laser ablation
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レーザーアブレーション推進における流体粘性の効果理工学群工学システム学類 4 年次世代飛行システム研究室尾﨑尚人
背景 レーザーアブレーション推進とはターゲットの表面にレーザーを照射することによって,ターゲットの一部を気化,プラズマ化させ,発生するガスの反作用によって推進力を得る推進システムである.
LASER推力 アブレーションガス
推進器
・微小推力域での多様な推力幅・エネルギー源を推進器そのものが持たないことによる小型化・軽量化近年,多様化する宇宙事業のニーズに応える推進システムとして期待されている.
レーザーアブレーション推進の分類と問題点
レーザー照射後に発生するの飛散により,推力に寄与しない無駄な推進剤損失がある
固体推進剤
液体推進剤
レーザー照射による表面形状の変化により,繰り返しの照射で一様の推力が得られない・・・
・・・
アブレーション・・・
先行研究Fardel らによる濃度を変えることによって粘性操作をした飛散の調査 [2]
[1] Fardel, R., Urech, L., Lippert, T., Phipps, C. R., Fitz-Gerald, J. M., and Wokaun, A., “Laser Ablation of Energetic Polymer Solutions: Effect of Viscosity and Fluence on the Splashing Behavior”, 2009
μ = 12 [mPa ・ s] μ = 460 [mPa ・ s]
水溶液濃度を増すことで粘性を大きくした結果,飛散が生じなくなることがわかった.
目的・アプローチ先行研究では水溶液の濃度を変えてしまっているため,推進剤密度など,粘性以外の効果が飛散抑制に働いている可能性がある.本研究では温度を変えて粘性を増減させることで,飛散に対する粘性の効果を調査する.【実験方法】粘性を変えたターゲットにレーザーアブレーションを起こしたときの推進剤表面の様子をシャドウグラフ法を用いてイメージングし,その飛散の大きさを評価する.
カメラターゲット
飛散
光源レーザー
実験系–シャドウグラフ光学系
遅延回路
パラボラミラー ミラー
ミラー
PC
ICCD カメラ
TEA CO2 レーザー
光源レーザー
ターゲット
1 枚目ミラーの様子
エネルギー [J] 波長 [μm]5.99 10.6
25mm
15mm
CO2 レーザー諸元
実験系 - ターゲット
集光部の様子とターゲット
グリセリン (5 )℃グリセリン (20 )℃グリセリン (40 )℃
粘度 [mPa·s]
水 (20 )℃ 1.002
6647
1410
284
ターゲット要件・温度により粘性が大きく変わる・入手が容易・発火しないグリセリンを使用
結果①
パルスエナジー 0.26[J]パルスエナジー 0.60 [J]
5℃
50μs 100μs 10μs 50μs 100μs10μs
20℃
40℃
大
小
( 粘性係数)
結果② 飛散の高さの評価
→ 粘性係数の大きいグリセリンのほうが飛散高さが低い
CO2 レーザー 0.60J での照射による飛散高さ
力積測定振り子式スラストスタンドを用いて,変位から力積を取得する実験を行った .
100 1000 100000
1
2
3
4
5
6
7
粘性係数 [mPa ・ s]
トータル
インパル
ス[m
N・s]
粘性を大きくすることで,力積が下がってしまうことがわかった.
レーザーエネルギー 4.48 [J]
まとめ・今後の展望本研究では,時間的に液体推進剤の液面からの飛散を追うことによって,粘性が飛散に対して効果を示していることがわかった.ただし,粘性を大きくすることで推力力積が下がってしまう問題が発生する.今後,推進剤の評価を無次元量で扱うなど,より一般的な見地を得たい.推進剤の損失量と推力の両方を評価し,液体推進剤の最適な条件を調べていきたい.
グリセリンの粘性
Glycerine Producers' Association. “PHYSICAL PROPERTIES OF GLYCERINE AND ITS SOLUTIONS”, NY, 1963.
グリセリン (5 )℃グリセリン (20 )℃グリセリン (40 )℃
粘度 [mPa·s]
水 (20 )℃ 1.002
6647
1410
284
推力測定推進剤が液体であるため,ターゲットを固定できるよう垂直方向に 振動する振子を製作.発生する推力が微小かつ瞬間的なものであることが予想されるので,変位から発生力積を簡単に求められる振り子式スタンドを採用.集光される CO2 レーザー
レーザー変位計
ターゲット
スラストスタンド - キャリブレーション
4 5 6 7 8 9 10 110123456789
f(x) = 0.863069584863384 x − 0.42253614694951
最大振子振幅 [mm]
インパル
スハンマ
ー力積
[mN
・s]
スラストスタンドにおける粘性と変位の関係
100 1000 100000
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
粘性 [mPa ・ s]
最大振子
振幅 [m
m]
粘性と運動量結合係数 Cm の関係
100 1000 100000
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
粘性係数 [mPa ・ s]
運動量結合係
数[m
N・s]
50μs のクラウン高さと 100μs のクラウン高さの逆数の積
クラウンについて 液滴を液面に衝突させたときに生じる 王冠状の構造のこと.クラウンの運動は,表面張力によって 支配されることが研究されている.
R. D. Deegan, P. Brunet and J Eggers “Complexities of splashing”, 2008
粘性の推力への寄与 Sinko らによる遅い時間の飛散による推進剤損失が推力に寄与しないことの調査 [1]
飛散による推進剤損失アブレーションによる推進剤損失
[1] Sinko, J., Kodgis, L., Porter, S., Sterling, E., Lin, J., Pakhomov, A. V.,et al., “Ablation of Liquids for Laser Propulsion with TEACO2 Laser,” 2006