合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 roh kmno4 roh o...

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合成デザイン(つづき) アルデヒドを作る ケトンを作る カルボン酸を作る エステルを作る 塩化アシルを作る アミンを作る 多段階合成の実際 1

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Page 1: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

合成デザイン(つづき)アルデヒドを作る

ケトンを作る

カルボン酸を作る

エステルを作る

塩化アシルを作るアミンを作る多段階合成の実際

1

Page 2: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

アルデヒドを作る

一級アルコールの酸化

オゾン分解ー還元的後処理

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一級アルコールの酸化によるアルデヒドの合成

PCC =

※ DMSO は溶媒ではなく酸化剤

PCC 酸化

R OHPCC

R H

ONH

CrCl O

O O

R OH

Me2SO

R H

O(COCl)2

Swern(スワーン)酸化

(クロロクロム酸ピリジニウム)

Me2SOH3C S CH3

O= DMSO =

(COCl)2 =Cl Cl

O

O

※ 普通のクロム酸酸化ではカルボン酸になってしまう

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オゾン分解(還元的後処理)によるアルデヒドの合成

オゾン分解-還元的後処理

R1

R2

R3

H

(1) O3(2) Me2S R1

R2O +

R3

HO

※ 炭素ー炭素二重結合が切断され、カルボニル基2個になる

※ sp2炭素に H がついている場合、還元的後処理では C‒H 結合がそのまま残ってアルデヒドが得られる

Me2S = H3C S CH3ジメチルスルフィド

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ケトンを作る

二級アルコールの酸化

オゾン分解(還元的処理)

アルキンの水和

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酸化反応によるケトンの合成

R

OHH2CrO4

R R'

O

R'

クロム酸酸化

オゾン分解-還元的後処理

R1

R2

R3

R4

(1) O3(2) Me2S R1

R2O +

R3

R4O

※ 一級アルコールと違って「途中で止める」必要がないので単純なクロム酸酸化で十分

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Page 7: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

アルキンの水和によるケトンの合成

R H

H2OHgSO4, H2SO4 R

H

H

HO

R

H

H

OH

R R

H2OH2SO4 R

R

H

HO

R

R

H

OH

末端アルキンの水和

対称内部アルキンの水和

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Page 8: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

カルボン酸を作る

一級アルコール・アルデヒドの酸化メチルケトンの酸化(ハロホルム反応)芳香環に結合したメチル基の酸化アルケンのオゾン分解-酸化的後処理

炭素-炭素結合生成を伴うカルボン酸の合成エステルの加水分解

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一級アルコール・アルデヒドの酸化

R OHKMnO4

R OH

O

R H

O KMnO4R OH

O

KMnO4 酸化

※ クロム酸でも可能だが、実施例は KMnO4 の方が多い(たぶん毒性の問題)

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Page 10: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

メチルケトンの酸化によるカルボン酸の合成

O (1) Br2/NaOH(2) H+

OH

O

ハロホルム反応

※ ケトンのα炭素がハロゲン化され、CBr3‒ として脱離

※ カルボニル基の一方がメチル基、もう一方がα水素を持たない炭素であることが必要

OBr2–OH CBr3

O–OH OH

O

CBr3+ O

O

+ HCBr3

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芳香環に結合したメチル基の酸化

CH3 OH

OKMnO4

※ 芳香環の隣の炭素(ベンジル位)で酸化が起きる

※ かなり強い条件が必要。他に「酸化を受ける」置換基がある場合は適用できない。(アルコール、アミン、アルデヒド、アルキルケトンなど)

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オゾン分解(酸化的後処理)によるカルボン酸の合成

オゾン分解-酸化的後処理

※ 炭素ー炭素二重結合が切断され、カルボニル基2個になる

※ sp2炭素に H がついている場合、酸化的後処理では C‒H 結合が酸化されてカルボン酸が得られる

R1

R2

R3

H

(1) O3(2) H2O2 R1

R2O +

R3

OHO

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炭素-炭素結合生成を伴うカルボン酸の合成Grignard 試薬と CO2 の反応

SN2によるシアノ基の導入とニトリルの加水分解

マロン酸エステル合成

R MgBr

(1) CO2(2) H2O

RO

OH

R BrNaCN

R CNH+. H2O

RO

OH

OEtEtO

OO (1) NaOEt(2) R–Br

OEtEtO

OO

R

(1) NaOH(2) H+, (3) Δ

OH

OR

※ 炭素を1個増やす

※ 炭素を1個増やす

※ 炭素を2個増やす13

Page 14: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

エステルの加水分解によるカルボン酸の合成

R OR'

O (1) NaOH(2) H+

R OH

O

※ カルボン酸をエステルで「保護」して、あとでカルボン酸に戻す

※ 酸触媒でも可能だが、塩基性条件の加水分解(けん化)が一般的

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Page 15: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

カルボン酸誘導体を作る

エステルの合成

塩化アシルの合成

アミドの合成

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Page 16: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

エステルの合成カルボン酸とアルコールの反応

塩化アシルとアルコールの反応R OH

O H+, R'OH

R OR'

O

R OH

O SOCl2

R Cl

O R'OH

R OR'

O

R OH

O(1) NaOH(2) R'–Br

R OR'

O

カルボン酸の共役塩基とハロゲン化アルキルの反応

※ 単純なカルボン酸に限る

※ 最も一般的

※ 一級・二級のハロゲン化アルキルに限る (SN2)

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Page 17: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

塩化アシルの反応

R OH

O SOCl2

R Cl

O

※ 一般性高い

※ カルボン酸誘導体の合成のほか、Friedel‒Crafts アシル化にも使われる

カルボン酸と塩化チオニルの反応

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Page 18: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

アミドの合成塩化アシルとアミンの反応

酸無水物とアミンの反応

R OH

O SOCl2

R Cl

OR'NH2Et3N

R NH

OR'

R' NH2Et3NAc2O

H3C NH

OR'

※ 一般性高い

※ 単純なカルボン酸限定(Ac2O = 無水酢酸はよく使われる)※ 複雑なカルボン酸だと、無水物を作ることが難しい

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アミンを作る

イミン・ニトリルの還元

芳香族ニトロ化合物の還元

アンモニア・アミンのアルキル化

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Page 20: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

NH

O

O

NaHN

O

O

R BrN

O

O

R

H+H2O

R NH2+

COOH

COOH

アンモニア・アミンのアルキル化によるアミンの合成アンモニア・アミンとハロゲン化アルキルの反応 (SN2)

R Br

NH3(excess) R NH2

R' BrR NH2(excess) R

NHR'

※ 一級・二級ハロゲン化アルキル限定(SN2 だから)※ 単純なアルキル基の場合に使う

一級アミンの Gabriel (ガブリエル)合成

※ 一級アミンを選択的に合成

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Page 21: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

還元反応によるアミンの合成イミンの NaBH4 還元

ニトリルの LiAlH4 還元

芳香族ニトロ化合物の接触水素添加

R R'

NR'' (1) NaBH4

(2) H+

R R'

NR''H

H

R C

(1) LiAlH4(2) H+

N R C NH

H

H

H

HNO3H2SO4

NO2 H2, Pd/C NH2

※ イミンはアルデヒド・ケトンとアミンから合成

※ ニトリルはハロゲン化アルキル+シアン化物イオンなどで合成

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Page 22: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

ClCOOHO2N

(a) (b) (c) (d)

COOHCHO

【練習問題】ベンゼン、トルエン、炭素数4以下のアルコールまたはカルボン酸(ジオール・ジカルボン酸も可)、および任意の無機試薬を用いて、以下の化合物を合成する方法を提案しなさい。ただし、有機試薬としてmCPBA, PCC, BPO, PPh3 は用いてよい。

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Page 23: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

Cl OH OBrMg+

O OH

BrMg Br HO

三級ハロゲン化アルキル⇒三級アルコール

三級アルコール⇒ケトン+Grignard

ケトン⇒二級アルコール

Grignard⇒ハロゲン化アルキル

一級ハロゲン化アルキル⇒一級アルコール

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Page 24: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

HOPBr3

Br BrMgMg

OH O

H2CrO4

BrMgH3O+

OH

(1)(2) HCl

Cl

一級アルコール→一級ハロゲン化アルキル

ハロゲン化アルキル→Grignard

二級アルコール→ケトン

ケトン+Grignard→三級アルコール

三級アルコール→三級ハロゲン化アルキル

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Page 25: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

COOHO2N CH3O2N

COOH

CH3

芳香族カルボン酸⇒芳香族+メチル基

芳香族ニトロ化合物⇒芳香族?

芳香族ニトロ化合物⇒芳香族

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Page 26: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

CH3 CH3O2N

HNO3H2SO4 KMnO4

COOHO2N

芳香族→芳香族ニトロ化合物

芳香族+メチル基→芳香族カルボン酸

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Page 27: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

COOHCOOEt

PPh3 O

H+

O

H+

Ph3PCOOEt

OH

H+

BrCOOEt

アルケン⇒ホスホニウムイリド+アルデヒド

これが難しい…

アルケン⇒ホスホニウムイリド+アルデヒド

難しくはないが未学習…

アルデヒド⇒一級アルコール

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Page 28: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

COOHCH3 COOEt

O

H+

COOH COOEt

OEtO

COOEt

OEtOO

H+

α,β-不飽和カルボン酸⇒アルデヒド+

α水素を2個持つエステル

置換マロン酸エステル⇒アルデヒド+マロン酸エステル

※ うまくいかない(アルデヒドのエノラートが優先的にできる)

カルボン酸⇒置換マロン酸エステル

COOEt

COOEt

COOH

COOH O

H

OHエステル⇒カルボン酸

アルデヒド⇒ 一級アルコール

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Page 29: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

OH O

HPCC

COOH

COOH

EtOHH+ COOEt

COOEtO

H, –OEt COOEt

COOEtH3O+

Δ

COOH

一級アルコール→アルデヒド

カルボン酸→エステル

アルデヒド+マロン酸エステル

→置換マロン酸エステル

置換マロン酸エステル→カルボン酸

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Page 30: 合成デザイン(つづき)8 一級アルコール・アルデヒドの酸化 ROH KMnO4 ROH O RH O KMnO4 ROH O KMnO4 酸化 ※ クロム酸でも可能だが、実施例は

CHO CH2OH CH2Br

CH3 CH3

アルデヒド⇒ 一級アルコール

一級アルコール⇒ 一級ハロゲン化アルキル

ベンジル位のハロゲン化アルキル⇒芳香環に直結したアルキル基

芳香環上の t-ブチル基⇒芳香環(FCアルキル化)

CHO CHO※ うまくいかない・不活性化置換基を持つ芳香環の FC アルキル化は困難・メタ配向性

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OHHCl

Cl

CH3 CH3

Cl (1 eq.)AlCl3 CH2Br

Br2, hv

CH2OH–OH

CHOPCC

三級アルコール→ 三級ハロゲン化アルキル

芳香環のFCアルキル化→ 芳香環上の t-ブチル基

芳香環に直結したアルキル基→ ベンジル位のハロゲン化アルキル

一級ハロゲン化アルキル→ 一級アルコール

一級アルコール→アルデヒド

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