-統合研究の40年- - ジャン・モネeu研究 ... · 構成 • はじめに •...
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構 成
• はじめに
• 1.欧州統合研究の開始:西ドイツにて• 2.EMS(欧州通貨制度)
• 3.市場統合の研究へ
• 4.通貨統合へ• 5.21世紀型:東方拡大と支配=従属型統合
• 6.非連帯型通貨同盟とユーロ危機
• おわりに
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はじめに
• 自由に勉強した学部6年間:工学部から経済学部へ 長編時代、資本論、マル=エン
• 大学院時代 リカードの国際経済論 恩師木下悦二先生の国際価値論・世界経済現状分析・欧州経済統合の5つの論文(1971年)
• 修士論文 「長期停滞論の再検討」• 助手時代 帝国主義論:レーニン全集など• 下関市立大学経済学部 国際経済論担当• 欧州経済統合研究の開始 1977年7月~79年7月 西ドイツ留学(ケルン大学経済政策研究所)
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1.欧州統合研究のスタート
• 1970年代半ばの日本のEC経済統合研究• (1)統合懐疑論 資本主義諸国の不均等発展(ソ連の西欧帝国主義批判を受けて)→統合失敗説
• (2)「スネーク」=経済・通貨同盟との(誤った)認識が主流
• (3)木下悦二説
• 経済・通貨同盟は「経済分野における国家形成」• 「欧州統合は、きわめて長期の展望に立ってはじめて、現実に辿りつつあるジグザグの道の評価も可能になる」
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1970年の経済・通貨同盟の定義
• 1970年6月ECOFINの定義:集権型EMUモデル
• →ウェルナー報告のベース
• 「EMUとは も重要な経済政策的決定が共
同体次元で行われ、したがって、それに必要な権限が共同体次元へ委譲されることを意味する。それは過程の非可逆性を保証する統一通貨の導入により終結する。」
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第1次EMU計画:統合の動因
• 1.独仏為替平価変更によるCAP価格制度の混
乱→平価変更除去の要請→通貨統合
• 2.フランス的関心 ①アメリカのドル切り下げ活動への牽制:「西欧統一通貨で対抗」のポーズ、②西ドイツに準備基金を拠出させて仏フランの為替相場安定に使用する→マネタリスト戦略
• 3.西ドイツ的関心 仏の動きに対応しつつ、着手を引き延ばす→エコノミスト戦略
• 帰結 西ドイツの単独フロート(71年5月)で破綻
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ケルン大学で• 破綻した第1次経済・通貨同盟の研究からスタート
• Werner報告(1970年)を中心に。Rainer Hellman の解説付き資料集“WWU”。当時の西ドイツ諸文献
• ドイツの歴史:諸邦がドイツ帝国に統一(関税同盟から国家統一へ。通貨統一、国家制度統一)
• →アングロサクソンの「 適通貨圏理論」とは一線
• 「エコノミスト」としての西ドイツ:構成国の間で先ず「基礎的不均衡」が生じなくなるまで経済政策の協調を徹底し、そ
の後通貨面の統合に進むべし。
• 挫折した第1次経済・通貨同盟の反省→「マルジョラン報告」(75年)、「マクドウガル報告」(77年)=ケインズ型同盟
• “law & economics (political economy)”の重要性7
追い風
• EMS(欧州通貨制度)提案→スタートを観察
• 78年4月シュミット提案、ジスカール積極支持→3大国財務省エキスパート協議(イギリス離脱)→7月ブレーメン合意→12月首脳会議「EMS決議」。出発から2年後に欧州通貨基金へ。
• 79年3月EMSスタート
• 79年第1回欧州議会直接選挙
• FAZ+FT、ドイツの評論、研究所での討論
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『欧州統合』有斐閣: 初の著書
• 『欧州統合』有斐閣経済学叢書1982年刊(1981年3月執筆終了)
• 段階規定 ECSC→EEC→経済・通貨同盟段階(1970年以降) 「1世代かかる」「きわめて長期の過程」
• 経済・通貨同盟の「理念型」を提出
• 当時の時点までの統合・通貨協力などを分析• 為替相場同盟(「スネーク」「EMS」)と経済・通貨同盟との峻別
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経済・通貨同盟の認識
1981年完成の拙著ドロール(1989年)=ファンロンパイ(2012)経済同盟 通貨同盟
政治枠組み経済政策枠組み財政枠組み
銀行同盟
財政政策協調 連邦型中央銀行制度
地域政策
競争政策 統一通貨
単一市場
経済統合(狭義) 通貨統合
そのほかの国民経済類似の関係形成(産業政策を含む)
中央機関の通貨制度的=通貨政策的経済政策
構造政策(地域政策・社会政策)
連邦型中央銀行制度
共同市場 統一通貨流通
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著書の編成
部と章の編成• 第1章 方法論
• 第Ⅰ部 通貨統合• 2章 経済・通貨同盟計画
• 3章 “スネーク”• 4章 EMS
• 第Ⅱ部 経済統合• 5章 共同市場
• 6章 社会政策と地域政策
• 7章 産業政策
部と章の編成• 第Ⅲ部 制度統合• 8章 ECの制度と政策決定
• 9章 EC財政の統合
• 10章 欧州理事会と制度統合
• 第Ⅳ部 対外政策• 11章 欧州政策
• 12章 低開発圏政策-ロメ協定-
• 13章 欧州政治協力
• おわりに→限界→先がはっきり見えなかった(「統合の暗黒時代」。超長期で書くべきだった)
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2.EMS(欧州通貨制度)の研究
研究プロセス• 「EMS-その性格と制度-」金融
経済、第180号、1980年2月
• ECのバスケット通貨ECU(欧州通貨単位)の一考察、85年、東北大
• EMSの安定と経済政策、『日本EC学会年報』第7号、1986年
• EMS(欧州通貨制度)の段階区分と時期区分、 研究年報『経済学』(東北大学)Vol.58、No.3、1997年1月
著書:田中編『EMS-欧州通貨統合の焦点-』有斐閣、1996年
• 東北大学院ゼミ生の就職の一助にと
• [EMS+1992]→[EMU+1992]
• 日本・アングロサクソンの支配的潮流=「EMU失敗
論」に反論
• 日本で唯一:EMSの体系的研究書→第4刷まで
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EMSの変容:マルクの基軸通貨化
マルク:為替媒介通貨へ• 1994年現地調査 ロンドンなど
• 「ドイツ・マルクの為替媒介通貨化と国際ポートフォリオ投資-コンヴァージェンス・トレイドを題材に
-」『経済学』(東北大学)、1995年
• 世界経済評論論文
• 「拡大EUか、ドイツ経済圏か?」第五回日仏経済学会議、日仏経済学会、1996年(早大、西川潤先生)→ドイツ統一・東への拡大によりEU北東部が「ドイツ経済圏」化へ
• 為替媒介通貨(Vehicle Currency: VC)
「欧州金融・通貨圏」位置づけ• 市場統合・資本移動自由化
• →域内クロスボーダー資本移動急増→マルク為替媒介通貨化→EMSの基軸通貨へ(1990年頃)
• →1992/93年EMS危機をマルク介入で切り抜け(ドル使用せず)
• マルク強化と欧州金融・通貨圏強化の両面→通貨統合のインフラ=通貨統合の現実的基盤
• 単一市場+ロンドン金融市場がマルクVC化支持(ドイツのみの力ではない)
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ヨーロッパという地域
世界危機はヨーロッパから
• 1929年大恐慌:アメリカ発10月24日→共和党政権の
政策ミス→大恐慌へ→ルーズベルトのニューディール
• 1931年ヨーロッパへ波及:5月オーストリアの銀行破綻→ドイツへ、イギリスへ→世界へ
• ドイツ:ヒットラー政権へ
ユーロがなかったら・・・・
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3.市場統合の研究へ
• “Completing the Internal Market” 1985‐1992
• 欧州委員会主導→ドロール
• 域内市場:非関税障壁の「全廃」→
• 財・サービス・資本・人の域内自由移動or「域内に国境のない地域」の形成(282のEC法令採択)
→広域国民経済形成EU大企業:単一市場以前=一国一
生産拠点(”everything, everywhere”)
戦略」→生産の域内 適配置へ[国内経済タイプの企業競争]
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仮説の検証:『EC統合の新展開と欧州再編成』
東洋経済新報社、1991年9月
EC現地の状況
• 1980年代前半 Euro‐pessimism, Euro‐sclerosis(動脈硬化症)
• →製造業:米英日との対比
• 米英金融グローバル化開始
• →対抗措置→85年から統合
による飛躍(アメリカ型巨大市場
形成)→経済活性化
• ミッテラン政権リーダーシップ
• 88年「92年フィーバー」へ
報告者の活動• 1982年10月 東北大学赴任
• 市場統合→『欧州統合』(1982年)の「経済統合第1カテゴリー(「共同市場」)」具体化が眼前で!
• 欧州委員会「域内市場統合白書」(1985年)翻訳
• 『チェッキーニ報告』(1988年)翻訳
• 現地実態調査• 88年2カ月(BRU、現地日系企業)、
89年(欧米大企業、日系企業再訪)、
• 90年 ECVP:ペリフェリ諸国、ロルフ・ハッセ教授共同研究
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単一市場とペリフェリ:生産ネットワークとドロール・パッケージ
• スペイン、ポルトガル、アイルランド→• 西欧生産ネットワークへの組み入れ[アイレは米国資本進
出も]→工業化進展と所得上昇、失業率の継続的低下• ギリシャは市場統合の枠外:国有化と競争の排除
• ドロール・パッケージ:1987年発表 EC地域政策資金を92年までに倍増、資金供与方式の全面的転換
• →経済同盟「第2カテゴリー構造政策」の第1歩
• さらなる進展:マクドウガル報告(1977年)→EU(ユーロ圏)規模の失業手当制度(社会政策)
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3.通貨統合
• 第1次EMU計画:BW固定相場制・資本移動規制・各国が自国市場保護=単一市場不在→「空想的EMU」→失敗の反省はケインズ主義[英伊両国の離脱にはやや適合的、しかし仏離脱には?]
• 第2次EMU計画:変動相場制・資本移動自由化・単一市場→「現実的EMU」
• 新自由主義の哲学:ドイツ連銀、世界主要国の中央銀行の潮流
• 第2次EMU計画を具体化した新情勢
• 共同利害 「単一市場に単一通貨を!」• 「単一市場→資本移動自由化」により為替投機に対して防御力低下
→EMSで防御不可能(1992/93年EMS危機で実証)。
• 域内の為替相場を無くすしかない• (EMS+1992)→(EMU+1992)• 特殊利害 ドイツ連銀の横暴を1国1票制で防ぐ→ドイツ統一対応
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単一通貨のメリットとデメリット-単一市場→単一通貨-
メリット
• 単一市場の利益を 大化する→通貨の「規模の経済」
• 名目為替レートの絶対的安定→価格透明性による経済効率上昇、通貨交換の取引費用の節約
• 公正競争(変動制との比較→為替相場は障壁、投機)
• 小国、周縁国;ユーロの安定を輸入できる
• 企業の経済計算の容易化
デメリット
• 為替相場政策の喪失
• 各国の 適金利の放棄
• 財政政策への制約
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ユーロの父たち コール独首相 ジャック・ドロール欧州委員会委員長1982年~1998年 (任期:1985年~1995年)
「ヨーロッパ統合は戦争か平和かの問題だ。」
フランス社会党政権の大蔵大臣からEC委員長へ。EC単一市場統合を指導し、ユーロ導入に
道筋をつけた。フランス人
←フランソワ・ミッテラン仏大統領[1916‐1996:大統領1981年~1995年]
物価安定(「フランス経済のドイツ化」)に成功。仏は強い通貨を待望。統一したドイツにマルク放棄を迫り、その後も通貨統合を主導。「狐」と呼ばれた老獪な政治家。詩人でもあった。
「ヨーロッパをドイツ化しよう。」
↓
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ユーロ:政治的通貨
• 仏等西欧諸国共同利害 マルク放棄要求
• 西ドイツ ドイツ統一の無条件承認+ドイツ型中銀制度設計の権限+21世紀展望(大資本
+政府)
• 91年 マーストリヒト条約:ルクセンブルク草案 オランダ草案→12月合意
• EMS参加国によるEMU(先進国型)を暗黙の
うちに想定
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「 適通貨圏の理論」的矛盾-西・北欧と南欧-
• 物価安定の先進国とインフレ的後進国の併存→ユーロ短期金利は一本
• 各国「 適金利」からの上下への乖離→不況期のデフレ効果(ドイツ)、好況期のインフレ・バブル効果(スペイン、アイルランド)
• ユーロ圏=為替リスク排除→
• 西欧大銀行の与信→南のインフレ・バブル・経常収支赤字膨張を長期間維持可能とする
ユーロ域短期金利とインフレ率
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
%
スペイン
ドイツ
短期金利
西欧諸国黒字vs南欧諸国(PIIGS)赤字(経常収支)
図Ⅰ・9 ユーロ圏諸国の経常収支(2007年)(GDP比%、10億ユーロ)
[注]棒グラフはGDP比、棒の上下の数値は収支額(単位:10億ユーロ)[出所]European Commission (2008), EMU@10, p.54.
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4.東方拡大と支配=従属型統合
• ソ連崩壊→東欧諸国とバルト3国のEU加盟申請(1990年代半ばまでに)
• コペンハーゲン基準の設定(1993年6月)• 欧州協定:EU加盟指導・援助付きFTA設定
• 西・北欧企業進出:汎欧州生産ネットワーク• 西・北欧銀行進出:地域金融支配ネットワーク• ユーロ→南欧諸国も金融的従属地域へ• →支配=従属型地域経済統合(20世紀=水平型統合、21世紀
(1990年代末から)=垂直型統合)
• EUは地域経済統合主導の経済成長へ[「ネットワーク」による東欧の高成長がEUの高成長に貢献(ただしバルト3国のバブルも)]
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ドイツの輸出先の変化
輸出先 2000年 2012年 増加(倍)
ユーロ圏英 国米 国日 本中 国BRIその他アジア中・東欧その他
総額(ユーロ)
45%8
102226
716%
5974億E
37%782658
1018%
10958億E
1.5
5.54.62.4
2.6
1.83
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3.非連帯型通貨同盟とユーロ危機
• EU単一金融市場は連帯型→①銀行は単一市場のどこでも自由活動可。②ユーロによって為替リスク消滅
• →[1]完全統合型ユーロ圏金融市場出現(→次ページ図)
• ところが、• [2]基本条約の通貨同盟=ユーロ制度(「ユーロ1.0」)→非連帯型(自立的(自律的)国民経済の並列を想定)
• [1]からユーロ危機。[2]により危機対応の遅れ、危機の激化・長期化
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ユーロ危機の構造-危機の四角形と関連理論
国債価格変動が媒介→[1]ユー
ロ危機の現象論
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西欧大銀行大規模与信(南北格差利用)
不動産・財政バブル
[2] 適通貨圏の理論
-①南欧を入れるべきでなかった、②南欧諸国は離脱する方が双方にとってbetter(浜
田宏一「大きすぎるユーロ圏」)→①「emuは後戻りできない」(パ
ドア・スキオッパ)エミュー:オーストラリアの非公式な国鳥②通貨統合=political will③ドイツはこの理論を当時どう見ていたのか
[3]通貨統合論-ユーロ危機→
ユーロ制度批判、制度改革論-
なぜ欠陥制度ができたのか?→設計者はドイツ
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管理機構の欠如した「リージョナル金融資本主義」の暴走:コア5カ国から危機5カ国への資本流入
[注]流入資本ベース[出所]Daniel Gros [2013] The European Banking Disunion, CEPS Commentary, Nov. 2013.
L 1 2 3
ユーロ圏諸国の長期金利収斂=ユーロ圏に完全統合型金融市場の出現
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完全統合型金融市場における加盟国の金融ショックを吸収するには共同(連邦型)の危機管理制度が必要
再国民化
統一化
各国並立
完全統合型金融市場
基本条約:非連帯型通貨同盟
No‐bailout Clause: ドイツは金を出さない仕組み
ECBの国債購入機能
を制限→①ドイツに代わってECBが金を出す
のを阻止、②ユーロ危機長期化の主要因
EUによる財政一律規制(罰則規定)
→加盟国独自の対応は不可
基本条約の通貨同盟規定(1):ユーロ1.0非連帯型通貨同盟(加盟国自己責任制=自立的・自律的加盟国経済並列を想定)
361999年以降:南欧諸国の加盟に対する新たな対応はなし[財政移転措置など]
ユーロ1.0[その2]:ECB=ソブリン危機に対応不可
クロスボーダー監督→母国監督主義
クロスボーダー危機対応→加盟国任せ(一部で政府間協議)
ECB:平時の権限のみ
但し、「通貨政策の波及メカニズム」を使って→権限拡張の余地
ユーロ1.0:ECBの権限制限、危機対応は加盟国の権限
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権限分割型通貨同盟
危機5カ国への資本流入と流出-TARGETによる資金
流入が危機国を支えた●危機5カ国(ギリシャ、アイルランド、
イタリア、ポルトガル、スペイン)には2008年半ばまで巨額の外国民間資本
流入があり、経常収支赤字をほとんどすべてファイナンスしていた。
●リーマン・ショック後、とりわけユーロ危機の第2波(11年末から)民間資本は7000億ユーロ規模の大流出。こ
のままでは、危機国の信用制度は崩壊、大恐慌へ発展した可能性が高い。
●大規模流出をTARGETによる資金流
入が埋めて、経常収支赤字をファイナンス。EU‐IMFの支援をはるかに上回
る規模。
●ユーロ中央銀行制度が危機国の金融システム崩壊を防いだ。
[出所]Bank of England [2012], FSR, November, p.10.[注]注dは一つ上に付くべき。
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ユーロ崩壊を防いだのはECBユーロ危機への対応:3次元(1)ユーロ圏政府レベル(EU‐IMFによる財政支援。EFSFなど)→2011年10月に限界に達した(EFSF拡充失敗。11月イタリア、ギリシャ内閣辞任)
(2)ECB(欧州中央銀行制度)→2011年11月よりユーロ加盟国政府に代わって危機対応→VLTROにより第2波危機沈静化、OMTにより第3次危機沈静化(= 終的沈静化)
(3)[上述]ECBを通じる資金供与機構=TARGET2balanceの隠れた銀行支援→危機国の金融システム崩壊を阻止
結論:ユーロ崩壊を防いだのは(2)と(3)=ユーロ中央銀行制度(ドラギ総裁)
→「ユーロ崩壊論」は共通通貨を固定相場制(国家協力)と取り違え39
ユーロ危機再発を防ぐための統合-「ユーロ2.0」へ
ESM条約:危機時の財政支援機構:5000億ユーロの貸出能力(政府間機構)
危機国の国債無制限購入OMT
6パック、2パック、新財政条約、
MIPなど→財政規律強化
(加盟国の監視・処罰を強化)
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銀行危機対応の強化(ユーロ2.0[その2])
TARGET2balanceLTRO+OMT+QE
銀 行 同 盟
14年10月:AQR+ストレステスト結果発表、11月4日SSMスタート(1000人職員)
SRM:2015年初スタート予
定
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銀行同盟の意義
国境に沿って通貨・金融分裂financial fragmentation
• 通貨は単一になったが銀行システムはナショナル→ユーロ危機:スペインの銀行はドイツの銀行から融資を得られない=国境に沿って銀行システムは分裂→銀行貸出金利が国毎に違う
• 単一通貨性の歪曲、競争条件も歪曲
• ソブリン危機の影響(「ソブリンと銀行の悪循環」)
• SSM・SRMによって、銀行の健全性をユーロ圏レベルで調整、破綻処理[とりわけ周縁諸国の銀行をコアが同一基準
で監督]→国境に沿った通貨・金融分裂に一定の効果
• ソブリンの問題は残る→財政規律強化の諸措置(common fiscal rules)→ソブリンに対する市場の信頼獲得
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ユーロ圏経済の長期停滞:さらに続く-ユーロ圏GDP(圏内生産)2014年2Q<08年1Q Δ5%-
• 6年経っても危機前ピークを下回
る生産→長期経済停滞。• 米国2011年、英国2014
年に危機前ピーク到達(低成長済だが、ユーロ圏よりまし)
• 南欧4(GPSY):マイナス成長と大量失業
• フランス経済も成長力喪失(仏伊はユーロ圏GDPの38%、ドイツ28%)
• 「機関車」ドイツも12年から成長率低下
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予想値
おわりに[1]-報告者の意見
• 危機4カ国(GIPS)はバブル膨張に責任、butバブル膨張の張本人は西欧大銀行→ユーロ危機の責任は南北欧州が共同で負うべき
• 現実には、南諸国のみが大量失業長期化の負担
• ユーロ圏・EUレベルの成長政策がとられるべき
• 政策採用は楽観視できず→財政条約やSGP強化の縛りとドイツ国民の支援反対
• →長期経済停滞とデフレ的物価上昇→ギリシャ政府債務危機は再発しうる。イタリアは?
• フランスの知恵とドイツのカネ→フランスに知恵と往年の交渉力を取り戻して欲しい 44
おわりに[2]
• アングロサクソンのユーロ崩壊論は妥当せず
• ユーロ圏:ユーロは結集軸[危機時・ポスト危機の「ユー
ロ支持」の高さで証明]
• ポスト・ユーロ危機:銀行同盟とcommon fiscal rulesの追加によりユーロ制度強化
• FRB1913→1933権限強化+FDIC連邦預金保
険制度
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失業率:欧州分裂→連帯の危機→高失業率国で反統合政党の勢いが強い仏蘭Fl伊も失業率上昇or高止まり(例外:独墺)
西欧・北欧諸国失業率(%) 南欧ユーロ圏失業率(%)
[出所]European Commission, Spring Forecast, 2014.
ユーロ危機
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