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Global Compliance and Reporting導入の好機を捉える調査結果とグローバル企業の動向
2 はじめに
3 調査内容
4 エグゼクティブ・サマリー
9 Global Compliance and Reporting
10 転換期を迎えるGCR
14 財務変革の機運に乗じる
18 必要不可欠な現地の専門知識
20 外部専門家の活用
22 アカウンタビリティとガバナンスの実現
26 結論
グローバルGCRモデルの導入:28 推奨されるアプローチ
33 Contacts
Contents
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える
2 はじめに
3 調査内容
4 エグゼクティブ・サマリー
9 Global Compliance and Reporting
10 転換期を迎えるGCR
14 財務変革の機運に乗じる
18 必要不可欠な現地の専門知識
20 外部専門家の活用
22 アカウンタビリティとガバナンスの実現
26 結論
グローバルGCRモデルの導入:28 推奨されるアプローチ
33 Contacts
調査結果とグローバル企業の動向
この度、アーンスト・アンド・ヤングが実施した「Global Compliance and Reporting*(GCR)」 調査の結果をお届けできます事を大変嬉しく思います。今回の調査には、フォーチュン・グローバル500やフォーブス・グローバル2000に名を連ねる200社を超える世界のトップ企業より回答が寄せられました。本書は、多国籍企業が世界各国の財務報告や納税義務への対応策を検討する中で、今起こりつつある重要な変化をレポートしています。
GCRのプロセスは、現在多くの企業において組織全体に分散しており、これがGCRの効率性、管理性、価値の向上の各側面において、十分に機能しているとは言えない状態を生み出しています。今回の調査結果でも、GCRに新たな手法が求められていることが明確に示されました。 ビジネスモデルや財務オペレーションの進化に加え、世界各国でみられる幾多の各種法令・法執行の改正が、企業にかつてない高いリスクをもたらしています。しかし、これらの変化に俊敏に対応し、GCRがもたらすチャンスを逃さない企業は、競争上の優位性を獲得する事ができるのです。
今回お届けする調査結果が少しでも皆様のお役に立ち、GCRがもたらす機会をご検討になる際には、本書で示した私どもの洞察や提案をご一考頂けます事を切に願っております。
Global Compliance and Reporting部門グローバルディレクター スティーブ・シュルツ
*GCRの定義については9ページをご参照ください。
はじめに
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える2 調査結果とグローバル企業の動向
Figure 3:Company headquarter locations
ヨーロッパ、中東、インド、アフリカ45%
アジアパシフィックおよび日本10%
北米および中南米
45%
Figure 1:Company ranking
フォーチュン・グローバル500企業51%
フォーブス・グローバル2000その他企業
49%
Figure 2:Number of countries where company has operations
11-2022%
41-506%31-40
12%
51+40%
21-3020%
図表1:企業ランキング
図表2: 回答企業が事業進出している国の数
図表3:本社所在地
調査内容
GCRの現況および将来に関する今回の調査では、アーンスト・アンド・ヤング作成の質問に基づき、フォーブス・グローバル2000に名を連ねる企業200社以上の財務・税務担当役員を対象に、調査会社Consensus Researchによるインタビューが実施されました。対象企業の半数がフォーチュン・グローバル500企業であり、また、右図が示すように、その本社所在地も世界の主要3地域を包含する内容となっています。
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 3
エグゼクティブ・サマリー法定会計報告や税務当局への報告をはじめとするGlobal Compliance and Reporting (GCR) は、今重要な転換期を迎えています。進化を続けるビジネスモデル、財務機能の変容、さらに複雑さを増す規制環境が相互に作用して、グローバル企業は自社のGCRプロセス再考を迫られています。しかし一方で、この様な環境の変化は、企業の効率性、管理性、価値を最適化し、リスク緩和や業績改善を実現する絶好の機会でもあるのです。
租税徴収の強化や、国境を超えた税務情報の共有を目的とした 規制見直しが各国・地域で実施される昨今、GCRのリスクは益々高まっています。
一方企業側では、グローバルな金融危機をきっかけとして、競争力を維持し成長のチャンスを最大限に生かすべく、財務オペレーションモデル再構築への機運が高まっています。市場の拡大、新規顧客の開拓、事業の敏捷性向上等への企業の熱心な取り組みの結果として、財務モデルは劇的な変化を遂げています。
今回の調査は200名以上の財務担当役員を対象に実施され、 回答企業の実に80%がすでに財務変革を完了した、あるいは今後2年以内に完了する予定であると答えています。財務変革とは、単なる財務部門の再編や財務業務の見直しではなく、オペレーション最適化の視点から、財務機能のミッションそのものを、より包括的に評価することです。
変革の厳格さや範囲は企業により異なります。コスト削減が変革を実施する最大の要因であった、あるいは今後コスト重視で変革を進める予定だという企業も多いでしょう。しかし、どのような財務変革であったとしても、その変革がGCRに与える影響を常に 注意深く考慮する必要があります。GCRプロセスと財務変革が表裏一体である一方で、残念ながら今回の調査で明らかとなったのは、財務データのGCRへの落としこみといった必要不可欠な工程が、企業においてはしばしば見落されがちだということです。 このように様々な要因が重なり、今新たなニーズや機会が生み 出されているのです。
本書は、今回の調査結果やアーンスト・ アンド・ヤングの豊富なクライアントサービスの経験に基づき、財務や税務に携わるエグゼクティブの皆様に次の5つの 洞察を提示いたします:
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える4 調査結果とグローバル企業の動向
1 GCRは今転換期を迎えている
新たなビジネス環境のニーズに対応するには、従来型モデルでは不十分です。過去12カ月だけでも、回答を寄せたフォーチュン500企業の64%が予定外の税務調査を受け、ほぼ半数が更正あるいは罰則の適用を受けたと答えています。さらに3分の2が各種法令・規制の改正による新たな要件がGCRプロセスに大きな課題をもたらしていると考えています。より合理的に組織化、効率化されかつ管理性に優れたGCR機能を持つ事により、これらのリスクや予定外コストの発生を軽減することができるのです。もはやGCRプロセスの再構築が必要か否かではなく、いつどのように実施するかを決断する段階に来ているのです。
2 財務変革の取り組みがGCRプロセス改善を促進するきっかけとなる
ビジネスプロセス、特に財務プロセスの標準化は、GCRプロセスに大幅な効率性改善の機会をもたらします。回答企業の約3分の2が、税金引当計算のグローバルな標準プロセスをすでに確立していると述べています。しかしながら、GCRのその他の分野においても同様のグローバル標準を定めていると答えた企業は半分以下でした。財務変革を全てのGCR分野にも拡大するチャンスは具体的かつ豊富に存在する一方で、GCRを財務部門の構造改革から除外するリスクは甚大です。
過去12カ月以内に以下の事象を経験したフォーチュン500回答企業の割合
• 予定外の税務調査を受けた 64%
• 予期せぬ更正を受けた 45%
• 罰則を課せられた 42%
• コンプライアンス対応不足に より事業が中断した 17%
不十分なGCR管理がもたらす不測の事態
大多数の企業ではGCRプロセスやシステムの標準化が進んでいない
GCRプロセスやシステムのグローバル標準を定めている企業
Figure 9: Companies with global standards for GCR processes and systems
%
30%
法人税コンプ
ライアンス
48%
法定会計報告
14%
間接税コンプ
ライアンス
64%
税金引当計算
0
20
40
60
80
100
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 5
3 現地専門家の確保がGCRプロセス 成功の秘訣である
回答者の64%から78%が、各国の現地における人的資源が、 税務および必要な規制の遵守には不可欠であると考えています。一方で、財務部門の傾向として、これまで現地のGCRプロセスに対応してきた現地国内の財務リソースを削減する、あるいはグローバルや地域の中央管理機能に再配置する動きがみられます。また、当局のアグレッシブな税務執行姿勢が顕著となる中、スキルの高い現地専門家に対するニーズは益々高まっています。GCR機能の品質と効率性を保ち、価値をもたらす現地専門家の確保はいまや必要不可欠なものとなっています。
4先行企業では社内外のリソースの 組み合わせによりGCRプロセスの 最適化を図っている
先行企業では、自社のオペレーションモデルとGCRの必要性を戦略的に検討し、社内リソースと外部リソースの最適な組み合わせを見いだす事で、社内リソースには高価値活動に専念できる機会を創り出しています。理想的な組み合わせは企業により異なりますが、1つ以上のGCRプロセスを外部委託している企業の80%以上が、外部のサービスプロバイダーを利用する事で、 必要なレベルの現地の専門家にアクセスすることが出来ていると述べています。同様に、70%以上が外部委託により専門家や手法へのアクセスが可能となり、自社のプロセスが強化出来たと考えており、また、約60%が必要なレベルの柔軟性と拡張性が提供されたと述べています。
60%以上の回答者がGCRプロセスにおいて現地の リソースが重要であると考えている
GCRにおいて現地国内の人材が重要だと考える企業
Figure 11:Companies that consider local in-country resources for GCR to be important
%
78%
68% 66%
77%
64%
法人税コンプ
ライアンス
法定会計報告
間接税コンプ
ライアンス
税務係争管理
税金引当計算
0
20
40
60
80
100
外部のサービスプロバイダーを利用している回答者の80%以上が、外部委託は現地の専門家にアクセスする効果的手法だと考えている
外部委託は会社に恩恵をもたらす効果的手法だと評価している企業
Figure 13:Respondents find the use of outside providers to be effective to overcome business limitations
%
83%
56%59%
72%
46%43%
適切なレベルの
現地専門家を雇用する能力
サービスプロバイダーの
各種手法や専門家等の活用
調達ソリューションの
柔軟性や拡張性の確保
コスト削減および
コスト予測可能性の向上
人員および正社員数の削減
オペレーション上のリスクおよび
実行リスクの分散と共有
0
20
40
60
80
100
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える6 調査結果とグローバル企業の動向
以上のように、今日企業が直面する危機的な状況を鑑みれば、昨日までと同じやり方でGCRプロセスを継続すべきではありません。自社のGCR機能を明確に評価し、将来を見据えたGCRの最適化・改善のための計画が必要です。本書の各章では、上記5つの洞察に関するより詳細な調査結果や事例をご紹介し、さらに洞察を深めていきます。また、企業がGCRモデルの改善を実施するにあたり、効率性、管理性および価値の向上の最適なバランスを実現しそれを持続可能なものとできるよう、実績あるアプローチや提案も盛り込まれています。
5 最適なGCRプロセスの確立には強固なガバナンス体制が必要不可欠である
回答者の40%以上が自社には法定会計報告に関するグローバルなガバナンス体制が欠如していると考え、また60%以上が自社の直接税および間接税申告には、グローバルなガバナンス体制が存在しないと述べています。これらの結果から、より高いレベルの管理や可視性、説明責任がGCRに求められている事が分かります。GCRプロセスの各地域における責任の所在を明確化し、プロセスに責任を負う様々な部署の数を減らす事で、GCRの全範囲を通しグローバル規模で、効率性を改善し、可視性を強化し、さらには費用がかさみ時間もかかるサプライズを回避することができるのです。強固なコーポレートガバナンスは、予定外の税務調査を受ける可能性を低減し、また、主要プロセスを簡素化、標準化、自動化する際の前提条件でもあります。強固なガバナンス体制は、企業の財務変革を成功へと導く必要不可欠な要素なのです。
GCRプロセスのグローバルなガバナンスレベルは業務分野により大きな差がみられる
各GCR関連業務に対しグローバルなガバナンスおよび監視体制を持つ企業
Figure 18:Companies with global governance and monitoring of GCR activities
%
79%
59%
税金引当計算
法定会計報告
37%
17%
法人税コンプ
ライアンス
間接税コンプ
ライアンス
0
20
40
60
80
100
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 7
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える8 調査結果とグローバル企業の動向
Global Compliance and Reporting
• GCRには、世界各国で求められる法定会計報告や税務申告などに関連し、以下の様な重要な財務・税務プロセスが含まれています:
• 法定会計報告
• 税務会計および税金引当計算
• 法人税コンプライアンス
• 間接税コンプライアンス
• 上記プロセスのガバナンスおよび管理
R2RおよびGCRプロセス
トランザクションの記録・処理
税務会計および税金引当計算
法人税コンプライアンス
間接税コンプライアンス
税務調査・プランニング
ガバナンスおよび管理
法人財務会計 法定会計報告
GCR業務は、一般にR2R(record-to-report)と呼ばれる広範な記録・報告プロセスの中央に位置しています。R2Rとは企業の財務および税務機能が交わるポイントであり、法定会計、税務コンプライ アンスおよび報告に不可欠な情報を取得、処理および保管するプロセスです。R2Rのプロセス、情報、財務システム、役割・責任の変更は、GCRプロセスに直接的な影響を及ぼします。
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 9
転換期を迎えるGCR
• ビジネスや財務機能の変化、各種法令・規制の改正により、GCRは今大きな転換期を迎えています。もはやGCRに対するアプ ローチ変更の必要性の是非を問うのではなく、GCRの改革が着実に進行しているか否かを問うべき時が来ているのです。
ビジネスの急速な変化にも遅れを取らない 一層の俊敏性が求められている世界的な金融危機を生き抜きかつ成長の機会を逃さぬよう、企業は常に新たな環境に適応可能な経営モデルの再構築に取り組んでいます。コスト競争力の継続的な確保に加え、投資家やその他のステークホルダーの信頼を維持するため、多くの企業が新興市場を始めとする市場の拡大や顧客へのアクセス強化にフォーカスし、同時に自らの俊敏性向上に努めています。これを可能とするには、新たな市場での事業拡大にも素早く対応出来るGCRプロセスの構築が不可欠です。また、GCRプロセスの活用により、今まで以上に優れた意思決定が国内外で可能となる等、企業に価値をもたらすGCRの仕組みを作る必要があります。
今回の調査では、現状のGCRモデルを維持する限り、これらのニーズを満たすことはできない事が明らかになりました。調査対象となったフォーチュン500社からは、GCRプロセスに関連して、経営に重大な悪影響を与える様々な懸念事項についての回答が寄せられています。(図表4を参照)。急速なビジネスの変化や、各種法令・規制の改正がもたらすリスクから会社を守るため、企業は新たなGCRプロセスの管理・運営手法を確立しなければならないのです。
過去12カ月以内に以下の事象を経験したフォーチュン500回答 企業の割合
図表4: 不十分なGCR管理がもたらす不測の事態
• 予定外の税務調査を受けた 64%
• 予期せぬ更正を受けた 45%
• 罰則を課せられた 42%
• コンプライアンス対応不足に より事業が中断した 17%
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える10 調査結果とグローバル企業の動向
• 不十分・不正確なデータ 69%
• コンプライアンスおよびレポーティングのコスト増 68%
• 期限超過/コンプライアンス およびレポーティングに係る 加算金の発生
57%
• 税負担の増大 50%
財務機能の変革がGCRに与える 影響
財務機能の変革は、財務・税務のオペレーションモデルに大きな影響を及ぼします。その結果、財務担当役員は、これまで以上に企業の効率性、管理性および価値の向上のために革新すべきグローバルなプロセスとしてGCRを捉えるようになっています。
広範な財務機能の変革と連携し、GCRプロセスの徹底した見直しを行った企業は、既にオペレーションにおける俊敏性の向上や費用効率性の改善、さらにはより優れた意思決定等のメリットを享受しており、未だ着手していない企業も、今後はその必要性を益々認識する事となるでしょう。
さらなる成長を求め企業が激しい競争を繰り広げる中、各部門もそれぞれの立場で業績強化に貢献する必要があり、財務部門も決して例外ではありません。今回の調査では、回答企業の実に3分の2が自社の財務部門改革を既に完了あるいは現在実施中であると答え、また12%が今後2年のうちに着手すると回答しています。(図表5を参照)
約80%の企業が財務変革を既に完了あるいは間もなく完了すると回答
図表5: 回答企業の財務変革実施状況
このような変革は、時に、シェアードサービスセンター(間接業務拠点:SSC)やセンターオブエクセレンス(研究拠点:CoE)の設置、国内人員の削減、標準グローバルプロセスの導入、ITシステムの拡張、新規調達モデルの適用等を伴うものとなります。これらの変化はGCRとその結果に重大な影響をもたらし、本レポートでも随所で示されるように、様々な分野で大きなプラスの影響を生み出します。しかし一方で、図表6が示すように、企業がその財務機能の変革の取り組みからGCRを 除外する場合、不正確な申告により負担増がもたらされるリスクがあり、これに対する警告の声も回答企業からは寄せられてい ます。
未着手・今後も予定無し22%
現在実施中42%
Figure 5:Companies’ status with regard to finance transformation
今後2年のうちに実施予定12%
過去2年以内に実施済み24%
GCRを財務変革から除外する場合に以下のリスクを認識していると回答した企業の割合
図表6: GCRを財務変革から除外するリスク
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 11
各種法令・規制の複雑化により高まるリスク規制や税務調査の手法が変化する中、GCRプロセスを現況のまま放置する事はできません。リスクを適切に特定し緩和するためには、グローバルレベルでより優れたリスク管理を可能とし、さらに法定会計報告や税務申告のクオリティーを向上させる対策が必要です。
ニューエコノミーや複雑さを増すグローバルなビジネス環境が突きつける現実にどう対応すべきか―世界各国の規制当局も企業と同じ課題に直面しているのです。近年、様々な経済的問題を抱える各国政府は、かつてない程、世界規模での税収の公正な分配に重点を置くようになっています。その結果、より効率的に納税者に対応しかつ税務執行を強化する事で、税務コンプライアンス向上を実現しようという動きが生まれているのです。例えば、より厳密に移転価格規制を実施する手段として、世界中の税務当局の間で、頻繁かつ詳細なコミュニケーションがとられています。さらには、より広範に税務行政の専門的知識を活用できるよう各国間の協議も進んでいます。図表7でご覧いただけますように、回答企業の約3分の2が、これらの傾向は、今後自社のGCR活動にとって 非常に重要あるいはある程度重要な影響を与えると認識しています。
「100年以上の歴史を持つ当社ですが、これまで財務体制は整備しておりませんでした。今回初めての取り組みとして、すべての財務組織を1つのハブにまとめた事は、間違いなく当社の大きな力となっています1」フォーブス・グローバル2000金融サービス企業
回答企業の約半数以上が、各種法令・規制の改正や 税務調査がGCRに重要な影響を及ぼすであろうと 考えている
図表7: 今後1~2年のGCR活動において、各種法令・規制の改正および税務調査が及ぼす影響の重要性
Figure 7:Significance of regulatory change and tax audit activity to GCR activities in the next 12 — 24 months
%
29%
27%
37%
24%
新規法令・改正法
あるいは規制要件
またはその両方
税務調査・
係争の増加
0
20
40
60
80
100
ある程度重要非常に重要
1 本レポートの引用は全て、今回の調査のインタビューを通し匿名で寄せられたコメントを使用しています。
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える12 調査結果とグローバル企業の動向
加速的なペースで実施される各種法令・規制および税制改正は、企業におけるGCRの必要性に大きな影響をもたらしています。変容するGCRの必要性に結び付けて、財務リスクおよび評判リスクを、企業が特定、管理、コントロールする事の重要性は、これまでになく高まっています。
現状維持という選択肢は残されていない新たなビジネスモデル、財務機能の変容、さらには複雑さを 増す規制環境があいまって、GCRは今大きな転換期を迎えています。今日の環境で求められているのは、新鮮でより俊敏性に 富んだGCRの手法です。新たな財務オペレーションモデルにより、財務および税務プロセスに対する、財務担当役員の見解も変化しています。また、GCRへのデータの流れも変化しつつあり、その対策が必要とされています。これに加え、今日の複雑な規制環境の中では、グローバルレベルでGCRプロセスの可視化や関連リスクの把握に努める事が不可欠であり、もはや現状のGCRプロセスのままでオペレーションを続ける事ができないのは明らかです。CFOが経営幹部への報告の中で問うべきは、 もはやGCRプロセス改革の是非ではなく、いつどのように実施 するかなのです。
「コンプライアンスは、会社にとって日常的な機能なのかもしれません。しかし、適切に行えば大きな価値がもたらされる一方で、その不適切な実施が会社の破滅に発展しかねない要素でもあるのです。にもかかわらず、グローバル規模で最適なコンプライアンス効率化を実現できている企業はまだ少なく、多くの企業がまだ発展途上の段階にあると言えます」フォーチュン・グローバル500コングロマリット企業
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 13
財務変革の機運に乗じる
• 先行企業の多くは ビジネスや財務変革の機運に乗じ、不可欠かつ価値あるGCRプロセスの強化に取り組んでいます。
変革のチャンスを利用する財務変革の取り組みは、それを適切に活用することで、GCR改革の力強い基盤となり、企業の効率性、管理性および価値を向上させる大きなチャンスとして利用できます。一方で、GCRに適切に取り組まない企業には、大きな混乱やリスクが生じかねません。今回の 調査でも、多くの企業でGCR改革のチャンスが見過ごされている事が明らかになりま した。
図表8が示すように、回答企業の約半数が、税務に関連するGCR機能を財務変革から除外し、また約3分の1の企業が法定会計報告プロセスを除外したと述べています。慎重な検討の末にGCRを財務変革から除外する決定を下した企業もあるでしょう。 しかし一方で、GCR業務を担当する部署が社内のあちこちに分散しているため、多くの企業が改革のチャンスを逃していると私たちは考えています。また、組織やプロセスのグローバル体制への移行がまだ始まっていない企業では、そのメリットがきちんと理解されないまま、GCRプロセスは広範な財務変革から取り残されてしまってい ます。
財務変革を実施した企業の多くが1つまたはそれ以上のGCRプロセスを除外している
図表8: 財務変革におけるGCR業務の関与
Figure 8:Exclusion of GCR activities in finance transformations
法定会計報告
法人税コンプ
ライアンス
税金引当計算
(年次あるいは
四半期毎)
間接税コンプ
ライアンス
財務変革に包含当初はスコープ外であったが後に追加財務変革から除外
%
0
20
40
60
80
10028%
4%68%
46%
6%48%
44%
8%
48%
52%
12%
36%
GCR関連業務の多くは、より広範な財務プロセスの中に組み込まれているため、財務 分野で何か大きな変更があれば、GCRの主要業務やプロセスも、しばしばマイナスの影響を免れません。しかし、GCRプロセスとより広範な財務変革の相互関係を正しく認識することで、GCR業務に混乱が生じるリスクをGCRプロセス最適化実現のチャンスに変えることが可能なのです。
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える14 調査結果とグローバル企業の動向
標準化による改善先行企業は、財務変革の取り組みをベースにGCRの大幅改善を推し進めています。財務変革を基盤として、自社のGCRプロセスの大幅な改善、また場合によっては標準化・自動化を実施し、飛躍的な進歩を遂げているのです。プロセスの標準化により、期限内申告や申告の正確性など信頼性が大幅に向上し、また規制当局・ 税務当局への対応力の改善や、コスト削減の機会を特定し継続できる環境の整備も期待できます。標準化はまた、プロセスの自動化や集中管理、外部サービスプロバイダーの活用強化などにより、卓越した効率性と高い効果実現への扉を開く事にもなります。 図表9が示すように、企業の多くは一定のGCRプロセスは標準化していますが、今後その範囲を広げ強化していく余地がまだ多くある事は明らかです。
標準化の程度は回答企業各社のGCRプロセスにより異なりますが、やはり税務会計プロセスの標準化レベルが最も高くなっています。これは監査済み財務諸表上で示される法人税報告に、近年規制当局が非常にフォーカスしているからです。さらに確定法人税の会計上の数字は、単一の会計基準に基づく財務諸表上で報告される数字として集約的にまとめる必要があるため、標準化しやすいという特徴もあります。その他のGCRプロセスについても、税務会計プロセスほどではないにしろ、標準化によりかなりのメリットが期待できると考えられます。
「当社の場合、最終的な正確さは確保できても、それに多くの時間と労力を費やし、余りにも非効率なのが問題なのです」フォーチュン・グローバル500素材企業
GCRプロセスとシステムの標準化は未だ多くの企業で未着手である
図表9:GCRプロセスおよびシステムのグローバル標準が整備されている回答企業の割合
ケーススタディ
標準化による効率性・管理性の向上
あるフォーチュン500企業は、自社の広範な財務変革を機に、これと並行してGCRオペレーションモデルの再構築を実施しました。当時同社は、欧州シェアードサービスセンター(SSC)設立とシステムの単一ERP(enterprise resource planning)への統合を進める一方、米国法人税コンプライアンスとレポーティングのプロセスの標準化・自動化も実施していました。同社は、これら2つの取り組みを活用し、欧州法人税センターオブエクセレンス(CoE)を創設する決断を下し、 このCoEに欧州の申告書作成、米国および各国GAAP報告、さらには世界十数カ国の係争管理業務を移管しました。同社が実施した標準化には一貫性のある役割・責任の設定やデータ管理等が含まれています。この新規GCRオペレーションモデルにより、欧州CoEは同社の財務部門のみならず社外の国内サービスプロバイダーともより効率的に協力し作業する事が可能となり、全体的な効率性および管理性の向上が達成されたのです。
Figure 9: Companies with global standards for GCR processes and systems
%
30%
法人税コンプ
ライアンス
48%
法定会計報告
14%
間接税コンプ
ライアンス
64%
税金引当計算
0
20
40
60
80
100
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 15
標準化は、オペレーションおよびリソースモデルの自動化や最適化のベースとなるものです。GCRプロセスの標準化により、何処に活動の拠点を設置すべきか、あるいは国内でやるべき事、地域のCoEで対応できる事、さらには何を中央管理型のSSCに移管できるか、よりよい選択をすることが可能となります。一方、経営幹部にとっては、高価値をもたらす活動により多くの時間を充てることが出来るようになります。コンプライアンスの必要性と周期を明確に把握している企業ほど、季節的あるいは一過性の変動を事前に予見し対応する術に長けているのです。
ケーススタディ
GCRプロセス強化による運転資本の最適化
あるフォーチュン・グローバル500企業は、欧州のインダイレクトタックスオペレーションの合理化を進める事で、大きな運転資本機会が生まれると判断し、現状分析を実施しました。この分析結果に基づき、データ収集手法を改善し、またプロセスの標準化にも取り組んだ結果、より強固なGCRデータのサプライチェーンが実現し、焦点を絞ったデータ分析が出来るようになったのです。これにより同社が必要とする運転資本は1億5千万ドル近く削減され、資金調達額を1,200万ドル以上節約することに成功しました。同社は現在同様の改善策を、サプライチェーンと世界規模でのクロスボーダー取引にも導入しようとしています。
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える16 調査結果とグローバル企業の動向
リスクの認識財務変革に欠く事のできない要素としてGCRを捉えることで、企業はリスク削減の重要な一歩を踏み出す事ができます。法律や法執行の手法が近年まれにみるほど変容を続ける中、企業経営を取り巻く環境は厳しさを増しています。世界各国の税務当局は、企業関連情報の共有化を急速に進める一方、各国協調の下に同時または共同で税務調査を実施しています。これはつまり、ある国で何か問題が発生すると、瞬く間に他の国々でも問題となり得る、そして今後は益々そうなるであろう事を意味しています。アグレッシブな姿勢を強める当局への対応は、企業がGCRプロセス向上に取り組む要因のひとつとなっています。
図表10が示すように、財務変革からGCRを除外すると、不完全なデータ、非効率なプロセス、罰則の強化、さらには税負担の増加等の危険が生じかねません。一方、広範な財務変革の中でGCRに取り組む企業は、このようなリスクを大幅に削減し、改善プロセスの早い段階で、そのメリットを享受することが出来るのです。
回答企業の50%以上が、GCRを財務変革から除外 することはリスクを増大させると考えている
図表10: GCRを財務変革から除外した場合、そこから発生し得るリスクに関する回答者の評価
財務変革の中にGCRを効果的に取り込んでこなかった企業は、経営にマイナスの影響が生じないよう、これらのリスクを緩和する対策を立てる必要があります。本調査に回答を寄せたフォーチュン・グローバル500企業の約20%が、過去12カ月の間に、GCRに関連した事業の混乱を経験したと示唆しています。これらには、例えば、国境地帯での税関当局による物品の押収、法定会計報告上の問題による国内営業許可の取り消し、税金不払いによる経営幹部個人への罰金あるいは本人が逮捕されるリスク等が挙げられます。
%
0
20
40
60
80
100
Figure 10:Respondents’ assessment of the likelihood of risks if GCR is excluded from finance transformation
48%
37%44%
21% 24%
20%
33%
17%
不完全・
不正確なデータ
コンプライアンスおよび
レポーティングの追加コスト
コンプライアンスおよび
レポーティングの
期限遅延や罰則の適用
税負担の増大
起こり得る ある程度起こり得る
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 17
GCRプロセスでは、最終的に現地における国内申告書提出が必要になります。多国籍企業では、激化する競争の圧力や、財務変革の実施により、これまでこの様な業務を担当してきた国内リソースが減少する傾向にあり、課題となっています。広範なR2Rプロセスを支援する人材、つまりGCR関連の人材もこれらの減少リソースに含まれています。
さらに、新規市場に進出する企業は、現地のGCRニーズを満たす手法の選択を迫られる事になります。しばしば設立間もない企業は、現地に財務チームを設置する投資を行っても、それに十分みあう活動を行っていない事が多いのです。一方でこのような新しい会社は、往々にして不慣れでよく分からない、しかも変化の激しい規制環境の中に設立されます。それでも、現地専門知識への持続可能なアクセスという根底にあるニーズは変わりません。そして今日の環境では、それが益々重要で価値あるものとなっています。
図表11が示すように、本調査の回答企業は、現地リソースの関与がGCRには必要不可欠であると強く示唆しています。
回答企業の60%以上が、現地リソースはGCRプロセスにとって 重要であると考えている
図表11:現地の国内リソースがGCRにとって重要だと考える企業
• 現地専門知識の入手はGCRにおける長年の課題です - 新たな 財務・ビジネスモデルの登場でその重要性がさらに増してい ます。
Figure 11:Companies that consider local in-country resources for GCR to be important
%
78%
68% 66%
77%
64%
法人税コンプ
ライアンス
法定会計報告
間接税コンプ
ライアンス
税務係争管理
税金引当計算
0
20
40
60
80
100
必要不可欠な現地の専門知識
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える18 調査結果とグローバル企業の動向
Figure 12: Significance of lack of skilled resources as a barrier to move to a global or regional GCR operating model
非常に重大39%
重大ではない18%
ある程度重大43%
全ての国・地域に本格的な財務・会計機能を持たせることは効率的ではなく、また、GCRプロセスの多くが季節的な業務である事から、適格な人材であっても、常に効率的に稼働させることは時に大変困難である事を企業は認識しています。しかし一方で、クオリティー確保のためにも、適切なレベルの現地専門知識をプロセスに組み入れる事は不可欠です。図表12が示すように、82%の回答企業が、現地の専門的な国内コンプライアンスおよびレポーティング要件に対応できる熟練リソースの不足が足かせとなり、グローバルあるいは地域レベルで管理されたGCRモデルに移行できないでいると示唆しています。
熟練した人材の不足が、地域あるいはグローバルレベルのGCRオペレーションモデルの採用を阻んでいる
図表12:グローバルあるいは地域レベルのGCRオペレーションモデルへの移行を阻む要因として熟練リソース不足はどの程度重大か
多国籍企業では様々なタイプの財務オペレーションが利用されています。旧来の国別モデルで運営する企業がまだある一方、最近の企業のトレンドとして、特に財務改革を断行した企業は、SSCを採用する傾向にあります。SSC採用企業も、外部委託を選択する企業と社内リソース活用を好む企業とに分かれています。いずれにしても、現地の専門知識、特にGCRのための専門知識を確保する術を見い出す必要がある事に変わりはありません。
SSC内のリソースをトレーニングすることでニーズに対応している企業もありますが、この手法は時に成否入り混じった結果をもたらします。一方、現地データ作成と関連調整をSSCで行い、 現地の国内リソースを使って最終レビューを行い、関連申告を完了させている企業もあります。しかし、どのようなモデルを採用したとしても、クオリティーの確保の観点から、十分な現地専門知識をGCRプロセスに統合しなければなりません。
採用モデルにかかわらず全ての企業が、如何に現地の専門知識に アクセスするかという同じ課題に直面しています。このため多くの企業が、社内のGCRリソースおよびオペレーションモデルの補完・サポートを目的に、外部サービスプロバイダーと新規に関係を構築する、あるいは既存の関係強化を検討しています。
ケーススタディ
現地専門家の利用によりクオリティーを確保
世界50カ国以上に展開するあるフォーブス・グローバル2000企業は、社内の財務および税務部門を特定の中核コンピテンシ―にフォーカスさせ比較的少数の主要国に設置するモデルを開発しました。これにより、新興国を始めとする多くの国・地域で、社内の財務・税務リソースが不在となりました。現地の経験や専門知識の必要性を認識していた同社は、税務コンプライアンス、税金引当計算、税金関連の勘定科目残高の検証等の業務のために、必要となる現地専門知識の提供をグローバルなサービスプロバイダーに委託する調達モデルを開発し、世界中で現地専門家のサポートが受けられる体制を整備しました。このモデルにより、同社の財務・税務チームは、現地のGCR業務のクオリティーを犠牲にする事なく、中核オペレーションとガバナンスにフォーカスする事が出来るようになったのです。
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 19
外部専門家の活用
適正な組み合わせを実現する今日の変化のペースを考えれば、定期的にGCRプロセスの管理方法を見直す必要 があるでしょう。何が適切な管理方法かは、事業を営む国・地域、現地の国内オペ レーションの範囲、社内リソースの利用に関する企業の考え方等の要素により、個々の企業で異なります。とくに新興市場では、GCR要件の適切な管理が切迫したニーズとなり得ます。
回答企業の多くが、GCRプロセスの1つあるいはそれ以上について、その一部または全部を外部委託している、あるいは今後2年以内にする予定であると答えています。私たちは、今後益々多くの企業がGCR上の課題に対応するため、最終的 には外部専門家をある程度利用する必要が出てくるであろうと考えています。 外部委託を効果的に行っている企業は、重要なスキルの社内確保に努める一方、必要に応じて外部専門家の知識、ノウハウ、解釈にアクセスできるよう、新たな外部委託手法を構築しています。
図表13で示されるように、社内のGCRプロセスの1つあるいはそれ以上を外部 サービスプロバイダーに委託している企業は、効率性・管理性・価値の向上において、多くの重要な要素を実現する上で、外部委託は効果的だと考えています。
外部のサービスプロバイダーを利用している回答者の80%以上が、外部委託は現地の専門家にアクセスする効果的手法だと考えている
図表13: 外部委託は会社に恩恵をもたらす効果的手法だと評価している企業
• 大多数の企業が、現地、地域およびグローバルの各レベルで、社内外のリソースを組み合わせる事が、最も優れた調達ソリュー ションであると考えています。
Figure 13:Respondents find the use of outside providers to be effective to overcome business limitations
%
83%
56%59%
72%
46%43%
適切なレベルの
現地専門家を雇用する能力
サービスプロバイダーの
各種手法や専門家等の活用
調達ソリューションの
柔軟性や拡張性の確保
コスト削減および
コスト予測可能性の向上
人員および正社員数の削減
オペレーション上のリスクおよび
実行リスクの分散と共有
0
20
40
60
80
100
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える20 調査結果とグローバル企業の動向
外部専門家を効果的に利用する事で、以下の様なメリットが期待できます:
• 費用対効果に優れた専門スキルへの柔軟なアクセス: 専門スキルをフルタイムで必要としない場合、あるいは訓練の継続的実施や法規制・税務当局の動きに常に注意し新情報を入手する余裕のない場合、企業は適格な外部専門家を利用する事で必要なスキルを必要な時に入手する事が可能となります。
• 最先端の手法へのより広範なアクセス: 自社の最先端の手法を各部門で共有する事は可能でしょう。しかし多くの国・地域に進出する大規模な外部サービスプロバイダーには、様々な中核業務に関する最先端の手法がより広範に蓄積されているのです。
• 高価値業務への集中: 多くの企業が、SSCを含む社内のリソースを、より高価値な業務へシフトしようとしています。この様な背景から、限られた社内リソースをGCRプロセスに用いる事が最善の活用方法だとは考えない企業もあります。
• 優れた拡張性: 本業による成長あるいは買収等によりビジネスのペースが加速すると、業務の量や要件に変化が生じます。これに迅速かつ効率的に対応できる可能性は、人的資源という点で、外部専門家の方が高いのです。
本ページのケーススタディでも示されている様に、ほとんどの企業が、GCRニーズを満たす最善策は現地、地域およびグローバルの各レベルで、社内外のリソースを組み合わせて利用する事であると考えています。何が適正な組み合わせかは、新たな環境におけるニーズ、リスクおよびコストを検討した上で決定する必要があります。その他検討すべき重要な可変要素としては、必要スキルおよび経験へのタイムリーなアクセス、オペレーション上の俊敏性・拡張性が挙げられます。
グローバル調達コンプライアンスおよびレポーティングを外部専門家に委託する場合、企業はこれまで、現地で自社の従業員を雇用した上で、現地の調達プロセスに基づいて現地の専門家を利用していました。しかし最近では、地域あるいはグローバルベースで、GCRサービスの全てあるいはその一部を調達する企業が増えています。この背景には、社内の財務機能を地域化・標準化するメリットを認識し始めた企業が、GCRサービスプロバイダーの調達にも同じアプローチを適用しようとする動きがあるのです。つまり、まとまりのない複数の現地 サービスプロバイダーを、グローバルあるいは地域レベルでサポー ト可能なプロバイダと置き換える事でGCRニーズを満たそうとし
ケーススタディ
複数外部専門家の活用
あるグローバル・フォーチュン500企業は、約100カ国を対象とする広範な財務変革を断行し、グローバルなサービスプロバイダー2社との正式な協力体制を擁する新しい財務オペ レーションモデルを構築しました。協力プロバイダーの1社は、グローバルSSCおよび地域SSCを運営する業務アウトソーシング会社(BPO)であり、主に財務取引処理や、仕入れ から支払い(P2P purchase-to-pay)、受注から入金(O2C order-to-cash)等のサポート業務を提供しています。もう1社は、GCRを提供するグローバルな会計・税務事務所であり、法定会計報告、法人税および間接税コンプライアンス等の サービスを世界約80カ国で提供しています。これら2社を組み合わせることで、同社が必要とするスキルや専門知識およびインフラを補完・活用する事が可能となりました。また、 三者間の関係をしっかりとした基盤上に構築するため、ガバナンスの枠組み、サービス範囲および業務手順が明確に定義され、同時にSLAおよび主要業績評価指標(KPI)が三者間で締結されました。これにより、主要なデータ受け渡し時点における監査証跡や情報の質が確保されています。さらには、GAAP転換・調整や申告書の作成といったGCRプロセスの効率性と効果の改善にも寄与しています。同社が実施した財務サプライチェーンへの統合アプローチは、革新的かつ 先進的なGCR手法の好例と言えるでしょう。
ているのです。また私たちの経験では、提供されるサービスの クオリティーや一貫性を向上するため、益々多くの企業が社内調達エキスパートの強化に取り組んでいます。このようなGCRのグローバル調達は、しばしば複数の国・地域を対象とする契約やグ ローバルなサービスレベル合意書(SLA)の締結により実現されています。そして、これと連動して標準化を進める事で、GCRプロセス全体の効率性、管理性および価値のバランスを改善する大きな力となるのです。
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 21
アカウンタビリティと ガバナンスの実現
強固なガバナンスが必要不可欠企業が自社の財務機能の変革がどのようにGCRプロセスを変容させる機会を 提供するかを理解し始めたのはごく最近のことです。自社の組織において、個別のあるいは専任のGCR機能が確立していると答えた回答者は44%未満です(図表14を参照)。
個別のGCR機能を確立している企業は半数以下
図表14: 個別のGCR機能を持つと答えた回答企業の割合
• 明確なアカウンタビリティと優れた管理性は、効果的なGCRモデルの前提条件 です。
Figure 14:
機能の開発を計画する予定がある、計画中である7%個別のGCR機能
を持っている44%
機能を持っていない、機能を持つことを現在検討していない41%
Percentage of respondents with a discrete GCR function
機能を持つことを検討中8%
現在GCRプロセスの管理は、意識的に構築されたものではなく、段階的に出来上がったものである場合も多々あり、GCRにおいて多くの企業が、その管理上の効果とアカウンタビリティとの間にギャップを抱えている事が今回の調査結果にも示されています(図表15を参照)。回答者の60%以上が昨年、予定外の税務調査のリスクに直面したと答え、40%以上が予期せぬ更正を受け、加算金の支払いを求められたと回答しています。重要なのは、17%の企業がコンプライアンス対応 不足により事業が中断したとしており、これは、他のどの部門で発生した問題で あっても、大多数のCFOが決して許容できないレベルで混乱や不備が生じている事を示しています。
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える22 調査結果とグローバル企業の動向
フォーチュン・グローバル500企業の40%以上が予期せぬ更正や罰則を課せられたと回答
図表15: 過去12カ月間にフォーチュン・グローバル500企業にマイナスの影響をもたらした事象
管理性とアカウンタビリティの改善回答企業の多くが複数の部門でGCR業務が行われていると答えており、図表16が示すように、財務部門と税務部門の間だけでなく、各業務部門にも担当が割り当てられています。GCRの担当が組織全体に分散している事で、しばしば管理性が阻害され、改善機会の実現を困難なものにしています。
企業の業務部門に広く分散するGCRプロセスの責任
図表16: GCRプロセスに最終的に責任を負う部門
「[当社のGCRプロセスが]あまりにも分散型であるため、非常に多くの部署がGCRを担当し、コンピテンシーの重複が存在します。時にはオペレーション、時には法務、またある時には税務のスタッフ、あるいは現地のファイナンスコントローラーがGCR業務を担っています」フォーブス・グローバル2000 総合金融サービス企業
Figure 15:Negative business impacts experienced by Fortune Global 500 companies in the past 12 months
%
64%
32%
42%45%
17%11%
予定外の
税務調査
予期せぬ更正
罰則を課せられた
申告の遅延
コンプライアンス対応不足
により事業が中断
不備による修正
0
20
40
60
80
100
Figure 16:Departments ultimately responsible for GCR processes
%
16%
6%
78%
15%
69%
16%
25%
49%
26%
13%
65%
22%
法定会計報告
法人税コンプ
ライアンス
間接税コンプ
ライアンス
税金引当計算
0
20
40
60
80
100
財務部門 税務部門 その他
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 23
状況をさらに複雑にしているのは、地理的に見ても、コンプライ アンスとレポーティングの責任の所在が著しく異なり、現地、地域、グローバルの各レベルで一貫性が欠如しているという事実です (図表17を参照)。
様々なGCRプロセスの責任が地理的にも広範囲に 分散している
図表17: 地理的にみたコンプライアンスおよびレポーティング期限遵守の責任の所在
「海外の拠点は大抵事業規模も小さく、費用がかかり過ぎるため国を超えての監督は行っていません。よって、何か間違いがあっても[手遅れになるまで]気がつかないのです」
先行企業は、強固なグローバルガバナンスは自社の将来のGCRオペレーションモデルに必要不可欠なものであると考えています。ガバナンスは、グローバルベースでGCRを管理しアクセスする基盤となり、必要とされる申告の適時性と完全性を確保し、積極的なリスク管理につながり、GCRプロセス全般の効果と効率性を高めます。グローバルガバナンス手法の採用率は個々のGCRプロセスによって異なりますが、多くの企業がこのアプローチを採用していることが今回の調査でも示されています(図表18を参照)。
GCRプロセスのグローバルガバナンス・レベルには かなりばらつきがある
図表18: グローバルガバナンスを採用しGCR関連業務の監視を行っている企業
Figure 18:Companies with global governance and monitoring of GCR activities
%
79%
59%
税金引当計算
法定会計報告
37%
17%
法人税コンプ
ライアンス
間接税コンプ
ライアンス
0
20
40
60
80
100
GCRの責任が組織全体に分散し、ガバナンスが地理的あるいは部門により異なる限り、GCRプロセスのグローバルな管理と改善は、不可能ではないにせよ、難しくなります。最初のステップはGCRのプロセスオーナーとリソースの明確化です。例えば、先行企業は、プロセスオーナーを特定しこれらのリーダーを活用する事で、法定会計報告のガバナンスやオペレーションと自社の税務 コンプライアンスプロセスをより緊密に連携させています。このような企業では、管理性とアカウンタビリティが改善され、特に データ品質および共有化の分野においては、効率性と価値向上の機会が特定できるようになっています。
Figure 17:Geographic responsibility for ensuring deadlines are met
%
49%
16%
35%
58%
14%
28%
69%
17%
14%
38%
7%
55%
法定会計報告
法人税コンプ
ライアンス
間接税コンプ
ライアンス
税金引当計算
0
20
40
60
80
100
グローバル 地域 国内
フォーブス・グローバル2000ハードウェア企業
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える24 調査結果とグローバル企業の動向
法人税引当金計算のグローバルガバナンスを実施していると答えた企業は79%です。過去10年間、多くの企業が自社の税金引当プロセスに関連し、ネガティブな出来事および予期せぬリスクを経験しており、このような結果を改善するには、この分野でのガバナンス改善が不可欠だったのです。今日、企業は他のGCRプロセスにおいて新たな、しかし類似したリスクに直面しています。しかし、未だに多くの企業が、自社のGCR要件に重要な一貫したガバナンスモデルを導入していないのが現状です。
ケーススタディ
大規模なGCRの再構築
ガバナンスは常にGCRにおける必要不可欠な要素ですが、事業統合あるいは大規模な事業再構築の最中においては、その重要度はさらに高まる可能性があります。世界中に何百という法人を抱えるあるフォーチュン・グローバル500企業は、同じように何百という法人を持つ他のグローバル企業を買収した際、自社のGCRプロセスが今まさに試されようとしているということに気がつきました。被買収側の企業は、正式なGCRプロセスやガバナンスを実施しておらず、コンプライアンスとレポーティングは現地従業員によって各国レベルで管理されており、本社からの可視性はほとんどない状態でした。買収のターゲットとなったこの会社には、コンプライアンス不備の記録はほとんどなかったものの、複雑な税務会計環境の中で事業を営んでおり、このことが税務調査や税務係争のリスクを高めていました。また、従業員の退職により、知識や洞察力のある人材も失われつつありました。
リスクを削減すると同時に、複雑さや仕事量の増加にも対応できる対策を早急に講じる必要があると考えた同社の経営幹部は、GCR専門のサービス会社の協力の下、申告要件を洗い出し、これを各責任者と紐付けした詳細計画を作成しました。これにより、重要な申告リスクが特定され、加算金を課される事もなく速やかに解決することができたのです。提携したサービスプロバイダーは、グローバルガバナンスの枠組みの一部として標準化プロセスの導入を助け、現在はそのサポートを行っています。また、重要なマイルストーンおよび 文書の可視性をもたらす技術的ソリューションも提供しています。同社は現在、法定報告と税務コンプライアンスに可視性と管理性をもたらす、ゆるぎないGCRモデルを確立しています。
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 25
結論
新しいGCRモデルのその先には、プロ セスが最適化され、これにより効率性や管理性、さらには価値の向上が実現された、新たな時代が待っているのです。構造化・標準化され、信頼性・拡張性に優れ、持続可能かつ価値向上にフォーカスしたGCRモデルは、今日多くの企業が未だ依存しているパッチワークのような従来型のアプローチをまもなく凌駕するでしょう。この取り組みを成功裏に成し遂げるには企業自身の努力が求められます。しかし、このレポートが示すように、メリットの享受やリスクの削減のため、今こそ企業がその一歩を踏み出す時なのです。
新しいビジネスオペレーションモデル、財務機能の変革、益々複雑化する規制環境が相互に作用し、GCRは転換期を迎えています。
グローバル化が進み、時に厳しさを増す税務規制環境において、効率性、管理性および価値の向上を実現するため、自社のGCRプロセスを再構築しリスクを軽減する必要性への認識が企業の間で高まっています。そのメリットは明らかです。もはやGCRプロセスの再構築が必要か否かではなく、いつどのように実施するかを決断する段階に来ているのです。
自社の財務変革においてGCRがもたらす機会を活用する企業は、その恩恵を享受しつつあります。そうではない企業も、自社の変革が完了しているか否かにかかわらず、今こそ変化を起こすために行動する時です。まずは、現在のアプローチと新しいGCRモデルがもたらすメリットを比較検討すべきでしょう。
GCRプロセスの再構築には多くの挑戦が伴います。企業が国内の経験豊富な財務・税務リソースの削減を進める一方で、現地当局は税務執行を強化し、税収増加にさらにフォーカスするようになっています。このため、高いスキルを持つ、経験を積んだ現地リソースへのアクセス確保が非常に重要となります。
このような切迫した状況に対応するため、先行企業は社内外のリソースの組み合わせを上手く利用しています。適正な中核スキルを社内に確保する一方、プロセス標準化や情報共有化を進める中で、グローバルにサービスを展開する外部専門家を活用し、そこからもたらされるメリットを最大限に享受することが可能になっています。
新しいGCRモデルには、明確なグローバルアカウンタビリティ、 透明性、優れた管理性が内包されています。そして、これこそが、従来型のアプローチ、すなわちパッチワークのように多くの部門や地理的条件が異なる場所に責任が広く分散するこれまでの状態とは大きく異なる点なのです。
26 Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える
調査結果とグローバル企業の動向 27
グローバルGCRモデルの導入: 推奨されるアプローチ
• パフォーマンスに優れた企業は、GCR全般に渡り、効率性、管理性および価値の向上に必要なバランスを実現し、それを推進しています。
GCRの最適なバランスの実現と維持 企業が直面するリスクの大きさを鑑みれば、GCRプロセスの再考について後手に回る余地はもはや残されておらず、自社のGCR機能の状態を明確に評価し、将来に向けたGCRプロセスの変更・改善の計画策定が不可欠です。
企業の新規GCRモデルの開発・実施をサポートするため、私たちは、GCR環境を構成する4つの要素にフォーカスした以下の枠組みを推進しています。
• グローバルなコンプライアンスおよびレポーティングの構成要素 ̶ 法定会計報告、税務会計と引当、法人税コンプライアンス、間接税コンプライアンス、ガバナンスと管理
• GCRオペレーションモデルの改善が実現するビジネス上の成果 ̶ 市場へのアクセス、オペレーションの俊敏性、コスト競争力、ステークホルダーの信頼、 タックスバリュー
• 効率性、管理性および価値の向上 ― オペレーションにおいて時に対立し得るこれらの要素のバランスを維持し効果的なGCRモデルを実現
• 移行段階 ― 変化し続けるGCRの必要性の把握、オペレーションモデルの決定、適切なプロセスとシステムの採用
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える28 調査結果とグローバル企業の動向
枠組みの中で最も重要なのがGCRオペレーションの構成要素です。パフォーマンスを改善するには、効率性、管理性および価値の向上の観点から、自社のGCRが置かれた現状を評価することが必要不可欠です。
効率性は、標準化プロセスの開発や適切な技術展開、信頼性の高い財務データとGCRプロセスへの効果的なデータフローの確立により実現されます。
管理性は、企業にクオリティー、可視性、確実性をもたらすグローバルガバナンスにより実現されます。金融当局や税務当局がグ ローバルな視点を強化する中、企業もまた同様の視点を持つ事が求められています。
価値は、より効果的なコスト管理(税務コストも含む)、意思決定支援体制の改善、さらには事業や規制要件の変化に俊敏に適応可能なGCRプロセスの強化を通して実現されます。
効率性、管理性および価値の向上の実現効率性、管理性および価値の向上の適切なバランスを実現するためには、複数の部門およびビジネスプロセス全般に渡っての緊密な協力が必要です。法務、人事、サプライチェーン、不動産、マーケティング、IT、財務およびその他部門について、情報の収集、解釈、共有が可能なGCRプロセスを、財務機能に取り入れる必要があります。また、異なる地理的条件、製品あるいは事業部門全体で、効率的にデータを収集し分析できる機能にしなければなりません。成功への道筋となる新たなGCRオペレーションモデルの構築において、このような仕組みが実現できれば、ハイパフォーマンス経営を実現する大きな力となるでしょう。
コンプライアンスとレポーティングの構成要素
法定会計報告
税務会計および税金引当計算
法人税 コンプライアンス
間接税 コンプライアンス
ガバナンスと管理
ビジネスの成果
市場への アクセス
オペレーションの俊敏性
コスト競争力
ステーク ホルダーの信頼
タックスバリュー
最適な バランスの実現
価値
管理性 効率性
GCRの必要性オペレーションモデル
プロセス/ システム
高品質、高コ
スト
経営の視点を重視、高リスク
事務管理の視点を重視
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 29
必要となる対応
5 立地する国・地域、各事業体と その申告要件の特定
5 GCR関連業務の責任、タイミング、 主要指標の確定と実施
5 各種法令・規制、法人組織、財務および ビジネス上の加速的変化の予測・管理に 対応可能なモデルの構築
新たなアプローチ
前ページでご紹介した枠組みには、GCRの必要性の定義、GCRオペレーションモデルの構築と実施、プロセスとシステムの改善を相互に結び付けた、継続的改善プロセスが組み込まれています。
GCRの改善への取り組みが決定されると、関連する事項につき、経営幹部には様々な対応や回答が求められますが、そのうちいくつかの項目を下記でご紹介いたします。これらはあくまでスタート地点にすぎませんが、どの程度迅速かつ確信をもってこれらの質問に回答できるかが、今後必要となる作業量の判断材料になります。
GCRの必要性各種法令・規制の改正や政府と規制当局による税務執行以外にも、例えば市場の拡大やビジネスモデルの進化のように、事業の発展 そのものによってGCRプロセスの変更を迫られる事もあります。
GCRの必要性に関連し、必要となる申告要件や提出書類の定義、洗い出しおよび合理化の実施が財務担当役員に求められます。要件定義には、責任とアカウンタビリティ、タイミング、関連する活動の主要指標も含める必要があります。また、各種法令・規制、法人組織、財務およびビジネス上の、GCR要件に影響を与え得る加速的変化を予測・管理できるモデルの構築が、財務および税務担当役員には求められます。
検討事項
1. 世界の各拠点における個々の申告要件、責任者、 期限はどのようになっているか?
2. 期限と要件のモニタリングプロセスは どのようなものか?
3. 新会社の設立時、あるいは現行法人の状況に 変化が生じた際、対応プロセスはどのように なっているか?
4. リスク特定、コスト最適化、コンプライアンス維持を行うために、財務および税務規則の改正を どのようにモニタリングしているか?
5. 会社の事業開発計画は、新会社設立の必要性や これに伴う新たな申告にどう影響するのか?
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える30 調査結果とグローバル企業の動向
必要となる対応
5 財務・税務業務に必要な中核コンピテンシーの 特定、コンピテンシーへのアクセスを 維持継続するための人員・調達モデルの特定
5 社内GCRリソースの最適活用と配置の特定、 第三者サービスプロバイダー利用による適宜補完
5 GCRプロセス管理のためのガバナンスの枠組みの 決定・導入
検討事項
1. 社内および社外専門家の組み合わせは適切か?2. 財務部門の地域化あるいはSSC設立の計画に 照らして考えると、現地に社内リソースを 確保する必要性はどの程度あるのか?
3. 必要な作業量がそれほど大きくないため、適切な 水準の専門家を雇用できない国や地域はどこか?
4. 現在SSC オペレーションを行っているか? それはどのように利用されているか?
5. GCRプロセスのオーナーは明確か?
オペレーションモデル新規GCRモデルは、より広範な財務および税務オペレーションモデル構築の一環として、設計・導入される必要があります。GCRオペ レーションモデルを確定するには、財務・税務業務に必要な中核コンピテンシーと、これらコンピテンシーへの継続的アクセスを確保する人員・調達モデルを特定しなければなりません。また、社内GCRリソースの最適な活用法や配置(国、SSC、CoE)を決定し、必要に応じてこれを補完する第三者サービスプロバイダーの活用方法も決める必要があります。そして最終的には、GCRプロセスをグローバル規模で管理できるガバナンスの枠組みを開発・導入するべきでしょう。これにより優れた管理性やステークホルダーの信頼がもたらされ、さらには標準化、自動化、集中化を通じ、持続可能なコスト優位性の基盤を固めることにつながります。
Global Compliance and Reporting 導入の好機を捉える 調査結果とグローバル企業の動向 31
プロセスとシステムプロセスとシステムの領域においては、特にGCRプロセスを含むR2Rプロセスを、厳格かつ重点的に実施することが経営幹部に求められます。パフォーマンスに優れた企業は、ここにデータの統合、標準化、効率的活用の機会を認めています。これに加え、GCRを自社の情報システムのアーキテクチャーや計画に取り入れ、現行のR2Rシステムの拡張やさらなる活用、中核GCRプロセスそれ自体の機能向上が可能となる追加技術の積極的な推進等が必要となります。標準化を進める事で自動化の新たな機会が生み出されますが、この両者は、一般に中央管理体制の整備に必要な前提条件と考えられています。
検討事項
1. 計画中あるいは完了した財務変革はGCRデータのニーズにどの程度対応できているか?
2. 自社のGCRプロセスはどの程度グローバルレベルで標準化されているか?
3. 法人組織の会計要件について十分に検討が なされているか?
4. 情報システムインフラの構想は明確か?5. GCR成果物(アウトプット)作成にデータ再加工が どの程度必要か?
必要となる対応
5 より効果的なGCRプロセス構築のために、データの統合、標準化、効率的活用の機会を特定
5 GCRプロセスを自社の情報システムアーキテク チャーと計画に取り入れる
5 標準化、自動化、集中化が可能な時間集約的 プロセスを特定
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Asia-Pacific
Chris [email protected]+44 20 7951 2000
Europe, Middle East, India and Africa (EMEIA)
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Japan
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Ernst & Young
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