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98 ChinaTech 中国・電子デバイス産業レポート 2018-2019 年版 直近の展開 中国の有機 EL パネル製造の GVO(Govisionox  Optoelectronics、江蘇省昆山市昆山開発区龍騰路 1 号 4 幢、Tel.+86-512-3690-8822)は 2012 年、 有機 EL パネル製造のビジョノックス(Visionox、 維信諾顕示技術、昆山市)と昆山工業技術研究院 の FPD 技術センターの技術資源を統合して誕生 した。 ビジョノックスは清華大学有機 EL パネルの研 究開発をベースに 01 年に創業したベンチャー企 業だ。昆山市に PMOLED(パッシブマトリクス 式有機 EL)と AMOLED(アクティブマトリク式 有機 EL)の第 2.5 世代(2.5G、ガラス基板サイ ズは 370 × 470mm)工場を稼働させた。 GVO は 14 年、第 5.5 世代(5.5G、同 1300 × 1500mm)の有機 EL(AMOLED)パネル工場(月 産能力 5000 枚)を稼働させた。さらに 19 年初 頭には湖北省固安市に第 6 世代(6G、同 1500 × 1850mm)の有機 EL パネル工場を稼働させる。 清華大学の技術をベースに開発 ビジョノックスの有機 EL パネル開発の前身は、 清華大学の有機 EL 研究チームだ。エレクトロニ クス技術の国産化を研究する中国政府の「863 プロジェクト」として、1996 年から有機 EL パ ネルの開発を始めた。2000 年に 128 × 64 画素 の PMOLED を開発し、01 年 12 月に北京ビジョ ノックス(北京維信諾科技)を設立。02 年に中 国初の有機 EL パネルの開発試作ラインを立ち上 げた。当時、すでに清華大学の有機 EL パネルの 開発チームには企業や政府からの 4000 万元(約 5.6 億円)の投資があり、この投資が研究開発の ベースとなった。 ビジョノックスは設立当初、中国最大の CRT(ブ ラウン管)メーカーのイリコ(IRICO、彩虹)グルー プ、香港のクラウンキャピタル(冠京)と清華大 学などの株主で構成された。香港のクラウンキャ ピタルの親会社は、モノクロ STN 液晶を製造し ている香港上場企業の億都(Yeedo)。 04 年 1 ~ 3 月期に、クラウンキャピタルが清 華創投と南風グループが所有していた株式を全株 買収し、73%の最大出資者となった(その他に 清華大学が 16%、イリコが 11%を出資)。クラ ウンキャピタルが有機 EL パネルの量産を視野に 株式を買い増し、有機 EL パネル工場を建設する 準備が整った。 07 年、昆山市に量産工場 ビジョノックスは 05 年、昆山市に 5 億元(約 GVO 昆山国顕光電有限公司 GVO の工場がある昆山市の光電産業園区(同社 HP より) ビジョノックスの 2.5G 工場(同社提供) ceh2018.indb 98 2018/06/26 11:16:46

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98 ChinaTech 中国・電子デバイス産業レポート 2018-2019 年版

直近の展開

 中国の有機 EL パネル製造の GVO(Govisionox Optoelectronics、江蘇省昆山市昆山開発区龍騰路1号 4幢、Tel.+86-512-3690-8822)は 2012 年、有機 EL パネル製造のビジョノックス(Visionox、維信諾顕示技術、昆山市)と昆山工業技術研究院の FPD 技術センターの技術資源を統合して誕生した。 ビジョノックスは清華大学有機 EL パネルの研究開発をベースに 01年に創業したベンチャー企業だ。昆山市に PMOLED(パッシブマトリクス式有機 EL)と AMOLED(アクティブマトリク式有機 EL)の第 2.5 世代(2.5G、ガラス基板サイズは 370 × 470mm)工場を稼働させた。 GVOは 14年、第 5.5 世代(5.5G、同 1300 ×1500mm)の有機 EL(AMOLED)パネル工場(月産能力 5000 枚)を稼働させた。さらに 19年初頭には湖北省固安市に第 6世代(6G、同 1500× 1850mm)の有機 ELパネル工場を稼働させる。

清華大学の技術をベースに開発

 ビジョノックスの有機ELパネル開発の前身は、清華大学の有機 EL 研究チームだ。エレクトロニクス技術の国産化を研究する中国政府の「863

プロジェクト」として、1996 年から有機 EL パネルの開発を始めた。2000 年に 128 × 64 画素の PMOLED を開発し、01 年 12 月に北京ビジョノックス(北京維信諾科技)を設立。02 年に中国初の有機 EL パネルの開発試作ラインを立ち上げた。当時、すでに清華大学の有機 EL パネルの開発チームには企業や政府からの 4000 万元(約5.6 億円)の投資があり、この投資が研究開発のベースとなった。 ビジョノックスは設立当初、中国最大のCRT(ブラウン管)メーカーのイリコ(IRICO、彩虹)グループ、香港のクラウンキャピタル(冠京)と清華大学などの株主で構成された。香港のクラウンキャピタルの親会社は、モノクロ STN 液晶を製造している香港上場企業の億都(Yeedo)。 04 年 1~ 3月期に、クラウンキャピタルが清華創投と南風グループが所有していた株式を全株買収し、73%の最大出資者となった(その他に清華大学が 16%、イリコが 11%を出資)。クラウンキャピタルが有機 EL パネルの量産を視野に株式を買い増し、有機 EL パネル工場を建設する準備が整った。

07 年、昆山市に量産工場

 ビジョノックスは 05年、昆山市に 5億元(約

GVO昆山国顕光電有限公司

GVO の工場がある昆山市の光電産業園区(同社 HP より) ビジョノックスの 2.5G 工場(同社提供)

ceh2018.indb 98 2018/06/26 11:16:46

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第 4 章 FPD パネル産業 99

67.3 億円)を投資して有機 ELパネル工場の投資を計画した。そのうち、昆山市政府が約1億元(約13.4 億円)、清華大学が約 9000 万元を出資したものとみられる。生産品目は、PMOLED でフルカラーの 1~ 2 型。年産能力は 800 万~ 1000万個を想定した。技術的に成熟した低分子有機ELの RGB 塗り分け方式を採用した。 05 年 12 月に昆山工場の起工式を開催し、06年 3月にビジョノックス昆山を設立。07年初に工場建設を再開した。工場用地は約 12.5 万 m2。

パッシブ量産、アクティブ開発

 ビジョノックスは 08年 1月、昆山市に建設した有機 EL パネル製造の 2.5G 工場(建築面積は約 3万m2)を竣工した。08年初頭から製造装置を導入したが、10 月の試生産の開始が遅れ、生産開始は 09年上期にずれ込んだ。 08 年にビジョノックス北京はビジョノックス昆山に吸収され、ビジョノックス昆山がビジョノックスの本社となった。株主構成は呉江市創投有限公司が 48%、信冠は 35%、クラウンキャピタルは 13%、河北華控は 3%、イリコグループは 1%となった。 昆山工業技術研究院と昆山経済技術開発区、ビジョノックス昆山の共同出資により、09年 9月に昆山工研院新型平板顕示技術センターを設立した。同技術センターの登録資本金は 3億元で、有機 ELパネルの量産技術の開発を始めた。 中国でカラーの有機ELパネルを量産したのは、ビジョノックス昆山が初めてだった。ビジョノックスは、年 1200 万枚の生産目標を掲げ、携帯電話や携帯音楽プレーヤー(MP3)、デジタルカメラ、医療機器、工業機械向けに 1~ 3型のパネルを出荷した。主力製品の 2.4 型パネルは、解像度は 240 × 320 画素、コントラストは 1万対 1で視野角は 170°。 ビジョノックスは 09 年末に PMOLED パネルの生産を開始し、10年 6月に中国初の AMOLEDパネルの開発試作ラインを設置した。12 月には

2.8 型の AMOLED パネル(RGB 表示)の開発に成功した。

有機 EL 照明を生産

 ビジョノックスは 07年、北京の開発拠点で照明用有機ELパネルを開発した。08年に昆山2.5G工場の PMOLED パネルの生産ラインを使って少量生産を始めた。ただし、有機 EL 照明のパネル生産量は少なく、同工場の主力生産はディスプレー用パネルだった。 照明用有機 EL パネルは 85 × 85mm サイズで、この時期は中国の照明メーカーにサンプル出荷や小規模の出荷を行った。パネルの輝度は最大3000cd/m2。ビジョノックスは提携する照明器具メーカーに生産委託し、モバイル用の有機 EL照明器具も販売した。

ビジョノックスから GVO に

 ビジョノックスは 12年、昆山市政府の主導で昆山工業技術研究院の FPD 技術センターの技術資源と統合し、有機 EL パネル製造の GVO に改組された。GVOの登録資本金は 35億元(約 443億円)で、出資比率はビジョノクスが約 86%、国開発展基金は約 14%。

14 年、AMOLED 新パネルを開発

 14 年 4 月、高解像度タイプの新型有機EL(AMOLED)パネルを発表した。解像度は570ppi、パネルサイズは 4.3 型。RGB 塗り分け方式により、シャドウマスクを使用して 3色の

16 年に開発したフレキシブル有機 EL パネル (同社 HP より)

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