような企業なのかを知りたい

と常に思っているので、どの消費者にも正確に伝わ

るコーポレートメッセージが必要である。従って、

各国・各地域で企業のメッセージの発信方法や施策

の実行方法は変えてエンゲージしていく必要があ

る。当社は世界81カ所に事業拠点があり、それぞ

れのローカルメディアへの対応や、その地域の文化

を熟知しているため、それぞれのマーケットに最適

なアプローチを提案できる。

■最後に、米国の企業広報における最近のトレンド

は。

ポランスキー 企業はマーケットの変化を予測し、

それに合ったPR戦略を取れるかが企業の成功のカ

ギになるだろう。最近のトレンドでは、特にテクノ

ロジーやイノベーションに対しての関心が高まって

いるため、それらに合わせた戦略が必要になって

くるはずだ。当社では、今後も、クリエイティビ

ティーという強みを生かしたコンサルティングをク

ライアントに提供していきたい。 k

(文責:国内広報部主任研究員 西田大哉)

2016年4月号〔経済広報〕 11

企業広報研究

Page 14: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

リーダーのコミュニケーションの目的は人を動かすこと川村秀樹(かわむら・ひでき)コミュニケーション・コンサルタント

私たちは毎日のように、政治家、評論家、芸能

人、プロスポーツ選手といった多種多様な人々がテ

レビで話すのを見る。ネットには、さらに多くの動

画がある。企業のトップを見る機会も増えている。

ぎこちない笑顔を浮かべ、手を握りしめて、簡潔に

話そうとしている姿を見ると、「なぜ、無理をしてま

で、テレビに出るのか」と考えてしまう。社長は積

極的にコミュニケーションをするべきという考え方

に反対するつもりはないが、その人となりにもよ

る。社長が公の場で話をするタイミングや状況も考

えねばならない。

政治家、評論家、弁護士、医師、そして、企業人

と様々な方々にトレーニングをさせていただいた

が、日本の企業人はコミュニケーションのスキルと

いう点では平均点が低い(本稿では、スキルについ

て詳しく述べるのは避ける)。しかし、事業環境の

変化への感度、多種多様なステークホルダーへの配

慮、組織の将来に対する責任感という点では、傑出

している。

矛盾した要素を併せ持つ

社長にも様々なタイプがある。話好きな人、寡黙

な人、人の話を好んで聞く人、「俺が、俺が」と自分

の話ばかりをする人。中には、かなり照れ屋な方も

いる。創業者は別として、新しく社長になられた

方の中には、社長職をまっとうせねばならないと

いう使命感をあからさまに感じさせる人もいれば、

まだ社長の椅子に座り慣れていないという方もおら

れる。

これまで数多くのリーダーの方々にお会いしてき

たが、私なりに観察させていただく基準がある。私

の目を見続けて話をされるか、言い切る強さを持っ

ておられるか、そして、私の話を適当に取捨選択さ

れる方なのかという点である。

社長として優れたコミュニケーション能力を持つ

人に共通する点がある。常日ごろから市場やステー

クホルダーの動向に関心を払うべきだが、時には、

聞く耳持たずといった対応もできる。多くのステー

クホルダーと良好な関係を保たねばならないが、時

として、無視する強さも持つ。企業理念を唱え続け

る頑固さを持つが、時には、豹変する。多面性、矛

盾する要素が求められるのが社長職ではなかろう

か。社長は批判の的でもある。何をしても(しなく

ても)、批判、不満、疑問が社内外から出てくる。

ステークホルダーの評価や報道内容に一喜一憂する

べきではない。マスコミをはじめとして周囲の評判

が高いといった状況は、社長にとっては「危ない兆

候」と考えるべきである。

傑出したリーダーの共通点

傑出したリーダーのコミュニケーションに感心

させられた経験を幾つかご紹介する(固有名詞は控

えさせていただく)。米国の優良企業のトップの方

は、記者の質問に対して単純に答えるのではなく、

徹底して自説を説いていく。歴史観と地政学的な視

点を駆使して、ややもすると現在の日本やアジア

〔経済広報〕2016年4月号12

企業広報研究

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という視点に比重を置く記者の視点を超えて話し

ていた(結果として、記者は断片的な記事しか書け

なかった)。誰もが知る日本の企業のトップは、技

術の話を遠慮なく長々と続ける(新聞記者の個別イ

ンタビュー)。熱を帯びた話に対して、記者は途中

で話を遮ることができない。米国の著名な経済学

者(一時は大統領直轄の経済担当チームのトップに

あった)は、記者の曖昧な質問を許さない。質問の

意味を問いただすことによって、記者の理解度を測

り、その記者の力量に応じた回答をする(いかにも

大学教授といった印象)。しかも、まったく姿勢を

崩さないためか、記者も緊張して話に聞き入るしか

ない。

いずれも、簡潔に、分かりやすく、的を射た回答

というマスコミ対応の基本から逸脱している。基本

はあくまでもガイドラインである。むしろ、基本を

逸脱したところがリーダーの魅力を伝えているよう

に思える。こうした方々に共通するのは、広い視

点、柔軟な発想、熱意である。どこまで幅広く見て

いるのか、現状をどのように捉えているのか、そし

て、誰よりも深く考えているのかが、自ずと言葉と

なって出てくる。リーダーは、話し方に過度にとら

われるべきではない。業態、もしくは、事業環境の

変化によっては、消費者に分かりやすく話す術を身

に付ける必要もあるが、好感の持たれる話し方を最

優先にするのは順序が違う。繰り返すが、社長は批

判される存在である。

リーダーには自らの言葉に責任を持ってもらいた

い。社長就任の準備に当たって事務方に、「分かりや

すい言葉でうまくまとめておいてよ」と割と気楽に

依頼する人もいる。一方で、事務方の作成した原稿

を徹底して議論する人もいる。さらには、事務方が

準備する前に、就任の言葉をすべて自分で書いてく

る人もいる。自らが徹底して考えた内容を伝えるに

は、やはり、自らが的確な言葉を探すべきである。

その後で、分かりやすい話し方、印象に残る話し方

といった観点から、原稿をチェックするべきではな

いだろうか。

人を動かす

スポークスパーソンとして、社長ならではという

仕事がある。人を動かすことである。情報を提供す

るだけのスポークスパーソンではなく、様々な場面

で、多種多様な人々を動かすことが求められる。新

製品の発表をした1週間後に不祥事の会見をするよ

うな場合もある。M&A(企業の合併・買収)の交渉

をしているさなかに、決算発表をする場合もある。

何を話すべきかを明確に線引きしておくとともに、

その場に合った、相手に応じた言動が求められる。

人を動かす言葉は、文書に書かれた言葉とは違

う。文字だけで見ると、簡潔で分かりやすいという

ことになるが、その場に集まった人々の関心や不安

に向き合い、進むべき方向を示し、そして何より、

取るべきアクションの結果責任を担う覚悟が表現さ

れていなければならない。

最近は、話の内容が文字だけではなく、話してい

る様子が動画で伝えられる機会が増えている。動画

は非常に効果的なコミュニケーション手段である。

社長の考えだけではなく、その人となりを伝えるこ

とができる。ただし、好印象を与えることが必ずし

も人を動かすことにはならない。社長に求められて

いるのは事業の結果であって、好印象を与えること

が目的とはならない。

人の心をつかむ

リーダーは、その目で、その言葉で人の心をつか

むことができる。本稿の最後に、私の若かりしころ

の経験をご紹介する。米国から来日した要人を自民

党の副総理(当時。後に総理となられた)の事務所に

お連れする機会があった。ところが、この要人の前

の会議が延びて15分以上も遅刻、自民党本部の入

り口で待ちかまえていた秘書にこっぴどく怒られ、

副総理の部屋に入ると、私に一言。「この方は米国か

ら来られたのですよね。来日されるまでの時間に比

べると15分の遅れは、そんなに大事ではないです

よ。さぁ、座って話をしましょう」。その場の状況

を読み、その後の会議に配慮した発言。「人たらし」

ともいわれただけのことはある。腹の中では激怒し

ていたのかもしれないが、瞬時にこのような言葉を

思いついたのであろうか。ささいな出来事ではある

が、器の違いを痛感させられた経験である。 k

2016年4月号〔経済広報〕 13

企業広報研究

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日本コカ・コーラの組織体制と広報方針

日本コカ・コーラは、ザ コカ・コーラ カンパニー

(本社:米国ジョージア州アトランタ)の日本法人と

して1957(昭和32)年に設立され、1964年の東京五

輪や、2002年のFIFAワールドカップ日本・韓国共

催大会を協賛するなど、日本経済の発展と共に成長

を続け、来年には創業60周年を迎える。主な業務

内容としては、守山工場(滋賀県)を拠点に全国のボ

トラー社に原液を供給するほか、日本の市場や消費

者・購買者の分析を通じて製品開発やマーケティン

グ戦略を策定している。

同社の広報活動は、広報・パブリックアフェアー

ズ本部が担っている。社内でも広報は重要な役割を

担い、社長直下の組織として、マーケティングや、

経営戦略などといった部署と同列になっている。広

報・パブリックアフェアーズ本部では、コミュニ

ケーション、政策渉外、消費者コミュニケーショ

ン、危機管理の4部門から成り立っており、それぞ

れの部門が、ボトラー社の広報部門と連携し、社内

外向けの情報発信を行っている。

○コミュニケーション

コミュニケーション部門は、ブランドコミュニ

ケーション、コーポレートコミュニケーション、イ

ンターナルコミュニケーション、デジタルコミュニ

ケーションの業務を担っている。ブランドコミュニ

ケーションでは、マーケティング部門と連携し、自

社ブランドの製品をどのようにPRしていくかの戦

略を立案・実行している。一方、コーポレートコ

ミュニケーションでは、企業ブランドや会社自体を

どのようにPRしていくかを考え、競争の激しい飲

料業界で、会社のレピュテーションを上げることを

目標に日々活動を行っている。インターナルコミュ

ニケーションでは、社員全員に新製品や新キャン

ペーンの情報を適宜共有・理解してもらうことで、

全社員が会社の“アンバサダー”として社内外に自ら

情報を発信していくことを後押ししている。また、

紙による社内報は発行していないが、世界のザ コ

カ・コーラ カンパニーの社員が使用しているイント

ラネットを使い、各国から各地域の情報を発信・共

有できる仕組みを導入した。デジタルコミュニケー

ションでは、同社が取り組んでいる様々な活動を伝

えるコミュニケーションプラットフォームとして、

2013年に「Coca-Cola Journey」を新たに立ち上げた。

新製品や新キャンペーン、サスティナビリティー、

ボトラー社の活動といった情報をストーリー仕立て

日本コカ・コーラの広報・パブリックアフェアーズ活動

日本コカ・コーラ(株)

グループ広報戦略 5

「コカ・コーラ」は言わずと知れたグローバルブランドであり、コカ・コーラ社は全世界で事業を展開するグ

ローバル企業である。日本コカ・コーラは、米国本社のザコカ・コーラカンパニーと連携するとともに、日

本各地にあるボトラー社や関連会社と強いパートナーシップを結び、事業や広報活動を展開している。世界

各地のコカ・コーラ社とのグローバル広報体制と国内グループ広報体制について聞いた。

〔経済広報〕2016年4月号14

Page 17: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

グループ広報戦略 5

に編集したウェブマガジン型企業サイトとして展開

している。また、同サイト内に、「広報ブログ」と呼

ばれるページを設置し、リアルタイムでスピード感

をもって、情報を発信し、読者を飽きさせることの

ないよう、積極的に情報の更新をしている。

○渉外

渉外では、地域のコミュニティへの社会貢献活動

と政策渉外活動を行っている。

コミュニティ活動のひとつの大きな柱は、東北の

被災地復興支援である。同社の親会社に当たるザ

コカ・コーラ カンパニーは、東日本大震災直後の

2011年3月24日に「公益財団法人コカ・コーラ教育・

環境財団」内に「コカ・コーラ復興支援基金」を立ち上

げ、総額25億円の拠出金とコカ・コーラシステム従

業員、消費者からの寄付で、「心豊かでたくましい人

づくり」の活動理念に基づいて、次世代を担う子ど

もたちの教育支援を中心に、4つの取り組みを実施

してきた。

防災機能のさらなる向上に向けた被災3県55の

公立小・中学校への太陽光発電設備の設置助成のエ

コ支援事業。設置後には、クリーンエネルギーを通

じた環境教育の授業も実施している。沿岸被災地の

将来を担う青少年の育成支援を目的に、岩手県内の

高校、特別支援学校へ計5台のバスを寄贈した。

米国から来たボランティアスタッフと被災地の子

どもたちが一緒にショーを創作するワークショップ

形式のプログラム「ヤングアメリカンズ東北ツアー」

への協賛や、中学生・高校生を対象にした英国・米

国「ホームステイ研修プログラム」を提供した。米国

への「TOMODACHI Summerホームステイ」研修で

は、岩手・宮城・福島の高校生を、ホームステイや

英語研修プログラムに派遣し、異文化体験を通じて

グローバルな視野を身につけると共に、「震災体験を

踏まえて自らと出会う」ための学びの機会となって

いる。この「TOMODACHI Summerホームステイ」

研修には、2014年までの3年間で累計239人の高校

生が参加した。

そのほかにも、「コカ・コーラ教育・環境財団」で

は、青少年への育成を目的として、大学生への奨学

金制度やアスリートを全国の学校へ派遣して、走り

方の出前授業を行う「かけっこ教室」を開催。また、

北海道には「コカ・コーラ環境ハウス」を設立した。

栗山町の歴史ある元小学校を改装し、宿泊施設も備

え、全国の環境教育の拠点としている。ここでは、

毎年、地域の環境保全活動を促進することを目的と

した「コカ・コーラ環境教育賞」の最終選考会、表彰

式を開催、文部科学省、環境省、有識者、栗山町の

方々が集い、全国各地の青少年による環境ボラン

ティア活動を顕彰している。

このように全国で幅広く活動を支援しているのに

は、全国各地にあるボトラー社の存在が大きい。各

社にパブリックアフェアーズと呼ばれる組織があ

り、地域のコミュニティでの活動に積極的に参加し

ているため、全国各地

で、ニーズに合った活

動をすることができる。

それにより、日本の一

部の地域だけでの活動

ではなく、全国規模の

スケールの大きな活動

をすることができる。

サステナビリティーフレームワーク

同社では、サステナビリティーをビジネスの成長

の必須条件と位置づけている。サステナビリティー

の取り組みは、事業を営む国において様々なステー

クホルダーと協力し、前向きな変化と社会的価値を

生み出すことを世界共通のビジョンとして掲げてい

る。世界共通で取り組む9つの重点分野において、

グローバルな目標に加え、ローカルの課題に合わせ

2016年4月号〔経済広報〕 15

Page 18: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

グループ広報戦略 5

た活動を行っている。本社が、共通したビジョンと

フレームワークを策定し、世界各国のコカ・コーラ

社へ発信する。それぞれの国にあるコカ・コーラ社

はそのビジョンと地域が抱える課題を照らし合わ

せ、その展開地域で社会貢献活動を計画し実施して

いる。

日本コカ・コーラでは、東北の被災地支援や、女

性管理職比率を高める施策、日中最長16時間、最

大で消費電力を95%削減できる「ピークシフト自販

機」の積極的な市場導入、全国20カ所の工場の水源

域で水資源保護活動を展開するなど、本社のビジョ

ンを具体的な計画に落とし込み、日本全国をコミュ

ニティと定めて実行している。

また、世界各国での取り組みを共有する体制も

整っており、世界各国の担当者を集めたワーク

ショップや、アジア地域の担当者が直接顔を合わせ

る会議などを定期的に行い、各地の取り組みを共有

し、それぞれの地域での活動のレベルアップを図っ

ている。全世界のコカ・コーラ社が共通のビジョン

を持ち、地域の人々と連携して課題解決に取り組む

ことはコカ・コーラ社の大きな強みである。

サステナビリティーフレームワーク

前身がコールセンターのCIC (Consumer Intelligence & Communications)

広報・パブリックアフェアーズ本部の中にあるC

ICは前身がコールセンターである。現在もコール

センター機能があり、顧客からの質問や指摘に対応

する最前線となっている。顧客とコミュニケートで

きる唯一の部署であるので、経営トップも重要視し

ており、社長を含め定期的に直接声を聴く機会を設

けている。

また、同社の特徴は、SNS(ソーシャル・ネッ

トワーキング・サービス)に特化したチームを配置

していることである。従来のコールセンターの機能

を発展させ、SNSエリアでも消費者の生の声を収

集し活用するため、発信者のコメントをキーワード

を定めて拾い、分析している。また、コカ・コーラ

社に対するポジティブな投稿とネガティブな投稿の

両方に対して積極的にアプローチし、消費者とのコ

ミュニケーションを図るよう努めている。

コールセンターでの対応は、会社と消費者の間で

完結してしまい、疑問やその回答が外に伝わるこ

とは少ないが、SNSでは、そうしたやり取りも

含め、第三者がフォローできる環境でコミュニケー

ションを取ることになる。例えば、ある消費者が

「コカ・コーラ社の自販機で商品が出てこない、どこ

に連絡をすればよいのか」とSNSに投稿すると、

SNSチームはその投稿を素早く見つけ出し、SN

Sで、迷惑をかけたお詫びと共に連絡先を案内する。

すると、投稿した人が「コカ・コーラが素晴らしい

神対応をしてくれた!」とコメントし、それがSN

S上で「神対応」として話題になることがあった。消

費者一人ひとりが語っていることに耳を傾け、きち

んと誠意をもって、会社として対応する。困ってい

ることがあれば、その投稿を見過ごすことなくサ

ポートする。これこそがまさに「コンシューマーエ

クスペリエンス」を消費者に提供することであり、

これからのコンシューマーカスタマーリレーション

ズには欠かせないものである。そして同時に、外か

らもしっかりとしたサポートをしている企業だとい

う認識を持ってもらえるきっかけとなる。 k

(文:国内広報部主任研究員 西田大哉)

〔経済広報〕2016年4月号16

Page 19: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

生命保険協会は、現在、日本で

営業している全ての生命保険

会社41社が加盟している業界団体で

す。1908(明治41)年に発足し、今

年で創立108年になります。

当協会では、「わが国における生命

保険業の健全な発達および信頼性の

維持を図り、もって国民生活の向上

に寄与する」ことを目的として、生

命保険に関する調査研究、広報活

動、意見表明、消費者相談、教育制

度運営、社会貢献活動など、業界に

共通する様々な業務を運営しています。本部を東京

に置き全都道府県に54の地方協会があります。

これまで生命保険会社は、生命保険や年金保険

の販売、普及を通じて社会保障制度の補完機能を

担い、一方で機関投資家としての役割を発揮して

まいりました。現在、全国22万人を超える営業職

員、9万店を超える代理店などのネットワークを通

じて、年間約22兆円の保険金などをお支払いする

とともに、約350兆円の総資産を保有する機関投資

家、長期安定資金の供給者として経済の発展に寄与

しております。

当協会では、わが国の構造的課題である少子高齢

化の急速な進展をはじめとした環境変化への対応を

図るべく、2015年度は「これからもずっと安心社会

の実現のために」をキャッチフレーズに、以下の3

点に重点を置いた活動を展開しております。

①「社会保障制度改革に関する提言」

 安心社会を実現するための社会保障制度の構築

に向けて、公的年金を補完する「長寿安心年金」の

創設を提言(2016年2月19日公表)

②「保険教育の推進」

 自助努力の役割・重要性の理解

促進に向けて、学校教育現場での

保険教育の拡充などを検討し、関

係機関への働き掛けを実施(各社

の取り組み事例集を2016年2月

19日公表)

③「お客さまからの信頼維持と事業

の健全な発達」

 生命保険料控除制度の拡充要

望、国際会計基準などに関する意

見発信、株式価値向上などに向け

た要望の実施 など

日常の広報活動で特に注力しているのは、マスコ

ミ対応、消費者関連団体対応、および社会貢献活動

です。生命保険、年金保険の意義・役割を正しく理

解していただくためのPR活動、消費者の皆さまの

声に真摯に耳を傾け健全な制度運営に繋げるための

意見交換会の実施、アベノミクス「新3本の矢」にも

ある子育て支援や介護問題への対応を含めた次世

代のより良い環境に繋げる社会貢献活動や各地の

ウォーキングイベントへの協賛を通じた健康増進啓

発プロジェクトの実施などに精力的かつ着実に取り

組んでいます。

当協会のホームページ(http://www.seiho.or.jp/)

では、これら諸取り組みの内容を掲載しております

ので、ぜひ一度ご覧いただければ幸いです。 k

これからもずっと安心社会実現のために

山根康史(やまね・やすし)

(一社)生命保険協会広報部長

2016年4月号〔経済広報〕 17

ANG LE

Page 20: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

グローバル化したサプライチェーンに潜むリスク越守丈太郎(こしもり・じょうたろう)トムソン・ロイター・マーケッツ(株) 市場開発本部 次長

経済活動がますますグローバル化する中、わが国の企業は、各国で、法律、商習慣などの違いに起因する

様々なリスクに直面している。そこで、経済広報センターは2月10日、企業、専門家の意思決定に必要とな

る様々な情報を提供し、企業実務を支援しているトムソン・ロイター・マーケッツの越守丈太郎市場開発本

部次長を招き、「グローバル化したサプライチェーンに潜むリスク」と題する講演会を開催した。

ビジネス上、注目されるリスク

「サプライチェーンのグローバル化」には、2つの

側面がある。第1は、事業拠点のグローバル化であ

り、第2は、自社事業に関わる人材のグローバル

化、多様化である。このようなサプライチェーンの

グローバル化を背景に、企業の内部から、そして、

供給業者などとの関わりの中で、様々なリスクが生

じてくる。例えば、①各種法令・規制への違反、②

贈賄、不公正取引への関与、③犯罪組織や武装勢

力、テロリストなどとの接触、④制裁対象国の政

府・政府関係者・企業との接触、⑤金融犯罪への関

与、⑥労務問題の発生などである。

今回は、特に留意すべき現代的奴隷、紛争鉱物、

贈収賄・汚職について述べる。

現代的奴隷(Modern Slavery)

現代的奴隷とは、児童労働、強制労働などを意味

する。米国カリフォルニア州では、年間売上高が

1億ドル以上の小売業、製造業の企業に対して、そ

のサプライチェーン内の企業に現代的奴隷労働の

有無とそのリスクを評価し、公表することを義務

づけている(The California Transparency in Supply

Chains Act of 2010)。英国においては全業種が同様

の規制の対象となっている(Modern Slavery Act)。

2015年8月、カリフォルニア州では、ある小売

業者に対して訴訟が起こされた。これは、同社が販

売する養殖エビは「タイで無報酬の強制労働によっ

て捕獲された安い魚を飼料としている。このため、

カリフォルニア州の消費者が購入すれば、意図せざ

る形で奴隷労働を支えていることになる」として、

当該産品の米国内での販売禁止などが求められたも

の。このため、訴訟では、同社の現代的奴隷に関す

る間接的な関与が問われている。

紛争鉱物(Conflict Minerals)

紛争鉱物とは、特定国で産出され、その密輸が武

装勢力への資金源となり得る鉱物を指す。2010年7

月に成立した米・金融規制改革法(The Dodd-Frank

Wall Street Reform and Consumer Protection Act)

では、コンゴ民主共和国および周辺9カ国で産出さ

れる紛争鉱物(タンタル鉱石、錫鉱石、金、タング

ステンなど)の使用の有無について、米国上場企業

に対してSEC(証券取引委員会)への報告が義務づ

けられた。

これまでには、玩具などの販売を手掛ける米国企

業に対して、同社の扱う風船の金属コーティングに

紛争鉱物が使用されている可能性をただされ、大き

く報じられたことがある。

贈収賄・汚職(Bribery & Corruption)

腐 敗・ 汚 職 に 対 し て 取 り 組 む 国 際 N G O

〔経済広報〕2016年4月号

経済広報センター活動報告

18

Page 21: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

「Transparency International」(本部・ドイツ)では、

毎年各国の「腐敗認識インデックス(腐敗の度合いを

指数化したもの)」を発表している(図1参照)。同N

GOによれば、このインデックスの値が低い国ほ

ど、贈収賄や汚職に巻き込まれる恐れが強い。腐敗

は、テロ活動にも繋がり得るとの研究結果もあるこ

となどから、全世界的に、取り締まりや罰則が強化

される傾向にある。

■図1

(Transparency International ウェブサイトから引用)

事 実、 米 国 で は F C P A(Foreign Corrupt

Practices Act)による摘発件数は、1977年から2014

年の38年間で184件だったが、2015年の1年間だけ

で18件にも上った。

贈収賄のスキームにおいて顕著な手口のひとつと

して、組織ではなく、独立のエージェントやコンサ

ルタントを名乗る人物の介在が挙げられ、注意を要

する。

リスク回避への取り組み

これらのリスクを回避するためには、まず、海外

の取引先を選定する際に、以下をチェックすること

が重要だ。すなわち、第1に、当該企業や経営幹部

に、犯罪に関与した過去や行政処分を受けた経歴は

ないか。第2に、国連安保理決議などによる国際的

な制裁リストに組織・個人名が掲載されていない

か。第3に、政治家、政府、軍部との不適切な関係

を示唆する情報はないか。第4に、犯罪組織や武装

勢力、テロリストとの関係を示唆する情報はない

か、などである。

万が一、好ましからぬ組織や個人との関係が浮上

した場合、その濃淡と継続性について、現地の業界

関係者などから、十分な情報を収集し、分析する必

要がある。

例 え ば、 金 融 業 界 を 中 心 に「 3 本 の 防 衛 線 」

(Three Lines of Defense)と呼ばれるリスクマネジ

メントの考え方がある(図2参照)。営業現場を第1

防衛線、法務部門を第2防衛線とし、それぞれ精査

し、経営幹部が判断する。その上で、監査部門が第

3防衛線として、一連の情報や判断を再度、チェッ

クする考え方である。

■図2

いずれにせよ重要なのは、グローバル化したサプ

ライチェーンに潜むリスクに対処するために、組織

の経営幹部と海外部門が密接に連携し、①必要な情

報と収集方法の明確化、②積極的な情報収集、③情

報の精査・分析、④分析結果の報告・共有、という

「インテリジェンス・サイクル」(図3参照)を機能さ

せることである。

■図3

各国法執行当局、海外メディア、国際的NPO/

NGOが企業活動に注ぐ視線は厳しさを増してい

る。なんらかの違反に対し、たとえ罰則を科せられ

なかったとしても、国際世論からの指弾は自社のレ

ピュテーションを毀損する。日本企業がフェアなビ

ジネスにより事業進出先から好意的な評価を受けら

れることを願ってやまない。 k

(文責:国際広報部主任研究員 伊藤貴範)

2016年4月号〔経済広報〕

経済広報センター活動報告

19

Page 22: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

0 ©2016 Nihon Unisys, Ltd. All rights reserved.

日本ユニシスグループ

Foresight(先見)は、業界の変化やお客さまのニーズ、これからの社会課題を先んじて把握することを意味し、 in sightは「見える・捉えることができる」と「洞察力」という意味のinsightをかけたダブルミーニングである。 「先見性」でいち早くキャッチしたニーズや課題を、経験や常識にとらわれない「洞察力」で深く理解し、知恵 や発想、ICTを組み合わせて、業界を越えたビジネスエコシステムを形成し、かつてない革新的なサービスをつくり出すという意味が込められている。

デンバーでの会合は、「グローバル新時代:日本企業のビジネス戦略と成長」と題して開催された。ヒッケンルーパー知事は、同州にとり、日本は最大の投資国であるとした上で、「コロラド州の日系企業には、優れた人材を研究開発に活用できるというアドバンテージがある」「コロラド州にとって、雇用を拡大し、経済成長を続けていくための機会のひとつは、日本との関係にある」と発言、対日経済関係のさらなる発展への期待を示した。加えて、日本との関係強化に向けて、2013年に就航した日本との直行便の役割を強調した。

NTTアメリカの五味社長は、内外における同社の事業展開を振り返った上で、米国での事業拡大の基盤には、デンバーのスタートアップ企業であるベリオ社との協力関係が重要な役割を果たしているとした。加えて五味社長は、NTTがクラウド技術の開発のために、米国に設立したR&D子会社が、ウエアラブルデバイスを通じて、コロラド州の鉱山従業員の健康状態や、労働環境のデータ収集と分析を行う取り組みを紹介、IoTを活用した次世代鉱業の確立に貢献していくと語った。

なお、当日の会合の模様は、地元紙『ザ・デンバー・ポスト』でも大きく取り上げられた。 k

■ビジネス・スピーカー・シリーズ開催実績年 開催地 スピーカー企業

2012年12月 ミシガン州デトロイト トヨタ自動車2013年4月 ジョージア州アトランタ トヨタ自動車

5月 ペンシルベニア州ピッツバーグ 日立製作所 2014年1月 マサチューセッツ州ボストン 三菱東京UFJ銀行 〃 テキサス州ヒューストン 東芝

2月 インディアナ州インディアナポリス トヨタ自動車 4月 ミズーリ州セントルイス 日立製作所 5月 コロラド州デンバー 日立製作所

2015年1月 ミズーリ州カンザスシティ 日立製作所 2月 テキサス州ダラス トヨタ自動車 3月 ハワイ州ホノルル 日立製作所 4月 ワシントン州シアトル 全日本空輸 5月 ペンシルベニア州フィラデルフィア 東京海上日動火災保険 9月 イリノイ州シカゴ 三菱東京UFJ銀行 10月 ミネソタ州ミネアポリス 東レ

2016年2月 コロラド州デンバー 日本電信電話

国際プロジェクト紹介⑨

ビジネス・スピーカー・シリーズ第16回会合をコロラド州デンバーで開催

ヒッケンルーパーコロラド州知事

五味 N T T アメリカ社長兼CEO

会合の模様

第16回会合パンフレット

経済広報センターは、2012年以降、全米日米協会連合と協力し、日米経済関係に関するシンポジウム「ビジネス・スピーカー・シリーズ」を各地で開催している。毎回、日系企業トップなどが企業戦略や地域社会への貢献などを説明するとともに、TPPなどについて議論している。去る2月11日、その第16回会合をコロラド州デンバーで開催、ジョン・ヒッケンルーパーコロラド州知事をはじめとする州政府関係者、地元経済界やマスコミ関係者など約100名が参加し、NTTアメリカの五味和洋社長兼CEOが講演した。

(国際広報部主任研究員 長谷川正彦)

〔経済広報〕2016年4月号20

Page 23: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

0 ©2016 Nihon Unisys, Ltd. All rights reserved.

日本ユニシスグループ

Foresight(先見)は、業界の変化やお客さまのニーズ、これからの社会課題を先んじて把握することを意味し、 in sightは「見える・捉えることができる」と「洞察力」という意味のinsightをかけたダブルミーニングである。 「先見性」でいち早くキャッチしたニーズや課題を、経験や常識にとらわれない「洞察力」で深く理解し、知恵 や発想、ICTを組み合わせて、業界を越えたビジネスエコシステムを形成し、かつてない革新的なサービスをつくり出すという意味が込められている。

C o r p o r a t e s t a t e m e n t

コーポレートステートメント

このページでは、企業の「コーポレートメッセージ」や「コーポレートステートメント」など、事業活動を行う上で大切にしている想いやストーリーについて紹介します。

ビジネスをつなぎ、サービスを動かす。ICTを刺激し、未来をつくり出そう。

日本ユニシスグループは、お客さまから選ばれ続

けていく企業であるためにどのような存在であるべ

きか、社員一人ひとりが、常に未来をイメージし洞

察することで、変革を起こしていく。

日本初の商用コンピューターによって今日の情報

社会を拓き、社会を支えるシステムを構築し、卓越

した技術力、現場力、顧客第一主義のもとで顧客と

の長年の信頼関係を培ってきた。業界の垣根が崩壊

しつつある今、社会的課題を解決する新しい価値を

生み出すためには、異業種が連携する「ビジネスエ

コシステム」が不可欠である。日本ユニシスグルー

プは、これまで築いた信頼関係と、日々研ぎ澄まし

ている「先見性」と「洞察力」をもとに、「ビジネスエ

コシステム」の創造に取り組んでいる。かつてない

サービス基盤を築き、「未来のあたりまえ」になって

いく革新的なサービスを実現していくという決意を

凝縮したメッセージが「Foresightinsight」である。

震災地域の医療・介護における社会課題をビジネスエコシステムで解決。

「Foresightinsight」に込めた想いが実を結んだの

が、一般社団法人未来かなえ機構(滝田有代表理事)

が運営する気仙医療圏(岩手県大船渡市、陸前高田

市、住田町)の地域医療・介護連携ネットワーク「未

来かなえネット」である。

気仙医療圏は、東日本大震災の影響もあり、病院

などの医療介護資源が乏しい。この地域で、切れ目

ない医療サービスを提供し、高齢者が住み慣れた地

域で安心して療養できるようにするには、病院、診

療所、介護施設、自治体、薬局をつないでビジネス

エコシステムを形成し、地域の医療介護資源を最大

限に活用するしか道はない。

「未来かなえネット」は、病院や介護施設などの情

報を一元管理し、各施設が情報を提供/参照できる

双方向のシステムを実現している。電子カルテの導

入を前提とせず、既存のシステムの情報を活用する

ことにより、多くの施設が参加できる土壌を形成し

ている。

日本ユニシスグループは、「未来かなえネット」な

ど、ビジネスエコシステムの中核として社会課題の

解決に取り組んでいる。 k

(国内広報部主任研究員 平澤 徹)

2016年4月号〔経済広報〕 21

Page 24: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

N E W S

Keizai Koho Center News

早稲田大学商学部で「企業人派遣講座」を実施し

た。(テーマ:「日本企業のイノ

ベーションと成長戦略~第3次

産業における取り組み(3)」、講

師:宮野 則昭 野村ホールディン

グス 執行役員)

東京工業大学・大学院

で「企業人派遣講座」を実

施した。(テーマ:「科学技術特論

~エネルギー・環境技術の最先端

と将来展望~原子力発電の現状及

び先進的原子力発電への展望」、

講師:市川 長佳 東芝 電力システ

ム社電力・社会システム技術開発

センター技監)

「一億総活躍社会に向けたテレワークによる働き

方改革」セミナーを経団連と共催

した。経団連の近藤史朗情報通信

委員長の挨拶に続き、高市早苗総

務大臣が「IT環境が整った現在、

テレワーク(情報通信機器を利用

し、事業所から任された仕事を自

宅や会社以外の場所で行う勤務

形態)について企業に積極的な対

応をお願いしたい」と述べた。そ

の後、「大企業も動き出した『テレ

ワーク』の最新動向~生産性向上

のためのICT利活用~」と題す

る講演とパネルディスカッション

を行った。参加者は約300名。

日本経済新聞社の中澤

克二編集委員兼論説委員

を講師に、講演会「習近平政権の1000日~中国の政治、経済の実態~」を開催した。参加者は約90

名。

早稲田大学理工学部で

「企業人派遣講座」を実施

した。(テーマ:「21世紀における

科学技術と社会~センシング技術

の現状と展望~ICTがつくる未

来:2020年の世界と倫理問題」、

講師:大谷 卓史 吉備国際大学 ア

ニメーション文化学部准教授)

大阪で2回目となる「関西地区におけるマイナン

バー制度開始に関する説明会」を

経団連と共催した。マイナンバー

制度の導入に向けてのスケジュー

ルの確認と、事業主が進めるべき

直近の具体的な事務、マイナン

バーの今後の活用について説明が

あった。参加者は約250名。

慶應義塾大学総合政策

学部・環境情報学部で「企業人派遣講座」を実施した。(テー

マ:「21世紀の企業の挑戦~ブ

ロードバンド時代のビジネス戦略

~銀行の情報システムの将来像―

FinTechが示唆する未来―」、講

師:岩下 直行 日本銀行 金融機構

局金融高度化センター長)

早稲田大学商学部で「企業人派遣講座」を実施し

た。(テーマ:「日本企業のイノ

ベーションと成長戦略~第3次

産業における取り組み(4)」、講

師:小沼 可幸 日本郵船 海洋事業

グループ長)

社会広聴活動を取りま

とめた『ネットワーク通信(新春号No.65)』を発行した。「情

報源に関するアンケート」調査結

果や、トヨタ自動車東日本、カル

ビーにおける「企業と生活者懇談

12/16

12/17

12/17

12/22

12/22

12/22

1/5

12/21

12/15

〔経済広報〕2016年4月号22

12月15日~1月20日

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会」、ANA機体整備工場におけ

る「生活者の企業施設見学会」の模

様などについて掲載した。

京都大学で「企業人派遣講座」を実施した。(テー

マ:「21世紀の企業の挑戦~ブ

ロードバンド時代のビジネス戦略

~ More Than Web ~来るべき豊

かなリアリティを~」、講師:千

葉 直樹 楽天 楽天技術研究所リー

ドサイエンティスト)

東京工業大学・大学院

で「企業人派遣講座」を実

施した。(テーマ:「科学技術特論

~エネルギー・環境技術の最先端

と将来展望~地熱発電の現状と展

望」、講師:加藤 久遠 三菱マテ

リアル 資源・リサイクル事業本

部エネルギー事業部地熱・電力部

部長補佐)

慶應義塾大学総合政策

学部・環境情報学部で「企業人派遣講座」を実施した。(テー

マ:「21世紀の企業の挑戦~ブ

ロードバンド時代のビジネス戦

略~中小企業は知恵の経営」、講

師:村上 義昭 日本政策金融公庫

総合研究所主席研究員)

東京工業大学・大学院

で「企業人派遣講座」を実

施した。(テーマ:「科学技術特論

~エネルギー・環境技術の最先端

と将来展望~ 2050年に向けたエ

ネルギーシナリオと変革の切り

口」、講師:金田 武司 ユニバー

サルエネルギー研究所 代表取締

役社長)

「教員の民間企業研修」の

様子と研修後の活用事例

などをまとめた『教員の民間企業研修レポート 2015』を発行した。

慶應義塾大学総合政策

学部・環境情報学部で「企業人派遣講座」を実施した。(テー

マ:「21世紀の企業の挑戦~ブ

ロードバンド時代のビジネス戦略

~総括」、講師:小澤 太郎 慶應

義塾大学 総合政策学部教授)

早稲田大学商学部で「企業人派遣講座」を実施し

た。(テーマ:「日本企業のイノ

ベーションと成長戦略~第3次

産業における取り組み(5)」、講

師:江尻 良 東海旅客鉄道 執行役

員広報部長)

インドネシア共和国大

使館のユスロン・イーザ・

マヘンドラ特命全権大使を講師

に、「ユスロン駐日インドネシア大使との懇談会」を開催した。(詳細

は、本誌3月号を参照) k

(国内広報部 鈴木陽子)

定価:1300円(税込)編集・発行株式会社宣伝会議購読申込月刊「広報会議」読者サービスセンターTEL: 0 3 - 3 4 7 5 - 3 0 1 0インターネットからもお申し込みいただけます。http://sendenkaigi.com/

5月号

[巻頭特集] 「選べない・オリエンできない」広報から脱せよ

PRパートナーの選び方・付き合い方

[特集] メディアの論調は変えられる

報道対応で勝つ方法[青山広報会議]

プロのPRパーソンになるための条件

PR・IR・危機管理

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2016年4月号〔経済広報〕 23

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企業PRの「明日のヒント」

岡本純子(おかもと・じゅんこ) コミュニケーションストラテジスト/(株)グローコム 代表

トップに聞いておきたい質問リストvol.4

いよいよ新年度。新社長を迎える企業も多いだ

ろう。組織のトップの「語る場」も何かと増える季

節だ。卒業式、祝賀会、入社式に就任のあいさつ

……。日本人はどうやら、こうした場での「挨拶」

「スピーチ」というのが苦手な人が多いようだ。とは

いえ、参加する人にとっては一生に一度のおめでた

い席なのだから、せっかくなら、聞く人の心に残

り、励みになるような言葉の「花束」を贈ってみたい

もの。

こうしたトップやエグゼクティブのメッセージ作

りにお勧めなのが、前回、ご紹介した①経営課題の

棚卸、②会社のストーリーの棚卸、③トップの個人

的ストーリーの棚卸、という3つのステップだ。

本来は、新社長が就任する前、または直後に、そ

の「コンテンツの棚卸」を一気にしてしまうのが理想

的。そこで、語れるストーリーをすべて、かき集め

ておいて、コンテンツのデータベースとして整理・

保存しておく。おススメは、トップに対してインタ

ビューしておくことだ。上記の「経営ストーリー」

「会社のストーリー」「個人のストーリー」を語って

もらい、「コンテンツの引き出し」を作っておけば、

後々、スピーチ原稿作成などに非常に役に立つ。

米国では、広報やPRパーソンの最も大事なス

キルとして、「ストーリー」作りが挙げられるが、ス

トーリーを掘り起こす手法として、「インタビュー」

は非常に有効な手段だ。様々な角度から質問を投げ

掛けられることで、聞かれた人は、心の奥底にあっ

た原体験や転機を思い出し、自分の思考を意識化、

言語化できる。人間像を洗い出すために、幅広い角

度から質問をすることをおススメする。筆者の作っ

た「100の質問リスト」の一部をご紹介しよう。

トップに聞いておきたい100の質問リスト(一部)生い立ち、家族、友人●あなたの人生観に最も影響を与えた人は。なぜか。

●最も大きな失敗とは。ビジネス人生●一番やりがいを感じた仕事は。●あなたの一番の「しくじり」は。

人生観、自分●大切にする価値観とは。●何に対して情熱を持っているか。

経営哲学、リーダーシップ●現在の経営課題。●課題を克服するには何か必要か。

趣味、プライベート●これだけは負けない、と自負するもの。●最近、ワクワクしたこと、ドキドキしたこと。

最も退屈な挨拶は「一般論」「抽象論」。個人のス

トーリーや経験、価値観をちりばめた話、体温が伝

わってくるような人間くさい話が何より人の心を動

かすものだ。

こうしたコンテンツ作りと同時にぜひやっておき

たいのが、一歩踏み込んだコミュニケーショント

レーニング。メディアトレーニングは一般的だが、

プレゼン・スピーチなどのパブリックスピーキング

のトレーニングでは、さらに実践的に、朝礼から挨

拶、スピーチ、部下との対話に至るまで、365日、

24時間使えるコミュニケーションの基本スキルを

学べる。人の印象は結局、デリバリー力(ボディー

ランゲージやアイコンタクト、舞台上での振る舞

い、声や見た目)によって形作られるもの。ここに

抜かりがあってはならないのだ。 k

岡本純子(おかもと・じゅんこ)読売新聞記者、電通PRコンサルタントを経て渡米。帰国後、独立し、企業のPR支援などを手掛ける。

「トップコミュニケーション」分野の経験が豊富。(http://www.glocomm.co.jp/)

〔経済広報〕2016年4月号24

Page 27: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

Book

広  報トピックス

企業広報ニュース

同書は、「うどん県」「ひこにゃん」など数々の地方PRを成功させた著者が、ブランドや商品をいかにして社会的な「ブーム」や「文化」に導いていくかというプロセスを解説したものである。著者は、「広告は消費者層に向け、PRは個人に向けて発信するもの」と述べ、「理想のPRとは、ターゲットとした個人が主体的に動き続けてくれるようにすること」と主張する。同書では、上記以外にも「佐世保バーガー」「今年の漢字」など、著者が手掛けた様々なPR事例を挙げながら、人が動くための仕掛けを解説している。第2章では「ターゲットの絞り方」「アルファベット・カタカナ言葉が陥りやすい失敗」「時代を読むためにチェックするファッション・スーパーマーケット・テレビドラマ」など著者独自のPR手法を、第3章ではクライアントを納得させるプレゼン術を、第4章ではメディアを動かすためのノウハウを、それぞれ解説している。さらに、PR業務に関わる人だけでなく、「社内会議で自分の企画を通す」「ビジネスメール」など、ビジネスマンが日常で応用できるPR手法についても紹介している。どの事例においても「なぜその手法が有効か」という著者の考えが丁寧に説明されている。新書で手軽に読め、PRにとどまらず、人を動かす際に参考になる一冊だ。 k

(前 国内広報部主任研究員 大野祥子)

『ブームをつくる 

人がみずから動く仕組み』

ブランディング会社大手のインターブランドは、日本発のブランドを対象に、ブランド価値評価ラン

キングJapan’sBestGlobalBrands2016を発表した。

今年で8回目の発表となった。評価方法は、企業の

財務力、ブランドが購買意思決定に与える影響力、

ブランドによる将来収益の確かさ、といった観点か

らブランドの金銭的価値が測定され、2015年10月

に同社がまとめた世界ブランド価値ランキングで、

世界のグローバル企業との比較ができる。

ランキングでは、8年連続1位のToyota(前年

比+16%)、2位のHonda(前年比+6%)と続き、

北米中心に成長を続けるSubaruが12位(前年比+

39%)、「走る歓び」を追求し続けるMazdaが13位(前

年比+36%)と自動車関連企業が大きくブランド価

値を高めている。また、MUFGが海外売上高比率

30%以上の「グローバル基準」をクリアし、今回初

めて、第6位にランクインした。 k

(国内広報部主任研究員 西田大哉)

グローバル日本ブランド

ランキング2016を発表

殿村美樹著、集英社2016年1月発行、700円(税別)

順位 ブランド名 ブランド価値(百万ドル) 前年比

1 Toyota 49,048 16%2 Honda 22,975 6%3 Canon 11,278 -4%4 Nissan 9,082 19%5 Sony 7,702 -5%6 MUFG 6,980 New7 Panasonic 6,436 2%8 UNIQLO 5,493 13%9 Lexus 3,340 1%10 Nintendo 2,977 -27%11 Bridgestone 2,828 16%12 Subaru 2,776 39%13 Mazda 1,899 36%14 Suzuki 1,870 -1%15 Komatsu 1,790 -17%16 Shiseido 1,619 0%17 ASICS 1,254 0%18 Ricoh 1,231 1%19 Unicharm 1,175 19%20 Daikin 1,140 -3%

2016年4月号〔経済広報〕 25

Page 28: 月刊 4 - KKC · 2016. 4. 7. · ~「2016 エデルマン・トラストバロメーター」調査結果~ 8 企業広報研究 PRにおける“クリエイティビティー”の重要性

発行:一般財団法人 経済広報センター   Printed in Japan

企業・団体のCSR活動

平成28年4月1日発行(毎月1回1日発行)

昭和55年10月23日第3種郵便物認可

http://www.kkc.or.jp/

第38巻第4号通巻440号

2016

4

コマツは、社会貢献活動の一環として、桜の名所づくりや花のまちづくりを進める公益財団法人日本

花の会の活動を支援し、美しく潤いのある地域環境

づくりを推進している。

日本花の会は1962(昭和37)年4月、当時のコマ

ツの河合良成社長の提唱により「花によって、少し

でも人々の心を和らげたい」という願いを込めて創

設された。以来、桜によるまちづくりを計画してい

る人などを対象に、桜の苗木を無償で提供する活

動を続けている。国内外では240万本を届け、植え

方、育て方のアドバイスを行うなど、「桜の名所づく

り」を進めている。また、コマツCSR室などと共

同で、「こまつの杜」(石川県小松市)では園児や児童

を対象とした“花育”を進めるなど、美しい地域環境

づくりや豊かな生活環境づくりをサポートする幅広

い活動を展開している。

また、コマツ本社のあるコマツビル(東京都港区

赤坂)には屋上庭園がある。1966(昭和41)年の建設

時に空中庭園として設けられ、シダレザクラをはじ

めシラカバやシャクナゲなど約200種類が植えられ

ている。ビルの基礎と建物の構造を補強することで

普通の土壌を用いることができ、高木の樹木の生育

が可能であることが特徴である。2001年には、コ

マツ創立80周年を記念して、広いウッドデッキが

特徴の英国風庭園であるデッキガーデンがオープン

した。バリアフリーで誰でも安心して花を楽しむこ

とができる。さらに、2003年には、山野草が見ら

れるスクエアガーデンをオープンした。サクラをは

じめ、季節折々の様々な草花を都心にいながら見学

できる。コマツビル屋上庭園は、一般にも公開して

いる。毎週金曜日の14 ~ 16時(最終受付15時30分)

ならば予約不要で見学することができる。 k

(国内広報部主任研究員 西田大哉)

コマツ

お問い合わせ先(公財)日本花の会 事務局TEL:03-3584-6531

HP http://www.hananokai.or.jp/

コマツの社会貢献活動

昭和天皇在位60周年を記念して皇居外苑に八重咲きの桜を寄贈した

発行人/渡辺 良 編集人/佐桑 徹

[ISSN0918–4600

東京都千代田区大手町一-

三-

経団連会館

(本体価格三〇〇円+税)

電話〇三-

六七四一-

〇〇二一 〒一〇〇-

〇〇〇四

(送料別、賛助会員の購読料は会費に含む)

「こまつの杜」での花育。子どもたちが花や緑に親しみ育てることで、優しい気持ちを育み、お年寄りとの世代間交流も図ることで、地域コミュニティの活性化を進めている

コマツビル屋上庭園のデッキガーデン。英国風庭園には、チューリップなどの草花やハーブ類などが植えられ、訪れる人に憩いの場を提供している