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平成28年度 IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 (鉱山開発におけるIoT推進による生産性・安全性向上策に関する基礎調査) 成果報告書 株式会社日立総合計画研究所

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Page 1: IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 ( …CODELCOは、ITインフラの整備によって集中管理・モニタリング・自動化を目指した取組

平成28年度 IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業

(鉱山開発におけるIoT推進による生産性・安全性向上策に関する基礎調査)

成果報告書

株式会社日立総合計画研究所

Page 2: IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 ( …CODELCOは、ITインフラの整備によって集中管理・モニタリング・自動化を目指した取組

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目次

1.鉱山開発におけるIT/IoT推進の必要性

2.鉱山開発におけるIT/IoT推進の先端事例(豪州)

3.鉱山開発における各プロセスの課題とIT/IoT導入状況

4.鉱山開発におけるIT/IoT推進に関する技術的課題の検討

5.鉱山開発におけるIoT推進に関する環境整備

6.まとめ

7.参考資料

Page 3: IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 ( …CODELCOは、ITインフラの整備によって集中管理・モニタリング・自動化を目指した取組

1.鉱山開発におけるIT/IoT推進の必要性

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1.1 鉱石品位と鉱山開発コストの動向

近年の鉱山開発プロジェクトは、鉱石の品位低下・複雑化、鉱山の深部化・奥地化 等によって開発投資コストが増大傾向。

鉱山開発における生産性向上に対する取組は必要不可欠。

<鉱山開発コスト>

(出典)公表データに基づき、JOGMEC作成

<鉱石品位>

(出典)Wood Mackenzie

鉱石品位の低下 投資コスト

上昇

鉱石品位の高い鉱山を優先して開発されていることから、年々、鉱石品位が低下している鉱山へと開発案件がシフトしていく傾向がみられる。

左記の鉱石品位の傾向に加え、鉱山の深部化・奥地化等によって、開発投資コストの増大傾向がみられる。

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1.2 資源メジャーによる鉱山オペレーションの効率化への取組

Rio Tintoは、オペレーションセンターや自律型無人走行ダンプトラック等による鉱山オペレーションの効率化を目指した取組『Mine of the Future』を推進。(詳細は、2.2に後述。)

CODELCOは、ITインフラの整備によって集中管理・モニタリング・自動化を目指した取組『Codelco Digital』を開始。Codelco Digitalは、2018年を到達点とした遠大なデジタル化推進プロジェクト。

Codelco Digital による鉱山オペレーション効率化の取組み

ITインフラ • 基礎インフラとして、WAN/LANネットワーク、ワイヤレス環境、ビデオ会議設備、700台のサー

バー、11,000台の無線機、OSI社のPIシステム、SAPのソフトウェアなどを導入

集中管理

• 鉱山オペレーション統合のためAndina鉱山とTeniente鉱山で中央管制室を設置(Control Room Integrated Mining Process)

• コーポレートサポートセンターと集中プラント監視センターをKairos Mining社(CodelcoとHoneywellのジョイントベンチャー)が管理。部門・鉱山を越えた連携し、Codelco Norte、Andina、EI Tenienteの各鉱山オペレーションの統合を目指す

通信 • CodelcoはNTTとジョイントベンチャーを組み、micomo社を設立(Codelco:66%、NTT:34%)

• 高速度の通信で地盤力学の構造・環境に関する変数をモニタリング

自動化

• Honeywellとジョイントベンチャーを組みKairos Mining社(Honeywell:60%、Codelco:40%)設立。選鉱プラントの自動化、制御システムに関するライフサイクルでのサポートを行う

• HighService社、日鉱金属(現JX金属)、KUKA社とジョイントベンチャーを組みMIRS社(HighService:53%、 Codelco:36%、日鉱金属:9%、KURA:2%)設立。採鉱から金属加工までのプロセスにわたりロボティクスソリューションを展開

(出典)CODELCO、Capgemini Consulting公開資料より日立総研作成

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1.3 鉱山分野におけるIT/IoT活用の市場規模

鉱山分野におけるIT/IoT推進に関する市場ポテンシャルは、2015年の38億ドルから2020年に99億ドルに達し、年平均成長率(CAGA; Compound Average Growth Rate)は21%と推測。

IT/IoT推進によって、鉱山開発に変革がもたらされる可能性を示唆。

(出典)Markets and Marketsより日立総研作成

Smart Mining市場規模の算出条件(対象範囲) IoT活用によるSmart Mining市場規模

2015 2020

99億

38億

市場規模 (ドル)

CAGR 21%

【システム・ソリューション】

• 操業データのプロセッシング・解析

• アセット管理の最適化

• ロジスティクスの最適化

• 制御の最適化

• 安全性の向上

• セキュリティの強化

• 遠隔操作監視

【サービス】

• コンサルティング

• システムインテグレーション

• 保守・メンテナンス

【採掘方法】

• 露天掘り

• 坑内堀り

【地域】

• 北米

• 欧州

• アジア大平洋

• 中南米

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2.鉱山開発におけるIT/IoT推進の 先端事例(豪州) 2.1 豪州資源産業の抱える課題 2.2 Rio Tinto先端事例調査

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2.鉱山開発におけるIT/IoT推進の 先端事例(豪州) 2.1 豪州資源産業の抱える課題 2.2 Rio Tinto先端事例調査

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2.1.1 豪州の社会的課題:FLYIN-FLYOUT労働者増大

(出典)perthnow.com, Australian Institute of Family Studiesより日立総研作成

良質な鉱山資源は、都市圏から離れた地域へと年々シフト。

FLY IN/FLY OUT(FIFO)労働者は飛行機で鉱山へ移動し、一定期間泊り込み で労働。

FIFOの増大は豪州資源産業が対処すべき課題

• 資源埋蔵地の遠隔シフトによりFIFO労働者増大

• 豪州クイーンズランド州Bowen BasinおよびSurat Basin地区では2012年現在約31,480人のFIFO労働者

• 豪州西オーストラリア州では2011年現在資源産業90,000人中FIFO労働者は46,800人(52%)。2015年には63,500人(57%)/110,000人まで拡大すると推測

• 企業側にとっては宿舎設備などの投資負担

• 労働者は家族と離れることで精神的負担

◎ FIFOの勤務パターン例

• 飛行機で1時間移動

• 鉱山近傍宿舎で2週間泊り込み

• 飛行機にて帰宅し1週間休養

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2.1.2 鉱山の運搬トラックによる事故犠牲者撲滅は必須

全世界鉱山業界ではトラックドライバの事故犠牲者は年間2~3人以上。

豪州資源会社は『GO HOME SAFE』をスローガンに安全性向上の取組を進める。

(出典)University of British Columbia, Canada, Rio Tinto社公開資料より日立総研作成

人的ミスによる鉱山トラックドライバの全世界犠牲者数は2~3人/年

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2.1.3 人材不足と人件費の課題

鉱山産業の人材不足は、事業運営上の喫緊の課題。

豪州トラックドライバーの人件費は1,000万円以上。利益確保には人件費削減も重要。

人材不足

• 世界鉱山産業では2020年代前半時点で鉱山熟練人材11万人 が不足の見通し

• Rio Tinto社が鉱山自動化を進めたとしても、全世界の鉱山開発に 携わるオペレーション人員は、 2020年までに15万人の確保が必要。

• トラック一台あたりの必要ドライバー数は約4名(交代勤務含む)

• 豪州トラックドライバーの平均給与は約120,000US$(約1,370万円)

• 福利厚生、トレーニング、住宅、鉱山サイトへのFIFO航空代 などを考慮すると、トラック一台あたり、人件費他で年間約1MUS$ (約1億3,700万円)がかかる。 豪州トラック

ドライバ人件費

(出典)Canada Mining Industry Human Resource, 他より日立総研作成

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2.鉱山開発におけるIT/IoT推進の 先端事例(豪州) 2.1 豪州資源産業の抱える課題 2.2 Rio Tinto先端事例調査

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2.2.1 豪州Pilbara地区:Rio Tinto社鉄鉱石の主力鉱山

Rio Tinto社はPilbara地区に16ヶ所の鉱山を保有。

自社保有の総延長1,700Kmの鉄道網を使い港湾へ輸送。混合の後、海外輸出。

① Hamersley Iron社所有鉱山:9ヶ所 出資比率: RT社100% ② Hope Downs地区鉱山:2ヶ所 RT社50、Hancock Prospecting50 ③ Channar Mine RT社60、中国中鋼集団(SINOSTEEL)40 ④ Eastern Range Mine RT社54、上海宝鉱集団46 ⑤ Robe River Iron Associates鉱山:3ヶ所 RT社53、三井物産33、新日鉄住金14

Pilbara地区鉱山 (総面積83,000Km2)

• 総延長1,700Km。RT社専用資産(他社との共有なし) • Hope Downs4から港湾Cape Lambertへの鉄道延長501Km (参考:東京-大阪間の直線距離約400Km)

鉄道

• DampierおよびCape Lambertに4ヶ所(RT社100%資産) • 鉄鉱石最終出荷前の混合プロセスを実施

港湾

• Telstra社の光回線専用線を敷設。さらにバックアップ回線、衛星回線などを保有 通信

(出典)Rio Tinto社公開資料, 現地ヒアリングにより日立総研作成

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2.2.2 大規模に展開するRio Tinto社Pilbara地区のオペレーション

ドリル作業長 12,000Km/日

鉱石移動量 10億トン/年

コンベヤ総延長 400Km

全貨物車輌移動長 15,000Km/日

鉱石輸出量 3億トン/年

地球の直径相当 スタジアム2杯分 ドーバー海峡 トンネル×8倍

シベリア鉄道 往復

パナマ運河 年間貨物通過総量

データで見るRio Tinto社Pilbara地区の大規模オペレーション

ドリル・発破 積載・運搬 破砕 鉄道輸送 出荷

(出典)Rio Tinto社公開資料により日立総研作成

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2.2.3 Rio Tintoによる鉱山オペレーションの効率化への取組

鉱山業界を取り巻く環境が変化する中、2008年に『Mine of the FutureTM』を開始。

掘削作業効率化、環境影響低減、安全性向上を目的に4つのコンポーネントを深化。

Mine of the FutureTMの4つの主要コンポーネント

Mine of

the Future TM

OC

オペレーション センター

(豪州Perth)

ADS

Automated Drilling System

自動ドリルシステム

AHS

Autonomous Haulage System

自律型無人走行 ダンプトラック

AutoHaul®

無人貨物鉄道 運行システム

(出典)Rio Tinto社公開資料により日立総研作成

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2.2.4 未来の鉱山操業を具現化:Mine of the FutureTM

4つのコンポーネント中、OC及びAHSは既に導入済み。

ADS、 AutoHaul®は早期導入に向けた実証実験を継続中。

• 2006年初期コンセプト議論開始。2010年より稼動 • Pilbara地区の全鉱山、積出港、鉄道、港湾などを一地点から監視・一部操作可能 • 鉱山運営にかかわるリアルタイム情報共有の大型画面や視認性確保

• 鉱石の効率的且つ安全な運搬を実現 • オペレータ人件費の抑制、燃費改善などに貢献

• 2000年以降急拡大するPilbara地区鉄鉱石生産能力改善をサポート • 新規鉄道インフラ投資を伴わず鉄道輸送能力を拡大 • 2015年:AutoHaul®搭載の試験機関車により車上システム、信号系、安全機構、OC

との通信システムなどの動作確認済み • 2016年:規制当局の認可作業開始、システム最終作りこみおよびバグだし継続 • 2018年末までに全面導入目標

• Pilbara地区のWest Angelas鉱山にて2008年実証実験実施 • 本格導入に向けて実験継続中

OC オペレーション

センター

AHS 自律型無人

走行ダンプトラック

AutoHaul® 無人貨物鉄道 運行システム

ADS 自動ドリルシステム

(出典)Rio Tinto社公開資料, 現地ヒアリングにより日立総研作成

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2.2.5 自動化・効率化を加速するRio Tinto社の取組み

2007年以降、Rio Tinto社は鉱山の自動化、効率化、情報化の取組を進めている。

AHSに関する実証試験は、2009年に開始。

Atlas Copco社 提携

AHS 実証試験

ドリル支援 (RTVis)

ADS 実証試験

運転席無し ドリル

先進探査 PEC開始 *主要鉱山の

処理プラント監視

OC実証実験 無人鉄道 実証試験

OC開業 コマツ契約 AHS150台

AHS開始 無人鉄道 2014~15年 導入宣言

ADS導入

RT社による鉱山オペレーション自動化効率化に向けた取組み

注:OC=Operation Centre, AHS=Autonomous Haulage System, RTVis= Rio Tinto 3D Visualization System, ADS=Automated Drilling System, PEC=Processing Excellence Centre

(出典)Rio Tinto社公開資料により日立総研作成

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2.2.6 1,500Kmの遠隔地から運営されるPerth OC

OCは、西オーストラリア州Perth空港の近傍に建設。

都市圏且つ空港近隣であり電力供給も安定していることが立地選定の重要条件。

鉱山 処理プラント 鉄道 港湾 ユーティリティ

オペレーションセンター(OC)

集中管理

採掘/処理/品質管理/ロジ/資産管理/ビジネス全体計画

統合的計画および作業スケジューリング

• 24時間運営 • PilbaraからOCの距離:

1,500Km

(出典)Rio Tinto社公開資料, 現地ヒアリングにより日立総研作成

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2.2.7 情報ディスプレイが林立するOCコントロールルーム

コントロールルーム内はディスプレイ装置が林立。

OCコントロールルームオペレータとPilbara鉱区内オペレータ(掘削機、トラック、他)は情報画面を共有しながら直接会話可能。気象情報なども情報共有。

Perth OCのコントロールルーム

(出典)Rio Tinto社公開資料, 現地ヒアリングにより日立総研作成

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2.2.8 AHS導入鉱山:港湾から最遠隔地のHope Downs4

Hope Downs4(以下、HD4)はAHS導入済み3鉱山の内の一つ。年間生産量は約15Mt(2016年)。

AHSの導入によって効率が約15%改善された。

処理プラント

鉱滓ダム

鉱山ピット

貨物積載場

AHSトラック導入済みのHD4全景

(出典)Rio Tinto社公開資料, 現地ヒアリング, Google Mapにより日立総研作成

鉄道

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3.鉱山開発における各プロセスの課題と IT/IoT導入状況 3.1 露天掘り採鉱プロセスにおける課題とIT/IoT導入状況 3.2 坑内掘り採鉱プロセスにおける課題とIT/IoT導入状況 3.3 プラント(破砕~処理)及び輸送プロセスにおける課題と IT/IoT導入状況

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3.鉱山開発における各プロセスの課題と IT/IoT導入状況 3.1 露天掘り採鉱プロセスにおける課題とIT/IoT導入状況 3.2 坑内掘り採鉱プロセスにおける課題とIT/IoT導入状況 3.3 プラント(破砕~選鉱)及び輸送プロセスにおける課題と IT/IoT導入状況

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3.1.1 露天掘り:採鉱プロセスに用いる鉱山機械とIT/IoT化の状況

(出典)鉱山会社およびメーカへのヒアリング、Webサイト情報を基に日立総研作成

露天掘りの各プロセスで用いられる各機械とIT/IoT化の現状

鉱山機械 IT/IoT化

大型ドリル

火薬充填機

大型ショベル

ホイール ローダー

大型ダンプ

タイヤ

ドリル ナビゲーション

地層検知技術 (穿孔音等より)

火薬量自動調整(サイトミキシング)・充填

鉱山車両運行管理システム(FMS)

積載 ナビゲーション 衝突防止カメラ

逸脱防止

疲労感知 ディスパッチ

メンテナンス

効率化

ホイール ローダー 無人化

タイヤモニタリング

無人化

(AHS)

人手で行われること が多い

開発・研究・アイデア段階 普及・商用化段階

無人化

運搬

積載

穿孔

火薬

発破

採掘

プラ ント

輸送

鉱山 開発

露天掘りの鉱山開発において採鉱プロセスに用いられる鉱山機械とIT/IoT化の関係を まとめた。

ショベルとダンプのIT/IoT化が進んでおり、特に、ダンプは無人化が商用化している。

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3.1.2 露天掘り:採掘サポートに用いる鉱山機械とIT/IoT化の状況

採掘においては操業許可が必要であり、鉱山労働者や周辺環境などステークホルダーへの適切な対応が不可欠。

IoTは労災原因や環境物質の管理を高度化させるが現状、多くはモニタリングの段階。

レーダによる 監視

ウェアラブル 端末

路面監視による 散水車

最適配置

運搬

積載

穿孔

火薬

発破

採掘

プラ ント

輸送

鉱山 開発

全般に 関わる サポート 業務

排水

崩落防止

健康管理

通信

粉塵防止

・ピットに入り込んだ地下水や雨水 を排出

・ピットを形成する残壁の法面の 補強や監視等

・鉱山で働く労働者の健康状態を 管理

・労働者や各種鉱山機械のやり取り を可能とする通信

・乾燥している路面を鉱山機械が 走ることなどによる粉塵の巻上げ を防止

鉱山機械 IT/IoT化

ポンプ

コンクリート 噴付機等

無線機等

通信機器

散水車 集塵機

雨水シミュレーション

GPS 基地局増設

採掘サポート

開発・研究・アイデア段階 普及・商用化段階

(出典) 鉱山会社およびメーカへのヒアリング、Webサイト情報を基に日立総研作成

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3.1.3 露天掘り:穿孔、火薬充填、発破プロセスの課題と対策

(出典) 鉱山会社、メーカヒアリングより日立総研作成

工程 課題 原因 IT/IoT活用による対策

穿孔 火薬

<労務費>

•ドリル及び火薬充填プロセスは、基本的に手作業

•孔ごとに火薬充填量が 異なるなど作業が複雑

•火薬取り扱い資格も必要

△ •ドリルの無人化

発破

<飛石>

•数百メートルも、石が飛ぶことがあり、場内の鉱山労働者や車両、施設を破損

•場外の民家・工場、自動車、道路も被害

•原因の約90%は過装薬

•過装薬の原因は、発破箇所の岩質と発破抵抗線の 把握が不十分なこと △

•メカニズムの解析と シミュレーション実施

•正確な爆薬量の計算、発破孔の配置変更(格子型⇒千鳥型等)による発破規模縮小

発破

<大塊発生>

•発破後に、大塊が発生する

•クラッシャー目詰まりの原因に なるため、ブレイカーにより小割を行う

•岩石に対して火薬量が 不十分

△ •小割り作業の 自動運転

発破

<振動・騒音>

•発破時の地盤振動により、鉱山周辺の 住民宅を破損

•発破音が、近隣住民に不快感を与える こともあり

•過装薬 (適正量でも、民家との 距離で問題になることあり)

○ •振動値、騒音値の モニタリング

(◎一般的に普及、○商用化、△開発・研究段階、×アイデア段階)

運搬

積載

穿孔

火薬

発破

採掘

プラ ント

輸送

鉱山 開発

振動・騒音値のモニタリングにより周辺への被害を抑える技術は既に商用化され、ドリルの無人化、大塊の小割り作業の自動運転など省人化技術も開発・研究が進行中。

特に日本では、周辺に点在する民家への影響を最小限に抑制することが必要。

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3.1.4 露天掘り:積載プロセスの課題と対策

(◎一般的に普及、○商用化、△開発・研究段階、×アイデア段階)

運搬

積載

穿孔

火薬

発破

採掘

プラ ント

輸送

鉱山 開発

(出典) 鉱山会社、メーカヒアリングより日立総研作成

工程 課題 原因 IT/IoT活用による対策

積載

<高熟練度労働者不足>

•効率低下、運営コストを押し上げ

•操作が可能な人材が限られ、習熟には時間を要する

△ •ホイールローダー 無人化

<燃費>

•ショベルを動かすための燃料 •燃料価格の高騰

•ディスパッチやナビゲーションの活用に より、ショベル・ダンプの連携強化

<渋滞>

•ショベル作業待ちでダンプ渋滞

•ショベルの作業量に対して ダンプが多い

<メンテナンス>

•故障やメンテナンスによる 作業中断

•非熟練者メンテナンス等 (日本人は、熟練者が多く 今後、このノウハウを 継承していくことが必要)

×

•機体データ収集に よるコンディションベースド メンテナンス

•ノウハウをAI化

<故障>

•バケットのツメが折れることがあり、 クラッシャで引っかかる

•バケットのツメの摩耗

•オペレータの作業ミス ×

•ドローン等による 監視

<その他作業>

•小割り作業、法面をならす等 積載以外の作業も多い

‐ △ •自動化

<計画ずれの修正>

•日々のトラブルの積み重ねにより 計画がずれることへの修正

・採掘計画の立案、 採鉱オペレータの連携不足

× •鉱山各部門を跨る 情報連携(見える化)

ディスパッチやナビゲーションの活用によってショベルとダンプの連携を強化し積載効率を向上させる技術が現在、大鉱山にて普及。ホイールローダーの自動化も開発・研究が進行中。

メンテナンスや故障の監視にAIやドローンの活用がアイデアとして浮上中。

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3.1.5 露天掘り:運搬プロセスの課題と対策

(出典) 鉱山会社、メーカヒアリングより日立総研作成

運搬

積載

穿孔

火薬

発破

採掘

プラ ント

輸送

鉱山 開発

工程 課題 原因 IT/IoT活用による対策

運搬

<労務費>

•ドライバーが多く、鉱山の 運営コストの中で最も大きい

•鉱山が都市から離れていることが多く、人が集まりにくい(豪州では年収1,000~2,000万円の鉱山もあり)

○ •無人化(AHS)

<燃費>

•鉄鉱石鉱山の場合運営コストの 約2割がダンプ燃料コストとされる

•燃料価格の高騰

•ディスパッチの活用に よるダンプの ルート最適化

•ダンプ運転ナビ <渋滞>

•ショベル作業待ち、クラッシャへの投入待ちでダンプが渋滞

•ショベルやクラッシャの容量に 対してダンプが多い

<メンテナンス>

•故障やメンテナンスによる 作業中断

•非熟練者メンテナンス等 (日本人は、熟練者が多く 今後、このノウハウを 継承していくことが必要)

×

•機体のコンディション ベースドメンテナンス

•ノウハウをAI化

<タイヤ磨耗・破裂>

•交換、修理にかかる時間、費用

•タイヤの摩耗

•障害物の踏みつけ ◎ •タイヤセンシング

<事故>

•ダンプ衝突や逸脱 •多くはオペレータの疲労による ○

• カメラやウェアラブル端末による疲労検知

(◎一般的に普及、○商用化、△開発・研究段階、×アイデア段階)

ディスパッチやナビゲーションにより燃費削減と渋滞緩和を実現。タイヤセンシングによりタイヤの磨耗と破裂を未然に防止する技術も普及。

今後は無人化(AHS)による労務費の削減と疲労検知による事故防止が進む見通し。

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3.1.6 露天掘り:その他安全に関する課題と対策

(出典) 鉱山会社、メーカヒアリングより日立総研作成

(◎一般的に普及、○商用化、△開発・研究段階、×アイデア段階)

工程 課題 原因 IT/IoT活用による対策

崩落 防止

<崩落>

•残壁崩落によるピットの破壊や労働災害

•大雨などの天候や 地震などによる災害が多い

◎ •GPS、APSによる 計測

排水

<出水>

•雨や地下水の流れ込みにより、ピット内への浸水や鉄道網寸断など被害あり

•大雨や地下水脈の 分断

× •雨水の流れのシミュレーション

粉塵 防止

<粉塵>

•粉塵の発生により、機器の速度低下 および衝突等危険性増加をもたらす

•乾燥時での発破や ダンプの走行による粉塵巻上げ

•水が高額で撒けない

× •カメラ活用

•散水車の最適配置

通信

<通信手段>

•センサまで無線が届かず 情報が取れないこと等

•ピット深度、鉱山全体では数kmになるため

•電波法

◎ •都度、基地局を 建てる、もしくは 有線などで対応

GPS、APSの計測データを用いてピットの破壊など崩落事故の事前予知を実施。 その前提としての有線・無線通信環境の整備も多くの鉱山で実施。 粉塵や霧からの視界確保、大雨時のシミュレーションなどは将来の開発・研究が検討される。

運搬

積載

穿孔

火薬

発破

採掘

プラ ント

輸送

鉱山 開発

全般に 関わる サポート 業務

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3.鉱山開発における各プロセスの課題と IT/IoT導入状況 3.1 露天掘り採鉱プロセスにおける課題とIT/IoT導入状況 3.2 坑内掘り採鉱プロセスにおける課題とIT/IoT導入状況 3.3 プラント(破砕~選鉱)及び輸送プロセスにおける課題と IT/IoT導入状況

28

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29

採鉱

プラント

輸送

鉱山 開発 ドリルジャンボ

(自走式ドリル)

火薬充填機

LHD:Load-Haul-Dump

(自走式積載機)

ドリルナビゲーション

火薬量自動調整(サイトミキシング)・充填

鉱山車両運行管理システム(FMS)

衝突防止 ディスパッチ

メンテナンス

効率化

坑内掘りの各プロセスで用いられる各機械とIT/IoT化の現状

人手で行われる ことが多い

小型ダンプ

コンベア

ホイスト

遠隔操作

(出典) 鉱山会社およびメーカへのヒアリング、Webサイト情報を基に日立総研作成

鉱山機械 IT/IoT化

3.2.1 坑内掘り(金属):採鉱プロセスに用いる鉱山機械とIT/IoT化の状況

状態監視

状態監視

露天掘り比べて機能が少ない

坑内掘りの鉱山開発において採鉱プロセスに用いられる鉱山機械とIT/IoT化の関係を まとめた。

LHD、ドリルなど坑内での採鉱プロセスの自動化は進むが露天掘りに比べ機能は少ない。

開発・研究・アイデア段階 普及・商用化段階

運搬

積載

穿孔

火薬

発破

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30

3.2.2 坑内掘り(金属):採掘サポートに用いる鉱山機械と IT/IoT化の状況 露天掘りに比べ一層の安全性対策が求められるも、地下の環境であるためIT/IoT化の

多くがアイデアの段階。 換気、電力供給、通信手段の提供などは生命に直結するため投資の重要性が高い。

3Dモデリング等に よる

エネルギー

マネジメント

ベンチレーション オンデマンド

運搬

積載

穿孔

火薬

発破

採掘

プラ ント

輸送

鉱山 開発

全般に 関わる サポート 業務

排水

崩落防止

給電設備

坑内通信

ベンチレーション

・地下水や作業により発生する水を 排水(特に雨天時に多く発生)

・崩落を防ぐための、地質把握に 基づいた天盤の補強

・坑内で労働者が安全に仕事をする

ための電力供給

・労働者や各種鉱山機械のやり取り を可能とする通信

・坑内で労働者が仕事をしている 箇所に換気

鉱山機械 IT/IoT化

ポンプ

ジャンボ等で ロックボルトを

固定

送変電設備

通信機器

(PHS等)

ファン

雨水シミュレーション

通信高速化 (4Gレベル)

ウェアラブル 端末 健康管理

・鉱山で働く労働者の健康状態を

管理 -

採掘サポート

開発・研究・アイデア段階 普及・商用化段階

(出典) 鉱山会社およびメーカへのヒアリング、Webサイト情報を基に日立総研作成

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採掘

プラント

輸送

鉱山 開発

坑内掘りの各プロセスで用いられる各機械とIT/IoT化の現状

採掘サポート IT/IoT化

Longwall System、

コンティニュアス

マイナー

(削岩機)

LHD:Load-Haul-Dump

(自走式積載機)

コンベア

遠隔操作

遠隔操作

削岩機の 状態監視

鉱山機械 IT/IoT化

3.2.3 坑内掘り(石炭):採鉱プロセスに用いる鉱山機械とIT/IoT化の状況

石炭は爆発の危険性があるため、電化やガスなどのセンシングが進んでいる。Longwallなどの大型設備の場合、有線でデータを吸い上げ、遠隔操作の状態監視を行っている。

(出典) 鉱山会社およびメーカへのヒアリング、Webサイト情報を基に日立総研作成

崩落防止

地下水排水

ベンチレーション

坑内通信

給電設備

労働者の 健康管理

3D モデリング

エネルギー マネジメント

ガス等 モニタリング

雨水 シミュレーション

ウェアラブル

端末等

通信高速化 (4Gレベル)

状態監視

遠隔操作 状態監視

石炭は爆発の危険性があるため、電化やガスなどのセンシングが進んでいる。 削岩機の遠隔操作はコンティニュアスマイナーやJoy Global製Longwall Systemが商用

化されており、LHDやコンベアの遠隔操作と合わせて石炭鉱山での採掘を効率化。

開発・研究・アイデア段階 普及・商用化段階

削岩

積載

運搬

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(◎一般的に普及、○商用化、△開発・研究段階、×検討・アイデア段階)

採掘

プラ ント

輸送

鉱山 開発

穿孔

火薬

発破

削岩

積載

運搬

or

(出典) 鉱山会社、メーカヒアリングより日立総研作成

3.2.4 坑内掘り:採掘(金属及び石炭)プロセスの課題と対策

工程 課題 原因 IT/IoT活用による対策

穿孔

削岩

火薬

<労務費>

•坑内作業の労務費は高い

•坑内掘りの穿孔や火薬重点には特に熟練の技術が必要となる

•坑内は危険が伴うため 担い手が少ない

◎ △

• LHD遠隔オペレーションなどは普及している

•ドリルナビゲーション

穿孔

削岩

<ドリルビット磨耗>

•コンテニュアスマイナーなどの 削岩機のビットが摩耗する

•硬い岩等が急に出てきた 場合にそのままの力で 押し当てた場合磨耗が早くなる

○ • Longwall Systemは遠隔でビットに掛かる圧力を測定

発破

<崩落>

•坑内では常に崩落の危険が伴う(特に発破後)

•発破

•大雨等による地下水増加 ◎

• 3Dモデリング

•カメラでの遠隔 モニタリング

積載

運搬

<ダンプの事故>

•ダンプの衝突事故あり

•ダンプ、LHD、一般車両、坑内 整備用の特殊車両などの交差で渋滞あり

•坑内は暗く、一車線である ことが多いため

○ •ディスパッチが 有効だが通信コストが 高く導入は少ない

(◎一般的に普及、○商用化、△開発・研究段階、×アイデア段階)

危険を伴う坑内では労務費が高く、LHDの遠隔オペレーションや発破の遠隔モニタリングなど省人化による生産性・安全性向上の取り組みが一般に普及。

ディスパッチなど車両機器の運行効率化を図る上で障害になるのが坑内での通信コスト。

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(◎一般的に普及、○商用化、△開発・研究段階、×検討・アイデア段階)

(出典) 鉱山会社、メーカヒアリングより日立総研作成

坑内での安全対策として、最も重要なものはベンチレーション。坑内を満遍なく換気するためには、多くの電力を消費するため、必要なところに必要な分だけ風を送るシステムもある。

露天掘りよりも安全性を高めるためのソリューションが多い。

3.2.5 坑内掘り:その他安全に関する課題と対策

(◎一般的に普及、○商用化、△開発・研究段階、×アイデア段階)

工程 課題 原因 IT/IoT活用による対策

ベンチレーション

<換気>

•作業員の人命に関わり、換気が 終わるまで作業停止

•坑内で消費する電力の約1/3の 電力を消費する場合もあり

•ガスの発生

•ダンプやLHDの排気ガス

•温度上昇

•ベンチレーション・ オン・デマンド

•ガス濃度センシング

排水

<出水>

•人命被害がでることあり

•排水が終わるまで作業停止

•大雨による浸水

•地下水脈の分断 ×

•雨水の流れの シミュレーション

給電 設備

<電源設備>

•坑内では、電力料金が高額

•坑内では、電灯、換気、 ポンプ、機械の動力など 多くの電気を消費

△ •エネルギー マネジメントシステム

通信 <通信手段>

•通信状況が悪く情報伝達が難しい

•坑内用の大容量かつ安定的な無線通信技術がない

△ • PHSなどの基地局 (速度が不十分)

健康 管理

<作業員の健康管理>

•坑内で健康を害すると救助に 時間がかかる

•坑内が複雑な形状になって いるため

△ •無線器で位置は 特定可能だが、健康までは管理できず

運搬

積載

穿孔

火薬

発破

採掘

プラ ント

輸送

鉱山 開発

全般に 関わる サポート 業務

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3.鉱山開発における各プロセスの課題と IT/IoT導入状況 3.1 露天掘り採鉱プロセスにおける課題とIT/IoT導入状況 3.2 坑内掘り採鉱プロセスにおける課題とIT/IoT導入状況 3.3 プラント(破砕~選鉱)及び輸送プロセスにおける課題と IT/IoT導入状況

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3.3.1 露天堀り及び坑内堀り:プラント及び輸送プロセスに用いる 鉱山機械とIT/IoT化の状況

採掘

プラント

輸送

鉱山 開発

IT/IoT化 石灰石

クラッシャー(1次、2次、3次まで置かれることが多い)

コンベア

銅鉱石等

ミル

テーリングダム

浮選 (シックナー)

リーチング

トラックor パイプライン コンベア

港湾 セメント 工場

ミル

鉄鉱石

鉄道

遠隔操作

遠隔操作

遠隔操作

遠隔操作

リアルタイム 状態監視

鉄道スケジュール 最適化・無人化

遠隔監視 (堤防決壊防止など)

粒度調整

生産~在庫

管理最適化

鉱石トラッキング による

薬品調整

ドローンを 用いた

ストックパイル 測量

(出典)鉱山会社およびメーカへのヒアリング、Webサイト情報を基に日立総研作成

銅鉱石、鉄鉱石、石灰石ではプラント以降のサプライチェーンが異なる。 どの鉱種でもクラッシャーが用いられ、採掘フィールドとプラントの架け橋となっている。 飛石等危険性があるため、安全対策としてクラッシャー、ミル等の遠隔操作が進んでいる。

開発・研究・アイデア段階 普及・商用化段階

選鉱

破砕

コン ベア

磨鉱

廃滓 処理

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3.3.2 露天堀り及び坑内堀り:プラントプロセス(破砕・コンベア・磨鉱) の課題と対策

(◎一般的に普及、○商用化、△開発・研究段階、×アイデア段階)

採掘

プラ ント

輸送

鉱山 開発

(出典)鉱山会社、メーカヒアリングより日立総研作成

選鉱

破砕

コン ベア

磨鉱

廃滓 処理

工程 課題 原因 IT/IoT活用による対策

破砕 <ダンプ渋滞>

•クラッシャーの手前で起こり易い

•クラッシャー容量とダンプの 輸送量があっていない

◎ • FMS(ディスパッチ)

破砕

<規格外の石やツメ投入>

•大型の鉱石やショベルのツメの 投入による、機器の破損

•ショベル側でツメが折れたことが分からない

× •ドローンによる監視

破砕

コンベア

<機器故障>

•クラッシャーやコンベアの 故障=生産停止となることもある

•プライマリークラッシャーや一部のコンベアは冗長化されておらず、ボトルネックになりがち

×

•各種機器の遠隔操作、 モニタリング

•データ収集(コンベアの厚み、破砕機への負荷など)によるコンディション・ベースド・メンテナンス

•ノウハウをAI化

破砕

コンベア

磨鉱

<メンテナンス費>

•メンテナンス期間は生産停止

•作業員の人件費も高額

•大型機械が多くメンテナンスに 数週間掛かる

•高齢化による技術者不足

破砕

磨鉱

<粒度管理>

•粒度が安定せず、スクリーンで はじかれてしまうことあり

•石の硬さが違う × •カメラによる粒度測定

磨鉱 <電気代>

•機器を動かす電気代が高額 •ミルが多くの電力を消費 △ • エネルギーマネジメント

クラッシャーやコンベアは絶対に止めてはならない設備のため、メンテナンスコストが上昇傾向。 クラッシャーは故障を避けるため、容量が大きいものを購入することが多く、稼働率がボトル

ネックになりやすい。ダンプなどとの連携を強化し稼働率を高める取り組みも存在。

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3.3.3 露天堀り及び坑内堀り:プラントプロセス(選鉱・廃滓処理) の課題と対策

品位の低下により、選鉱での実収率向上が課題。

(出典)鉱山会社、メーカヒアリングより日立総研作成

選鉱

破砕

コン ベア

磨鉱

廃滓 処理

(◎一般的に普及、○商用化、△開発・研究段階、×アイデア段階)

採掘

プラ ント

輸送

鉱山 開発

工程 課題 原因 IT/IoT活用による対策

選鉱

<品位低下・鉱床複雑化>

•鉱床の深部化などによる品位の低下

•鉱床に様々な金属が含まれ、細かく分けて選鉱する必要あり

•浮遊選鉱は、薬品の量、 温度、粒度、エアレーション等 パラメータが多すぎて最適な値を見つけることが困難

× •鉱石のトラッキング(切羽ごとに鉱石を 管理)

選鉱

<薬品調整等の実行力>

•理論上最適な鉱石と薬品量の組み合わせが導き出せた としても実行できない

•調整指示、薬品の準備など 人手に頼っている部分も大きく、 細かい調整に追いつかない

○ •中央監視・制御、 薬品の注入の自動化

選鉱 <水購入費>

•選鉱に使う水の費用が高額

•再処理しているが、テーリングダムに向かう分はロス

× •水管理の最適化

選鉱 <鉱石の選別>

•鉱石の選別に掛かるコスト

•一部の鉱山では、機械や人の目による選別を実施

△ •鉱石選別機の開発(色など)

廃滓処理 <テーリングダム決壊>

•発生すれば地域の環境を汚染 •大雨や地震等による堤防破損 ×

•ドローンによる堤防監視

重要なところなので、もう少し詳しく記載してください。

品位の低下、複雑鉱の増加に合わせて選鉱での実収率向上が課題として浮上。 浮遊選鉱はパラメータが多く、最適値の計算には鉱石のトラッキングが出来ている必要。 採掘から選鉱プラントへ運ばれる間、鉱石の状態を追跡できれば、選鉱プラントで薬品等を

事前準備するなど、採鉱から選鉱までの連携を深め実収率向上を実現可能。

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3.3.4 露天堀り及び坑内堀り:輸送プロセスの課題と対策

(出典)鉱山会社、メーカヒアリングより日立総研作成

(◎一般的に普及、○商用化、△開発・研究段階、×アイデア段階)

採掘

プラ ント

輸送

鉱山 開発

選鉱

破砕

コン ベア

磨鉱

廃滓 処理

工程 課題 原因 IT/IoT活用による対策

輸送 全般

<ストックパイル量の測定>

•定期的に測量士が回るコストが掛かっている

•測量士が手作業で、 ストックパイルを測っている

○ •ドローンによる ストックパイルの測定

輸送 全般

<需要に応じた生産・在庫 最適化>

•過剰在庫や販売機会損失が生じている

•需要に見合った生産や在庫に なっていない

× • SCM最適化(鉱山、 船舶の稼働を可視化し 営業等が参考に)

パイプ ライン

<パイプライン破損>

•スラリーが入ったパイプライン破損による環境汚染

•パイプラインの距離が長い × •パイプライン遠隔監視(漏水管理)

鉄道

<鉄道遅延>

•鉄道で遅延が生じると、どの路線を優先して通してよいか分からなくなり、遅延が拡大

•鉱山近くでは鉱山数の分だけ路線があるが、途中は単線になるため、スケジュールが組みづらい

•鉄道のスケジュールで 品位を調整している

△ •鉄道スケジューリング最適化 (リスケジューラー)

鉄道 <鉄道運転手コスト>

•鉄道運転手の労務費

•豪州では延長距離が300km以上 になり、運転手の途中交代が必要

△ •鉄道無人化

鉄道輸送で遅延が発生すると後のブレンディングなどで支障が出るため、複数路線のスケジュール最適化の課題が存在し、開発・研究が進められている。

ドローンによるストックパイル量の測定など在庫量の正確な把握・最適な管理にもニーズ。

Page 40: IoT推進のための新産業モデル創出基盤整備事業 ( …CODELCOは、ITインフラの整備によって集中管理・モニタリング・自動化を目指した取組

4.鉱山開発におけるIT/IoT推進 に関する技術的課題の検討 4.1 鉱山開発が抱える技術的課題とIT/IoT推進による可能性 4.2 鉱石性状及び採鉱等から得られたデータを活用した選鉱時の実 収率の向上(ジオメタラジー) 4.3 生産最適化による稼働率向上 4.4 鉱山IoTプラットフォーム

39

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4.鉱山開発におけるIT/IoT推進 に関する技術的課題の検討 4.1 鉱山開発が抱える技術的課題とIT/IoT推進による可能性 4.2 鉱石性状及び採鉱等から得られたデータを活用した選鉱時の実 収率の向上(ジオメタラジー) 4.3 生産最適化による稼働率向上 4.4 鉱山IoTプラットフォーム

40

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4.1.1 鉱山開発が抱える技術的課題とIT/IoT推進による可能性 鉱山開発が抱える技術的課題について、我が国鉱山開発関係企業等からヒアリングを実施。

聴取した技術的課題を、①生産性、②コスト、③HSE、④その他 の4つに分類し整理。

検討会では、これらの分類ごとにIT/IoTの推進による対策の可能性について検討。

分類 課題 IT/IoTの推進による対策の可能性(検討結

果)

①生産性 主に鉱山の生産量(実収率等)に関わる課題

• 鉱石品位が低下、複雑鉱が増加。このような中で、どのように生産性を 改善させていくか

• 選鉱プロセスは、熟練の技。変化する鉱石性状に対応して、温度、pH、エアレーション、薬剤量等の調整が不十分であると、実収率の低下を招く

• GeometallurgyやMine to Milと呼ばれるように、探鉱(地質)や穿孔等から取得したデータを基に、選鉱条件を最適化することによって、実収率を向上できないか

②コスト 主に鉱山の操業コスト(稼働率等)に関わる課題

• ショベルやダンプの燃料コスト削減 (現状、操業コスト全体のうち20%以上を占めている。)

• ショベルやダンプ、クラッシャーミル等の鉱山機械が効率よく稼働できていない • クラッシャーミルの電力使用量が大きい • 鉱山労働者の賃金は、年々増加傾向 • 天候不順によって、鉱山の操業が停滞または非効率化しやすい • 中長期操業計画は、探鉱時のボーリングデータを用いながら経済性の観点

から策定するため、実態とズレが生じやすい • 短期操業計画は、様々なトラブルにより実態とズレが生じている

• 探鉱(地質)や穿孔等から取得したデータを基に、実態に合わせたきめ細やかな短期生産計画を策定することによって鉱山内の機械や装置等の最適化を図るとともに、中長期の生産計画にも反映できないか

③HSE Health, Safety, Environmentに関わる課題

• 操業環境や疲労蓄積による病気、ケガ、事故の誘発 • 残壁の崩落によるピットの破壊や労働災害 • 水質汚濁、騒音等の環境問題

• ウェアラブル端末を用いた健康管理や、センサー・カメラによる高度なモニタリングによって、保安・環境保全の水準を向上できないか

④その他 • 各プロセス間の連携不足によって非効率なオペレーションが発生 • 露天掘りと坑内堀りの制約要件の違い

• 各プロセスにおける操業情報を可視化することによって、プロセス間連携を促進させることはできないか

赤枠:検討会が重要視した項目

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4.1.2 技術的課題を解決するためのIT/IoT推進テーマ案 4.1.1を基に、検討会において鉱山開発におけるIT/IoTを推進すべきテーマについて検討し、

1. 鉱石性状及び操業データを活用した選鉱実収率の向上

2. 操業データ等を活用した生産計画の最適化

3. 鉱山IoTプラットフォーム

の3テーマについて、詳細な検討を行う必要があるとの方向性を決定。

穿孔 発破 積載 搬送 破砕 磨鉱 選鉱 輸送

⑤鉱山IoTプラットフォーム (①及び②を実現するために必要なデータの管理・連携やフォーマットの統一を行うための情報システム)

コン ベア

2.各プロセスのデータに基づく鉱山機械等の稼動率の向上と生産計画の最適化 (生産計画最適化)

1.鉱石性状及び採鉱等から得られたデータを活用した選鉱時の実収率の向上 (ジオメタラジー)

6.露天/坑内掘り ソリューション 坑内/露天掘り

への対応

5.保安・環境保全の

水準を向上

4.作業員の安全性・

健康状態向上

フィード バック

情報 蓄積 ・ 共有 ・ 解析

情報 取得

機器

赤枠:検討会が重要視した項目

FMS ドリルナビ 中央制御システム 探査データ

選鉱データ

①生産性 ②コスト ③HSE ③HSE ④その他

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4.鉱山開発におけるIT/IoT推進 に関する技術的課題の検討 4.1 鉱山開発が抱える技術的課題とIT/IoT推進による可能性 4.2 鉱石性状及び採鉱等から得られたデータを活用した選鉱時の実 収率の向上(ジオメタラジー) 4.3 生産最適化による稼働率向上 4.4 鉱山IoTプラットフォーム

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4.2.1 現状の取組とジオメタラジーの方向性

選鉱プロセスの多くは、浮遊機の中をカメラで撮影し、泡の大きさ等をリアルタイムに計測することで薬品や温度、ph等を調整しているが、この調整は手動で行われており、熟練者でないと実収率(金属の回収率)の低下を招く可能性がある。

選鉱プロセスで実収率を向上させるため、穿孔から磨鉱までに得られたデータを選鉱プロセスへ 連携させ、選鉱の最適解を分析によって導くということについての検討を行うべきではないか。

穿孔 発破 積載 搬送 破砕 磨鉱 選鉱 輸送

切羽A

切羽B

切羽C 工程を経ると鉱石が 混ざってしまう

一律の 対応

切羽A

切羽B

切羽C

それぞれの 鉱石ごとで 異なる対応

(薬品、エアレー ション調整)

IoTで管理することで、どの鉱石が、 どのタイミングで各プロセスを通過したかを管理

ジオメタラジーによる実収率の向上 現状の取組内容

対応済

ボーリング データの

トラッキング

・ボーリングによる地質データから、概ねどのような鉱床(品位やその他含有物)があるかは、把握済み ・切刃ごとにストックパイルを分けるなどの対応を行う場合あり

選鉱プロセスでのデータ解析と調整

・浮遊機の中をカメラで撮影し、泡の大きさ等リアルタイムで計測することで薬品やエアレーションを調整

未対応

鉱石データの 詳細分析

・繰粉等の分析を実施してるが、 時間とコストがかかる

詳細な鉱石の トラッキング

・搬送から選鉱の過程で混ざってしまうため、現在、どこの切羽の鉱石がブレンドされたものか不明

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南米を中心に、品位や含有鉱物が複雑な鉱床も増加しており、鉱石が選鉱プロセスに 投入される前に薬品やエアレーションを調整することは高い効果が見込まれる。

ジオメタラジーによる効果と課題

効果 複雑鉱の効率的な回収の ためには有効な手段

チリなどの南米銅鉱山、鉛・亜鉛鉱山を中心に複数の鉱石が含まれる鉱床が増加している。これらの鉱石を管理した上で、事前に準備できれば、実収率向上を期待できる

課題

鉱石を詳細に分析できていない

複雑鉱が増えてくると、ボーリングだけのデータでは不十分であるため、繰粉などの分析を強化し、品位や鉱石に含まれる含有物を細かく把握することが有効

採鉱と選鉱を繋ぐ動きは 鉱山会社やメーカーだけでは難しい

穿孔から選鉱までのプロセスを繋ぐためには、各機械からの情報取得が必要。実証実験のためには鉱山会社および機械メーカーからの情報提供が必要である。政府などに音頭をとってもらいながら協力して検証していく必要あり

選鉱プロセスでは、細かすぎる調整に現場が対応しきれない可能性あり

選鉱プロセスは、自動化が進んでいるが、作業指示、投入する薬品の準備などで人手を介したオペレーションがある。自動化および人手をサポートする機能がなければ、鉱石の性状に合わせた細かい対応についていけない可能性あり

地域によっては鉱床内の 品位等のばらつきが少ない

オーストラリアの亜鉛鉱床などでは、品位や含有鉱物のばらつきが少なく、探鉱時のボーリングデータだけで問題ない

鉱床が複雑なチリなどの南米鉱山での実証実験を検討する余地あり

A

B

C

・・・

・・・

・・・

4.2.2 ジオメタラジーによる効果と課題

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46

鉱石性状及び採鉱情報を活用した選鉱実収率向上のためには、穿孔から得られるデータを早期かつ詳細に分析し、そのデータを選鉱プロセスまで繋いでいく仕組みが必要。

穿孔 発破 積載 搬送 破砕 磨鉱 選鉱 輸送

ジオメタラジーに向けた技術的課題と対応

鉱石の特徴分析

品位や含有鉱物を早期・詳細に分析

品位分析向上

穿孔時の繰粉の分析時間短縮、分析内容向上

鉱石データのトラッキング

どの品位のものが、いつ、どれだけの量、どの順番で積載・搬送・投入されたかを記録

・鉱山会社 ・ドリルメーカー ・分析ソリューションを 持っている会社

【参考】 卓上型電子顕微鏡と分析ソフト 330(幅)×606(奥行き)×565(高さ)mm

トラッキング用IoT基盤

各機器から情報を取得、連携させる。 過去に遡ってトラッキングするため時間情報を入れることが重要

・鉱山会社 ・鉱山機械メーカー(ショベル、ダンプ) ・鉱山IT企業

最適化実行と分析

得られた情報を基に、粒度、薬品等の調整を指示。 効果をチェックし、フィードバック

最適化制御基盤 粒度や薬品量を自動調整(もしくは人に指示)するための制御基盤

・鉱山会社 ・鉱山ITメーカー

課題を 解決する

機能

必要な 技術開発

技術開発に関係

する企業

A B C

(出典)日立ハイテクWebサイトより

4.2.3 ジオメタラジーに向けた技術的課題と対応

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鉱山によって効果や技術開発ニーズが異なるが、この検討テーマは鉱山の競争力に 直接つながるところであるため、鉱山会社の期待は大きい。

ジオメタラジーに関する委員の意見

効果が高いと 思われる

鉱山の特徴

操業中の鉱山 鉱石に関する情報が採掘部門から選鉱部門へスムーズに渡されれば、実収率を改善できる可能性は高い。実際に採ってきた石で選鉱試験を繰り返し、操業に関するデータを蓄積する必要がある

複雑鉱 鉱床が単純だと効果が薄い。複雑鉱(銅など)のほうが効果がある

今後の 技術的開発 に期待する

項目

分析項目の拡充

現場で繰粉を採ってその石が選鉱場で処理されるまでに1週間から2週間あり、余裕はあるため、スピードよりも分析項目を増やすべき。繰粉から分析できる項目は、現状では品位程度だが、それだけでは経済性を判断するまでで留まり、選考処理の 最適化にはなかなかつながらない。金属品位以外で鉱物の単体分離度、粒度を分析して選鉱処理前にデータインプットできれば工夫ができる

各工程での鉱石状態を把握(鉱山IoTプラットフォーム)

広範囲な鉱山でエリアごとに鉱床の性状が大きく差がある場合、選鉱過程でブレンドをするニーズが高まる。選鉱に投入する鉱石を細かく分けるためには、現在どのような鉱石がどこにあるのかを把握しなければならないため、IoT/ITを使った操業の管理が必要(鉱山IoTプラットフォームについては4.4)

ブロックモデルの 精緻化と中長期 計画への反映

ボーリングデータをもとに、ブロックごとに品位・鉱石の性格を持たせ、それをもとに採鉱・選鉱を行っている。序盤は粗く行い、操業中のデータを加え、分析することにより、モデルを精緻化できると良い。 数年後に採掘する鉱石の性状が分かっていれば、前もって選鉱施設へ投資することが可能

4.2.4 ジオメタラジーに関する委員の意見

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4.2.5 ジオメタラジーに関する検討結果

鉱石品位が低下、複雑鉱が増加傾向にある中で、穿孔~選鉱プロセスの生産性をいかに向上させるかが技術的課題として浮かび上がった。

この課題を解決する手法として、IT/IoTを用いた「鉱石性状及び採鉱等から得られたデータを活用した選鉱時の実収率の向上(ジオメタラジー)」を選定。当該手法は、複雑鉱を抱える鉱山において高い効果が得られるものであり、本邦企業が手がけているチリなどの銅鉱山に適した技術と考えられる。

今後、鉱石の情報を把握するための手法や分析、フィードバックの手法、データの集約・連携を行うための鉱山IoTプラットフォームについての検討が必要となる。

穿孔 発破 積載 搬送 破砕 磨鉱 選鉱 探査

・穿孔時の 鉱石データ 品位、その他鉱石

含有量

・探査時の 鉱石データ

品位、その他鉱石 含有量

・切羽情報 切羽位置、

積載量

・搬送情報 搬送順序、

積載量

データ蓄積・解析

粒度調整 試薬調整

鉱石 ブレンド

最適な選鉱条件

【ジオメタラジーのイメージ】

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4.鉱山開発におけるIT/IoT推進 に関する技術的課題の検討 4.1 鉱山開発が抱える技術的課題とIT/IoT推進による可能性 4.2 鉱石性状及び採鉱等から得られたデータを活用した選鉱時の実 収率の向上(ジオメタラジー) 4.3 生産最適化による稼働率向上 4.4 鉱山IoTプラットフォーム

49

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4.3.1 生産計画について

鉱山では、鉱山開発から閉山までの長期計画をもとに、中期計画、短期計画が立てられ、それを元に日々の操業が行われる。

操業状況と計画を照らし合わせることにより、合理的な中長期計画の立案が可能。

現状の生産計画

長期計画 (開発~閉山)

・探鉱時のボーリングデータなどを参考に 長期にわたる投資計画などを立案 ・経済性を重要視し、生産計画担当 が作成

中期計画 (月、年単位)

・長期計画を参考に、大まかに 採鉱、選鉱について計画 ・長期計画と現状に大きなズレ が生じている場合、対策を立案 ・経済性を重要視し、生産計画担当 が作成

短期計画 (日、週単位)

・中期計画を参考に、どこを掘るか どのように選鉱するか等を決定する ・機械や人の稼働率、天候等、操業 状況で日々変化が生じる ・採鉱、選鉱現場主体で作成

稼働率向上に必要な技術

<短中長期の生産計画最適化> 日々の操業状況を中長期計画へ反映させる ことにより、合理的に中長期計画の立案が可能

長期計画 (開発~閉山)

中期計画 (月、年単位)

短期計画 (日、週単位)

日々操業 状況を反映させ

生産計画 最適化

CBM…Condition Based Maintenance

<リスケジューリングによる生産最適化> 各機器からデータを取得・分析することにより、 天候、故障など、日々の操業で生じる課題 に対して最適なリスケジューリング計画を立案

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4.3.2 現状の取組と生産計画最適化の方向性

生産計画最適化のイメージ

穿孔 発破 積載 搬送 破砕 磨鉱 選鉱 輸送

これらの工程の機器のタイミングに 少数のパラメータで最適化

勤務シフト ボーリング

データ 需要

突発的な メンテナンス

燃料残量 タイヤ状況

エネルギー マネジメント

その他機械 の稼働状況

⇒その他のパラメータを入れて鉱山全体の機器稼働 の最適化が求められる

品位

対応済み 未だ対応できない項目

現状の取組内容

対応済

ショベル・ダンプの ディスパッチ/

鉄道スケジューリング

・ショベルやダンプの分野ではディスパッチの導入が進んでいる

・オーストラリアでは鉄道の 最適スケジューリングも行われている

一部のパラメータも 含めて最適化

・残燃料やタイヤの摩耗状況等を 入力することにより、 ルート等の最適化を図っている

未対応

ドリル等、ダンプ・ショベル以外との連携

・現状では、ピット内を走行するものに関して最適化が図られているに とどまる

最適化できる パラメータに

限りあり

・パラメータが増加すると複雑になるため、現状ではダンプ効率化に つながる部分を中心に対応

通常、生産計画は、あらかじめ中長期と短期が策定されているが、突発的なメンテナンスの発生や天候変化等によって変更が生じることがあり、生産計画の再検討に多大なコストが発生する。

各プロセスから取得したデータをプロセスを跨いで連携させ、リアルタイムに生産計画を最適化する ことで操業効率やエネルギー使用効率を向上させることについての検討を行うべきではないか。

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4.3.3 機械の状況に応じたメンテナンス(CBM)

CBM(Condition Based Maintenance)とは、法廷点検等で定められた定期メンテナンスでなく、機械の状態を元に、必要と判断されたときにメンテナンスを実行する 予防保全の考え方。

CBMによりメンテナンス時期の最適化ができれば、より効率的な生産計画が立案可能。

CBMで期待される効果

長期計画 (開発~閉山)

中期計画 (月、年単位)

短期計画 (日、週単位)

・鉱山機械情報 (稼働情報、機器状態、 メンテナンス)

・メンテナンス時期の 最適化

CBMのイメージ(機械の状況に応じたメンテナンス)

〈現状〉定期保守

C B M

故障率

時間 1年 2年 3年 4年

故障率

時間 1年 2年 3年 4年

機械の状態を見て 保守を延伸

〈将来〉

<CBM未対応> ロックドリル、坑内機械、クラッシャー、コンベア

・鉱山機械投資計画 の見直し

期待される効果

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4.3.4 生産計画最適化に関する委員の意見

IoT活用による課題解決という観点では、短期的なリスケジューリングによるコスト削減ニーズがあり。さらに、日々の操業データを積み重ね、中長期の生産計画を合理的に決定していくことにより、大きな効果が見込めると見られる。

短中長期計画最適化とCBMを組み合わせることにより、効果は大きくなると見られる。

生産計画最適化に関する委員の意見

今後の 検討方針 について

短期のコスト改善の 積み重ね

短期の小さな生産性向上の積み重ねに中長期の計画があるはずであり、日々のオペレーションを数パーセントでもコスト改善ができ、それを積み重ねることができれば、長期としては大きな改善

日々の操業を中長期計画へ反映

リスケジューリングは、現場レベルで何とか対応できていると考えている。問題は中長期計画と短期計画のズレ。中長期計画に従うように日々の計画を立てていくが、ずれが生じてくる。また、その時点では、何が理由でどこまでずれているか、改善できるのか、共有できていないのが現状。操業状態を見ながら、各計画を見直せると非常に良い

CBMも計画立案改善に重要

短期と中長期の計画を紐付ける際、鉱山機械の状況も見ながらメンテナンス計画を練れると効果的。現状では、稼働時間によるメンテナンスだが、少しでも先延ばしできる可能性が出てくれば、鉱山計画を練り直せる可能性もある

今後の 技術的開発 に期待する

項目

鉱山IoTプラットフォーム

短中長期データとデイリー操業データとをつなぐようなプラットフォームが必要 (鉱山IoTプラットフォームについては4.4参照)

シミュレーション技術の開発

中長期にわたる生産計画最適化を図る場合、作業員の数、鉱山機械の数など複数の パラメータを入れた上で最適化問題を解くことになるため、AI等を用いてコストについての 評価をする必要

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4.3.5 生産計画最適化に関する検討結果

鉱山の採掘や機器メンテナンスは、短・中・長期計画の3つの計画に基づき実行されているが、各計画を連携させ生産性を向上させていくかが、技術的課題として浮かび上がった。

この課題を解決する手法として、鉱山機械等から取得した日々の操業データを積み上げ、3つの計画へ反映させていく、データ連携による「生産計画最適化」を選定。

当該手法は、マインライフが長く、鉱山機械や選鉱施設などの再投資が必要な比較的大規模な鉱山に向いている。

今後、各担当部署が情報を共有するための「鉱山IoTプラットフォーム」についての検討も 必要となる。

長期計画 (開発~閉山)

中期計画 (月、年単位)

短期計画 (日、週単位)

・計画達成度 (採掘量) ・切羽情報 (地質、品位等) ・選鉱情報 (薬品使用状況) ・鉱山機械情報 (稼働情報、機器状態、 メンテナンス)

・開発計画の早期見直し ・先回りした投資立案 ・メンテナンス時期の最適化 等

操業情報の反映により期待される効果

中長期計画へ反映させるデータ

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4.鉱山開発におけるIT/IoT推進 に関する技術的課題の検討 4.1 鉱山開発が抱える技術的課題とIT/IoT推進による可能性 4.2 鉱石性状及び採鉱等から得られたデータを活用した選鉱時の実 収率の向上(ジオメタラジー) 4.3 生産最適化による稼働率向上 4.4 鉱山IoTプラットフォーム

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4.4.1 鉱山IoTプラットフォームの概念

鉱山の操業プロセスが多岐に渡り、使用する機器、操作するオペレータや鉱山計画立案者もそれぞれ異なることから、「鉱山IoTプラットフォーム」による情報共有を鉱山におけるインフラの一部として構築することが必要。

穿孔 積載 選鉱

データ収集

鉱石性状に 応じた選鉱

生産最適化 コンディション

ベースド メンテナンス

作業員の 安全性・健康

状態向上

取り込み~

解析・可視化

フィードバック

プラットフォームがない場合

<機能>ソフトウェア連携、解析ツール、可視化

・・・

鉱山IoTプラットフォーム

・・・

鉱山IoTプラットフォームを用いた課題解決

穿孔 積載 選鉱

・・・

解析モデル

データベース

現状では、各工程の専門家が各プロセスを最適化するた めにデータを利用。各専門家が連携することで、鉱山全体 の操業を改善可能だが、データ連携の壁、組織の壁等に よって、効果は限定的。

鉱山情報利用プラットフォームを鉱山操業におけるインフラの一部 として構築することによって、操業のトラブル防止や改善に役立てることができる。

ソフトウェア

解析モデル

データベース ソフトウェア

解析モデル

データベース ソフトウェア

・・・ ・・・

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4.4.2 鉱山IoTプラットフォームの課題と必要な技術開発

2つのソリューションを作るためには、センサー情報を正確に取り込むためのゲートウェイ、 採鉱から選鉱までの情報管理一元化、鉱山関係者全員が情報共有するBIツール、より高度な意思決定をサポートするAIも視野に入れたプラットフォーム化が必要。

課題 必要な技術開発

データ取り込み

・苛酷な環境のため、高い品質データの 取り込みができていない

・各ソフトウェアでデータを取っているが、 連携が不十分で、捨てているものも多い

・鉱山操業に適したセンサー ・センサーとシステムを繋ぐゲートウェイ(通信、ソフトウェア連携なども含む)

データ共有・ 連携

・破砕機~浮選機までのデータは連携しているが、採鉱工程とデータ連携ができていない

・操業データと鉱山計画データ(地質データ等を含む)の連携がない

・地質データ・採鉱データ、選鉱データ・設備データの管理一元化

データ解析

・現在は各工程の専門家が、自身のために可視化しているため、他の担当者が見てもなかなか理解できない

・データが膨大であるため最適解を見つけ出すことが困難

・鉱山経営者、地質分析担当者、 操業担当者、選鉱担当者、営業など様々な人間が理解できるBIツール

・高度な意思決定をサポートする分析ツール

地質データ

採鉱データ 選鉱データ

設備データ

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4.4.3 鉱山IoTプラットフォームに関する委員の意見

鉱山でのIT/IoT利用を促すためには、組織間でのKPIを見える化するための仕組みや 計画変更を操業へスムーズに伝えられる仕組みが必要。

今後の 検討方針 について

最適化する目的関数と 制約条件の明確化

最適化の目的関数は実収率なのか、長期計画なのかを明確化する必要あり。 また、最適化するうえでの制約条件は何かも考える必要あり。必要に応じてプラットフォームを作るべきであり、闇雲に考えるべきではないだろう

今後の 技術的開発 に期待する

項目

操業実績と計画を見える化するための各部門横断型 システム

鉱山では、探鉱は地質部門、 鉱山各プロセスと担当部門 採鉱は採鉱部門、選鉱は 選鉱部門、メンテナンスは 整備部門、計画は生産計画部門 が別々で操業実績と計画を立てる ことが多い。同じものでも、部門に よって用語が異なることもあり。 各部門の意思疎通が図れるよう、組織間でKPIを見える化する必要あり

計画を実行するための操業パターン作成

Industry4.0では、製造業で作るモノや量を変えようとしたとき、どう生産設備を 変えていくかという組み合わせを考えている。鉱山の採鉱、選鉱部門でもそういったパターンが適用できるか要検討。 ⇒段取り変えに近い発想だが、選鉱過程で鉱石パルプがどこで 切り替わったか考えるといったことがこれに当るかもしれない

個別設備の自動化を 促すためのオープン化の検討

Industry4.0では、工場のクリティカルパス以外はフリーにしており、各設備メーカーやセンサーメーカーに自由にやらせ、ここは個別最適化を図っている。鉱山に対応 すべきか要検討

メンテナンス

計画

選鉱

採鉱

探鉱 地質部門 採鉱部門 選鉱部門

整備部門

生産計画部門

鉱山IoTプラットフォームに関する委員の意見

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4.4.4 鉱山IoTプラットフォームに関する検討結果

鉱山IT/IoTの導入を促進するためには、各部門で用いられているデータを連携させるための 鉱山IoTプラットフォームを構築が必要。

それぞれのプロセスで得られる操業データを鉱山IoTプラットフォーム上で見える化し、分析することによって、プロセス間の連携や生産計画の最適化、操業上の課題に対する解決策の考案等の効果が期待できる。

<共有するデータ例>地質データ、穿孔鉱石データ、鉱山機械、 稼働データ、選鉱実収率、 各設備の状態データ、各部門KPI 等 <必要な機能>ソフトウェアの連携、部門間でデータ共有する

ためのBIツール、統計分析などを行うAI 等

鉱山IoTプラットフォーム

鉱山情報利用プラットフォームを活用した部門間・工程間情報共有

・・・

探査 発破 積載 搬送 破砕 磨鉱 選鉱 輸送 穿孔

採鉱部門 計画部門 設備部門 選鉱部門

各部門の担当者が共有されたデータを見に行くことで 期待される効果(例)

部門 アクセスする 部門とデータ

期待される効果

選鉱 採鉱部門

穿孔の鉱石データ

・鉱石の性状を詳細に知っておくことで、薬品 の準備や設備投資計画 に活用

設備 採鉱部門

機器の稼働データ

・日々の操業データを 分析することで、メンテナンスの効率化

計画 設備部門

各設備の状態データ

・機器の状態を把握することにより、中長期計画の最適化

他部門データに アクセス

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5.鉱山開発におけるIoT推進に関する 環境整備 5.1 鉱山開発におけるIT/IoTを支えるデータ環境整備 5.2 鉱山開発におけるIT/IoTに関するその他の環境整備

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5.鉱山開発におけるIoT推進に関する 環境整備 5.1 鉱山開発におけるIT/IoTを支えるデータ環境整備 5.2 鉱山開発におけるIT/IoTに関するその他の環境整備

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5.1.1 鉱山IT/IoT導入に向けた環境整備の必要性

鉱山開発現場にIoT技術を導入するにあたっては技術的な課題に加え、導入・運営への意味付けや部門間を越えた動機付け等も必要。今回、IT/IoTの導入/活用にあたっての5つの壁を整理。

IT/IoTの導入/活用によってその効果を十分に得るためには、これら5つの壁を意識した全体設計及び最適化が必要不可欠。

①データ連携の壁

拠点間のデータ・ コードの標準化

②システム環境の壁

IoT活用に必要なITの構成要素

③データ定義・品質の壁

データの関係付け・ 意味付け ④運用上の壁

業務プロセス改革と 継続的改善

⑤会社・組織の壁

組織間の コンフリクトの調整

(出典)日立コンサルティング資料を基に日立総研作成

オペレーション 探鉱 採鉱 選鉱

収集

蓄積・分析

活用

IoT

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5.1.2 ①データ連携の壁

鉱山開発には、様々な機械が用いられるが、それぞれデータ出力形式が異なるためデータ連携が困難。特に、リアルタイム性が求められるようなIoTの活用を考える上では、一定程度の規格の統一化が必要。

国を跨いだデータ連携にも課題があることに留意が必要。

課題 内容 対策

機器データの出力形式が 会社ごとに異なる

重機の稼動データ(車速、走行距離、センサーのエラー等)は重機メーカー自身がメーカー自身のために使用しており、各社ごとに異なる出力形式

メンテナンスなどリアルタイム性が要求されなければプラットフォームで吸収させることが可能

衝突防止などのリアルタイム性が要求されるものであれば、ガイドライン等規格の統一が求められる

保有する各鉱山で異なるシステムを導入

鉱山ごと(買収してきた鉱山などもあるため)に異なるシステムを入れており、本社や遠隔オペレーションセンタから一元管理は難しい

導入済みのシステムを変更することは難しいため、インターフェース標準化などが求められる

国を跨いだデータ共有

データローカライゼーションの問題があり、一部の国(中国、ロシア)からデータを持ち出せない

個別企業レベルでは、交渉が難しく、政府レベルで交渉していく必要あり

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5.1.3 ②システム環境の壁

鉱山開発現場は、IT/IoT化に必要不可欠な通信の課題が存在。

最先端技術活用には通信の課題が存在。また、旧式の機械等を使用している場合、操業データがアナログで管理されており、デジタル化されていないこともある。

課題 内容 対策

通信 通信網利用のためには電波法に則る必要性 鉱山現場は端から端までの距離が工場に比べ格

段に広い(15km以上は通常)ため、工場等とは異なる通信の開発が必要な可能性

<坑内掘り> 地下でGPS情報を利用する通信技術の未発達 坑内専用のWi-Fi、光ケーブル設置の必要

電波法に関しては産業向けIoT推進のための緩和・改正

鉱山での通信活用のため、 鉱山敷地に限った周波帯付与の可能性を検討

地下鉄など他産業の技術を 応用した研究開発推進

旧式のシステム 鉱山で使用しているシステムが旧式であり、 最新ITシステムへの連携が困難

新システム入れ替え支援

手入力管理 (技術的課題)

オペレータが作業ごとに採掘・運搬場所別の量を月報で提出

鉱山現場の入力作業の簡易化と自動センシング技術の開発

事前の計画立案が困難(技術的課題)

鉱山ビジネスは予測不可能なこと多々。各工程に必要な「モノ」が来てから行動。各工程で後手に回る行動が重なり、更に余剰が蓄積

鉱山の採掘から選鉱までが連携する鉱山IoTプラットフォームと可視化システムの開発

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5.1.4 ③データ定義・品質の壁

鉱山運営効率向上に向けては、経験知なども含め何をどこまで取得するかの定義が必要。

さらに定義づけに加え、データ取得頻度、精度などを投資対効果も換算し、現実的なレベルに落とし込む必要

課題 内容 対策

必要なデータの定義 取得データ、活用するデータの関連付け等の定義

取得データと活用したいデータの体系的な整理

データの品質 (取得頻度・精度)

満たすべきデータ取得頻度(回数)、精度

それぞれ異なる構造化・非構造化データをどのように整理して取り扱うか

求められるデータの質を整理

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5.1.5 ④運用上の壁

様々なITハードウェア・ソフトウェアが市場にはあるものの、その導入効果が不明確。

課題 内容 対策

IoT導入効果の証明 IoTを導入しても本当に望んだ成果が得られない懸念 例えば、疲労検知機能の存在は知っていても、その効果が定量的に分からないため、導入の意思決定がしにくい

IoT導入に関する効果を繰り返し検証し、定量的に算出

雇用の確保 IT/IoTの推進について、現地では、労務費の削減と受け止められ、雇用確保の観点から反対される可能性

地域、当該国と連携した雇用対策

保安規則との調整 ベンチレーションを需要に応じて調整することは興味があるが、ペルーなど一部の国では流量の規制があり導入できない

IoT導入により保安規則を 緩和する等の調整が必要

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5.1.6 ⑤会社・組織の壁

組織間に加え企業間でのデータ共有などには、情報漏えいの観点から一定のルールが必要。また、サイバーセキュリティ対策も重要。

人材入れ替わりが早い海外では、人材技能レベルによってIT環境を使いこなせないケースが存在。

課題 内容 対策

情報セキュリティ 鉱山IoTプラットフォームでデータを取り扱うことによって、情報漏えいやサイバーセキュリティのリスクが増大

情報セキュリティのルール整備等

人材と技能レベル 鉱山操業のIoT推進に適した人材がいない、または不足

現地国オペレーター人材は、人材の技能の問題に加え、人の入れ替わりも早い

IoT活用に精通した鉱山人材教育の推進等

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5.鉱山開発におけるIoT推進に関する 環境整備 5.1 鉱山開発におけるIT/IoTを支えるデータ環境整備 5.2 鉱山開発におけるIT/IoTに関するその他の環境整備

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5.2.1 オーストラリア(無人鉱山機器運用に関する指針)

(出典) JOGMEC資料より日立総研作成

2015年、West Australia州政府は 世界初の無人鉱山機器の安全運用に関する指針を公表

WA 州政府が無人機器の開発業者、無人機器を利用している鉱山会社、 専門家などからなるワーキンググループ及びISO事務局の助言等を得ながら

18 ヶ月をかけて作成

指針の背景

• WA州Pilbara地区の鉄鉱石鉱山では、無人トラックの運用が世界に先駆けて導入

• Rio Tinto が最も積極的に無人トラックを運用している他、BHP Billiton やFortescue Metals Group も導入を進めている

• Rio Tintoへのヒアリングによると、無人トラックで先行するRio Tintoの運用プロトコルが多分に参考にされているとのこと

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5.2.2 オーストラリア(衝突防止ガイドライン)

(出典) ニューサウスウエールズ州ホームページなどより日立総研作成

ニューサウスウェールズ州では 衝突防止のためのガイドライン(MDG2007)を2013年に策定

鉱山組合、機器製造メーカー、鉱山安全局(州政府機関)などがメンバーとなり、 意見を出し合いながらガイドラインを策定

ガイドラインの目的

• 衝突防止システムの導入促進(義務化はされていない)

• オペレーター、従業員、機械メーカー、規制当局が一体となって安全性を高

めるきっかけ

• 個々の鉱山ごとに必要な衝突防止システムは異なるため、どのシステムを導

入すればよいのかの判断材料

• ガイドラインには最低限度必要なことしか記載していないので、それぞれの

鉱山が衝突防止策について検討することが不可欠

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5.2.3 南アフリカ(鉱山における衝突防止のための規制)

(出典) Department of Mineral Resourcesホームページなどより日立総研作成

• 南アフリカ共和国の鉱物資源局(Department of Mineral Resources)は、「鉱業におけ る健康安全法」(Mine Health & Safety Act No.29 of 1996)のチャプター8を改正 (2015年2月27日)

• 本改正により、鉱山においては、一定の条件化ではダンプなどの無軌道型機械に 衝突防止機能の装着が義務付けられる。

主な規制対象

対象となる 機械

ダンプ等(レール上を走らない機械)

対象となる 場所

衝突が起こる重大リスクがある場所 (各鉱山会社がリスクアセスメントを行い判断)

装着義務付け機能

• 検知:近くの歩行者・機械を検知 • 警告:オペレーター及び歩行者への警告を行う装置 • 自動ブレーキ

その他 • 既存の重機であっても、必要とされれば自動ブレーキの装着を義務化

(2020年1月まで) 上記以外にも、装置の義務付けが、坑内掘り・露天掘りの別などによって細かく規定されている

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5.2.4 鉱山IoTに関するISOの動向

(出典) 関係者ヒアリングより日立総研作成

ISO/TC82 Mining で扱っている検討項目

N450 新業務提案投票結果 ISO/CD 19436.6 “鉱山-鉱山事故の分類”

N463 Autonomous Mining Sub-committee(自動化に関する分科委員会設立提

案)

N465 衝突(認知及び)開始 全般説明

N441 各シナリオでの衝突回避のための試験仕様と警報~機械停止に至る

レベル区分

ISO/TC82(Mining)では、鉱山機械メーカー主導で活動再開され、「鉱山自動化」や 「衝突回避」など、鉱山機械に関する検討が進められている。

鉱山開発におけるIT/IoT化を進める上では、このような検討状況についても 注視しながら取り組む必要がある。

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6.まとめ

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6. まとめ

近年の鉱山開発プロジェクトは、鉱石の品位低下・複雑化、鉱山の深部化・奥地化 等によって開発投資コストが増大傾向であり、海外資源メジャーは、IT/IoT活用した 生産性向上に対する取組を加速させている。

本事業では、我が国の鉱山会社や鉱山機械メーカー、有識者等へのヒアリング、検討会の開催を通じて我が国の鉱山会社が保有する鉱山に見合ったIT/IoT導入の可能性を検討した。

IT/IoT推進に関する技術的課題の検討の観点では、下記3つについて、検討を継続することで我が国の鉱山会社の競争力を高められる可能性があるという結論に至った。

• 鉱石性状及び採鉱等から得られたデータを活用した選鉱時の実収率の向上(ジオメタラジー)

• 生産最適化による稼働率向上

• 鉱山IoTプラットフォーム

IT/IoT導入による十分な効果を得るためには、 IT/IoT導入に関する環境整備についても留意が必要がある。

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7.参考資料 7.1 文献調査 7.2 検討会開催実績

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7.参考資料 7.1 文献調査 7.2 検討会開催実績

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大項目 中項目 資料名 発行者 発行年 概要

①鉱山開発における業務プロセスの把握

採鉱法

Surface Mining & Underground Mining Methods ~採鉱技術の動向紹介~

金属資源 レポート

2007

• 代表的な露天採掘法と坑内採掘法を整理した資料 • 露天採掘では最も広く採用されるベンチ・カット法について整理 • ベンチの形成から穿孔、発破、積込、運搬までのプロセスの流れを解説 • とりわけ穿孔、発破時における孔曲がりの問題と発破規格について詳しく解説 • 坑内採掘法では天盤を支持するsupported methodsと支持しないunsupported methodsをそれぞれ分けて整理

• 天盤を支持する採掘法としては代表的なRoom&Pillar(残柱式採掘法)とCut&Fill(充填採掘法)を解説

• 天盤を支持しない採掘法としてはSublevel Stoping(サブレベル・ストーピング法)とSublevel Caving(サブレベル・ケービング法)、それから近年注目を集めるBlock Caving(ブロック・ケービング法)を解説

• 国際ケービング研究(ICS:International Caving Study)の動向を参照 • 坑道の発破について、坑道を掘進するための発破と生産(鉱物を取り出す)ための発破に分けて解説

採鉱法 【資源開発基礎講座 第3回(平成18年12月18日開催)講演】鉱山開発概論

金属資源 レポート

2010

• 山冨二郎東京大学名誉教授による採鉱法の解説 • 代表的な露天採鉱法と坑内採鉱法の長所と短所をそれぞれ整理 • 露天採鉱法は"Mechanical Extraction(機械力や爆薬の力を使って鉱石を掘り出すもの)"と"Aqueous Extraction(水の力を使って採掘するもの)"の二つに分類

• 坑内採鉱法は支保採鉱法(supported)と無支保採鉱法(unsupported)を分類し、それぞれよく用いられる採鉱法を説明

• 坑内採鉱法は幅広くRoom&Pillar、Sublevel Stoping、Cut&Fill、Underhand Cut&Fill Stoping、Bench Stoping、Sublevel Caving、Block Cavingを比較しつつ考察

穿孔・火薬装填・発破

発破飛石対策について 発破勉強会 九州産業 保安部

2016

• 国内鉱山で発破飛石災害が増加していることをうけ、平成17年以降の発破飛石災害8件を対象に原因究明の勉強会を設ける

• 津久見地区保安対策協議会加盟鉱山及び東谷鉱山の協力。また九州大学とカヤク・ジャパン株式会社の参加

• 石灰石鉱山とけい石鉱山の合計8鉱山にアンケート調査をおこない、国内鉱山の発破の実態が詳しく解説されている

• アンケートにより解明されているのは以下の6つ 1 起爆方式 2 発破設計 3 穿孔作業を開始する時期 4 最小抵抗線の測定方法 5 使用している火薬類の種類 6 発破の飛石対策について

• 国内の発破規格について説明が詳しい • 穿孔、火薬装填、発破の細かく具体的な作業を知るうえで便利

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大項目 中項目 資料名 発行者 発行年 概要

①鉱山開発における業

務プロセスの把握

選鉱 低品位鉱石活用のための選鉱プラント及びペレットプラントの動向

神戸製鋼技報 2014

• 著者は神戸製鋼のエンジニアリング事業部門、鉄鋼事業部門に所属 • 鉄鉱石では一般的でなかった選鉱プラント、それに伴い今後、建設拡大が予想されるペレットプラントについて解説

• 各国に納入済みの自社開発ペレットプラントKOBELCO pelletizing systemについても解説 • 一般に鉄鉱石は選鉱プロセスを経ないが、近年、低品位化が進んだことで、既存鉄鉱石鉱山に選鉱プラントを組み込み品位を上げる試みが登場。また低品位鉄鉱石鉱山を開発する際に初めから選鉱プラントを組み込む動向も存在

• 選鉱プラントで鉱石を砕くと細かくなった精鉱の多くは焼結プラントで使用できなくなるた

め、ペレットプラントで塊成化する必要 ②IoT

推進に関する技術や活用の動向

(ア)どの業務プロセスに、どのような技術が存在し、どのように活用されているか

鉱山技術全般

100 Innovations in the Mining Industry

Minalliance 2012

• 鉱山業界に大きな影響を与える100のイノベーションについてまとめた資料 • Minallianceは2010年にカナダのケベック州で設立された官民が協力のための機関 • 本研究に役に立つ可能性のある技術は、下記の通り 24 Geometallugy:鉱山設計の段階から、Geologist、Mine Planner、Metallugisの 知見をあ

わせ採算性を分析する方法 26 Mobile Laboratory:穿孔で出てきたドリルコアを現場で分析するための可動式分析室 29 3D Geologcal Model、38 Integrated Development:鉱山の地図を3Dで表示し、様々な

情報を入れ込む 53 Ventilation on Demand:ベンチレーションを必要なところに必要な分だけ吹かせる技術 58 Ladar Sensor:ダンプなどにつけるセンサが高度化 59 Truck Tracking:ダンプのトラッキング技術の進化し、路面状況等の分析も可能となる 60 Underground Telecommunication:坑内掘り用の通信の新技術開発 61 Tire Pressure Monitoring System:タイヤ空気圧のセンシング 69 Pesonel Trucking:安全性向上などを目的として個人のトラッキングが行われる 72 Rick area map:露天掘り鉱山で、崩落など危険地帯を3Dマップ上に表示する技術 76 Fatigure measuring watch:疲労検知する腕時計 84 Tele-mining:鉱山の遠隔操業

Geometallugy

Geometallurgy – Optimising the resource

Gold Fields, Regina

Baumgartner 2012

• 2012年12月にジュネーブで開かれたOre Dressing, Geometallurgy and Environmental Geochemistry of Mine Waste の会議資料

• 著者はペルーの鉱山会社Gold FieldsのマイニングエンジニアのRegina Baumgartner氏 • Geometallugyに関する定義、技術的な仕組みについて簡潔にまとめてある • Geometallugyとは、別々の専門性を持って仕事に取り組 んでいたGeologist、Mine Planner、Metallugistが一同に 揃い鉱山開発の意思決定をしていくこと

• 鉱山設計の早期段階から様々な知見のある者が携わる ことにより、鉱山開発から選鉱までのあらゆるコストを盛り 込むことが可能。ある鉱床を掘った場合の採算をBlock Modelで可視化

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大項目 中項目 資料名 発行者 発行年 概要

②IoT

推進に関する技術や活用の動向

(ア)どの業務プロセスに、どのような技術が存在し、どのように活用されているか

ITインフラ

Information Technologies,

Telecommunication and Automation(ITC&A): DIGITAL CODELCO

Codelco 2010

• Codelcoが自社の情報技術・通信・自動化(Information Technologies,Telecommunication and Automation:ITC&A)に関する取組を公開した資料

• "CODELCO DIGITAL"として自社のビジョンを発信 • ITC&Aのインフラとして、WAN/LANネットワーク、ワイヤレス環境、ビデオ会議設備、700台のサーバー、11000台のラジオ機、OSI社のPIシステム、SAPのソフトウェアなどを導入

• 鉱山オペレーション統合のためAndina鉱山とTeniente鉱山で中央管制室を設置(Control Room Integrated Mining Process)

• コーポレートサポートセンターと集中プラント監視センターをKairos Mining社(CodelcoとHoneywellのジョイントベンチャー)が管理。部門・鉱山を越えた連携、具体的にはCodelco Norte、Andina、EI Tenienteの各鉱山オペレーションの統合をめざす

• CodelcoはNTTとジョイントベンチャーを組み、micomo社を設立(Codelco:66%、NTT:34%)。高速度の通信で地盤力学の構造・環境に関する変数をモニタリング

• Honeywellとジョイントベンチャーを組みKairos Mining社(Honeywell:60%、Codelco:40%)設立。選鉱プラントの自動化、制御システムに関するライフサイクルでのサポートを行う

• HighService社、日鉱金属、KUKA社とジョイントベンチャーを組みMIRS社(HighService:53%、 Codelco:36%、日鉱金属:9%、KURA:2%)設立。採鉱から金属加工までのプロセスにわたりロボティクスソリューションを展開

• Codelcoは2018年までに自動・遠隔オペレーション、リアルタイムでの協力意思決定(collaborative decision making)、標準技術の利活用、業務と競争力のアップデートをめざす

ベンチレーショ

ン Ventiration On Demand ABB 2009

• ABBがまとめたベンチレーション効率化に関する資料 • 従来は一定量吹かせていたが、必要なところに必要な分だけ通気するという目的で開発された技術

• 坑内各所にセンサを置き、酸素濃度、二酸化炭素濃度、ガス濃度などのチェックし、坑外に置かれるメインファン、坑内のサブファン、通気をコントロールするためのドアなどをリアルタイムで調整することにより、ベンチレーションをコントロール

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大項目 中項目 資料名 発行者 発行年 概要

②IoT

推進に関する技術や活用の動向

(イ)トップランナーのIoT

活用動向等

自動化

Rio Tinto Mine of the Future™

Next Generation Mining:People and Technology

working together

Rio Tinto 2014

• Rio Tintoが自社の取組みMine of the Future™についてステークホルダーに公開 • 自社の先進的取組が鉱山オペレーションの安全性と生産性を向上させていることを解説 • Mine of the Future™の目的を2つ列挙 ①Surface:大規模露天掘り鉱山で生産性を大きく向上 ②Recovery:複雑な鉱体からより鉱石の回収率を向上

• 以下、項目ごとに取組の具体的内容を紹介 • Networking:研究開発に向けてグローバルネットワーク構築を加速。企業や大学等の研究機関と連携し、全世界に6つのGlobal Research Centresを設置

• Intellectual Property:知的財産権の保護に向けて専門チームを設立。Mine of the Futureから長期的な利益を生み出す仕組みづくりに着手

• People:自動化推進にあわせて優秀な遠隔オペレーターの確保。PerthのOperations Centreに400名の従業員

• Productivity:自動ダンプ、自動ドリル、AutoHaul™、PeakFloat™を導入済み • Big Data:Mine Automation Systemにより機器・地質などの主要データをリアルタイムのモデルに反映。またRTVis™ソフトウェアによりユーザーフレンドリーな3Dディスプレイに鉱山を可視化。Operations Centre、Excellence Centreによりデータを活用したオペレーション効率化を実現

中央監視・全体最適化

ABB Underground Mining

Mobile Integration ABB 2015

• ABBが注目する坑内掘り鉱山市場向けのソリューションを公開 • 坑内掘り鉱山において、中央監視室(Mine Operation Center)を司令塔としたオペレーションの全体最適を実現

• ソリューションとしてElectrical Integrationを展開。プロセスオートメーションと電力オートメーションを共に同一のプラントコントロールシステムにて行う

• Mine Operation Centerでは以下4機能 1 Production Management, Fleet Management 2 Energy Management, Asset Management 3 Asset & Personnel tracking, Video and voice communication network 4 Process Control, Tele-remote Control, Access Control

• 機器稼働率最適化、最適な生産計画の作成、生産フロー最適化などにより、同一のリソースから10~20%の生産キャパシティ向上

• Fleet Management System、Process Control System、Mine Production Systemの諸システムの適切な連携

• ABB MineInsight™ではMineInsight™専用のサーバー を通じ、シフト作成者(Execution Manager)と車輌 オペレーター(Fleet Manager)が意思疎通。また エンジニア等の第三者(3rd Party)もMineInsight™ により遠隔から機器やシフトの確認・ABB MineInsight™により以下のように画面で機器状態を可視化

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大項目 中項目 資料名 発行者 発行年 概要

②IoT

推進に関する技術や活用の動向

(イ)トップランナーのIoT

活用動向等

通信、ベンチレーション

Things enables the Mine of Tomorrow Today

(Canadian Mining Firm enhances Workplace Safety and Boosts

Efficiency)

Cisco 2015

• CiscoがカナダÉléonore鉱山で導入したソリューションCisco® Connected Miningの紹 • Cisco® Connected Miningにより鉱山を保有するGoldcorpは意思疎通などオペレーションを1つのマルチ機能で且つセキュリティも安全なIPネットワークで行うことが可能になった

• Ciscoのネットワークは坑内の地下深く苛酷な環境でも機能し、鉱山運営者はどこに労働者と機器があるかを中央から常に把握できる。非常事態対応の質の向上からエネルギーマネジメントまで行える。従業員はi-Padやi-Phoneを坑内に持参し、使うことができる

• 特に目に見える成果が上がったのはベンチレーション。RFタグにより労働者と機器の位置、機器の稼動情報を把握できるため、ベンチレーションオンデマンドが実現。120万CFMの空気量消費が65万CFMに抑えられ、年150万~250万ドルを削減

鉱山技術全般

Mining for innovation: How IoT is transforming

Oil, Gas and Mining Microsoft 2016

• Microsoftが自社ソリューションに限定せず、広く資源業界でのIoT活用例を紹介 • 石炭鉱山では機械学習(Machine Learning)を地震のモニタリング・予知に活かす取組み • Schneider Electricは各システム・デバイスをつなぐことで鉱山オペレーションのIoT化に商機を見出す。安全性向上、非常事態対応、鉱石トラッキング、エネルギーマネジメント、予防保全等

• Freeport-McMoRanはAccenture Hybrid Cloud Solution for Microsoft Azureを産業IoTプラットフォームとして活用し、オペレーションを効率化。データからの知見抽出により意思決定の高度化、安全性向上、アセット管理効率化等を達成

• シンガポールにあるAccentureのAnalytics Innovation Centerはシンガポール経済開発庁、Microsoftと協業。調達、市民の安全、リソース活用、スマートグリッド、職場改革などに解析技術を応用するイノベーションハブとして機能

②IoT

推進に関する技術や活用の動向

(ウ)将来のIo

T

活用構想

カナダの鉱山IoT動向

Mining & Metals + Internet of Things:

Industry opportunities and innovation

MaRS Market Intelligence

2014

• MaRSはカナダオンタリオ州のOntario Network of Entrepreneursのメンバー。著者2名は共にMaRS Market Intelligenceの産業アナリスト

• 保守的なカナダ資源業界にIoTを導入する際の課題と見通しをまとめてある。同時にIoTの全体像の簡潔な説明もあり

• 有識者へのヒアリング、調査機関や各ベンダーの資料などに基づく内容 • 背景に、資源価格低迷をうけてIoT導入による競争力強化をめざす機運。2014年の業界Top10 Trendsの上位5つはProductivity issues, Price issues, Innovation issues, Financing issues, Capital allocation issues

• IoTで豪州など他国の取組みに遅れをとることでカナダが業界のリーダーシップ的地位を失うことを危惧

• カナダがIoTを導入する際の課題を、業界文化、職場環境、坑内掘り鉱山が多いという事情、気象条件、システム的思考の欠如、政府の規制、研究開発環境、標準化・互換性という観点からそれぞれ説明

• 一方でカナダのアドバンテージとしてNorthan Ontario地方、特にGreater Sudbury Areaに坑内掘り鉱山むけテクノロジーのクラスターが台頭していることを指摘。Greater Sudbury Areaをマイニング業界のシリコンバレーとして紹介 ・中でも特に注目に値する7社は、会社プロファイルとCEOインタビューを巻末に掲載

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大項目 中項目 資料名 発行者 発行年 概要

②IoT

推進に関する技術や活用の動向

(ウ)将来のIoT

活用構想

データの統合

Productivity in mining: now comes the hard

part EYGM Limited 2014

• EYGMがSustainable Minerals Instituteと協力して調査 • 鉱山会社のエグゼクティブに60を超えるインタビュー調査 • 2014年現在は資源価格が厳しい。2004年から2012年まで労働生産性はほぼ右肩下がりなので向上が必須。生産性向上へ向けたボトルネックの洗い出し 前レポート"Productivity in mining-a case for broad transformation"で指摘のように、データ統合ギャップ(The integration gap)が生産性にとって重要なイシュー。各プロセスごとに個別最適になっているが、全体最適をめざす必要

• 技術面とマイニングの業界文化の両面で改善の余地 • 文化に関しては従業員のエンゲージメント、報酬制度改革、システム的思考を持った人材の確保が重要。技術に関してはデータのVolume,Variety,Veracity,VelocityのVsが統一出来ていないのが課題

• イノベーション候補を9つ列挙。以下の通り 1 Deep in situ mining:新リーチング方法 2 Grade Engineering® :粉砕以前に低品位部位を分別し破棄 3 Ultra-high intensity blasting:化学エネルギーを利用した発破 4 Real-time planning and visualization:時空間の4D分析、ゲーミフィケーション等 5 Data Analytics:データ収集・分析・意思決定への利用 6 Automation of load and haul:積載・運搬の自動化 7 Virtual reality mine training:バーチャル空間での機器操縦トレーニング 8 3D Printing-augmenting the mining supply chain:3Dプリンタでサプライチェーン改革 9 Vendor-managed inventory:製造業での実績をマイニング業界に転用

鉱山技術全般

Disruptive Innovation in Digital Mining

Procedia Engineering

2016

• 著者3名はアクセンチュアのリサーチャー • 'SYMPHOS 2015',3rd International Symposium on Innovation and technology in the Phosphate Industryと論文の冒頭にあるが、SYMPHOSは2年に一度開催される世界的な会合。リン酸塩産業の主要なメンバーが集まる

• マイニングにおけるデジタルトランスフォーメーションが主題。デジタルトランスフォーメーションを以下に分類 1 Remote Operation Centers:鉱山、鉄道設備、港などの連携を深化し全体最適化 2 Autonomous Operations:ダンプ、ドリル、リクレーマーの無人運転 3 Mobility:労働者、機器、アセットの現在位置把握デバイス活用 4 Analytics:発展途上も、データアグリゲーションまで実行できている企業はあり 5 Digital Worker:ウェアラブルデバイス、拡張現実などの活用 6 Drones:ベルトコンベヤや送電線を空中から監視 7 Intelligent Sensors:ビデオ解析つきカメラ等の最先端センサー

• デジタルトランスフォーメーションから実際に利益を生むために必要なことを以下列挙 a, Integration:異なる鉱山、事業部、システムが連携できている必要 b, Multi-paced:イノベーションの更新が早いものと遅いものが巧みに共存する必要 c, Resilience:IT/OTの情報セキュリティを強靭にする必要

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大項目 中項目 資料名 発行者 発行年 概要

③IoT

推進に関する制度動向

国際業界団体

(ICMM等)とCSRの取組み

Sustainablitiy Report 2016

JX金属㈱ 2016

• ICMMのメンバーとしてJX金属はSustainability Reportを毎年作成。ICMM(国際金属・鉱業評議会)の10原則および「検証手順書」に基づき、「GRIガイドライン*第4版」および「GRI鉱山・金属業補足文書」に準拠して作成

• ICMM(International Council on Mining and Metals)は世界の主要鉱山・製錬会社が集まり、環境保全、安全衛生、雇用労働問題、人権等に関する活動を推進する、鉱山・製錬分野でのCSRに関する国際協議機関

• ICMMは「持続可能な開発のための10原則」を提唱しており、会員企業はこの原則に拠った事業活動を実践しながらベストプラクティスを共有、業界全体のパフォーマンス向上をめざす

• 本レポートの主な内容は以下 事業概要、労働安全衛生の確保、人材育成・活用の推進、環境の保全、 資源の有効利用、コンプライアンスの徹底、その他の報告事項、データ集

• IoTによる社会貢献(CSR)事例の紹介もあり

国際業界団体

(ICMM等)とCSRの取組み

Sustainablitiy Report 2015

Glencore 2015

• 国際団体GRI(Global Reporting Initiatives)のガイドラインに則って作成・公開されたGlencoreのSustainability Report。本レポートは同時に同時にUNGC(United Nations Global Compact)、ICMMの諸原則にも則っている。

• 本レポートの主な内容は以下 ・ Overview ・ Governance ・ Our People ・ Society ・ Environment ・ Regional Reports ・ Additional Information

安全性 向上

Critical control management(CCM)

ICMM 2016

• Critical Control Managementは鉱山で毎年死傷者が発生している現状を受け提唱 • ICMMは2014-2015年に"Health and Safety Critical Control Management-Good Practice Guide"、2015年には"Critical Control Management-Implementation Guide"を公表

• 前提としてICMMによる鉱山オペレーション死傷者の原因・分布などの分析。たとえばRioTinto,Barrick,JX NipponなどICMM参加メンバー毎に死傷者発生レートを記録。また各国ごとに死傷者の発生人数を記録

• 分析の結果、最も死傷者が多かった国が南アフリカで、2015年には2位のザンビア(7人)を大きく上回る24人の死傷者を出した。南アフリカは66%が坑内掘り鉱山

• 2015年全世界の死傷者の原因分析では、最も多かったのが地盤の崩落(Fall of Ground)。それに次いで多かったのが機械と運搬・輸送

• 死傷者の原因を更に深く分析するためICMMは死傷者の数と他の変数の間の相関関係を導出。結果として大きな相関関係があったのはHPI(High Potential Incidents:一歩間違えていれば死傷者が出ていた事故)の数

*HPI自体の定義・解説は本ICMM資料にはなかった。そのため日立総研が豪州クイーンズランド州石炭鉱山におけるガイドライン"QGN07-Guidance to Coal Mines in reporting Serious Accidents and High Potential Incidents to an Inspector of Mines or an Industry Safety and Health Representative"を確認

• ICMMはCritical Control Managementプロセスを以下9つに整理 1 Planning the process 2 Identify material unwanted events(MUEs) 3 Identify Controls 4 Select the critical controls 5 Define performance and reporting 6 Assign accountability 7 Site-specific implementation 8 Verification and reporting 9 Response to inadequate critical control performance

• 各プロセスにカメラやセンサーによるモニタリング(IoT活用)の余地があり 83

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大項目 中項目 資料名 発行者 発行年 概要

③IoT

推進に関する制度動向

安全性 向上

Vehicle Interaction Brochure

EMESRT (Earth Moving

Equipment Safety Round

Table)

2016

• EMESRTはAlcoa、Anglo American、Barrick、Glencore、Newcrest、Rio Tintoの各鉱山会社がメンバーのマイニング業界国際団体。鉱山機器の安全性(Earth Moving Equipment Safety)を向上させるため、製品間の共通のプロトコル開発をめざす

• 具体的にEMESRTは、鉱山機器メーカー(OEM)、鉱山機器メーカー向けの近接検知システムベンダー(PDS)に鉱山オペレーションの安全性向上のため、共通のプロトコル開発の要求をデザイン哲学の形式で提出。自社製品の囲い込みによって競争力強化をはかるOEM、PDSに対し、鉱山会社の側からの要求を伝達

• 本レポート"Vehicle Interaction Brochre"は鉱山車輌機器の衝突(Vehicel Interaction)に関するフォーカス領域として、段階的に以下の9つを列挙 1 Site Requirements:鉱山側の要求事項 2 Segregation Controls:立ち入り区間やタイムスケジュールの分担 3 Operating Procedures:メンテナンスや交通のルール 4 Authority to Operate:トレーニング、運転ライセンスの付与など 5 Fitness to Operate:疲労、飲酒状態の確認などオペレーターの状態把握 6 Operating Compliance:プレ試験などコンプライアンス 7 Operator Awareness:オペレーターへの危険通知 8 Advisory Controls:オペレーターへの具体的指示 9 Intervention Controls:遠隔からの強制的オペレーション停止

• 以上9つのフォーカス領域においてプロトコル非統一が原因の非常事態が起こらないような製品開発をOEM、PDSに要求

• とりわけ7~9はオペレーション最中のオペレーターに指示を出し、危険を察知・回避させる段階。この段階でオペレーターへの指示に遅れや乱れがあると致命的に危険

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大項目 中項目 資料名 発行者 発行年 概要

③IoT

推進に関する制度動向

安全性 向上

EMESRT-a 'Safety by Design' initiative

operated by the global mining industry

EMESRT (Earth Moving

Equipment Safety Round

Table)

2016

• 2016年2月にEMESRTがSAIMM(Southern African Institute of Mining and Metallurgy)に提出したプレゼンテーション資料

• OEM-PDS interface protocol(鉱山機器メーカーとソフトウェアベンダーの製品インターフェースプロトコル)に関するプレゼンテーション

• 前提として、鉱山機器のInteractionについて、EMESRTから以下の9つの要求事項 1 Site Requirements:鉱山側の要求事項 2 Segregation Controls:立ち入り区間やタイムスケジュールの分担 3 Operating Procedures:メンテナンスや交通のルール 4 Authority to Operate:トレーニング、運転ライセンスの付与など 5 Fitness to Operate:疲労、飲酒状態の確認などオペレーターの状態把握 6 Operating Compliance:プレ試験などコンプライアンス 7 Operator Awareness:オペレーターへの危険通知 8 Advisory Controls:オペレーターへの具体的指示 9 Intervention Controls:遠隔からの強制的オペレーション停止

• とりわけ7~9のオペレーターへの危険通知・強制オペレーション停止に焦点。レベル7~9実現に向けたEMESRTの見通しをSAIMMに伝達

• レベル7~9にかけて、2014年から2016年までのフォーカスエリアは以下3つ a. Underground Coal(Diesel動力) b. Underground Hard Rock(Diesel動力) c. Surface(Diesel動力) • Sensing⇒Rules/Intelligence⇒Vehicle Interface】の三段階のうち、2016年のフォーカスエリアは【Rules/Intelligence⇒Vehicle Interface】の箇所。つまり近接検知システムと各鉱山機器の互換性が焦点。

• 【Sensing⇒Rules/Intelligence】、つまりセンシング機器と近接検知システムの互換性については検討の必要も、現在のフォーカスエリアではない

• 2014年9月より鉱山会社、OEM、PDSの主要メンバーが集まりワークショップ開催。各ワークショップの簡単な概要も記載

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大項目 中項目 資料名 発行者 発行年 概要

④IoT

推進に関する投資動向

(鉱山開発におけるIoT

推進の市場ポテンシャルの把握)

鉱山業界における

IoT

コネクテッド採掘の世界市場:2016年~2020年

Technavio (Infiniti

Research Ltd. 2016

• 世界のConnected Mining marketは2016年から2020年の間、17.46%のCAGR(年平均成長率) で拡大することが見込まれる

• 主役となるベンダーはABB、Cisco、コマツ、日立建機、キャタピラーと予測 • レポートの構成は以下の通り 第1章 エグゼクティブサマリー 第2章 当レポートの調査範囲 第3章 市場調査手法 第4章 イントロダクション 第5章 市場情勢 第6章 タイプ別の市場分類 第7章 カテゴリー別の市場分類 第8章 世界のコネクテッド採掘市場:カテゴリー別 第9章 地理区分 第10章 市場成長因子 第11章 市場成長因子の影響 第12章 市場の課題 第13章 成長因子と課題の影響 第14章 市場動向 第15章 ベンダー情勢 第16章 主要ベンダーの分析 第17章 付録 第18章 Technavioについて

鉱山業界における

IoT

Connected Mining Market by System and Solution (Connected Asset, Connected

Logistic, Connected Control System, Safety

and Security, and Remote Management Solution), by Method

(Surface and Underground Mining), by Service, and by Region - Global Forecast to 2020

Markets and Markets

2016

• IoT等を活用したSmart Mining marketは2015年の38億ドルから2020年には99億ドルに成長と見込み。CAGR(年平均成長率)は約21%

• 本レポートの射程範囲は以下 • システム・ソリューション別 •Operational Data Processing and Analytics •Smart Assets •Smart Logistics •Smart Control Systems •Smart Safety and Security System •Remote Management Solution • サービス別 •Consulting •System Integration •Support and Maintenance

• 採掘方法別 •Surface Mining •Underground Mining

• 地域別 •North America •Europe •Asia-Pacific (APAC) •Middle East and Africa (MEA) •Latin America

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大項目 中項目 資料名 発行者 発行年 概要

④IoT

推進に関する投資動向

(鉱山開発におけるIoT

推進の市場ポテンシャルの把握)

鉱山業界における

IoT

How digital innovation can improve mining

productivity

Mckinsey&Company

2015

• 著者はMckinseyのシドニーオフィス、サンティアゴオフィス、スタンフォードオフィス勤務のコンサルタント1名づつとシドニー大学教授の合計4名

• マイニング業界で起こりうるデジタルイノベーションを以下4つに分類 1 Data, computational power, and connectivity ⇒センサーによる機器や送電網からのデータ入手・活用 2 Analytics and Intelligence

⇒機械学習、洗練された統計手法、データ統合など 3 Human-machine interaction ⇒スマートフォンらモバイルデバイスを介して機械と会話 4 Digital-to-physical conversion ⇒自動で稼動する産業ロボットの活用 • デジタルイノベーションが全世界のマイニング業界に2025年にもたらす経済インパクトを、年間3700億ドルと試算。この値は2025年の全世界のマイニング業界のプロジェクトコストの17%を占める

• 経済インパクトの試算はMckinsey Global Instituteによるもの。オペレーションの管理が80%実行され、機器のメンテナンスが100%実行されている仮定(high-adoption-rates case)のもとに試算

• デジタルイノベーションの鍵は技術それ自体よりもイノベーションをビジネスの全側面から引き受けること。テクノロジーが自己目的化していないか、システムエンジニアとしての立場に近づけるか、新しいテクノロジーを受け入れる文化が醸成されているか、長短期両方の視点を持っているか、組織が新しい環境に適応できるかなどが重要

⑤IoT

推進に向けた協業・

コンソーシアムの結成動向

産業インターネット コンソーシアム

Chile's Codelco the first miner to join the Industrial Internet

Consortium

MINING.COM 2015

• チリのCodelcoが鉱山会社で初めてIndustrial Internet Consortium(IIC)に参加 • 特にCodelcoが関心を持つアプリケーションは労働者の位置把握サービスと遠隔からの機器監視

• Codelcoは当文献発行の約2年前からデータとデジタル技術を活用したオペレーションに舵を切る。"Codelco Digital"計画では採掘の自動化、長期的な視点に立ったデジタル化推進をめざす

• 現在はダッシュボードによるリアルタイムデータ可視化、AHSダンプの導入、持ち運び可能なデータ解析アプリケーション等を活用してオペレーション全体を効率化

• 現在は更に徐々にではあるが坑内の危険な環境から労働者を引き離す形が見え始めているとのこと

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大項目 中項目 資料名 発行者 発行年 概要

⑤IoT

推進に向けた協業・

コンソーシアムの結成動向

ビッグデータ 解析

Komatsu and GE to offer “big-data”

analysis for mining customers

Komatsu News &

Publication 2015

• コマツは自社HP(英語)にてGEとの協業について情報公開 • コマツはKOMTRAX、KOMTRAX Plusなど自社ICTアプリケーションから得たデータを米国にあるGEのデータセンターに送信。GEが航空機エンジン、ガスタービンにおいて蓄積したビッグデータ解析の実績を鉱山機器メンテナンスにも応用し、顧客の鉱山会社に更なる付加価値の提供を狙う

• 燃費・電力消費を抑える、機器の運行スケジュールをより効率化するなどのIoTソリューションにより、年数百ドル(10%以上)のコスト削減をめざす。コマツのICT・IoT技術にGEのデータ解析技術を組み合わせ、シナジー効果を生みだす

• 2014年1月にコマツとGEのTransportation部門がジョイントベンチャーKomatsu GE Mining Systems LLC を設立して以来、コマツとGEの両社は提携を加速

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7.参考資料 7.1 文献調査 7.2 検討会開催実績

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7.2.1 鉱山開発におけるIoT推進に関する検討会について①

本調査事業内に、鉱山開発におけるIT/IoT等推進による生産性や安全性向上の在り方についての検討を行うことを目的に「鉱山開発におけるIoT推進に関する検討会」を設置。

座長 山冨 二郎 東京大学 名誉教授

委員

池上 三四郎 日鉄鉱業株式会社 生産技術部 鉱務課 課長

板倉 賢一 室蘭工業大学 大学院工学研究科 しくみ情報領域 教授

掃部 秀樹 住友商事株式会社 鉛・亜鉛事業部 鉛・亜鉛・銀プロジェクトチーム チームリーダー

皿田 滋 筑波大学 システム情報系・知能機能工学域

杉本 豊和 株式会社日立製作所 社会イノベーション事業推進本部 マイニング事業推進本部 部長

堀江 周 JX金属株式会社 資源開発部 参事

又木 毅正 株式会社野村総合研究所 グローバルインフラコンサルティング部 上級コンサルタント

薮 英伸 住友金属鉱山株式会社 資源事業本部 技術部 兼 シエラゴルダプロジェクト推進室 担当課長

オブザーバー

荒木 春彦 株式会社日立製作所 社会イノベーション事業推進本部 マイニング事業推進本部 担当部長

桑野 兼一 JX金属株式会社 技術本部 企画管理部 技師

塩澤 輝昌 住友商事株式会社 鉛・亜鉛事業部 鉛・亜鉛・銀プロジェクトチーム 部長付

塩原 博之 JX金属株式会社 技術本部 情報システム部 部長

中村 真人 パンパシフィック・カッパー株式会社プロジェクト推進部 マネージャー

<委員メンバー>

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7.2.2 鉱山開発におけるIoT推進に関する検討会について②

<検討実績> ■第1回・第2回(合同開催):平成29年2月15日 ①検討会の設置趣旨について ②一般的な鉱山開発プロセスにおける課題とIT/IoTの活用状況 ③鉱山開発プロセスに沿ったソリューションごとのIT/IoTの取組 (ロックドリル、ショベル・ダンプ、クラッシャー、積込及び小割作業) ■第3回:平成29年3月9日 ①鉱山開発におけるIoT推進に関する論点整理 ②豪州現地調査報告 ③鉱山開発のIT/IoT化に関する取組例 ・鉱山IT/IoTの取組について ・鉱山情報の共有化について ④IT/IoT推進に関する全体討議 ■第4回:平成29年3月22日 ①鉱山開発におけるIoT推進に関する技術的課題の論点整理 ②IoT推進に関する環境整備 ③鉱山開発におけるIoT推進による生産性・安全性向上策に関する基礎調査 報告書案(骨子)