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Information-technology Promotion Agency, Japan Software Reliability Enhancement Center Copyright © 2013 IPA, All Rights Reserved Software Reliability Enhancement Center MBSE導入のポイント ~「MBSE導入の手引き」を解説~ 独立行政法人情報処理推進機構 技術本部 ソフトウェア高信頼化センター ソフトウェアグループ 研究員 内田功志

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Page 1: MBSE導入のポイント ~「MBSE導入の手引き」を …システム開発の課題 エンジニアリング領域の拡大と大規模複雑化 →開発関係者の多様化

Information-technology Promotion Agency, Japan

Software Reliability Enhancement CenterCopyright © 2013 IPA, All Rights Reserved

S o f t w a r e R e l i a b i l i t yEn h an c emen t Cen t er

MBSE導入のポイント~「MBSE導入の手引き」を解説~

独立行政法人情報処理推進機構

技術本部 ソフトウェア高信頼化センター

ソフトウェアグループ

研究員 内田功志

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システムズエンジニアリングとは

“Systems Engineering is an interdisciplinary approach and means to enable the realization of successful systems”システムズエンジニアリングとは、システムの実現を成功させることができる

複数の専門分野にまたがるアプローチおよび手段by INCOSE(The International Council on Systems Engineering)

システム開発

ソフトウエア工学 電子工学

物理学化学

解析

機械工学

制御工学

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MBSEとは

モデルを活用したシステムズエンジニアリング

様々な分野をモデルで橋渡し

モデルによる効率的な記述代表的なモデリング言語がSysML

モデル

ソフトウエア工学

電子工学

物理学

化学

解析

機械工学

制御工学

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システム開発の課題

エンジニアリング領域の拡大と大規模複雑化

→ 開発関係者の多様化

→ ドキュメントの増加

効率的な記述言語とコミュニケーション方法が必要

→ モデルの導入へ

MBSE(Model Based Systems Engineering)

によるシステム開発が効果的?

→ 日本で使えるように標準化する必要がある!

→ まずは、MBSEを導入し易くするしくみを作る

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MBSEの基本構造

対象のモデルを適切に構成要素に分割(decompose)できるため、QCDSE(品質、コスト、納期、安全性、環境)などのバランスをとることができる

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構造

要求

振る舞い

パラメトリック・数式表現・運動方程式などの制約

ibd act

reqpar

SysML4本柱

SysMLのダイアグラムは,互いに関連しているので,設計変更があった場合にもその影響を容易に把握できる

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SysMLを使用したMBSE

MBSEが複雑なシステムに有効であることは、米国防システムや航空宇宙関連システムで実証済みである

日本においても徐々にではあるが、実績が生まれつつあるが、完全に後手に回ってしまっている

このままではアジア圏の中でも遅れを取る可能性がある

MBSEの導入を加速するためには、導入を推進するための仕掛けが必要である

MBSE導入の手引きが必要である

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サンプルはエレベータ

サンプルとしてエレベータを使用した

至極シンプルなエレベータを使ってシステムモデルを作成し、MBSEの手順や使用するSysMLのダイアグラムを明確に示している

※小さなマンションの1基しかないエレベータ

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エレベータのユースケース図

※エレベータシステムのコンテキストレベルのユースケース図※開発すべきシステムのスコープ(範囲)を機能面から見極める

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エレベータ運転のコンテキスト

※エレベータシステムのコンテキストレベルのユースケースとブロック定義図※エレベータ運転というコンテキストを定めていて、エレベータ運転を考えるときには、その文脈内に修理員は登場しない

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エレベータの要求図

※エレベータに対する要求を大きく、「フロア間の移動」、「電力の供給」、「快適な居住空間の維持」、「重量超過の防止」という4つの領域に切り分けている※さらに、「フロア間の移動」という領域の要求は、「フロア呼び出し」、「ドア開閉」、「かご移動」の3つの要求から構成すると分析した

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エレベータのシーケンス図

※ユースケース「エレベータに乗ってフロアを移動する」をもう少し具体的にした「エレベータに乗って1階から3階に移動する」というシナリオを表現したものである※ここでは、一例のみの提示にとどめているが、このように、あえて具体的に振る舞いをモデル化したものをいくつか例として見比べてみることで、抽象的なシステム仕様が浮かび上がってくる※ブラックボックスであるエレベータシステムに、どのような順番で、どのような入力をすると、どのような出力が得られるのか、ということを見極めることで、システムレベルのエレベータシステムの仕様となる

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エレベータのステートマシン図

※エレベータシステムのシステムレベルでの普遍的な振る舞いを表現したステートマシン図である※具体的なシーケンス図を色々と分析し、その中で浮き上がってくるブラックボックスレベルのシステム仕様の例である

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エレベータシステムのアーキテクチャ

※エレベータシステムの例を用いてシステムアーキテクチャのモデル化を試す※アーキテクチャ設計では、システムをアーキテクチャ構成要素であるサブシステムに分解する※例に挙げたブロック定義図ではエレベータシステムを4つに分解し、サブシステムによって構成することを示した

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エレベータシステムの内部ブロック図

※内部ブロック図で、それぞれの部品間の関連、どのサブシステムとどのサブシステムにインタフェースがあるか、ということを定義する※これらが構造のモデルで、「エレベータホール設備」サブシステムは「エレベータコントローラ」サブシステムに接続され、「駆動・制動システム」とは直接やり取りを行わないことが分かる

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シーケンス図による縦方向の分解

※シーケンス図「エレベータに乗ってフロア間を移動する」を分解する※分解には様々な方法があるが、ここではまず最初に、縦方向の分解といわれるシナリオのサブ機能分解を行う

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アクティビティ図による横方向の分解

※横方向分解といわれるサブシステムへのアクティビティ図を使用した分解である※ 「目的階に移動する」という部分的なシーケンス図を、アクティビティ図を用いて分解して、各アクティビティをサブシステムをあらわす4つの縦方向の線で区画(スイムレーン)に割り振ることで、各サブシステムの責務と、関係のある他サブシステムとのインタフェースが見えてくることが分かる

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制約をパラメトリック要求として扱う

※パラメトリック要求を組み合わせ、新たな制約を導くときにパラメトリック図は有効である※例えば、エレベータの最高速度の理論値は、エレベータかごの重量や駆動システムの牽引力などから導きだされる※そして、かごの重量はかごの材質や物理的な設計などから、牽引力は駆動装置への供給可能電力やモーターの出力などに依存する

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制約ブロックの関係

※「エレベータ待ち時間」についてのブロック定義図である※待ち時間は、どのような時間から成っているのかをブロック定義図で表す

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制約を扱うパラメトリック図

※「エレベータ待ち時間」についてのパラメトリック図である※待ち時間は、どのような時間から成っているのかがブロック定義図で表し、それぞれ、どのようなパラメータを持ち、そしてどのような制約(式)で関係しているのか、パラメトリック図で示す

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品質の確保

※不具合が上流工程(設計)で混入する割合70%に対して、発見できたのは3.5%、これをテスト段階で訂正すると、訂正コストは設計時の30倍になる※可能な限り、開発の早期に欠陥を除去し、開発の手戻りを防止する必要がある

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MBSE導入の価値

2009年にまとめられたMBSE導入に関するOMGレポートによれば、挑戦した人の多くが、MBSEは、適用したプロジェクトに大きな価値をもたらしたと考えている

2009年 OMGレポート

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担当別のMBSEの評価

MBSEはソフトウェアエンジニアのみならず、ハードウェアエンジニアやテスターに対しても大きな一助となったという評価を与えている

2009年 OMGレポート

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