l017 評判維持戦略としての内集団ひいきl017...

1
第 2日  9月12日(水) 11:00~12:00 10207 L017  評判維持戦略としての内集団ひいき 講演者:三船 恒裕(… 神戸大学) 司会者:大坪 庸介(… 神戸大学) 内集団ひいきはなぜ生じるのかという問題は心理学のみならず、社会科学が解くべき重要な問題である。 社会心理学では、何が本質的に重要な心理メカニズムなのかという問に対して、最小条件集団における 内集団ひいき現象を主たる研究対象として答えを見い出す努力がなされてきた。伝統的には社会的アイ デンティティ理論によってその説明が与えられてきたが、近年では適応論的アプローチに基づく説明が 提出されてきており、論戦が展開されている。本発表ではそうした展開を概観した上で、後者の立場に 基づく評判維持仮説を提唱し、この仮説と社会的アイデンティティ理論に基づく仮説とを比較検証し、 評判維持仮説を支持する実験研究を紹介する。そのうえで、内集団ひいき研究が近年、進化生物学や一 部の経済学、人類学などにおいて盛んに議論されている協力の進化の問題に対してどのような意義を有 するのかを議論する。

Upload: others

Post on 14-Aug-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • 第 2日  9月12日(水) 11:00~12:0010207

    L017 �評判維持戦略としての内集団ひいき

    講演者:三船 恒裕…(…神戸大学)…司会者:大坪 庸介…(…神戸大学)…

     内集団ひいきはなぜ生じるのかという問題は心理学のみならず、社会科学が解くべき重要な問題である。社会心理学では、何が本質的に重要な心理メカニズムなのかという問に対して、最小条件集団における内集団ひいき現象を主たる研究対象として答えを見い出す努力がなされてきた。伝統的には社会的アイデンティティ理論によってその説明が与えられてきたが、近年では適応論的アプローチに基づく説明が提出されてきており、論戦が展開されている。本発表ではそうした展開を概観した上で、後者の立場に基づく評判維持仮説を提唱し、この仮説と社会的アイデンティティ理論に基づく仮説とを比較検証し、評判維持仮説を支持する実験研究を紹介する。そのうえで、内集団ひいき研究が近年、進化生物学や一部の経済学、人類学などにおいて盛んに議論されている協力の進化の問題に対してどのような意義を有するのかを議論する。