fudosan ryutsu keiei kyokai 2019年1月(通巻6号) · 日本大学教授 清水千弘...

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1 2019 年1月 (通巻6号) FUDOSAN RYUTSU KEIEI KYOKAI

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Page 1: FUDOSAN RYUTSU KEIEI KYOKAI 2019年1月(通巻6号) · 日本大学教授 清水千弘 テクノロジーの進化と不動産市場の未来 12 首都圏既存マンション市場─2018年の特徴と2019年の予測─

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2019年1月(通巻6号)FUDOSAN RYUTSU KEIEI KYOKAI

Page 2: FUDOSAN RYUTSU KEIEI KYOKAI 2019年1月(通巻6号) · 日本大学教授 清水千弘 テクノロジーの進化と不動産市場の未来 12 首都圏既存マンション市場─2018年の特徴と2019年の予測─

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様 な々働き方や暮らし方に応じて住まい方を替えることが豊かな住生活の実現につながる

Interview

既存住宅流通市場全般を行政側からどう見ていますか。

野村氏 住宅に限らず、現在はストッ

クを有効活用していく時代です。ここ

まで成熟した社会となりましたが、日本が終戦後、何もないところから立ち上が

り、国土のストックを積み上げた先人たちの努力により、ようやく国土の姿が

整ってきたものと思います。そして、積み

上げてきたストックを今後どのように、“長く”、また“賢く”有効活用していく

のか。住宅も例外ではなく、ストックの

有効活用というテーマは、環境問題等も視野に入れ、取り組んでいく必要性があるものと考えています。 また、もう一点重要なことは、流通の

段階で付加価値を加えるということで

す。これは、リフォームや住まい方にも

関わる話です。そこに新たな付加価値が生まれれば、経済効果も見込まれる

でしょう。しかし、単に付加価値を加えるということだけでは既存住宅市場の活性化に向けては十分ではありませ

ん。様 な々働き方や暮らし方に応じて住まい方を替える、つまり、人々の住宅行動の多様化を支えることが、豊かな住生活の実現につながるという視点で考えることが重要です。 国土交通省では、既存ストックをど

のように有効活用していくかという観点

表紙イラスト 向井勝明

(通巻6号)2019年1月

国土交通省土地・建設産業局長 

野村正史氏

“質の良さが客観的に評価されれば相応の価格で取引される”という実績づくりが大事

野村正史(のむら ・まさふみ)氏

昭和36年8月24日生、富山県出身。昭和60年3月東京大学法学部卒、同年4月建設省建設経済局建設業課採用。平成11年7月建設省都市局都市政策課建設専門官、平成13年1月国土交通省都市・地域整備局まちづくり推進課企画専門官、同年7月同大臣官房総務課事務合理化対策官、平成14年7月同都市・地域整備局総務課企画官、平成15年7月同住宅局住宅企画官、平成16年9月同大臣秘書官事務取扱、平成18年9月同大臣官房参事官(国土計画局担当)、平成19年7月内閣官房内閣参事官(内閣官房副長官補付)、平成21年7月国土交通省大臣官房地方課長、平成22年8月同大臣官房広報課長、平成23年10 月同土地・建設産業局不動産業課長、平成25年8月同総合政策局総務課長、平成26

年7 月同大臣官房政策評価審議官(兼)秘書室長、平成27年7月同水管理・国土保全局次長、平成29年7月同国土政策局長、平成30年7月同土地・建設産業局長。

C O N T E N T S 3 < Interview>国土交通省土地・建設産業局長 野村正史氏 様々な働き方や暮らし方に応じて住まい方を替えることが 豊かな住生活の実現につながる

8 <論点> 日本大学教授 清水千弘 テクノロジーの進化と不動産市場の未来

12  首都圏既存マンション市場─2018年の特徴と2019年の予測─   ㈱東京カンテイ 市場調査部上席主任研究員 井出 武

18  <マーケット最前線>主要エリアの店舗に聞く  東京城西/横浜みなとみらい/仙台市中心

22 <日本の不動産流通業史⑥> 明海大学不動産学部教授 周藤利一 中成長期の不動産流通業

24 <FRK調査・研究報告1> 不動産流通業に関する消費者動向調査 既存住宅の購入者は ライフステージや世帯構成に合わせて取得

30 <FRK調査・研究報告2>  MultipleListingService(MLS)とは何か

35 編集後記

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2019年1月(通巻6号)FUDOSAN RYUTSU KEIEI KYOKAI

Page 3: FUDOSAN RYUTSU KEIEI KYOKAI 2019年1月(通巻6号) · 日本大学教授 清水千弘 テクノロジーの進化と不動産市場の未来 12 首都圏既存マンション市場─2018年の特徴と2019年の予測─

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空き家の利活用はそれがそのまま既存住宅の活性化につながりますが、世間は空き家問題に神経質ですので、政策面としてはプレッシャーになるのかとも思いますが。

野村氏 「空き家」と言うと、見捨てら

れ、住むに耐えらないストックというイ

て既存住宅を取引できる環境の整備や、良質な既存住宅が適正に評価され

る環境の整備などの施策を着実に推進していくことが必要であると考えていま

す。

政策のメニューは増えてきたと思いますが、それをさらに推し進めるための来年度以降の政策課題について教えて下さい。

野村氏 宅地建物取引業法の改正に

より、建物状況調査(インスペクション)の実施に係る説明の義務付け等が措置されましたが、インスペクションその

ものに対する消費者の理解を含め、まだ十分に普及している状況ではありま

せん。このため、その周知・普及を図る

余地は大きいと考えております。また、改正宅地建物取引業法の施行に併せ

て、「安心R住宅」制度ができました。

現在、8団体において「安心R住宅」の標章が活用されているところですが、同制度もその周知・普及を更に進めるこ

とが必要です。単にインスペクションだ

けでなく、それを上手に活用した「安心R住宅」制度とあわせて普及を進めて

いくことが重要であると考えています。 「売主側には特にインスペクションに

対するインセンティブがない」という声も聞きます。調査の結果によっては価格を下げる要因となってしまうといった心配が先に立つかもしれませんが、“質の

良さが客観的に評価されれば相応の

価格で取引される”という実績をつく

るべく、地道に取り組んでいく必要があ

ります。改正宅地建物取引業法等の施行状況を注視しながら、業界の皆様に

もビジネスモデルとして定着するよう、更にこれをプロモートするための取組を関係部局とも連携して考えていく必要があると考えています。

から、様々な制度改正や予算、税制に

係る施策を講じています。こうした状況下において、例えば、首都圏では、2年連続で既存マンションの成約件数が新築マンションの発売戸数を上回るなど、一部には明るい兆しも見られるところで

す。しかしながら、我が国全体として見ると、依然として住宅市場全体に占め

る既存住宅流通シェアは低い状況にあ

ります。 このことの背景には、既存住宅取引時の消費者の意識として、購入者が住宅の質に対して不安を抱えていること

が要因の一つであると考えています。また、サービスを多様化してくことも必要でしょう。既存住宅に対する潜在的なニーズは多数あると考えられるため、ニーズに応じたサービスを多角的に提供するという工夫の余地はあるのでは

ないでしょうか。いずれにせよ、住宅の

質に対する不安の解消を含め、安心し

らすことを希望する場所で、どのような

住宅を求めるのか、ということを選択する時代になっています。こうしたニー

ズに空き家がマッチングするケースも

あるため、丁寧に、潜在的な利活用の

ニーズがある空き家を掘り起こしてい

く仕組みを構築していく必要があると

考えています。そのような空き家は限ら

れているかもしれませんが、利活用の

価値があるものが確実に存在します。特に人口の流動性が高い都市部等で

は、十分利活用に耐えられるものがあ

るでしょう。除却すべきものは除却す

るという視点も重要ですが、利活用で

きるものは利活用するという視点も持ち、取り組んでいく必要があるものと思います。 国土交通省では、こうした問題意識の下、空き家等のマッチング機能の強化を図る観点から、全国の空き家等の

情報を簡単に検索できる「全国版空き

家・空き地バンク」の構築を支援して

きました。2018年4月からは、公募で選定した事業者による本格運用が開始さ

れました。また、空き家等の低額物件に係る宅地建物取引業者の媒介報酬額の見直しや、不動産団体等による空き家等の利活用に向けたモデル的な取組に対する支援等の取組も進めていま

す。さらに、空き家の流通においても、品質に対する不安をどのように解消し

ていくかという視点が必要です。インス

ペクション等の住宅の質を評価する仕組みを、取引の中にどのようにビルトイ

ンしていくのかということが今後の課題だと考えています。

全国版空き家・空き地バンクはどこまで有効なのでしょうか。

野村氏 全国の自治体の空き家等に

関する情報をワンストップで見ることが

できる仕組みはこれまでありませんでし

た。“この県のこの市町村”というよう

に指向が明確な場合はその地域をピ

ンポイントで探せば良いですが、全国の様 な々物件を簡単に見ることができ、

かつそのスペックもある程度比較可能な形で掲載されていれば、物件を踏ま

えて地域を決める人もいるかもしれま

せん。一覧性のあるサイトはユーザーに

とっては非常に便利だと思います。「全国版空き家・空き地バンク」に参加す

る自治体も増加しているため、今後も更に裾野を広げる努力をしながら、自治体に対する働きかけやエンドユーザー

に対する周知を進めてまいりたいと考えています。また、一層、ユーザーの関心に応えられるようなサイトとしていく

必要もあるでしょう。潜在的な利活用のニーズがある空き家を掘り起こしていく仕組みを構築へ

売主と買主がWin-Winとなる成功事例を作ることがインスペクションの普及に

インスペクションの情報開示が流通市場に与えた影響ついて。

野村氏 今後も引き続きインスペク

ションの周知・普及を図る必要はある

と考えていますが、買主からは、「インス

ペクションを初めて知った」というプリ

Interview様 な々働き方や暮らし方に応じて住まい方を替えることが豊かな住生活の実現につながる

ミティブなものから、「物件の状況を把握することができ、安心感につながっ

た」、あるいは「既存住宅売買瑕疵保険への加入が可能になった」といった

声を聞いており、実際に利用してみれ

ばその有用性は理解してもらえると思います。

メージを想起される方も多いと思いま

す。しかし、現存する820万戸の空き

家の中には様々なものがあり、直近ま

で人が住んでいたものや、十分に管理されていたものなどもあります。働き方や暮らし方によって、“どうしてもこの

場所に住みたい”というケースもある

と思いますが、新築を求めて郊外で暮らすという志向だけではなく、働き、暮

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にはありませんので、プロモートしてい

く必要があります。まずは、インスペク

ション等を経ることにより、結果的に満足度の高い取引になるということを多く

の人に実感してもらうことが重要である

と思っています。

AI(人工知能)やIoT、ブロックチェーンなど新しいテクノロジーを使った市場整備や活性化については行政側ではどのように考えていますか。

野村氏 人工知能やIoT、ブロック

チェーンといった新技術の活用は、消費者に多様なサービスを提供し得るも

のであり、また、事業そのものの効率化を図っていくことにもつながります。生産性を向上するとともに消費者のニー

ズを掘り起こし、新たなビジネスの創出につながる可能性を秘めたものだと

思っています。いわゆるテレビ電話等の

ITを活用した重要事項説明について

は、すでに賃貸取引において本格運用を開始しました。また、不動産証券化市場では不動産特定共同事業へのク

ラウドファンディングの導入も行いまし

た。このような分野から、徐々にではあ

りますが、不動産取引に新しい技術が

活用され始めています。また、空き家の

利活用に係るモデル事業の枠組の中で、新技術を活用した先進的・モデル

的な取組として、例えばVRを活用した

内覧やスマートロックのような開錠のシ

ステム、ドローンを活用した周辺調査などを対象に、通常の助成額を上乗せ

して支援しているところです。さらに、不動産業そのものではないですが、AIス

ピーカーやスマートフォンにより、住宅に設置されている機器等のコントロー

ルを可能とするといった付加価値をつ

けた賃貸住宅も出てきています。そのよ

うなハードとして不動産を提供していく

ことが付加価値となる時代になってい

ると思います。他方で、取引が安全であ

ること、消費者を保護していくことは絶対に必要であるため、こうした観点を

含め総合的に考えていくことが不可欠です。 事業者の皆様が新技術を活用する

ことを通じて、住まい方等の豊かさにつ

ながることを期待しています。

 一方、媒介に当たる宅地建物取引業者からは、「売主には建物状況調査の

必要性に対する意識がなく、説明しても

理解してもらえないことが多い」という

声も聞いています。こうした課題を解消する方策の一つは、売主、買主等が、それぞれWin-Winとなるような成功事例を作ることです。売主は少しでも高く、また買主は安心して物件を買いたいとい

うニーズがあるはずです。このため、買主としては多少価格に反映されること

を理解した上で、既存住宅に係る情報を開示してもらうなど、双方の十分なイ

ンセンティブにつながればWin-Winの

取引となるのではないでしょうか。こうし

た事例を我 と々してもできる限りキャッ

チし、様 な々媒体を通じて広めていくこ

とから始める必要があります。まだ自然とインスペクションが広まっていく状況

不動産IDの付与について。

野村氏 不動産情報の整備・充実は、不動産マーケットにおける消費者サー

ビスの向上や業務の効率化等の基盤となるものであり、行政は、産学が活用できる不動産情報の整備・充実に努め

ていくことが重要です。こうした考え方を実行する観点から、レインズに蓄積された取引情報を不動産 IDにより履歴化し、宅地建物取引業者が消費者に提供できる情報の充実化に向けた検討を行うため、2019年度予算案におい

て所要額を計上しているところです。 不動産には個別のアイデンティティが

あるため、取引を行う場面等において、不動産ごとにIDを付与し、特定していく

ことが必要になっていくものと考えてい

ます。結論ありきではなく、こうした取組が有益であるならば進めていけるよう、十分に検討し、そのアセスメントを行い

たいと思います。社会・経済情勢が変化する中、業を支えるインフラも含め、十分な備えを官民それぞれの分野で取り

組むことが重要だと考えています。

不動産流通市場の見通しと業界への期待を聞かせてください。

野村氏 これからは、それぞれの人生のステージに応じて住まい方や、住まい

そのものを選んでいくことが重要にな

ります。不動産業は、まさしくこうしたこ

とを支える重要な産業であり、そこにビ

ジネスチャンスを期待できるでしょう。そのためには、二つの切り口があると考えています。一つは「空間における不動産」です。不動産だけの価値ではなく、不動産がそこに立地することによってそ

の地域の価値を高める効果や、不動産を「場」とした多様なサービスを一体と

して捉えることが重要です。もう一つは、消費者の生涯の時間軸の中で、住まい

方を支えるという「時間の中における不動産」です。これらの両面で不動産業には多様なサービスが求められており、そこに大きな価値を生み出していく可能性があると考えています。 その結果、交通や運送、医療・介護など暮らしを支える他の業種・サービ

スや、市町村等の行政との連携や協働を図っていく局面も増えるでしょう。「空間と時間軸の中の不動産」を提供する

産業、つまり人々の働き方や住まい方を豊かなものにするための鍵を握る産業として、不動産業は大いなる発展の

可能性があります。不動産業において

様々な商品やサービスを生み出すこと

が、豊かな国民生活と経済発展の礎と

なるのではないでしょうか。我 も々行政の立場から、多くの有識者や業界の皆様の英知を結集しつつ、不動産業の今

後の発展を確保するための中長期ビ

ジョンづくりに向けた検討を進めている

ところです。 特に不動産流通経営協会では、大規模開発や管理も含めた企業グループ

として事業展開をしている会員も多い

と思います。業界を率先して新たなビジ

ネスモデルをつくり、様 な々不動産業者がチャレンジしたくなるようなサービス

の高度化を進めていただくことを期待しています。その上で、かかりつけであ

る地場の不動産業者と大手企業との

役割分担ができ、相互に助け合いなが

ら全体としてユーザーにとって厚みある

サービスが提供できる業界となることを

期待しています。

様 な々不動産業者がチャレンジしたくなるようなサービスの高度化に期待

Interview様 な々働き方や暮らし方に応じて住まい方を替えることが豊かな住生活の実現につながる

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不動産市場の未来は誰が予見できるのか?

 不動産市場のみならず様々な分野で人工知能、AI

(Artifi cial Intelligence)の活用が注目されている。人類の歴史を紐解けば、AIをはじめとする科学技術の進化は我々の経済活動においては生産性を、家計においては

効用を高めるように機能してきた。その時々で革新的な

技術が登場し、その技術が財やサービスの生産性を一気に高めるとともに、まったく新しい産業をも誕生させて

きた。 近年において、米国・英国の代表的な不動産経済学者や都市経済学者が「不動産市場の未来」と題したレ

ポートを出版したことで、日本でも多くの実務家が話題に挙げることが多くなってきている。例えば、マサチュー

セッツ工科大学の同僚であるAlbert Saiz教授が大学院生と一緒に書いた「Real Trends: The Future of Real

Estate Market in United States」は米国の不動産市場の現在と未来への展望を、新しいテクノロジーがもた

らす影響と併せて整理している。また、オックスフォード

大学のAndrew Baum教授は「PROPTECH 3.0: THE

FUTURE OF REAL ESTATE」といったテクノロジー

の進化に対して焦点を当てたレポートを出した。 いずれのレポートも興味深い視点を、米国・英国で進む近年のテクノロジーの進化を踏まえた展望を示してい

るといった点で共通し、また多くの部分で重複するもので

あることから、ここで提示された視点はわが国においても

大いに参考になる。Albert Saiz教授もAndrew Baum

教授も古くから交流を持つが、AIまたはテクノロジーと

いった研究とは遠いところにいる、またはいた研究者であ

る。Saiz教授の専門は都市経済学であり、都市の集積や

テクノロジーの進化と不動産市場の未来清水千弘日本大学スポーツ科学部教授 マサチューセッツ工科大学不動産研究センター研究員

土地の供給制約について優れた研究業績を持つ。Baum

教授は不動産投資を専門とし、英国のプルデンシャルに

リサーチチームを作り、そして大学と民間とを行き来し

た、学術の世界と実務の世界の両方で活躍してきた研究者である。つまり優秀なエコノミストなのである。 例えば、Googleにおいては、私の元同僚でもあるリク

ルートAI研究所の所長に就任したAlon Halveyはチー

フリサーチャーとしてデータサイエンス部門を率いていた

が、元UC Barkley教授で日本でもミクロ経済学の教科書の著者として著名なHal Varian教授がチーフエコノミ

ストとして、二人でタッグを組んで新しいサービスを開発し

てきた。 Amazonにも、代表的な不動産テック企業である

ZillowやRedfi nにも、必ずエコノミストが在籍し、彼らが

未来像を描き、データサイエンティストはその設計に関わ

るものの、そのサービスを作り上げていくためのデータ基盤の構築、機械学習を中心としたモデルの開発などと分業化されている。その意味でSaiz教授やBaum教授が

不動産市場の未来を予見するというのは自然なことなの

である。

不動産市場のWinner(勝ち組)and Loser(負け組)?

 ここで、MIT不動産研究センターが出版した「Real

Trends: The Future of Real Estate Market in United

States」に注目するとともに、2018年9月19日に不動産流通経営協会(FRK)、不動産協会、日本大学の共催とし

て、MIT不動産研究センターの研究者および同センター

の出身者として米国の不動産テック企業でエコノミストと

して活躍する研究者、日本のAI研究者を招聘し開催し

た公開ワークショップでの議論を踏まえて、日本の不動産市場の未来を展望してみよう。 MIT不動産研究センターが出版した「Real Trends」では、①人口動態、②住宅取得能力、③建設市場にお

けるテクノロジーのインパクト、④スマートビルディングと

IoT、⑤不動産テック、⑥将来への展望(Real Trends to

Watch)─と6つの章から構成されている。 日本では不動産テックが語られるときに、建設市場の

新しいテクノロジーのことが語られていたり、IoTなどを活用したスマートビルディングのことが語られていたりする

こともあるが、ここでは不動産テックとは別に分類されて

いる。 そのような市場構造の変化を踏まえた上で、テクノロ

ジーの進化の影響を考察する必要がある。 まず人口動態としては、①日本では中長期的には都市部ですら人口が減少し、世帯数もまた併せて減少するこ

とが予測されている。また、②米国では移民を制限するこ

とが行われているが、確実に移民は増える。米国では既に6,400万人の移民によって住宅市場がひっ迫した状況に置かれている。日本でも一定の数の移民が増加するこ

とを想定しておくことが必要であろう。そして、③世界的に

高齢化が進むことが予想されているが、日本では世界で

最も早く高齢化が進み、④一世帯人数が減少して、住宅密度が低下するといったことも同時に予想されている。日本では高齢の単身者が急増してきているが、その傾向は

加速するであろう。 このような中で、米国では魅力的なアメニティとライフ

スタイルやレジャーを提供する都市が好まれる傾向が

強くなってきており、産業集積が大きいところに人が集ま

るのではなく、豊かな消費活動を通じて一層質の高い生活が享受できる都市への集積が強くなり、土地価格が

急騰しているという事実は、日本でも注視しておく必要があるものと考える。また、米国の主要都市では、土地だけでなく建築費も上昇していくことで住宅の取得が一層と困難になっていることが報告されている。世界的に

労働力が不足し、労賃が上昇するとともに、建設需要が高まる中で建設資材も高止まりし、コストプッシュ型のインフレーションが建設市場では継続することが予見されている。 このような状況をテクノロジーといった意味で変化させ

る可能性として、価格を抑えるような新しい建設資材が開発されたり、ドバイのように3Dプリンターでの建造物を

生産したりする時代の到来を予測し、建設費の高止まり

が抑えられる可能性も示唆する。また、自動運転が発達してくると、車を20%減らし、移動時間を短縮し、実質道路容量が増加することで渋滞は緩和される、または都市内部の45%を占める駐車場の需要がなくなることで、土地の供給が増えるために、土地価格の上昇を抑える可能性も指摘されている。 このような変化が予測される中で、どのような不動産が

生き残り、どのような不動産が淘汰されていくのであろう

か。勝ち組の不動産と負け組の不動産とはどのような要件によって識別されてくるのであろうか。 Saiz教授、Baum教授ともに指摘するのが環境配慮型建築物、つまり断熱性が高く、エネルギー効率の高い

不動産、いわゆるグリーンビルディングの一層の普及であ

る。地球環境への負荷が小さいだけでなく、IoTやセン

サー技術などを利用して、エネルギー効率ばかりか快適性や健康へも配慮した不動産の普及が加速し、そのよう

な不動産が生き残っていくことを予測している。 加えて、高い文化的な消費ができる場所、おしゃれな

カフェや素敵なレストラン、バーや居酒屋などが集積する

清水千弘(しみず・ちひろ)

日本大学スポーツ科学部教授(統計学担当)、マサチューセッツ工科大学不動産研究センター

研究員。東京工業大学大学院理工学研究科博士後期課程中退、東京大学大学院新領域創成科学研究科博士(環境学)。(一財)日本不動産研究所研究員、㈱リクルート住宅総合研究所主任研究員、麗澤大学経済学部教授、シンガポール国立大学不動産研究センター教授等を経て現職。専門はビッグデータ解析、不動産経済学。主な

著者に『市場分析のための統計学入門』『不動産市場の計量経済分析』『不動産市場分析』など。社会資本整備審議会、内閣府統計委員会専門委員、金融庁金融研究センター特別研究員を務める。

1

2

論 点

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てきたものである。不動産会社各社、ポータルサイトを運営する会社もまた、巨額の費用をかけてデータ基盤や公開サイトを構築し、そのデータ整備手法には各社が長い

年月をかけて研究開発を行うとともに、一人一人の広告出稿主、営業マンなどの努力によって構築され、業界の発展と消費者のために運用されている。 先の矢野氏の例に見られるように、研究を行うものは

何十年にもわたって蓄積したり、データにアクセスするた

めのたゆまぬ努力をしている。そのデータを「開放しろ」などという真っ当な研究者も実務家もいないであろう。その努力に敬意を持つからである。そのような先人たちへ

の敬意があれば、それを無断で活用するなどといったこ

とはできないであろう。米国から出席した二人の登壇者は、データはすべて購入しており、クロールしたデータを

用いてサービスを提供している会社を米国では知らない

といった。残念ながら現在の不動産テックを提供する企業の中には、そのような意味で多くの課題があるところも

少なくない。テクノロジーを勘違いしてしまっている企業も

多い。この問題が解決されない限り、さらなる進化はない

であろう。 また、AIなどの技術を各企業で、または業界でどのよ

うに使っていくのかは、専門家が未来図を描かなければ

ならない。その意味で、高い専門性(Art)とテクノロジー

(Science)が融合して、初めて未来を切り開くことができ

る。 テクノロジーが進化していくように、不動産業界で働く

専門家の専門性、アートを一層進化していくことができな

ければ産業としても生き残ることが難しく、その中で働く

専門家もまた淘汰されてしまうといったことは今までの歴史が物語っていることである。その中で産業、企業は自ら

ではなく、いかに働く人や消費者を幸せにすることができ

るのかといったことを基点に置かなければならないという

ことは言うまでもない。

こで挙げられているような技術は既に日本でも実用化さ

れてきているのである。

ArtとScienceの融合 : 生き残る条件

 テクノロジーの進化は、様々な形で私たちの生活を豊かにしてきた。そのような中で不必要な仕事はなくなり、新しい仕事が登場してきた。それでは、未来の不動産市場を予見した時に、Saiz教授が問うように「行き残るの

は、誰であるのか?」ということも含めて、次の業界の未来図を描きなおしていかなければならない。 9月19日の公開ワークショップのオーガナイザーであ

り、基調講演を行った(株)日立製作所の矢野和男氏は、すべての研究開発の根底には幸福が置かれていなけれ

ばならないことを指摘した。また、近年AI技術が注目さ

れる中で、本当の技術と偽物の技術を識別していく力を

身に付けていかなければならないことの重要性と偽物が

横行することへの警鐘が鳴らされた。 同氏は、独自に開発された計測器で過去10年以上に

わたり計測された大規模データを用いて、人々の幸福度を測定する技術を開発した。それが不動産分野にも応用ができることが示された。その研究からもわかるように、テクノロジーの進化は一朝一夕に生まれたものではない。データの作成技術の開発と実際の収集・分析基盤構築、分析技術の研究開発、それを活用することの応用研究な

ど、多くの先人たちが開拓してきたものである。その進化に対する敬意が必要である。 例えば近年、わが国でも注目される自動価格評価シス

テムでも、良質な価格または家賃データがなければ精度の高い予測はできない。レインズに代表される業界共有のデータ基盤も、長い歴史の中で業界が協力して多くの

困難を乗り越えてその時々の英知を終結させて築き上げ

では、機械学習で借り手と仲介業者のマッチングプロセ

スを改善するようなサービスも登場してきている(Rental

Beast)。 商業用市場では、テナント・投資家・ベンダーなど

個別のリスクをスコアリングしたり(Megalytics)、物件と所有者、そしてテナントや権利関係を統合したデー

タを見られるウェブサイトなども登場したりしてきている

(Reonomy)。日本でも活用されるようになってきている

が、賃貸仲介業者向けの顧客対話チャットボットが活用されたり(Apartmentocean)、リーシングとテナント管理業務に関するレポート・提案書を自動的に作成するサー

ビスが登場したりすることで(Proposalnet)、賃貸管理業務の生産性が飛躍的に上昇してきている。 前述の9月19日に日本大学で開催した公開ワーク

ショップでも、セッション1の「テクノロジーは不動産市場を進化させることはできるのか?」、セッション2の「不動産業に求められるテクノロジーとは? 不動産テックの先端事例」では、現在の実用例が紹介された。米国のRedfin

のチーフエコノミストであるSheharyar Bokhari氏が同社の自動価格評価システムを紹介したが、そこでは単に

価格を予測しているだけでなく、その背後にある居住環境をも評価し、説得力のある価格推計を実現すると同時に、その延長として未来の価格を予測していることも紹介された。同じく登壇したMIT不動産研究センターの

Alex van de Minne氏からは、David Geltner教授、そして筆者らと世界30カ国以上で展開する商業系の不動産価格指数の提供基盤(Price Dynamics Platform)が紹介されたが、米国のみならず東京をも含む主要都市で

不動産市場を鳥瞰できるような技術開発も進んできてい

ることが理解された。また、3Dレンダリング、AR、VR分野においては、オーガナイザーの一人である東京大学大学院の山﨑俊彦准教授から日本での開発事例が紹介さ

れ、筆者からはAIによる自動設計の事例を紹介した。こ

場所、美術館や博物館などが多い街、等 、々産業の集積ではなく、広い意味でのアメニティやエンターテイメントが

ある街に人が集積し、そのような街が生き残り、デトロイ

トのような産業だけに依存した街は衰退すると指摘する。

不動産業界の未来

 それでは、未来の不動産市場では不動産業界はどのよ

うに変化していくと予見されているのであろうか。Saiz教授は、①不動産取引ウェブサイトによる取引革命がおきる。つまり、オンライン取引が増加する、②自動価格評価シス

テムや不動産のベンチマーク指数が普及し、不動産市場を透明にする、③クラウドファンディングは新しい資金調達手法として普及する、④不動産取引のブロックチェーン

は10年以上かけてゆっくりと発展していく、⑤3Dレンダリ

ング、AR、VRは人間の体験を変えることで人々の住宅探索行動に対して影響を与える、⑥AIが自動的に最適な建築物を設計していくことで最適な開発・建築計画をシミュ

レートする、⑦日本でも普及し始めているBIM(Building

Information Modeling)などを通じて建物管理、資産管理ソフトウェアが効率化を進める、⑧プラットフォームの統合が進む─といったことを予見する。 とりわけ情報処理技術が飛躍的に進化していくこと

で、取引に必要な法的書類や抵当権、税関係書類だけで

なく、エネルギー効率、周辺環境などの様 な々データとの

統合が進む。このようなことがブロックチェーンへと接続していくことになる。また、自動価格評価システムは価格を決定するだけでなく、リアルタイムに価格の変化を推計するとともに、消費者の検索性やマッチング精度を高める

ことで従来の物件探索の動線を大きく変化させていくこ

とを指摘するとともに、一層の進化を予見する(代表的な

企業としてCraigslistやZillowが挙げられる)。賃貸市場

3

4

2018年9月に開催した公開ワークショップ

Page 7: FUDOSAN RYUTSU KEIEI KYOKAI 2019年1月(通巻6号) · 日本大学教授 清水千弘 テクノロジーの進化と不動産市場の未来 12 首都圏既存マンション市場─2018年の特徴と2019年の予測─

12 13

首都圏既存マンション市場 ー2018年の既存マンション市場の特徴と2019年の市況予測ー

株式会社東京カンテイ 市場調査部 上席主任研究員 井出 武

成約件数、新規登録件数、在庫件数がいずれも増加

 2018年は首都圏の成約件数、新規登録件数、在庫件数(グラフ1)がいずれ

も増加した1年であるが、相対的には

在庫件数の伸びは鈍化の方向に向か

い、新規登録件数の増加に比して成約件数も増加するという動きとなって

いる。2017年は価格の上昇に伴い、エ

リアによっては、売価格と購入希望価格の乖離が顕在化して、既存住宅の流通に滞りが見られた。特に年後半から

はその傾向か強まり、そのため在庫件数の増加が大きくなった。グラフ2の

東京都の動きも首都圏と同様で都県別の動きに大きな違いはないと見ら

れるが、既存住宅が最も多く流通する

東京23区の動きをエリア別に見ると、その動きにエリアごとの事情を反映した違いが表れている。 都心3区(グラフ3)では、首都圏の動きで言及した2017年後半からの在庫件数の増加は見られずむしろ反対に

減少していた。この動きの要因は新規登録件数の減少である。それに伴い成約件数も減少するが、全体的には在庫件数が減少した。2018年は年間通じ

て新規登録件数が若干増加に転じた

が、大きな変動とは言いがたく、成約件数、在庫件数も概ね横ばいで推移し

た。既存マンションの流通状況は安定した動きであると言えよう。 城東地区(グラフ4)では、新規登録件数が2016年以降増加しており、2018年もその動きが継続した。比較的価格が安いエリアであるため、現在

の価格上昇期においては取引しやす

く、流通が活発に行われたと見られ

る。しかし、2018年の後半からは成約件数が伸び悩み、在庫件数が再び

増加する傾向となっている。後述す

るが新規登録単価の上昇によって、2018年後半から流れが変わったと見られる。

都心3区は安定、城南・城西・城北は活性化

 城南地区(グラフ5)では2017年後半から在庫件数が増加したが、2018

年に入り在庫件数は減少に向かう

動きを示した。新規登録件が増加し

たが、成約件数がそれ以上に増加し

たため、在庫件数は縮小に向かった。2018年の後半から在庫件数は再び増加を示してはいるが、新規登録件数の増加が要因で、既存マンションの

流通は活性化しているエリアだと見られる。 城西地区(グラフ6)では2017年後半からの在庫件数の増加が城南地区と同様に見られるが、その後の動き

もほぼ同様に大きな変化はなくなっ

ている。新規登録件数は増加傾向で

あるので、新規件数の増加分が成約するといったバランスが取れた状態で2018年は推移したと見られる。大規模再開発の行われているエリアが多いことから将来性への評価から流通が活性化していると考えられる。 城北地区(グラフ7)もグラフでは

前述の城南地区と城西地区と同じ動きが示されている。新規登録件数は

徐々に増加しているが在庫件数の大きな増加は見られず、相当の成約件数があると推察される。城西地区と

264 341 321 384 352 369 330

1,820 1,866 1,858 1,9502,102 2,089 2,146

264 341 321 384 352 369 330

1,820 1,866 1,858 1,9502,102 2,089 2,146

4,3494,684

5,177 5,184

5,6455,371

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12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

237 300 247 289 276 290 271

2,1191,955 1,812 1,799 1,876 1,862 1,996

237 300 247 289 276 290 271

2,1191,955 1,812 1,799 1,876 1,862 1,996

4,7704,886 5,019

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5,181 5,096 5,124

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2016年 2017年 2018年

グラフ5 城南事例件数推移(品川区、大田区、目黒区、世田谷区)

成約件数 新規登録件数 在庫件数

182 205 223 250 175 227 224

1,716 1,715 1,6261,475

1,727 1,770 1,772

182 205 223 250 175 227 224

1,716 1,715 1,6261,475

1,727 1,770 1,772

4,0784,282 4,318

4,025

4,418 4,524 4,498

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2016年 2017年 2018年

191 238 227 241 196 244 221

1,591 1,578 1,495 1,495 1,538 1,649 1,658

191 238 227 241 196 244 221

1,591 1,578 1,495 1,495 1,538 1,649 1,658

3,6453,854

4,057 3,9404,196 4,216 4,272

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2016年 2017年 2018年

264 341 321 384 352 369 330

1,820 1,866 1,858 1,9502,102 2,089 2,146

264 341 321 384 352 369 330

1,820 1,866 1,858 1,9502,102 2,089 2,146

4,3494,684

5,177 5,184

5,6455,371

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2016年 2017年 2018年

237 300 247 289 276 290 271

2,1191,955 1,812 1,799 1,876 1,862 1,996

237 300 247 289 276 290 271

2,1191,955 1,812 1,799 1,876 1,862 1,996

4,7704,886 5,019

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5,181 5,096 5,124

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12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

グラフ5 城南事例件数推移(品川区、大田区、目黒区、世田谷区)

成約件数 新規登録件数 在庫件数

182 205 223 250 175 227 224

1,716 1,715 1,6261,475

1,727 1,770 1,772

182 205 223 250 175 227 224

1,716 1,715 1,6261,475

1,727 1,770 1,772

4,0784,282 4,318

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2016年 2017年 2018年

191 238 227 241 196 244 221

1,591 1,578 1,495 1,495 1,538 1,649 1,658

191 238 227 241 196 244 221

1,591 1,578 1,495 1,495 1,538 1,649 1,658

3,6453,854

4,057 3,9404,196 4,216 4,272

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2016年 2017年 2018年

264 341 321 384 352 369 330

1,820 1,866 1,858 1,9502,102 2,089 2,146

264 341 321 384 352 369 330

1,820 1,866 1,858 1,9502,102 2,089 2,146

4,3494,684

5,177 5,184

5,6455,371

5,536

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2016年 2017年 2018年

237 300 247 289 276 290 271

2,1191,955 1,812 1,799 1,876 1,862 1,996

237 300 247 289 276 290 271

2,1191,955 1,812 1,799 1,876 1,862 1,996

4,7704,886 5,019

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5,181 5,096 5,124

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2016年 2017年 2018年

グラフ5 城南事例件数推移(品川区、大田区、目黒区、世田谷区)

成約件数 新規登録件数 在庫件数

182 205 223 250 175 227 224

1,716 1,715 1,6261,475

1,727 1,770 1,772

182 205 223 250 175 227 224

1,716 1,715 1,6261,475

1,727 1,770 1,772

4,0784,282 4,318

4,025

4,418 4,524 4,498

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2016年 2017年 2018年

191 238 227 241 196 244 221

1,591 1,578 1,495 1,495 1,538 1,649 1,658

191 238 227 241 196 244 221

1,591 1,578 1,495 1,495 1,538 1,649 1,658

3,6453,854

4,057 3,9404,196 4,216 4,272

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12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

264 341 321 384 352 369 330

1,820 1,866 1,858 1,9502,102 2,089 2,146

264 341 321 384 352 369 330

1,820 1,866 1,858 1,9502,102 2,089 2,146

4,3494,684

5,177 5,184

5,6455,371

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12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

237 300 247 289 276 290 271

2,1191,955 1,812 1,799 1,876 1,862 1,996

237 300 247 289 276 290 271

2,1191,955 1,812 1,799 1,876 1,862 1,996

4,7704,886 5,019

4,775

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2016年 2017年 2018年

グラフ5 城南事例件数推移(品川区、大田区、目黒区、世田谷区)

成約件数 新規登録件数 在庫件数

182 205 223 250 175 227 224

1,716 1,715 1,6261,475

1,727 1,770 1,772

182 205 223 250 175 227 224

1,716 1,715 1,6261,475

1,727 1,770 1,772

4,0784,282 4,318

4,025

4,418 4,524 4,498

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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

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12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

191 238 227 241 196 244 221

1,591 1,578 1,495 1,495 1,538 1,649 1,658

191 238 227 241 196 244 221

1,591 1,578 1,495 1,495 1,538 1,649 1,658

3,6453,854

4,057 3,9404,196 4,216 4,272

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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

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2016年 2017年 2018年

グラフ4 城東事例件数推移(台東区、墨田区、江東区、荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区)■成約件数 ■新規登録件数 ■在庫件数

グラフ5 城南事例件数推移(品川区、大田区、目黒区、世田谷区)■成約件数 ■新規登録件数 ■在庫件数

グラフ6 城西事例件数推移(新宿区、渋谷区、杉並区、中野区)■成約件数 ■新規登録件数 ■在庫件数

グラフ7 城北事例件数推移(文京区、豊島区、北区、板橋区、練馬区)■成約件数 ■新規登録件数 ■在庫件数

2,6553,190 2,861 3,304 2,641 3,139 3,096

16,985 16,174 16,362 16,040 17,062 17,242 18,008

2,6553,190 2,861 3,304 2,641 3,139 3,096

16,985 16,174 16,362 16,040 17,062 17,242 18,008

41,12641,638

43,63142,353

46,155 45,713 45,780 46,971

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15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

50,000

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

成約件数

1,292 1,592 1,495 1,722 1,403 1,657 1,519

9,952 9,665 9,457 9,133 9,742 9,905 10,271

1,292 1,592 1,495 1,722 1,403 1,657 1,519

9,952 9,665 9,457 9,133 9,742 9,905 10,271

23,75024,690

25,72624,685

26,562 26,463 26,924

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

グラフ2 東京都事例件数推移

成約件数 新規登録件数 在庫件数

170 205 200 220 153 205 165

1,443 1,364 1,3701,154 1,163 1,204 1,245

170 205 200 220 153 205 165

1,443 1,364 1,3701,154 1,163 1,204 1,245

3,7113,896 3,806

3,414 3,473 3,526 3,526

0

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1,000

1,500

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3,500

4,000

4,500

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

2,6553,190 2,861 3,304 2,641 3,139 3,096

16,985 16,174 16,362 16,040 17,062 17,242 18,008

2,6553,190 2,861 3,304 2,641 3,139 3,096

16,985 16,174 16,362 16,040 17,062 17,242 18,008

41,12641,638

43,63142,353

46,155 45,713 45,780 46,971

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

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35,000

40,000

45,000

50,000

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

成約件数

1,292 1,592 1,495 1,722 1,403 1,657 1,519

9,952 9,665 9,457 9,133 9,742 9,905 10,271

1,292 1,592 1,495 1,722 1,403 1,657 1,519

9,952 9,665 9,457 9,133 9,742 9,905 10,271

23,75024,690

25,72624,685

26,562 26,463 26,924

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

グラフ2 東京都事例件数推移

成約件数 新規登録件数 在庫件数

170 205 200 220 153 205 165

1,443 1,364 1,3701,154 1,163 1,204 1,245

170 205 200 220 153 205 165

1,443 1,364 1,3701,154 1,163 1,204 1,245

3,7113,896 3,806

3,414 3,473 3,526 3,526

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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

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12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

2,6553,190 2,861 3,304 2,641 3,139 3,096

16,985 16,174 16,362 16,040 17,062 17,242 18,008

2,6553,190 2,861 3,304 2,641 3,139 3,096

16,985 16,174 16,362 16,040 17,062 17,242 18,008

41,12641,638

43,63142,353

46,155 45,713 45,780 46,971

0

5,000

10,000

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50,0001月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

成約件数

1,292 1,592 1,495 1,722 1,403 1,657 1,519

9,952 9,665 9,457 9,133 9,742 9,905 10,271

1,292 1,592 1,495 1,722 1,403 1,657 1,519

9,952 9,665 9,457 9,133 9,742 9,905 10,271

23,75024,690

25,72624,685

26,562 26,463 26,924

0

5,000

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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

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12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

グラフ2 東京都事例件数推移

成約件数 新規登録件数 在庫件数

170 205 200 220 153 205 165

1,443 1,364 1,3701,154 1,163 1,204 1,245

170 205 200 220 153 205 165

1,443 1,364 1,3701,154 1,163 1,204 1,245

3,7113,896 3,806

3,414 3,473 3,526 3,526

0

500

1,000

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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

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12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

グラフ1 首都圏事例件数推移■成約件数 ■新規登録件数 ■在庫件数

グラフ2 東京都事例件数推移■成約件数 ■新規登録件数 ■在庫件数

グラフ3 都心3区事例件数推移 (千代田区、中央区、港区)■成約件数 ■新規登録件数 ■在庫件数

2018年の既存マンション市場

Page 8: FUDOSAN RYUTSU KEIEI KYOKAI 2019年1月(通巻6号) · 日本大学教授 清水千弘 テクノロジーの進化と不動産市場の未来 12 首都圏既存マンション市場─2018年の特徴と2019年の予測─

14 15

は見えないのが現状である。 城東地区(グラフ11)では2018年1

月以降新規登録単価と成約単価の

上昇は概ね止まったと見てよいだろ

う。在庫単価も横ばいであることと、新規登録単価、成約単価、在庫単価が

近似しており、㎡あたり2万円程度の

差しか生じていない。新規登録時の

売値に近い価格で成約に到り、在庫価格も大きく調整を必要としないと

いう点で見ると、一度崩れかかった

価格がすぐにバランスしたものと見られる。 城南地区(グラフ12)では、都心3区の動きに近く2018年に入っても明ら

かな価格上昇が見られる。また、旺盛な住宅取得ニーズが発生しているた

めか、成約単価が新規登録単価を上回ることも珍しくなくなっている。平均値の集計であるので、言い値よ

り高く売れるケースが多いとは言え

ないが、新規登録単価と成約単価の

差が小さくあまり大きな価格調整を

必要としないため、在庫単価も上昇を続けていると考えられる。城南地区は好調さを維持していると見られ

る。 城西地区(グラフ13)では単価水準は都心3区に近く高額であるが、各単価の動きは城東地区に近く2018年に

入り新規登録単価と成約単価ともに

概ね横ばいで推移している。在庫単価は若干上昇に振れているが、その

ため成約単価も大きく下がっていな

いと見ることは可能である。人気エ

リアのため購入ニーズは高いと考え

られるものの、前述の通り既存マン

ションの流通は活性化しているが、価格の動きは高止まりであるため希望額での購入は困難となっていると

46.8447.33

49.35 49.48

51.60 52.13

50.57

55.3555.43

56.77 56.69

53.91

55.29 55.4753.97

56.5657.19 57.05 57.05

58.38 57.99

45

50

55

60

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4 月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5 月 6月 7 月 8月 9月 10月

グラフ8 首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)事例別㎡単価

A. 成約単価 B 新規登録単価 C. 在庫単価

万円

63.3363.50

64.78 65.61

68.03 68.01 67.71

71.6572.74

72.77

73.4273.14

75.30

74.44

74.12

76.37 76.58 76.51 76.30

78.54 77.90

60

65

70

75

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1月 2月 3 月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016 年 2017年 2018年

2016 年 2017年 2018年

万円

100.22 101.04 99.88

107.94 108.77

114.54114.54 114.25115.96

114.12

119.39

125.84

119.80

130.92

107.94

125.84

119.80

130.92126.60

120.08121.27

125.34 126.04 125.18

133.10 134.47

90

100

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120

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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

万円

46.8447.33

49.35 49.48

51.60 52.13

50.57

55.3555.43

56.77 56.69

53.91

55.29 55.4753.97

56.5657.19 57.05 57.05

58.38 57.99

45

50

55

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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4 月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5 月 6月 7 月 8月 9月 10月

グラフ8 首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)事例別㎡単価

A. 成約単価 B 新規登録単価 C. 在庫単価

万円

63.3363.50

64.78 65.61

68.03 68.01 67.71

71.6572.74

72.77

73.4273.14

75.30

74.44

74.12

76.37 76.58 76.51 76.30

78.54 77.90

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65

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1月 2月 3 月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016 年 2017年 2018年

2016 年 2017年 2018年

万円

100.22 101.04 99.88

107.94 108.77

114.54114.54 114.25115.96

114.12

119.39

125.84

119.80

130.92

107.94

125.84

119.80

130.92126.60

120.08121.27

125.34 126.04 125.18

133.10 134.47

90

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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

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12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

万円

46.8447.33

49.35 49.48

51.60 52.13

50.57

55.3555.43

56.77 56.69

53.91

55.29 55.4753.97

56.5657.19 57.05 57.05

58.38 57.99

45

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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4 月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5 月 6月 7 月 8月 9月 10月

グラフ8 首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)事例別㎡単価

A. 成約単価 B 新規登録単価 C. 在庫単価

万円

63.3363.50

64.78 65.61

68.03 68.01 67.71

71.6572.74

72.77

73.4273.14

75.30

74.44

74.12

76.37 76.58 76.51 76.30

78.54 77.90

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1月 2月 3 月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016 年 2017年 2018年

2016 年 2017年 2018年

万円

100.22 101.04 99.88

107.94 108.77

114.54114.54 114.25115.96

114.12

119.39

125.84

119.80

130.92

107.94

125.84

119.80

130.92126.60

120.08121.27

125.34 126.04 125.18

133.10 134.47

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1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

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12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

2016年 2017年 2018年

万円

グラフ8 首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)事例別㎡単価■ A.成約単価 ■ B.新規登録単価 ■ C.在庫単価

グラフ10 都心3区(千代田区、中央区、港区)事例別㎡単価■ A.成約単価 ■ B.新規登録単価 ■ C.在庫単価

グラフ11 城東事例別㎡単価(台東区、墨田区、江東区、荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区)■ A.成約単価 ■ B.新規登録単価 ■ C.在庫単価

グラフ12 城南(品川区、大田区、目黒区、世田谷区)事例別㎡単価■ A.成約単価 ■ B.新規登録単価 ■ C.在庫単価

グラフ9 東京都事例別㎡単価■ A.成約単価 ■ B.新規登録単価 ■ C.在庫単価

比較すると新規登録件数と成約件数の比率は城北地区の方が高くなって

おり、その意味では既存マンション

の流通は城西地区以上に活性化して

いると見られる。

成約単価は年後半から下落トレンド、価格の見直しで成約都心3区は上昇続く

 既存マンションの流通種別の平均単価(㎡単位)をエリアごとに見てみ

よう。首都圏(グラフ8)、東京都(グラ

フ9)ともに全体の動きとして2016年からの平均単価上昇が2017年まで継続したものの、2018年に入って俄に

伸びが鈍化し、成約単価については

2018年後半から下落トレンドに入っ

ている。成約単価が下がっているも

のの、新規登録単価は概ね横ばいで

推移していて、在庫単価が2018年後半から下落傾向に転じている。これら

の動きからは、新規登録時の価格で

は成約に至る機会が減っており一度在庫化した事例が、価格の見直しを

経て成約に至っている、と考えるの

が妥当であろう。しかし、東京23区を

エリアごとに分析すると、エリアに

よって動きが異なっていることが確認できる。 都心3区(グラフ10)では、新規登録単価と在庫単価が2017年後半に一度下落トレンドに陥ったものの、成約単価がこのタイミングで下落しな

かったため、新規登録単価と在庫単価は2018年に入り再び上昇トレンド

に入っている。2018年9月に新規登録単価と成約単価が一度下落したが10

月には再び上昇し、この動きに陰り

首都圏既存マンション市場 ─2018年の既存マンション市場の特徴と2019年の市況予測─

グラフ13 城西(新宿区、渋谷区、杉並区、中野区)事例別㎡単価■ A.成約単価 ■ B.新規登録単価 ■ C.在庫単価

54.9855.10 55.52

57.66 58.70

56.71

60.0258.9460.69

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58.70

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60.05 60.26 60.7359.68

61.11 61.23

62.86 62.29 62.56 62.28

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2016年 2017年 2018年

グラフ11 城東事例別㎡単価

A. 成約単価 B 新規登録単価 C. 在庫単価

万円

68.66

70.38

73.78

71.10

79.57

73.85

77.66

75.0774.57

72.99

75.64 76.8476.85

79.5776.85

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75.79 76.18 75.76

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2016 年 2017年 2018年

万円

83.6084.11 83.28 83.9183.91

87.06

90.6886.81

82.2284.11 83.28

90.68

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84.7585.2885.28

87.90

90.42 90.84 90.39

87.19

89.6291.85 92.48

93.4495.87 95.51

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2016 年 2017 年 2018 年

グラフ13 城西(新宿区、渋谷区、杉並区、中野区)事例別㎡単価

A. 成約単価 B 新規登録単価 C. 在庫単価

万円

58.9259.97

62.4261.76

63.6164.31 64.30

61.70 63.50

65.04 65.50

65.6266.62

59.97

63.50

65.04 65.50

65.6266.62

66.55

63.47

66.51 66.85 67.8967.89

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2016年 2017年 2018年

万円

54.9855.10 55.52

57.66 58.70

56.71

60.0258.9460.69

59.55

59.7860.05

55.10

58.70

60.69

60.05 60.26 60.7359.68

61.11 61.23

62.86 62.29 62.56 62.28

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2016年 2017年 2018年

グラフ11 城東事例別㎡単価

A. 成約単価 B 新規登録単価 C. 在庫単価

万円

68.66

70.38

73.78

71.10

79.57

73.85

77.66

75.0774.57

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75.64 76.8476.85

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75.79 76.18 75.76

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2016 年 2017年 2018年

万円

83.6084.11 83.28 83.9183.91

87.06

90.6886.81

82.2284.11 83.28

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84.7585.2885.28

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90.42 90.84 90.39

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89.6291.85 92.48

93.4495.87 95.51

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2016 年 2017 年 2018 年

グラフ13 城西(新宿区、渋谷区、杉並区、中野区)事例別㎡単価

A. 成約単価 B 新規登録単価 C. 在庫単価

万円

58.9259.97

62.4261.76

63.6164.31 64.30

61.70 63.50

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2016年 2017年 2018年

万円

54.9855.10 55.52

57.66 58.70

56.71

60.0258.9460.69

59.55

59.7860.05

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58.70

60.69

60.05 60.26 60.7359.68

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2016年 2017年 2018年

グラフ11 城東事例別㎡単価

A. 成約単価 B 新規登録単価 C. 在庫単価

万円

68.66

70.38

73.78

71.10

79.57

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75.0774.57

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75.64 76.8476.85

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2016 年 2017年 2018年

万円

83.6084.11 83.28 83.9183.91

87.06

90.6886.81

82.2284.11 83.28

90.68

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84.7585.2885.28

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90.42 90.84 90.39

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89.6291.85 92.48

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2016 年 2017 年 2018 年

グラフ13 城西(新宿区、渋谷区、杉並区、中野区)事例別㎡単価

A. 成約単価 B 新規登録単価 C. 在庫単価

万円

58.9259.97

62.4261.76

63.6164.31 64.30

61.70 63.50

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Page 9: FUDOSAN RYUTSU KEIEI KYOKAI 2019年1月(通巻6号) · 日本大学教授 清水千弘 テクノロジーの進化と不動産市場の未来 12 首都圏既存マンション市場─2018年の特徴と2019年の予測─

16 17

グラフ14 城北(文京区、豊島区、北区、板橋区、練馬区)事例別㎡単価

率では平均を下回っているが成約事例発生率は0.81%と平均に近い。この

ように都心3区や城南地区では「売り」に対して「買い」注文が高くなってい

るため、成約事例発生率が高くなっ

ていると考えられることから、今後2019年既存マンションの流通市場に

おいても価格が下がりにくい状況に

あると見られる。事実、グラフ10で示した都心3区とグラフ12における城南地区の単価の動きを見ると上昇基調となっている。

需給バランスによってはエリアごとに価格動向の違いも

 また、江東区と文京区の2区では売事例発生率は東京23区平均を下回っ

ており、多くの売りが発生する状況ではないものの、成約事例発生率は

平均を上回っており特に江東区では

1.12%と23区中最も高くなっている。これらの区でも旺盛な買いが売事例との相対で高いレベルにあるため今後の価格の下落基調への変化は考え

にくいと思われる。 その一方で、墨田区、大田区、新宿区、渋谷区、中野区、豊島区、練馬区の7

区は、売事例発生率が東京23区平均を

超えているものの、成約事例発生率は平均を下回っている区である。これらの区では買い需要より売需要の

方が高くなっており、特に成約事例発生率が0.6%台となっている大田区では2019年に価格下落が起こっても

不思議ではないという需給バランス

の悪さとなっている。 このほかにも荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区、北区、板橋区では(前述の千代田区と品川区は除く)売事例

発生率と成約発生率ともに平均を下回っている。これらの区をどう見る

かは難しい。投資適性の高いエリアで

あれば、賃料が価格に比して高い場合はいわゆる「バイアンドホールド」のスタンスを取るため積極的に売を出さないケースも考えられる。長期投資を行っている例である。また実需の強いエリアでは売事例発生の低いエリ

アは居住快適性や大きな含み益を期待できないために「売る」という選択より「住み続ける」という選択をする

ケースもある。このような例に当ては

まるのであれば、相場を大きく変える

ような価格の変動はかえって起こり

にくいと見られる。 2019年は、新築マンションの価格動向にも注目しなければならないが、既存マンションの流通市場では、需給バ

ランスの点から見て価格が下がる心配が小さいエリアと、ある程度のリス

クを見るべきエリアと、その動向が大きく分かれそうである。

54.9855.10 55.52

57.66 58.70

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60.0258.9460.69

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2016年 2017年 2018年

グラフ11 城東事例別㎡単価

A. 成約単価 B 新規登録単価 C. 在庫単価

万円

68.66

70.38

73.78

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79.57

73.85

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75.0774.57

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75.64 76.8476.85

79.5776.85

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75.79 76.18 75.76

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2016 年 2017年 2018年

万円

83.6084.11 83.28 83.9183.91

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90.6886.81

82.2284.11 83.28

90.68

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84.7585.2885.28

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90.42 90.84 90.39

87.19

89.6291.85 92.48

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2016 年 2017 年 2018 年

グラフ13 城西(新宿区、渋谷区、杉並区、中野区)事例別㎡単価

A. 成約単価 B 新規登録単価 C. 在庫単価

万円

58.9259.97

62.4261.76

63.6164.31 64.30

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見られ、近い将来に活性度合いが鈍る可能性があると見られる。 城北地区(グラフ14)は2018年1月以降大きくトレンドが反転し、上昇から下落となっている。城北地区で

は2018年に入りまず新規登録単価と

在庫単価が下落を始めた。この間成約単価は概ね上昇基調を維持し2018

年前半まで上昇を続けている。この

上昇によって2018年4月と6月には在庫単価を上回る成約単価となってお

り、新規登録単価と在庫単価は弱気の値付けをする必要はなかったよう

に思える。しかし事例数の動きでは城北地区は活性化しており、成約に到る

比率も高くなっているのは、このよう

に新規登録単価と在庫単価が下がっ

た影響であるとも考えられる。

2019年の既存マンション市場

2019年も全般的には価格が下がりにくい状況

 表1は2018年(1~ 10月)における東

京23区の行政区別の売事例発生率と

成約事例発生率を区ごとのマンショ

ンストック数(現存しているマンショ

ン総数、取り壊された物件は除く)から集計したものである。売事例数は

レインズの前月までの在庫件数と

当該月の新規登録件数の合計で求め

た。事例発生率が23区平均の値より

大きい場合はセルを赤くして表記し

た。 売事例発生率と取引事例発生率が

東京23区の平均値をともに上回る区は中央区、港区、台東区、目黒区、世田谷区、杉並区の6区のみである。これら

の区では東京23区平均を上回る売事例が発生しかつ取引事例が発生して

いることを考えると、2018年の既存マンション市場は概ね良好で取引が

活性化していたと考えても良いだろ

う。都心3区では千代田区を除く2区で

売事例と取引事例ともに平均の発生率を超えており、千代田区も成約事例発生率は概ね23区平均の0.86%に

近い0.84%である。同様に城南地区で

は4区のうち目黒区と世田谷区が活性化しており、品川区は売事例発生

地区 行政区 戸数/事例件数 "ストック戸数に対する発生率"

都心3区

千代田区ストック戸数 27,318 売事例数 5,176 18.95%成約事例数 229 0.84%

中央区ストック戸数 67,160 売事例数 15,358 22.87%成約事例数 729 1.09%

港区ストック戸数 98,629 売事例数 25,232 25.58%成約事例数 978 0.99%

城東地区

台東区ストック戸数 46,552 売事例数 12,858 27.62%成約事例数 435 0.93%

墨田区ストック戸数 52,964 売事例数 11,878 22.43%成約事例数 410 0.77%

江東区ストック戸数 116,271 売事例数 23,004 19.78%成約事例数 1,300 1.12%

荒川区ストック戸数 32,221 売事例数 5,643 17.51%成約事例数 247 0.77%

足立区ストック戸数 66,141 売事例数 10,641 16.09%成約事例数 484 0.73%

葛飾区ストック戸数 45,030 売事例数 8,168 18.14%成約事例数 369 0.82%

江戸川区ストック戸数 53,572 売事例数 8,769 16.37%成約事例数 410 0.77%

城南地区

品川区ストック戸数 81,375 売事例数 15,681 19.27%成約事例数 657 0.81%

目黒区ストック戸数 43,215 売事例数 10,641 24.62%成約事例数 424 0.98%

大田区ストック戸数 102,497 売事例数 23,054 22.49%成約事例数 689 0.67%

世田谷区ストック戸数 107,122 売事例数 26,697 24.92%成約事例数 1,138 1.06%

城西地区

新宿区ストック戸数 94,320 売事例数 24,354 25.82%成約事例数 771 0.82%

渋谷区ストック戸数 64,994 売事例数 16,524 25.42%成約事例数 508 0.78%

杉並区ストック戸数 60,635 売事例数 14,745 24.32%成約事例数 548 0.90%

中野区ストック戸数 41,744 売事例数 10,354 24.80%成約事例数 317 0.76%

城北地区

文京区ストック戸数 54,879 売事例数 10,908 19.88%成約事例数 492 0.90%

豊島区ストック戸数 54,859 売事例数 12,300 22.42%成約事例数 428 0.78%

北区ストック戸数 41,596 売事例数 7,591 18.25%成約事例数 303 0.73%

板橋区ストック戸数 86,157 売事例数 17,358 20.15%成約事例数 537 0.62%

練馬区ストック戸数 67,388 売事例数 15,744 23.36%成約事例数 545 0.81%

東京23区ストック戸数 1,506,639 売事例数 332,678 22.08%成約事例数 12,948 0.86%

表 1 ■ A.成約単価 ■ B.新規登録単価 ■ C.在庫単価

首都圏既存マンション市場 ─2018年の既存マンション市場の特徴と2019年の市況予測─

井出武(いでたけし)中央大学法学部卒、89年マンションの業界団体に入社、以降不動産市場の調査・分析、団体活動に従事、01年株式会社東京カンテイ入社、現在市場調査部上席主任研究員、不動産マーケットの調査・研究、講演業務等を行う。

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18 19

高く売れるなら売ってしまって賃貸暮

らしをするという利益目的の人も少し

はいたが、今はほとんどいない。

 このエリアは居住するために買っ

ているので値段が上がっても住むエ

リアを変えてまで売却するのは躊躇

するし、逆に値段が下がっているか

らといってそれだけで急いで売却を

決めることはない。

 在庫は増えている。ここ数カ月は

ファミリータイプの動きが悪く、その

代わりに単身者と投資家向けの物

件が動いている。単身者が動いてい

るのは、ある程度の年齢になって今

後はローンが組み難くなる可能性

もあるので購入に踏み切っている

ケース。特に40 ~ 50歳くらいの女

性の割合が増えており、自己資金を

ある程度持っていて借入れを抑えて

購入している人が多い。

 単身者向けの35 ~ 50㎡で3,000

万~ 4,000万円の物件も継続的に

動いている。高齢者の住み替えも動

きは良い。これまで大きな戸建てに

住んでいたけれど一人になったの

で維持が大変なため売却して駅近

マンションへの住み替えや近居を行

うというパターンだ。

 マンションは70㎡前後のファミ

リータイプでも中央線に近い利便

性の高い物件になると、新築価格は

7,000万~ 8,000万円になってしま

う。価格を抑えるために65㎡程度の

コンパクト3LDKタイプを選択する

人も多い。5,000万~ 6,000万円で

マンションを探すと西武線に近いエ

リアになる。

 このエリアの賃料水準は、ファミ

リー向けの平均的な物件だと20万

円くらいで、そのバランスで7,000万

~ 8,000万円の物件が動く。ネット

銀行だと変動で住宅ローン金利が

0.5%前後と低金利のため、20万円

を毎月払うのなら8,000万円程度の

物件が購入できる計算になる。この

エリアは都心の大手企業に勤務す

る役職付きの人が多いので、年収と

物件の相場を見ると1億円近くまで

は動きやすい。購買層の厚いエリア

でもある。

 当センターの営業エリアは杉並

区と中野区の一部。中央線から西武

新宿線に向けての縦のラインとな

る。居住地域なので実需目的で買い

たいという人が多く、マンションと戸

建ての割合は半々、ファミリーだけ

でなく単身者や高齢者もいて需要

の層は広い。実需目的の購買層が

多いエリアのため都心部と異なり

マーケットの動向に左右されて住宅

ミリータイプで5,000万~ 9,000万

円。土地・戸建ても同じような価格

帯だ。

 マンションの価格が高騰している

ため、近隣に同価格帯の戸建てがあ

れば駐車場代・管理費・修繕積立金

などのランニングコストを考えて、

経済的負担が少ない戸建てを選択

する買主も多くなった。

 エリアの需給関係の風向きに変

化が出ているように思われる。マン

ションではなく戸建てに住みたいと

思った購買層が杉並区・中野区・世

田谷区を検討するのは必然的な流

れにも感じる。

 中古マンションの流通価格は横

ばい状態がここ1年くらい続いてい

る。値段を高めに設定していても成

約に至る物件はあるが、以前に比べ

ると成約価格はそれほど変わってい

ない。価格がピークとの見方もある

が、値段が落ちるわけではなく凪の

状況。

 全体的に動きは良いが、マーケット

が上がった、下がったということが要

因というよりは、動く物件がまだらに

なっている印象だ。以前までは自宅が

マーケット最前線  主要エリアの店舗に聞く

東京城西エリア(中野区/杉並区) 神奈川県

横浜みなとみらいエリア(横浜市西区/中区)

野村不動産アーバンネット荻窪センター長

佐藤大樹 氏 

三菱地所ハウスネットみなとみらい営業所所長

加藤俊史 氏 

を短期で売買する人はほとんどい

ない。

 最近は中古マンションの価格が

高騰している。これまでは“利便性が

高い”という理由で、マンションの動

きが目立ったが、今は高止まりのた

め築浅の中古マンションの動きが

以前ほどは良くない。その代わりに

土地・戸建ての取引が活発化してき

ている。以前は土地を探して家を建

てたいという人は少なかったが、マ

ンション市場に過熱感があるため、

土地を買って家を建てた方が割安

という風向きも出てきている。

 ファミリータ

イプのマンショ

ンの成約が活発

だったのは昨年

5 ~ 6月頃まで

で、秋以降は土

地・戸建ての方

が 動 くように

なった。動きの

あったマンショ

ンの価格はファ

仲介の営業現場は今どんな状況にあるのか。主要エリアに注目し、実

際に取引されている物件や購入者の動向、マーケット全体のトレン

ドなどを営業の最前線に聞いた。今回は東京城西エリアと横浜みな

とみらいエリア、宮城県仙台市中心エリアを取り上げる。

実需中心でマーケット動向には左右されにくい成約価格は横ばい続く

住宅はタワーマンションしかないエリア需要旺盛で市場は活発

 みなとみらい(M.M.)エリアの流通

マーケットは非常に活発だ。M.M.

エリアは、平成1 5年建築の「M.M .

TOWERS」(三菱地所分譲)を皮切り

に、6街区の中に10棟の分譲タワー

マンションがあり、いわゆるM.M.エリ

ア(中央地区)のマンションはタワー

マンションしかないのが特徴的。

 M.M.エリアには居住人口1万人と

する横浜市の地区計画フレームがあ

り、これまでの供給戸数が計画数に

迫っていることから、今後のマンショ

ン乱立は考えづらく、居住エリアの希

少性維持が想定される。また、商業エ

リアの開発が進んでいることもあり、

街が成熟してきていることは間違い

ない。

 相場は、平成15年以降上がり続け

てきて、昨今は頭打ちのイメージもあ

るが、今のところ大変良い環境で取引

されている。エリア外からの購入需要

もあるが、M.M.エリア内や同じマン

ションの棟内需要が強く、両親を呼び

寄せたい等の買い増しからステップ

アップでお子様の状況を踏まえて大

きな部屋に移るなどのケースだ。

 最近分譲された「ブランズタワー

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20 21

マーケット最前線  主要エリアの店舗に聞く

みなとみらい」と「BLUE HARBOR

TOWERみなとみらい」は、相場が上

がったのちに分譲されているが、三

菱地所グループの分譲マンションで

い え ば、「M.M. TOWERS」の3棟、

「M.M.TOWERSフォレシス」の2棟の

ほか、「みなとみらいミッドスクエア」

「ブリリアグランデ」などM.M.エリア

の大半は平成19年以前に分譲され

ており、新築時の価格からおおよそ

130 ~ 150%程度に上昇している。

今の新築価格とすり合わせると、東

京都内の新築マンションと比較しな

がらM.M.エリアで買いたいという人

もいるので相場としてはだいぶ上昇

している印象である。

 成約価格は平均で7,000万~ 8,000

万円、坪単価は320万円位。なかには

坪単価400万円近くにもなる物件も

ある。東向きのオーシャンビューが高

く売れる要因の一つで、西向きのシ

ティビューに比べ高単価になる傾向

にある。ただ昨今はだいぶエリア内

の開発状況が定まってきているた

め、西向きのシティビューであっても

眺望の変化が想定できるようになっ

てきたり、富士山が遠望できたりと、

希望が多い間取り

(ワイドスパン

等)の住戸は、相

場以上の単価で

取引されることも

ある。

 一昨年は、M.M.

エリア全体で年間

70件程度の成約

件数だった。今

後、エリア内の住

宅に関する新規の大規模開発は難

しいため、ますます希少性が高い住

みたい街になることを期待してい

る。当然、所有者は相場観に詳しく、

売り急ぐ方は少ない。6,000万円以

上の高額帯の住戸ほど成約件数が

多くなっており、売主の期待値に買

い手がまだ付いていっている印象

だ。

 購入者の属性は様々だが、ステッ

プアップを希望するエリア内需要で

は、上場企業に勤務するファミリー

層が多く、相続対策等の買い増し需

要も多い。エリア外からの購入者は、

地縁があったり、利便性を求めて郊

外の戸建てを売って住みかえるとい

うケースも多い。地元企業の事業主

の購入希望も多く、予算にゆとりがあ

るお客様は特に、具体的な部屋位置

や希望の間取りをリクエストいただ

くケースも多くある。とにかく希望が

集中する部屋(間取り)は引き合いが

多いので、ある程度エリア内居住者

の需要で成約していく。また、売却に

伴う居住者の住み替えは簡単にはい

かない。高く売却できるのと同時に、

住みかえ先の購入物件も割高になっ

ているからだ。売却して賃貸に住む

と割り切れるお客様は売りに出す。あ

とはご実家を二世帯住宅に建て替え

るとか、戸建てや高齢者住宅への住

み替え、投資用にしている部屋を賃

借人退去のタイミングで現金化する

等が主な売却理由になっている。コ

ンスタントに売り物件は出ているが、

購入需要に対して売却キャパはまだ

ある。

宮城県仙台エリア(仙台市中心部)

震災による復興需要が一巡し、住宅購入に対する過熱感は収まった住友不動産販売地方流通営業本部 東日本流通営業部東北ブロック長

木村国昭 氏 

新築マンションの発売が増えたた

め、高額帯の中古マンションを購入

する層の物件を選別する目線は厳

しくなっているが、条件がマッチす

る物件があればしっかり成約してい

る印象だ。

 震災以降、新築供給がかなり絞ら

れていたが、2018年は目立って多

くなった。価格帯は3,000万~ 4,000

万円台がメインで、5,000万円台や

6,000万円台の物件もある。エリア

については、2017年まで新築供給

は「あすと長町」(太白区中心部で仙

台の副都心の1つ)周辺に集中して

いたが、今はそれに加えて青葉区を

中心に仙台中心部での供給が相次

いでいる。

 2018年には東北大学の農学部跡

地(約9.3ha)をイオンが落札し10月

に引き渡されたが、分譲マンション

2棟とイオン、仙台厚生病院による

大型開発が行われる。タワーマン

ションで80㎡超・5,000万円を超え

る住戸もある。

 中古マンション取引の一番のボ

リュームゾーンは1,000万~ 2,000

万円台。これは仙台市5区で共通し

ている。ストックもこの価格帯が一

番多く、この流れは数年変わってい

ない。築年15 ~ 20年、3LDK・70㎡

弱が中心で、新築とは競合しない。

中古マンションの購入者は一時取

得の若いファミリーが中心だ。

 中心エリアでの新築マンションの

価格は4,000万~ 5,000万円台で、

坪単価は180万~ 250万円。冬にな

ると郊外の戸建てを売却して中心

部に住み替えを検討されるお客様

がいらして、新築マンションへの買

い替えのご相談を受けるケースが

出てくる。その売却された戸建てを

一次取得層が購入する流れになっ

ている。

 戸建てについては、パワービル

ダーの完成物件がやや苦戦してい

る。震災直後からは建築確認が取れ

れば売れる、建てれば売れるという

状況が数年続いていたが、最近は

成約まで時間がかかる物件が増え

てきている。

 ここ数年、アパートの建売業者が

地下鉄南北線・東西線沿線のア

パート分譲に適するところを購入し

ているため、建売業者が販売しや

すい地区での土

地の仕入れがか

なり厳しくなって

いる。仕入れ値

が上がり、売り出

し価格も2,700万

~ 3,000万 円 半

ばで震災前より

上がっている。震

災 前 は2,000万

円前後~ 2,600

万円がパワービルダーの売れ筋

だった。

 中古戸建ては、市場に出ている物

件数は大体一定量を保っており、極

端な増減はほぼ見られない。多いエ

リアは泉区など。価格についても大

きく変動することは少なく、安定して

いる。売れ筋は2,000万~ 2,500万

円前後。

 仙台エリアにおける戸建てとマン

ションの取り扱い比率は、若干マン

ションの方が多いがほぼ拮抗してい

る。マンションの価格が上昇してい

るのはここ数年で、それまでは戸建

ての方が高かった。加えて70坪など

面積も大きいので購入価格はそこ

そこの金額になる。

 現在の市場は、被災された方の

住宅需要が一巡したため、住宅購入

に対する過熱感は落ち着いてきて

いる。価格については震災以降、復

興需要を背景に一貫して上昇して

いたが、買い手がついてこなくなっ

てきており、今までのように上昇し

ていくとは言いがたい。そうかと

いって下がり始めているわけでもな

い。

 仙台エリアの中古マンション市場

は、2017年までは新築分譲マンショ

ンの供給が少なく4,000万円位まで

の売り物件は早めに成約することが

多かった。2018年に入ってからは

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22 23

1985年昭和60年

1986年昭和61年

1987年昭和62年

1988年昭和63年

1989年平成元年

1990年平成2年

1991年平成3年

1992年平成4年

東京圏 1.7 3.0 21.5 68.6 0.4 6.6 6.6 △9.1大阪圏 3.0 2.6 3.4 18.6 22.7 56.1 6.5 △22.9名古屋圏 1.6 1.4 1.6 7.3 16.4 20.2 18.8 △5.2三大圏平均 2.0 2.7 13.7 46.6 11.0 22.0 8.0 △12.5地方圏 2.4 1.7 1.2 1.9 4.4 11.4 13.6 2.3全国平均 2.2 2.2 7.6 25.0 7.9 17.0 10.7 △5.6東京圏 7.2 12.5 48.2 61.1 3.0 4.8 0.6 △8.0大阪圏 5.0 7.0 13.2 37.2 35.6 46.3 8.1 △19.5名古屋圏 2.7 3.3 6.4 16.8 21.0 22.4 19.1 △7.6三大圏平均 5.8 9.2 30.1 45.6 14.1 18.6 8.1 △10.3地方圏 2.6 2.5 2.9 5.4 7.6 15.4 16.3 0.4全国平均 3.8 5.1 13.4 21.9 10.3 16.7 12.9 △4.0

中成長期の不動産流通業日本の不動産流通業史 ❻

明海大学不動産学部教授周藤 利一

バブル経済の発生 地価バブル期は、1986(昭和61)年から1990(平成2)年までを中心とする時期であり、昭和の終わりと平成の始ま

りにまたがるとともに、経済社会構造が中成長期から低成長期に転換するという我が国全体のあり方が大きく変貌す

るエポックとなった時代であり、「浮かれ、踊る」という表現が当てはまるような国民意識の特異な高揚が蔓延した時代である。 1985(昭和60)年秋の日米合意、いわゆるプラザ合意による円高誘導方針とそれに伴う円高不況の進行を受け

ての景気対策として、公定歩合が1986(昭和61)年初の

5.0%から1987(昭和62)年2月の2.5%まで段階的かつ急激に引き下げられた。 この低金利政策の結果、大量の浮動資金が発生すると

いう、いわゆる「金余り現象」が生じたが、これらの浮動資金は不動産市場や証券市場など資産市場に大量に流入して、これら資産価格を大幅に引き上げた。

地価バブルはいつはじけたか 一般に、バブル経済は1991(平成3)年まで続き、翌年に崩壊したと解されている。しかし、(表-1)を見ると明らか

なように、全国レベルでは1992(平成4)年の地価公示が

ほぼ全てマイナスに転じている。地価公示は毎年1月1日を

基準として、その前年1年間の変動率を示すものであるか

ら、1991(平成3)年の間に地価バブルがはじけたことが

分かる。

情報交換のためのコンピュータ・ネットワーク・システムで

あり、その英語名Real Estate Information Network

Systemの頭文字REINSからレインズと通称されている。レインズは現在、公益財団法人東日本不動産流通機構、公益社団法人中部圏不動産流通機構、公益社団法人近畿圏不動産流通機構、公益社団法人西日本不動産流通機構により全国をカバーして運営されている。 建設省と不動産流通近代化センターは、1984(昭和59)年度から不動産流通活性化策の一環としてレインズ

構想を検討し、翌年度から「不動産流通標準情報シス

テム」の設計・開発に着手した。このシステムを流通機構に導入し、不動産流通の活性化を図るという目的であった

が、実質的には中小業者の流通機構のためという意味が

強かった。センターに設置された委員会は翌年3月、レイン

ズの標準システムの仕様書、標準情報規格等をまとめた

報告書を建設省に提出した。委員会は「レインズ運営委員会」に改組され、各メーカーが開発・製作した機器をテ

ストし、認定を行うこととなった。 1986(昭和61)年10月、東京都宅地建物取引業協会の流通機構が最初にレインズを導入した。その後、各団体が次 と々レインズを導入し、翌年は全国106機構という

乱立を見せていた。そこで、宅建業法第10次改正が行わ

れ、指定流通機構に再編成されたのである。

周藤 利一(すとう としかず)

1956年島根県生まれ。1979年東京大学法学部卒業。同年建設省入省。土地情報課長、不動産適正取引推進機構研究理事、日本大学経済学部教授、国土交通政策研究所所長な

どを経て2015年より明海大学不動産学部教授。博士(工学)

2,758万円が翌年には3,579万円に上昇し、1990(平成2年)には6,123万円でピークとなった。4年間で2.2倍の

急騰であるが、エリアの遠隔化を勘案すれば、より一層激しい急騰と言える。 ちなみに、バブル崩壊後のマンション8万戸時代がス

タートした1994(平成6)年の平均価格は4,410万円であ

り、価格だけ見れば1988(昭和63)年の水準を下回った。なお、1988(昭和63)年には、リゾートマンションブームも

始まっている。

不動産流通機構 1987(昭和62)年10月16日に政府が決定した「緊急土地対策要綱」は「宅地建物取引業について、資質の

向上及び業務の適正化等の見地から規制を見直すととも

に、新たな媒介方式の導入にあわせた業者の保有する情報の義務登録制度の導入の検討を行うこと」を求めた。 これを受けて行われた「宅地建物取引業法」第10次改正(昭和63年法律第27号)では、前回紹介したように、現行の一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の三類型が

整った。これとともに、専任媒介契約と専属専任媒介契約を締結したときは、建設省の指定する流通機構への物件登録義務と、業務の処理状況の報告義務を定めた。 これにより創設された指定流通機構は、不動産物件

 さらに、東京圏に着目すると、1988(昭和63)年の数値が急激に上昇した翌年はほぼ横ばいに転じ、その後も一け

た台で推移している。つまり、東京圏の地価バブルは1987

(昭和62)年がピークでその後は停滞状況にあったので

ある。ただし、下落に転じたわけではなく、地価水準自体が

日本で一番高い状態にあったから、当時は正確に認識さ

れなかったと言えよう。

マンション市場の動向 地価バブル期には、不動産業の各分野で活発な取引活動が続いたが、流通市場でも、地価の先高観から取引が活発化し、新築・中古住宅、ビル用地などへの実需は

もちろん、仮需要・投機需要などが増加し、流通業界では

ブーム期が続いた。 このうち、マンション市場の動向について見ると、首都圏の分譲マンションの平均価格が急騰を始めるのは1987

(昭和62)年からで、商業地が上昇を始めたころには、ま

だマンションは在庫調整の終盤にあった。株式会社不動産経済研究所のデータによれば、首都圏のマンショ

ン発売戸数は、1984(昭和59)年に4万3,839戸(前年54,521戸)に減らして在庫調整に入り、1987(昭和62)年まで4万戸前後で推移し、在庫問題を完了させた。しか

し、価格急騰の中で1988(昭和63)年の供給は3万2,080

戸に減少し、その後4万戸近くが供給されたものの、1991

(平成3)年には2万5,000戸に急落した。 また、(表-2)に示すように、首都圏新規マンション発売価格の1戸当たり年間平均価格は、1986(昭和61)年の

商業地

住宅地

(資料)国土庁「地価公示」各年

(表-1)地価公示の変動率推移

(表-2)マンション市場の動向年 新規発売戸数 月間契約率 年末在庫 1戸平均価格(前年比:%)

首都圏

1983 (昭和58) 54,521戸 59.4% 21,341戸 2,557万円(△0.8)1984 (昭和59) 43,839戸 66.8% 11,952戸 2,562万円 (0.2)1985 (昭和60) 39,732戸 65.3% 8,703戸 2,683万円 (4.8)1986 (昭和61) 40,477戸 76.8% 2,580戸 2,758万円 (2.8)1987 (昭和62) 41,057戸 91.2% 1,405戸 3,579万円 (29.8)1988 (昭和63) 32,080戸 74.9% 4,225戸 4,753万円 (37.8)1989 (平成元) 39,542戸 77.4% 4,222戸 5,411万円 (13.8)1990 (平成2) 39,548戸 73.9% 8,014戸 6,123万円 (13.2)

近畿圏

1983 (昭和58) 24,250戸 46.6% 12,955戸 2,176万円(△2.2)1984 (昭和59) 24,768戸 49.5% 10,245戸 2,025万円(△6.9)1985 (昭和60) 24,841戸 48.1% 10,319戸 2,101万円 (3.8)1986 (昭和61) 25,010戸 50.6% 8,705戸 2,195万円 (4.5)1987 (昭和62) 25,919戸 75.1% 2,062戸 2,425万円 (10.5)1988 (昭和63) 28,399戸 71.5% 4,096戸 2,855万円 (19.0)1989 (平成元) 27,963戸 83.9% 1,528戸 3,990万円 (38.3)1990 (平成2) 27,299戸 70.8% 7,330戸 5,279万円 (32.3)

(資料)株式会社不動産経済研究所

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24 25

り半数超を占めている(図1)。 既存住宅購入者の購入理由は、「希望エリアの物件だったから」(67.0%)、「手頃な価格だったから」(64.9%)、「良質な物件だったから」(40.8%)が上位3位を占めており、立地や価格の手頃さに次いで、住宅の質が購入の決め

手となっていることがうかがえる。また、「リ

フォームするつもりだったから」「多くの既存物件から選ぶことができたから」といっ

た理由を挙げる割合について増加傾向がみられる(図2)。

不動産会社等による住宅保証の利用率は57.1%で

建物保証の利用が40.7%

 既存住宅購入者における不動産会社等による住宅保証の利用状況をみる

と、住宅保証の利用率は57.1%となっ

ており、うち建物保証の利用が40.7%を占めている。建て方別に「建物保証」「住宅設備保証」の利用状況をみる

21.5

20.9

23.6

24.1

24.5

28.1

46.6

49.7

45.3

5.9 2.0

3.8 1.2

3.0 0

2016年度(N=698)

2017年度(N=666)

2018年度(N=530)既存住宅のみ

主に既存住宅

新築・既存にはこだわらなかった

主に新築住宅

無回答

49.6

47.1

53.2

26.8

30.4

28.5

20.3

20.9

17.1

1.3

1.2

0.3

2.0

0.2

0.9

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

2016年度(N=399)

2017年度(N=401)

2018年度(N=340)新築住宅のみ

主に新築住宅

新築・既存にはこだわらなかった

主に既存住宅

無回答

 不動産流通経営協会(FRK)は「第23回不動産流通業に関する消費者動向調査(2018年度)」の結果をまとめた。この調査は、居住用不動産

取得者の取得行動や種々のサービス

等の利用実態・評価を時系列把握す

ることで、不動産流通に対する消費者の行動を捉えることを目的に、1991年から隔年で、2001年からは毎年実施している。今回の調査は首都圏1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)で2017年4月1日から2018年3月31

日の間に、購入した住宅の引渡しを受けた世帯を対象としている。これらの調査対象者の抽出にあたっては、会員会社の協力を得て、住宅タイプ(新築

既存住宅の購入者はライフステージや世帯構成に合わせて取得

不動産流通業に関する消費者動向調査

戸建て、新築マンション、既存戸建て、既存マンション)のバランスに配慮し、対象を抽出した。第22回(2017年度)調査までは、紙の調査票を郵送・回収する形で実施していたが、今回からは

WEBアンケート(調査対象者にはアン

ケートページのURLおよびQRコードを

紙面およびメールにて通知するとともに

協力を依頼する形)で実施した。 調査結果によると、既存住宅購入者のうち、「既存住宅のみ」「主に既存住宅」を探した割合は51.7%となってお

FRK調査・研究報告 1

図1 住宅購入にあたって探した住宅

<新築住宅購入者>

<既存住宅購入者>

既存住宅購入者のうち既存住宅を中心に探した割合は

半数超購入理由は

「希望エリアの物件だったから」が最多

図2 既存住宅を購入した理由   <既存住宅購入者>

図3 不動産会社等による住宅保証の利用状況<既存住宅購入者>

21.5

20.9

23.6

24.1

24.5

28.1

46.6

49.7

45.3

5.9 2.0

3.8 1.2

3.0 0

2016年度(N=698)

2017年度(N=666)

2018年度(N=530)既存住宅のみ

主に既存住宅

新築・既存にはこだわらなかった

主に新築住宅

無回答

49.6

47.1

53.2

26.8

30.4

28.5

20.3

20.9

17.1

1.3

1.2

0.3

2.0

0.2

0.9

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

2016年度(N=399)

2017年度(N=401)

2018年度(N=340)新築住宅のみ

主に新築住宅

新築・既存にはこだわらなかった

主に既存住宅

無回答

67.0

64.9

40.8

34.7

22.1

21.9

8.5

13.8

2.6

2.8

0.6

62.8

58.1

44.0

37.2

17.4

16.5

5.4

8.6

1.7

3.6

5.3

64.3

54.7

44.6

34.0

20.5

15.6

6.0

8.3

2.0

4.7

7.2

63.0

59.7

44.8

28.3

17.6

15.5

4.8

6.5

1.0

3.3

7.0

0 20 40 60 80 100

希望エリアの物件だったから

手頃な価格だったから

良質な物件だったから

新築にはこだわらなかったから

早く入居できるから

リフォームするつもりだったから

いずれまた住み替えをするから

多くの既存物件から選ぶことができたから

いずれ建替えようと思っているから

その他

無回答

2018年度(N=530)

2017年度(N=666)

2016年度(N=698)

2015年度(N=689)

(%)

16.7

17.1

16.8

27.6

14.4

18.3

7.6

14.8

12.3

44.3

49.5

47.7

3.8

4.1

4.8

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

既存戸建て(N=210)

既存マンション(N=438)

既存住宅(N=666)

建物保証と住宅設備保証を利用

建物保証のみ利用

住宅設備保証のみ利用

利用しなかった

無回答

25.9

23.1

24.3

25.9

12.5

16.4

7.4

20.8

16.4

40.1

41.9

41.3

0.6

1.7

1.5

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

既存戸建て(N=162)

既存マンション(N=360)

既存住宅(N=530)

建物保証と住宅設備保証を利用

建物保証のみ利用

住宅設備保証のみ利用

利用しなかった

無回答

(参考)昨年度の不動産会社等による住宅保証の利用状況<既存住宅購入者>

Page 14: FUDOSAN RYUTSU KEIEI KYOKAI 2019年1月(通巻6号) · 日本大学教授 清水千弘 テクノロジーの進化と不動産市場の未来 12 首都圏既存マンション市場─2018年の特徴と2019年の予測─

26 27

FRK調査・研究報告 1

図4 不動産会社等による住宅保証の住宅購入への影響<既存住宅購入者>

図5 民間の建物検査(ホーム・インスペクション)※1の実施状況<既存住宅購入者>

図6 住宅購入にあたっての建物検査※2の実施状況<既存住宅購入者>

※1 不動産会社等による住宅保証や「既存住宅売買かし保険」の利用にあたって実施された検査を除く。なお、不動産会社が提供する無償のインスペクションサービス(主に買主側の購入申込前に実施)がおこなわれた場合を含む。

※2 不動産会社等による建物保証及び「既存住宅売買かし保険」の利用にあたって実施された検査、ならびそれ以外におこなった民間の建物検査(ホーム・インスペクション)。

と、既存戸建てでは建物保証を利用した購入者が51.8%、既存マンション

では35.6%となった(図3)。不動産会社等による住宅保証が今回の住宅購入に多少なりとも影響したとの回答は、住宅保証利用者の74.2%を占めている

(図4)。 不動産会社等による住宅保証もしく

は「既存住宅売買かし保険」を利用す

る際に実施された検査以外におこなわ

れた民間の建物検査(ホーム・インスペ

クション)の実施率は、「既に売主がお

こなっていた」が10.2%、「売主に依頼しておこなってもらった」が2.6%、合計12.8%となっている(図5)。 既存住宅の購入にあたって何らか

の建物検査をおこなった購入者は、既存住宅購入者の44.7%となっている。特に、既存戸建て購入者では54.3%となっており、全体の半数を超えている

(図6)。

既存住宅購入者では「担当者の誠実さ・人柄」

「営業所が近所にある」ことも選定の決め手

 住宅の住宅購入取引を依頼した不動産会社を選んだ理由としては、新築・既存とも「不動産会社の信頼性の高さ」の割合が最も高くなっている(図7)。 既存住宅購入者は、新築住宅購

14.3

10.7

6.1

10.8

22.3

27.0

19.5

23.4

42.9

38.5

41.5

40.8

20.5

21.3

32.9

24.1

0.0

2.5

0.0

0.9

0% 20% 40% 60% 80% 100%

建物保証及び住宅設備保証を利用した場合(N=112)

建物保証のみ利用した場合(N=122)

住宅設備保証のみ利用した場合(N=82)

住宅保証利用者全体(N=316)

大きく影響した

影響した

多少影響した

影響しなかった

無回答

14.7

8.0

4.6

9.9

31.8

27.6

18.4

26.7

37.2

41.4

34.5

37.6

16.3

23.0

42.5

25.7

0.0

0.0

0.0

0.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

建物保証及び住宅設備保証を利用した場合(N=129)

建物保証のみ利用した場合(N=87)

住宅設備保証のみ利用した場合(N=87)

住宅保証利用者全体(N=303)

大きく影響した

影響した

多少影響した

影響しなかった

無回答

多少なりとも影響した

多少なりとも影響した

(参考)昨年度の不動産会社等による住宅保証の住宅購入への影響<既存住宅購入者>

13.0

9.2

10.2

1.9

0.6

0.9

4.3

0.6

1.7

77.2

87.2

84.3

3.7

2.5

2.8

0% 20% 40% 60% 80% 100%

既存戸建て(N=162)

既存マンション(N=360)

既存住宅(N=530)

既に売主がおこなっていた

売主に依頼しておこなってもらった(費用は売主が負担した)

売主に依頼しておこなってもらった(費用は自ら負担した)

おこなわなかった

無回答

16.2

8.9

11.1

1.9

0.7

1.1

7.1

0.2

2.4

61.4

76.3

70.9

13.3

13.9

14.6

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

既存戸建て(N=210)

既存マンション(N=438)

既存住宅(N=666)

既に売主がおこなっていた

売主に依頼しておこなってもらった(費用は売主が負担した)

売主に依頼しておこなってもらった(費用は自ら負担した)

おこなわなかった

無回答

52.9

36.1

40.8

35.7

52.5

47.1

11.4

11.4

12.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

既存戸建て(N=210)

既存マンション(N=438)

既存住宅(N=666)

54.3

40.3

44.7

45.7

59.4

55.1

0.0

0.3

0.2

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

既存戸建て(N=162)

既存マンション(N=360)

既存住宅(N=530)

いずれかの検査をおこなった

どの検査もおこなっていない

無回答

いずれかの検査をおこなった

どの検査もおこなっていない

無回答

52.9

36.1

40.8

35.7

52.5

47.1

11.4

11.4

12.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

既存戸建て(N=210)

既存マンション(N=438)

既存住宅(N=666)

54.3

40.3

44.7

45.7

59.4

55.1

0.0

0.3

0.2

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

既存戸建て(N=162)

既存マンション(N=360)

既存住宅(N=530)

いずれかの検査をおこなった

どの検査もおこなっていない

無回答

いずれかの検査をおこなった

どの検査もおこなっていない

無回答

13.0

9.2

10.2

1.9

0.6

0.9

4.3

0.6

1.7

77.2

87.2

84.3

3.7

2.5

2.8

0% 20% 40% 60% 80% 100%

既存戸建て(N=162)

既存マンション(N=360)

既存住宅(N=530)

既に売主がおこなっていた

売主に依頼しておこなってもらった(費用は売主が負担した)

売主に依頼しておこなってもらった(費用は自ら負担した)

おこなわなかった

無回答

16.2

8.9

11.1

1.9

0.7

1.1

7.1

0.2

2.4

61.4

76.3

70.9

13.3

13.9

14.6

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

既存戸建て(N=210)

既存マンション(N=438)

既存住宅(N=666)

既に売主がおこなっていた

売主に依頼しておこなってもらった(費用は売主が負担した)

売主に依頼しておこなってもらった(費用は自ら負担した)

おこなわなかった

無回答

(参考)昨年度の民間の建物検査(ホーム・インスペクション)の実施状況<既存住宅購入者>

参考)昨年度の住宅購入にあたっての建物検査の実施状況<既存住宅購入者>

Page 15: FUDOSAN RYUTSU KEIEI KYOKAI 2019年1月(通巻6号) · 日本大学教授 清水千弘 テクノロジーの進化と不動産市場の未来 12 首都圏既存マンション市場─2018年の特徴と2019年の予測─

28 29

40代以下の資金面の購入決定理由は

「金利の低さ」「減税制度」など借入れのしやすさ

 資金面からみた住宅購入理由につ

いて世帯主の年齢別にみると、40才代以下では「金利が低かった」が5割

67.9

32.9

56.5

39.4

23.8

12.6

5.6

18.8

2.6

4.7

3.2

2.6

2.9

8.2

2.6

0.3

54.9

43.2

27.2

25.1

22.5

17.7

19.8

10.9

9.6

7.4

4.9

3.4

3.2

12.8

8.5

0.0

60.0

39.2

38.6

30.7

23.0

15.7

14.3

14.0

6.9

6.3

4.3

3.1

3.1

11.0

6.2

0.1

0 20 40 60 80

不動産会社の信頼性の高さ

担当者の誠実さ・人柄

物件の規格・品質の高さ・優良さ

知名度の高さ

担当者、窓口の対応マナー

担当者の専門知識

営業所が近所にあること

購入後のアフターサービスの良さ

今までに付き合いの経験があること

ホームページを開設している、ホームページの

情報量が多い

仲介手数料の安さ

広告活動の活発さ

営業所数、担当者数の規模

特になし

その他

無回答

新築住宅購入者(N=340)

既存住宅購入者(N=530)

全体(N=870)

(%)

※複数回答

16.2

35.1

43.2

0.0

13.5

0.0

0.0

5.4

16.2

5.4

0.0

19.5

50.1

24.7

5.2

11.8

0.3

1.4

0.0

14.8

2.2

1.4

29.3

35.0

9.3

14.6

11.4

0.4

3.7

0.8

17.5

6.9

1.2

31.4

8.5

3.4

18.6

11.0

6.8

5.1

5.9

19.5

12.7

1.7

29.7

0.0

3.0

5.0

9.9

16.8

6.9

17.8

15.8

22.8

1.0

24.9

33.6

15.6

9.4

11.4

3.1

3.1

3.6

16.3

7.5

1.4

0 20 40 60 80

住み慣れた地域に住み続けたかった

子供の誕生や成長で住まいが手狭になった

結婚を機に家を持ちたかった

社宅の閉鎖など仕事上の都合で

住み替える必要があった

親の近くに住むことになった(住みたかった)

子の近くに住むことになった(住みたかった)

親と一緒に住むことになった(住みたかった)

子供の独立などで家族が減った

身辺事情上の理由は特にない

その他

無回答

29才以下(N=37)

30~39才(N=365)

40~49才(N=246)

50~59才(N=118)

60才以上(N=101)

全体(N=870)

(%)

※複数回答

67.6

40.5

2.7

13.5

8.1

8.1

0.0

44.445.9

10.812.9

4.75.4

0.01.1

0

17.0

0.00.8

0.00.0

51.255.6

26.829.9

6.89.8

32.1

3.7

.51.6

24.0

0.4

28.0

17.8

4.04.56.3

19.5

11.414.4

5.96.1

9.3

7.6

0.00.0

0.8

1.6

2.5

8.9

5.0

0.8

8.9

7.9

13.9

17.8

36.441.6

5.1

1.0

45.5

24.8

4.6

3.03.47.0

33.3

12.0

2.04.9

4.5

4.1

24.1

1.64.0

0.00.0

1.8

0 20 40 60 80

金利が低かった(低いと感じた)

住宅ローン減税制度が有利で買い時と思った

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税制度が有利で買い時と思った

相続税の課税強化が行われるから

フラット35またはフラット35Sを利用することができた

ローンの返済期間などから自分にとって今が買い時と思った

住宅の価格が安く、買いやすかった

家計収入の見通しが上向きになったから

従前住宅が思ったよりも高く売却できそうだったから

まとまったお金が手に入った

資金面の理由は特にない

その他

無回答

29才以下(N=37)

30 ~ 39 才(N=365)

40 ~ 49 才(N=246)

50 ~ 59 才(N=118)

60 才以上(N=101)

全体(N=870)

(%)

※複数回答

56.8

18.9

40.5

35.1

21.6

13.5

5.4

8.1

2.7

54.0

31.8

30.7

38.4

34.0

9.3

7.1

4.1

1.6

48.4

26.8

31.7

27.2

32.9

10.2

12.6

4.5

1.2

66.1

24.6

28.0

26.3

5.9

11.9

5.9

11.0

3.4

54.5

34.7

9.9

16.8

1.0

27.7

11.9

5.9

1.0

54.3

29.2

28.5

31.0

25.4

12.2

9.0

5.5

1.8

0 20 40 60 80

駅に近いところに住みたかった

自然環境のよいところに住みたかった

勤務地に近いところに住みたかった

治安のよいところに住みたかった

教育環境を考えて住み替えたかった

病院など医療施設への便がよいところに住みたかった

環境面の理由は特にない

その他

無回答

29才以下(N=37)

30~39才(N=365)

40~49才(N=246)

50~59才(N=118)

60才以上(N=101)

全体(N=870)

(%)

※複数回答

FRK調査・研究報告 1

入者に比べて「担当者の誠実さ・人柄」(43.2%)、「営業所が近所にあ

ること」(19.8%)の割合が高くなってお

り、担当者の人柄や営業所が身近に

あることが不動産会社選定の重要な

要素になっていることがうかがえる(図

7)。 身辺事情からみた住宅購入理由に

ついて世帯主の年齢別にみると、29

図7 新築・既存別不動産会社を選んだ理由 図8 世帯主の年齢別身辺事情の面での住宅購入理由 図9 世帯主の年齢別資金面の住宅購入理由 図10 世帯主の年齢別環境面の住宅購入理由

才以下では「結婚を機に家を持ちた

かった」(43.2%)、30才代では「子どもの誕生や成長で住まいが手狭になった」(50.1%)、60才以上では

「子どもの独立などで家族が減った」(17.8%)、「子の近くに住むことになっ

た」(16.8%)など、ライフステージごと

の世帯構成にマッチした家を購入しよ

うとする志向が見てとれる(図8)。

を超えている。また、29才以下では「住宅ローン減税制度が有利で買い時と

思った」が40.5%、30才代以下では「フ

ラット35またはフラット35Sを利用するこ

とができた」が4割超となっているなど、特に借入のしやすさを購入理由として

挙げる割合が高くなっており、税制や金融を通じた施策は、特に若年層で有効に機能していることがうかがえる。また、

60才以上では「まとまったお金が手に

入った」の割合が最も高く41.6%となっ

ている(図9)。 どの層でも「駅に近いところに住みた

かった」との回答が多い一方で、「勤務地に近いところに住みたかった」は29才以下で40.5%と回答割合が高く

なっている。また、30才代以下では「治安のよいところに住みたかった」が3割

超、30才代から40才代は「教育環境を考えて住み替えたかった」が3割超、60才以上では「病院など医療施設への便がよいところに住みたかった」が27.7%で他の世代に比べ10ポイン

ト以上高いなど特徴がみられる(図

10)。

Page 16: FUDOSAN RYUTSU KEIEI KYOKAI 2019年1月(通巻6号) · 日本大学教授 清水千弘 テクノロジーの進化と不動産市場の未来 12 首都圏既存マンション市場─2018年の特徴と2019年の予測─

30 31

Multiple Listing Service (MLS)とは何か

1 MLSの発祥と進化

 全米リアルター協会(NAR)は、不動

産取引を円滑に行えるように、Multiple

Listing Service (MLS)と関連技術

に多額の投資をしてきた経緯がある。

MLSは近代技術によってこそ得られ

たサービスと思われるだろうが、実際に

は、“Multiple Listing”という言葉は

1907年に出てきたものである。

 1800年代の後期の不動産取引の

手続きに遡ると、地域の不動産業者

は、定期的に集会所などの会議の場

に集まり、手持ちの物件を紹介し、売

却のための情報収集を行っていた。こ

うしたフェース・トゥ・フェース(face to

face)のネットワークが不動産取引の

場となっていたわけで、この基本的な不

動産取引の原則「私の物件を売ってく

れるのを助けてくれれば、私もあなたの

物件売却に協力する」がMLSの中心

的概念になったと言われる。

 その後、NARの成立、不動産業

者の倫理を徹底させるための倫理綱

領(Code of Ethics)の浸透、コン

ピュータ等電子技術の進歩によるデー

タ提供、インターネットの発展等により、

MLSは時代に対応してめざましい発展

を遂げてきている。

 1908年になると、全米不動産取

引 協 会(National Association of

Real Estate Exchanges: NAREE、

NARの前進)は、すべての会員がこの

考え方と制度を採用するように働きかけ

ており、徐 に々、それが発展しながら、先

端技術を活用し、現在のMLSに至っ

ている。2010年段階では800を超える

MLSを通じて、不動産業者はリスティ

ングを共有し売主と買主側の不動産

業者が互いに協力しあいながら、ビジ

ネスを拡大できるツールと機会を提供

している。

 MLSは民間が組成したデータベー

スであり、リアルターを含む不動産業

の専門家の費用負担により維持運営

されている。ほとんどの場合、一般によ

る参加業者のMLSリスティング物件

へのアクセスは無料で行える。ただし、

この場合、売主の連絡先や居住者が

不在になる時間帯など売主の危険や

プライバシーに関わる情報はアクセス

できないようになっている。

 MLSは大規模な全国データベー

スではなく、実際には735の地域デー

タベースである。各MLSは非常に地

域的であることが特徴である。不動産

業者は、費用を支払うならば、データ

にアクセスし、売り物件のデータをどの

MLSにも掲載できる。このため、多くの

不動産業者は、彼らのビジネスに対

応して販路を拡大するために、複数の

MLSに加入している。

2 MLSの定義

 MLSは、「参加者間における適切

に整備され、関係性のあるリスティング

情報を収録させ、顧客や一般の人々

により良いサービスを提供できるように

する手段」「承認された参加者が、他

の参加者(サブエージェント、バイヤー

代理店、または法律で定義されている

他の代理店または非代理店)に対して

報酬を一元的に提供する手段」「承

認された参加者が不動産の価格評価

およびその他の評価を行うための情報

が蓄積され、発信できるようにする手段」

「不動産鑑定に参加する参加者が

共通のデータベースに貢献するための

手段」として定義される。

3 MLSの使い方

 通常、住宅の売主は、直接的に

MLSに売却物件を登録することはでき

ない。MLS の場合、これはライセンス

を有し、費用を負担する不動産業者や

ブローカーの役割となっている。不動産

業者が売主顧客を得た場合は、住宅

の面積やベッドルーム数、その他の特

徴的な詳細事項や物件の写真などを

用いて完全な(できるだけアイキャッチ

となる)リスティングを売主のために掲

載する。

4 MLSのタイプ

 MLSには、基本的に次の二つのタイ

プが使われている。

①参加会員(代表)はすべての指

定されたタイプの物件をリスティン

グすることが義務付けられるタイプ

(Mandatory Listing Service)。

参加者はRealtors®のビジネスモデ

ルが自らのビジネスモデルに対応して

いるかを考え、合致していると考えた場

合は選択し、規則にしたがって、すべて

の指定物件をリスティングし掲載する

義務を負う。

②すべての参加会員(代表)が利

用可能な複数のリスティングサービス

(広告サイト)であり、物件によりリス

ティングするかどうかは会員のオプショ

ンとなる任意のサービスタイプ。

5 MLS組織の状況

 米国におけるMLSの数は、近年

統合化の方向に進み、2010年代初

頭には900あると言われていたMLS

組織は、2017年には770、2018年

5月現在の米国のMLS数は735組織

となっており、うちRealtors®の名前

を冠してローカル協会内で運営され

ているものが523組織ある。その他の

ものも実質的にRealtor®協会のガ

バナンス下で運営されているものが多

い。NWMLS(North West MLS)、

CRMLS(California Regional MLS)、

BrightMLSなど 大 規 模 なMLSは

独立系のものが多い(2018年5月現在

のMLSリストは「https://realtyna.

com/blog/list-mls-us/」からダウン

ロードできる)。 

 MLSには、NAR傘下の地方リアル

ター協会の一部として協会が運営して

いるものと、NARとは直接組織上のか

かわりを持たない独立系のものが存在

する。

 独立系のCRMLS、BrightMLS、

NSMLSなどは広範囲のエリアを統

合し、数万人規模のメンバーを持つ。

NARとは関わりなく、独自の理事会、運

営事務局を持って運営されている。

6 NARの関与

 NARはMLSに大きく関与してい

る。全米の735余りのMLSの大半は

NARのローカル協会が運営している。

Realtor®協会そのもののMLSが523

組織(約70%)ある。

 これら傘下のリアルター協会(MLS)

に対して、NARから“Handbook on

Multiple Listing Policy”が刊行さ

れている。

 このHandbookの中ではローカル

FRK調査・研究報告 2

協会がMLSメンバーシップを運営

するにあたっての規約、理事会運営

方法、エージェントに課すポリーシン

グ(ルール遵守)、Internet Data

Exchange: IDXなどを通じたデータ

のガバナンス等が記されている。

 NAR傘下のリアルター協会(MLS)

は所属する州の不動産法規の関係な

ど地域独自の理由などがない限りは、

Handbookに記載されている共通の

ルールをベースにMLSを運営する。

7 不動産データの共通化: Real Estate Transaction Standard: RETSについて

 MLSの普及と発展には、不動産デー

タの仕様を共通化するReal Estate

Transaction Standard: RETSの導

入が重要であった。以下ではRETSの

導入や展開、今後について説明する。

(1)不動産基準管理機構  (Real Estate Standards

Organization:RESO)

 不動産取引情報基準(Real Estate

Transaction Standard: RETS)は、

1999年にNARが提唱した不動産取引

情報を標準化するための仕様で、その後

設立された不動産基準管理機構(Real

Estate Standards Organization: 

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32 33

RESO)によって管理運営されてい

る)。

 RESOは、2011年に設立された

ノンプロフィットのコンソーシアムで、

NAR、MLS、不動産協会、ブロー

カー、テクノロジー会社など700以上の

メンバーを有し、不動産情報(データ)

及びRETSによる取扱方式の標準化

を推進している。

(2)不動産取引情報基準 (Real Estate Transaction

Standard: RETS)の概要

 RETSはインターネット上で不動

産情報をやりとりするIDX(Internet

Data Exchange)プロトコル(Protocol:

通信規約)としてNARにより創設され、

北米(アメリカ・カナダ)において広く

利用されている標準仕様である。北

米の多くのMLSは、RETSに基づ

いてMLSシステムを運用している。

RETSでは、主に以下の2点が規定さ

れている。

①不動産情報データベースのデータ

形式(項目名:フィールド)の標準仕様

(データ・ディクショナリ)

②2つのサーバー間においてインター

ネット経由でデータをやりとりするため

の方法。2つのサーバー間で、データ

ベースのテーブル仕様を共通化するこ

とにより、データ互換時のフィールド(項

目)のマッチング等に必要な工数を大

幅に減らすことができる。

 RETSのデータ・ディクショナリには、

物件情報のデータベーステーブル仕

様(各項目のフィールド名、用途など)

が決められている。北米のMLSは、

RETSデータ・ディクショナリに準拠し

てMLSシステムを設計・開発しているこ

とになっているが、実際にはそのエリア

の特性に応じてカスタマイズを加えざる

を得ないのも実情である。

(3) RETSのIDX(データ互換) プロトコル

 RETSにより、インターネット経由の

データ互換プロトコルが定められている

ことにより、双方のIDXサーバーはプロ

トコルに沿って送受信されたデータを

処理することができる。

 例えば、大手ベンダーのMLSシス

テムなどでは、システム内にRETS方

式でデータをやりとりするためのIDX

サーバアプリケーションを搭載しており、

プログラミングなしで画面上から、対象

物件の検索条件(例:過去2日間に更

新されたもの)、送出する情報項目(ど

の項目を送信するか)の指定や、デー

タ送信のスケジュール(何分毎に送受

信同期を行うか)などを簡単に行うこと

ができる。

 このことにより、MLSが保有するデー

タを、ブローカーサイト、ポータルサイト

など、多くの異なったサイト間と簡単に

接続して同期することが可能となってい

る。

(4) RETSから RESO API方式へ

 このように2000年頃から長期間に

渡って、北米の不動産情報のデータ

互換を担ってきたRETSプロトコルで

はあるが、技術トレンドの進歩により新

しい方式のデータ互換であるRESO

API方式へと移行している。

 2018年、RESOはRETS方式から

RESO API方式への移行を発表し

た。RETSに変わる第二世代の不動

産情報のIDX(インターネット互換)方

式としてRESOが作成したもので、イン

ターネット上で、相手の不動産データ

を呼び出すためのウェブ API群であ

る。

 APIとは、ウェブから呼び出すアプリ

ケーション・プログラミング・インタフェー

ス(Appl icat ion Programming

Interface)の略で、ウェブサービスを

プログラミングにより操作するための方

法である。

 

8 ポータルサイトの進出と MLS

(1) MLSとポータルサイト等 の関係

 米国ではMLSによる流通物件デー

タを基盤として、さらにポータルサイトを

含めて、不動産情報の連携が様々な

ビジネスモデルやサービスに基づき、リ

スティングサイト(売出し物件情報サイ

ト)を通じて行われている。この全体像

を整理すると、米国において、不動産

物件情報が掲載されるリスティングサ

イトは、大きく分けて次のカテゴリに分け

られる。

①MLS(不動産業者向け)

②MLSが消費者向けに公開している

物件サイト

③ポータルサイト(Zillow, Realtor.

comなど消費者向け広告マーケティン

グサイト)

④ブロカー・エージェントのサイト

(Redfinもブローカーサイトだが、規模

と利便性から一般的にポータルサイト

として認識されている)

 これらリスティグサイトは、MLSから

物件情報のデータ供給を受けており、

エージェントはMLSに物件情報を登

録することで、MLSからその他のリスティ

ングサイトに対してIDX技術により情

報が送り出されるため、個々のサイトに

物件情報を重複して登録・更新する必

要がない。

 MLSは会員規則にしたがって、登

録される物件情報の正確性・即時性

を維持しており、リスティングサイトは、

MLSが集めた正確な情報をIDX連携

(IDX上はシンジケーションと呼ばれ

る)することによって、大量の物件情報

を自社のサイトに取り込み、消費者に

提供することができる。

 ポータルサイトやブローカーは、

MLSとIDX連携のための契約を結

び、MLSに対し、規定の費用を支払っ

た上でデータの供給を受ける。

<MLSにあって、消費者向けポータル

には開示されないもの>

・ 売主の個人情報(名前・住所・電話

番号など)

・ エリアのデモグラフィック情報、住民

の属性・世帯収入などのエリア情報

は一般的に大手ポータルサイトでは

表示されないことが多い

・ エージェントのコミッション

・ ロックボックス(Lock Box)設置の

有無

・ 過去の売買履歴情報のうち、購入・

FRK調査・研究報告 2

RETSによるデータ互換

MLS 利用者側サイト

定期的に全件を送受信して周期

必要な情報のみをリクエストして取得

RESO APIによるデータ互換

MLS 利用者側サイト物件検索リクエスト

検索結果の物件のみ送信

Multiple Listing Service (MLS)とは何か

RETSとRESO APIの違いのイメージ

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34 35

編・集・後・記

 平成最後の年の瀬に、山手線に沿ってぐるりと一周歩いてみまし

た。車窓からはなかなか気づくことのない、多様な「まち」を体感でき

ます。

 はとバスを待つ観光客でごった返す丸の内、太陽の下で恥ずか

し気なガード下の飲み屋街、姿を現し始めた高輪ゲートウェイ新

駅、御殿山のマンションの閑静な佇まいとそれに続く大崎の近代的

なビル群、「目黒と恵比寿の間にある」アメリカ橋の先にそびえる恵

比寿ガーデンプレイス、写真目当てでハチ公の前に列をつくる外国

人達、余所行きのお店が並ぶ原宿、霊気漂う神宮の森、エスニッ

クレストランが軒を連ねる新大久保、学習院大学キャンパスの豊

かな緑、埼京線、東武東上線のダイナミックな合流が眺められる池

袋跨線橋、駒込と田端の間に唯一残る山手線の踏切、地球の営

みが遺した高低差が印象的な田端~赤羽付近の海食崖、鶯谷

の●●●●●街、おしゃれな「ものづくり」ショップがぎっしり詰まった

御徒町~秋葉原間の高架下などなど。

 どの「まち」にもその「まち」なりの表情があります。息遣いがありま

す。「まち」を構成する「ハコ」を造るのはディベロッパーや建設業

界の役割です。しかし、「まち」に魂を吹き込み、育てていくことについ

ては、「仲介」というプロセスを担う不動産流通業界も貢献できるの

ではないでしょうか。

 平成を終え、新たな時代を迎えるこの年が、不動産流通業界に

とって良い年となりますように。

(K)

FRKコミュニケーション2019年冬季号<通巻6号>

発行日 2019年1月25日

発行人 一般社団法人 不動産流通経営協会 〒105-0001 東京都港区虎ノ門3-25-2 虎ノ門ESビル5階 Tel.03-5733-2271 Fax.03-5733-2270 https://www.frk.or.jp

企画・編集協力 株式会社不動産経済研究所

レイアウト・デザイン 株式会社タクトデザイン事務所

印刷 株式会社東伸社

売却者の名前

・ 過去のローン履歴情報

・ 公図

 一方、ポータルサイトには、消費者

向けに他の情報ソースなどから、住宅

購入の判断に役立つ情報を入手して

提供している項目がある。

<ポータルサイトが独自に収集して提

供するもの>

・ Walk Score(徒歩・公共機関によ

る移動の利便性)

・ 勤務場所など特定の住所までの所

要時間

・ ローンシミュレーション

・ 自動査定価格

・ 引越し・保険などの付帯費用見積

(3) MLSへのデータの供給 (パブリックレコード・オープンデータ)

 MLSの会員エージェントが登録す

る物件情報のほかに、エージェントは

MLSのシステム内で、税金情報や登

記された過去の売買履歴やローン抵

当権設定情報、国勢調査などから集

められたエリアの地域情報など、不動

産売買をするにあたって有益とされる

各種の情報を得ることができる。

 これらの情報は、MLSまたはMLS

が契約しているシステムサービスベン

ダーが、データブローカーと呼ばれる

データ企業が収集した大量のデータ

を元に、レポーティングツールを使って

エージェントに提供される。

 データブローカーはデータの収集お

よび分析をビジネスとしている企業で、

全米の法務局より登記情報・税金情報

を収集してデータ化を行っている。これ

ら企業は、タイトル・インシュランス会社

や金融グループのデータ部門をルー

ツに持つところが多い。CoreLogic

社はFirst Americanタイトル・イン

シュランス会社、Black Knight社は

Fidelity Financialグループのデー

タ部門が独立してできたものである。

 これらの企業は前身のタイトル・イン

シュランス企業時代から大量の不動

産取引情報をデータとして保有し、か

つ、全米の法務局から登記情報・税金

情報を網羅的に毎月収集してデータと

して加工した上で、不動産・金融・保険

など公的情報(パブリックレコード)を

必要とする各種業界にデータを販売し

ている。

 多くのMLSでは、これらデータブロー

カーが提供するデータおよびそのシス

テム・ツールを導入して、会員向けに売

り出し情報だけでなく、履歴情報も提

供することで、エージェントの物件調査

の手間を簡素化して価値を提供して

いる。

 法務局のデータ以外にも、国勢調

査によるエリアのデモグラフィック情報

や、洪水情報などのオープンデータか

ら、学校区や通勤利便性などの民間

企業が提供するデータなど、不動産

売買の意思決定に有益とされる各種

の情報は、データとして流通しており、

MLSやポータルサイトにより活用が行

われている。

FRK調査・研究報告 2

入力

MLS

MLS消費者向けサイト

ポータルサイト

IDX

入力

ブローカーサイト

MLSのルールに基づき正確な情報を管理

エージェント

Multiple Listing Service (MLS)とは何か

MLSからポータルサイト等へのデータ提供

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不動産物件の情報交換、不動産流通に関する調査研究、諸制度の改善に取り組んでいます。

Fudosan Ryutsu Keiei Kyokai