mlpg (meshless local petrov-galerkin)法 を用いた numerical

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369 日本 機 械 学 会 論 文 集(A編) 70巻691号 (2004-3) 論 文No.03-0346 MLPG (Meshless Local Petrov-Galerkin)法 を用いた 二 次 元 き裂 問 題 の 解 析* 紀*1,屋 誠*2,S. N. ATLURI*3 Numerical Analysis of 2-d. Crack Problems Using MLPG Method Masanori KIKUCHI*4, Makoto YASHIRO and S. N. ATLURI *4 Department of Mechanical Engineering, Tokyo University of Science, 2641 Yamazaki, Noda-shi, Chiba, 278-8510 Japan Recently, the necessity of large-scale finite element analyses is increasing due to the development of new technology in engineering area. In these analyses, the time and cost of mesh generation processes are becoming larger and larger. Meshless method is expected to solve this problem, and many meshless methods have been developed in these years. In this study Meshless Local Petrov- Galerkin (MLPG) method which is one of meshless techniques is used to analyze two dimensional elastic problems, and its usefulness is examined. Fracture mechanics problems are also analyzed, and then energy release rate and stress intensity factor are calculated using J integral calculation, and highly accurate results are obtained. Using these parameters, the crack growth problem under mixed mode. loading condition is solved. It is shown that the data generation for MLPG analyses is much easier than that of FEM. This is the advantage of MLPG method. Key Words: Numerical Analysis, Computational Mechanics, Crack Propagation, Galerkin's Method, Stress Intensity Factor, Meshless, Moving Least Squares 1. 緒 現 在,広 く用いられている解析手法である有限要素 法による解析に際 し,解 析のみでなくメッシュ生成に お い て も時 間 と労 力 を消 費 す る.メ ッシュの自動分割 手 法 に つ い て も,精 力 的 に研 究 が 進 め られ て い るが, メッシュを要しない解析が可能になればかなりの効率 化 が期 待 で きる(1). そ う した メ ッシ ュ を必 要 と しな い 解 析 手 法,す なわ ちMeshless法の 研 究 が 進 め られ て き て い る.そ Meshless法 にも様 々な種類 があ り,Element Free Galerkin Method(2),Reproducing Kernel Particle Method(3),Smoothed Particle Hydrodynamics Method(4), Free Mesh Method(5)な どが 挙 げ られ る.本 研 究 に お い て は,そ のMeshless法 の 一 つ で あ るMeshless Local Petrov -Galerkin(以 下MLPG)法(6)を用 い て 弾 性 問 題 に 対 し て 解 析 を行 な い,そ の 有 用 性 に つ い て 検 討 を行 な っ た. こ のMLPG法 は、その名前の通 りGalerkin法 に基づ き,解 析 の 手 順 はFEMと ほ ぼ 同様 で あ る.両 者 の 違 い は,第 一 に変 位 場 を 表 す 近 似 関数 の 定 義 の 方 法 で あ る. MLPG法 で は 要 素 そ の もの が な い た め に,評 価点を中 心 と した 円 を考 え,そ の 円 内 に含 ま れ る点 の 変位 か ら 移 動 最 小 二 乗 法(Moving Least Squares)に よ り近 似 関 数 が 求 め られ る.し か し,最 小 二 乗 法 に 基 づ く近 似 で あるため節点の値が必ずしも関数の値を表さないとい うこ とが 欠 点 と して 挙 げ られ る,し た が っ て,変 位 規 定 境 界 条 件 の 処 理 に 工 夫 を 必 要 とす る.こ のMLPG法 で は処 罰 法 を用 い る こ とに よ りそ の 問 題 を解 決 して い る.ま た,要 素 が な い た め に 領 域 積 分 を行 な う際 に FEMの よ うに 容 易 に 数 値 積 分 を 行 な う こ とが で き な いことが第二の相違点である. 本 報 で は,こ のMLPG法 に 基 づ き,ま ず,基 本 的 な 弾 性 問題 で あ るは りの 曲 げ 問 題 に対 して 解 析 を行 な い 、 理 論 解 との 比 較 を行 な い 精 度 の 確 認 を した.ま た,き 裂 問 題 の よ うな 破 壊 力 学 問題 に 対 して解 析 を行 な い, そ の 結 果 がFEMに よ る 結 果 と よ く一 致 して い る こ と とき裂先端における特異性が表現できていることを確 認 した.ま た,エ ネ ル ギ ー解 放 率 、 お よ び 応 力 拡 大係 数 を,J積 分 を 計 算 す る こ と に よ り求 め,同 様 に比 較 を 行 な うこ とに よ り,そ れ らが 十 分 な精 度 を持 っ て い る こ と を確 認 した.そ して,こ れ ら のパ ラ メ ー ター を 用いて混合モー ドき裂の進展問題を解析 し良好な結果 を得ることができた.特 にこのき裂の進展問題におい て は デ ー タ の 生 成 がFEMに 比 べ て格 段 に容 易 で あ る こ とが 確 か め られ,MLPG法 の長所を見ることができ た. * 原稿 受 付2003年3月26日 . *1 正員 ,東 京 理 科 大 学 理 工 学 部(〓278-8510野 田市山崎 2641). *2 東京理科大学大学院理工学研究科 . *3University of California .Irvine(CA 92612,USA). E-mail:[email protected] 41

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369

日本機械学会論 文集(A編)

70巻691号 (2004-3)

論 文No.03-0346

MLPG (Meshless Local Petrov-Galerkin)法 を用 い た

二 次 元 き裂 問 題 の解 析*

菊 池 正 紀*1, 屋 代 誠*2, S. N. ATLURI*3

Numerical Analysis of 2-d. Crack Problems Using MLPG Method

Masanori KIKUCHI*4, Makoto YASHIRO and S. N. ATLURI

*4 Department of Mechanical Engineering, Tokyo University of Science,

2641 Yamazaki, Noda-shi, Chiba, 278-8510 Japan

Recently, the necessity of large-scale finite element analyses is increasing due to the development of new technology in engineering area. In these analyses, the time and cost of mesh generation

processes are becoming larger and larger. Meshless method is expected to solve this problem, and many meshless methods have been developed in these years. In this study Meshless Local Petrov-

Galerkin (MLPG) method which is one of meshless techniques is used to analyze two dimensional elastic problems, and its usefulness is examined. Fracture mechanics problems are also analyzed, and then energy release rate and stress intensity factor are calculated using J integral calculation, and highly accurate results are obtained. Using these parameters, the crack growth problem under mixed mode. loading condition is solved. It is shown that the data generation for MLPG analyses is much

easier than that of FEM. This is the advantage of MLPG method.

Key Words: Numerical Analysis, Computational Mechanics, Crack Propagation, Galerkin's Method, Stress Intensity Factor, Meshless, Moving Least Squares

1. 緒 言

現 在,広 く用 い られ て い る解 析 手 法 で あ る 有 限 要 素

法 に よ る 解 析 に 際 し,解 析 の み で な く メ ッシ ュ 生 成 に

お い て も時 間 と労 力 を消 費 す る.メ ッ シ ュ の 自動 分 割

手 法 に つ い て も,精 力 的 に研 究 が 進 め られ て い るが,

メ ッシ ュ を 要 しな い 解 析 が 可能 に な れ ば か な りの 効 率

化 が期 待 で きる(1).

そ う した メ ッシ ュ を必 要 と しな い 解 析 手 法,す な わ

ちMeshless法 の 研 究 が 進 め られ て き て い る.そ の

Meshless法 に も 様 々 な 種 類 が あ り,Element Free

Galerkin Method(2),Reproducing Kernel Particle

Method(3),Smoothed Particle Hydrodynamics Method(4),

Free Mesh Method(5)な どが 挙 げ られ る.本 研 究 に お い て

は,そ のMeshless法 の 一 つ で あ るMeshless Local Petrov

-Galerkin(以 下MLPG)法(6)を 用 い て 弾 性 問 題 に 対 し

て 解 析 を行 な い,そ の 有 用 性 に つ い て 検 討 を行 な っ た.

このMLPG法 は、そ の名 前 の 通 りGalerkin法 に 基 づ

き,解 析 の 手順 はFEMと ほ ぼ 同様 で あ る.両 者 の 違 い

は,第 一 に変 位 場 を 表 す 近 似 関数 の 定 義 の 方 法 で あ る.

MLPG法 で は 要 素 そ の もの が な い た め に,評 価 点 を 中

心 とした 円を考 え,そ の 円内に含 まれ る点 の変位 か ら

移動 最小二乗法(Moving Least Squares)に よ り近似 関

数 が求め られ る.し か し,最 小 二乗法に基づ く近似 で

あるため節点の値 が必ず しも関数 の値 を表 さない とい

うこ とが欠点 と して挙げ られ る,し たが って,変 位規

定境界 条件の処理 に工夫を必要 とする.こ のMLPG法

で は処罰 法 を用い るこ とに よ りその問題 を解決 してい

る.ま た,要 素 が ない ため に領域 積分 を行 な う際 に

FEMの よ うに容易 に数値 積分 を行 な うこ とが できな

い ことが第二の相違点であ る.

本報 では,こ のMLPG法 に基づ き,ま ず,基 本 的な

弾性 問題 であ るは りの曲げ問題 に対 して解析 を行 ない、

理論解 との比較 を行 ない精度の確認 を した.ま た,き

裂問題 のよ うな破壊力学 問題 に対 して解 析 を行 ない,

その結果 がFEMに よる結果 とよく一 致 してい るこ と

とき裂先端 におけ る特異性 が表現 できてい るこ とを確

認 した.ま た,エ ネル ギー解 放率、お よび応力拡 大係

数 を,J積 分 を計算す ることに より求 め,同 様 に比較

を行な うこ とに より,そ れ らが十分 な精 度 を持 ってい

る ことを確認 した.そ して,こ れ らのパ ラメー ター を

用いて混合モ ー ドき裂の進展 問題 を解析 し良好 な結果

を得 ることができた.特 にこのき裂 の進 展問題 にお い

てはデー タの生成がFEMに 比べ て格段 に容 易で ある

こ とが 確 か め られ,MLPG法 の 長 所 を見 る こ とが で き

た.

* 原稿 受付2003年3月26日.

*1 正 員,東 京 理 科 大 学 理 工 学 部(〓278-8510野 田 市 山 崎

2641).*2 東京 理科 大学大 学院 理工 学研 究科

.*3 University of California

.Irvine(CA 92612,USA).

E-mail:[email protected]

41

370 MLPG(Meshless Local Petrov-Galerkin)法 を用 い た 二 次 元 き裂 問 題 の 解 析

2. 解 析 手 法

図1の よ うな境界 Γで囲まれた領域 Ω内 にお いて,

以下の ような二次元弾性 問題を考える.

(1)

こ こ で,σijは 変 位 場uiに 対 応 す る応 力 テ ン ソル で あ

り,biは 物 体 力 で あ る.境 界 条 件 は 次 式 の よ うに 与 え

られ る。

(2a)

(2b)

こ こ で,uiと らは そ れ ぞ れ 境 界 Γuと Γtに 定 め られ た

変 位 と力 で あ り,"、 は境 界 Γ にお け る 単 位 法 線 ベ ク ト

ル で あ る.

全」体 的 なGalerkin法 に 基 づ く有 限 要 素 法 とElement

Frec Galerkin法 にお い て は,問 題 を 数値 的 に解 くた め

に,全 体 の 領 域 Ω 内 にお い てGlobal weak formが 用 い

られ る.

こ のlocal Petrov-Galerkin法 に お い て は,部 分 的 な

sub-domain Ωs内 にお け る弱 形 式 か ら始 め,MLS近 似

を用 い る こ とに よ り真 の メ ッ シ ュ レス 法 へ と発 展 して

い く 。 こ の 部 分 的 なsub-domain Ωsは 全 体 の 領 域 Ω内

に 位 置 す る.sub-domain Ωsは 簡 単 の た め に 問 題 に お

い て は 点xを 中 心 とす る 円(3次 元 な らば 球)を 用 い

る.sub-domainに お い て,微 分 方 程 式(1)の 一般 化 され

たlocal weak formと 境 界 条 件(2)は 次 式 の よ うに 書 く こ

とが で き る.

(3)

こ こ で 、μiとviは そ れ ぞ れtrial functionとtest function

で あ る.Γsuは Ω sの 境 界 ∂Ωsの 一 部 で あ り、基 礎 境

界 条 件 が 与 え られ て い る場 所 で あ る.一 般 に,∂ Ωsは

∂Ωs=Γs∩Lsで あ り,Γsは 全 体 の 境 界 上 に位 置 す る

localな 境 界 の 一 部 で あ り,Lsはlocalな 境 界 の 他 の 部

分 で あ る.も しsub-domain Ωsが 全 体 領 域 Ω の 内 部 に

完 全 に入 っ て い て 、lOcalな 境 界 ∂Ωsと 全 体 の 境 界 Γ

との 間 に 交 点 が な け れ ば,Γsu上 で の 積 分 の 項 は な く

な る.MLS近 似 はtrial functionを 近 似 す る た め に 用 い

られ,MLS近 似 にお い て,直 接 的 に 基 礎 境 界 条 件 を 課

す の は容 易 で は な い の で,式(3)に お い て,処 罰 法 の 係

数 α は基 礎 境 界 条 件 を 課 す た め に α 》1が 用 い られ る.

σij,jvi=(ρijvi),j-σijvi,jと 発 散 定 理 を 式(3)に

用 い る こ とに よ り,

(4)

の 形 で 書 く こ とが で き る.こ こ で、 ∂Ωsはsub-d◎main

Ωsの 境 界 で あ り,niは ∂Ωsに お け る単 位 法 線 ベ ク ト

ル で あ る 。

式(4)は ∂Ωsの 大 き さ と形 状 に か か わ りな く適 用 で

き る,今,Ωsと ∂Ωsに 対 して,二 次 元 で は 円,三 次

元 で は 球 をsub-domainと して使 用 す る.

Γstに お け る 自然 境 界 条 件ti≡ σijnj=tiを 式(4)

に 課 す と,次 式 のLSWFを 得 る.

(5)

Γsuは ∂Ωsの 自然 境 界 条 件 が 課 され て い る 部 分 で あ

り,t=tiが 定 め られ て い る.全 体 領 域 の 内 部 に 完 全

に 入 っ て い るsub-domainに 対 して は,∂ Ωsと Γに 交

点 は な い の で,Γ suと Γstにお け る積 分 の 項 は 消 える.

上 式 を簡 単 に す る た め に,円 周 上,あ る い は 円 弧 上

に お い て0と な る よ うなtest function viを 選 択 す る.図

2に この よ うなtest functionの 例(次 式 の よ うなspline

関 数)を 示 す.

(6)

そ の よ うなtest function viを 用 い る と式(5)の Γs上 で

のviが0と な る た め,次 式 の よ うな 線 形 弾性 問 題 に お

け るlocal symmetric weak formを 得 る こ とが で き る.

Fig. 1 A Schematic representation of MLPG

42

MLPG (Meshless Local Petrov-Galerkin)法 を 用 い た二 次 元 き裂 問題 の 解 析 371

(7)

式(7)に お い て,2個(二 次 元 問 題)あ る い は3個(三

次元 問題)の 独 立 なtest functionの 集 合 へ と 当 て は め

る こ とが で き,

(8)

を 得 る,こ こで,Vkiはk番 目の 集 合 の ぎ番 目の 成 分 で

あ る.

3. 解 析 例 と 考 察

ま ず,MLPG法 の 精 度 と作 成 した解 析 コー ドの信 頼

性 を確 認 す る た め に,図3の よ うな は りの 曲 げ 問題 を

解 析 した.解 析 条件 は ヤ ン グ率206GPaで,ボ ア ソン

比 は0.3、 右 端 に1MPaの 分 布 荷 重 をか け,平 面 応 力 状

態 にお い て解 析 を行 な っ た.図4に 解 析 モ デ ル を示 す.

点 の 数 は105個 で あ る.

ま た,比 較 対 象 と してTlmoshenkoの 解(7)を 用 い た.

図5に は り の 下 面 に お け るy方 向 の 変 位 を,

Timoshenkoの 解 と比 較 した も の を示 す.

こ の グ ラ フ を 見 る と、 両 者 は よ く一 致 し てお り,良 好

な解 析 結 果 を 得 る こ とが で き た.ま た,応 力 に 関 して

も同様の結果 が得 られた.こ の結果 よ り,MLPG法 の

弾性問題 にお ける精度 と作成 した解析 コー ドの妥 当性

を確認 する ことができた.

次 に,い くつ か き裂 問 題 を解 析 した 結 果 を示 す.は

じ め に,図6の よ うな 中 央 き裂 の あ る帯 板 の 一様 引 張

り問題 を 解 析 した.解 析 モ デ ル を 図7に 示 す.対 称 性

を 考 慮 して1/4モ デ ル と し た.点 の 数 は490個 で あ る.

ま た,こ の 問 題 に お い て も,比 較 の た め に有 限 要 素 法

を 用 い て 解 析 した.そ の 有 限 要 素 法 解 析 の た め の メ ッ

シ ュ を 図8に 示 す.節 点 数 は925で,要 素 数 は283で

あ る.ま た,エ ネ ル ギ ー 解 放 率,お よび 応 力 拡 大 係 数

を 評 価 す る た め にJ積 分 を 計 算 した.そ のJ積 分 の 経

路 を 図7,図8に 示 して い る.

解 析 条 件 は ヤ ン グ率206GPaで,ボ ア ソン 比 は0.3、

上 下 面 にIMPaの 分 布 荷 重 を か け,平 面 応 力 状 態 にお

い て解 析 を行 な っ た,

図9に き裂 先 端 か らの 距離 とy方 向 の 垂 直 応 力 に 関

して,MLPG法 とFEMの そ れ ぞ れ を比 較 した もの を 示

す.ま た,図10に き裂 開 口変 位 を比 較 した もの を示 す 。

これ ら の グ ラ フ よ り,両 者 は よ く一 致 して お り,ま た

Fig.2 A schematic representation of test function

which vanishes over Ls

Fig.3 Geometric description for numerical

exaeriment. Cantilever beam

Fig.4 Analysis model for MLPG

Fig.5 Comparison between MLPG and Timoshenko's

solution for displacement Y.

43

372 MLPG (Meshiess Local Petrov-Galerkin)法 を用 い た 二 次 元 き裂 問 題 の 解 析

き裂先端 にお いて応 力値 が急激 に上昇 してお り,き 裂

先 端部にお ける特異性 を表現す る こともできてい るこ

とがわかる.

これ らの結果 を用いて,エ ネ ルギー解放率,お よび

応力 拡大係数 を求めるた めにJ積 分 を計算す る.J積

分 は次式(9)で定義 され,き 裂先端 を取 り巻 く積 分経路

に沿 った数値積分に よ り計算 され る.

(9)

ただ しここでWは ひずみエネル ギ密度で ある.こ の経

路積分 はMLPG法 では以下の よ うに簡単に実行 でき る.

図11の よ うな積分経路 を考 える.こ の経路 はき裂先

端 を取 り囲む よ うに,点 を結ん でやれ ば よい.こ こで

は点X1か らXnま でn個 の点で経 路が作 られ ている.

MLPG法 では,各 点 にお ける変位勾配,応 力値等 の物

理量が直接 計算 され ているので,経 路積 分は経 路上に

おけ る二点,例 えばXi-1とXiと で定義 され る線分 に

おいては(9)式 のdx、dyは 二点の座標 の差 か ら求 め ら

れ,そ の線分 上での物理 量は二点の平均値 として定義

され 簡 単 に 計 算 で き る.こ の よ うに(9)式 の積 分 は

MLPG法 では簡 単なプ ログラムで実行 で きる.FBMで

この よ うな数値積 分を行 うためには,ガ ウス積分 など

の数値積分手 法が必要 とな るこ とに比べ る と,こ の点

はMLPG法 の特長 の一つ であると考 えられ る.

表1に 以上 の方 法に よ り計算 されたMLPG法 にお け

る各経 路のJ積 分値 をまとめた もの を,表2に エネル

ギー解 放率 と応力拡 大係 数の理論解(8)とFEM,MLPG

法に よるそれぞれの解 を比較 した もの を示す.

表1よ り、各経路 にお けるJ積 分値 を考 える と,J

積分の経路独立性 をよく表現す ることができている こ

とがわか る,

ま た,表2よ りエ ネ ル ギー 解 放 率 で1%程 度,応 力 拡

大 係 数 で05%程 度 の 誤 差 で 評 価 す る こ とが で き て お

り,高 精 度 で そ れ ら の破 壊 力 学 パ ラ メー ター を 評 価 す

る こ とが で きた.

次 に 、 き裂 長 さ をa/W=0.2、0.3、0.4、0.5、0.6と 変

え る こ とに よ り解 析 を行 っ た 。

Fig.6 Geometric description- for numerical

experiment, A plate with a center crack

Fig.7 Analysis model for MLPG

Fig.8 Analysis model for FEM

Fig.9 Comparison between MLPG and

FEM for normal stress Y.

44

MLPG (Meshless Local Petrov-Galerkin)法 を用 い た 二 次 元 き裂 問 題 の解 析 373

図12の グ ラ フ は,き 裂 長 さaを 変 え た と き のa/W

と エ ネ ル ギ ー 解 放 率 と の 関 係 に 関 してMLPG法 と

FEMと を 比較 した もの で あ る.こ の グ ラ フ に お い て も

両者 は よ く一 致 して お り,き 裂 長 さを 変 え て も高 精 度

でエ ネ ル ギ ー解 放 率,お よび 応 力 拡 大 係 数 を評 価 で き

る こ とを確 認 した.

次 に,図13の よ うな 混 合 モ ー ド下 に お け る き 裂 の 挙

動 を解 析 した.そ して,そ こ か ら応 力 拡 大 係 数 を 各 モ

ー ド成 分 に分 離 し,き 裂 の 進 展 を シ ミ ュ レー トす る こ

と を試 み た.

この 時 の き 裂 周 辺 の 点 に お け るsub-domainの 決 定 の 仕

方 を図14に 示 す.形 状 は 図 の よ うに 円 形 で あ る が,

sub-domainの 中心 の 点 と領 域 内 の 点 とを 結 ぶ 線 が き 裂

線 と 交 差 す る 時 に は,そ の 点 を 含 ま な い よ う に

sub-domainを 決 定 す る.具 体 的 に は,二 点 間 を結 ぶ線

分 と き裂 線 とが 交 差 す る か 否 か の 判 定 を 行 い,交 差 す

る 点 に つ い て は 積 分 対 象 か ら 除 外 す る こ と で こ の

sub-domainの 決 定 は簡 単 に行 うこ と が で き る,

こ こ で,モ ー ド分 離 の 方 法 と して,以 下 の 式 を用 い

た.

(10b)

Fig.10 Comparison between MLPG and FEM

for crack ooenine disolacement.

Fig 11 Path for J Integral

Tablel The value of J Integration of each path.

Table2 Energv release ratio and Stress intensity factor

Fig.12 Comparison between MLPG and FEM for energy

release rate when the crack length is chanced.

Fig.13 Geometric description for numerical

experiment, Mix Mode problem.

45

374 MLPG (Meshless Local Petrov-Gaierkin)法 を 用 いた 二 次 元 き裂 問 題 の 解 析

こ こで,JはJ積 分 に よ り求 め られ,π1、u2は 図15

に 示 す よ うに,き 裂 先 端 に 最 も近 い き 裂 面 上 の 点1、2

の そ れ ぞ れ にお け るx方 向の 変 位 を,v1、v2はy方 向

の 変位 を表 して い る.こ の と き,座 標 系 は き 裂 の 方 向'

がx軸 とな る よ うに とる こ と とす る.

ま た,き 裂 の 進 展 方 向の 決 定 に は 以 下 のErdogan-Sih

の 式(9)を 用 い た,

(11)

こ こ で 、 θは 図16に 示す 角度 で あ る.

解 析 条 件 は ヤ ン グ率206Gpa,ボ ア ソ ン比0.3,上 下

面 に図13の よ うに0.1mmず つ の 強 制 変 位 を 与 え,平

面 応 力 状 態 に お い て 解 析 を行 な っ た.こ の 時 の モ ー ド

比 は3.44×10-2で あ っ た.

初 期 状 態 の き 裂 長 さ を1mmと し て,1段 階 毎 の き裂

進 展 量 を0.25mmと して,5段 階 き裂 を進 展 させ て解

析 を行 な っ た.MLPG法 とFEMに お け る初 期 段 階 と5

段階 目の解析モデル を図17,.18に 示す.MLPG法 で

は き裂進 展につれ てき裂先端に集 中す る点の集団が移

動 してゆ く.屈 折 したき裂 は これ と独 立に定義 してや

れ ばよい.一 方FEMで も同様に き裂先端周 辺の要素群

が移 動 してゆ くが,き 裂先 端が通過 したあ とには,き

裂 の進展 経路に沿 った要素を新た に挿入 してや る必要

が ある.こ れ らを比 べる と屈折す るき裂進 展問題の解

析 におけ るデ ー タ生成 の点 で、MLPG法 の優位性 が明

らか であ る.

図19に き裂 先 端 か らの 距 離 とせ ん 断 応 力 に 関 して 、

MLPG法 とFEMの そ れ ぞれ を 比 較 した もの を 示 す 。こ

の グ ラ フ よ り、 せ ん 断 成 分 に お い て も、 良 好 な 解 を得

る こ とが で き て い る こ とが わ か る.

図20に き裂 が 進 展 して い っ た 時 の応 力 拡 大 係 数 を

比 較 した グ ラ フ を,図21に き裂 進 展 の経 路 の 比 較 を し

た グ ラ フ を示 す.

図20を 見 る と,2き 裂 が 進 展 して い く と両 者 の 相 違 は

少 々 大 き くな っ て しま っ た が,比 較 的 よ い 精 度 で 解 析

で き た と考 え られ る.両 者 と も に,ModoI成 分 が 大 き

く な りModeI支 配 型 とな っ て い る様 子 も確 認 す る こ

Fig.14 Geometric description how to decide

sub-domain for the point around crack tip.

Fig.15 Schematics of Separation Mode I and II

Fig.16 Schematics of the direction for crack extension.

Fig.17 Analysis model for MLPG

Fia.18 Analysis model for FEM

46

MLPG (Meshless Local Petrov-Galerkin)法 を用 い た二 次 元 き裂 問題 の 解 析 375

とが で き た.こ れ は 多 く の 実験 結 果 よ り明 らか に な っ

て い る 結 果 と同 様 の 傾 向 で あ る.ま た 図21を 見 る と,

両者 の き 裂 進 展 経 路 は よ く 一 致 して い る.こ れ らの こ

とか ら,き 裂 進 展 の シ ミュ レー トを よ い精 度 で 行 な う

こ とが で きた と言 え る.

次 に,上 下端 に 与 え る強 制 変 位 の 大 き さ を変 え(左

右 方 向 に0.1,上 下 方 向 に0.01と した),モ ー ド比 を

3.43×10-1変 え る こ とに よ り,き 裂 が さ ら に大 き く曲 が

りなが ら進 展 して い く様 子 を シ ミュ レー ショ ン した.

先 ほ どの き 裂進 展 シ ミ ュ レー シ ョン と同 様 に初 期 の き

裂 長 さを1mmと して,き 裂 進 展 量 を0.25mmと して,

3 段 階 目 ま で 解 析 を 行 な っ た.こ うい っ た 問 題 で は

FEM解 析 の た め の メ ッ シ ュ を 作 成 す る の が 非 常 に 困

難 とな る の で,MLPG法 の利 点 を 大 い に発 揮 す る こ と

が で き る.こ の シ ミ ュ レー シ ョン の 様 子 を 図22に 示 す.

ま た,こ の 時 の 各 応 力 拡 大係 数 成 分 の 移 り変 わ り を図

23に 示 す.こ の グ ラ フ よ り,Mode I成 分 が 上 昇 し,

Mode II成 分 が減 少 し0に 近 づ い て い き,純 粋Mode I

型 へ と変 化 して い く様 子 を 見 る こ とが で き る.

最 後に数値解析 に要す る時間 につい て、FBMと の比較

を行 う.表3に は、 自由度約1000程 度 の問題 を数値

解 析 した ときのCPUタ イ ムの比較で ある.MLPG法 は

非対象行列 の行列 方程式 を解 くためFEMに 比べて長

時間を要 している.し か し本来 、数値解析 においては

プ リ、ポス トプ ロセ ッシ ングを含 んだ トー タル での所

Fig.19 Comparison between MLPG and

FF,M for shear stress

Fig.20 Comparison between MLPG and FEM

for stress intensity factor.

Fig.21 Comparison between MLPG and FEM

for the oath of crack extension.

Fig.23 The change of Stress Intensity Factor to

the crack propagation.

Table3 Comparison between FEM and

MLPG for Calculation time.

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376 MLPG (Meshless Local Petrov-Galerkin)法 を用 い た二 次 元 き裂 問題 の 解 析

要 時 間 が 問 題 で あ る.プ リプ ロ セ ッ ン グ に お い て は 、

特 に こ こ で 示 した よ うな 時 間 と と も に境 界 条 件 が 変 化

して ゆ く問 題 で は 、MLPG法 の優 位 が 明 らか で あ る.

ま た こ こ で は 使 用 して い な い が 、test functionと して

Heavisideのstep functionを 使 うMLPG5法 で は 、行 列

方 程 式 の 作 成 が 更 に 簡 単 に な る こ と か ら、数 値 解 析 に

要 す る時 間 を 短 縮 す る こ と も期 待 で き る.

4. 結 言

MLPG法 を用 い て,き 裂 問 題 を解 析 し,理 論 解 やFEM

の解 析 結 果 と比 較 して,良 好 な 解 を得 る こ とが で きた.

ま た,J積 分 を 計 算 す る こ とに よ り,エ ネ ル ギ ー 解 放

率,お よび 応 力 拡 大係 数 を評 価 す る こ とが で きた.そ

して,そ れ ら の値 を 用 い て,き 裂 の進 展 シ ミ ュ レー シ

ョン を行 な うこ と が で きた.

参 考 文 献

(1) 日本 材 料 学 会 編"材 料 と評 価 の 最 前線"培 風 館

(2001)

(2) T.Belytschko, Y.Y.Lu and L.Gu "Element free

Galerkin methods" Int. J. Num. Meth. Eng., Vol.37

pp. 229-256 (1994)

(3) W.K.Liu, S.Jun and Y.F.Zhang "Reproducing kernel

particle methods" Int. J. Num. Meth. Fluids, Vol.20,

pp.1081-1106 (1995)

(4) J.W.Swegle, S.W.Attaway, M.W.Heinstein, F.J.Mello

and D.L.Hicks "An Analysis of Smoothed Particle

Hydrodynamics" SANDIA REPORT (1994)

(5) G.Yagawa and T. Yamada "Free Mesh Method : A new

meshless finite element method" Comput. Mechanics,

Vol.8, pp.383-386 (1996)

(6) Satya N. Atluri and Shengping Shen "THE

MESHLESS LOCAL PETROV - GALERKIN

(MLPG) METHOD" Tech Science Press (2002)

(7) Timoshenko.S.P, Goodier.J.N "Theory of Elasticity",

3rd Edn. McGarow - Hill New York (1970)

(8) 岡村 弘 之 「線 形 破 壊 力 学 入 門 」 培 風 館(1976)

(9) F.Erdogan and G.C.Sih, "On the crack Extension in

Plates Under Plane Loading and Transverse Shear",

Journal of Basic Engineering, Transactions of ASME,

Series D, pp.519-527 (1963)

Fig.22 Simulation of crack propagation.

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