iot向けsocの消費電力を削減するipソリューション ·...

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IoT 機器向け SoC のアーキテクチャ 9 急速に台頭する IoT 市場では今、投資とイノベーションが盛んに行われてい ます。Gartner ® 社の予測では、既存機器を「スマート化」した製品と、まっ たく新しいタイプの製品を合わせたIoT機器全体の出荷数が2020年には 200 ~ 250 億台に達すると見られています。 これまでのIoTエッジ機器(実際の「モノ」に対するセンシング、計測、制御 を実行するアプリケーション)は、モバイル、車載、PC周辺機器向けに開 発された技術を流用していました。しかし近年、時間、人材、投資、リソー スがこの分野に集中するのに伴い、IoT にさらなる革新の機運が高まってい ます。IoT 市場は非常に細分化されていますが、市場での勝利を左右する鍵 を握るいくつかの要因があります。フィットネス / 健康関連のウェアラブ ル機器、インフォテインメント、M2M(Machine-to-Machine)機器などの 新しいアプリケーションで特に顕著ですが、物理的なサイズと消費電力とい う 2 つの設計制約がそれです。消費電力の制約を満たすには、現在のモバイ ル、車載、PC周辺機器向けSoCで使われている手法をはるかにしのぐ、新 しいローパワー手法を導入して消費電力の更なる削減を図り、長時間のバッ テリ動作を実現する必要があります。 IoT機器向けに開発されているSoCアーキテクチャを大別すると、アプリ ケーション・プロセッサ(ハイエンド)、マイクロコントローラ(ローエンド)、 スマート・アナログの3種類があります(図1)。 ハイエンドの「エッジ」IoTアプリケーションは、一般にMMU内蔵プロセッ サ・コア、外部DRAM、LCDコントローラ、GPUなどで構成される伝統的 なスマートフォン / タブレットのアーキテクチャを利用しています。これ ら機器の機能はほぼ共通しているため、Android™または Linux ® オペレー シノプシス IoT 戦略マーケティング担当マネージャ Ron Lowman IoT 向け SoC の消費電力を削減する IP ソリューション 図 1. IoT 機器のアーキテクチャの比較 急速に台頭するIoT(Internet of Things)市場におけるローパワー設計のトレンド、そしてIoTアプリケーション向けSoCの消費電力削減 に向けたシノプシスのIP開発の取り組みについて、シノプシス、IoT戦略マーケティング担当マネージャ、Ron Lowmanがご説明します。 ティング・システムを利用でき、IoTソフトウェア開発者は潤沢なメモリー・ リソースを利用できます。このクラスのエッジ機器では、28nm プロセス技 術が最も一般的な選択肢となっています。 ローエンドのエッジ・アプリケーション向けSoCではマイクロコントローラ・ ベースのアーキテクチャが一般的で、プロセス・レイヤの追加が不要な組込 みフラッシュ(eFlash)または低コスト / 低消費電力の不揮発性メモリー (NVM)を組み合わせます。これらの機器はメモリー・リソースに制約があり、 多くの場合リアルタイム制御が必要とされるため、一般的なLinuxや AndroidではなくリアルタイムOS(RTOS)を実行する必要があります。エッ ジ機器をインターネットに接続する手段として低消費電力の無線機能も統合 されていますが、これらは組込みフラッシュ・テクノロジ・プロセスで製造 されます。現在、これらのプロセスは90nm世代のミックスドシグナル SoCをサポートしていますが、現在は55nmプロセスに対応したワイヤレス・ コネクティビティ IP の選択肢を複数提供するファウンダリが増えています。 55nmは40nmや28nmに比べアナログ性能の優位性があるため、このプ ロセスが次のメインストリーム・プロセスになると予想されています。 センサーなどアナログ主体の IC にインテリジェンスを追加する場合、これ まではPCBまたはシステム・アーキテクチャにマイクロコントローラやア プリケーション・プロセッサを追加する必要がありました。しかし、プロセッ サ・コア、NVM、MEMSセンサー、パワー・マネジメント・デバイス、そ の他のアナログ・デバイスを密結合してリアルタイム制御を実行した方が 全体的なシステム・コストの削減と効率および柔軟性の向上を実現できま す。これらのデバイスはアナログが主体であり、スリープおよびオフ状態 でのリーク電流を最適化しているため、現在は主に180nmなどの成熟し たプロセス技術で開発されていますが、今後はより先端プロセスへの移行 が予想されます。 ハイエンド・エッジ機器 無線(WiFi、 Bluetooth) 10 / 100 / 1G Ethernet LPDDR2 / 3 外部 フラッシュ メモリー コントローラ ディスプレイ MIPI ® ARM ® Cortex ® -A SD / MMC UART システム ロジック SRAM GPIO USB 2.0 ホスト OTG (充電検出 対応) センサー・サブシステム ARC EM コプロセッサ I 2 C SPI NVM ROM ADC PWM / タイマー DDR、MMU付きアプリケーション・プロセッサ、LCD / GPU 65nm → 28nm(一部40nm) Linux、Android WiFi™、Bluetooth ® Smart Ready ローエンド・エッジ機器 無線(Bluetooth Smart / 802.15.4) UART ARM Cortex-M 内蔵フラッシュ GPIO USB ホスト OTG (充電検出 対応) センサー・サブシステム ARC EM プロセッサ I 2 C SPI MTP / EEPROM ROM SRAM ADC / コンパ レータ DAC / PWM / タイマー IP:eFlash、NVM 90nm → 55nm(一部40nm) RTOS:FreeRTOS™、Contiki、MQX™ Bluetooth Smart、802.15.4 スマート・アナログ機器 無線(ISM、802.15.4、Bluetooth Smart) オーディオ システム・ロジック NVM 電源 センサー センサー・サブシステム ARC EM プロセッサ I 2 C SPI ROM SRAM ADC / コンパレータ IP:電源、オーディオ、センサー 180nm(一部130 / 110 / 90nm) RTOS:なし、制限付き RTOS Bluetooth Smart、802.15.4 など Support Q&A 検証編 Support Q&A フィジカル編 Support Q&A 論理合成編 News Release ニュースリリース Synopsys + Coverity IoT特集 Technology Update 最新技術情報 Customer Highlight What's New in DesignWare IP? IoT 特集 最新技術情報 Technology Update Success Story

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Page 1: IoT向けSoCの消費電力を削減するIPソリューション · 社のスマートウォッチは300mAhバッテリで約2日間の動作が可能とされ ていますが、これは補聴器なら22日程度動作が可能なバッテリ容量に相当

IoT機器向けSoCのアーキテクチャ

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急速に台頭するIoT市場では今、投資とイノベーションが盛んに行われています。Gartner®社の予測では、既存機器を「スマート化」した製品と、まったく新しいタイプの製品を合わせたIoT機器全体の出荷数が2020年には200 ~ 250億台に達すると見られています。

これまでのIoTエッジ機器(実際の「モノ」に対するセンシング、計測、制御を実行するアプリケーション)は、モバイル、車載、PC周辺機器向けに開発された技術を流用していました。しかし近年、時間、人材、投資、リソースがこの分野に集中するのに伴い、IoTにさらなる革新の機運が高まっています。IoT市場は非常に細分化されていますが、市場での勝利を左右する鍵を握るいくつかの要因があります。フィットネス / 健康関連のウェアラブル機器、インフォテインメント、M2M(Machine-to-Machine)機器などの新しいアプリケーションで特に顕著ですが、物理的なサイズと消費電力という2つの設計制約がそれです。消費電力の制約を満たすには、現在のモバイル、車載、PC周辺機器向けSoCで使われている手法をはるかにしのぐ、新しいローパワー手法を導入して消費電力の更なる削減を図り、長時間のバッテリ動作を実現する必要があります。

IoT機器向けに開発されているSoCアーキテクチャを大別すると、アプリケーション・プロセッサ(ハイエンド)、マイクロコントローラ(ローエンド)、スマート・アナログの3種類があります(図1)。

ハイエンドの「エッジ」IoTアプリケーションは、一般にMMU内蔵プロセッサ・コア、外部DRAM、LCDコントローラ、GPUなどで構成される伝統的なスマートフォン / タブレットのアーキテクチャを利用しています。これら機器の機能はほぼ共通しているため、Android™またはLinux® オペレー

シノプシス IoT戦略マーケティング担当マネージャ Ron Lowman

IoT向けSoCの消費電力を削減するIPソリューション

図1. IoT機器のアーキテクチャの比較

急速に台頭するIoT(Internet of Things)市場におけるローパワー設計のトレンド、そしてIoTアプリケーション向けSoCの消費電力削減に向けたシノプシスのIP開発の取り組みについて、シノプシス、IoT戦略マーケティング担当マネージャ、Ron Lowmanがご説明します。

ティング・システムを利用でき、IoTソフトウェア開発者は潤沢なメモリー・リソースを利用できます。このクラスのエッジ機器では、28nmプロセス技術が最も一般的な選択肢となっています。

ローエンドのエッジ・アプリケーション向けSoCではマイクロコントローラ・ベースのアーキテクチャが一般的で、プロセス・レイヤの追加が不要な組込みフラッシュ(eFlash)または低コスト / 低消費電力の不揮発性メモリー

(NVM)を組み合わせます。これらの機器はメモリー・リソースに制約があり、多くの場合リアルタイム制御が必要とされるため、一般的なLinuxやAndroidではなくリアルタイムOS(RTOS)を実行する必要があります。エッジ機器をインターネットに接続する手段として低消費電力の無線機能も統合されていますが、これらは組込みフラッシュ・テクノロジ・プロセスで製造されます。現在、これらのプロセスは90nm世代のミックスドシグナルSoCをサポートしていますが、現在は55nmプロセスに対応したワイヤレス・コネクティビティ IPの選択肢を複数提供するファウンダリが増えています。55nmは40nmや28nmに比べアナログ性能の優位性があるため、このプロセスが次のメインストリーム・プロセスになると予想されています。

センサーなどアナログ主体のICにインテリジェンスを追加する場合、これまではPCBまたはシステム・アーキテクチャにマイクロコントローラやアプリケーション・プロセッサを追加する必要がありました。しかし、プロセッサ・コア、NVM、MEMSセンサー、パワー・マネジメント・デバイス、その他のアナログ・デバイスを密結合してリアルタイム制御を実行した方が全体的なシステム・コストの削減と効率および柔軟性の向上を実現できます。これらのデバイスはアナログが主体であり、スリープおよびオフ状態でのリーク電流を最適化しているため、現在は主に180nmなどの成熟したプロセス技術で開発されていますが、今後はより先端プロセスへの移行が予想されます。

ハイエンド・エッジ機器

無線(WiFi、Bluetooth)

10 / 100 /1G

EthernetLPDDR2 / 3

外部フラッシュメモリー

コントローラ

ディスプレイ

MIPI®ARM® Cortex®-A SD /

MMC

UART システムロジック SRAM

GPIO

USB 2.0ホストOTG(充電検出

対応)

センサー・サブシステム

ARC EMコプロセッサ

I2C SPI

NVM ROM

ADC PWM / タイマー

DDR、MMU付きアプリケーション・プロセッサ、LCD / GPU 65nm → 28nm(一部40nm) Linux、Android WiFi™、Bluetooth® Smart Ready

ローエンド・エッジ機器

無線(Bluetooth Smart / 802.15.4)

UART ARM Cortex-M 内蔵フラッシュ

GPIO

USBホストOTG

(充電検出対応)

センサー・サブシステム

ARC EMプロセッサ

I2C SPI

MTP / EEPROM

ROM SRAM

ADC / コンパレータ

DAC / PWM / タイマー

IP:eFlash、NVM 90nm → 55nm(一部40nm) RTOS:FreeRTOS™、Contiki、MQX™ Bluetooth Smart、802.15.4

スマート・アナログ機器

無線(ISM、802.15.4、Bluetooth Smart)

オーディオシステム・ロジック NVM

電源

センサー

センサー・サブシステム

ARC EMプロセッサ

I2C SPI

ROM

SRAM

ADC / コンパレータ

IP:電源、オーディオ、センサー 180nm(一部130 / 110 / 90nm) RTOS:なし、制限付きRTOS Bluetooth Smart、802.15.4など

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Page 2: IoT向けSoCの消費電力を削減するIPソリューション · 社のスマートウォッチは300mAhバッテリで約2日間の動作が可能とされ ていますが、これは補聴器なら22日程度動作が可能なバッテリ容量に相当

電力効率に優れたIoT向けIP

IoT機器の電源

IoT機器の消費電力の削減

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スマートフォンは大画面化の傾向に伴い、より大型で大容量のバッテリを内蔵できるようになっているため、SoCを最適化して消費電力を極限まで削減する必要性は薄らいでいます。また、車載機器は12Vの鉛バッテリを電源として利用できます。USB接続タイプの機器はもちろんUSBケーブルからの給電が可能です。しかしIoTアプリケーションの場合、このような好条件に恵まれることは多くありません。一般的なIoTアプリケーションはスペースの制約上、大型のバッテリを搭載できず、場合によっては25年ものバッテリ寿命が要求されることもあります。そしてなおかつ、スマートウォッチの場合にはテキスト・メッセージング、音声、グラフィックスの機能に加え、クワッド・コプター Droneに接続するための無線機能なども求められます。バッテリ技術も徐々には進歩していますが、何か大きな特徴を持ったIoT機器を設計しようとすると、システム全体で消費電力を最小化することが鍵となります。

たとえばGoogle™ Glass™は570mAhバッテリで約1日の動作、Samsung社のスマートウォッチは300mAhバッテリで約2日間の動作が可能とされていますが、これは補聴器なら22日程度動作が可能なバッテリ容量に相当します。

図2は、一般的なIoTアプリケーションの電力消費プロファイル(ピンク)と削減目標(グレー)を示したものです。ここでは、それぞれの四角形の面積を小さくすることが目標となります。そのためには、各機能のピーク消費電力

(実際の仕事量)を削減すると同時に、各タスクの実行時間を短くする必要があります。

次世代IoT製品で求められる消費電力の目標を達成するには、当然、これまでのモバイル機器を遥かにしのぐ省電力化が必要です。しかし実際の電力消費プロファイルはアプリケーションによって大きく異なります。たとえば音声起動機能や電源などのアプリケーションでは「常時オン」の状態がほとんどの時間を占めます。これに対し、動きや炎の検出といった環境センサー・アプリケーションではオフの状態が99%の時間を占めます。これらは極端な例ですが、その他のアプリケーションも電力消費プロファイルはさまざまです。

機器の消費電力の大半をダイナミック・パワーが占めている場合は、Vddを極力削減するというアプローチが効果的です。スタティック・パワーが大半を占める場合は、動作当たりのリーク電流を抑えることがより重要になってきます。

プロセス技術に関しては、必要な処理性能を確保しつつリーク削減と低電圧化を実現したIoT向けのプロセス技術がファウンダリ各社から提供されるなど、IoTアプリケーション向けSoCに対して最近の投資の成果が現れつつあります。

設計面では、モバイルやその他の機器ではクロック / パワー・ゲーティング、マルチVdd、DVFS、逆バイアス制御などの高度な手法が利用されてきました。IoTの場合はこれに加え、スマート・バイアス制御やサブスレッショルド / ニアスレッショルド回路が利用されるほか、マルチVddのシャットダウンおよびパワー・ドメインをより広範に適用して大幅な消費電力削減目標を達成する必要があります。パワー・インテントの一貫した解釈、パワー・ネットワーク合成およびデザイン内レールの効果的な解析、最適な低Vtの使用、消費電力を考慮した包括的なフォーマルおよびスタティック検証のための効果的なツールが必要となります。

このように、プロセス技術と設計手法の両面でモバイル市場をはるかにしのぐ進歩、イノベーション、新しい投資があり、新しいIoT製品は間違いなく目標とする消費電力の達成に近づくでしょう。しかし、本当の意味でIoTアプリケーションに適した競争力のあるSoCを開発しようとするなら、IoTアプリケーションに特化した設計によって差別化を図ったIPおよび統合型IPサブシステムを使用する必要があります。

ロジック・ライブラリ、組込みメモリー、不揮発性メモリー

モバイル機器で電力効率の高いSoCをインプリメントするには、ローパワー・ロジック・ライブラリおよびメモリー・コンパイラの使用が欠かせません。IoT機器ではこれに加え、高度なローパワー機能、「常時オン」ライブラリ、低電圧メモリーおよびライブラリ、テスト / リペア内蔵の組込みフラッシュ、超低消費電力NVM IP、マルチチャネル長のマルチビット・フリップフロップ、電力最適化キットも利用します。

効率的なプロセッサ・コアとIPサブシステム

消費電力の効果的な削減方法の1つとして、タスクの実行にかかる時間を短縮するというアプローチがあります。コプロセッサおよび専用ハードウェアを使って特定機能を実行すると、全体的な時間を短縮できます。また、特定の機能を実行するのに必要な動作周波数とメモリー容量も消費電力に大きく影響します。この場合、より高性能なプロセッサおよび緊密に統合されたサブシステムを使用し、1サイクルで完了できる仕事量を増やすと、システムおよびデザインの全体的なコストを削減できます。コプロセッサ、より効率的なプロセッサ、カスタム・ハードウェアを利用すると、機能の実行に必要な動作周波数とメモリー要件が緩和されるため、非常に大きなメリットがあります。これらは、音声、ビジョン、モーター制御、電源変換、フィルタリング、オーディオなど現在の多くのアプリケーションに効果があります。

また、統合型のIPサブシステムではアーキテクチャ内部のウェイト・ステートが大幅に削減されるとともに、タスクの実行に必要な全体的なダイ面積も最適化されるため、IoTアプリケーション設計での利用が拡大しています。このような方法で処理性能を向上させると、高度な算術演算や非常に厳密なタイミング制御が必要なアプリケーション、あるいは「常時オン」の機能をサポートする必要のあるアプリケーションでは、単なる周波数の向上やパイプライン段数の増加に頼るよりも大幅に消費電力を削減できます。また、検針、医療、パワー・マネジメントなど、個々のアプリケーションに応じたアナログ・インターフェイスを利用して機能を管理すると、分解能や変換レートの向上によってシステムの制御性と効率を高めることができます。

インターフェイスIP

ローパワー DDR、カメラ / ディスプレイ用のMIPI、Ethernet、バッテリ充電およびパワーダウン機能をサポートしたUSBなど、もともとモバイルおよびネットワーキング市場向けに設計された標準インターフェイスの多くがIoT設計でも効果的に使われています。

前ページより続く

図2. 一般的なIoT機器の電力消費プロファイル

電流

起動 センシング 制御 通信

時間

スタンバイ

スタンバイ

スタンバイ

スタンバイ

IoT向けSoCの消費電力を削減するIPソリューションIoT特集

(mA)

Page 3: IoT向けSoCの消費電力を削減するIPソリューション · 社のスマートウォッチは300mAhバッテリで約2日間の動作が可能とされ ていますが、これは補聴器なら22日程度動作が可能なバッテリ容量に相当

まとめ

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詳細情報• ウェブページ:シノプシスのIoT向けIP http://www.synopsys.com/IP/market-segments/iot• データシート:DesignWare IP for IoT SoC Designs http://www.synopsys.com/dw/doc.php/ds/o/internet_of_things_brochure.pdf

著者紹介Ron Lowman:シノプシスのIoT戦略マーケティング担当マネージャ。シノプシス入社前はフリースケール社に16年間勤務し、最近まで同社のマイクロコントローラ部門で産業ビジネス開発担当マネージャ、および産業用MCU / デジタル・シグナル・コントローラのプロダクト・マーケティング担当マネージャとして活躍。これまでにプロダクト・マネジメント / マーケティング、戦略的テクノロジ / ビジネス・オペレーション、車載製品 / テスト・エンジニア、ファクトリ・オートメーション制御エンジニア、ファウンダリ・プロセス・エンジニアなどのエンジニアリング職を経験。コロラド・スクール・オブ・マインズにて電気工学の学士号、テキサス大学オースティン校にて経営学修士号を取得。

ピーク電流レベルとタスク実行時間をさらに削減するため、新しいウェイクアップ機能、より柔軟なスリープ・モード、インターオペラビリティに優れた狭帯域無線をインプリメントしたIoTアプリケーションも増えています。

図3は、一般的なIoTアプリケーション電力消費プロファイルにおいて、各機能の消費電力を削減する代表的な手法をまとめたものです。これには、以下のものが含まれます。

1. 起動時にはメモリーへの読み込み時間を長くしてスタートアップ電流を削減するか、ブートローダを従来の方法でフェッチするのではなくROMから読み込むようにするオプションを用意すれば消費電力を削減できます

2. 起動後から最初のセンシングおよび計測 / 計算を実行するまでの間、より柔軟なローパワー・モードをサポートすることにより、必要なモジュールを確実に動作させつつ、なるべく消費電力の少ないモードを使用することができます

3. センシングおよび計測中は、サイクルおよびウェイト・ステートの数を減らすことで消費電力を削減できます。分解能や変換レートの向上といったアナログ計測機能を改善すると同時に、これらのインターフェイスと効率的なプロセッサ・コアを統合型サブシステムとして密結合することで、これらのデータ処理に必要なサイクル数が削減され、全体的なシステム制御の改善と消費電力の削減が実現します

4. 複雑な算術演算を最小限の動作周波数で、なおかつ最短時間で処理することで消費電力を削減できます。この効率的な処理能力と改良されたセンシング機能を組み合わせることにより、システムの電気部品だけでなく機械部品のコストも削減できます。たとえばモーターのベクトル制御によって数十年前に比べると制御性が向上し、モーターの小型化が進んでいます。これはクワッド・コプター Droneのような新しいアプリケーションだけでなく、アプライアンス、公益事業、工場などで使われる従来型のポンプにもメリットがあります

5. 通信を行うタイミングとデータ・ペイロード量を適切に調整することで、アプリケーションの消費電力を削減できます

6. 最後に、必要な回路のみを「常時オン」としてそれ以外を適切なスリー プ状態にすること、さらにはローパワー IPメソドロジを使ってリーク電流を最小限に抑えることで、消費電力の最適化を図ることができます

しかしIoTアプリケーションでは消費電力の削減だけを追求していればよいわけではありません。これ以外にも、機能の集積によるシステム・コスト削減、コネクティビティとセキュリティの強化、部品調達コストの簡略化、使い勝手の向上、厳しさを増すプロジェクト・スケジュールへの対応、製品の早期市場投入など多くの課題に対処する必要があります。

IPに対する要件は個々のアプリケーションによって千差万別ですが、シリコン一発完動を達成して製品をいち早く市場に投入するには、豊富な実績を持つ低消費電力でロバストなIPソリューションが必要であることは確かです。

動きが速く細分化されたIoT市場では、ウェアラブル・インフォテインメント、フィットネス / 健康、スマート・アプライアンス、照明、セキュリティ、決済端末装置など、新しい製品やアプリケーションが無数に登場しています。これらのアプリケーションで消費電力を抑えて長時間のバッテリ動作を可能にするには、革新的な設計手法および新旧のプロセス技術を使用する必要があります。

Gartner社およびIDC社の調べでは、IoT市場は2020年に出荷数ベースで200 ~ 250億台規模に達すると予測されており、多くの半導体メーカーがこの市場で新しいビジネス・チャンスをうかがっています。しかし、リスクを大幅に抑えて製品開発期間を短縮し、いち早く市場投入を果たすには、IoTアプリケーションのニーズに特化して設計されたIPが欠かせません。IoT機器ではSoCの消費電力に対するリスク・マネジメントが非常に重要になってきます。シノプシスは、エコシステム・パートナーとの緊密な協力を通じ、IoT市場とその促進要因およびトレンドについて理解を深めてきました。

IoT市場で要求される低消費電力と高集積の条件を満たすため、シノプシスはIoTアプリケーションに最適化したDesignWare IPを包括的に提供しています。シノプシスのIPは、ハイエンドのアプリケーション・プロセッサ、ローエンドのマイクロコントローラ、スマート・アナログなどの一般的なIoT向けSoCアーキテクチャのニーズを満たすように設計されています。これらIPには、シリコン実証済みのインターフェイスIPおよびアナログIP、低消費電力の組込みメモリーおよびロジック・ライブラリ、電力効率に優れたプロセッサ・コアおよび統合型ハードウェア / ソフトウェアIPサブシステムなどが含まれます。これらのIPソリューションは、酸化膜の厚みを増した「常時オン」ライブラリ、テスト / リペアを内蔵した組込みフラッシュ、ローパワー・インターフェイスIP、性能と消費電力と面積を最適化したプロセッサ、統合型のセンサーおよび制御IPサブシステムなどの機能によって差別化を図っています。

IoTに特化して設計されたIPを採用することで、設計チームは消費電力の削減、コネクティビティの追加、センサーおよび通信インターフェイスの改善が可能となり、この結果、リスクを抑えて短期間で設計目標を達成できるようになります。

図3. IoTのローパワー手法

起動 センシング 制御 通信

時間

スタンバイ

スタンバイ

スタンバイ

スタンバイ

低消費電力のメモリー (ROM、NVM)

クラス最高のADC センサー サブシステム

効率的なコア サブシステム HWアクセラレータ

柔軟な電力モード 低電圧動作

プロセス技術 ロジック ライブラリ メモリー コンパイラ キープアライブ メモリー

超低消費電力モード 設計手法 低消費電力ロジック ライブラリ

Support Q

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検証

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A論

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成編

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ース

Synopsys

+ Coverity

IoT特集

Technology Update

最新

技術

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are IP?S

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電流

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