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高等教育財政の寄付についての米国動向調査と日本 へのインプリケーション 2018 3 福井文威 政策研究大学院大学助教授、大学 IR 総研研究員

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高等教育財政の寄付についての米国動向調査と日本

へのインプリケーション

2018年 3月

福井文威 政策研究大学院大学助教授、大学 IR総研研究員

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概要 1. 大学への寄付に関するデータの継続的な蓄積が必要である。 米国では Council for Aid to Educationという団体が、大学間の寄付の受け入れ額の詳細を

比較することが可能なデータベースを構築している。また、2000 年代に入り、英国でも、Council for Advancement and Support of Educationの Ross-Case Surveyが、大学への寄付の動向を毎年調査し、公表を行なっている。社会全体で大学への寄付を増加させるにあたっては、

様々な指標から大学への寄付の状況を多面的に理解する必要がある。それには、大学への寄

付に関連する客観的なデータの蓄積が必要であり、継続的に蓄積されたデータは、政府の政

策論議にも米国では利用されてきた。日本においても中間団体などを中心にこのようなデー

タの蓄積および分析が今後必要となるだろう。 2. 寄付という財源は、大学間で大きな差が出てくる財源である。 米国の高等教育機関の動向を見ても、大学への寄付は、巨額の寄付を集める大学とそれ以

外の大学で非常に大きな差がある。大学タイプ別の寄付額の中央値は、私立博士号授与機関

で 4930万ドル、私立修士号授与機関で 640万ドル、私立学士号授与機関で 1040万ドル、州立博士号授与機関で 3730万ドル、州立修士号授与機関で 410万ドル、州立学士号授与機関で 150万ドルとなっている。おおよそこの値が、米国における各大学タイプの平均的な寄付の獲得額と捉えられる。 3. 卒業生のみが寄付主体とは限らない。 寄付者と一口に言っても、卒業生、保護者、卒業生や保護者以外の個人、企業、財団、宗

教団体、その他の組織など、寄付主体は多様であることを認識する必要がある。米国の動向

を見ていくと、例えば、保護者からの寄付は、寄付額でいうとそれほど大きな割合を占めて

いないことや、私立大学と州立大学を比較すると、私立大学は卒業生からの寄付の割合が高

い一方、州立大学は企業からの寄付の割合が高い傾向などが見られる。どのような寄付主体

を寄付募集のターゲットとするのか検討することが必要である。 4. 寄付という財源は、必ずしも大学が自由に使用できる資金とは限らない。 寄付という資金は、必ずしも大学が自由に使途を決められる資金であるとは限らない。む

しろ米国の動向を見ていくと、ほとんどの寄付は寄付者によって寄付の使途が制限された資

金である。大学全体の財務経営のあり方を考える上で、寄付という財源が、外部からの使徒

制限のある資金なのか、或いは、外部からの使徒制限をされていない資金なのか、区分して

考えることは重要である。

5. 大学のどのような活動に使徒を指定して寄付をするのかは寄付主体により異なる。 米国の動向を見て行くと、経常的な活動への使途制限のある寄付は、特定の学術部門の活

動に使途を制限した寄付(Academic Division)、学生への経済的支援に使途を制限した寄付(Student Aid)、運動部の活動に使途を制限した寄付(Athletics)、特定の研究プロジェクトなどに使途を制限した寄付(Research)を中心としながらも、大学タイプや各寄付主体によって重点項目が異なる傾向がうかがえる。大学の活動は多様であり、自大学の活動のどこに

寄付者が反応しやすいか、検討することが必要である。

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6. 寄付募集活動は、大学の中長期戦略と密接に関連する。 寄付募集という活動は、あくまでも大学の教育、研究、社会サービス等に関連する活動を

実現するための一つの手段である。多くの寄付者は、寄付の使途を自分で決めたい欲求があ

り、そのようなニーズを汲み取りながら、大学の全体戦略と関連づけて寄付募集活動を展開

することが必要である。

7. 寄付募集活動を把握する KPIは、寄付獲得額だけではない。 大学の寄付募集活動の状況を把握する指標は、必ずしも大学の寄付総額だけとは限らない。

例えば、米国の大学では、大口寄付の数、卒業生寄付率、新規寄付者の数、卒業生イベント

の数などを大学の寄付募集活動の KPI として位置付けている大学が見られる。また、どのような経験をしている卒業生が寄付をしやすいのか把握する研究が進展している。

8. 寄付総額の目標達成において大口寄付者の存在は特に重要である。 大口寄付は、寄付総額を増加させる上で重要な存在である。米国の寄付募集活動において

は、Rule of Thirdという原則が浸透しており、大口寄付者のトップ 10の寄付者が寄付総額の 3分の 1を占めるということも指摘される。実際の統計データから見ても、大口寄付者が当該大学の寄付総額全体に占める割合は非常に大きい。

9. 寄付は財務上の問題のみならず、大学に対する評価という考え方が存在する。 寄付の獲得は、単なる財務上の話だけではなく、卒業生の母校に対する評価であるという

捉え方がなされている。事実、米国の大学ランキングには、卒業生寄付率といった指標が掲

載されており、一部の大学ではこれを上昇させることを目標にしている。

10. 寄付募集には、コストがかかる。 寄付募集には、それに関わるスタッフの人件費、イベントの開催日、広告費などをはじめ

としてコストがかかることを認識する必要がある。米国の大学では、寄付募集活動のコスト

を把握している大学も見られ、1ドル集めるのに私立大学で平均 15セント、州立大学で 20セント程度のコストをかけている。

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目次

はじめに ..................................................................................................................................... 5

1. 米国の大学タイプ別に見た寄付の規模 .............................................................................. 6

1.1 寄付総額の分布 ........................................................................................................... 6 1.2 総支出に占める寄付の割合の分布 .............................................................................. 8

2. 誰が、大学のどのような活動に対して寄付をしているのか。.......................................... 9

2.1 誰が寄付をしているのか。 ......................................................................................... 9 2.2 寄付は自由に使用できる資金か。 ............................................................................ 10 2.3 何に対して寄付をしているのか。 ............................................................................ 12

3. 大学の寄付募集に関連する主な指標 ................................................................................ 16

3.1 戦略計画とリンクした寄付募集 ................................................................................ 16 3.2 寄付募集に関連する KPI(Key Performance Indicators) ....................................... 18

3.2.1 大口寄付 ................................................................................................................19 3.2.2 卒業生の寄付率 .....................................................................................................20 3.2.3 寄付募集のコスト ..................................................................................................21

4. 日本へのインプリケーション ........................................................................................... 22

謝辞 .......................................................................................................................................... 25

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はじめに

2016年、米国で最も寄付を集めた大学は、ハーバード大学であり、一年で 1300億円の寄付を集めたとされる1。米国の研究大学が毎年巨額の寄付を獲得していることは様々な情報

媒体を通じて日本においても報道され、時にその姿は、遥か遠い存在として日本の大学関

係者に捉えられることもある。しかし、米国には研究大学のみならずリベラルアーツカレ

ッジ等をはじめとし、多様な大学が存在することで大学システムを形成している。よって、

米国の大学への寄付動向について理解するにあたっては、大学システムの多様性を念頭に

おく必要があり、上述のような巨額の寄付を集められるトップ研究大学のみに焦点を当て、

米国の高等教育への寄付の特質性を見出すことには慎重にならなければならない。 本レポートでは、はじめに米国の大学への寄付の現状を把握する上で、いくつかの大学

タイプ別に寄付総額の分布、大学経営における寄付という財源の寄与度について整理する

(第 1節)。その上で、米国では、どのような寄付主体が大学の如何なる活動に対して寄付をしているのか、各種統計指標から確認する(第 2節)。それらを踏まえた上で、米国の大学が寄付募集を行う際に重視している幾つかの視点について、米国の大学の戦略計画を参

考にしながら紹介し(第 3節)、最後に、日本へのインプリケーションについて提示することとする(第 4節)。

1 Forbes Japan「ハーバードが 1300億円で1位、寄付額が多い米大学ランキング」(2017年 5月 1日)記事より。

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1. 米国の大学タイプ別に見た寄付の規模

1.1 寄付総額の分布

2017 年度のアメリカの大学への寄付額トップ 10 は、Harvard University (12.8 億ドル)、Stanford University (11.2億ドル)、Cornell University (7.4億ドル)、Massachusetts Institute of Technology (6.7億ドル)、University of Southern California (6.6億ドル)、Johns Hopkins University (6.3億ドル)、University of Pennsylvania (6.2億ドル)、Columbia University (6.0億ドル)、Yale University (5.9億ドル)、Duke University (5.8億ドル)であった。それでは、トップ 10以下の大学の寄付総額の分布はどのようになっているのであろうか。 図 1は、米国の高等教育機関の 2017年度の寄付収入のデータをもとに、寄付総額の大き

い順から小さい順へと並べたものである。ここから明らかなように、順位が下がるにつれ

て、寄付総額は急激に下がっており、上位大学と他の大学の間での年間獲得寄付額には非

常に大きな差があることが確認できる。即ち、米国においても上述のような巨額の寄付額

を獲得できる大学は非常に限られている。 そこで、各大学タイプの平均的な寄付総額を把握するために、大学のタイプ別に寄付総

額の分布を確認したい。米国の大学を類型化する基準として、しばしば利用されるものに

カーネギー教育振興財団が公表しているカーネギー分類というものがある。カーネギー分

類では、米国の多様な大学を、博士号授与機関(Doctoral/Research)、修士号授与機関(Master’s)、学士号授与機関(Baccalaureate)などに分類をしている2。ここでは、博士号授与機関、修士

2 博士号授与機関(Doctoral/Research)を 20件以上の博士号を授与している機関、修士号授与機関(Master’s)を 50件以上の修士号を授与し 20件未満の博士号を授与している機関、学士号授与機関(Baccalaureate)を学士号またはそれ以上の学位が 50%以上を占めるが 50件未満の修士号または 20件未満の博士号を授与している機関としている。http://carnegieclassifications.iu.edu/definitions.php

図1:米国の高等教育機関の寄付総額の分布(順位別)

$0

$200,000,000

$400,000,000

$600,000,000

$800,000,000

$1,000,000,000

$1,200,000,000

$1,400,000,000

1 22 43 64 85 106

127

148

169

190

211

232

253

274

295

316

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379

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421

442

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505

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778

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注:横軸が順位、縦軸が寄付総額を表す。

出典:Council for Aid to Education, VSE Surveyのデータを利用し作成。

注:横軸が順位、縦軸が寄付獲得額を表す。

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号授与機関、学士号授与機関の 3タイプに、州立・私立別の 2タイプを掛け合わせた、6タイプの大学の寄付総額の分布について確認しながら、各大学タイプがおおよそどの程度の

寄付を獲得しているのか把握していくこととしたい。 私立博士号授与機関(Doctoral/Research (Private))、私立修士号授与機関(Master’s(Private))

私立学士号授与機関(Baccalaureate (Private))、州立博士号授与機関(Doctoral/Research (Public))、州立修士号授与機関(Master’s (Public))、州立学士号授与機関(Baccalaureate (Public))の寄付総額をヒストグラムにまとめたものが図 1 である。ここから明らかなように大学への寄付総額の分布は、非常に歪んだ分布となっており、例えば私立博士号授与機関、州立

博士号授与機関といった研究大学のグループ内においても寄付の獲得額の格差は非常に大

きい。分布のばらつき具合を見る指標の一つである内側四分位レンジ(75th percentileと 25th percentileの差)を見ても、私立博士号授与機関で約 1億 8000万ドル、州立博士号授与機関で約 9100万ドルもの幅がある。 各大学タイプの寄付総額の平均的な値を確認するために、中央値(Median)に着目する

と、私立博士号授与機関で 4930万ドル、私立修士号授与機関で 640万ドル、私立学士号授与機関で 1040 万ドル、州立博士号授与機関で 3730 万ドル、州立修士号授与機関で 410 万ドル、州立学士号授与機関で 150 万ドルとなっている。おおよそこの値が、米国における各大学タイプの平均的な寄付の獲得額と捉えることも可能であろう。

図2:米国の高等教育機関の寄付総額の分布(大学タイプ別)

出典:Council for Aid to Education, VSE Surveyのデータを利用し作成。

050

100

050

100

0 500 1000 1500 0 500 1000 1500 0 500 1000 1500

Doctoral/Research (Private) Master's (Private) Baccalaureate (Private)

Doctoral/Research (Public) Master's (Public) Baccalaureate (Public)

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ent

Total support ($ million)

, 8 71 506.047230

,0 2 4 71 506.047230

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, 8 71 506.047230

,0 2 4 71 506.047230

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, 8 71 506.047230

,0 2 4 71 506.047230

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,24 4

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1.2 総支出に占める寄付の割合の分布

ここまで大学タイプ別に寄付総額の分布について確認してきたが、各大学タイプの財務

構造に寄付は、どの程度重要な財源となっているのであろうか。各大学の財務における寄

付の重要度を確認するにあたり、当該年度の各大学の総支出(expenditures)に占める寄付総額の割合を算出してヒストグラムにまとめたものが図 2である。 大学タイプ内でも、総支出に占める寄付総額の割合にはばらつきが見られるが、全体的

な傾向を把握するために各大学タイプの中央値(Median)に着目すると、最も大きいのが私立学士号授与機関で 16.1%、続いて私立博士号授与機関で 9.7%、私立修士号授与機関で8.2%、州立博士号授与機関で 6.6%、州立修士号授与機関で 3.2%、州立学士号授与機関で2.5%となっている。 ここから明らかなように、私立大学の寄付への依存度は非常に高く、私立の場合いずれ

の大学タイプにおいても総支出の 10%前後の寄付額を獲得していることになる。特に、リベラルアーツ系の大学を中心とする私立学士号授与機関の 7 割以上の大学が総支出の 10%以上を寄付が占めていることは注目に値し、このタイプの大学の経営において寄付が欠か

せない財源になっていることが確認できる。一方、州立の特に州立修士号授与機関、州立

学士号授与機関のほとんどの機関は、総支出の 5%より少ない寄付総額しかない。この背景としては、これまで公的資金に支えられ私立大学と比較して寄付募集の歴史が浅いこと等

が考えられるが、近年、州立大学の寄付募集活動の積極性は増しており、この値も今後高

まっていくことが予想される。

図3:総支出に占める寄付獲得額の割合に関する分布(大学タイプ別)

出典:Council for Aid to Education, VSE Surveyのデータを利用し作成。

020

4060

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2040

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Doctoral/Research (Private) Master's (Private) Baccalaureate (Private)

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133

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13 %3

7%60 4 5 3612 % %

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13 %3

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2. 誰が、大学のどのような活動に対して寄付をしているのか。

ここまで米国の大学タイプ別の寄付総額に着目しながら、米国の大学の寄付の規模につ

いて確認してきた。しかし、一口に寄付といっても、寄付には様々なタイプがある。例え

ば、大学への寄付者には卒業生、保護者のみならず、篤志家などをはじめとする一般の個

人寄付者が存在する。また、大学は、個人寄付者に限らず、企業や財団などから巨額の寄

付を受けるケースもあり、こうした組織からの寄付も重要な財源である。 加えて、寄付には、寄付者が何らかの使途を制限した使徒制限付きの寄付もあれば、大

学側が自由に使用できる使徒制限無しの寄付もある。この 2 つは大きな違いであり、寄付者から使徒制限のある寄付を受け取るのか、或いは、使徒制限無しの寄付を受け取るのか

は、大学経営上、非常に重要な視点である。 本節では、米国の大学への寄付総額の内訳をより詳細に把握することを通じて、大学タ

イプ別に、①どのような寄付者が各大学タイプに寄付をしているのか、②大学は各寄付主

体からどの程度使徒制限のない寄付を獲得しているのか、③寄付者は如何なる大学の活動

に使途を制限して寄付をしているのか、把握していくこととしたい。

2.1 誰が寄付をしているのか。

Council for Aid to Educationが収集する各大学の寄付収入に関する統計では、寄付者の構成を卒業生(Alumni)、保護者(Parents)、それ以外の個人(Other individual)、財団(Foundation)、企業(Corporation)、宗教団体(Religious organization)、その他団体(Fundraising consortium and

図4:寄付者の構成(金額ベース、大学タイプ別)

注:各大学タイプの各寄付主体からの寄付獲得額の中央値を元に推計。

出典:Council for Aid to Education, VSE Surveyのデータを利用し作成。

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other organization)に分類をしている。個々の大学によって、この寄付者の構成は異なることに留意する必要はあるが、大学タイプ別に寄付者の大まかな構成割合を推計し、まとめ

たものが図 4である。 第 1 に指摘できるのが、州立大学と私立大学における卒業生の割合の差である。私立大

学においては、寄付総額の 3 割から 4 割強を卒業生からの寄付が占めており、特にリベラルアーツ系の大学を中心とする私立学士号授与機関においては、46%が卒業生からの寄付となっている。一方、州立大学においては卒業生からの寄付は 2 割前後にとどまっており、私立大学の方が卒業生からの寄付の重要度が高くなっている。 第 2に、保護者からの寄付の金額は、私立大学においては寄付総額全体の 5%弱を占めて

いる。州立大学にあっては、寄付総額の 1%未満が平均的な値となっており、金額から見ると必ずしも寄付募集のメインターゲットとはなっていないことが伺える。 第 3 に、個人寄付には、卒業生、保護者のみならず、それ以外の個人というカテゴリー

が統計上把握されており、いずれのタイプの大学も卒業生や保護者以外からの個人寄付額

が 2 割弱から 3 割程度を占めている。また、財団寄付の割合も 2 割から 3 割程度を占めているが、米国の場合、ファミリー財団などからの寄付も多く、これも個人から財団を経由

した寄付と考えると、卒業生や保護者以外の一般個人からの寄付が大きな割合を占めてい

ることとなる。 第 4 に、州立大学においては、上述の通り、卒業生からの寄付のシェアが私立と比較し

て小さい分、企業寄付への依存率が高くなっており、2割強を占めている状況である。 以上のように、大学への寄付者は卒業生や保護者のみならず、それ以外の一般個人、財

団、企業からの割合が全体の約半分以上を占めており、各大学のおかれた歴史的、社会的

背景に基づきながら多様な寄付主体のどこを中心的なターゲットにしながら寄付募集をす

るのか検討することが必要となる。

2.2 寄付は自由に使用できる資金か。

次に、寄付という資金の性質について明らかにしておきたい。Council for Aid to Educationが収集する各大学の寄付収入に関する統計では、寄付を経常的活動への使徒制限の無い寄

付(Current Operations/ Unrestricted)、経常的活動への使途制限のある寄付(Current Operations/ Restricted)、建物施設整備などに使途を制限した資本的支出目的への寄付(Capital Purpos/ Property Bildings Equipment)、基本財産への使途制限の無い寄付(Capital Purpose/ Endowment/ Unrestricted)、基本財産への使途制限のある寄付(Capital Purpose/ Endowment/ Restricted)、ローンに使途を制限した寄付(Capital Purpose/ Loan Funds)の 6つのタイプに寄付を分類している。 これら 6 つのタイプの寄付のうち、寄付者からの使徒制限のない寄付は、経常的活動へ

の使徒制限のない寄付(Current Operations/ Unrestricted)と基本財産への使途制限のない寄付(Capital Purpose/ Endowment/ Unrestricted)になる。大学の寄付総額を分解してみたとき、どの程度の寄付がこれら 2つのカテゴリーに属するものなのか把握すると次のようになる。 図 5 は、準学士号授与機関(Associate College)を除いた高等教育機関への寄付を上記 6

つのタイプの寄付に分類し、それぞれの中央値を比較したものである。ここから明らかな

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ように、寄付という財源は、必ずしも大学の自由に使用できる資金ではなく、寄付者によ

って使徒が制限された資金(restricted funds)が多くを占めているという傾向がうかがえる。例えば、寄付主体別に見ると、卒業生は、経常的活動への使徒制限のない寄付(Current Operations/ Unrestricted)が若干他と比較して大きくなっているものの、その額よりも経常的活動への使途制限のある寄付(Current Operations/ Restricted)の方が 2倍近く大きくなっている。また、それ以外の寄付主体(卒業生以外の個人、財団、企業)からの寄付について

見ても、経常的活動への使徒制限のある寄付(Current Operations/ Restricted)が大きな額となっていることが確認できる。 また、図 6 は、各寄付主体からの上記 6 つのタイプの寄付総額の中央値を大学のタイプ

別に分類してみたものである。 経常的活動への寄付に着目すると、私立博士号授与機関、州立大学においては、経常的

活動への使途制限のある寄付(Current Operations/ Restricted)の中央値が圧倒的に大きい傾向が確認できる。なお、私立学士号授与機関と私立修士号授与機関の卒業生からの寄付に

おいて、経常的活動への使途制限のある寄付(Current Operations/ Restricted)よりも、経常的活動への使徒制限のない寄付(Current Operations/ Unrestricted)の方が大きくなっており、使途制限のない寄付を卒業生から多く獲得している大学も例外的に見られる。ただし、い

ずれの大学タイプにおいても、一般個人、企業、財団からの寄付については、経常的活動

への使途制限のある寄付(Current Operations/ Restricted)が多い傾向にあることは強調しておく必要があるだろう 以上を総合すると、寄付という財源は、その多くが寄付者によって使徒が制限された資

金であり、必ずしも大学にとって自由に使用できる資金であるとは限らないことは念頭に

おく必要がある。これは、後述するように、寄付募集の際に寄付者のニーズに沿った選択

肢を提供することが大学にとって重要であることを示唆するものである。

図5:各寄付主体からの寄付総額(中央値、寄付使途別)

出典:Council for Aid to Education, VSE Surveyのデータを利用し作成。

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2.3 何に対して寄付をしているのか。

寄付者による使途制限の有無という観点から寄付の性質を捉えなおすと、経常的活動へ

の使途制限のある寄付(Current Operations/ Restricted)が大きな額を占めていることを示してきた。それでは、寄付者は、大学のどのような活動に使途を指定して寄付をしているの

図6:各寄付主体からの寄付総額(中央値、寄付使途別、大学タイプ別)

出典:Council for Aid to Education, VSE Surveyのデータを利用し作成。

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であろうか。利用可能な統計データから確認しておくこととしよう。Council for Aid to Educationでは、先の「経常的活動への使途制限のある寄付(Current Operations/ Unrestricted)」の内訳を把握している。その内訳とは、特定の学術部門の活動に使途を制限した寄付

図7:各寄付主体から使途制限のある経常的活動への寄付の内訳(大学タイプ別)

注:各大学タイプの各寄付主体からの寄付獲得額の中央値を元に推計。

出典:Council for Aid to Education, VSE Surveyのデータを利用し作成。

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(Academic Division)、教職員の給与や雇用に関する事項に使途を制限した寄付(Faculty/Staff Compensation)、特定の研究プロジェクトなどに使途を制限した寄付(Research)、社会サービスに関連する活動に使途を制限した寄付(Public Service/ Extension)、図書館の整備に使途を制限した寄付(Library)、施設設備の整備に使途を制限した寄付(Physical Plant Operation & Maintenance)、学生への経済的支援に使途を制限した寄付(Student Aid)、運動部の活動に使途を制限した寄付(Athletics)、それ以外の何らかの活動に使途を制限した寄付(Other purpose)の 9つである。 この枠組み自体が、寄付募集を設計する際にも参考になるものと考えられるが、更に、

卒業生、保護者、それ以外の個人、企業、財団の経常的な活動への使途制限のある寄付の

内訳について推計し、大学タイプ別にまとめたものが図 7 ある。なお、それ以外の何らかの活動に使途を制限した寄付(Other purpose)の占める割合が大きいため、解釈は限定的となるが、以下のような特徴が見出せる。 第 1 に、卒業生の寄付は、特定の学術部門の活動に使途を制限した寄付(Academic

Division)、学生への経済的支援に使途を制限した寄付(Student Aid)、運動部の活動に使途を制限した寄付(Athletics)の額が大きな割合を占めている。大学タイプによってその割合は異なるものの、例えば、私立博士号授与機関、州立博士号授与機関の場合、約 8 割近くの卒業生による経常的活動への使途制限のある寄付が、この上記 3 つのカテゴリーによって占められている。 第 2 に、保護者からの経常的活動への使途制限のある寄付も同様に、特定の学術部門の

活動に使途を制限した寄付(Academic Division)、学生への経済的支援に使途を制限した寄付(Student Aid)、運動部の活動に使途を制限した寄付(Athletics)が、上位を占めている。特に、保護者からの寄付は、運動部の活動に使途を制限した寄付(Athletics)の割合がいずれの大学タイプにおいても大きい傾向が見られる。 第 3 に、企業寄付からの経常的活動への使途制限のある寄付は、特定の学術部門の活動

に使途を制限した寄付(Academic Division)、学生への経済的支援に使途を制限した寄付(Student Aid)、運動部の活動に使途を制限した寄付(Athletics)の割合が大きくなっていることに加え、博士号授与機関においては、特定の研究プロジェクトなどに使途を制限した

寄付(Research)の割合が大きい特徴がある。 第 4 に、財団からの経常的活動への使途制限のある寄付は、運動部の活動に使途を制限

した寄付(Athletics)が、他の寄付主体と比較して少ない傾向があり、特定の学術部門の活動に使途を制限した寄付(Academic Division)、学生への経済的支援に使途を制限した寄付(Student Aid)が多い傾向にある。特に、修士号授与機関、学士号授与機関に対する財団からの経常的活動への使途制限のある寄付の 4 割から 5 割近くは学生への経済的支援に使途を制限した寄付(Student Aid)となっている。また、企業寄付同様、博士号授与機関においては、特定の研究プロジェクトなどに使途を制限した寄付(Research)が財団寄付の場合、比較的大きな割合を占めていることもうかがえる。 なお、以上示した特徴は、各寄付主体からの中央値から推計した値であり、個別の大学

の状況全てに当てはまるものではないが、全体的な傾向としては、経常的な活動への使途

制限の寄付は、特定の学術部門の活動に使途を制限した寄付(Academic Division)、学生への経済的支援に使途を制限した寄付(Student Aid)、運動部の活動に使途を制限した寄付

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15

(Athletics)、特定の研究プロジェクトなどに使途を制限した寄付(Research)を中心としながらも、大学タイプ、各寄付主体によって重点項目が若干異なっている傾向がうかがえる。

大学の活動は多様であり、我が国においても同様のデータを蓄積しながら大学の活動のど

この部分に寄付者が反応しやすいか検討することは、今後の寄付募集活動において必要な

視点といえるであろう。

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3. 大学の寄付募集に関連する主な指標

ここまで、米国の大学への寄付の現状を把握するにあたり、基本的な統計データを示し

てきたが、米国の大学が寄付募集を行う際に重視している幾つかの視点について、米国の

大学が発行した戦略計画の内容を参考にしながら紹介したい。

3.1 戦略計画とリンクした寄付募集

米国の大学では、中長期的な大学の方向性を学内関係者、学外関係者に対して示すにあ

たり、戦略計画(Strategic Plan)を発行している大学が多く見られる。戦略計画の形式は、大学によって様々であるが、米国の大学の戦略計画には主に、教育、研究、社会サービス

等に関する中長期的な目標、目標実現のための戦略、設定した計画の進捗状況を把握する

ための KPI(Key Performance Indicators)などが掲載されている。それに加え、計画を実現するための財務戦略の一つとして、どのように寄付募集活動を進めていくのか戦略計画上

に掲載している大学も一部見られる。 改めて指摘するまでもないが、大学経営全体から見たとき、寄付募集という活動は、あ

くまでも大学の教育、研究、社会サービス等に関連する活動を実現するための一つの手段

である。即ち、寄付募集活動は、大学が将来的に実現したい中長期的な戦略計画と密接に

関連しており、例えば、ジョージワシントン大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校、

カンザス大学の戦略計画に記載された次の文書は、米国の大学が中長期的な戦略計画と関

連付けながら寄付募集を行っていることを示す典型的なものであろう。 「ジョージワシントン大学のデヴェロップメント・オフィスでは、戦略計画に沿った活

動のために 3億〜4億ドルを確保することに全力で取り組む。この金額の少なくとも半分(1億 5,000万〜2億 5,000万ドル)は、今後 10年間に費やされる 1年または複数年の約束による寄付から得られるものと見込んでいる。残りの半分については、基本財産への寄付や、

より長期的な期間のコミットメントに関する寄付、例えば、ライフインカム寄付や遺贈寄

付などによって、補う予定である。(The George Washinton University, 2012, p.37)」 「フィランソロピーについて:奨学金、フェローシップ、患者ケアのための基金を大幅

に強化するために、戦略計画にリンクした複数年の寄付募集の目標と戦略を定義する。

(University of California San Diego, 2011)」 「寄付募集の目標を、戦略計画からの大胆なアイデアに集中させる(The University of

Kansas, 2011, p. 47)。」 このように、寄付募集活動は、大学が将来的に実現したい戦略計画と密接に関連してお

り、当該大学がどのような将来像を描いているのかは、潜在的な寄付者の重要な関心事項

である。しばしば、卒業生の寄付行動は、大学への帰属意識からなされるという説明もさ

れるが、帰属意識のみに頼るのではなく、当該大学がどのような将来像を描いているかと

いうことが、寄付を集める上では意識する必要がある。例えば、州立の研究大学であるカ

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ンザス大学の戦略計画には、 「カンザス大学の同窓生や友人たちは世界で最も忠実な人ですが、戦略計画の成功に必

要な貢献の大きさは、忠誠心だけでは実現できません。カンザス大学のビジョンと寄付者

の内なる情熱を結びつけ、私たちがしていることがどんなに大きな効果をもたらすかを実

証する必要があります。一例として、49-55ページで参照されている 4つの戦略イニシアチブテーマは、カンザス大学が世界をより良い場所にしてくれるようにするためのいくつか

の大胆なアイデアを含んでいます。(The University of Kansas, 2011, p.47) と記載されており、具体的には、”Sustaining the Planet, Powering the World”として気候変動

などをはじめとする地球環境問題への貢献、”Promoting Well-Being, Finding Cures”として薬学、神経科学、癌研究などの進展を通じた健康問題への貢献、”Building Communities, Expanding Opportunities”として市民社会の健全な発展や人権問題への貢献、”Harnessing Information, Multiplying Knowledge”として情報技術やコンピュータ科学を利用した社会課題解決という 4 つの重点ビジョンを掲げている。このように、一部の大学では、寄付者にとって共感できるようなビジョンを提示することを重視している。 また、ビジョンのみならず、寄付が具体的にどのような使途に使用される資金となるの

か、明示している戦略計画も見られる。例えば、ワシントンに位置する私立総合大学のジ

ョージワシントン大学では、”Vision 2021 A Strategic Plan for The Third Century of The George Washington University”という戦略計画において、

「これらのリソース(筆者注:寄付)は、国際化のための資金(globalization fund)、分野

融合の資金(cross-disciplinary fund)、シチズンシップ・リーダーシップのための資金(citizenship and leadership fund)、学生サービスのための資金(student service fund)、そして、教員雇用のため(faculty lines)に直接的に使用される予定です。これらのカテゴリーに基づきながら、寄付者は、特定のプロジェクトや計画を支援することを選択します。(The George Washinton University, Strategic Plan, 2012, p.37)」 とした上で、①国際化ファンド(留学生への奨学金、国際医療や感染病対策などのプロ

グラムに海外で従事している教員や学生をサポートするための資金)、②分野融合ファンド

(自閉症、神経科学、世界の女性、サイバーセキュリティーなどの分野横断的なセンター

の活動、社会課題解決のための研究、学部生・大学院生の研究、萌芽的研究資金、質の高

い教員のサポート、プロフェッショナルスクール所属教員の学部教育の資金、癌研究のセ

ンターのための資金)、③シチズンシップ・リーダーシップファンド(サービスラーニング、

がんセンターのインターンシップの資金、リーダーシップ教育、アウトリーチの活動をサ

ポートするための資金)、④学生支援ファンド(大学院プログラム、退役軍人の支援プログ

ラム、親和性のある住宅、キャリアセンターのためのリソースを提供するための資金)、⑤

ファカルティ・ライン(20から 50の新しい教員のポジションを確保することに用いることを予定しており、これらの教員は、スクールに所属する一方、戦略計画に沿った教育や研

究活動に従事することを想定)、⑥資本支出目的の寄付(芸術空間、環境に配慮した施設整

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備のための資金)といった選択肢を寄付者に対して提供していくことを戦略計画に位置付

けている。 以上のような文書からも明らかなように、寄付募集活動と大学の中長期的な計画は密接

に関係しており、戦略計画が寄付者のニーズを踏まえながら大学の活動を紹介することで、

大学の将来像について広く周知するツールにもなっている。先に示した通り、寄付者は使

徒制限を自分自身で指定し、寄付をする傾向が強く、寄付募集活動の前に寄付者に対して

どのようなオプションを提示するのか検討することが今後さらに必要となってくるであろ

う。

3.2 寄付募集に関連する KPI(Key Performance Indicators)

また、一部の大学では、戦略計画に掲載された寄付募集活動の状況を把握するために、

KPI(Key Perfomance Indicators)を示している3。寄付募集に関連する主な指標を列挙すると

以下のようなものがある。 ・寄付額 ・卒業生の寄付件数 ・卒業生の寄付率 ・大口寄付の数 ・新規寄付者の数 ・卒業生関連のイベントの数

ここから見て取れる様に、寄付募集に関する KPI は必ずしも最終的な目標金額とのギャ

ップを確認する上での寄付額を定期的に把握するのみならず、卒業生の寄付件数、寄付率

などをはじめとする卒業生の寄付状況に着目した指標、大口寄付の数という特定の寄付者

層に着目した指標、また、どれだけ新たな寄付者を新規開拓できているかという視点から

新規寄付者の数、卒業生との接点をどれだけ大学が作れているのかという視点から卒業生

関連のイベントの数を戦略計画上に記載している大学が見られる。なお、この他にも、米

国においては、大学時代にどのような経験をした学生が将来寄付をしやすいのかといった

視点に関する研究も蓄積されており、寄付総額以外にも様々な関連する指標の開発が進ん

でいる4。 紙幅の都合上、本レポートで全ての寄付関連の KPI を取り上げることはできないが、こ

の中でも特に、大口寄付の数、卒業生寄付率は、米国の大学への寄付を理解する上で重要

な指標であるため、利用可能な統計データから、大口寄付が大学の寄付にどの程度重要な

財源となっているのか、また、どの程度の割合の卒業生が寄付をしているのか最新のデー

3 KPIとは主要業績評価指標とも訳され、Parmenter(2012)によれば、KPIには、①組織内の日常的な行動と組織全体の重要な成功要因の結合、②組織のパフォーマンスの向上、③より広範な当事者意識・エンパ

ワーメント・達成感の実現をもたらす効果があるとされている。 4 なお、米国の大学への寄付者のプロファイルに関する先行研究については、詳しくは、福井(2018)を参照されたい。

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タから把握しておくこととしよう。

3.2.1 大口寄付

米国の寄付募集活動に関連するハンドブック等で、しばしば指摘される原則として、Rule of Thirdという原則がある。これは、大口寄付者のトップ 10が寄付総額全体の 3分の 1、次のトップ 100が寄付総額の 3分の 1、残りの寄付者が寄付総額全体の 3分の 1を占めるという原則である(Ciconte and Jacob, 2011)。この原則が示唆するのは、寄付総額全体に占める大口寄付者の重要性であり、米国の大学によっては寄付募集を担当する部署の中に大口寄

付者への対応を専門的に行う担当者を配置している大学も見られる。 Council for Aid to Educationの収集するデータから個人寄付の大口トップ 3、遺贈寄付の大

口トップ 3、企業寄付の大口トップ 3、財団寄付の大口トップ 3 を合計した 12 の大口寄付が、各大学の寄付総額全体の何割を占めているか確認し、その分布を大学のタイプ別にま

とめたものが次の図 8である。 ここから明らかなように、大学によって大口寄付者の依存率は大きく異なるが、平均値

に着目すると、いずれのタイプの大学でも大口トップ 12の寄付額(個人寄付の大口トップ3、遺贈寄付の大口トップ 3、企業寄付の大口トップ 3、財団寄付の大口トップ 3 を合計した 12の大口寄付額)は、州立学士授与機関で 51%、私立学士授与機関で 46%、私立修士授与機関で 46%、州立修士授与機関で 43%、私立博士授与機関で 36%、州立博士授与機関で35%となっており、いずれのタイプの大学も平均的に見ると寄付総額の少なくとも 3分の 1

図8:12 の大口寄付者からの寄付額が寄付総額に占める割合の分布(大学タイプ別)

出典:Council for Aid to Education, VSE Surveyのデータを利用し作成。

05

1015

200

510

1520

0 .5 1 0 .5 1 0 .5 1

Doctoral/Research (Private) Master's (Private) Baccalaureate (Private)

Doctoral/Research (Public) Master's (Public) Baccalaureate (Public)

Perc

ent

Share of Large 12 gifts

12. 34011

1 %2. 34 %011

1 %2. 3 %4 %011 %

12. 34011

12. 3 %4011

1 %2. 3401 %1

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以上を占めている傾向がある。よって、Rule of Thirdの原則は、大学への寄付にも概ね当てはまっており、大口寄付の役割が米国では非常に大きい。ただし、寄付者は回数を重ねる

ごとに、寄付金額を増加させていく傾向にあることが一般的に指摘されており、そのため、

小口であっても早い段階からの寄付の習慣を促すことは同時に重要である。

3.2.2 卒業生の寄付率

また、卒業生寄付率という指標も当該大学の寄付募集の状況を把握する上で見られる指

標でもある。例えば、US News and World Reportの大学ランキングにも当該指標は使用されており、卒業生のうち何割が寄付をしているのかという指標は、学生の当該大学で得た経

験に対する満足度を示す代理変数であるという考え方に基づいている。そのため、卒業生

寄付率の向上を重視している大学も見られる。参考までに、大学タイプ別に、卒業生の寄

付率の分布を示しておこう(図 9)。 ここから確認できるように、卒業生寄付率は、私立大学の方が高い傾向があり、平均値

で見ると私立学士号授与機関が 18.0%、私立博士号授与機関が 11.7%、私立修士号授与機関が 7.8%、州立博士号授与機関が 6.5%、州立学士号授与機関が 5.2%、州立修士号授与機関が 4.2%となっている。日本の大学においてこのような指標は大規模に公表されていないため、これらの値が高いか否かを判断することが難しいが、今後各大学の寄付募集の状況を

把握する上での参考値とはなるであろう。むしろ、興味深いことは、寄付募集活動にあた

図9:卒業生の寄付率の分布(大学タイプ別)

010

2030

400

1020

3040

0 .2 .4 .6 0 .2 .4 .6 0 .2 .4 .6

Doctoral/Research (Private) Master's (Private) Baccalaureate (Private)

Doctoral/Research (Public) Master's (Public) Baccalaureate (Public)

Perc

ent

Alumni Participation

12. 34011

12. 34011 %

12. 34011

1 %2. 34 %011

12. 3401 %1

1 %2. 34011

出典:Council for Aid to Education, VSE Surveyのデータを利用し作成。

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って、寄付総額のみならず、卒業生寄付率などの幾つかの KPI を設定しながら、大学の寄付募集の状況を複合的にチェックしていることにあるだろう。

3.2.3 寄付募集のコスト

最後に、寄付募集のコストについて言及をしておきたい。日本において寄付は、大学の

新たな財源として期待されているところであるが、当然のことながら寄付募集活動自体に

も、それに関わるスタッフの人件費、イベント開催費、広告費などをはじめとしたコスト

がかかってくる。寄付総額を上回る経費を寄付募集活動に費やしているとすれば、それは

本末転倒であり、どの程度の寄付募集のコストをかけるべきかは、大学経営上重要な視点

である。 参考までに、米国の大学は、どの程度の寄付募集コストをかけ、どの程度の寄付収入を

得ているのか把握しておこう。これに関連するデータを公表している大学は限られており、

サンプル数が少ないため解釈は限定的となるが、州立大学と私立大学別に寄付募集関連の

コストと大学の寄付総額の関係を散布図にまとめたものが図 10である。ここからも明らかな通り、巨額な寄付を集めている大学であればあるほど、寄付募集関連のコストも非常に

大きなものとなっている傾向がある。このデータから推計すると、おおよそ、1ドル集めるのに私立大学で 15セント、州立大学で 20セント程度が平均的な額となっている。

y=6.2025x- 2E+07

y=9.0866x- 4E+07

$0

$100,000,000

$200,000,000

$300,000,000

$400,000,000

$500,000,000

$600,000,000

$700,000,000

$800,000,000

$0 $10,000,000$20,000,000$30,000,000$40,000,000$50,000,000$60,000,000$70,000,000$80,000,000$90,000,000

TotalSupport

AdvancementTotalExpenditures

public

Private

図10:寄付獲得額と寄付募集に関連する経費の散布図(私立・州立別)

出典:Council for Aid to Education, VSE Surveyのデータを利用し作成。

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4. 日本へのインプリケーション

以上、米国の大学に対する寄付の動向について各種統計指標や戦略計画などからまとめ

てきたが、要点を整理すると以下のようになる。 1. 大学への寄付に関するデータの継続的な蓄積が必要である。 米国では Council for Aid to Educationという団体が、大学間の寄付の受け入れ額の詳細を

比較することが可能なデータベースを構築している。また、2000 年代に入り、英国でも、Council for Advancement and Support of Educationの Ross-Case Surveyが、大学への寄付の動向を毎年調査し、公表を行なっている。社会全体で大学への寄付を増加させるにあたっては、

様々な指標から大学への寄付の状況を多面的に理解する必要がある。それには、大学への

寄付に関連する客観的なデータの蓄積が必要であり、継続的に蓄積されたデータは、政府

の政策論議にも米国では利用されてきた。日本においても中間団体などを中心にこのよう

なデータの蓄積および分析が今後必要となるだろう。 2. 寄付という財源は、大学間で大きな差が出てくる財源である。 米国の高等教育機関の動向を見ても、大学への寄付は、巨額の寄付を集める大学とそれ

以外の大学で非常に大きな差がある。大学タイプ別の寄付額の中央値は、私立博士号授与

機関で 4930 万ドル、私立修士号授与機関で 640 万ドル、私立学士号授与機関で 1040 万ドル、州立博士号授与機関で 3730万ドル、州立修士号授与機関で 410万ドル、州立学士号授与機関で 150 万ドルとなっている。おおよそこの値が、米国における各大学タイプの平均的な寄付の獲得額と捉えられる。 3. 卒業生のみが寄付主体とは限らない。 寄付者と一口に言っても、卒業生、保護者、卒業生や保護者以外の個人、企業、財団、

宗教団体、その他の組織など、寄付主体は多様であることを認識する必要がある。米国の

動向を見ていくと、例えば、保護者からの寄付は、寄付額でいうとそれほど大きな割合を

占めていないことや、私立大学と州立大学を比較すると、私立大学は卒業生からの寄付の

割合が高い一方、州立大学は企業からの寄付の割合が高い傾向などが見られる。どのよう

な寄付主体を寄付募集のターゲットとするのか検討することが必要である。 4. 寄付という財源は、必ずしも大学が自由に使用できる資金とは限らない。 寄付という資金は、必ずしも大学が自由に使途を決められる資金であるとは限らない。

むしろ米国の動向を見ていくと、ほとんどの寄付は寄付者によって寄付の使途が制限され

た資金である。大学全体の財務経営のあり方を考える上で、寄付という財源が、外部から

の使徒制限のある資金なのか、或いは、外部からの使徒制限をされていない資金なのか、

区分して考えることは重要である。

5. 大学のどのような活動に使徒を指定して寄付をするのかは寄付主体により異なる。 米国の動向を見て行くと、経常的な活動への使途制限のある寄付は、特定の学術部門の

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活動に使途を制限した寄付(Academic Division)、学生への経済的支援に使途を制限した寄付(Student Aid)、運動部の活動に使途を制限した寄付(Athletics)、特定の研究プロジェクトなどに使途を制限した寄付(Research)を中心としながらも、大学タイプや各寄付主体によって重点項目が異なる傾向がうかがえる。大学の活動は多様であり、自大学の活動のど

こに寄付者が反応しやすいか、検討することが必要である。 6. 寄付募集活動は、大学の中長期戦略と密接に関連する。 寄付募集という活動は、あくまでも大学の教育、研究、社会サービス等に関連する活動

を実現するための一つの手段である。多くの寄付者は、寄付の使途を自分で決めたい欲求

があり、そのようなニーズを汲み取りながら、大学の全体戦略と関連づけて寄付募集活動

を展開することが必要である。

7. 寄付募集活動を把握する KPIは、寄付獲得額だけではない。 大学の寄付募集活動の状況を把握する指標は、必ずしも大学の寄付総額だけとは限らな

い。例えば、米国の大学では、大口寄付の数、卒業生寄付率、新規寄付者の数、卒業生イ

ベントの数などを大学の寄付募集活動のKPIとして位置付けている大学が見られる。また、どのような経験をしている卒業生が寄付をしやすいのか把握する研究が進展している。

8. 寄付総額の目標達成において大口寄付者の存在は特に重要である。 大口寄付は、寄付総額を増加させる上で重要な存在である。米国の寄付募集活動におい

ては、Rule of Thirdという原則が浸透しており、大口寄付者のトップ 10の寄付者が寄付総額の 3 分の 1 を占めるということも指摘される。実際の統計データから見ても、大口寄付者が当該大学の寄付総額全体に占める割合は非常に大きい。

9. 寄付は財務上の問題のみならず、大学に対する評価という考え方が存在する。 寄付の獲得は、単なる財務上の話だけではなく、卒業生の母校に対する評価であるとい

う捉え方がなされている。事実、米国の大学ランキングには、卒業生寄付率といった指標

が掲載されており、一部の大学ではこれを上昇させることを目標にしている。

10. 寄付募集には、コストがかかる。 寄付募集には、それに関わるスタッフの人件費、イベントの開催日、広告費などをはじ

めとしてコストがかかることを認識する必要がある。米国の大学では、寄付募集活動のコ

ストを把握している大学も見られ、1 ドル集めるのに私立大学で平均 15 セント、州立大学で 20セント程度のコストをかけている。 <参考文献> ・ Ciconte, B. L., & Jacob, J. (2011). Fundraising basics: A complete guide. Jones & Bartlett

Publishers. ・ Council for Aid to Education (2018). Voluntary Support of Education. ・ 福井文威(2018)「米国高等教育における拡大する個人寄付」東信堂

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・ George Washington Unversity (2012). VISION 2021 A Strategic Plan for the Third Century of The George Washington University.

・ Parmenter, D. (2012). Key Performance Indicators for Government and Nonprofit Agencies: Implementing Winning KPIs. John Wiley & Sons.

・ The University of Kansas (2011). Bold Aspirations: Strategic Plan for the University of Kansas 2012-2017.

・ University of California San Diego (2011). UC San Diego’s Strategic Plan: Defining the Future of the Public Research University..

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謝辞

本レポートを執筆するにあたり、政策研究大学院大学 SciREXセンター「イノベーションシステムを推進する公的研究機関の制度的課題の特定と改善」プロジェクトで収集した大学

の戦略計画に関する資料、及び、日本学術振興会科学研究費補助金(若手 B)「大学経営と寄付戦略(研究代表:福井文威)」が収集した資料を一部利用した。

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