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SpirE Journal Q3 2014 : Nigeria West Africas Rising Investment Hub JPN

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Page 1: Nigeria West Africas Rising Investment Hub JPN

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© 2014 Spire Research and Consulting Pte Ltd

ナイジェリア

西アフリカで急成長する投資拠点

Page 2: Nigeria West Africas Rising Investment Hub JPN

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ナイジェリア:西アフリカで急成長する投資拠点

2013 年、ナイジェリアの経済は、4,000 億ドルの価値を超えた。これは、南アフリ

カの GDP、3,550 億ドル1を上回るものである。ナイジェリアは、アフリカで最大の

石油輸出国となりつつある。しかし、このようなチャンスに囲まれながら、課題が

残っている。主に、政治的な不安定さ、天然資源の窃盗、そしてインフラの欠如で

ある。ナイジェリアは、最新のフロンティア市場へとスムーズに変われるのであろ

うか。

成長する経済

世界で MINT フロンティア経済地域(メキシコ、インドネシア、ナイジェリア、トル

コ)の一角として、ナイジェリアは将来、経済大国になると期待されている2。ナイ

ジェリアは、過去 10 年間で良い実績があり、実質 GDP 成長率も、2012 年の 6.7%か

ら 2013年には 7.4%に上昇している3。

ナイジェリアの人口は 2013年には 1億 7,360万人4

となり、アフリカでもっとも人口が多く、世界で

も第 9 位に位置する。最近の国連の予測では、ナ

イジェリアは、2050 年までに世界でもっとも人口

の多い国の 1つになるとされている。

ナイジェリア経済では、石油資源が大きな役割を担っている。同国は、世界第 6 位

の石油生産国であると同時に世界第 8 位の石油輸出国であり、世界第 10 位の確定原

油埋蔵量を有する5。

経済専門家は、しばしば、豊かな天然資源を不幸の元凶であるとする。資源という

財産は、真に競争力のある産業と機能する政治制度の発展を阻害し、政治家達に

「短期主義」の追求を促す可能性がある。しかし、戦後の歴史は、エネルギー輸出

1 Nigeria and central banking in emerging markets, A Business Day Media Ltd., Patrick Atuanya, 23 January 2014

2 After the BRICs are The MINTs, but can you make any money from them?, Forbes, Chris Wright, 1 June 2014

3 Nigeria Economic Outlook 2014, African Development Bank Group, retrieved on July 2014

4 Nigeria, World Bank, retrieved on July 2014

5 The Nigerian situation, UNICEF Nigeria, retrieved on July 2014

ナイジェリアは、アフリカでもっとも人口の多い国で、世界でも第 9位に位置する。

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国でも成功と失敗の両方の例が存在する。メキシコ、湾岸諸国の一部、ブルネイ、

そして議論は多いがロシアは、成功している例である。では、ナイジェリアは、ど

ちらの道をたどるのであろうか。

ナイジェリアが提供すべきもの

ナイジェリアは、政府による経済成長拡大に向けた取り組みの中で、海外からの投

資を呼び込む政策をとっている。数多くの政治的挫折にも関わらず、ナイジェリア

の努力は、いくつかの実を結びつつある。その理由として、つぎのようなものが挙

げられる。

天然資源

1971年以来、ナイジェリアは石油輸出国機構(OPEC)のメンバーである。石油

と天然ガスは、主にニジェール川デルタ地帯に埋蔵されている。国際通貨基金

(IMF)によると、2012 年には、天然ガスと石油の輸出がナイジェリアの輸出

収入の 96%占めた6。欧州市場に強い関心を抱くナイジェリア国営石油会社

(NNPC)は、欧州市場への天然ガスの輸出増大も計画している7。

ビジネス環境の改善

国際連合貿易開発会議(UNCTAD)は、2014年 6月に発行した報告書の中で、ア

フリカでの外国直接投資(FDI)において、ナイジェリアは上位の投資拠点の

一角をなすと結論付けた。2013 年について、ナイジェリアは、56 億ドルの流

入を記録した8。同時に、ナイジェリア株式市場(NSE)の最近のデータによれ

ば、2014 年の最初の 3 ヵ月間で、外国人投資家がナイジェリアの株を 7 億

8,600万ドル(1,274 億 1千万ナイジェリア・ナイラ)分購入している9。

戦略的位置

6 Nigeria – Analysis, U.S. Energy Information Administration, 30 December 2013

7 Nigeria plans to expand European natural gas exports, Pennwell Corporation, 10 June 2014

8 FDI: Nigeria still among top three in Africa despite challenges, A BusinessDay Media Ltd., Iheanyi Nwachukwu, 26 June 2014

9 Investors bet on Nigeria’s economic growth overshadowing unrest, A BusinessDay Media Ltd., Patrick Atuanya, 2 June 2014

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ナイジェリアは、若く成長中の人口を

有する、グローバルな巨大都市になり

つつある。アフリカの 2 つしかない沿

岸巨大都市のうちの 1 つ、ナイジェリアの大都市ラゴスは、世界の他の発展途

上経済地域へのアクセスを許している。ラゴスは、貿易、観光、産業にとって

望ましい場所となっている。さらにナイジェリアは、労働力が世界第 9 位にラ

ンクされており、2030 年までには、労働年齢の国民数は、50%を超えるであろ

う10。

投資家にとっての魅力

1999年に民主主義に戻って以来、ナイジェリアは、経済のさらなる解放と自由

化を目指す野心的な改革プログラムに取り組んでいる。インフラへの 120 億ド

ルという巨額の投資について中国が最近発表した背景には、ナイジェリアの経

済的パートナーとしての魅力がある11。

チャンスはどこにあるか

2013 年の 7.4%という、トップニュースとなるような目覚ましい経済成長の陰には、

急速に成長している数多くの部門がある。これらの部門には、少し強力な基盤があ

る12。

教育

スパイア・ジャーナルでは、新興経済地域における共通のトレンドは、国の能

力を超える質の高い教育と医療への需要であると、長い間論じてきた。このよ

うな需要は、民間部門にとってビジネス機会を作りだす。ナイジェリア政府は、

今後 4 年間で教育に 62 億 7,000 万ドルを支出すると期待されている。大統領

が 2011 年に着手した変革アジェンダによると、人的資本を育成する唯一の方

法は、教育であるとしている。このアジェンダは、人的資本の育成を 2011 年

10

Nigeria endowed to benefit from global economic trends – Institute, African Times Network, Augustine Aminu, 29 May 2014 11

同上 12

Booming Businesses Career Prospects in Nigeria, YahooVoice, retrieved on July 2014

アフリカの 2つしかない沿岸巨大都市のうちの 1つ、ラゴスは、貿易、観光、産業の拠点である。

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から 2015 年の間に推し進めることで、成長を高めることを目指している13。技

能を向上させ、教育の提供を拡大させるため、民間部門は、公共部門と協力し

て取り組むという役割がある。民間の教育提供者は現在、アフリカにおける小

学校と中学校の 10~40%を占める。この民間部門の設置地域の多くは、ガーナ、

ケニア、ナイジェリアであり、すべての学校の約 40%になる。たとえば、2009

年に設立された低価格の民間学校グループの Omega スクールは、現在ではガー

ナとシェラ・レオネで運営されているが、ナイジェリアにも拡大する計画であ

る14。

医療

近年、多くの民間病院が登場し、一般市民に医療を提供している。今年、世界

銀行は、ネイジェリアにおける医療部門の強化を支援するため、今後 5 年間に

わたってナイジェリアに 1.5 億ドルを投資すると発表した。また、ナイジェリ

ア国内の医療へのアクセスを改善するため、ノルウェー政府と英国政府から

2,150 万ドルが供与される予定である 15。たとえば、大手投資会社の Mid

Europaが保有するケント病院は、アフリカ大陸への戦略的進出の一環として、

現地の医療提供者と提携を結んだ。ケント病院は、東南ヨーロッパにおける大

手民間病院の 1つである16。

電力

不十分な電力供給が、ナイジェリア経済にお

ける障害となっている。アフリカでもっとも

人口の多い国であるナイジェリアで生産され

る電力は、アイルランドより少ないのだ。ナ

13

Nigeria set to improve education system, CNBC Africa, Dara Rhodes, 20 March 2014 14

Nigeria: Rapid growth and a strategic gateway to Africa, ICEF Inc., 3 February 2014 15

World Bank Injects $150m Healthcare Investment in Nigeria, Leaders & Company, Co., 15 February 2014 16

Kent Hospital seeks to partner government, healthcare providers across Nigeria, A BusinessDay Media Ltd., Kemi Ajumobi, 25 April 2014

アフリカでもっとも人口の多い国であるナイジェリアで生産される電力は、アイルランドより少ないのだ。

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イジェリア人の 50%以上が、電力にまったく手が届かない。さらに、代替品

(主にディーゼル)の費用も高い。ナイジェリアの電力部門は、将来の人口と

経済の成長を支えるために、巨額の投資を必要としている17。

農業

農業に割り当てられている予算は、ナイジェリアの国家予算のわずか 1.6%で

ある。それでも、農業は経済にとって巨大な部門であり、生産性と輸出を強化

する投資に関して、十分なビジネス機会を有している。農業開発プロジェクト

(Agricultural Development Program:ADP)により、1960 年代には自給自足

が可能となった。では、なぜ今なのだろうか。ナイジェリア政府は、8,400 万

ヘクタールの耕作地、アフリカの 2 つ主要な川、そして数が多く若い労働力の

可能性を解放することを目指している。ターゲットは、2 千万トンまで食料生

産を上げること、農業分野と食料関連産業で 350 万の仕事を創出すること、そ

してナイジェリアを 2015 年までにコメを自給自足できるようにすることであ

る18。

ナイジェリアでの操業における課題

ビジネス機会について述べたが、その一方で、投資家は、リスクについて慎重な見

方をする必要がある。ナイジェリアが、ほとんどの東アジア諸国で実現されている

政治的安定と予測可能性のレベルを達成するには、まだ道のりが遠い。

貧困

ナイジェリアの人口は 1 億 7,400 万人だが、そのうち 1 億人のナイジェリア人

が、まだ貧困から抜け出せずにいる19。人口の 90%がまだ、一日当たり 2 ドル

以下で暮らしている20。これは、政治の安定に必要な、持続的な社会の同意の

構築という課題を複雑にしている。

17

Nigerian power breakthrough provides new hope for millions, Guardian News and Media Limited, retrieved on 12 September 2014 18

In Nigeria, Agriculture is ‘The New Oil’, Forbes, Avik Roy, 14 May 2014 19

Backgrounder – Boko Haram and Political Instability in Nigeria, Centre for Security Governance, Lema Ijtemaye, 29 July 2014

20 Africa Debate: Will Africa ever benefit from its natural resources?, BBC World, Joseph Stiglitz, 15 October 2012

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政情不安

ナイジェリアへの投資家が直面する主な問題は政治である。アル・カイーダと

つながりを持つイスラム聖戦士集団である Boko Haram は、最近、国内での活

動を過激化させている。これは、今年初めのボルノ州からの 200 人の女子学生

の誘拐という形で、頂点に達した。さらに、選挙も近づいている。ナイジェリ

アでは、選挙は暴力の火種である。2011 年の選挙では、500 人が殺害された。

ナイジェリアにおける政治的暴力は、投資家の信頼を損ない、近隣領域の経済

にも連鎖反応を引き起こす21。ナイジェリアは、350 の民族から成り、宗教も

複数存在する。宗教紛争と民族紛争は、政治の不安定にさせてきた。2014年の

TI 世界腐敗バロメーター(Transparency International Global Corruption

Barometer )によると、10人中 9人が、警察は腐敗していると言っている22。

不十分なインフラ

新興国においては、インフラは通常、経済成長にとって主要な減速因子であり、

ナイジェリアも例外ではない。世界銀行の報告書によると、ナイジェリアのイ

ンフラに関する課題を解消するには、年間約 142 億ドルを持続的に支出する必

要があるとされている23。世界経済フォーラム(WFF)の最近の統計では、2014

~2015 の国際的競争力について、144 の経済地域中、第 127 位であったことが

報告されている。これは、昨年より 7 位下がっている24。これは、未開発の水

と衛生、整備されていない道路網、およびその他の輸送の不具合に起因するも

のであった25。

はびこる石油の盗難

石油の盗難は、ナイジェリア経済に毎年 80 億ドルもの負担を与えている26。

1960年の独立以来、石油収入の少なくとも 4,000億ドルは、盗まれたか浪費さ

21

Nigeria in 2014: Terror threats and elections set to test stability of Africa’s rising star, The Financial Times Limited 2014, Adam Green, 7 January 2014 22

Nigeria: Corruption and Insecurity, Transparency International -2014, 21 May 2014 23

Cowrie Partners set to deepen infrastructure investment in Nigeria, A BusinessDay Media Ltd., Osa V. Obayagbona, 29 April 2014 24

Nigeria injects trillions to bridge infrastructure gap, CNBC Africa, Elayne Wangalwa, 5 September 2014 25

同上 26

Oil theft in Nigeria, The Economist Newspaper Limited 2014, G.P. Abuja, 3 October 2013

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れている27。たとえば、2013 年 9 月には、シェル石油は、盗難による漏れのた

め、トランス・ニジェール・パイプライン(Trans-Niger Pipeline)を強制的

に閉じなくてはならなかった。パイプライン再開後一週間もたたないうちのこ

とである。政治家、軍人、石油業者から地域共同体のメンバーまで、多くのナ

イジェリア人が「バンカーリング」または石油の盗難に慣れている28。

将来の展望

ある統計は、ナイジェリアの状況についてま

とめている。世界銀行によれば、ナイジェリ

アは 2014 年にはビジネスのし易さについて、

189 カ国中 147 位となった。2013 年からは 9

つのアップである29。ナイジェリアのビジネス環境は改善している一方、まだ良い状

態ではない。

ローバル・ファンド・マネージャーが、MINT 経済地域としてナイジェリアに目を向

けている。これは、資産運用投資に関して、ナイジェリアは有望な経済地域である

ことを意味する。ナイジェリアの GDP は、2013 年には 4,000 億ドルの価値を超えた。

ナイジェリアには、経済の離陸のための人口動態、地理的、および天然資源といっ

た材料がある。政治的安定という捉えにくい目標の実現を押しとどめているものは

何であろうか。

ナイジェリアの政治家は、政治的ガバナンスと経済管理のための健全な制度の創出

に失敗しという点は、否定できないであろう。さまざまな市民の暴動、Boko Haram

グループによる略奪行為、石油のはびこる盗難。そして広がる選挙暴動はすべて、

これを裏付けている。これは、ガーナ、ケニア、タンザニア、そしてルワンダまで

ものようなアフリカ諸国との対比を成している。これらの国々は、過去 10 年間でこ

の方向に、健全な制度の創出において、はるかに前進しているのである。

27

同上 28

同上 29

Ease of doing business in Nigeria, The World Bank, retrieved on July 2014

ナイジェリアは 2014年にはビジネスのし易さについて、189カ国中 147位となった。2013年からは 9つのアップである、

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農業、電力、教育、医療などの部門における経済的機会は魅力的である。ナイジェ

リアの港市ラゴスは、製造品の輸出に有望なルートを提供している。石油および天

然ガス部門の可能性は、もし適切に実現した場合、数千の仕事を創出し、多大な、

経済乗数効果が得られるであろう。そして何よりも、ナイジェリアは、西アフリカ

地域におけるシンガポールや香港のような役割を果たせる、もっとも強い位置にあ

る。

しかしながら、これらの機会はすべて、まだ実現されておらず、政治が安定化され

ない限り、ナイジェリアは、将来も単なる一経済地域として永遠にとどまるであろ

う。国際支援団体、NGO、そして国際社会全体で、制度の能力構築において、ナイジ

ェリアに注力するべきであろう。何よりも、これは、ナイジェリア経済の可能性を

解放するのである。