mg代謝異常症 · 2017-07-20 · テーマ03 ca・p・mgの異常 85 498-12350 mg代謝異常症...

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Theme 03 : Disorders of Calcium, Prostate, and Magnesium 84 498-12350 46 உɽ1 िલΒԼͷײͱશଵײͱΛओૌ ʹདྷӃɽ1 ਓΒͰɼຊञΛຖ 5 ߹ҿΜͰΔɽ ѹ 138 / 84mmHg ӷݕɿ Ξϧϒϛϯ 3.5g / dLɼBUN 13mg / dLɼCr 0.8mg / dLɼ Na 135mEq / LɼK 2.8mEq / LɼCl 90mEq / LɼCa 7.0mg / dLɼ Mg 1.5mg / dLɼΞϧυεςϩϯ 8ng / dLʢج४510ʣɼϨχϯ ׆ 1.5ng / mL / ʢج४ 1.22.5ʣ ɼಛҟతͳͷͰΓ·Μɼ K ɼ Ca ɼ Mg ͱղҟৗΛΊ·ɽେञՈͱͷώϯτʹͳΓ·ɽ 6-1 Mg 代謝の基本 Mg ʹ 25g ଘɼͷʹɼ 45ˋ෦৫ʹɼ֎ӷʹ·ɽɼਗ਼ Mg ମ Mg Λө·Μɽਗ਼ͷ Mg ͷਖ਼ৗ 1.82.6mg / dL ͰΓɼʹ छʑͷ׆ΛɼCa ͱڞ ܦɾ ےͷڵʹͳΛ·ɽ ώτɼ௨ৗͷʹΑΓ 1 300mg ͷ Mg Λɼ 100mg ΒٵΕɼಉʹഉᔔΕ·ɽ Ͱத Mg ೱΛଌఆΔͱكͰɽɼݪҼͳͳΘ Βͳපଶ Mg ҟৗͰΔͱͱΔͱΓ·ɽਛ ػѱױͷ߹ɼ ߴMg ӅΕΔͱΓ·ɽ·ɼ Ca ɼ K ͷʹɼ Mg ӅΕΔͱΓ·ɽಛʹɼ Mg Λɼ Mg 代謝異常症 第6限

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Page 1: Mg代謝異常症 · 2017-07-20 · テーマ03 Ca・P・Mgの異常 85 498-12350 Mg代謝異常症 第六限 低Ca血症,低K血症は,Mgを補充しないと難治性ですので,低Mg血症に気づく

T h e m e 0 3 : D i s o r d e r s o f C a l c i u m , P r o s t a t e , a n d M a g n e s i u m84

498-12350

46 歳男性.1週間前から続く下肢の脱力感と全身倦怠感とを主訴に来院した.1人暮らしで,日本酒を毎日 5合飲んでいる.血圧 138/84mmHg血液検査:アルブミン 3.5g/dL,BUN 13mg/dL,Cr 0.8mg/dL,Na 135mEq/L,K 2.8mEq/L,Cl 90mEq/L,Ca 7.0mg/dL,Mg 1.5mg/dL,アルドステロン 8ng/dL(基準 5-10),レニン活性 1.5ng/mL/時間(基準 1.2-2.5)

症状は,特異的なものではありませんが,低 K血症,低Ca血症,低Mg血症といった電解質異常を認めます.大酒家というのがヒントになります.

6-1 Mg 代謝の基本

Mgは体内に約 25g 存在し,その半分が骨に,約 45%が軟部組織に存在し,細胞外液には約 1%が存在しています.したがって,血清Mg値は必ずしも体内Mg量を反映していません.血清のMgの正常値は 1.8-2.6mg/dLであり,細胞において種々の酵素活性をもち,Caと共同して神経・筋の興奮に重要な役割をはたしています.ヒトは,通常の食事により 1 日約 300mgのMgを摂取し,うち約 100mgが腸管から吸収され,同じ量が尿中に排泄されます.日常診療で血中Mg濃度を測定することは稀です.しかし,原因がなかなかわか

らなかった病態がMg代謝異常であるということが判明することもあります.腎機能が悪い患者の場合,高Mg血症が隠れていることがあります.また,低Ca血症,低 K血症の際に,低Mg血症が隠れていることがあります.特に,低Mg血症を伴う,

Mg 代謝異常症

第 6限

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テ ー マ 0 3 ● C a ・ P ・ M g の 異 常 85

498-12350

Mg代謝異常症

第六限

低Ca血症,低 K血症は,Mgを補充しないと難治性ですので,低Mg血症に気づくことが重要です.

6-2 高 Mg 血症

1 高 Mg 血症とは

血中Mg 2.6mg/dL 以上を高Mg血症といいます.高Mg血症では,神経・筋,心臓血管系,消化器系を中心に症状が現れます.早期にみられる症状は,筋力低下と深部腱反射の低下・消失,または悪心・嘔吐などの消化器症状です.高度高Mg血症になると(7-10mg/dL 以上),失調,傾眠などの精神神経症状や,四肢および呼吸筋の麻痺,麻痺性イレウス,難治性低血圧,房室ブロック,QT延長,心停止を生じることもあります.臨床的には,高Mg血症の程度の指標として最もすぐれているのは深部腱反射です.一般に,アキレス腱反射は,血清Mg濃度が 5mg/dLを超えるとやや低下し,8-10 mg/dLを超えるとほとんど消失します.

2 高 Mg 血症の診断

Mgはホルモンによる調整機構をもたず,腎からの排泄によってのみ調節されています.したがって,高Mg血症は,腎機能低下患者に起こることがほとんどです.まれに,大量のMgが投与されたとき(静脈投与,下剤など)にみられます.腎機能低下時には通常量の制酸薬や下剤の投与で重度の高Mg血症を生じることがあります.その他には,Ca sensing receptor 異常である家族性低Ca尿性高Ca血症,糖尿病性ケトアシドーシス,腫瘍崩壊症候群,副腎不全などがあります.

血清Mgを測定すべきタイミングは,

腎機能が悪い患者,低 Ca血症,低 K血症,慢性の

下痢,心室性不整脈,大酒家

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3 高 Mg 血症の治療

腎機能低下症例では,高Mg血症を避けるため,Mgを含む薬剤は使用しないか,十分にモニターすべきです.心伝導系への影響が認められる場合は,Mg拮抗作用を期待して,8.5%グルコン酸カルシウム 10 ~ 20mLを 5 ~ 10 分かけて静注します.腎機能低下例で,症候性のものは血液透析を考慮します.腎機能正常例では,高Mg血症の原因となっているものを中止すれば,高Mg血症は自然軽快するものがほとんどです.

6-3 低 Mg 血症

1 低 Mg 血症とは

低Mg血症は,入院患者の 12%,ICU入院患者の 60-65%にみられます.血中Mg 1.8mg/dL 以下を低Mg血症といいます.低Mg血症の症状は,全身倦怠感,食欲低下で,高度になると,低Mg血症が高度になると,心電図変化,torsades de pointesを含む不整脈や,けいれん,昏睡などもあります.低Mg血症には高頻度に,低K血症,低Ca血症が合併します.細胞内Mgは Kチャネル(ROMK)の抑制因子なので,Mg欠乏があると,Kチャネルの抑制が解除され,K排泄が亢進するために,低 K血症となります.また,低Mg血症は,PTH分泌抑制と骨の PTH抵抗性を誘導し,低Ca血症を引き起こします.

2 低 Mg 血症の診断

低Mg血症の原因のほとんどは病歴から明らかとなります.頻度の高いアルコール多飲と利尿薬の可能性を除外したあと,1日尿中Mg排泄量,FE Mgにより,摂取不足,腎外性喪失,腎性喪失を鑑別します.

• 尿中Mg排泄量<10mg/日 or FE Mg*<2%→Mg摂取不足,腎外性喪失• 尿中Mg排泄量>10~30mg/日 or FE Mg*>2%→腎性喪失

*FE Mg =  UMg× PCr  ――――――――――(0.7 × PMg)×UCr

× 100

Uは尿中濃度,Pは血清濃度.

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テ ー マ 0 3 ● C a ・ P ・ M g の 異 常 87

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Mg代謝異常症

第六限

腎外性喪失としては下剤乱用や,潰瘍性大腸炎やクローン病などの下痢症状をきたす消化管疾患が多いです.腎性喪失としては,利尿薬使用,高Ca血症,薬剤(アミノグリコシド,アムホテリシン B,シスプラチン,シクロスポリンなど),Bartter/Gitelman 症候群などの尿細管機能異常症,原発性アルドステロン症などが鑑別としてあがります.Bartter/Gitelaman 症候群では,Gitelman 症候群に低Mgの頻度が高いです.

3 低 Mg 血症の治療

・軽度の低Mg血症無症候性であれば治療の必要性はなく,原因疾患の治療と食事指導(緑色野菜,肉類,乳製品などの摂取)だけで様子をみます.Gitelman 症候群などで,症候性の場合には経口Mg製剤の適応となります.日本では,経口Mg製剤は酸化Mgと硫酸Mgの 2 種類があります.酸化Mg 1g 中にMgとして 0.6g,硫酸Mg 1g 中にはMgとして 0.1g 含有されています.一般的には,酸化Mgが頻用されていますが,下痢のために用量を増やすのが難しいです.Gitelman 症候群では,スピロノラクトンなどの抗アルドステロン薬がMg保持作用をもつため,併用することが多いです.・高度の低Mg血症高度で症候性の低Mg血症に対しては硫酸Mg(マグネゾール 2g/1A)の 1 ~

2gを 10 分かけて静注し,その後は病態に応じて持続点滴静注を行います.低Mg血症は,低Ca血症や低 K血症と合併することが多いです.これらの低Ca

血症,低 K血症はMg補充以外の治療に抵抗性です.

大酒家は,Mg摂取不足とともにアルコールによる腎尿細管障害によって尿への喪失が起こるため,低Mg血症を生じやすいです.低Mg血症では Kの尿への喪失が起こるため,低 K血症を併発しやすいです.また,PTHの分泌障害,作用不全が起こり,低Ca血症も併発しやすいです.したがって,まず補充しなければいけないのはMgです.