ir nagamachi
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たのしい んが
はじめに
最初にこの本を作るにあたっての心意気
をお話します。私は版画作品を紹介した
3つの展覧会に行きました。そこで見て
感じた、あたりまえのことだけれどたの
しい版画の要素をビジュアルで紹介しま
す。参考文献の解説をそのまま写すので
はなく、単純に「版画って楽しそう」と
いう気持ちを本にしました。
版と紙at 永遠なる迷宮 エッシャー展
版と紙の関係はきっと木版がいちばんわかりやすい。木版を彫って凸の部分にインクを塗って、紙に刷る。はんこと同じ。次の作品は、エッシャーが友人と共作した本 に作った挿絵です。ものの気持ちの詩もついています。ではさっそく刷ってみましょう。右が版で、左が紙です。さあ、ぺったん。
ぺら。
6 やしの木 私は好奇心旺盛な樹木です。
世界の夢を見ながら、すらりと立っているのです。
ぺら。
「永遠なる迷宮 エッシャー展」のはなし4 月 19 日から6月1日まで旭川美術館で行われていたエッ
シャー展に行きました。札幌から旭川まで特急列車スーパーカム
イで行くとたったの 50 分で着きました。びっくり。
美術館は常盤公園の中にありました。環境のせいか、家族で美術
鑑賞している人が多かったように思います。とってもすてき。し
かし、子供はすぐに飽きてしまってお母さんに帰ろうとせがむ姿
もよく見ました。かわいい。
この展覧会で、エッシャーのインスピレーションの豊かさ、敏感
さ、というものを強く感じました。旅行した際に見た風景、動植
物の生命力から数学や地質学に至るまで幅広い分野に興味を示
し、そこから多くの作品を生み出しました。また、彼の几帳面な
性格から緻密で規則正しいものが多くありました。そのせいか、
作品数はそれほど多くない展覧会でしたが、とても見応えがあり
ました。
重なりパズルat ドイツポスター PLAKATE 展
さて、さきほどの「版と紙」では黒の一色刷り
でしたが、カラーの多色印刷になると、色の数
だけ版の数を増やさなきゃいかんのです。
どの色をどの位置に、重なる部分があれば前後
関係も考えなくっちゃいけません。
最初は2版、それから4版。どんなポスターが
できるでしょうか。
2版はさすがに簡単だったでしょうか。
次はもう少し増えますよ。
ちなみにこの作品はドイツの商業ポスターが盛
んになってきた時代に作られた、ポスター会社
のポスターです。赤の入れどころに大変センス
を感じます。
簡単に完成をイメージできそうですが、細部ま
ではなかなか難しいですよね。
単純な構成ですが、面のかたち、色のバランス
がとってもきれいなポスターです。ベタ塗りで
こんなに豊かな表現ができるのだな、と関心。
「ドイツ・ポスター PLAKATE 展」のはなし2月 26 日から3月 30 日まで京都国立近代美術館で行われてい
ました。宿泊していた町家の宿のすぐ近くにと近代美術館があっ
たので、2回も行ってしまいました。
展覧会を見た最初の感想はかわいい!でした。単純な構成、ドイ
ツらしいフォントのテキスト、トーンを抑えたしぶい色合い・・・
これらはどれもわたしにとってはツボでした。ツボのひとつであ
る、背景・画・テキストの三要素からなる単純な構成というのは、
ここで紹介されているポスターたちが先駆けだったようです。こ
れは、当時ヨーロッパで主流だった絵画的なものではなく、商業
ポスターの広告効果を高めることを目的とした構成としてベルリ
ンで発達しました。かわいいものにもこんなにしっかりした理由
があるなんて、ドイツポスターに関心してしまいました。
今回の展覧会のポスター(下)は 10 年代のポスターのオマージュをさらにオマージュしたもの。
Y + M+ Cat 映画「人のセックスを笑うな」リトグラフ展
最後はシアン、マゼンタ、イエローの3色を使っ
てカラフルな作品を刷ってみましょう。
映画の中でこの作品を刷るシーンがありまし
た。一版目の黄色が黄色が刷り上がったシーン
が印象的でした。その一版だけでは何が描かれ
ているのかわからないのだけれど、とてもきれ
いなきいろでした。
では色の足し算をたのしんでください。
Y
M
C
「人のセックスを笑うな リトグラフ展示」のはなしこの展示会は映画「人のセックスを笑うな」を上映していた映画
館の隣にある kino cafe で映画の主人公が劇中で制作した版画を
紹介したものです。
まずは映画の紹介。主人公のユリは美大のリトグラフ講師。この
設定がマイナーでそそられます。お話は、ユリと生徒のみるめく
んの恋物語です。いけないいけない。だけどそれがとってもかわ
いらしく描かれています。
つぎは kino cafe について。狸小路6丁目にあるシアターキノと
ほぼつながっています。だから映画の待ち時間にもってこいの場
所です。親切にも上映時間前になるとスタッフの方がカフェに呼
びに来てくれます。また、映画館とのコラボレーションも楽しみ
のひとつ。今回の様な展示会や、映画をモチーフにしたフードや
ドリンクが期間限定で用意されることもあるんです。わくわく。
芳野。今回の映画のリトグラフとイラストを担当した作家さん。hina というネットショップで作品のポストカードなどを買うことができます。