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Kamenose Landslide Museum of History 地すべり歴史資料室 Kamenose Landslide Field Trip Guide

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Page 1: Kamenose Landslide Field Trip Guide...1.概 要 位置:大阪府柏原市峠地先および雁多尾地先 水系:一級河川大和川 直轄施工区域面積:85.24ヘクタール

Kamenose Landslide Museum of History

地すべり歴史資料室

Kamenose Landslide Field Trip Guide

Page 2: Kamenose Landslide Field Trip Guide...1.概 要 位置:大阪府柏原市峠地先および雁多尾地先 水系:一級河川大和川 直轄施工区域面積:85.24ヘクタール

0.目 次

稲葉山

1.概要2.災害の歴史3.地すべりの原因とメカニズム4.地すべり対策工事5.監視6.対策の歴史7.対策の効果8.対策施設9.旧大阪鉄道亀の瀬隧道

P.1-2P.3-5P.6P.7-8P.9P.10P.11P.12-14P.14-15

Page 3: Kamenose Landslide Field Trip Guide...1.概 要 位置:大阪府柏原市峠地先および雁多尾地先 水系:一級河川大和川 直轄施工区域面積:85.24ヘクタール

1.概 要

位置:大阪府柏原市峠地先および雁多尾地先水系:一級河川大和川直轄施工区域面積:85.24ヘクタール直轄編入期日:昭和37年(1962)9.0ヘクタール昭和42年(1967)73.54ヘクタール昭和52年(1977)2.70ヘクタール地すべりの特徴:大阪府と奈良県の府県境に位置し、地すべり末端部にJR及び国道25号線が通過する。すべり面は

大和川河床を越えて対岸部に達し、その深度は70m、移動土砂量は1,500万立米に及ぶ。保全対象(想定氾濫区域内):東大阪市、大阪市、柏原市等14市町村(区域内人口約400万人)、人家約18万戸、

事業所数約3万箇所JR関西本線の交通途絶:約30万人/日国道25号線の交通途絶:約2.8万台/日想定被害額:約4兆8000億円(算定は平成26年度)

亀の瀬は、生駒山系・金剛山系に挟まれた位置にあり、万葉の時代から大阪と奈良を結ぶ交通の要衝でした。

亀の瀬地すべりが発生したという記録は、明治以降のものしか発見されていませんが、大規模な地すべりにより社会基盤や人々の暮らしに大きな影響を与えてきました。

昭和6~7年(1931~2)には、峠地区を中心に30m※すべって鉄道トンネルが崩壊、大和川も約9m隆起し降雨も重なったことで上流に浸水被害を与えました。国は隆起した川底(河床)を掘削し、水の流れを確保しました。

その後も、地すべりの滑動は継続し、昭和26年(1951)頃には地内の西側がすべり出し、さらに同42年(1967)には東側で26m※すべり、大和川の川幅を1m狭めるなど大きな被害がおきました。

地すべりが発生し大和川の流れが妨げられると、上流側で浸水被害が発生します。さらに地すべりの土砂が崩壊すれば、土石流となって下流側に一気に流れ出て、大阪市街地に大きな被害を与えると考えられています。

※期間中に移動した水平移動の距離

亀の瀬地すべりは、想定される被害が甚大であること、1km四方、深度70mにも及ぶ規模であること、対策に高度な技術を要することなどから、国土交通省(旧建設省)大和川河川事務所が、昭和37年(1962)から直轄で対策事業を行ってきました。

対策事業は、地すべりの全容解明のための調査、専門の土木技術者・学識経験者等による対策の検討、対策工事の実施、対策工事の効果検証を繰り返し、半世紀の歳月をかけ実施した結果、地すべりの動きがほとんど見られなくなってきました。

現在、亀の瀬地すべりは、高度な土木技術を駆使し止めていますが、大阪と奈良の安全を確保するためには、今後も監視を続けていかねばなりません。

本資料室では、地すべりの被害と対策の歴史に触れ、実際に現地対策工を見ていただくことにより、みなさまのご

理解が深まることを願っております。

国土交通省 近畿地方整備局 大和川河川事務所

稲葉山

亀の瀬地すべり歴史資料室

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1.概 要

昭和7年(1932)9月、地すべり地の対岸・王寺町明神山から見た工事の様子(すべった土砂の取り除き、大和川掘削など)

井戸の本附近の田畑の地割れ

仏生堂下に出現した地割れ

昭和7年(1932)7月ついに圧壊した鉄道トンネル

写真の黒い筋は地割れが生じている箇所

地内の至る所に地割れが発生

写真ではこのあたりに倒壊が確認される。この後、このトンネルは完全に圧壊する。現在は亀の瀬を迂回して対岸をJRが走る。

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2.災害の歴史阪と奈良の水運と陸路の要衝である亀の瀬の地すべりは、発生の度に人々の暮らしを脅かしたことは想像に難くありませんが、記録に残る地すべりは明治に入ってからです。

◆明治36年(1903)|地すべりで大和川の川底(河床)が隆起したところに大雨となったため、大和川の上流で氾濫。奈良側で44.9haが浸水し、大和川支流の堤防が13箇所で決壊しました。このとき、鉄道も被災しました。

◆昭和6~7年(1931~2)|32haの区域で長期間地すべりが続き、期間中に30m※移動、一日最大52.3cm移動した日もありました。大和川は川底(河床)が9m以上隆起し、川がせき止められたため上流の奈良県側が浸水。地すべり地内を通過していた鉄道トンネルは崩壊し、対岸に迂回することになりました。

◆昭和42年(1967)|約50haで地すべりが発生、約10カ月間で26m※移動しました。対岸の国道25号は約150m区間で1m隆起。大和川の川幅が250mにわたり1m狭まったものの、小雨が幸いして奈良側は浸水をまぬかれました。

※水平距離

■昭和6-7年(1931~2) ※約30m移動

田畑の地割れ

隆起した河床の掘削状況

王寺町(藤井地区)の浸水状況

王寺町(藤井地区)の浸水状況地割れの状況を見る人々

地すべりにより大和川の川底が約9m隆起し、川がせき止められる。写真は川の水を流し直すため、多くの人員で掘削しているところ。

川がせき止められたため、上流で浸水。

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2.災害の歴史

■昭和42年(1967) ※約26m移動

畑周辺の亀裂畑の段差

斜面の段差

隆起した国道25号(復旧後)

至 奈良

至 大阪

道路が約150mに渡り約1m隆起。これは現在も残り、国道25号を走ると体感できる。

高さ2mのポール。倍以上段差が発生。

人の3倍以上段差が発生。

黒い筋は段差が生じた箇所。

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2.災害の歴史(当時の新聞報道)

和6-7年の地すべりで閉塞した大和川の決壊の危険性を報じる新聞(昭和7年2月18日)と、同紙に掲載された亀の瀬付近交通俯瞰図。俯瞰図は見物客の案内用で、地すべりで生じた断崖や亀裂が黒く描かれ、休憩

所もある。

多いときには2万人/日の観光客が押し寄せ、絵葉書が売りに出され、野天カフェも設置された。

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3.地すべりの原因とメカニズム

すべりとは、斜面の一部が地下水の影響と重力によって、ゆっくりと一定の形を保ったまま斜面下方

に移動する現象のことをいいます。地すべり発生の主な要因は水――地下水です。台風

や梅雨時の降雨などが地下に浸透し、地下水位が上昇することですべりやすくなります。その他、地層が斜面に沿って傾いていること、すべりや

すい地層(すべり面)をはさんでいること、地下水が集まりやすい地形なども地すべりが起きる要因です。地すべりは一度動き出すと完全に止まるまでに時間が

かかることや再発性があるため非常に困難です。我が国では、地質的にぜい弱であることに加えて梅雨

や台風などの豪雨により、毎年各地で地すべりが発生しています。

■ボーリングコアとは?地中から掘りあげた円柱状の土や岩。地面から地中深く

パイプを機械で回し入れて、パイプの中に詰まった土や岩を掘りあげます。亀の瀬では最も深いところで地下約100mから地表までを692箇所で調査しました。

年代の古い地質ほど地表より深くに堆積します。黒っぽいコアは溶岩が堆積したもので、薄い茶色(白っぽい)のコアは粘土化した箇所で赤丸の部分がすべり面となります。

■地質断面図・ボーリングコアで確認された地質の情報(点の情報)を線で結んでいくと、地質断面図が作成できます。

・亀の瀬の地形は川に向かって約12°に傾斜しており、すべり面が大和川の河床の下を通って対岸に抜けていることが特徴です。

・そのため、地すべりが起こると大和川が隆起したり、対岸の国道25号線が盛り上がったりすることが想定されます。

■ボーリングコア(地表から下26m~38m:12m区間)-26m

-38m

すべり面

大和川の下をすべり面が通過しています。

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4.地すべり対策工事

策工事は、地すべりを引き起こす要因の1つである地中の水や降雨を排除し、すべる土をいかに止めるかという視点から、おもに3つの目的の工事を行いました。

<水を抜く> すべる要因の1つである地下水を抜きとり、地下水位を下げる。抜きとり、集めた水はトンネルや水路から大和川に流す。工事:集水井、排水トンネル、排水路など。

<土をとる> すべる土の一部を取り除く。 工事:排土工<土を止める> すべる土を杭で直接止める。工事: 杭工 (さまざまな大きさの杭を地中に打ち込む)

◆排土工|約90万m3◆集水井工|54基◆排水トンネル|7本、約7.2km◆深礎工|170本(うちφ6.5mは55本)◆鋼管杭工|560本

■対策工平面図

【集水管】

地中に含まれる地下水を抜きとるための管。亀の瀬での総延長は約153kmに及びます。

地すべり対策構造物はほとんどが地下にあり、地上からは見えません。

高度な技術を駆使して多くの構造物をつくり、人知れず地域や大和川を地すべり被害から守っています。

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4.地すべり対策工事

■深礎工土を止める杭工は、鋼管杭と深礎工の2種類があり、亀の瀬では、深礎工が主力工法になっています。特にすべり面が地中深くにあり、すべろうとする力が大きいところでは、通常よりも長大な深礎工を行いました。地区内で170本ある深礎工のうち55本が長大な深礎工です。(最大 直径:6.5m 深さ:約100m)現在でも、世界最大規模の長大深礎工として海外の土木技術者からも注目を集めています。

6完成本体工としてコンクリート打設完了後、地上部に露出している土留擁壁を撤去し完成。長大な深礎工は地上から見ることはできません。

直径6.5mの約1/3の模型

上に置いている鉄筋は、主筋の実物です。直 径 が 51mm 、 販売されている鉄筋で最大です。

床の緑のラインは深礎工実物の大きさになっています。(直径6.5m)

約100mの深さとは、通天閣の高さと同じぐらいです。

■長大深礎工ができるまで深礎工は深いすべり面の下の硬く動かない地層まで鉄筋コンクリート製の杭(深礎)をつくり、「土を止める」工事

です。亀の瀬の長大深礎は直径6.5m長さ約100mに及ぶもので、1本つくるのに2~3年かかります。

1土留擁壁工 (どどめようへきこう)地表面の土が崩れないようにしながら、深礎本体を地中の所定の位置につくるために壁をつくります。これは工事に必要な昇降機(エレベータ)などの機械を設置するためにも使います。

2掘削工機械で土を掘る工事です。1m掘るごとに土が崩れないよう周りをコンクリート(仮巻コンクリート)で固めながら、決められた深さまで掘ります。

3止水工大和川の水位よりも深く掘り進むと、地下水が多くでてきます。安全に掘り進むことができるように、水を含む土の中に止水材を注入し、周囲を固め、水が入ってこないようにします。

4鉄筋工仮巻コンクリートに沿って鉄筋を縦方向と横方向に組立てます。縦方向の主筋は直径51mm長さ12m、主筋を固定するために横方向にフープ筋を組みます。

5コンクリート工約10mごとにコンクリートを流し込む作業を繰り返します。長さ約100mの深礎をつくるためには、コンクリート約3,300m3が必要です。

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5.監 視

すべりの移動状況から危険性をチェックしたり、地すべりの機構把握、対策事業の参考にするため、多様な監視を行っています。 一時16種類400箇所以上に及ぶ常時監視を行っていましたが、対策が進み移動量

が微量になってきたのをうけ、必要箇所の統廃合を進めた結果、7種類約100箇所になっています。おもには、伸縮計による地表の移動量計測、孔内傾斜計による地中の移動量計測、トンネル坑口や地下の水

位観測を行い、24時間のシステム監視体制を構築しています。計測値に基準を設け監視しており、異常が検出された場合、担当職員に情報が届くなど、緊急対応できる体制

を構築しています。

地すべり変位状況をリアルタイムに把握するため、計測機器の観測データを自動化して1時間毎に集める。

◆坑口水位計

◆孔内傾斜計◆伸縮計

◆地下水位計

この計器を地中に埋めたパイプに垂らして計測します。

全てのトンネル坑口に三角堰を設置し、水位から流量に換算しています。 ◆地すべり監視システム

雨と地下水との関係やすべり面にかかる水圧を確認するため、ボーリング孔内の水位を測る。

すべり面の位置を判定するため、ボーリング孔内にガイドパイプを挿入・設置し傾斜角を測る。

排水トンネルに集められた地下水の量を確認するため、トンネル坑口の水位を測る。

地すべりの移動量を確認するため、亀裂や段差をはさむ区間の伸縮量を測る。

もともと400箇所以上で監視現在は統廃合してコスト縮減。それでも約100箇所で監視し、安全を確認。

・写真のように地表面に亀裂があるとします。・亀裂をまたぐように2点を固定し、その間にワ

イヤーを張ります。・地表面に動きがあると、このワイヤーが伸び

縮みし、その量を測っています。

地表の亀裂

2点を固定

ワイヤー

◆伸縮計の模型

この管の中にワイヤーが張ってあります。

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6.対策の歴史

km四方に及ぶ亀の瀬の地すべりは機構の解明が極めて困難で、対策をするにも高度な技術を要します。広大な範囲で地質や地層、地下水など地すべり機構の解明のために多様な調査を長年継続的に行い、それ

らの調査結果に基づいて専門の土木技術者・学識経験者が対策を検討、対策工事の工法や範囲などを決定しては工事を実施し、その工事の効果を検証することを繰り返してきました。

また、地すべりの範囲が拡大したため、新たに地すべり地区に組み込み、同様に対策を行ってきました。このように、大和川河川事務所は、調査から検討、工事実施と効果の検証を繰り返し、半世紀の歳月をかけて

きました。近年は地すべりの動きがほとんど見られなくなってきました。いま、亀の瀬地すべりは高度な土木技術を駆使して止めていますが、大阪と奈良の安全を確保するためには、

今後も不断の監視を続けていく必要があります。

明治36年(1903)

昭和6~7年(1931~2)

昭和7~9年(1932~4)

昭和34年(1959)

昭和35年(1960)

昭和37年(1962)

昭和38年(1963)

昭和42年(1967)

昭和43年(1968)

昭和47年(1972)

昭和52年(1977)

昭和54年(1979)

昭和57年(1982)

昭和58年(1983)

昭和61年(1986)

昭和62年(1987)

平成15年(2003)

平成22年(2010)

平成22年(2010)

平成26年(2014)

平成28年(2016)

平成29年(2017)

令和元年(2019)

地すべりによる河道隆起のため上流浸水

峠ブロックで地すべり発生

河道閉塞に伴い災害復旧応急工事を内務省直轄工事で実施

地すべり防止区域に指定 (9.0ha)

直轄による調査開始

直轄施工区域に指定(9.0ha) 直轄工事着手

排土工開始

清水谷ブロックで地すべり発生、峠地区も含めて約50ha

地すべり防止区域及び直轄施工区域追加指定(73.54ha)

集水井工、鋼管杭工開始

奈良県側に地すべり防止区域追加指定(9.05ha)

排水トンネル工開始

「亀の瀬地すべり技術調査委員会」設置

※清水谷地区の排土工に関する基本的な考え方 や解析条件の検討、峠地区の

地すべり機構や安定解析の考え方、対策工法の基本方針などを審議

地すべり防止区域追加指定(2.7ha)

直轄施行区域の追加指定(2.7ha)

峠上部地区で深礎工開始(S58完了)

「亀の瀬地すべり専門部会」設置

※対策工法の詳細検討(地下水排除全体計画、長大深礎工配置計画等)、地す

べり安定解析、観測計画及び観測結果解析などを審議

清水谷下部地区で深礎工(φ4m)開始(S61完了)

峠下部地区で深礎工開始(φ6.5m)(H22完了)

清水谷上部地区で深礎工開始(φ6.5m)(H4完了)

清水谷下部地区で深礎工(φ5m)開始(H19完了)

おもな地すべり対策工事完了

「亀の瀬地すべり防止工事効果判定委員会」設置

※対策工事における対策効果を審議

「亀の瀬地すべり保全方策検討委員会」設置

稲葉山地区対策工事の実施を決定

稲葉山地区排土工開始(H30完了)

稲葉山地区鋼管杭工開始予定

<亀の瀬地すべり対策事業のあゆみ>

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7.対策の効果

土工や集水井工・排水トンネル工、深礎工など一定の整備が進んだ昭和60年頃から、地すべりの動き(変位)は沈静化し、対策工事の成果が現れています。

その後も目標の安全度を確保するため長大深礎工など引き続き対策工事を実施した結果、今ではほとんど変位はありません。

しかし、現在でも24時間監視は続けています。“動いていない(すべっていない)”情報を日々確認することによって、大阪と奈良の安全を確保しています。

■峠地区の変位量(地すべりの動き)と雨量の推移、工事の累積

対策が始まった初期は抑制工主体に、今動いている地すべりを止めてきました。

その後は長大深礎工を施工するなど、再度地すべりが起こらないように安全度を上げています。

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8.対策施設【1号排水トンネル】

の瀬地すべり地内には7本、地中の延長としては約7.2kmの排水トンネルがあります。この1号排水トンネルは一番最初に施工されたもので昭和44年に完成しました。

当初の構造は鋼製で、時間の経過に伴い錆などにより老朽化が進行してきたため、現在は恒久化対策としてコンクリートで造りなおし、同時に断面も拡幅しています。1号排水トンネルの延長は約1kmありますが、見学ではそのうち約200mをご覧いただけます。

平成17年に恒久化対策を終えた1号排水トンネル。見学用に整備され、坑口壁面には“亀”のレリーフをしつらえています。

トンネル壁面には“すべり面”が直接触れる窓(展開写真の枠部)を設けています。硬い岩盤は乾いていますが、乱された地層帯(粘土層)は濡れていて、柔らかいことが分かります。実際に感触を確かめてみてください。汚れた手は下の水路に流れている地下水で洗ってね!

トンネル周辺岩盤の展開写真。すべり面となる乱された地層帯が、上下の固い岩盤によってサンドイッチ状態になっているのがよく分かります。

固い岩盤

固い岩盤

乱された地層帯

固い岩盤

乱された地層帯

固い岩盤

集水井の中を下から覗けます。常に地下水が流れ落ちてきますので、通行の際は注意!

元々トンネルと離れた位置にあった集水井が、トンネル拡幅工事の時にトンネルの天井とぶつかったので、集水井の底を繋ぎました。

下から覗いた状況。一番上が地表面で約25mあります。壁面からは集水ボーリング(管)から地下水が流れ落ちています。

固い岩盤

固い岩盤

乱された地層帯

すべり面

集水ボーリング(管)

地表面

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すべり面

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8.対策施設【 1号排水トンネル】

見学順路

トンネルは、集水したい箇所に向かって本線・支線と分岐した構造になっています。本線をまっすぐ行くとまだまだトンネルは続きますが、この先は関係者以外立入禁止です。進行方向左(西支線)のトンネルに進みましょう。

天井には多くの集水ボーリング(管)があり、地下水がポタポタ落ちています。

奥まで進むと小さな鋼製のトンネルが見えます。その手前の天井には集水ボーリング(管)があり、地下水が落ちています。ここは常に流れ落ちてきますが、雨が降った後は蛇口をひねったように流れ出てきます。

台風後の排水状況【撮影:H28.8.10】

この鋼製のトンネルは、昭和46年に完成したものです。先に見える多くの地下水が流れ落ちてきている箇所は、11号集水井に集まった地下水です。トンネルから直接施工している集水ボーリング(管)と比べて、多くの地下水が流れ落ちているのが分かります。

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立入禁止

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8.対策施設【15号集水井】

水井は亀の瀬地すべり地内に54箇所あります。どの集水井も直径は3.5mで、15号集水井の深さは17mです。深さについては、すべり面の深度、排水したい地下水の高さに左右されるためそれぞれ異なり、最も深いものでは56mもあります。

下を覗くと壁面からは集水ボーリング(管)の口元が飛び出し、地下水が流れ落ちているのが分かります。この地下水は、集水井の底から排水トンネルに繋いだ直径9cmほどの管で排水しています。

9.旧大阪鉄道亀瀬隧道治25年(1892)2月2日、大阪-奈良間の難関・亀瀬隧道が開通しましたが、昭和6~7年(1931~2)の地すべりで崩壊し、現在は亀の瀬を迂回するように大和川対岸へ鉄道は移設されています。

昭和6~7年(1931~2)の地すべりは水平移動距離約30mと大規模であったため、地形が大きく変わり隧道の坑口がどこにあるかも分かりませんでした。その約80年後の平成20年(2008)11月、7号排水トンネル南支線工事で明治期の隧道が偶然発見されました。発見当時は工事の支障になることが懸念され取り壊すことも考えられましたが、地域の歴史的財産になるという観点から残すこととなりました。平成25年(2013)2月2日には「旧大阪鉄道亀瀬隧道」として、柏原市の有形文化財として指定されています。

トンネル西口トンネル東口

複線化で再利用された区間

当初は、単線で開通した鉄道でしたが、大正13年(1924)に複線化しました。全長703mトンネルのうち大阪側の246mは既存トンネルを再利用して延伸しました。現在公開しているのは既存トンネル(明治期)のうち、約40m区間です。(複線トンネルはコンクリート造)

現在は、亀の瀬地すべりを迂回するよう、大和川の対岸をJRが走っています。当時の移設工事は昭和7年(1932)7月1日に着手し、同年12月31日に完成、年明け1月1日より単線での営業再開となりました。

対岸を走り抜けるJR

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9.旧大阪鉄道亀瀬隧道

壁面は煉瓦の長い辺(長手)と短い辺(小口)を交互に積み重ねていく“イギリス積み”、天井のアーチ部は長い辺(長手)だけで積まれた“長手積み”となっています。美しくライトアップされた明治期の土木遺産をお楽しみください。

7号排水トンネル南支線坑口。平成19年にここからトンネル支線工事を開始し、亀瀬隧道にぶつかりました。今では明治へタイムスリップする入口に。

亀の瀬で最も長い5号排水トンネル(全長約2,600m)

こちらは排水トンネル行。関係者以外立入禁止です

×

坑口から少し下ると亀瀬隧道との交差部。ここも発見当時は煉瓦造りでしたが、排水トンネルとの交差部ということもあり、吹付コンクリートで補強をしています。奥に見えるのが明治25年(1892)に造られた亀瀬隧道。

亀瀬隧道

隧道の最深部には昭和6~7年(1931~2)の地すべりで崩壊した土砂がそのまま残っています。天井部から流入してきたであろう土砂の中には煉瓦も混じっています。

天井部分には当時走っていた蒸気機関車の“すす”で黒くなっています。

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