meiji gakuin univ_28oct2012
TRANSCRIPT
日本の原子力論争に関する米国の関心
フランク・フォンヒッペル科学と世界安全保障プログラム
プリンストン大学明治学院大学(東京) 2012 年 10 月
この問題との関わりの略歴
• 核物理学者• プリンストン大学公共・国際問題教授 • プリンストン大学「科学と世界安全保障プログラム」共同
設立 • 1997 年、米国の高速増殖炉計画の将来についてのアドバイ
スをカーター政権から求められる• 1993 - 94 年、クリントン大統領の「科学・技術政策局
( OSTP) 」国家安全保障アドバイザー• 2006 年、「国際核分裂性物質パネル( IPFM) 」を共同設立
<www.fissilematerials.org>
1970 年代以来、原子力の伸びの予測は低下、低コストのウラン資源の推定は増大。ウランは安く、豊富 (¥ 0.3/kWh). プルトニウムのリサイクルやもんじゅのような増殖炉は必要ない。
原発発電容量予測(1975, IAEA)
原子力発電容量推定の幅 (2012, IAEA)
IAEA, 1975
NEA-IAEA, 2009
低コストウラン推定量(40-year supply for LWRs) 高
低
米国原子力政策改革の 10 年
• 1974. 国民は、原子力推進と原発の安全規制をともに行う米国原子力委員会( AEC) の能力を信用しなくなる。議会が「原子力規制委員会( NRC) 」設立
• 1977. 核拡散についての懸念から、カーター大統領、サウス・カロライナ州に建設途中のバーンウェル再処理工場(設計能力: 1500t/ 年)の許可を停止。彼はまた日本に対し、東海パイロット再処理工場(約100t/ 年)の運転を始めないよう説得を試みる。
• 1981. レーガン大統領、カーターの国内再処理禁止措置を解除。だが、再処理は高く付きすぎると判断した米国の電力会社は、政府に、自分たちの使用済み燃料の深地層処分施設建設を求める。議会は、ネバダを選んだ。(しかし、ネバダ州における反対のため、 2010 年、オバマ大統領はプロジェクトを放棄し、処分施設用地選定過程再開のため「ブルー・リボン委員会」を設置。)
• 1983. 10 倍のコスト上昇のため、議会、米国クリンチリバー・プルトニウム増殖実証炉(電気出力 35 万k W )計画をキャンセル。(米国のもんじゅ)
原子力に関する日本の決定は、国内問題日本のプルトニウム計画は国際問題
日本は、国内に 9000kg の分離済みプルトニウムを所有
これを使って短期間で 1000 発の核兵器を作ることが可能
テロリスト集団が 8kg を盗むと、世界のすべての都市が危機にさらされる
.今日、日本はプルトニウムを分離している唯一の非核兵器国。潜在的核兵器国という状況を使って実際の核兵器国となるには至っていない。だが、非核兵器国による再処理実施の先例は、重大な意味。韓国は、同じ権利を要求。他にも核兵器オプションの開発に関心
を持つ国がある従って、日本の例は、核不拡散体制の不安定化要因
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5 kg のプルトニウムの入った使用済燃料は、炉から取り出し後 50 年たっても、 30分で致死量のガンマ線被ばくをもたらす。輸送には 20 トンの容器が必要。プルトニウムを分離するには厚い壁を隔てた遠隔操作が必要。
使用済燃料(500 kg 約 4メートル )分離済みプルトニウム
軽量容器に入れた 2.5kg のプルトニウムグローブボックスの中で再処理できる容器3~ 4個分で長崎原爆 1個に十分
分離済みプルトニウムは簡単に運び去ることができる。
使用済燃料は、 100 年以上「自己防衛性」を伴う。
1 meter
図 1 )加圧水型炉燃料集合体からの被ばく線量率
被ばく;ポイント
燃料集合体
分離済みプルトニウムは、核軍縮の障害
Tons
of p
luto
nium
プル
トニ
ウム
(ト
ン)
今日核弾頭 核弾頭
余剰プルトニウム
民生用プルトニウム
軍事用プルトニウム
日本政府は、なぜ再処理の継続を決定したのか
青森県知事からの脅し
日本が再処理を止めるなら、青森は:
•英仏から返還される再処理廃棄物を保管しない .•むつの使用済み燃料中間貯蔵施設の運用を許可しない•.六ヶ所再処理工場に貯蔵されている使用済み燃料を各原発に送り返す
だが、乾式貯蔵は、再処理より遙かに安上がり古い使用済み燃料は、いずれにしても、安全性上の理由
のために乾式キャスク貯蔵に置かれるべき
福島第一 4号機使用済み燃料プールの状態
キャスクの冷却機能は失われなかった。冷却は自然対流によるものだから
これまでのところ、外観からは、健全性の問題は見つかっていない。
電力中央研究所 3 月 25日
原子力発電所を持つほとんどの国は乾式貯蔵方式を導入
Tokai米国コネティカット・ヤンキー(古い写真)
リンゲン原発 ドイツ
ネッカー・ヴェストハイム ドイツ
東海第二
暫定乾式貯蔵施設は、迅速に建設可能( ドイツ 日本原子力安全基盤機構報告書 2011 年)
日本は、 44 トン強の分離済みプルトニウムを如何にして処分するのか ?
フランスに 18 トン英国に 17 トン日本に 9 トン六ヶ所再処理工場が計画通り 2013 年に運転開始となると年間8 トンのプルトニウムが追加
計画では、このプルトニウムのほとんどを混合酸化物燃料( MOX )としてリサイクルするはずだった。しかし、事故の前でも、 MOX 燃料の使用は、政治的に難しかった。事故後は政治的に不可能かもしれない(例外は、青森県の大間(年間 1 トン)か?)
MOX に代わる別のオプションが開発されなければならない。
プルトニウムの MOX リサイクルは、埋設処分すべきプルトニウムの量を減らさない:ドイツの例
ドイツの 7000 トンの使用済み燃料が再処理された。分離済みプルトニウムは、すでに MOX としてリサイクルされたか、そうされる予定
これにより、埋設予定の使用済み燃料及び高レベル廃棄物の中のプルトニウム及び他の超ウラン元素の量が約 30%削減される私の見るところ、これは大した変化ではない
プルトニウムが高速炉でリサイクルされれば 80%の削減( 99.8%との主張とは違う。他の超ウラン元素が再処理廃棄物に残されるから)。だが、高速炉(もんじゅのような炉)は、開発されそうにない。コストが高く、信頼性がないから。
日本は、 44 トン強のプルトニウムを、如何
に処分できるか?
おそらく、コストと政治的問題の両面で一番可能性の高いのは、つぎの直接処分のどちらか :
1.セラミックで固定化して再処理していない使用済み燃料及び再処理廃棄物のガラス固化体とともに埋設2.固定化し、深ボアホールで処分
地層処分場の深さ0.5 km
1.5 km
3 km
1.5 km
深ボアホール処分方法
固定化の形態の一つ(キャン・イン・キャニスター)1.セラミック内に固定
2.セラミックを缶に入れ、それを容器内に並べ、そこに高レベル廃棄物・ガラス混合物を注入
他の国も、プルトニウム処分問題を抱えている
• 米国 核兵器及び増殖炉研究開発からの約 50 トンの余剰プルトニウム アレバは、 MOX 工場を建設中だが、推定コストは高騰。MOX を使おうという電力会社が見つかるか不明。
• 英国 再処理計画からのプルトニウム約 100 トン(英国にある日本のプルトニウム 17 トンは含まない)。英国は、将来の原発で使うMOX燃料の製造工場建設を提案しているが、その原発が建てられるかどうか定かでない。
日本がプルトニウム処分オプションについて共同研究を提案すれば、英米両国は恐らく大きな関心を持つだろう。
国 再処理 ? 処分場選定の段階カナダ No 最初期フランス Yes 進んでいるドイツ もうやっていな
い論争のあるサイト
日本 計画 初期(上手く行っていない)
韓国 検討中 ゼロロシア Yes 始まりつつあるスウェーデン・フィンランド
No 選定済み・運転許可はまだ
英国 Yes ゼロ米国 No 使用済み燃料はゼロ。プルトニ
ウム廃棄物用は運用中
再処理は、放射性廃棄物問題を減らさない米国科学アカデミーによる膨大な研究『核廃棄物:分離・変換技術』( 1996
年)は、プルトニウムその他の超ウラン元素を核分裂させることから得られる便益は
小さく、コストは膨大だろうと結論。
再処理は、廃棄物処分場の選定を簡単にはしない
Managing Spent Fuel from Nuclear Power Reactors: Experience and Lessons from Around the World (International Panel on Fissile Materials, 2011)
再処理の中止は、コストと危険を減らす
1. 使用済みウラン燃料を再処理せず、中の超ウラン元素をそのまま埋めると、プルトニウムを分離して、 MOX として再利用した後、使用済みMOX燃料の形で埋めるより、 5兆円強の安上がり
2. プルトニウムを分離しなければ、テロリストがプルトニウムを盗んで長崎型の原爆や放射能散布兵器を作る危険が減る
3.日本がプルトニウムを分離しなければ、核不拡散条約を強化することになる。なぜなら、核兵器オプションの開発に関心を持つ国が計画の正当化のために日本の例を挙げることができなくなるから。
日本に対する米国からの相矛盾するメッセージ「我々がテロリストの手に渡らぬようにしようと試みているまさにその物
質──分離済みプルトニウム──を大量に増やし続けることは、絶対にしてはならない」
– オバマ大統領 韓国 2012 年 3月 26 日 「 7月・・ダニエル・ポネマン・エネルギー省副長官は、日米共同研究
を提案した。もんじゅを使って、プルトニウム及び他の超ウラン元素の核分裂の実証に役立てようというものだ。放射性廃棄物からこれらの長寿命の元素の一部を除去する計画の一部だが、このようなプログラムは、使用済み燃料からのプルトニウムの分離を必要とする。」 . – Nuclear Intelligence Weekly, 28 Sept. 2012
「研究開発の継続及び核不拡散のためにもんじゅと六ヶ所再処理工場を運転することが絶対に必要」–ウィリアム・マーティン 米国レーガン政権時代のエネルギー省(DOE)副長官 , Denki Shimbun, 19 Oct. 2012
「使用済み燃料を回収して再処理する何らかの国際的システムがあるべきだろう。・・・私は、日本がそれに関わるべきだと思う」–ジョン・ハムレ 元米国防省副長官、米戦略国際問題研究所〈CSIS〉所長 Asahi Shimbun, 25 Oct. 2012
原子力の世界では日本は重要
• 世界の原子力発電容量の 12%• 使用済み燃料からプルトニウムを分離している唯一の非核兵器国
• ウラン濃縮をしている非核兵器国 5ヶ国の一つ(他の 4ヶ国は、ブラジル、ドイツ、イラン、オランダ ).
• 大量の民生用プルトニウムを抱えている 4ヶ国の一つ(他の 3ヶ国は、英、仏、露)
日本は、米国の原子力産業にとって重要
• 米国設計の原発及びウラン濃縮サービスの主要市場 ; 東芝がウエスティングハウスを所有ーー後者は現在の加圧水型炉(今日の世界の原子力容量の 3 分の 2 )の開発者。日立はゼネラル・エレクトリックのパートナー(原発の販売とレーザー濃縮開発の分野)。
• 「世界には 4 つの主要原子力サプライヤーがある。日本はその三つに関わっている…日本は、商業用原子力の分野で中心的国家だ。だが、原発を放棄すればその地位を失う。となると、中国、インド、ペルシャ湾諸国、ロシアに今後何年もの間すべての原発が行くことになる。これらの国は、核拡散防止の旗を振るような国ではない。」
ジョン・ハムレ Asahi Shimbun, 25 Oct. 2012
日本の脱原発についての米国政府の懸念表明 :
1. 「日本の石油輸入量が増え、石油のコストが上がる」 !
世界
米国
日本
事故
反論:日本の 原子力政策は、世界的規模では大きな影響をもたらさない
原子炉運転中止
日本の脱原発についての米国政府の懸念表明(続き)
2.「もし日本が原発輸出の分野で米国企業とのパートナーシップを終わらせると、市場は、核不拡散や安全性にそれほど関心を持たないかもしれない中、ロ、その他の国に支配されることになる。」
反論: 米・欧・日は、おおむね、今日原子力を管理している国際的機関を
設立し、支配している。IAEA、原子力供給国グループ(NSG)などだ。
しかし、これらの国々の影響は、その富や専門的能力によってであって、建設している原子炉の数によるものではない。
.例えば、IAEAに対する米国の影響は、相当部分、 IAEA の予算への米国の寄与分と米国政府の核研究所の専門能力による。
政府及び高等教育機関の専門能力は維持できる。