fintech と分散システム 〜またの名を仮面ライダーフィンテック〜

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FinTech SFC FinTech – 2016-03-23 – p.1/33

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FinTechと分散システム~またの名を仮面ライダーフィンテック~

慶應義塾大学 SFC研究所上席所員斉藤賢爾

FinTechと分散システム – 2016-03-23 – p.1/33

今日のお話は、なかなか理解していただけないとは思っています

. . .世代的に

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ところでお前は誰だっけ斉藤賢爾 (さいとうけんじ) <[email protected]>

慶應義塾大学 SFC研究所上席所員 (村井純研究室)

一般社団法人アカデミーキャンプ代表理事株式会社Orbチーフサイエンティストコンサルタント (論文は書いてます)

経歴1993年、コーネル大学より M.Eng取得(コンピュータサイエンス)

2006年、慶應義塾大学より博士号取得 (政策・メディア)

慶應義塾大学にてインターネットと社会の研究に従事福島のこどもたちのための「アカデミーキャンプ」を実施「仮面ライダー」第 1話放送時 (1971年 4月 3日) 6歳⇒ つながってるね!

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45分という短い時間なので本質的な話だけをしたい

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仮面ライダーとは本質的に何かバイク乗りかどうかは重要ではない

cf. 仮面ライダードライブ (2014-2015)

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最近の仮面ライダーロケット

仮面ライダーフォーゼ (2011-2012)

魔法使い仮面ライダーウィザード (2012-2013)

果物 (. . . 果物?)

仮面ライダー鎧武/ガイム (2013-2014)

自動車仮面ライダードライブ (2014-2015)

お化け (過去の有名人の魂)←今ココ仮面ライダーゴースト (2015-2016)

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仮面ライダーは正義の味方. . .ではない

敵には敵の正義があるでは何の味方か?

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誰がために戦う ←それはサイボーグ戦士

「俺は本郷猛およばずながら人間の自由のために戦っている」

—「平成ライダー対昭和ライダー仮面ライダー大戦 feat. スーパー戦隊」(2014)

(基礎教養なので言うまでもないと思いますが)

本郷猛は仮面ライダー 1号

なるほど最近はそういう設定なのかと思いきや

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仮面ライダー (1971)より「およばずながら、私も全力を尽くして人間の自由のために戦います」

—本郷猛,仮面ライダー第 1話「怪奇蜘蛛男」(1971)

「仮面ライダー 本郷猛は改造人間である彼を改造したショッカーは、世界制覇を企む悪の秘密結社である仮面ライダーは人間の自由のために、ショッカーと闘うのだ」

—「仮面ライダー」オープニングナレーション (1971-1973)

忘れていた . . . (ナレーションの最初の 1 行以外)

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正義のヒーローではない「正義のために戦うなんて言うのは止めましょうナチスだって正義を謳ったんだから、正義ってやつは判らない悪者とは、どんなお題目を掲げていても人間の自由を奪う奴が悪者です仮面ライダーは、我々人間の自由を奪う敵に対し人間の自由を守るために戦うのです」

—市川森一 (脚本家)

しつこかったかも知れないが重要なことなので(ちなみにこれも基礎教養だと思いますが)市川森一さんは「ウルトラセブン」第 37 話「盗まれたウルトラ・アイ」の脚本担当

(予算制約上)怪獣が出てこなくて、代わりに美少女が出てくる話

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人間を拡張するテクノロジーというか人間を拡張するものをテクノロジーと呼ぶ

cf. M. McLuhan, “Understanding Media: The Extensions of Man”, 1964

仮面ライダーといえば人間の拡張 =変身

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敵のテクノロジーで変身する仮面ライダーは敵のテクノロジーで変身する例証

ショッカーの改造人間 (1号・2号)... 時は流れて . . .

ユグドラシルの科学者戦極凌馬による戦極ドライバー (鎧武)最終的に主人公は「ヘルへイムの森の実」を食しオーバーロード化 ←どの演算子を?って思っちゃいますよね

ロイミュードを生んだのと同型のテクノロジー (ドライブ)

眼魔を生んだのと同型のテクノロジーと推察される (ゴースト)

敵は何らかのかたちで人間の自由を否定例 : マイナンバー (番号そのもの)にされる (ドライブ)

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話がだいぶ脱線したので本来のテーマに戻します

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今回のテーマであるFinTechと仮面ライダー

(「分散システム」はどこにいった)

人間の自由を奪う金融貨幣経済「お金がない・使えない =不自由」が実現された世界

金融には金融の正義がある敵のテクノロジーであるブロックチェーンに興味津々

ここでの視点は金融側から←敵と味方はときに入れ替わる

ちなみに FinTech = Financial Technology

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FinTechの評価軸として持ちたいもの人間の自由のために戦っているか?

おそらく金融機関が FinTechに注力する理由は既得権益の維持ビットコインを利用した海外送金等が変化のための強烈な外圧に「100 年後、銀行はあると思いますか?」がマジな質問に

生き残るためには「人間の自由のために戦う」という方向に向かわざるを得ない (サービスの低コスト化)

⇒ 金融貨幣経済を瓦解させていく方向

結果として「人間の自由のために戦う」ことになる勢力とは一緒にやっていきたい(金融関係のみなさまにも大変お世話になっております< (_ _) > )

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FinTechの地図の描き方テクノロジーは敵からもらい受けるテクノロジーの根源は、考えてみれば「自然」(特許でも「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」が「発明」)

仮面ライダー鎧武/ガイム (2013-2014)が参考になる異世界ヘルへイムの森に浸食されつつある世界ユグドラシル・コーポレーションが人類のために立ち上がる←ショッカーのようなもの

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用語体系 (FinTechと仮面ライダーの世界観を同時に説明する暴挙)

ユグドラシル -金融貨幣経済R3 とか HyperLedger Project はどちらかというとこっちかな

ダンスチーム -銀行などの金融機関や法曹関係 (LegalTech)

実は踊らされている?ヘルへイムの森 -分散システムの研究フィールドヘルへイムの森の実 -分散システム研究の成果 (果実)

分散タイムスタンプサーバとか Paxosとかインベス (ヘルへイムの森の野生動物) -野生の P2Pシステムビットコインとか

ロックシード (変身アイテム) -技術シードブロックチェーンとかの分散レッジャー (台帳)

知恵の実 -イデ (IDE : Integrated Distributed Environment)FinTechと分散システム – 2016-03-23 – p.17/33

FinTechの地図 (分散レッジャー関係)

発端はサトシ・ナカモトがヘルへイムの森の実を食べてビットコインを人間社会に放ったこと FinTechと分散システム – 2016-03-23 – p.18/33

ヘルへイムの森における法則FLP不可能性CAP定理ビザンチン将軍問題コンセンサスのセイフティとライブネス斉藤-山田不可能性 (仮). . .等々

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ブロックチェーンという技術この短い時間の中では技術の詳細を説明できず . . .

(だったら仮面ライダーの話をしなければいいのに!)

詳しくは以下のスライドとかを「ブロックチェーン技術の基本と応用の可能性」http://www.slideshare.net/ks91020/ss-58535780

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ブロックチェーンの概要 (ビットコインの場合)

1. 各マイナーは、過去 10分ほどの間に収集した取引データをブロックに格納し、マイニング (くじ引き)を行う2. 成功したらネットワーク内にブロードキャストする3. 各マイナーは、それをチェーンの新しい末尾と認めるなら、その後ろにブロックを繋げるべく 1に戻る

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ブロックチェーンvs. 分散システム

ユグドラシルの技術はヘルへイムの森の力を100%活用できているか

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CAP定理Consistency (一貫性)

読み出しは直前の書き込みの内容を返す

Availability (可用性)

必ず有限時間内に応答する

Partition tolerance(分断耐性)

ネットワークが分断されても動作する

⇒ 3つは同時に満たせない止まらないブロックチェーンは Cを満たせないEventual consistency (結果整合性)を狙うわけだが . . .

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Consistency (一貫性)

Strong consistency (強い一貫性)更新が完了した後、すべてのアクセスは更新された値を返す (safety)

Eventual consistency (結果整合性)更なる更新が行われない限り、いずれすべてのアクセスは最後に更新された値を返す (liveness)

↑ 強化

Weak consistency (弱い一貫性)すべてのアクセスが更新された値を返すことは保証しない ←ブロックチェーンはコレ (エクリプス状態を想定)

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コンセンサスCS1 : 提案された値だけが選択されるCS2 : ひとつの値だけが選択されるCS3 : 正しい参加者は選択された値だけを学ぶCL1 : 提案された値のどれかがいずれ選択されるCL2 : 値が選択されるなら、正しい参加者はいずれその値を学ぶ

障害の種類メッセージが届かない、停止する→ビナイン/良性 (benign)

前提を置かない→ビザンチン (Byzantine)

ブロックチェーンはコンセンサスを実現しないビナインな障害を前提とする場合でさえ

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斉藤-山田不可能性 (仮)

ノードの総数 nが定まらない状況下ではコンセンサスを満たすプロトコルは存在しない(すでに他の人が証明していたら教えてください)

6月下旬に論文発表予定

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ブロックチェーンの課題n : 参加者の総数f : ビザンチン障害下の参加者の数R : 投入される資源 (e.g. 計算力)の総和F : ビザンチン障害下の参加者が投入する資源の総和

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現実 vs. ブロックチェーン思考実験ビットコインで支払うと、上空を飛ぶドローンが運んできた缶ジュースを落としてくれるというサービスを作るとする

ドローンはいつ缶ジュースを落とせばよいのか?

実時間で進行する現実と、ブロックチェーンの動作はかけ離れている

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ブロックチェーンとByzantine Paxos

ブロックチェーン資源の総和 Rを利用する (不完全な)コンセンサス動作条件 : R > 2F (Rは未知)

nが大きく、f は未知、確率的な動作が許容されるとき採用可エクリプス攻撃への対策が必要

Byzantine Paxos参加者の総数 nを利用するコンセンサス動作条件 : n > 3f (nは既知)

f の上限を決められるとき採用可メンバシップの精緻な管理が必要

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エクリプス攻撃 (ネットワーク分断)

悪意の (または故障)ノードがネットワークを分断し、互いを見えなくする

ブロックチェーンの場合は、分岐が永続するf = 1で原理的に可能 ⇒ 資源の総和 Rは無関係

FinTechと分散システム – 2016-03-23 – p.30/33

望まれる諸性質 vs. ワンネス取引の増加に伴い、データ構造を維持するためのコストが直線的に上昇する

「世界がひとつ」でなければ動作しない大規模災害や政変などによりネットワークが分断されると正しく動作しない技術を進化させるガバナンスが利きにくい一部で違うことを試してうまくいったら全体で採用、ということができない

以上は分権できない構造による欠点逆に、分権できる分散コンセンサス基盤には大きな期待と可能性がある(ご参考 : ユグドラシル =世界樹 = 1 本の樹木 vs. リゾーム)

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技術の整理と課題ブロックチェーンの技術は 3層に分けて考えられる

1. デジタル署名によるデータ構造誰もが制御を持て、自己充足構造で誰もが検証可能

⇒ 有益2. ダイジェストを格納するブロックの連鎖の構造相対時刻を定義する、証明の基盤

⇒ 想定されていたほど強固ではない3. コンセンサスのプロトコル

TXとしての確定に向けたトライアル⇒ 現実と同期して動く上で問題がある

課題の解決と、課題が解決されたことを前提とする応用の探究を同時に進める必要がある人間の自由のために

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まとめ私自身はライダーというより年齢的にも立花藤兵衛

FinTechに代表されるように、社会の変化が分散システムの知識を要求している次は LegalTechだ

⇒ ぜひヘルへイムの森の住民である若いみなさんにも参加してもらえたらと思っています研究の果実を実際に試すフィールドでもありますヘルへイムの森の住民 =オーバーロード             ↑だからどの演算子を?

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