高齢者の回復期における入院時fimと血清アルブミ...

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢 8-1-1 回復期リハ(1) 高齢者の回復期における入院時 FIM と血清アルブミン値の意義 鹿島病院 事務部企画経理課 はら えいじ ○原 栄嗣(事務職) 回復期リハビリテーション病棟は身体能力(ADL;Activities of Daily Living)の回復を行う病棟であるが、 同一疾患であっても入院患者の ADL 改善に大きな差がうまれる場合がある。ADL 改善の差には何らかのリ ハビリテーション阻害効果因子があることが推測されるため各臨床検査値や傷病名などの項目を中心に検証を 行ったところ、入院中 ADL が回復しにくい患者は、入院時 ADL が低く、血清アルブミン値が入院時から低 値もしくは入院中に低下することが確認された。そのため血清アルブミン値がリハビリテーション効果に影響 を与える一因子であることが考察できたので報告する。 【はじめに】 回復期リハビリテーション病棟には、脳卒中治療後などの脳血管疾患患者、および大腿骨骨折や関節置換術 後などの運動器疾患患者に対し、リハビリテーションを提供しADLを改善させ、在宅復帰を目指す役割がある。 入院患者の ADL は多くの場合、機能的自立度評価表 (Functional independence measure;以下 FIM と略 ) を 用いて評価が行われる。当該病棟において患者個々の FIM 得点の改善は最も重要である。 平成 28 年 4 月診療報酬改定において、回復期リハビリテーション病棟は FIM 得点改善にかかるアウトカム指 標で一定の水準以上を満すことが求められた。水準を満たさない医療機関は、患者 1 日当りのリハビリ単位数 において 6 単位を超えて提供した場合、7 単位目以降の疾患別リハビリテーション料は入院料に包括され経済 的打撃をうける。このように病院経営においても FIM 得点の改善は注目されるようになった。 【目的】 当院の回復期リハビリテーション病棟の入院患者において、FIM 得点の改善にどのような因子が影響を与え たのかを検討した。さらに効率的にリハビリテーションの効果をあげる方法もあわせて検討した。

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第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-1-1 回復期リハ(1)高齢者の回復期における入院時 FIM と血清アルブミン値の意義

鹿島病院 事務部企画経理課

はら えいじ

○原 栄嗣(事務職)

回復期リハビリテーション病棟は身体能力(ADL;Activities of Daily Living)の回復を行う病棟であるが、同一疾患であっても入院患者の ADL 改善に大きな差がうまれる場合がある。ADL 改善の差には何らかのリハビリテーション阻害効果因子があることが推測されるため各臨床検査値や傷病名などの項目を中心に検証を行ったところ、入院中 ADL が回復しにくい患者は、入院時 ADL が低く、血清アルブミン値が入院時から低値もしくは入院中に低下することが確認された。そのため血清アルブミン値がリハビリテーション効果に影響を与える一因子であることが考察できたので報告する。

【はじめに】 回復期リハビリテーション病棟には、脳卒中治療後などの脳血管疾患患者、および大腿骨骨折や関節置換術後などの運動器疾患患者に対し、リハビリテーションを提供し ADL を改善させ、在宅復帰を目指す役割がある。入院患者の ADL は多くの場合、機能的自立度評価表 (Functional independence measure;以下 FIM と略 ) を用いて評価が行われる。当該病棟において患者個々の FIM 得点の改善は最も重要である。平成 28 年 4 月診療報酬改定において、回復期リハビリテーション病棟は FIM 得点改善にかかるアウトカム指標で一定の水準以上を満すことが求められた。水準を満たさない医療機関は、患者 1 日当りのリハビリ単位数において 6 単位を超えて提供した場合、7 単位目以降の疾患別リハビリテーション料は入院料に包括され経済的打撃をうける。このように病院経営においても FIM 得点の改善は注目されるようになった。

【目的】当院の回復期リハビリテーション病棟の入院患者において、FIM 得点の改善にどのような因子が影響を与えたのかを検討した。さらに効率的にリハビリテーションの効果をあげる方法もあわせて検討した。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-1-2 回復期リハ(1)重症例における回復期リハ病棟での基本動作能力の変化 Bedside mobility scale での検証

1 札幌西円山病院 リハビリテーション部,2 札幌西円山病院 診療部

わだ らいお

○和田 来緒(理学療法士)1,只石 朋仁 1,三谷 有司 1,久保 進也 1,伊藤 隆 1,橋本 茂樹 2,横串 算敏 2

【はじめに】平成 28 年診療報酬改定から応用動作である FIM は注目されている . しかし重症例に関しては FIM の改善に難渋する例が多く回復期リハ病棟としての効果を示すことは難しい . 今回 , 基本動作能力に着目した評価としてBedside mobility scale( 以下 ,BMS) を使用し , 重症例に対する効果を検証したので報告する .

【対象と方法】対象は 2015 年 4 月~ 2016 年 3 月までに当院回復期リハ病棟を退院した 227 名 . 平均年齢 78.7 ± 12.5 歳 , 疾患内訳は運動器疾患 86 例 , 脳血管疾患 76 名 , 廃用症候群 60 例 , 算定対象外 5 例 .方法は①入退院時の FIMM,BMS を Wilcoxon 符号付順位検定で比較 . ②日常生活動作と関連性を確認するため入院時 BMS,FIMM にて Spearman 順位相関係数を算出 . ③入退院時 BMS の天上効果と床効果を検証 . ④入院時 BMS,FIMM が床効果を示していた 10 例の BMS・FIMM 利得を Wilcoxon 符号付順位検定で比較 .

【結果】① FIMM,BMS ともに退院時で有意に高値 (p < 0.01) ② BMS,FIMM の相関係数は r = 0.874(p < 0.001). ③入院時床効果 15 例 (6.6% ), 天上効果 42 例 (18.5% ), 退院時床効果 1 例 (0.4% ), 天上効果 93 例 (41.0% ). ④ BMS 利得 4.40± 6.22,FIMM 利得 3.1 ± 6.88 で有意差は認めなかった (p = 0.064) が FIMM では利得を認めない者が 7 例存在 .

【考察】BMS は回復期リハ病棟入院患者において退院時には有意に改善されており , また FIM とも強い相関を認め BMSの妥当性が確認された . 床効果を示した重症例では FIM より BMS で変化を得られやすい傾向を認めた . 基本動作は日常生活動作遂行における土台であり重症例では応用動作の評価のみでなく基本動作を数値化し評価していくことが重要であると考えられた .

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-1-3 回復期リハ(1)回復期リハ病棟における Motor-FIM 効率と運動各項目の推移 ~当院大腿骨転子部骨折患者において~

橋本病院

なかむら けんしろう

○中村 健士郎(理学療法士),福田 真也,平井 光広,中島 由美,宮本 美恵子,橋本 康子

【目的】平成 28 年度診療報酬改定に伴い回復期リハビリテーション病棟 ( 以下:回リハ病棟 ) では ,Motor-FIM( 以下M-FIM) における利得・効率 , 早期退院という ADL アウトカム指標が求められるようになった。M-FIM 効率 ,運動各項目の推移を明らかにし , 効率的に早期在宅退院へ繋げる一助とすることを目的とする。

【方法】対象は , 平成 25 年 4 月から平成 28 年 3 月に入退院した大腿骨転子部骨折患者 90 例のうち , 当院在院日数 70日以内の 26 例を除外した初発 64 例 ( 男性 7 例 , 女性 57 例 , 年齢 86.0 ± 6.2 歳 , 骨接合術 58 例:保存 6 例 , 在院日数 88.0 ± 9.1) とした。M-FIM 総点数の入院時 ( 以下① ),7 日 ( 以下② ),30 日 ( 以下③ ),60 日 ( 以下④ ), 退院時 ( 以下⑤ ) を抽出し , 期間ごとの点数差 ,FIM 利得 ,FIM 効率を算出。また M-FIM の各項目の推移を上記同様検証した。統計処理方法は多重比較検定 Steel-Dwass を用い , 有意水準を 5%未満とした。

【結果】M-FIM 総点数は① 34.9 ± 13.7, ② 40.3 ± 15.2, ③ 51.0 ± 15.4, ④ 58.1 ± 15.1, ⑤ 60.4 ± 16.0 で , ①-② , ③-④ ,④-⑤以外で有意差を認めた (P<0.05)。FIM 効率は①-② 0.83 ± 1.08, ②-③ 0.36 ± 0.22, ③-④ 0.24 ± 0.24,④-⑤ 0.14 ± 0.25。M-FIM 各項目では④-⑤以外で全てに有意差を認めた (P < 0.01)。また M-FIM 利得では①-②:③-④において清拭 (P=0.011), 更衣上 (P=0.038), トイレ動作 (P=0.045), 移乗;シャワー (P=0.003), 歩行・車椅子 (P=0.014), 階段 (P=0.017) で有意差を認めた。

【考察】FIM 効率が在院日数の経過とともに減少傾向にあり , 概ね在院 60 日で M-FIM 利得は獲得されている。しかし④ - ⑤期間において FIM 効率 0.14 獲得出来ていることを考慮すれば , 可能な限り長期間のリハ提供は必要だと考えられる。その為 ,60 日を目途に通所・訪問リハ等へ移行することにより , 効率的かつ早期に在宅生活へ繋げていくべきだと考える。また全荷重許可や , 荷重時痛や術創部痛が軽減してくるであろう 30 日を境に入浴 , 排泄 , 歩行訓練を実施する必要があると考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-1-4 回復期リハ(1)理学療法士による POC リハのあり方についての検討

1 芳珠記念病院 リハビリテーションセンター,2 診療局

いわがみ りんたろう

○岩上 倫太朗(理学療法士)1,合歓垣 洸一 1,木村 繁文 1,西田 好克 1,上田 佳史 2,仲井 倍雄 2

【はじめに】ADL 維持向上等体制加算にみられるように,理学療法士(以下:PT)の一般病棟への配置は患者の廃用予防や ADL 維持・向上に有用であるとされている.当院では以前より作業療法士による生活回復リハとして,POC(Point Of Care)リハと称した病棟 ADL への短時間介入を取り入れてきた.今回,PT による早期離床や移動能力の改善といった心身機能を中心とした POC リハが,患者の ADL 改善に有効であるかを検証した.

【方法】対象は地域包括ケア病棟専従 PT による POC リハ導入の前後 5 か月間に地域包括ケア病棟に入棟した 194 例とし,これらを導入前群(n=83),導入後群(n=111)の 2 群に分けた.POC リハは①入院前後の ADL の乖離が大きく,退院時に入院前と同等の ADL を獲得できると予想される患者,かつ②病棟での活動性に乏しく,廃用に陥るリスクが高いと見込まれる患者を中心に介入した.年齢,在院日数,疾患別リハの平均提供単位,入退院時の FIM,FIM 利得,運動 FIM Effectiveness を算出し Mann-Whitney の U 検定を用いて群間比較を行った.有意水準は両側 5%とした.なお本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った.

【結果】導入前後の比較の結果(中央値 導入前群 / 導入後群,p 値)は,運動 FIM Effectiveness(0.35/0.46,p < 0.05),退院時 FIM(95/112,p < 0.05),疾患別リハの平均提供単位数(3.8/3.1,p < 0.01)に有意差が認められた.POC リハの平均介入時間は 14 分 / 回であった.その他の項目に有意差は認められなかった.

【考察】今回の専従 PT の早期離床,活動量拡大への働きかけが POC リハ導入前後の FIM の改善度の差に表れたのではないかと考える.今後は PT による POC リハが介入すべき患者背景をより明確にし、適切な介入方法を検討していくことが必要であると考える.

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-1-5 回復期リハ(1)回復期リハ病棟から自宅退院された患者様の追跡調査報告~ FIM 運動項目からみる下位項目の経時的変化~

みどり野リハビリテーション病院 リハビリテーション科

たなか せいぎ

○田中 正義(理学療法士)

【はじめに】生活環境が病院から自宅に変化することで、入院時と比べ ADL 能力が向上するという研究報告が数多く報告されている。辻らの研究から、運動項目総得点が 69 点以下の群では、ADL に何らかの介助が必要になることが立証されているが、どの項目に介助が必要かなどの詳細は不明である。そこで今回の研究では、運動項目総得点から能力レベル別に群分けし、各時期における下位項目の経時的変化がみられるか検証した。

【対象・方法】対象は平成 26 年 11 月から 1 年間に自宅退院され、退院 1、3、6 ヶ月後 ( 以下 1M、3M、6M) の FIM を本人及び家族から調査が可能だった 101 名とした。方法は、先行文献を基に、運動項目総得点から、49 点以下をADL 全介助、50 ~ 69 点を ADL 半介助、70 ~ 79 点をセルフケア自立、80 ~ 84 点を屋内歩行自立、85 点以上を屋外歩行自立の 5 つに群分けした。統計学的解析は下位項目における時期別の変化を Friedman 検定にて実施し、有意水準を 5%未満とした。また各群の運動項目中央値を抽出し、各時期で経過を追った。

【結果】ADL 全介助群は、移乗項目が 1M から有意差がみられた。ADL 半介助群は、移乗項目は 1M から、セルフケア・移動項目は 3M から有意差がみられた。運動項目中央値が 63 点から 72 点まで向上した。その他の群は 1M から下位項目で有意差が見られた。

【考察】辻らの研究から、セルフケアに比べ移乗項目の方が動作難易度が低いことが報告されている。そのため ADL全介助群では、まず移乗項目の介助量が軽減する傾向が示唆される。ADL 半介助群ではセルフケア・移動項目が向上するのが 3M であることから、セルフケアが自立するまでに 3 ヶ月の期間を要すことが考えられる。

【結語】時期における項目別 FIM の変化の傾向をつかむことが出来た。退院時 FIM 運動項目総得点をもとに各時期に合わせたサービスやセルフケアエクササイズの提案、入院中に実施する自宅環境に合わせた基本動作・ADL訓練に活かしていきたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-1-6 回復期リハ(1)当院回復期リハ病棟における運動 FIM 利得・効率の検証 ~入院時運動 FIM からみた傾向~

みどり野リハビリテーション病院 リハビリテーション科

あざかみ ひろき

○阿座上 広希(理学療法士),横野 裕行

【はじめに】平成 28 年度診療報酬改定により回復期リハ病棟では FIM のアウトカム評価が導入され、運動 FIM 利得・効率など FIM による評価の重要性が高いと言える。そこで今回当院における入院時運動 FIM から FIM 利得・効率を検証することとした。

【対象・方法】H27 年 4 月から H28 年 3 月の 1 年間で当院を退院した 570 名(脳血管 351 名、運動器 184 名、廃用 35 名)とした。方法は入院時の運動 FIM を辻らの自立尺度から 49 点以下(全介助群);363 名、50 ~ 69 点(半介助群);151 名、70 ~ 79 点(セルフケア自立群);41 名、80 ~ 84 点(屋内歩行自立群);8 名、85 点以上(屋外歩行自立群);7 名の 5 群に分け、それらを入退院時の運動 FIM 項目・運動 FIM 利得・効率・在院日数を Kruskal-Wallis 検定を用いて比較・検証した。

【結果】運動 FIM 利得・効率ともに半介助群がセルフケア自立群、全介助群と比較し、有意に高値を認めた。しかし、在院日数においては半介助群とセルフケア自立群での有意な差は認めなかった。さらに入院時の運動項目中央値ではセルフケア群が半介助群と比較し有意に高値を示したものの、退院時の比較では有意な差は認めなかった。

【考察】半介助群においては運動 FIM 利得・効率ともに他の群と比較し有意に高値を認めた。全介助群では FIM 利得の向上は認めたが、退院先を検討すること自体や在宅調整をする上でも時間を要すため在院日数を長期化させる結果となった。セルフケア自立群では、自立度が比較的高く FIM 利得が少ない上、半介助群と比較し在院日数の有意な差は認められず FIM 効率が低下した。さらに退院時の運動 FIM 項目においても有意な差が認められず、FIM 項目の難易度によるものや在宅調整など何らかの要因で日数の長期化が示唆された。

【結語】在宅調整をする上では患者様 1 人 1 人様々な要因を考慮し検討していく必要があるが、これら全体として改善すべき要因については明らかにしていきスムーズな退院調整を図っていきたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-1-7 回復期リハ(1)当院回復期リハビリテーション病棟におけるアウトカム評価の状況について

1 ベルピアノ病院 リハビリテーション室,2 ベルピアノ病院 医療診療部

やまだ けんじ

○山田 賢次(理学療法士)1,戸田 爲久 2

【目的】今年度の診療報酬改定から、回復期リハビリテーション病棟 ( 以下、回リハ ) においてアウトカム評価が新設された。今回、当院回リハの介入効果の現状を把握し今後の対応について検討したので報告する

【対象・方法】対象は H27 年 4 月から H28 年 3 月までに当院回リハを退院した患者 241 名(脳血管患者n=102、運動器患者 n=139)。調査項目としては、基本属性・入退院時 FIM・FIM 利得・在院日数・実績指数(FIM運動項目利得 /(在院日数 / 算定上限日数))を後方視的に調査した。また、脳血管患者(以下、A 群)と運動器患者(以下、B 群)の 2 群に分け、アウトカム評価患者数より除外できる基準(入院時 FIM 運動項目 20点以下、及び、76 点以上・入院時 FIM 認知項目 24 点以下・入院時年齢 80 歳以上)に該当する患者割合、実績指数 27 点との関係を含め比較検討した

【結果】性別・年齢ともに 2 群間に有意差を認めた(男性 / 女性 ,59.8%/40.2 %vs21.6%/78.4%,p<0.01)(70.6 ±13.2 歳 vs78.0 ± 13.0 歳 ,p<0.01)。入院時 FIM は A 群が有意に低値であったが(76.6 ± 23.0 点 vs87.5 ± 16.0点 ,p<0.01)、実績指数においては A 群が有意に高値な結果となった(42.3 ± 32.8 点 vs31.4 ± 21.1 点 ,p<0.05)。アウトカム評価除外基準に関しては、年齢 80 歳以上に該当する患者割合が B 群において有意に高く

(25.5%vs51.1%,p<0.01)、その他の項目における割合については 2 群間に有意差を認めなかった。また、実績指数 27 点未満の患者の中で、入棟除外基準に該当しない患者の割合は、両群ともに約 3 割を占めていた

【考察】当院回リハに入院する運動器患者は高齢な方が多く、算定上限日数が脳血管患者に比して短いこともあり実績指数が脳血管患者に比べ低くなりやすいことが示唆された。また、アウトカム評価除外基準に該当しないが実績指数 27 点に満たない患者については、既往歴・合併症の有無を含め調査を行い、より効率の良いADL・IADL 改善に向けた取り組みが必要である

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-2-1 回復期リハ(2)当院回復期リハビリテーション病棟におけるサルコペニア

1 しげい病院 リハビリテーション科,2 しげい病院

しみず ひろたか

○清水 弘毅(医師)1,重井 文博 2

【はじめに】真田らは、DEXA(Dual Energy X-ray Absorptiometry) を用いた日本人成人男女を対象としたサルコペニア簡易評価法を開発した。回復期リハビリテーション病棟 ( 以下、回リハ病棟 ) の患者において、対象疾患のために歩行速度などを正確に評価できない場合でも、DEXA によりサルコペニアの推定ができる。【目的】回リハ病棟において、サルコペニアの割合を調査する。【対象と方法】2015 年 6 月から 11 月末までに当院回リハ病棟に入院した患者で骨密度測定装置 (DEXA) にて骨格筋量指標 (SMI) を測定した男性 65 人平均72.7 歳 (18 ~ 90)、女性 75 人平均 79 歳 (42 ~ 104) の計 140 人を対象とした。SMI の値が、男性 6.87kg/m2、女性 5.46kg/m2 以下をサルコペニアとした。【結果】140 人中 83 人 59.2%( 男性 54 人 83.1%、女性 29 人 38.7%) がサルコペニアであった。 【考察】急性期病院で早期退院ができない患者が回リハ病棟に入院するため、回リハ対象疾患以外の問題 ( 高齢、嚥下障害、認知症、サルコペニアなど ) を抱えている方が多い。今回の調査で約6 割の患者がサルコペニアであることがわかった。リハビリテーションに加えて栄養管理など、サルコペニア対策が必要であると考える。【まとめ】当院回リハ病棟でのサルコペニアは 140 人中 83 人 59.2% であった。回リハ患者に、サルコペニア対策が必要である。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-2-2 回復期リハ(2)回復期リハビリテーション病棟における摂食・嚥下機能と FIM 利得の関係性

岸和田平成病院

きしもと ゆうすけ

○岸本 裕佑(言語聴覚士),花岡 隆宏,細濱 恵造,廣瀬 泰弘,荒尾 徳三

[はじめに]昨今、口腔機能やそれに伴う食形態と日常生活動作能力との関係性が示されている。当院回復期リハビリテーション病棟(以下、回リハ病棟)でも、摂食・嚥下機能と共に身体機能・日常生活動作(以下、ADL)能力が低下している症例がみられる。本研究では、摂食・嚥下障害の改善と、Functional Independence Measure(以下、FIM)の利得率、血清アルブミン値(以下、Alb)の改善率、食事摂取量の改善率との関連を明らかにすることを目的とした。

[方法]当院の回リハ病棟入院患者で、入院時に「摂食・嚥下障害の臨床的重症度分類(以下、DSS)」で誤嚥ありと判断される症例(DSS4 以下)を対象とした。それらを、退院時に誤嚥なしと判断される DSS5 以上の群(以下、改善群)と DSS4 以下に留まった群(以下、非改善群)に分け、FIM の利得率、Alb の改善率、食事摂取量の改善率について 2 群間比較を行った。FIM は、総合 FIM・運動 FIM・認知 FIM に分けて検定し、有意水準は 5% とした。本研究は岸和田平成病院倫理委員会の承認下に行われた。

[結果]総合 FIM 、運動 FIM の利得率では p<0.01、認知 FIM の利得率では p<0.05 の有意差を認め、Alb の改善率、食事摂取量の改善率では、有意差を認めなかった。

[考察]摂食・嚥下機能の改善に伴う経口摂取への移行や食事形態の改善により、咀嚼運動の機会が増加しことで、認知機能が向上し、身体機能に対するリハビリテーションを効果的に行えたことが考えられる。それに対し身体機能の側面からみると、セラピストの関わりにより頸部・体幹筋などが改善することで摂食・嚥下機能が改善した可能性も考えられる。これらの結果から、言語聴覚士は、身体機能・ADL を、また理学療法士や作業療法士は摂食・嚥下障害を視野に入れたリハビリテーションを行う必要があると考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-2-3 回復期リハ(2)重度の運動障害性構音障害に対する発話と拡大・代替コミュニケーション(AAC)訓練

1 橋本病院 ,2 千里リハビリテーション病院

いしい ももこ

○石井 桃子(言語聴覚士)1,白川 卓 1,宮本 美恵子 1,橋本 康子 1,熊倉 勇美 2

【はじめに】重度の運動障害性構音障害の一症例に対し、発話訓練、拡大・代替コミュニケーション(AAC)訓練を実施したところ、意思疎通が可能となったので経過と考察を含めて報告する。

【症例】50 代・男性、脳幹と小脳梗塞 、四肢麻痺、運動障害性構音障害、嚥下障害。 現病歴:平成 27 年 X 月 X 日に意識障害を発症。脳底動脈の閉塞、小脳・脳幹梗塞の診断のもと rt-PA 療法・内服治療が実施された。第 90 病日目にリハビリ目的で当院へ転院。

【初期評価】JCS. 1-0、Barthel Index. 0 点、FIM21 点、安静時呼吸 20 回 / 分、SpO2 98%、呼吸は胸式優位でコントロール困難。呼気持続 0 秒。笑い声は有声化するが、自発話はない。鼻漏出あり。頸部の上下運動可能。左顔面神経麻痺、両側舌下神経麻痺を認める。

【経過・結果】blowing 訓練、口腔顔面運動、呼吸・発声練習を実施したところ、呼吸コントロールが改善し、第 150 病日ごろにはリラックスした状況で、意図的発声が不安定ながら可能となった。また、下顎・舌などの運動が改善し、口唇音や前舌音は口形による聞き手の推測が容易となった。AAC に関しては、ST が病棟の生活場面で訴えの多い事柄の一覧表を作成し、「頷き-首振り」を用いて意思疎通を図るように訓練した。その後、平仮名 50 音表の指さしやスプリングバランサーを用いての書字訓練を実施したが、第 200 病日ごろには「電子ボード」を用いての実用的書字が可能となった。第 230 病日ごろには、単語レベルの発話と筆談を併用したコミュニケーションが可能となり、福祉施設に転院となった。

【考察】訓練では、視覚的フィードバックが容易なしゃぼん玉を用いたこと、体調や姿勢などによる違いを観察しながら、発声しやすい場面を作り訓練を行ったことが、音声によるコミュニケーションの改善に効果をもたらしたと考えられる。また、AAC の活用に関しては、ST を中心に病棟、リハチームで取り組んだことが効果的であったと考えられる。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-2-4 回復期リハ(2)脳卒中患者の回復期病棟入棟時における多剤併用に関する調査研究 ~多剤併用が FIM 運動項目に及ぼす影響~

1 竹川病院 リハビリテーション部,2 竹川病院 薬剤科,3 竹川病院 医師

きのした りょう

○木下 亮(理学療法士)1,櫻井 瑞紀 1,可児 利明 1,大木 崇 2,田中 眞 3

【はじめに , 目的】高齢者は単一疾患でなく重複障害を抱えている人が多く , 多剤併用になる傾向があり , 一般的に 5 種類以上の多剤を併用している状態を Polypharmacy と定義する . 多剤を併用する程 , 転倒 , 認知機能低下 , 栄養障害などの薬物有害事象が増加するとされ , 不適切な薬剤投与による医療費増大が大きな問題となっている . 今回 , 内服薬における多剤併用の現状把握と ADL, 認知機能 , 栄養状態に及ぼす影響を検討する事を目的とした .

【方法】平成 27 年 10 月から平成 28 年 5 月に A 病院回復期病棟に入棟した脳卒中患者 86 名中データに不備がなかった 45 名 ( 平均年齢 75 歳± 8.3) を対象 . 調査の大項目として入棟時における外用 , 頓用 , 懸濁法で処方されてきた薬剤を除く内服薬数 . 小項目として入棟 3 日以内に測定した ADL:FIM 運動項目 ( 以下 mFIM), 認知機能:MMSE, 栄養指標:CONUT スコア (ALB,TLC,T-cho) とした . 解析方法は (1)5 剤以上の多剤を併用している割合 ,各項目の平均値と標準偏差を算出 .(2) 内服薬数と各小項目との関係について Pearson の関率相関係数を用い相関係数を算出 , 従属変数を有意差の出た小項目 , 独立変数を内服薬数とし回帰式を算出 . 有意水準は 5%とした . 本研究は当院倫理審査委員会の承認を得て実施した.

【結果】(1)5 剤以上の多剤併用の割合は 63% ( 平均値 5.7 錠± 3.3), mFIM:54.7 点± 18.7, MMSE:22.6 点± 7.3,CONUTスコア:2.2 点± 1.7.(2)mFIM との間に有意な負の相関を認めた (r=-0.53,p < 0.01,y=-3.06x+72.03). その他は有意差を認めなかった .

【考察】多剤併用の割合が過半数を上回る Polypharmacy 症例が多い現状である事が明らかとなり、入院時より薬物有害事象を念頭に入れたリハビリテーションが必要であると推察された . 更に , 内服薬数と mFIM において負の相関を認め , 内服薬の減少が mFIM 利得に寄与する事が示唆された . 今回は入院前の内服薬状況や内服薬数増減に伴う ADL の変化については言及出来ていないため,今後詳細な検討が必要である.

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-2-5 回復期リハ(2)多職種連携におけるモーニング・イブニングリハビリの活用 ~認知症による行動障害を呈した症例を通して~

1 愛全病院 リハビリテーション部,2 愛全病院 看護部

みたに ゆかり

○三谷 友香理(作業療法士)1,吉川 文博 1,寺田 広美 1,高橋 麻紀 2,播磨谷 拓斗 2

【はじめに】 当院では,平成 25 年よりセラピストの早出,遅出勤務を行い,早出勤務者は 7:10 ~ 8:30(モーニングリハビリ),遅出勤務者は 11:50 ~ 12:50 と 17:30 ~ 19:30(イブニングリハビリ)の時間帯で食事,整容,更衣,排泄といった生活場面に介入している.今回多職種連携におけるモーニング,イブニングリハビリの活用について,症例を通して紹介する.

【症例】A 氏(90 歳代・女性),老人保健施設入所中に転倒.左大腿骨転子下骨折,左橈骨遠位端骨折を受傷.

【初期評価】・FIM:30/126 点.ADL は全般的に一部介助~全介助レベル.・HDS-R:0/30 点.・日中は傾眠傾向.興奮状態になることが多々あり,暴言・暴力,意欲の低下を認めた.ケアの場面においては介助拒否がみられた.

【目的と方法】 モーニング,イブニングリハビリ介入の目的は,①拒否の原因を評価し,介助拒否の軽減を図る.② ADL で離床を促し,生活リズムを構築する.方法は,実際の拒否場面で評価しケア方法を決定した.また,実際場面で方法をスタッフに伝達した.カンファレンスや会議では目的や経過を全体に周知した.

【結果】 ADL に変化はなかったが,A 氏に合ったケアの方法をいくつか見出すことができ,介助拒否は軽減した.「ありがとう」と感謝の言葉が聞かれ,笑顔が増えた.日中の覚醒状況に変化はなかった.

【考察】 回復期リハビリ病棟では,患者に関わる多職種が 24 時間リハビリの視点でケアにあたる事が必要である.モーニング,イブニングリハビリでは,セラピストが生活場面に介入することで,患者の能力,希望,そして病棟の人的・物理的環境を具体的に評価することができる.また実際場面で情報伝達,指導を行うことにより,患者の能力を活かせ,かつ実践的なケア方法を確立することができると考える.本症例も,患者に合ったケア方法を多職種が統一して行えたことで,介助拒否軽減に繋がったと考える.

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-2-6 回復期リハ(2)回復期病棟における認知機能スクリーニング検査と金銭管理能力の関連性について

花川病院 リハビリテーション部 作業療法科

うちしば ゆうき

○内柴 佑基(作業療法士),岡地 雄亮,工藤 拓志,齊藤 俊文,川原田 雪絵,桂川 拓也,久保 華佳,菅野 由紀子

はじめに軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment:以下,MCI)は,認知症移行率が年間約 10%と報告があり,関心が高まっている.当院入院中の高齢患者も例外ではないと考えている.また,MCI の段階から IADL 障害が徐々に始まり,金銭管理は初期に障害がみられると報告がある.本研究では,入院高齢者に対し,認知機能と金銭管理能力の評価を行い,その関連性について考察し報告する.

方法対象:当院入院中の脳血管障害の既往がない整形疾患の 65 歳以上の高齢者 18 名(MMSE23 点以下は除外).手順:MMSE,金銭管理能力のアセスメントツール (Financial Competency Assessment Tool:以下,FCAT)領域 1「基本的金銭スキル」課題 1d ①~③を実施.統計:FCAT 全てに正解の群(以下,満点群),不正解がひとつ以上の群(以下,非満点群)の 2 群に分け,MMSE の総得点と各下位項目得点を比較し,マン・ホイットニーの U 検定を実施(有意水準は 5%以下).

結果① FCAT 満点群は 4 名,非満点群が 14 名で,77.8% の対象者が FCAT で失点がある.② FCAT 満点群の MMSE は 27 点以上で,項目 4 の計算で失点はない.③ MMSE の総得点は,FCAT 満点群の平均が 28.25 点,非満点群が 25.5 点で,非満点群が有意に低下.④ MMSE の下位項目では,項目 4 のみ有意差を認め,非満点群が有意に低下.

考察MMSEからは認知症ではないと判断されたにも関わらず, FCAT課題とMMSEの項目4で失点した者が多く,先行研究での金銭管理が早期から障害されるという主張に矛盾はない.したがって,MMSE を補完するFCAT のような遂行課題は MCI の評価として有用である.また,これらの評価は作業記憶と関連があると考えられ,MCI は早期に作業記憶が低下し,IADL 障害に影響する可能性があると思われる.しかし,今回は明確な認知症診断を実施しておらず,今後は症例数増加と同時に,作業記憶などの多面的な評価指標での比較を行い,IADL 評価と支援方法をより明確にしていきたい.

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-3-1 回復期リハ(3)足こぎ車いすを使用した運動療法のリハビリ効果について

1 鹿島病院 リハビリテーション科,2 医局,3 企画経理課

いたがき ようすけ

○板垣 陽介(理学療法士)1,田野 俊平 2,原 栄嗣 3

【はじめに】 足こぎ車いすは下肢でペダルを漕いで進む福祉用具で,リハビリ効果についても期待されている。今回,運動療法の一つとして患者に足こぎ車いすを使用し,その効果について検証をおこなったので報告する.

【方法】 足こぎ車いす走行練習を自由速度で 3 分間× 2 セット,週 3 ~ 5 回× 2 週間実施.<対象症例> 頸髄性脊椎症 4 名 左不全麻痺患者 3 名 大腿骨頸部骨折 1 名足関節外果骨折 1 名 腰椎圧迫骨折 1 名 計 10 名<評価> 大腿周径(膝蓋骨上縁 10㎝)を左右で計測. 徒手筋力計で大腿四頭筋の筋力を左右で計測. 3 分間× 2 セットの走行距離を合計. 練習開始前と練習終了時の利得について平均値と有意差を検証し向上の有無を確認する. 検定には Wil-coxon の符号付順位和検定を用い,p<0.05 で有意差ありとする.

【結果】 大腿周径(cm、右 / 左):利得平均 +0.47 / +0.46 p=0.031 / 0.015 徒手筋力計(kgf、右 / 左):利得平均 +0.78 / +2.12 p=0.027 / 0.002 走行距離 (m):合計 利得平均 +79 p=0.003 すべての評価において p<0.05 であったため,向上有りと認められた.

【考察】 大腿周径,徒手筋力計の結果から,大腿四頭筋の筋繊維肥大と筋力値の向上を認めた.ペダリング運動は下肢の屈曲運動から伸展運動に切り替わる蹴りだしに筋力が発揮されるため,大腿四頭筋の筋力強化に有効であり,また一側下肢で補いながら両側下肢の交互運動が可能であり,麻痺側下肢の自動運動を補助的に促すことが出来るため,神経筋障害の改善にも有効であると考えられる.走行距離が延長したことから,筋持久力向上が得られたと考えられる.足こぎ車いすは座位で走行するため,自重を支える下肢筋力がなくても走行が可能で,等張性収縮の反復運動が長時間可能となり,筋持力向上に有効であると考えられる.また,歩行困難な患者も自力駆動で容易に移動範囲を拡大できるため,訓練や活動意欲の動機づけとして活用できると考えられる.

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-3-2 回復期リハ(3)下衣着脱時間に影響している因子の検討~棒体操による効果~

泉佐野優人会病院

なかむら そうた

○中村 創太(理学療法士),永田 貴志,坂下 友亮,高祖 浩孝,西村 卓也,加藤 寛

[はじめに]日常生活動作においてトイレ動作は難易度が高く、なかでも下衣着脱動作が最も難しいといわれている。これには、姿勢の変化と保持の為のバランス能力が必要である、と報告されている。本研究では、簡便且つ安全にできる棒体操を用いてバランス能力 ・ 敏捷性 ・ 柔軟性の向上を図り、下衣着脱時間に与える影響について検討した。

[方法]対象は当院回復期リハビリ病棟に入院している患者 10 名(年齢 81.9 ± 3.7 歳)。棒体操を 1 回につき 20 分、週 3 回、8 週間実施した。評価項目は、片脚立位時間、立位 Functional Reach Test(以下 FRT)、座位 FRT、長座位体前屈、落下棒テスト、下衣着脱時間として、調査開始時と 8 週間経過時に測定した。棒体操の実施が困難、または棒体操に対して拒否がみられる 10 名を非実施群とした。実施群と非実施群において上記 6 項目をt検定にて比較した。また、下衣着脱時間に影響を与える因子を重回帰ロジスティック検定にて検証した。尚、本研究は当院倫理規定に則り患者様に充分な説明を行い同意を得ている。

[結果]調査開始時と 8 週間経過時の差を比較した結果、実施群は下衣着脱時間、立位 FRT、座位 FRT で有意に向上がみられた(P < 0.05)。その他の項目については、有意差はみられなかったものの、片脚立位時間と長座位体前屈で向上がみられた。また、下衣着脱時間の向上に影響したものは、座位 FRT、立位 FRT の順で関連性が高かった。

[考察]先行研究より、座位および立位 FRT は、体幹機能との関連性が示唆されている。また、FRT と下衣着脱時間との関連性も報告されている。今回の結果から、棒体操によって体幹機能が向上し、下衣着脱時間の向上に繋がったと考えられる。今後は、本研究を踏まえて、下衣着脱時間とトイレの自立度との関連性について検証していくことが課題である。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-3-3 回復期リハ(3)病棟内歩行自立に対する二重課題下歩行の検討 第二報

岸和田平成病院

おだ はやと

○小田 隼人(理学療法士),早川 佳奈,廣田 直也,片山 有里,川村 倫弘,朝本 成奎,岸本 裕佑,荒尾 徳三

[はじめに]病棟内歩行自立判定基準として Berg Balance Scale(以下、BBS)や 10m 歩行などの臨床的有用性が示されている。前回の研究で、病棟内歩行自立判定基準として二重課題下歩行を検討した結果、病棟内歩行で独歩または杖を使用して自立許可を得ている症例(以下、自立群)と見守りを要する症例(以下、見守り群)で、10m 自由歩行、BBS、Timed Up and Go(以下、TUG)に加えて、注意機能と二重課題下歩行が 2 群間に差を認める傾向となった。今回症例数を追加し、病棟内歩行自立判定基準における二重課題下歩行の有用性をより明確にする。

[方法]当院回復期リハビリテーション病棟入院症例で、自立群と見守り群を対象とした。10m 歩行については、課題を与えない自由歩行および二重課題下歩行を実施した。二重課題は聴覚課題および視覚課題とした。また、認知機能評価として改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下、HDS-R)、注意機能評価として Trail Making Test Part A(以下、TMT-A)、身体機能評価として BBS、TUG の評価を行った。本研究は当院倫理委員会の承認を得て、個人情報保護に十分な配慮をおこなっている。

[結果]自立群と見守り群の 2 群間比較において、10m 自由歩行、TUG では見守り群は自立群に対し時間の延長を認め BBS では点数が低い傾向にあり、前回の研究と同様の結果が得られた。加えて、聴覚課題及び視覚課題での二重課題下歩行、TMT-A においても見守り群は自立群に対して時間の延長を認める傾向であった。HDS-Rは 2 群間に差はみられなかった。

[考察]10 m自由歩行、BBS、TUG に加えて、注意機能と二重課題下歩行が 2 群間に差を認める傾向にあり、これらを評価することが病棟内歩行自立判定に有望である可能性が示唆された。現在さらに症例を増やして検討中である。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-3-4 回復期リハ(3)簡易的足趾筋力測定法と重心前方移動能力の関係

中洲八木病院 リハビリテーション部

しまだ ゆうき

○島田 祐希(理学療法士),倉田 浩充,井関 博文,臼井 千秋,日浅 匡彦

【はじめに】近年,足趾筋力は様々なバランス能力との関係が報告されており,転倒リスクを規定する重要な能力の一つである.以前,我々は慢性期医療施設でも簡易的かつ統一した尺度での測定が可能な簡易的足趾筋力測定法を紹介した.本研究では,簡易的足趾筋力測定法を用いた足趾圧迫力と重心前方移動能力との関係性を明らかにすることを目的とした.

【方法】対象は足部に既往がなく同意が得られた外来通院患者 12 名とした.足趾圧迫力の測定には,デジタル体重計 (TANITA-662-WH) を用い,測定方法は両上肢を胸の前で組み,体幹中間位,股関節および膝関節 90°屈曲位,足関節中間位で体重計と同じ高さの台に接地し,中足趾節関節から遠位を体重計に接地させ踵部が台から離れない範囲の最大の力で足趾全体を使って体重計を押し付けるよう指示し,2 秒間保持できる最大値を記録した.重心前方移動能力の測定は床反力計 ( アニマ社製グラビコーダ GS - 2000) 上に閉脚位にて起立させ,重心を前方に最大移動した際の 30 秒間の MY 座標を計測した.各測定の順序はランダムとし,2 回ずつ測定した値の平均値を算出した.統計解析は,ピアソンの積立相関分析を用いて足趾圧迫力と重心前方移動能力との相関を調べた.統計学的有意差は 5%未満とした.

【結果】足趾圧迫力の実測値は (4.8 ± 1.6kg) であり,MY 座標の実測値は (2.3 ± 1.1cm) であった.相関分析の結果,足趾圧迫力と重心前方移動能力との間に有意な正の相関関係 (r=0.54,p<0.05) が認められた.

【考察】本研究の結果は,従来の足趾筋力測定法と同様に足趾圧迫力と重心前方移動能力との間に正の相関関係が認められた.これは立位姿勢制御に重要な役割を担うとされる足底内在筋が活動していることが考えられた.転倒リスクを規定する様々な因子が存在するが,本測定法は足趾筋力という視点において慢性期医療施設における転倒リスク評価の一助となることが示唆された.

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-3-5 回復期リハ(3)入院患者における自主トレーニングとセルフエフィカシーの関連

中洲八木病院 リハビリテーション部

やまもと こうへい

○山本 晃平(理学療法士),井関 博文,倉田 浩充,日浅 匡彦

【はじめに】 入院患者が退院後も身体機能向上・維持する為には自主トレーニング ( 以下,自主トレ ) が必要である.当院でも自主トレ指導を実施しているが,定着する者としない者がいるのが現状である.運動開始および継続においてセルフエフィカシー ( 以下,SE) の向上が重要であり,近年ではバリア SE の評価が注目されているが入院患者を対象とした自主トレ定着に関しての研究は少なく不明な点も多い.本研究の目的は入院患者の自主トレ定着に対する SE の差異および他の要因との関連性を検討することである.

【対象及び方法】 対象は病棟内歩行自立レベルの当院入院患者 18 名とした.自主トレ定着基準として 1 週間毎日実施できた者を定着群,1 日でもできなかった者を非定着群とし,対象者は定着群 11 名,非定着群 7 名であった.ベースラインにおける両群間の年齢,性別,mFIM,TUG に有意差は認められなかった.自主トレ内容は 1 日 20分間以上の病棟内歩行とした.評価はバリア SE 尺度,日本語版 Fall Efficacy Scale ( 以下,FES) および在院日数を評価し,2 群間で比較検討した.統計処理は Mann-Whitney の U 検定を用い有意水準は 5%未満とした.対象者には本研究の内容および自主トレ内容を説明し,同意を得て実施した.

【結果】 定着群においてバリア SE (P<0.01) および FES (P<0.05) が 高値を示し,在院日数 (P<0.05) においては短縮が認められた.

【考察】 本研究では自主トレ定着群ほど SE および FES が高く,非定着群ほど低いことが認められた.また定着群において在院日数が短縮していたことから,入院早期からの効果的な自主トレ指導は重要であり,在院日数短縮に繋がると考えられる.前場らは SE 強化を意図した介入は運動継続に有効であると示しており,今後自主トレ定着を求めるうえで SE の低い者に対しては,阻害因子 ( 様々な状況や転倒恐怖感 ) を考慮した自主トレ指導が SE 強化となり自主トレ定着に繋がると考えられる.

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-3-6 回復期リハ(3)頸髄損傷患者におけるロボットを用いたリハビリテーションの効果

博愛記念病院

たかぎ りょう

○髙木 遼(理学療法士),土橋 淳美,竹内 由吏,木下 大蔵,安次富 満秋,大寺 誠,池村 健,元木 由美

【目的】近年 , ロボット工学の発展が目覚ましく , ロボットを用いたリハビリテーションへの関心が高まっている . 今回 ,頸髄損傷患者に対してロボットを用いたリハビリテーションを取り入れ , 歩行を獲得し自宅退院となった症例を報告する .

【症例紹介】性別:男性 年齢:67 歳 診断名:頸髄損傷の術後 合併症:四肢不全麻痺経過:平成25年8月10日に転落され,急性期病院へ搬送された.C3後方亜脱臼を認めHalo固定を施行された.同年8月28日に頸椎後方固定術,骨移植術を施行され9月3日にVista固定となり9月24日に当院入院となった.入院時 ,ADL は全介助レベルであり , 移乗動作は両側の膝折れがみられ 2 人介助を要した .

【方法】CYBERDYNE 社製身体支援型ロボットスーツ HAL® 福祉用 ( 以下:HAL®) と免荷機能付歩行器を使用した歩行練習を週 1 回各 1 時間 5 週間実施 .その後 ,HAL® を終了し , 本田技研株式会社製 HONDA 歩行アシスト ( 以下:歩行アシスト ) を使用した歩行練習を週 3 回各 1 時間 6 週間実施 .

【結果】FIM:50 → 95 点 zancoli 分 類: 右 8B Ⅱ → 8B Ⅱ 左 7B → 8B Ⅰ 改 良 フ ラ ン ケ ル 分 類: 右 C2 → C2 左 C1 → C2 筋力 (MMT):右上肢 2 ~ 3 → 3 ~ 4 左上肢 2 → 3 右下肢 3 → 5 左下肢 4 → 4退院時 , 移乗動作自立レベル , 右ロフストランド杖を使用し屋内歩行自立レベルで自宅退院となった .

【考察】HAL® のサポートにより , 一時的に下肢の筋出力に向上が得られ ,PC 上の画面にてリアルタイムに重心の位置や下肢の振り出しが即座にフィードバックされることで , 神経系が賦活化された . 骨盤を前傾させるように歩行アシストの伸展モーメントを強調し , 腸腰筋の伸張を促通させることにより , 脊髄 CPG が賦活化された . HAL® や歩行アシストを用いることで効率の良い歩行を再学習することができたと考える .

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-4-1 回復期リハ(4)発症から1年半以上経過した被殻出血患者に対する外来理学療法経験

千里リハビリテーション病院

おおつぼ ひでかず

○大坪 英一(理学療法士),吉尾 雅春

【はじめに】 発症から1年半以上経過し歩行能力低下を認めた被殻出血患者に対して1ヶ月間外来での理学療法を行う機会を得た。その中で、身体機能及び歩行能力の向上を認めたため、報告する。

【症例】 40 歳代、男性。左被殻出血を発症し、35 病日に当院へ入院。203 病日に自立支援センターへ退院し、入所から約 1 年後に自宅復帰。3 ヶ月後、当院外来受診し、週 1 回の理学療法を実施。当院へは公共交通機関を利用して1人で来院される。

【当院退院時の評価】 Stroke Impairment Assessment Set( 以下、SIAS)51 点。T 字杖とプラスチック短下肢装具 ( タマラック継手 )を使用し、10m 歩行時間 22 秒。FIM 運動項目 83 点、認知項目 23 点であり、院内 ADL 自立。運動性失語、軽度注意障害及び遂行機能障害などの高次脳機能障害あり。

【経過】 外来開始時、SIAS42 点 ( 下肢運動機能低下、下肢筋緊張亢進、体幹機能低下により減点 )。10m 歩行時間51 秒。FIM 運動項目 86 点、認知項目 26 点。屋外移動は自立となっていたが、麻痺側の運動機能低下、下腿三頭筋の筋緊張亢進、反張膝が生じていた。反張膝を抑制した歩行能力の向上を目標にアプローチを行った。具体的には、長下肢装具を使用して股関節周囲筋を賦活し、麻痺側への荷重機会の増加、非麻痺側への重心移動学習などを実施した。1ヶ月後、SIAS48 点。10m 歩行時間 29 秒。麻痺側の運動機能向上、下腿三頭筋の筋緊張軽減が認められた。また、日常歩行の中で膝のロッキングは 3/10 程度に減少し、患者からも歩行時の疲労が減少したと主観的な変化もみられた。さらに継続してアプローチを実施している。

【考察】 退院後の生活において歩行機会が増加する中で、麻痺側の不使用により歩容の悪化を招いていた。短期間の介入で身体機能及び歩行能力の向上が認められたが、高次脳機能障害もあるため、今後同じことを繰り返さないためにも生活期において、具体的な予防策を提示する必要があると思われる。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-4-2 回復期リハ(4)頭頚部屈曲姿勢への介入によるうつ症状の改善 ―身体面が精神面に及ぼす影響―

1 新戸塚病院 リハビリテーション科,2 新戸塚病院

たかぎ むさし

○高木 武蔵(理学療法士)1,池谷 聡毅 1,西川 奈津子 2,橋爪 義隆 2

【はじめに】既往にうつ病を持ち、くも膜下出血及び中大脳動脈梗塞を発症した症例を担当した。ADL 能力が向上してもうつ症状が残存していたが、頭頚部屈曲姿勢に対し重点的に介入することでうつ症状が改善したため、ここに報告する。

【症例紹介】30 歳代男性。くも膜下出血及び中大脳動脈梗塞を発症し、発症後 6 週で当院回復期病棟へ転院。【評価】発症後 6 週時点で ADL は全般的に介助を要し、入院時 FIM は 34 点、起居動作や座位保持にも介助を要した。ハミルトンうつ病評価尺度は 27 点で、最重症と判断され、挨拶や質問への反応も乏しい状態であった。

【経過】身体機能は徐々に向上し、4 ヶ月後には移乗動作は声掛けのみで可能、歩行は四点杖と SHB を使用し見守りで可能となり、FIM は 73 点に改善した。しかし、うつ症状は残存していた。

【介入の糸口】池田の報告によると、うつ病や不安を抱える症例に対し、不良姿勢へ介入することで精神症状が改善している。本症例は座位以上の姿勢にて、頭頚部の強い屈曲がみられていた。そこで、姿勢への介入からうつ症状の軽減を図ることとした。

【介入】端座位にて徒手的に頚部伸展を誘導しても追従できなかったが、上位の肋間筋の柔軟性を引き出すと、頚部伸展が可能となった。そこで、徒手的なストレッチや呼吸により、肋間筋の柔軟性に対し介入した。

【結果】上記介入から 1 週間程度経過すると、日常的な座位での頭頚部屈曲が軽減した。それに伴い、徐々にうつ症状の軽減が認められた。自ら雑談を始める等の積極的な行動が増え、笑顔も見られるようになった。介入から 2 ヶ月後の退院時には、ハミルトンうつ病評価尺度は 7 点に改善し、正常の範囲内となった。

【考察】今回の結果から、頭頚部屈曲姿勢がうつ症状の一因であったと考えられる。精神症状を呈す患者様に対し、理学療法士は身体面が精神面へ及ぼしている影響を評価し介入することで、症状改善に貢献できる可能性が示された。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-4-3 回復期リハ(4)橋出血後の著明な左上下肢、体幹失調症例―起居動作介助量が軽減した一例―

富家千葉病院

○押尾 愛里(理学療法士),須賀 晴彦

【はじめに】  脳卒中ガイドラインによると、早期から起立訓練を行うことで、下肢・体幹支持性向上に有用とされている。今回、橋出血後に肺炎を併発、左上下肢及び体幹失調を呈した症例を経験した。そこで、積極的に離床・起立訓練を行ったことで、身体機能が向上し、起居動作介助量軽減を認めたので、ここに報告する。

【症例】 70 歳代女性。広範性の橋出血と診断、肺炎を併発。20 病日後、身体機能、呼吸機能改善を目的に当院回復期リハビリテーション病棟に転院となる。

【初期評価】 意識レベル:E4VTM6(GCS) 呼吸機能:SpO₂96 ~ 99%(酸素 1ℓ投与) ROM: 著明な制限なし MMT:両上下肢、体幹 2 レベル 知覚:精査困難 起居動作:全介助(協力動作なし) 座位保持:全介助 ( 体幹動揺著明 ) 協調性検査:左上下肢運動失調著明 画像所見:胸部 CT 上、両側下葉にて陰影認めた。

【経過】 短期目標は、左上下肢・体幹失調軽減、座位バランス能力向上、長期目標は起居動作介助量軽減とした。入院時は左上下肢及び体幹失調が著明であり、起居動作において全介助を要していた。移動時にはリクライニング式車椅子に乗車するが、体幹左側屈著明であり、座位保持不良であった。入院1週目より車椅子乗車にて離床を図り、積極的な座位保持訓練、起立台を用いての起立訓練を行った。9週目に胃瘻造設、11週目に酸素投与終了、スピーチバルブ使用開始となり、より積極的な座位保持訓練、起立訓練を実施。現在、起居動作軽介助、普通型車椅子可能となった。現在も起居動作介助量軽減を目標に介入中。

【考察】 本症例は、橋出血後に肺炎を呈していた。そして左上下肢及び体幹失調が著明であり、起居動作には全介助を要する状態であった。しかし、積極的な離床、起立訓練を実施した事により、抗重力位による排痰、体幹筋群の筋賦活が図られ、呼吸機能の改善並びに起居動作介助量軽減につながったと考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-4-4 回復期リハ(4)浮腫を呈する片麻痺患者の上肢スプリントの検討 ~ 導入時期と時間に着目して ~

世田谷記念病院

はとう えみ

○羽藤 愛実(作業療法士)

[ はじめに ]片麻痺患者の麻痺側上肢に対する浮腫の作業療法は、徒手的治療に加えコックアップスプリント ( 以下 : スプリント ) で改善を図ることがある。作業療法士によりスプリントの介入方法は様々であり、適切な導入時期や装着時間があるのか、また随意性や FIM の変化が影響しているのか調査したので報告する。

[ 方法 ]手指に浮腫を認めスプリント作成した患者のうち、入院時と退院時の手指周径が分かる患者 10 症例を対象とし、1. 入院からスプリント導入までの日数 2.1 日の装着時間 3. 手指周径の経過 4. 浮腫改善の有無と理由 5.BRS 6. 整容・上衣更衣の FIM を調査し、改善群 (5 名 ) と非改善群 (5 名 ) に分けた。

[ 結果 ]導入時期では、改善群と非改善群とも偏りがなく様々であり影響は見られなかった。装着時間では改善群は睡眠時の 9~12 時間装着していることが多く、非改善群では日中短時間の装着が多かった。改善した理由では、良肢位保持できたことが多かった。BRS では両群とも入院時から変化はなく、FIM では改善群は整容と上衣更衣の点数が入院時から高くなっている場合が多く、非改善群では点数の変化は少なかった。

[ 考察 ]今回の結果からは証明できなかったが、装着時間に関して改善群は夜間長時間の装着が多く、それは持続した良肢位の保持が得られ、また、寝返りなどでのアライメントを崩すリスクが低くなり、浮腫の軽減に影響している可能性が示唆される。また、FIM に関して改善群は整容と上衣更衣の点数が入院時より上がっており、随意性が低くても、手洗いや清拭、袖通しなどで両手動作が増え、麻痺側への感覚入力や自他動運動を促すことができる可能性も考えられ、麻痺側参加を行うことで浮腫軽減につながるのではないかと推察した。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-4-5 回復期リハ(4)肺炎により心身機能低下を呈した患者の生活機能向上へ向けて ~ベッド上生活からの脱却~

石巻健育会病院 リハビリテーション部

かのう わかこ

○狩野 稚子(理学療法士),津田 佳代,遠藤 巨樹,大川 晶,石田 秀一,狩野 佳代,松下 洋子

【はじめに】肺炎後の心身機能低下により介入が滞っていた患者に対し、心身機能変化に合わせ ADL 様式の調整を行いながらリハビリ介入を行った結果、介助量が軽減し車椅子中心の生活を獲得したため報告する。【症例紹介】80 歳代女性、肺炎にて呼吸機能低下、認知機能低下、注意散漫、体幹柔軟性低下、筋力・持久力低下、易疲労性、嚥下障害・食思低下、介護依存が認められ生活全般に介助を要した症例である。

【リハビリテーション】当初は発熱や倦怠感の持続がみられ、離床ができるまで入院から 1 か月半と時間を要した。離床前はベッドサイドで呼吸介助や基本動作、座位耐久訓練を行い、離床後は立位や移乗・歩行訓練を中心に行った。体幹柔軟性低下により、おもに起居動作が困難であったがリーチ動作や体幹への感覚入力を行うことで改善がみられた。身体機能訓練とともに無理のない範囲でトイレ動作や更衣動作の訓練を行った。

【ADL】デイルームでの食事は注意散漫で疲労やムセがみられた。そこで集中力が持続しやすい環境を設定し、安全に摂取できる所要時間の少ないおやつから離床を開始した。トイレ誘導は尿便意が曖昧で実施までに時間を要したが、病棟・リハビリ間で情報を共有し時間誘導の中から日々の尿便意の変化を見逃さずに実施した。

【結果】ベッド上生活からトイレ・車椅子離床が実現し、起居・移乗・トイレ・食事動作は見守りレベルに改善、倦怠感や疲労の訴えも聞かれなくなった。介入初期は FIM37 点 ( 運動 18・認知 19) だったが、5 か月後の退院時では FIM85 点 ( 運動 60・認知 25) にまで改善した。

【考察】本症例は初期の肺炎症状の回復を見逃さず、心身機能の改善と環境設定を行った結果として ADL も改善したと考えられる。また活動量の増加から運動予測が可能となったことで本人に心理的な変化を与え、介護依存状態から本人の積極性の向上へ繋がったと考えられる。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-4-6 回復期リハ(4)BCAA 強化ゼリーを摂取し運動耐容能が向上し始めた廃用著明な血液透析患者を経験して

富家千葉病院

○小川 仁道(理学療法士),影原 彰人,須賀 晴彦

【目的】血液透析患者(以下 HD)の治療では水分やタンパク質の制限がされやすい、また HD では高度な侵襲の Ope 後の場合には回復が難渋すると言われている。今回術後著明な廃用により離床困難、食思低下をきたした患者に対し、タンパク補助食品の摂取とリハビリテーション併用により、訓練効果が予測される症例を経験した。

【症例掲示】70 代男性。糖尿病性腎症により X - 1 年 3 月より週 3 回 3 時間の血液透析を実施。X 年 3 月、重度大動脈弁狭窄症と診断。同年 4 月 5 日、大動脈弁置換術施行後、離床が進まず著明な廃用を認め、リハビリテーション目的にて当院へ転院となった。

【入院時経過】入院時より食思低下を認め、リハビリテーションでは起立性低血圧、疲労が強く長時間の離床が困難であった。ADL は中等度~全介助、MMT 両下肢・体幹 2、握力右 6.7kg、BMI18.3、上腕周径左右18cm、下腿周径(最大)左右 24cm(最小)左右 18cm、血液検査にて Alb2.6g/dl,Cr7.04㎎ /dl,TP6.1g/dl,BUN46.6mg/dl、と中等度栄養不良状態であった。週 7 回、1 日 80 分の徒手抵抗運動と立位訓練等を実施。疲労状態にも考慮し、段階的に運動負荷を設定。PT の筋力増強訓練後 30 分以内に BCAA2500mg のリハタイムゼリー 120g(株)クリニコを摂取した。現在、検査上筋力増強は認めないが、キッキングでは筋出力の向上がみられ移乗動作重度介助、普通型車椅子での離床が可能となった。

【考察】HD の運動療法を行う上で栄養管理は大事だと周知であるが、今回の様な食思不良で離床に難渋する症例においては食事と併用し、ゼリー状の BCAA を摂取することが食思増進、筋力向上に有用ではないかと予測される。現在、入院中の症例であるため当日結果を報告する。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-5-1 回復期リハ(5)プラスチック短下肢装具の装着方法による歩行への影響~ベルト位置に着目して~

山の上病院 リハビリテーション科

あつみ ゆうすけ

○渥美 裕允(理学療法士),瀧 和人,漆畑 亜弓,秋野 翼

【初めに】プラスチック短下肢装具は基本的に 3 点固定の原理に基づいてベルト位置を設定している。その為、ベルト位置に着目した報告は少ない。今回症例を通してベルト位置変更により歩行に変化が生じる結果が得られた為、若干の考察を交え報告する。

【症例紹介】60 代男性。左被殻出血にて当院回復期病棟に入院、リハビリ開始 3 か月後に装具を処方する事となった。作成時の BRS は上肢Ⅲ下肢Ⅳ手指Ⅱ。今回、立脚期の安定性と推進力向上を目的に作成を行った。処方されたのは前足部カットを施行したプラスチック短下肢装具でベルトは中足骨部・距骨部・下腿近位に装着されている。

【方法】距骨部・中足骨ベルト位置の変更や開閉による 6 通りのパターンにて歩行の観察を行った。

【結果】6 通りの中では下腿近位・遠位をベルト固定し、距骨・中足骨部ベルト固定を外すパターンで歩行の改善が見られた。改善した点は歩行中の股関節外旋減少と立脚初期の踵接地向上である。

【考察】本症例ではベルト位置の変更などにより歩行の改善をもたらした。踵接地向上は中足骨ベルトを外したパターンで確認された。これは前足部の可動性が向上し、立脚後期にてフォアフットロッカーの出現を促した事で下肢振り出し能力が向上したためであると考える。歩行中の股関節外旋減少は距骨ベルトを外す事で確認された。外した場合では初期接地~荷重応答期までの移行時間が短いことが観察され、足圧中心の外側偏移が少なくなる事が予測された。これにより、足圧中心の軌跡が母趾方向に近づいた事で股関節外旋の減少に繋がったと考えられた。今回、ベルト位置変更で歩行に良い結果が得られた。しかし、これは作成時点での適合性に不備があった事が示唆される。原因としては仮合わせ時の義肢装具士とのセッション不足により細かい調節が不十分であった事などが考えられる。今回の症例を通し義肢装具士との連携や装具に対する知識の重要性を痛感した。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-5-2 回復期リハ(5)希望を叶えた入浴自助具の開発~シャワーボールで洗身自立へ~

秩父生協病院 回復期リハビリ病棟

なかにし やすひろ

○中西 康博(介護福祉士),雪田 京子

はじめにA病棟の平均年齢は 75.7 歳 (2015 年度 ) の中、若年者 (30 代 ) の入院も見られている (2015 年度 1.2% )。若年者への入浴自立支援に向けて、介護士が自助具を開発し、洗身自立へとつなげられた取り組みについて報告する。経過A病棟での入浴介助は、基本介護士が実施している。OT と合同で初回・中間・退所前入浴評価をしているが、初回・退所前の評価がほとんどで中間評価が行われていない現状だった。入浴評価表を改定し、自立度変更に対しての中間評価が介護士・OT ともに行いやすいシステムとなった。その中で、片麻痺があり介助で洗身していた患者様のために介護士が自助具を開発し、洗身動作自立へつなげた。自助具作成方法・両端に取っ手の付いたナイロンタオル ( ループタオル ) に、球体上の洗身用具 ( シャワーボール ) を取り付ける・麻痺側臀部にループタオルの片側をはさみ、取っ手を健側で保持し、シャワーボールを利用し健側の腕を洗身する事例女性 (30 代 ) 右麻痺 ( 右上肢重度 )ループタオルのみでは左上肢 ( 健側 ) が洗うことができないが、シャワーボール付ループタオルでは左上肢まで自力で洗身が可能結果臀部にループタオルをはさむ動作・理解が可能であれば、上肢の麻痺が重度であっても健側の腕も自力で洗うことが可能となった。シャワーボールの作成方法を家族へ指導を実施し、家族から作成可能と意見が聴かれた。考察上肢麻痺が重度であるほど入浴動作では介助が必要な場合が増えてくる。年齢が若い場合は「介助されることが申し訳ない・恥ずかしい」という気持ちを抱えている。麻痺があるため仕方ないと諦めるか、自助具を工夫し自立へつなげるかで本人の希望が叶えられることを改めて理解する取り組みとなった。自立を目指す患者のために介護士が自助具を開発し、活用した上で家族へ介護指導できたことで本人の想いを実現できた。今後も患者の想いに寄り添った自助具の開発もケアに取り入れていきたいと考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-5-3 回復期リハ(5)

『自分で動きたい』重度 ROM 制限患者のボツリヌス療法~変化にあわせた PT プログラムで生活を変える~

富家病院 リハビリテーション科

ゆざわ つかさ

○湯澤 司(理学療法士),山本 寿枝子,宮崎 弥重,佐藤 舞花,多田 史生,久保 水木,三谷 俊彦,井口 真実,冨張 修平

【はじめに】当院は長期療養の重症者が多く , 多様な原因により筋緊張が亢進し , そのことで運動機能のみならず ,QOL の低下にも影響を及ぼしている症例が多い . それらの状態の改善を目的として , 関節可動域 ( 以下ROM) 制限に対しボツリヌス療法を行っている .【目的】化膿性膝関節症・重症疾患多発ニューロパチーにより ,四肢麻痺・慢性呼吸不全を呈し , 人工呼吸器管理・ADL 全介助・重度 ROM 制限を有する 70 歳代男性に , ボツリヌス療法とリハの併用を行った . ボツリヌス療法後に , 受動的機能改善に加え , 能動的機能改善が得られたことで ,ADL に変化が見られたため報告する .【方法】ボツリヌス療法実施前後の両側膝関節伸展 ROM・筋緊張評価スケール ( 以下 MAS)・筋力・機能的自立度評価法 ( 以下 FIM) と ,PT プログラムの変化を検証した .【結果】入院時の膝関節伸展 ROM は Rt-80°/Lt-90°, 両側膝関節 MAS 3, 両側膝関節伸展 MMT 1,FIM30 点であった . 膝関節の屈曲拘縮により , 重心移動が困難で介助量が増加し , 起居動作は全介助 , 移乗は 2 人介助であった . 入院から 3 カ月後に両側の半腱様筋・半膜様筋・大内転筋にそれぞれ 50 単位のボツリヌス療法を 1 回実施 . その後 , 膝の伸展 ROM は 3 ヶ月で最大 20°改善し , 筋線維が最大張力を発揮するために適した長さに近づいたため ,PT プログラムを自動運動へ切り替えた . その結果介助量が軽減し , 起居動作は中等度介助 , 移乗は 1 人介助となった . ボトックス療法実施後 3 ヶ月以降も回復は続き , 下肢での車椅子自走を獲得した .【考察】ボツリヌス療法実施後に , 自動運動を多く取り入れたこと , ご本人のできる部分を活かしたことが , 症例の ADL の変化に繋がり , 退院後も続く回復を支えていると考える . 【おわりに】ボツリヌス療法の有効期間は 2 ~ 3 ヶ月とされているが , ボトックス療法実施後 3 ヶ月以降も続く回復は , ボツリヌス療法を行い , 改善の状態に合わせたリハの実施が重要であると再認識できた .

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-5-4 回復期リハ(5)脳卒中患者に対する農作業導入への取り組み 第 1 報 ~農作業に対する職員への普及と啓発活動への取り組み~

1 美原記念病院 リハビリテーション科,2 美原記念病院 看護部,3 美原記念病院 院長

かぜはれ としゆき

○風晴 俊之(理学療法士)1,中島 崇暁 1,腰塚 洋介 1,髙橋 陽子 2,美原 盤 3

[ はじめに ] 精神科領域では作業療法として農作業を用いることがあるが、脳卒中患者に対し、農作業を行なっている病院は多くはない。当院が位置する群馬県伊勢崎市は、平成 26 年 4 月時点で高齢化率が 22% を超え、農家や家庭菜園などを行なっている家庭が多い地域性である。リハビリは、本来、社会復帰を目的に行なわれるものであり、特に生活期のリハビリは 「活動」 や 「社会参加」 の促進が求められている。しかし、病院という環境では、「活動」 や 「社会参加」 に対する取り組みは限界がある。退院直後から円滑に社会参加を促すためには、入院中からのきっかけづくりは重要であり、地域のニーズに応えた病院環境の整備が社会復帰促進の鍵と言える。そこで、平成 28 年 5 月、約 50m2 の面積の畑を敷地内に設けた。[ 取り組み ] 畑の管理はリハビリ科の責任者が担い、リハビリスタッフ、看護師、看護補助者、老健スタッフを担当として組織した。農作業の指導者は地域の方 1 名に依頼し、農具、苗、種の購入にもアドバイスを受けた。スタッフは、定期的な水やりや雑草抜き、害虫駆除などを行っている。職員は作業に対する知識も乏しいため、作業マニュアルの整備や直接的指導を行い、畑への認識と作業の標準化を試みた。[ 現状 ] 現在、ほとんどの作業はスタッフが担い、1 ヶ月で実をつけるまでに至った。楽しみに畑まで見に来る患者もいる。治療として作業を促すためには、まずはスタッフが農作業や作物について知識をつける必要があり、その第 1 段階の時点である。今後、患者への運用をシステム化し、活用していく予定である。[ 考察 ]ADL は動作特性上、自ら必要性を感じて行うが、それ以外の活動では、患者の行動意欲が必要であり、その促しに難渋することは少なくない。病院に設けた畑は、患者の意欲を引き出すこと、ならびにスタッフに対し、「機能」 から 「活動」 へ視点変換する教育にも有用であると考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-5-5 回復期リハ(5)院内外の環境を最大限に利用したリハビリテーションの効果

千里リハビリテーション病院

わだ ゆか

○和田 有香(介護福祉士),小山 さおり,橋本 康子

【はじめに】当院は回復期リハビリテーション病院であり「リハビリテーションリゾート」をコンセプトにしている。病床数は120床(内特別室5室)回復期施設基準位1を取得している。病室内には日常生活に必要な備品を常設しており患者の日常生活活動作に合わせ院内の環境・備品類や周辺環境を最大限に利用したリハビリテーションを提供している。今回は病院内の環境・設備と周辺環境を中心に紹介するとともに、その環境を利用してリハビリテーションをおこない効果が得られた症例を報告する。

【院内紹介】病室はほぼ個室であり洋室・和室にわかれている。室内にはトイレや洗面台、アメニティーグッズ、ポットやティーセットなどの備品を常設している。各ユニット内には共有スペースの座敷、リビングがありリビングには調理訓練ができるよう冷蔵庫・アイランドキッチン・調理器具などを揃えている。ユニット入口の玄関では靴の脱ぎ履きを 1 日に何度も行い一般的な住宅に近い環境となっている。また、別棟の特別室は1LDK ~2LDK の間取りになっており、寝室・リビング・キッチン・浴室・トイレが設置されており、より自宅に近い環境となっている。院内の所々には外気に触れられるテラスや渡り廊下、いつでも利用可能なブックコーナー、ガーデンがある。

【症例紹介】症例 : 87歳 男性 右心原性脳塞栓症 左完全片麻痺 摂食・嚥下障害 左半側空間無視入院時:車椅子移動 おむつ シャワー浴 更衣全介助 起居移乗全介助

【おわりに】院内外の環境をつかってどのようなリハビリテーションがおこなわれているか、またどのような効果が得られるのかを検証した。その結果病院全体を使ってリハビリがおこなわれており、リハビリテーション効果に大きく影響していることがわかった。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢8-5-6 回復期リハ(5)回復期リハビリテーション病院で趣味活動を再獲得した一症例

1 新戸塚病院 リハビリテーション科,2 新戸塚病院

よしかわ ゆうき

○吉川 勇気(理学療法士)1,池谷 聡毅 1,鳥山 克佳 2,橋爪 義隆 2

【はじめに】入院でのリハビリにおいては ADL の獲得が優先され、趣味や生きがいまで及ばない事が少なくない。今回 ADL を早期獲得した患者の趣味活動に対し、入院中から生活を意識した関わりを持つ事で社会参加に繋げられた為報告する。

【症例紹介】 70 歳代男性、平成 27 年 3 月に視床出血発症。同年 5 月当院入院。病前は片道 3km の公園での釣りが日課。妻は地域活動の為日中は外出していた。入院時の移動は歩行で屋内自立、屋外は監視。片麻痺機能検査は左上下肢、手指共にⅥレベル、左足関節内反位の痙縮、左前足部の表在感覚鈍麻が認められた。左同名半盲、注意障害を認め、環境変化や疲労でふらつきが認められた。また病識も薄く、今すぐに退院して釣りに行くという発言があり、不安で釣りに一人では行かせられないと思う家族との認識の差が認められた。

【経過と介入方法】介入 3 週目に公園に外出練習を行い、対向者と接触しそうな場面、階段や細い道等でふらつく場面を動画で確認し、課題を共有した。介入 4 週目まで体性感覚を利用した機能練習を実施。屋外では慣れている道以外でふらつきやすいため、介入 5 週目より公園への道に類似した屋外練習を実施。具体的には道幅や傾斜角度の選択、不整地歩行や丸太の階段昇降練習を行った。介入 10 週目、2 回目の外出練習では妻も同行し、転倒リスクの高い場所や注意点の指導行った。また自宅への外泊、外出を 3 回程度支援した。介入11 週目自宅退院。退院後7日目、妻が 1 度釣りに同行。現在では一人で釣りの日課を楽しんでいる。また妻も地域活動等の自分の時間を楽しんでいる。

【考察】趣味活動とは生きがいであり、生活にはりを持たせるものである。入院中に ADL だけではなく趣味活動を再獲得することで自信になり、退院後の活動量、身体機能低下の予防にも繋がるのではないかと考える。また患者の生活は、家族の生活の一部だという事も念頭において GOAL 設定をする必要があると考える。