柔構造大気突入機(maac)プロジェクトと 宇宙航...
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2011/12/19 宇宙航行の力学シンポジウム パネルディスカッション MAACMAAC
柔構造大気突入機(柔構造大気突入機(MAACMAAC)プロジェクトと)プロジェクトと宇宙航行の力学シンポジウム宇宙航行の力学シンポジウム第一期気球実験(2003-2004) 第二期気球実験(2008-2009) 観測ロケット実験提案(2004 → 2012)
山田和彦(ISAS/JAXA)
2011/12/19 宇宙航行の力学シンポジウム パネルディスカッション MAACMAAC
柔構造大気突入機プロジェクトの背景柔構造大気突入機プロジェクトの背景
活発に宇宙と地上を往来する時代にむけて革新的な再突入回収システムを提案し,その実用化を目指して実証ミッションを実施することにより,再突入回収システムに新たなオプションを提供する必要性あり.
HAYABUSA Reentry & RecoveryKIBO in ISS
近年,宇宙活動の多様化にともない,再突入回収システムの要求が増大している.
HTV-R
「きぼう」での宇宙実験の定常化に伴い,ISSからの物資の帰還回収要求の増大
「はやぶさ」の成功に続く,サンプルリターンミッションや惑星探査への期待
HAYABUSA 2惑星表面探査を含む次期火星探査計画
小型衛星の多様化
小型衛星用低コスト再突入システム
小型衛星の更なる可能性を開拓するため小型再突入システム
積極的な宇宙活動のためには輸送システムの充実は必須である.高頻度に,地球と宇宙を往復する輸送システムが実現すればあらたな利用が生まれる.特に,宇宙からの帰還システムの成熟が必要である.
2011/12/19 宇宙航行の力学シンポジウム パネルディスカッション MAACMAAC
きっかけは,きっかけは,1010年前年前‥‥
AIAAのAerospace Americaの記事 2000年,AIAAのAerospace America(July / 2000)で,ESAでインフレータブル構造を有す
る再突入機の大気圏突入実証試験が実施されるとの記事.
柔軟構造エアロシェルは,1960年代に概念
は提案され,さまざまな研究が行われており,そのメリットは示されているものの,実ミッションに応用された例はないとのこと.
新しい再突入機,惑星探査機の形として具現化できないか?
2011/12/19 宇宙航行の力学シンポジウム パネルディスカッション MAACMAAC
大気突入機の新たな選択肢としての柔構造大気突入機大気突入機の新たな選択肢としての柔構造大気突入機
パラシュートを展開し、減速して軟着陸(着水).海上回収の場合は,さらにフロートを放出.
従来型システム
APOLLO の時代から採用されており,USERS,HAYABUSA などでも採用
アブレータや高温耐熱材料で2000℃以上に
なる高温環境に
耐える
大気突入前に大面積のエアロシェルを展開し、空力加熱を
避ける
低弾道係数を利用してそのまま緩降下&軟着陸(着水)可能.さらに,インフレータブル構造体の浮力により海上に浮揚できる
機体が高温環境にさらされないため,繊細精緻な耐熱材料が必要ない→ 安全性向上,コスト減再突入前にすでに着水形態になっており,飛行中にクリティカルな運用がない.→ 信頼性向上海上回収に必要なフロート機能を有している. → 日本国内での回収を実現回収する物資の形状に依存しないシステムにできる可能性がある → 汎用性が高い
柔軟エアロシェルシステム
軌道上で展開を完了し,着陸形態になる.
軌道上で回収物資にエアロシェルを装着
オリジナルな特徴が多くあり,再突入システムの新たなオプションとなる.
2011/12/19 宇宙航行の力学シンポジウム パネルディスカッション MAACMAAC
研究活動の母体研究活動の母体
2000年,鈴木研(東大),安部研(ISAS)で個人研究レベルの活動
2004年,気球実験の成功を機に,宇宙研の戦略的開発予算を獲得してさらなる実証試験にむけて,大学主体でJAXAと協力し,研究活動を進める.
1988年,安部研,テンションシェル構造エアロシェルについてAIAA発表“A Self-Consistent Tension Shell Structure for Application to AerobrakingVehicle and Its Aerodynamic Characteristics”,T.abe 1988 AIAA-paper
2002年,気球実験提案をきっかけに鈴木研,安部研の九大の桜井研を加えて,フライト試験を中心とした柔構造大気突入機研究グループを立ち上がる.
2010年現在.
「展開型柔軟エアロシェルによる大気突入システム」「展開型柔軟エアロシェルによる大気突入システム」WGWGとして活動中.として活動中.
研究代表者 鈴木宏二郎教授(東大)研究協力者 秋田大輔(東京工業大学)
安部隆士(JAXA)石村康生(JAXA)今村宰(日本大学)中篠恭一(東海大学)林光一(青山学院大学)山田和彦( JAXA)
研究支援JAXA調布大型低速風洞GJAXA調布極超音速風洞GJAXA/ISAS大気球実験室JAXA/ISAS観測ロケット実験室
協力メーカ-藤倉航装株式会社
2011/12/19 宇宙航行の力学シンポジウム パネルディスカッション MAACMAAC
2000年:「超音速流中の膜の変形と振動についての実験的研究」山田和彦、鈴木宏二郎、本郷素行
2002年:「膜面エアロシェルを有する再突入体の超音速全機空力特性に関する研究」山田和彦、鈴木宏二郎、本郷素行
2007年からセッションを企画2007年 講演8件2008年 講演4件2009年 講演7件2010年 講演9件2011年 講演10件(本年度:12/20(火) 9:30~ 大会議場)
2006年:「バルーン型低弾道係数惑星大気突入プローブに関する研究」,鈴木宏二郎
2005年:「惑星探査における膜構造低弾道係数機体の可能性について」鈴木宏二郎
2004年:「テンションシェル減速機構による大気突入機」堤裕樹、若月一彦、佐藤俊逸,安部隆士
宇宙航行の力学シンポジウムで発表宇宙航行の力学シンポジウムで発表
2011/12/19 宇宙航行の力学シンポジウム パネルディスカッション MAACMAAC
20022002年年1212月の宇宙航行の力学シンポジウムで月の宇宙航行の力学シンポジウムで柔構造大気突入機の観測ロケットによる実フライト試験を提案柔構造大気突入機の観測ロケットによる実フライト試験を提案
「まずは,気球を使った実験からはじめるべき」とのアドバイスを頂き,宇宙研のサポートをうけながら,東大,宇宙研,九大の学生が主体で2003年度8月の実験実施をめざして準備をはじめることとなりました.
2011/12/19 宇宙航行の力学シンポジウム パネルディスカッション MAACMAAC
手作りで試行錯誤をしながら,実験機を準備して,なんとか実験実施にこぎつけるものの・・・
第一期気球実験にむけて第一期気球実験にむけて
2003年8月@三陸大気球観測所
2011/12/19 宇宙航行の力学シンポジウム パネルディスカッション MAACMAAC
大型エアロシェルの展開低弾道係数機体の飛翔海上浮揚する機体の回収
膜材料の耐熱環境性能極超音速での飛行特性
インフレータブルエアロシェルの機能実証
基礎概念の実証亜音速飛行実証
第一期大気球実験
極超音速風洞試験(with JAXA調布風洞)
2003,2004 2008~2009
第2期大気球試験(with JAXA大気球)
1)膜材料開発
2)空力特性取得
3)インフレータブル
エアロシェル開発
観測ロケット実験(2012年度以降)
4)回収技術の取得
超音速&遷音速風試CFDによる解析
第3期大気球実験(2013年度実施提案)
膜材料の実環境性能実飛行環境飛翔性能無重量真空下での展開
2010~2013 2014~
要素技術の研究
極超音速風洞試験加熱試験
2005~
技術課題の抽出
展開試験,強度試験製作技術
要素技術の実証 小規模システムでの実証 最終実証
海上浮揚着地位置特定手段
衛星通信技術
低速
極超音速
<各要素技術の高度化>
<ミッション検討>
実用ミッション提案再突入帰還回収ミッション惑星探査ミッションなど
小型衛星実証(ISSからの放出機会
などを利用する予定)インフレータブル構造物の軌道上での展開
軌道上でのイリジウム通信大気圏突入時のデータ取得
H-IIAピギーバック衛星(TITANSTITANS)柔構造再突入システムの低軌道からの帰還実証*エアロシェル展開*軌道離脱*大気圏突入*緩降下*軟着水*着水位置の特定
大型低速風洞試験実機サイズエアロシェル
構造強度の確認
2002年12月 宇宙航行の力学シンポジウム
「膜面エアロシェルを有する再突入体の超音速全機空力特性に関する研究」山田和彦、鈴木宏二郎、本郷素行
2011/12/19 宇宙航行の力学シンポジウム パネルディスカッション MAACMAAC
実材料を使った球状インフレータブル模型の極超音速風洞による表面温度分布測定結果
極超音速気流中での空力特性&空力加熱環境の把握 実スケールインフレータブルトーラスの強度特性の理解
数値解析による現象の理解と構造強度モデルの構築
大型低速風洞を利用した実スケールモデルによる試験の様子
120cm
*気球を利用したフライト試験による技術実証(協力:JAXA/ISAS 大気球実験室)
*実機開発にむけた要素技術の研究(協力:JAXA/ARD 風洞技術センター)
第一期気球実験(2004):基本概念の実証 第二期気球実験(2009):インフレータブル飛翔体の特性の理解
1.264m
エアロシェル展開時
収納時
本実験用に開発したインフレータブルエアロシェルを有する小型実験機(↑),高度25kmでのインフレータブルエアロシェルの展開の様子(→).本試験において,インフレータブルエアロシェルの展開,飛行特性,構造強度に関するデータを取得
0.2m
1.5m
ゴンドラに搭載された気球実験用に開発した実験機(←),自由飛行開始直後の実験機の様子(↑).本試験において最大マッハ数0.93までの安定飛行を実証し,空力特性を取得
フレア型柔軟エアロシェル模型の極超音速気流中の様子とシュリーレン法による流れ場の可視化
12cm 120cm
重量:102kg
重量:3.75kg
さらなる実証試験にむけての要素技術研究さらなる実証試験にむけての要素技術研究
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①打ち上げ時エアロシェルはコンパクトに収納される。ロケットとは、カプセルの肩部にとりつけたフランジで結合される。すべての機器は打ち上げ前に電源ONする.
⑥高度55km付近で最大動圧 0.65kPa最大マッハ数 4.45最大空力加熱 20.0kW/m2
を経験する.
⑦最高点到達後1015秒後に、終端速度16.8m/sで着水
③スピンレート1Hzでエアロシェルカバーを開放し,インフレータブルトーラスにガスを注入し,エアロシェルを展開する。
⑤動圧が大きくなるにつれて、空力安定により迎角0度に指向するとともに、空気力をうけ、エアロシェルの形状が安定する。
突入方向
外部アンテナとの接続機器類
支持,分離,射出機構
1Hz
②ロケット燃焼終了後.ノーズコーン開頭Kuアンテナ伸展.
④エアロシェル展開後,すぐに実験機を射出
観測ロケット実験シークエンス観測ロケット実験シークエンス2002年時の提案資料
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実験部のCADモデル
実験機
分離射出機構部
ロケット残置機器
フライトモデルを鋭意製作中,併せて各種試験も実施
エアロシェル収納スペース
実験機の搭載機器電気試験
真空槽内でのエアロシェル展開試験 分離射出試験
アンテナパターン計測
観測ロケット実験の準備観測ロケット実験の準備
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海外の動向海外の動向
ESA:IRDT→低軌道上からの大気突入試験,3度の挑戦
NASA:火星への大量輸送システムへの応用を目指して,
精力的に研究開発をすすめている.IRVE:弾道ロケットを使った大気突入試験をシリーズで計画
IRVE-I ロケットからの分離に失敗IRVE-II 2009/08実施IRVE-III 2012年実施計画IRVE-IV 2015年実施計画HEART-1, HEART-2,などさらに将来計画もある.
Russia:MARS-96’s Penetrators→火星探査の突入機
柔軟構造体を利用した大気突入システムは1960年代から,様々の形状のものが提案,研究されてきた.
具体的なミッション計画やフライト試験は,1990年代から IRDT
IRVE-II
構造試験モデル 大型低速風洞試験計画 レーザー加熱材料試験
超音速風洞試験
ガス圧を利用しない展開型エアロシェルの検討
MARS-96
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H-IIAのピギーバック衛星として打ち上げ
軌道離脱
低軌道上に放出
エアロシェル展開
推進系点火
推力軸調整スピンアップ SM分離
大気圏突入
緩降下
SM焼失
軟着水&海上浮揚,海上浮揚中にイリジウム経由でフライトデータを送信
イリジウム衛星
再突入の状況をリアルタイムでモニタリング
おわりにおわりに基礎研究からボトムアップでやってきた柔構造エアロシェルを利用した大気突入システムが,あたらしい宇宙輸送の“かたち”として見えてきている.今後も,さらに成熟させて,実ミッションにおいて,ひとつの選択肢となるよう研究開発を進める予定です.また,現在,軌道から大気圏突入実証試験も提案しており,観測ロケットで得た知識,経験に上積みして,実際の輸送機として完成させたい.