経済産業省/ipa...

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経済産業省/IPA 委託事業 「IT人材育成強化加速事業」拠点 早稲田大学における 産学連携実践的IT教育講座の紹介 IT経営プロジェクト基礎」 「システム開発プロジェクト基礎」 2011年10月27日 鷲崎 弘宜 早稲田大学基幹理工学部情報理工学科 早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニ アリング研究所 http://www.cs.waseda.ac.jp/

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経済産業省/IPA 委託事業「IT人材育成強化加速事業」拠点

早稲田大学における産学連携実践的IT教育講座の紹介

「IT経営プロジェクト基礎」「システム開発プロジェクト基礎」

2011年10月27日

鷲崎 弘宜早稲田大学基幹理工学部情報理工学科

早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所

http://www.cs.waseda.ac.jp/

どんな講座か?

• 発注側と受注側の両視点で、情報システムの活用、マネジメント、ヒューマンスキルの体験的習得

– 情報理工学科3・4年生、2単位、3コマ×5日間

• 発注「IT経営プロジェクト基礎」 15名・3チーム

– IT戦略策定、IT調達、RFP、ITサービス導入

– 講義・演習: 山戸昭三様(NEC、現在筑波大)

• 受注「システム開発プロジェクト基礎」 26名・6チーム

– 基本計画、要件定義、システム設計、プロジェクトマネジメント

– 講義:鷲崎 弘宜

– 演習:大久保雅司様 (NECラーニング)2

講座のウリは?• 講義+疑似プロジェクトベース演習

– チームで「考えて」自律的取り組み

– IT評価(Individual ×Team)

– 実務家のロールプレイと助言、実務に近い課題

• 繰り返し

– PDCA: 講義→演習→発表・講評→解説・改善・・・・

– 日々の学習ジャーナル(目標、進捗、気づき、用語調査)

3

改善されたのか?(’10→’11)

• 改善–専門用語説明の強化

–チームビルディング、アイスブレイク

–企業側講師(実践、ノウハウ)と大学側講師(知識、体系)のミックス

• 受講生アンケート–やりがいを感じた(IT経営 100%→100%, シス開

95→100)

–学習目標が達成された(79→100, 80→92)

–後輩に勧めたい(100→100, 85→96)

4

さらなる改善の余地は?

5

教育目標 主な手段 検証

K: 知識 講義

S: スキル 演習

A: 意志・態度

発表

ジャーナル(シス開)、アンケート(IT経営)

事前/事後知識評価

レポート、成果物IT評価

演習の観察

発表、ジャーナル/アンケート確認

※追跡調査

0

1

2

3

4

5

基礎 専門

事前

事後

知識は向上したのか?• 共通キャリアスキルFWに基づく自己評価約40項目

– 0: 知らない~ 3: 実行できる~ 5: 評価できる– 基礎系(意思疎通など)、専門系(ITガバナンスなど)

• 両講座とも概ね3程度に到達– シス開の基礎系で最大の伸び、チーム演習効果– ただし、チームでばらつきあり

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0

1

2

3

4

5

基礎 専門

事前

事後

IT経営 (15名) シス開(26名)

0

0.5

1

1.5

2

X Y Z

基本

専門

0

0.5

1

1.5

2

A B C D E F

基本

専門

チームあたり知識増

平均

演習は効果的であったか?• 活発さのメトリクスとして3分あたり発言回数を測定

– 日ごとに打ち解けて議論が活発化、最後にまとめ– チームのばらつき大きい。知識増分とも関係?– 前半、中盤、後半

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0

50

100

150

200

X Y Z

0

50

100

150

200

A B C D E F

チームあたり発言数

0

5

10

15

20

25

30

10分 30分 60分 10分 30分 60分 10分 30分 60分 90分

1日目 2日目 3日目 4日目

A

B

C

D

E

F

0

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10

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10分

30分

60分

10分

30分

60分

10分

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60分

10分

30分

60分

10分

30分

60分

1日目 2日目 3日目 4日目 5日目

X

Y

Z

IT経営 シス開

Research Questions

• 目的: IT経営・システム開発教育上の効率や効果に影響する要因を特定し、将来の改善や他組織での効果的教育に貢献したい。

• 特に、チーム構成の最適化による教育効果の最大化。

• Q1: 議論が活発であることが重要。つまり、チーム演習での発言回数が多いほど、知識や技術を獲得。

• Q2: チーム構成が生産性に影響。問題発見(発散)と解決(収束)の両者が必要。つまり、補完型チームほど発言回数が多く、知識や技術を獲得。– 同質型: 迅速、一つの意見に固執

– 補完型: 慎重、多様な意見、役割分担

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Q1. 知識と発言回数の関係は?• 基礎系の伸びと発言回数に関係の可能性

– データ数、「シス開発」の知識項目

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130 140 150 160 170 180

0.5

0.7

0.9

1.1

Talk

Kno

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1.6

1.8

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120 140 160 180

0.8

1.0

1.2

Talk

Kno

wle

dge

IT経営・発言数 シス開・発言数

基礎系

専門系

全て

チーム構成をどのように把握するのか?

• 様々なモデル– FFS(Five Factors & Stress)[小林01]: 特徴定量化– ハーマンモデル [Herrman00]

• FFS理論– 30問アンケートによる傾向特定: 可変、内外– 例: 嫌なことがあると黙ってしまう(4段階回答)

10[Herrman00] Ned Herrman, “ハーマンモデル-個人と組織の価値想像力開発-”, 2000

変化

安定

外部情報吸収

内部情報・経験凝集

リーダ

アンカー

タグボート

マネージャ

[小林01] 小林恵知, “チームマネージメント”, 2001

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0

5

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15

20

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実際のチーム構成は?

11

-20

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

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-20 -10 0 10 20

• チームはもともと無作為に構成

X

IT経営Y

Z

シス開

A

B

C

D

E

F

変化

安定

外部情報吸収

内部情報・経験凝集

リーダ

アンカー

タグボート

マネージャ

Q2. チーム構成と知識、発言回数の関係は?

12

知識増分

発言回数

知識増分

発言回数

内部情報・平均

内部情報・標準偏差

変化・平均

変化・標準偏差

IT経営

シス開

何が分かったのか?Q1:発言回数が多いほど知識獲得?

• 発言回数が多いほど、基礎系の知識を獲得している可能性

Q2: 補完型チームほど発言回数が多く、知識獲得?

• 内部情報を定着させる傾向が強いほど(リーダ、アンカー)

– 共通: 知識獲得

• 内部/外部情報の扱いが多様なほど

– IT経営: 知識獲得が少ない

– シス開: 知識獲得が多く、発言も多い

• 変化/安定性の程度は

– 共通: 知識獲得や発言に影響しない

• 変化/安定性の程度が多様なほど

– IT経営: (影響なし)

– シス開: 発言は少ない 13

変化

安定

外部情報吸収

内部情報・経験凝集

リーダ

アンカー

タグボート

マネージャ

課題と期待• チーム構成を事前設計することで教育効果を上げられる可能性あり– Threats to Validity: 個人、欠損値、データ数、知識項目

– IT経営とシス開では、チーム構成が発言や知識獲得にもたらす影響に相違あり、継続調査→ 最適チーム構成へ

• 講座内容のさらなる改善、Attitude の変化– チームビルディング部分の見直しと演習時間拡大

– より現実に近い設定(客先の別部屋、人数制限など)

– 継続的なプロジェクト機会、「意思・態度」の継続調査

• 期待– 将来の就職先や大学院における知識、技術の活用

– 進路を考えるきっかけ

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企業側のご協力を得て2012年度以降も引き続き実施してまいりたいと思います。

ありがとうございました。

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何をしてきたのか?• 09年10月 経済産業省の委託事業「IT人材育成強化加速事業」に参画し、設置計画

• 09年11月 カリキュラム補完(A)・実施方法の決定

• 09年12月~10年3月 既存研修拡張による内容開発

• 10年4月~10年7月 履修募集、実施方法の確認

• 10年8月30日~9月10日 2講座の実施

• 11年4月~11年7月 履修募集、実施方法の改善

• 11年8月22日~9月2日 2講座の実施

• 11年10月~ 教育方法の研究

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なぜ設置したのか?

17

実装

方式設計

要求分析

要求定義

結合

検証

移行

妥当性確認

意思決定 リスク管理 構成管理

プロジェクト計測

プロジェクトアセスメント

プロジェクト制御

ソフトウェア作成

ハードウェア作成

運用者教育訓練

処分

保守

運用

ソフトウェア工学

プログラミング

情報社会論

IT経営プロジェクト基礎

システム開発プロジェクト基礎

学習ジャーナルとは?学習目標

・演習を通じて修得を目指す「知識」や「スキル」をできるだけ具体的に記してください。

・自分の意見を相手に詳しく伝える力・SEの普段行っている業務についての知識・プレゼンする能力・図示する能力・チームをマネジメントする力・先を見据える力

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学習実績と成果 ・目標に対する学習実績とその成果を記してください。・自分の意見を相手に伝えることにより、チーム全体で自分の意見を共有することができた。・普段SEが行っている、ヒアリング、要件定義等に関して知識がついた。・自分の担当している項目に関しては、きちんとプレゼンすることができた。・システムの概要図を書くことに、自分の図示化する能力を上げることができた。・自分の担当のフェーズになった時にきちんとマネジメントすることができた。・発表という納期までに成果物やプレゼンの準備することができた。

気づき/振り返り・演習を通じて気づいたことや改善を要する事項について所感を記してください。

他の班の発表で自分が気が付かないような項目に関して、言及していたので参考になった。人を惹きつけるようなプレゼンのやり方を学んだ。システム開発において、何が重要なことなことなのかを理解することができた。わからなかった事項、用語など

・不明点を自分で調べて記してください。

Push型提案営業 : 営業マンが、見込み客リストを基に、アプローチし、人間関係を構築し、ヒアリング(コミュニケーシン)、プレゼンテーション、クロージングする営業アウトソーサー : 外部の専門業者

実施前のカリキュラム

• 充実

–計算機、情報システムの要素技術

–計算機アーキテクチャ、ネットワーク、ソフトウェア工学、プログラミング、DB ・・・

–問題解決

• やや不足

–要素技術が情報システムに関する企業活動の中でどのように使われるのか

–必要なヒューマンスキルは何か

–問題発見 19

システムライフサイクルプロセスとカリキュラム体系 Before

3

実装

方式設計

要求分析

要求定義

結合

検証

移行

妥当性確認

意思決定 リスク管理 構成管理

プロジェクト計測

プロジェクトアセスメント

プロジェクト制御

ソフトウェア作成

ハードウェア作成

運用者教育訓練

処分

保守

運用

ソフトウェア工学

プログラミング

情報社会論

プロジェクト研究

• 1日目

– チームビルディング

– 経営改革の必要性

– SWOT分析とあるべき姿の抽出

– あるべき姿の設定とCSFおよびIT課題の抽出

• 2日目

– IT戦略策定

– IT成熟度評価と業務プロセスの改革

– IT戦略企画書

• 3日目

– IT調達

– RFPの発行と提案評価方法、基準の設定

– IT調達の準備と実施

• 4日目

– ITサービス導入・プロジェクトとPM

– ITサービス導入に関する諸問題

– ITサービス導入に関する諸問題への対処

• 5日目

– ITサービス活用

– モニタリングとコントロール

– IT経営のまとめ

• 1日目

– システム開発概論

– プロジェクトマネジメント

• 2日目

– プロジェクトの立ち上げと基本計画

– 要求分析の手順

– システム要件定義の手順

• 3日目

– 要求分析演習(ヒアリング調査の準備)

– システム要件定義演習(要件定義書の作成)

– システム要件定義演習(要求事項の整理)

• 4日目

– システム要件定義演習(要件定義書の作成)

– システム設計の手順

– システム設計演習(機能設計)

• 5日目

– システム設計演習(ユーザインタフェース設計)

– 品質管理

– プロジェクト完了報告21

IT経営プロジェクト基礎 システム開発プロジェクト基礎

講座の一コマ: 建材受発注システム• 午前

– ユーザー企業担当者(講師)に要件インタビュー– 要件定義に落とし込み

• 午後– 画面遷移図やトップ画面の作成– 発表、議論、企業担当者からの指摘

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商品番号の直打ちはできないのか?

このチェックボックスは何に使うのか?

具体的な感想

• 受講生– チームワークの体験を通じた他者の意見を聞く姿勢やコミュニケーションの大切さに気がついた

– チーム発表と相互評価を通じた表現方法を習得できた– ほぼ実例によるIT戦略やシステム開発のプロセスや方法を体験・習得できた

– ※演習や発表時間が不足していた

• 講師– 「顧客の存在」を通じて、社会で技術を活用することのやりがいとともに、その難しさを感じてもらえた(企業側)

– 気づきを自身の表現で発表するなど予想を超えた習得が見られた(企業側)

– 産業界からの支援が極めて有効(大学側)

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