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201811マーク・パリス IFI 米国地方債運用チーム チーフ・インベストメント・ オフィサー 1 ステファニー・ラロシリエール IFI 米国地方債運用チーム シニア・クライアント・ポート フォリオ・マネジャー 米国地方債市場:2018 7-9 月期のレビューと今後の⾒通し 要旨 20187-9月期のレビュー 米国地方債は9月にパフォーマンスが悪化 米国地方債のイールドカーブはフラット化 米国地方債は中⻑期ゾーン中⼼に米国債をアウトパフォーム 格付け別では、低格付けの米国地方債が高格付けをアウトパフォーム 7-9月期の需給要因は米国地方債のパフォーマンスの⽀援材料とはならず 当四半期は新規発⾏額が前四半期から⼤幅に増加した⼀方で、需要は前四半期から減退 米国地方債の購入パターンには引き続き変化あり 法人投資家の米国地方債需要が後退 ⻑期ゾーンに集まっていた法人投資家の米国地方債投資は、現在はよりオポチュニスティックに ただし、利回りの上昇により、⻑期の地方債の魅⼒上昇も デフォルト率の低さや、⾦利上昇への耐性、分散効果といった地方債への投資メリットは健在 ⾒通し 米国地方債の発⾏体のファンダメンタルズは依然として良好 — 2018年の米国地方債新規供給は前年を⼤幅に下回る⽔準となる⾒込み 減税効果が想定を下回れば、個人投資家の米国地方債投資需要が復活する可能性も

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Page 1: MC2018-156 Muni Bond Q3 2018 Mkt Recap and … › insights › assets › pdf › 007_181211_Muni...2018年7-9月期のレビュー 当四半期の米国地方債は9月にパフォーマンスが悪化

2018年11月

マーク・パリスIFI 米国地方債運用チームチーフ・インベストメント・オフィサー

1

ステファニー・ラロシリエールIFI米国地方債運用チームシニア・クライアント・ポートフォリオ・マネジャー

米国地方債市場:2018年7-9月期のレビューと今後の⾒通し

要旨 2018年7-9月期のレビュー

— 米国地方債は9月にパフォーマンスが悪化— 米国地方債のイールドカーブはフラット化— 米国地方債は中⻑期ゾーン中⼼に米国債をアウトパフォーム— 格付け別では、低格付けの米国地方債が高格付けをアウトパフォーム

7-9月期の需給要因は米国地方債のパフォーマンスの⽀援材料とはならず— 当四半期は新規発⾏額が前四半期から⼤幅に増加した⼀方で、需要は前四半期から減退

米国地方債の購入パターンには引き続き変化あり— 法人投資家の米国地方債需要が後退— ⻑期ゾーンに集まっていた法人投資家の米国地方債投資は、現在はよりオポチュニスティックに— ただし、利回りの上昇により、⻑期の地方債の魅⼒上昇も— デフォルト率の低さや、⾦利上昇への耐性、分散効果といった地方債への投資メリットは健在

⾒通し— 米国地方債の発⾏体のファンダメンタルズは依然として良好— 2018年の米国地方債新規供給は前年を⼤幅に下回る⽔準となる⾒込み— 減税効果が想定を下回れば、個人投資家の米国地方債投資需要が復活する可能性も

Page 2: MC2018-156 Muni Bond Q3 2018 Mkt Recap and … › insights › assets › pdf › 007_181211_Muni...2018年7-9月期のレビュー 当四半期の米国地方債は9月にパフォーマンスが悪化

2018年7-9月期のレビュー当四半期の米国地方債は9月にパフォーマンスが悪化年初から米国地方債の⽀援材料となってきた需給環境が9月に変化しました。新規発⾏は7-9月期中にやや増加したものの、需要が弱いことから、米国地方債は⾦利上昇にぜい弱になりました。投資適格地方債のトータル・リターンは▲0.15%、ハイ・イールド地方債は+0.76%となりました 1。

堅調な景気を背景に、当四半期は米国債利回りも上昇米中の貿易戦争のリスクよりも米国の⼒強い経済成⻑への反応が勝り、米国債利回りは当四半期中に上昇しました。失業率が低く、インフレが比較的安定し、景気全般も堅調な中、米国経済に対する信頼感の高まりから、米連邦準備理事会(FRB)は広く予想されていた通り、9月の会合で政策⾦利(フェド・ファンド⾦利)を25ベーシス・ポイント(bps)引き上げました。

米国地方債のイールドカーブはフラット化7-8月はレンジ内の推移にとどまった米国地方債の利回りでしたが、9月には⼤きく上昇しました。短期および超⻑期ゾーンの利回りの上昇幅が中⻑期ゾーンの利回り上昇幅よりも⼤きく、イールドカーブはさらにフラット化しました(図表1)。「AAA」格の⼀般財源(GO)債の利回りは、3年が24bps上昇して2.03%となった⼀方、5年は21bps上昇して2.20%、10年は12bps上昇して2.58%、30年は25bps上昇して3.19%となりました。

米国債のイールドカーブも、当四半期は引き続きフラット化した。3年、5年、10年、30年の米国債利回りは、25 bps、21 bps、20 bps、20 bps、それぞれ上昇しました。

米国地方債は中⻑期ゾーン中⼼に米国債をアウトパフォーム7-9月期を通しては、中⻑期ゾーンの地方債が同等のデュレーションの米国債をアウトパフォームしました。短期と超⻑期の地方債は米国債と同⽔準のパフォーマンスとなりました。

格付け別では、低格付けの米国地方債が高格付けをアウトパフォーム依然としてスプレッドがタイトであることから、7-9月期は低格付けの米国地方債が高格付けの米国地方債をアウトパフォームしました。発⾏が少なかった低格付けの地方債に対する投資家の需要が高まったため、スプレッドはタイト化しました。

年初来でも、ハイ・イールド地方債が投資適格地方債をアウトパフォーム2018年の年初来(9月まで)のトータル・リターンは、投資適格地方債が▲0.40%となった⼀方、ハイ・イールド地方債はタバコ債(タバコ訴訟の和解⾦を裏付けとした債券)とプエルトリコ債にけん引され、+4.45%となりました 1 。また、ハイ・イールド地方債のみならず、投資適格地方債も、米国の投資適格社債と投資適格債全般(Bloomberg Barclays US Aggregate Bond Index)の双方を年初来でアウトパフォームしています 1。

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出所:Bloomberg、米国地方債はBVAL Mini AAA、米国債はUSGG。2018年9月30日現在。

利回り

図表1:7-9月期の米国債と米国地方債は利回り上昇を伴いながらイールドカーブがフラット化米国地方債の四半期の利回り変化(右軸)

米国債の四半期の利回り変化(右軸)

地方債の利回り(9月末、左軸)

地方債の利回り(6月末、左軸)

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7-9月期の需給要因は米国地方債のパフォーマンスの⽀援材料とはならず当四半期の米国地方債の新規発⾏額は前四半期から⼤幅に増加7-9月期の米国地方債の新規発⾏額は840億米ドルと、4-6月期の530億米ドルを上回る規模となりました。ただし、年初来(9月まで)の新規発⾏額は、2018年は2,490億米ドルと、2017年の同期間よりも15%低い⽔準でした(図表2)。この供給の減少の⼀部は、⾦利の上昇を受け、州や地方自治体が借り入れを先送りしたことによるものです。また、1月に施⾏された税制改⾰法(TCJA)も2018年の米国地方債の発⾏額減少に関係しました。TCJAにより、アドバンス・リファンディング・ボンド(州・地方政府が低利で債券を借り換えようとする際に発⾏する債券)の非課税制度が廃⽌されました。アドバンス・リファンディング・ボンドの発⾏によって調達した資⾦は通常、米国債などに投資され、その利払いが、満期を迎えるか、繰上償還が可能となるまでの既存の地方債の利払いに充当されていました。このアドバンス・リファンディング・ボンドの非課税制度の廃⽌は、州・地方政府が既存地方債の借り換えコストを削減する手段が少なくなることを意味するため、米国地方債市場では2017年末のTCJA成⽴以前(非課税の適用を受けられる間)にアドバンス・リファイナンス・ボンドの駆け込み発⾏が急増していました。すなわち、2018年7-9月期の地方債発⾏額の増加は、こうした需要の先食いや、前述の⾦利上昇を受けた発⾏先送りにより、2018年前半の供給が落ち込んだことの反動によるものと⾔えます。

図表2:年初来の米国地方債の発⾏額は歴史的低⽔準

7-9月期は米国地方債の需要は前四半期から減退同時に米国地方債の需要は弱まりました。7-8月はプラスだった地方債の資⾦フローは、地方債の利回りが上昇(債券価格が下落)した9月にはややマイナスに転じました。7-9月期を通じての純資⾦流入額は約21億米ドルで、4-6月期の約77億米ドルを⼤幅に下回りました。2018年の年初来では、地方債の純資⾦流入額は約125億米ドルと、減速したもののプラスを維持しました(図表3)。

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出所:米国証券業⾦融市場協会(SIFMA)、The Bond Buyer、Investment Company Institute。2018年9月30日現在。

米国地方債発⾏(10億米ドル)

純新規発⾏ 借り換え 双方(新規+借り換え)

2017年の発⾏額:4,360億米ドル

2018年初来の発⾏額:2,490億米ドル

図表3:米国地方債への資⾦フローは鈍化したものの、年初来では依然として流入超

出所:Strategic Insights(SI)、Bloomberg Barclays。2018年9月30日現在。

米国地方債への純資⾦流出入(左軸)

資⾦フロー(10億米ドル)

Bloomberg Barclays Municipal Bond Index(右軸)

米国⼤統領選挙(2016年)後の

資⾦流出

インデックス

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米国地方債の購入パターンには引き続き変化あり法人投資家の米国地方債需要が後退新税法を受けて、米国地方債市場の特性は変化を続けました。個人投資家は依然として地方債の最⼤の保有者であり、直接所有やファンド形態を通じて67%に相当する3.8兆米ドルを保有しています 2 。しかし、銀⾏や保険会社などの法人投資家の保有は減少しているようです。TCJAによって法人税率が35%から21%に引き下げられて以降、銀⾏や保険会社が非課税証券に投資するインセンティブは低下しました。銀⾏は、2018年上半期に地方債の保有を267億米ドル削減してさえいます 3(図表4)。

図表4:米国銀⾏は2018年上半期に米国地方債の保有を⼤きく削減

⻑期ゾーンに集まっていた法人投資家の米国地方債投資は、現在はよりオポチュニスティックにこれまで法人投資家が、利回りが上昇(価格が下落)した際に米国地方債の購入に踏み切ってきたことを踏まえると、こうした購入パターンの変化は地方債市場に⻑期的な影響を及ぼす可能性があります。以前は、損害保険会社はおおむね残存期間が15〜22年の地方債に投資先が集中しており、銀⾏は満期まで20年以上を有する地方債を選好する傾向がありました 4 。しかし、2018年の法人投資家の米国地方債投資はよりオポチュニスティックなものとなり、⻑期地方債よりは社債を選好しているようです。

ただし、利回りの上昇により、⻑期の地方債の魅⼒上昇も法人投資家の米国地方債市場への参加率低下は、地方債利回りを米国債利回りと比較した「ミュニシパル・トレジャリー・レシオ」(MTレシオ=地方債利回り/米国債利回り)に現れています。MTレシオが100%を超えると、地方債の利回りが米国債の利回りよりも高く、課税対象の投資家にも地方債が魅⼒的になることを意味します。銀⾏や保険会社が⻑期地方債の購入を削減した結果、需要の減少が⻑期地方債の利回りを押し上げ、MTレシオの上昇につながりました。7-9月期末には、20年のMTレシオは98%、30年のMTレシオは100%となりました。

デフォルト率の低さや、⾦利上昇への耐性、分散効果といった地方債への投資メリットは健在税法の変更により、非課税の米国地方債の社債対比の魅⼒が低下したことは事実ですが、地方債のデフォルト率の歴史的な低さや分散メリットは、依然として損害保険会社がそれを保有する⼗分な理由となっています。また、米国地方債は過去の利上げサイクルで他の債券に比べて良好なパフォーマンスを⽰していた 5ため、さらなる⾦利上昇を⼼配する人にとっては、戦術的に魅⼒的である可能性があります。

⾒通し米国地方債の発⾏体のファンダメンタルズは依然として良好7-9月期に需給が悪化したとはいえ、米国地方債のファンダメンタルズは依然として良好で、州・地方政府では引き続き歳入増が⾒られました。地方税収は4-6月期に前年比2.9%増加し、同四半期に州の歳入は前年比7.8%増加しました 6 。それも影響して、地方債の格付けでは引き続き格上げ数が格下げ数を上回りました。

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出所:Citi Research、FRB。対象期間:2018年1月1日〜2018年6月30日。

上半期の保有額の変化(10億米ドル)

米国債 エージェンシー債 米国地方債 社債/外国債 債券合計

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2018年の米国地方債新規供給は前年を⼤幅に下回る⽔準となる⾒込み今後については、10-12月期が歴史的に供給の少ない時期であることも踏まえると、私たちが年初に⽴てた3,000〜3,300億米ドルという2018年の新規発⾏予想額が実現するかどうかは不透明です。とはいえ、州・地方政府が11月の中間選挙の結果とFRBの引き続いての利上げへの懸念を深めるようになれば、発⾏も回復する可能性はあります。それでも、2018年の新規発⾏総額は2017年をかなり下回る⾒込みです。

減税効果が想定を下回れば、個人投資家の米国地方債投資需要が復活する可能性も需要面では、今後は米国地方債市場における個人投資家の役割がより⼤きくなると予想しています。実際、2018年が終わり、個人が同年の納税に関する作業を開始し、TCJAによる減税額が予想よりも少ないと判明した場合、彼らが非課税地方債への投資を増やす可能性があります。特に、税率の高い州の投資家はその可能性が高いでしょう。加えて、地方債は歴史的に、株式や社債、米国債など他の資産クラスとの相関が低いため、これを保有することで分散メリットが追求できる可能性があります(図表5)。

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図表5:米国地方債は歴史的に他の資産クラスと低相関10年間の米国地方債リターンの相関係数投資適格地方債との相関 ハイ・イールド地方債との相関

米国小型株式米国株式新興国株式海外先進国株式米国債米国ハイ・イールド債券米国投資適格債米国投資適格社債ハイ・イールド地方債

米国小型株式米国株式新興国株式海外先進国株式米国債米国ハイ・イールド債券米国投資適格債米国投資適格社債投資適格地方債

出所:Bloomberg、2018年9月30日現在。各資産クラスには以下のインデックスを使用しています。投資適格地方債:Bloomberg Barclays Municipal Bond Indexハイ・イールド地方債:Bloomberg Barclays High Yield Municipal Bond Index米国小型株式:Russell 2000 Index米国株式:S&P 500 Index新興国株式:MSCI Emerging Markets Index海外先進国株式:MSCI EAFE Index米国債:Bloomberg Barclays US Government Bond Index米国ハイ・イールド債券:Bloomberg Barclays US Corporate High Yield Index米国投資適格債:Bloomberg Barclays US Aggregate Bond Index米国投資適格社債:Bloomberg Barclays US Corporate Investment Grade Index過去のパフォーマンスは将来の成果を保証するものではありません。インデックスに直接投資することはできません。

1. 出所:Bloomberg、2018年9月30日現在。投資適格地方債はBloomberg Barclays Municipal Bond Index、ハイ・イールド地方債はBloomberg Barclays High Yield Municipal Bond Index、投資適格社債はBloomberg Barclays U.S. Corporate Investment GradeIndex。

2. 出所:FRB。2018年6月30日現在(データのリリースは2018年9月20日)。3. 出所:FRB、Citi Muni Weekly。2018年10月1日現在。4. 出所:Citi Research、Citi Muni Weekly。2018年8月13日現在。5. 出所:Barclays、Bloomberg。対象期間:2004年6月30日〜2006年6月29日。6. 出所:Bloomberg。直近の利用可能データは2018年9月30日現在。

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