h24 二国間オフセット・クレジット制度の実現可能...

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Ⅱ-1 H24 二国間オフセット・クレジット制度の実現可能性調査 最終報告書(概要版) カンボジア・スターリングエンジンを用いた小規模バイオマス発電(調査実施団体:プロマテリアル株式会社) 調査協力機 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券、明星大学、Angkor Bio Cogen 調査対象国・ 地域 カンボジア国 Kandal 州、Kampong Cham 州、Kampong Speu 対象技術分 バイオマス利用 事業・活動の 概要 本事業は、系統電源が未発達なカンボジア全土において、ディーゼル燃料による 自家発電に依存する精米所に、安価で操作が容易なもみ殻を燃料とするスターリ ングエンジンを利用した小規模バイオマス発電システムを小規模精米所に導入し、 広範囲に普及させることにより化石燃料であるディーゼル油を代替し、温室効果ガ ス(GHG)削減を目的とする。精米過程で発生する余剰籾殻の再生可能エネルギ ー源としての有効利用により、カンボジアの持続可能な開発に貢献する。 MRV 方法論 適用の適格 性要件 当該事業・活動は、精米所においてバイオマス発電技術の新規導入するもの であること。 当該事業・活動は、グリッドに連結していない自家発電の化石燃料を代替する ものであること。 当該事業・活動において使用される燃料は再生可能なバイオマスのみである こと。 当該事業・活動により導入される技術は、バイオマスの改質等から深刻な有 害物質を副産物として周辺環境に排出させないこと。 当該事業・活動による正味発電量をモニターできること。 リファレンス シナリオ及び バウンダリー の設定 リファレンスシナリオは、精米所におけるディーゼルによる自家発電である。プロジ ェクトバウンダリーは、バイオマス発電機器の物理的及び地理的所在地である。 算定方法オ プション 算定オプション①:プロジェクト固有の燃料消費量等の過去データに基づき、排 出係数を算出する手法 算定オプション②:デフォルト値を排出係数として使用する手法 デフォルト値 の設定 CDM 方法論や他の調査案件の結果と比較し、保守的な 0.8kgCO2/kWh をディー ゼルの CO2 排出係数として設定する。 モニタリング 簡素な算定オプション2において、モニタリング項目はプロジェクトで導入するバイ 原材料 再生可能 バイオマス 算定方法1 代替電源 過去の燃料消費量及 び発電量に関するデ ータが入手可能 排出係数 算定方法2 はい いいえ 算定方法 化石燃料によ る自家発電

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Ⅱ-1

H24 二国間オフセット・クレジット制度の実現可能性調査 終報告書(概要版)

「カンボジア・スターリングエンジンを用いた小規模バイオマス発電」

(調査実施団体:プロマテリアル株式会社)

調 査 協 力 機

関 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券、明星大学、Angkor Bio Cogen

調査対象国・

地域 カンボジア国 Kandal 州、Kampong Cham 州、Kampong Speu 州

対 象 技 術 分

野 バイオマス利用

事業・活動の

概要 本事業は、系統電源が未発達なカンボジア全土において、ディーゼル燃料による

自家発電に依存する精米所に、安価で操作が容易なもみ殻を燃料とするスターリ

ングエンジンを利用した小規模バイオマス発電システムを小規模精米所に導入し、

広範囲に普及させることにより化石燃料であるディーゼル油を代替し、温室効果ガ

ス(GHG)削減を目的とする。精米過程で発生する余剰籾殻の再生可能エネルギ

ー源としての有効利用により、カンボジアの持続可能な開発に貢献する。 MRV 方法論

適 用 の 適 格

性要件

① 当該事業・活動は、精米所においてバイオマス発電技術の新規導入するもの

であること。

② 当該事業・活動は、グリッドに連結していない自家発電の化石燃料を代替する

ものであること。

③ 当該事業・活動において使用される燃料は再生可能なバイオマスのみである

こと。

④ 当該事業・活動により導入される技術は、バイオマスの改質等から深刻な有

害物質を副産物として周辺環境に排出させないこと。

⑤ 当該事業・活動による正味発電量をモニターできること。 リ フ ァ レ ン ス

シナリオ及び

バウンダリー

の設定

リファレンスシナリオは、精米所におけるディーゼルによる自家発電である。プロジ

ェクトバウンダリーは、バイオマス発電機器の物理的及び地理的所在地である。

算 定 方 法 オ

プション

・ 算定オプション①:プロジェクト固有の燃料消費量等の過去データに基づき、排

出係数を算出する手法 ・ 算定オプション②:デフォルト値を排出係数として使用する手法

デフォルト値

の設定 CDM 方法論や他の調査案件の結果と比較し、保守的な 0.8kgCO2/kWh をディー

ゼルの CO2 排出係数として設定する。 モニタリング 簡素な算定オプション2において、モニタリング項目はプロジェクトで導入するバイ

原材料

再生可能

バイオマス

算定方法1

代替電源

過去の燃料消費量及

び発電量に関するデ

ータが入手可能

排出係数

算定方法2

はい

いいえ

算定方法

化石燃料によ

る自家発電

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H24 BOCM FS 最終報告書(概要版)

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手法 オマス発電技術による正味発電量である。常時計測可能な機器により継続的にモ

ニタリングをし、月ごとにデータを集計する。 GHG 排出量

及び削減量 17.52 tCO2/year

第 三 者 検 証

の手法 モニタリング機器の精度をメーカー保証により確認する。BOCM マニュアルにおけ

る許容範囲内であれば、キャリブレーションは不要である。 環境影響等 スターリングエンジンは、①タール等の有害な副産物を排出せず、従来機器と比べ

て②騒音を軽減し、大気汚染物質(NOx, SOx)を低減することから、環境改善に貢

献するものの、負の影響は想定されない。 資金計画 導入予定のスターリングエンジンのイニシャルコストは 3.5kWで 12,000US ドルを

想定しており、50kWの場合約 17 万ドルである。資金調達先として、マイクロファイ

ナンスを検討している。 日 本 技 術 の

導入可能性 スターリングエンジン発電機並びに発電制御システムの中核となる技術は日本か

ら供給する。一方、その製造化においては日本、韓国、中国、カンボジアのパート

ナーとのベストミックスによる低コスト化を目指しており、2013 年に PR 用に導入を

開始し、2014 年には販売開始を計画している。普及のために現地での運用を簡素

化、 適化は不可欠であり、それを可能にするために、日本の制御技術、燃焼技

術、ノウハウを導入する。 ホスト国にお

け る 持 続 可

能 な 開 発 へ

の寄与

バイオマス発電による化石燃料を代替するため、GHG削減による気候変動対策に

貢献する。また、安価なエネルギー源の開発及び地方電化の観点から、カンボジア

のエネルギー政策とも合致し、同国の持続可能な開発に貢献する。

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調査名:二国間オフセット・クレジット制度の実現可能性調査 「カンボジア・スターリングエンジンを用いた小規模バイオマス発電」 団体名:プロマテリアル株式会社 1.調査実施体制: Angkor Bio Cogen (外注) 現地独立電力事業者調査、現地中小精米所調査、ワークショップ開催支援、

現地政府関係者、事業関係者などのコミュニケーション支援 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券(外注) MRV 構築支援、排出係数検討、ワークショップ開催支援、現地政府関係者、

事業関係者などのコミュニケーション支援 明星大学(外注) バイオマスの熱量および水分含有率などの組成に及び燃焼に関する調査

OECC(側面支援) 現地政府関係者などのコミュニケーション支援

2.事業・活動の概要: (1)事業・活動の内容:

本事業は、系統電源が未発達なカンボジア全土において、ディーゼル燃料による自家発

電に依存する精米所に、安価で操作が容易な籾殻を燃料とするスターリングエンジンを利

用した小規模バイオマス発電システムを小規模精米所に導入し、広範囲に普及させることに

より化石燃料であるディーゼル油を代替し、温室効果ガス(GHG)削減を目的とする。精米

過程で発生する余剰籾殻の再生可能エネルギー源としての有効利用により、カンボジアの

持続可能な開発に貢献する。 導入するスターリングエンジンの出力は 1 ユニットあたり 3.5kW を予定しており、複数のユ

ニットを連結することにより、1 つの導入において 50kW までの出力を想定している。 想定される事業・活動のカウンターパートは本調査の現地調査支援業務の外注先でもあ

る Angkor Bio Cogen 社といった現地精米事業者である。 (2)ホスト国の状況: 気候変動政策

カンボジア政府は、現在「カンボジア気候変動戦略計画(CCCSP: Cambodia Climate Change Strategic Plan)」を策定中である。CCCSP では、気候変動への適応及び GHG 排出

削減等を通じた持続可能な発展を目的としている。また、重点エリアの一つして本事業と

も関連性が高いエネルギー分野が特定されており、本事業で活用するバイオマスを含む再

生可能エネルギーの開発の推進策が一つのアクションとして掲げられている。

エネルギー政策 同時に、カンボジア政府はエネルギー政策において、環境への負荷が少なく、安価なエ

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ネルギー源として再生可能エネルギーの活用による地方電化を推進しており、目標として、

以下のグリッド水準の電力サービスへのアクセス率の達成を掲げている。 2020 年までにコミュニティ・レベルで 100% 2030 年までに世帯レベルで 70% 上記の政策面における背景から、化石燃料と比較して安価で調達が可能なバイオマスを

エネルギー源とする本事業は、カンボジア政府の気候変動およびエネルギー政策の目的に

合致していることが明らかである。 (3)CDM の補完性:

再生可能エネルギーによる発電事業は CDM としても数多く実施されており、方法論も整

備されている。しかしながら、種類別にみると、風力や水力と比較して、バイオマスのプロジ

ェクトには様々な困難が存在し、CDM としての登録件数及び CER 発行数も圧倒的に少な

い。特に大きな問題はリーケージとモニタリングである。CDM では、バイオマスの利用にお

ける競合がないことを証明しなくてはならない。当該地域においてプロジェクトで利用する以

上に十分なバイオマスの余剰があることを証明するのだが、多くの国では公式データがなく、

また仲介業者との正式な契約等もないことから、証明が非常に困難である。モニタリングに

おいては、水力や風力案件では必要のない、燃料の含水率や発熱量を計測しなくてはなら

ず、事業者にとって大きな負担となる。特に、カンボジアにおいては、このような計測ができ

る検査機関がなく、その都度隣国タイにて計測する等、負担が大きい。 更に、本事業のようにプロジェクトを多数のサイトで実施する場合、プログラム CDM では

調整・管理組織を設立しなくてはいけない等、体制上の負担に加え、サンプリングによるモ

ニタリングは複雑である。本調査で提案する遠隔操作を用いたモニタリング手法により、簡素

化したプロセスが実現できる。

また、CDM 方法論では「バイオマス発電技術」と一括され、特定の技術の優位性が加味

されない。本調査で開発する MRV 方法論は、環境への影響が 小限な技術のみを対象と

することを検討している。カンボジア環境省と公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)

がカンボジアの精米業を対象に開発した CDM 標準化ベースラインとは、方法論の簡素化と

いう点では重なるものの、当該 MRV 方法論と想定される技術が異なる。前者は既にいくつ

か導入されているガス化技術を含む全てのバイオマス発電技術を対象としており、当該

MRV 方法論はコベネフィットの観点から更に優れた技術を想定している。 前述の理由から、本事業は JCM/BOCM として実施することが望まれる。

3. 調査の内容 (1)調査課題:

① REE 及び精米所の実態把握及びマッチングのための、文献調査及びヒアリング調査を

通じたデータ収集 ② MRV 方法論案の作成 ③ 籾殻の組成の調査 ④ 排出削減量の検証の実施可能性の調査

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⑤ 環境十全性の確保の検討 ⑥ 利害関係者のコメント収集に関する調査 ⑦ マイクロファイナンスの利用可能性等、資金計画の調査 ⑧ 日本製技術の導入促進策に関する調査 (2)調査内容: ① REE 及び精米所の実態把握及びマッチングのための、文献調査及びヒアリング調査を

通じたデータ収集

第 1 回現地調査で、精米所及び REE を直接訪問し、情報収集をした。また、外注先で

ある ABC に、REE と精米所に関する以下の基礎情報の収集を依頼し、2012 年 10 月と

12 月に報告を受けた。

1) 精米所に関する調査:対象地域における精米所の所在地、籾処理量、籾殻処

理状況、籾殻発生量、籾殻の利用法等

2) 独立電力事業者に関する調査:対象地域における独立電力事業者の所在地、発

電機のタイプ、消費燃料、契約戸数、発電価格および卸売価格、スターリン

グエンジンの設置可能性状況等

精米所と REE のマッチングも試みたが、実態調査の結果、REE による発電事業の衰退

及びビジネスマインドの低さから、スターリングエンジンの導入先としては、REE ではなく、

当該技術に関心が高く、資金力も比較的に大きい精米所のポテンシャルが高いと判断

した。

② MRV 方法論案の作成 適格性基準、算定オプション、ディーゼル使用の排出係数のデフォルト化、モニタリング項

目の簡素化、モニタリング手法、排出削減効果の算定におけるリーケージの排除等による簡

素化等について、既存の CDM 方法論、他の調査案件、本事業の特性を考慮した上で

MRV 方法論案(Version1.0)を 2012 年 9 月に、MRV 方法論案(Version2.0)を 2012 年 12月に、MRV 方法論案(Version3.0)を 2013 年 2 月に策定した。 ③ 籾殻の組成の調査

2012 年 8 月に、明星大学理工学部斎藤教授及びエンジニアリングチームとともに従来型

の 3.5kW スターリングエンジンを用いて国内にて籾殻による発電の試験を行った。その結果、

いずれのサンプルにおいても水分、揮発分、灰分、固定炭素についてはほぼ均一であり、

日本国産のもみ殻とカンボジアで多い長粒米においても燃料として捉えた場合はほぼ同質

という事が出来る。

しかしながら、もみ殻に含まれる比較的含有率が高い無機質(Si 等)は木質燃料と比較し

た場合、燃焼速度および温度上昇影響していると考え、対処案として、(1)もみ殻の燃焼室

内トレイへの安定均一供給方法(2)燃焼用空気の同トレイへの均一供給に関するハードの

改善を行った。 以上 2 点の措置でもみ殻の安定燃焼を確立しカンボジアにおける籾殻発

電の実現性を確保できるという結論に至った。

④ 排出削減量の検証の実施可能性の調査

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本事業による排出削減量の検証について、JCM/BOCM Verification Manual 案に基づき考

察した。また、マイクログリッド対応コントローラを活用した遠隔手法によるモニタリングに関す

る検証の実施可能性について、第三者認証機関にヒアリング調査を実施した。

⑤ 環境十全性の確保の検討 法制度および採用技術の特性について調査した。現状、カンボジア国内にて本発電システ

ムの排ガスを規制する法律はないことを確認し、また国内にて排ガス測定を実施し、NOx、

SOx、PM、CO について問題ないことを確認したが、更に、現地での発電デモンストレーショ

ン実施の際、排ガス測定及び調査を実施し問題のないことを確認した。 ⑥ 利害関係者のコメント収集に関する調査

第一回現地調査で訪問した政府関係者及び精米業者等にコメントを求めた。加えて、精

米所及び REE の実態調査でバイオマス発電技術への関心及び重視する点に関する意識

調査を実施した。2013 年 2 月に開催されたホスト国委員会ならびににスターリング・エンジン

のデモンストレーション、ワークショップ、及びカンボジア政府関係者等に対する調査報告を

行いにおいて、更にコメントを収集した。 ⑦ マイクロファイナンスの利用可能性等、資金計画の調査

本調査の対象機器(3.5kW)の価格を基に(100 万円、約 12,000US ドル)、投資回収年数を

試算した。また、現地調査及び実態調査を通じて、現地関係者が重視する要素、期待する

価格等を調査した。また、中国及び韓国のパートナーと機器の低価格化に関する協議を実

施した。

⑧ 日本製技術の導入促進策に関する調査 カンボジア国内において 適化するためのスターリングエンジン発電機のハード並びに発

電制御ユニットといったシステムの中核となる技術については日本で調査、開発する。

一方、その製造化においては日本、韓国、中国のパートナーとのベストミックスによる低コ

スト化を目指しており、バイオマス燃焼器及びシステム構築において、技術と低コスト化の両

立を図るために日本、韓国、中国とのメーカーとの連携を図るべく調整を実施した。

また、本技術を円滑に現地に導入するために、2 月に日本国内及び現地にて技術検討

委員会を開催し、技術的課題、対応策等について協議した。

4. 二国間オフセット・クレジット制度の事業・活動についての調査結果 (1)事業・活動の実施による排出削減効果: 本事業は、再生可能なバイオマスを燃料とするスターリングエンジンによる発電技術を精米

所に導入することにより、ディーゼル発電を代替するものである。バイオマスは、成長の過程

で吸収する CO2 と燃焼の際の CO2 排出との相殺により、実質の CO2 排出量がゼロとみなさ

れるカーボンニュートラルな燃料である。したがって、燃焼の際に多量の CO2 を排出する化

石燃料であるディーゼル油を代替することにより、GHG の排出削減に貢献する。

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当該事業・活動による GHG 排出削減量は、導入するバイオマス発電技術により生産される

正味電力量に、当該事業・活動により置き換えられる燃料の CO2 排出係数を乗じて算出す

る。 本調査においては、以下の CDM 方法論、CDM ツール、及び他の調査を参考にし、MRV

方法論を開発した。

小規模CDM方法論 AMS-I.A(利用者による発電) 小規模CDM方法論 AMS-I.F(受け手側使用及びミニグリッド向けの再生

可能発電) 電力消費によるベースライン排出量・プロジェクト排出量・リーケージ排出量

の計算ツール(Tool to calculate baseline, project and/or leakage emissions from electricity consumption)

単一CDMプロジェクト活動としてのプログラム活動(PoA)の登録及びPoAの

CER発行に関する手続き 平成23年度に日本エヌ・ユー・エス株式会社が実施した「カンボジア・オフ

グリッド電力に関する標準化ベースライン開発を伴うバイオマス発電CDM実

現可能性調査」 カンボジア環境省が公益財団法人地球環境戦略研究機構(IGES)の支援

のもと開発し、UNFCCCに申請中の標準化ベースライン、「Standardized baseline of energy use in rice mill sector in Cambodia」

(2)MRV 方法論適用の適格性要件: 当該調査の対象プロジェクト及び参考とした方法論を考慮し、以下の適格性要件を

提案する。

① 当該事業・活動は、精米所においてバイオマス発電技術の新規導入するものであ

ること。 ② 当該事業・活動は、グリッドに連結していない自家発電の化石燃料を代替するもの

であること。 ③ 当該事業・活動において使用される燃料は再生可能なバイオマスであること。 ④ 当該事業・活動により導入される技術は、バイオマスの改質等から深刻な有害物質

を副産物として周辺環境に排出させないこと。 ⑤ 当該事業・活動による正味発電量をモニターできること。

適格性条件①及び②により、当該事業・活動はバイオマス燃料により化石燃料を代替し、化

石燃料による GHG 排出量を削減することが担保される。また、③により、当該事業・活動に

より森林減少による GHG 吸収量の低下がないことが確認される。 ④は対象技術が優位となる要件、⑤は提案するアルゴリズムが適用できる要件である。 (3)算定方法オプション:

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当該MRV方法論で設定する算定フローに基づいた算定オプションを以下に示す。

(4)算定のための情報・データ:

情報・データ モニタリング(M)/

事業固有値設定(S)/デフォルト値設定(D)

整備状況 備考

1 算 定 方 法1,2

プロジェクトに

よる正味発電

量(kWh)

M ・ プロジェクト計画段階では、推定値を適用。現時点では、1事業で予定する出力に基づき推定する。

・ プロジェクト実施後は、電力メーター或いはマイクログリッドコントローラ等により常時計測される。

・ 月累積値が集計さ れ る 。 正 味 発電量とは、当該プロジェクト活動によるトータルの発電量と、付随設備による電力消費量との差である。

2 算定方法1 プロジェクトに

代替される燃

料の過去の使

用量(tons)

S(事前設定) ・ 本調査の対象とした精米所においては、聞き取りベースでは入手可能だが、経年ベースの書面によるデータはない。

・ 現時点では実態調査に基づき入手。

・過去データ

3 算定方法1 プロジェクトに

代替される燃

料の正味発熱

量(GJ/ton)

S(事前設定)/M ①燃料固有の値、②国或いは地域の値、または③IPCC デフォルト値を適用する。 現時点では①及び②は入手可能でない。

①の場合は、当該国

或いは国際基準に従

った測定方法(事前

設定②の場合は公式

文 書 、 ③ の 場 合 は

IPCC2006に基づく値

とする。

4 算定方法1 プロジェクトに

代替される燃

料の CO2 排出

係 数

(kgCO2/GJ)

S(事前設定)/M ①燃料固有の値、②国或いは地域の値、または③IPCC デフォルト値を適用する。 現時点では①及び②は入手可能でない。

①の場合は、当該国

或いは国際の基準に

従った測定方法(事

前設定、②の場合は

公式文書、③の場合

は IPCC2006 に基づ

く値とする。

原材料

再生可能

バイオマス

算定方法1

代替電源

過去の燃料消費量及

び発電量に関するデ

ータが入手可能

排出係数

算定方法2

はい

いいえ

算定方法

化石燃料によ

る自家発電

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5 算定方法1 プロジェクトに

代替される機

器による発電

量(MWh)

S(事前設定) ・ 本調査の対象とした精米所においては、入手不可能である。

・ 現時点では実態調査に基づいた推定により算出。

・過去データ

6 算 定 方 法1,2

代替する電源

の CO2 排出係

(kgCO2/kWh)

M/D

(算定方法 2)

・(算定方法1)2-5 のパラメータを基に算出する。 ・ ( 算 定 方 法 2 ) 0.8 kgCO2/kWh を適用

(5)デフォルト値の設定: 本調査では、化石燃料による自家発電の排出係数のデフォルト化を検討した。CDM 方法

論、また前述した日本エヌ・ユー・エス株式会社及びカンボジア環境省が提案した標準化ベ

ースラインで設定されているデフォルト値を調査した。当該 MRV 方法論は発電量をベース

にしたアルゴリズムを採用しており、モニタリング手法でも高性能コントローラを用いた遠隔操

作による、複数個所での発電量計測の簡素化を提案しているため、主に、発電量あたりの

CO2 排出係数を設定している AMS I.A、 AMS I.F、「電力消費によるベースライン排出量・

プロジェクト排出量・リーケージ排出量の計算ツール」、日本エヌ・ユー・エス社が開発した標

準化ベースラインを参考にし、34 件精米所を対象に行った実態調査で入手したデータを基

に、デフォルト値の設定を試みた。

方法論 デフォルト値 備考 AMS-I.A 0.8 kgCO2/kWh 自家発電におけるディーゼルの排出係数 AMS-I.F1 0.4 kgCO2/kWh ベースライン排出量の算定、或いはベースラインに

おける電力消費量がプロジェクトにおける電力消費

量より多い場合にプロジェクト排出量の算定に使用

可能。 1.3 kgCO2/kWh プロジェクト排出量の算定、或いはベースラインに

おける電力消費量がプロジェクトにおける電力消費

量より少ない場合にベースライン排出量の算定に使

用可能。 日本エヌ・ユ

ー・エス 0.81 kgCO2/kWh オフグリッドの案件が対象

実態調査 1.1kgCO2/kWh 3 州、34 件の精米所が対象(95%信頼区間の下限

値)

実態調査で入手したデータをもとに算出した排出係数は、1.1kgCO2/kWh と、AMS-I.F 及び

「電力消費によるベースライン排出量・プロジェクト排出量・リーケージ排出量の計算ツール」

では場合によってはベースラインにも適用できる排出係数に近い。しかしながらデフォルト値

としての性格上、保守的であることが求められる。日本エヌ・ユー・エス社が開発した排出係

数は、ディーゼルの燃費におけるカンボジアの将来目標値をベースに算出しており、非常

に保守的な値であることが明かである。また、BOCM を今後展開してく中で、CDM 方法論等

1 「電力消費によるベースライン排出量・プロジェクト排出量・リーケージ排出量の計算ツール」を参照。

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H24 BOCM FS 最終報告書(概要版)

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と同様にデフォルト値は保守的なものにすることは重要である。 前述の分析の結果、当該 MRV・方法論では 0.8 kgCO2/kWh をデフォルト値として採用す

る。 (6)リファレンスシナリオ及びバウンダリーの設定: バイオマス発電にカンボジアで利用可能な技術として、ディーゼルエンジンによる自家発電、

REE からの購入電力、ガス化によるバイオマス発電、蒸気タービンによるバイオマス発電が

ある(GHG 排出強度順)2。実態調査の対象となった精米所をみると、図に示すとおり、ディ

ーゼルが圧倒的過半数を占めている。80%が非グリッド連結案件のベースラインの閾値とな

るCDM標準化ベースラインの概念を参照すると、ディーゼルがリファレンスの技術となる。実

態調査の対象とした精米所 34 件のうち 3 件(8.8%)がバイオマス・ガスエンジンを利用してい

たが、カンボジア全体をみると、 大のバイオマス・ガス化装置サプライヤーである SME Renewable Energy 社の納入実績が約 30 件に留まっており3、カンボジア全体における精米

所数が約 2 万件であることを考慮すると、サンプル数を増やすと、更にディーゼルの比率は

高くなると想定される。

ディーゼル ガスエンジン

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1

図:精米所におけるエネルギー供給技術(設備容量、KW ベース)

発電機の定格容量あたりの価格も比較してみたが、ディーゼルエンジンが圧倒的に安価で

ある。 表:コスト比較

ディーゼル ガス・エンジン スチーム・タービン

US$/kW 188 1,435 3,088

注*:イニシャルコストのみ計上。

カンボジア政府は、2020 年までのコミュニティ・レベルで 100%電化率、2030 年までに世帯レ

ベルで 70%の電化率を目標としている。しかし、これはコミュニティ或いは一般世帯レベルの

目標であり、精米事業用電力としては、引き続きディーゼルによる自家発電が継続されるこ

とが想定される。実際、第 1 回現地調査及び実態調査の結果からは、REE 配電網の整備状

2 REE の電力はその質は信頼性から、ほとんど精米所で使われていない。実態調査では 1 件のみ該当した。蒸気

タービンによるバイオマス発電を行っているのは、ABC だけである。 3 調査した結果、カンボジア国内でバイオマス発電技術を販売している会社は SME Renewable Energy 以外に 2社ある。そのうち、HD&L 社は実績が 1 件、Chea Kao 社は実績が不明であるが、マーケットシェアはほとんど

ないと思われる。

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Ⅱ-11

況に関わらず、大多数の精米所でディーゼルによる自家発電を行っていることが明かになっ

た。 鉱工業・エネルギー省(MIME:Ministry of Industry, Mines and Energy)へのヒアリング

でも、本事業が対象としている都市部以外の地方でのエネルギー事情に急激な変化は想

定されないであろうとのコメントを得た。したがって、本事業のレファレンスシナリオは、ディー

ゼルによる発電とする。当該リファレンスシナリオは、十分に現実に即し、信頼性があり、保

守的なリファレンスシナリオであると考える。 プロジェクトバウンダリーは、バイオマス発電機器の物理的及び地理的所在地である。バウ

ンダリー内に含まれる排出源は、リファレンスシナリオにおけるディーゼル発電からの CO2 の

排出である。 プロジェクト実施時における CH4 と N2O の排出量は、微量なため除外する。リーケージにつ

いては、カンボジアにおける籾殻の取り扱い状況、当該・事業活動の規模、及び方法論の

簡素化の観点から、バイオマスの競合利用に関するリーケージの考慮はしない。また、輸送

によるリーケージも当該・事業活動の規模、想定される輸送状況、及び方法論の簡素化の

観点から、考慮しない。 (7)モニタリング手法: モニタリング項目、モニタリング手法及びモニタリング頻度等を下表に示す。

表:モニタリング項目及び手法 算定オプション パラメータ 項目 測定方法 算 定 オ プ シ ョ ン

1,2

EGPJ,y 純発電量(kWh) ・ 電力メーター等により常時計測し、毎月集計を行う。

・ 正味発電量とは、当該プロジェクト活動によるトータルの発電量と、付随設備による電力消費量との差である。

算定オプション 1

NCVi,y

デ ィ ー ゼ ル の 正 味 発 熱 量

(GJ/ton) ・ 国或いは地域の公式値を適用する

場合は、公式値の更新の有無を年一回確認する。

・ IPCC のデフォルト値を適用する場合は、デフォルト値の更新の際に、確認する。

算定オプション 1 EFCO2,i,y プロジェクトに代替される燃料

の CO2 排出係数(kgCO2/GJ) 同上

ホスト国におけるモニタリング手法の実施可能性については、本事業で導入を予定している

マイクログリッド・コントローラ等による遠隔的なモニタリング手法について検証した。フィール

ドデータ転送についてはカンボジア24州全てで可能であるものの、森林地域等、対象プロ

ジェクトの所在地や電波及び回線等の状況により、不安定になる可能性を排除できないとい

う結論に至った。状況によってはシンプルなメーターが適している場合もあると考える。した

がって、MRV 方法論ではモニタリング技術を特定せず、常時計測できる機器でさえあれば、

どのような手法も適用可能とする。 算定オプション1の燃料に関するデータについては、選択する値に応じて、公式文書の確

認を行う。

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Ⅱ-12

(8) 温室効果ガス排出量及び削減量: リファレンス排出削減量は、以下の数式にて算出する。

yFFyy EFEGRE ,,PJ

EG PJ,y:プロジェクト活動による発電量(MWh) EFFF,y:プロジェクトにより置き換えられる化石燃料の排出係数

(tCO2/MWh) プロジェクト活動による発電量(EGPJ,y)は、本事業では、1 システムあたり 50kW程度の出力を予定していることから、次の条件のもと、以下の通り推定する。また、

燃料の排出係数(EFFF,y)については、0.8tCO2/MWh のデフォルト値を採用する。 運転時間:年間 365 日 24 時間サービス 稼動効率:50%

%50/3652450,PJ yeardayshrskWEG y = 21,900 kWh/year

したがって、本事業の1システムあたりの排出削減量は次の通りとなる。

yyy EFEGRE ,FF,PJ

MWhtCOMWhREy /8.09.21 2

= 17.52 tCO2 前述の実態調査の対象となった精米所から、本事業対象の発電機器の容量 50kW 以

下の精米所における既存発電機器の容量の合計は 135kW である。50kW の場合と同

じ条件を当てはめると、排出削減量は以下の通り見積もられる。

yyRy EEGRE ,FF,PJ

MWhtCOMWhREy /8.0.766 2

= 613.2 tCO2 当該事業・活動ではプロジェクト排出量及びリーケージは考慮しないため、リファ

レンス排出量が GHG 削減量となる。 (9)排出削減量の第三者検証: 全てのモニタリング項目が第三者検証の対象となる。 も重要な当該事業・活動に

よる発電量については、JCM/BOCM 検証マニュアルの規定に従い、まず使用するモ

ニタリング機器の精度をメーカー保証により確認し、±5%以上の場合のみ、キャリ

ブレーションの確認を行うということになるであろう。燃料の含有発熱量及び CO2

排出係数については、事業者等が測定した場合にはその測定方法を確認し、公式デー

タを適用している場合には公式データとの整合性を確認が行われると想定する。

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Ⅱ-13

本事業の検証が可能な第三者検証機関として CDM 或いは ISO 等の審査資格を有す

る機関が想定されるが、現段階で把握している限り、カンボジアには地場の検証機関

はない。本事業の検証を行うことのできる機関は、現時点ではこれら欧州系或いは日

本の検証機関である。 (10)環境十全性の確保: カンボジア政府は、「環境保護および資源管理法」及び「環境影響評価(EIA)プロ

セスに関する閣僚会議令(Sub-Decree No.72)」において、5MW 以上の発電事業に

対して環境影響評価の実施を義務付けている。したがって、当該事業・活動に、環境

影響評価の実施は要求されない。一般的に、スターリング・エンジンはバイオマス発

電における従来機種と比較して、環境面において以下のメリットがある。 有害な副産物(タール等)を排出しない 騒音の軽減 大気汚染物質(NOx、SOx)の低減

しかしながら、現地関係者に受け入れられ、同国の持続可能な発展に貢献度を高め

るためにも、環境への影響については慎重に検討し、積極的に取り組む必要があると

考え、可能な限り排ガスを 低に押さえる技術設計に努める。

(11)利害関係者のコメント: 本事業の利害関係者は、バイオマスエネルギーの供給・受取側のプレーヤーとして

精米所、事業パートナー候補として ABC 等の業界関係者、また制度を支える関連政

府機関(環境省、MIME、農林水産省、地域開発省等)である。第一回現地調査及び

2回の WS で得られた業界関係者並びに政府関係者等からのコメントは、概ね好意的

であり、政府関係者からは同国の政策に合致する本事業を歓迎する声があり、業界関

係者からは価格と出力のニーズへの合致が再重要ポイントであることが明かにされ

た。実態調査においても精米所及び REE から当該技術導入に関する関心及び重視す

る点を調査した。結果、精米所による関心は非常に高いことが判明し、また、価格が

も重要な点であることを再確認した。 (12)事業・活動の実施体制: 現地事業体制は共同実施主体として現地合弁法人(プロマテリアル社及び日本投資

グループ側と現地事業者との合弁企業)がスターリングエンジンによるバイオマス発

電のサービスサプライヤーとなる。同サプライヤーにより現地プロジェクトオーナー

の要望を反映した企画、設計、適切な工期管理、適格な機器の納入、施工事業者との

リレーションを保ち、現地でのプロジェクトを推進する。

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Ⅱ-14

(13)資金計画: 以下に、初期投資・運転経費・収入の試算結果を示す。なお、スターリングエンジンは運転

及び維持管理がシンプルなところがメリットであり、維持管理は通常の清掃レベル、人員に

ついては精米所の既存の人員で対処することを想定するため、維持管理費及び人件費等

を含まない。試算の結果、投資回収年数は 2 年である。

表 1:収益性の試算結果(50kW)

項目 値 単位 出所

ユニットコスト 3,429 USD/KW プロマテリアル

初期投資額 171,429 USD プロマテリアル

出力(1 ユニット) 50 kW 推定

発電量 219,000 kWh 推定

ディーゼルの燃費 0.6 L/kWh 実態調査

ディーゼル単価 1 USD/l ヒアリング調査

籾殻の購入価格 0.015 USD/kg 実態調査

必要な籾殻の量 311 ton/year 推定

収入 ディーゼル節減 83,220 US$

コスト

初期コスト 171,429 US$

籾殻売却ロス 4,672 US$

現地プロジェクト ステークホルダー

バイオマス発電事業サービスサプライヤーグループ

プロマテリアル

(日本投資側)

現地合弁法人

(現地事業責任)

現地事業

管理会社

エンジン・燃焼機器製造

事業者

現地施工業者

プロジェクトオーナー (中小精米所)

施工管理依頼 機器発注

機器納入 施工指示

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Ⅱ-15

資金調達先としては、カンボジアの農業分野で拡大しているマイクロファイナンスの利用、ま

た JCM/BOCM に特化した二国間官民ファンドの構想等を検討した。 (14)日本製技術の導入促進策: 小型バイオマス発電システムの普及にはカンボジアへの 適化、発電機としての使いやす

さの向上と低コスト化が必須であり前者は芝浦工業大学と共同で進めてきた電圧・電流をコ

ントロール可能なマイクログリッド・スタンドアローン兼用コントローラーにより対応する。また、

もみ殻を小型燃焼装置にて安定的に完全燃焼させ、かつクリンカを起こさない技術は熱需

要が高く、資源の乏しい日本で開発されたものである。

コントローラー以外の部分については日本、韓国、中国及びカンボジア現地企業でのベスト

ミックスにより更なる低コスト化を目指している。エンジン部分の量産によるコスト低減のため

に湖南省の重電メーカーと進めている。同社はモーター・発電機及び風力発電の中国 大

手であり、米国スターリングエンジン会社も買収しており、部品の共有化が見込める。燃焼器

は韓国の 大手ボイラーメーカーと連携し OEM を進めている。アッセンブルについては出

来るだけ現地企業を活用する。 現在、調査対象のスターリング・エンジン技術の販売について以下のスケジュールを検討し

ている。

概要

2012 年度 調査・実証 1 台 2013 年度 F/S 及び PR としての導入 5 台/1 システム×10

箇・・・175kWh/50 台 2014 年度 販売フェーズ 10 台/1 システム×100 箇

所 ・・・ 3500kWh/1000 台 なお、スターリングエンジンはオペレーション及び維持管理が比較的簡単な技術ではあるが、

導入に向けて、技術の啓蒙と合わせてオペレーション及び維持管理に関するノウハウも伝

授できるようなワークショップをシリーズで開催する等、ソフト面でのサポートも、JCM/BOCMの一環として提供する方向である。

(15)今後の見込みと課題:

BOCM の合意及び制度確立:二国間の合意に向けた動向を見極めつつ、MRV 方法論

の採択に向け、必要に応じて改訂する。

モニタリング技術の確認:高性能コントローラによる遠隔モニタリングの導入に向け、モ

ニタリング機器のサプライヤーに実際に現地に出向いてもらい、電波や通信環境、設定

にまつわる課題をクリアにする。

導入場所の選定:精米所における電力需要の詳細な調査を実施し、スターリング・エン

ジンのモジュール化による出力とのベストマッチを探求する。啓蒙活動を踏まえて、具体

的な導入場所を絞り込む。

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Ⅱ-16

低価格化:スターリング・エンジンと市場に出回っている同規模の発電機との価格差は

相当あり、その差を埋める努力が必要である。中国及び韓国のパートナー、カンボジア

現地企業と更なる協議を進める。

販売ルートの確立:現地の販売業者との契約に向けて、協議を開始した。プノンペンに

おいて2度のワークショップ、デモンストレーションを実施した。プノンペンにおいて常設

の展示場を設置し、PR 及びアライアンスの構築を進めていく。 5. 持続可能な開発への貢献に関する調査結果 第一回現地調査および事前の文献調査において、本事業はカンボジア政府が策定してい

る「カンボジア気候変動戦略計画(CCCSP: Cambodia Climate Change Strategic Plan)」にお

けるエネルギー分野での緩和策、また地方電化政策を始めとするエネルギー政策の目的に

合致し、カンボジアの持続可能な開発に貢献することが明らかになった。 現地調査で訪問した、環境省、MIME、地方開発省及び農林水産省すべてにおいて、本事

業の趣旨への賛同を、また事業の実現に向けて有用な意見を得ることができた。MIME で

は、特に地方電化での安価なエネルギーに対するニーズに対応できる点について賛同及

び期待に関するコメントを得た。2013年2月19日に開催されたホスト国委員会の場におい

ても、カンボジア側参加者から同国における持続可能な開発の重要性が強調され、持続可

能なかは津に貢献する当該プロジェクトを含む JCM/BOCM プロジェクトに大きな期待が寄

せられていることを再確認した。今後、スターリング・エンジンの普及活動を行うにあたり、当

該技術がいかにカンボジアの持続可能な成長に貢献できるかを、更なるデモンストレーショ

ン等を通じて積極的に啓蒙していく所存である。