クレームを未然に防ぐ!...

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2当院は,秋田市北部の中核病院として の役割を担う二次救急指定病院である。 看護部は,「生命の尊重と人間愛を大切 にした『患者さん中心の看護』『患者さ んに寄り添う看護』を誇りと責任を持ち 実践します」を理念に,看護の質の向上 に努めている。 外来の現状と問題 診療体制は,一部の外来を除き予約制 を導入しているが,診療科や担当医師に よっては予約枠を越えているため,待ち 時間が生じている。各診療科は予約患者 を優先し,新患や予約外患者は予約の合 間に診察をしたり,予約患者が少ない医 師へ診察を依頼したりするなどで対応を している。 外来では,看護師が日々患者から受け るクレームや意見に対して,試行錯誤し ながら改善に努めており,少しずつでは あるが患者満足度の向上につながってい る(図1)。 本稿では,患者からのクレームや意見 に対する外来の取り組みを紹介する。 外来に多く寄せられる クレームや意見 ・毎回採血までに時間がかかる。 ・待ち時間が長い。 ・目安になるものが欲しい。 ・順番が近付いたら,知らせるようなシ ステムを導入すべきだ。 ・受け付けをしてからどこへ行けばよい のか分からない。 ・看護師が忙しそうで話しかけられない。 改善に向けた取り組み 中央処置室では,小児科を除く診療科 の患者の採血,注射,点滴,輸血,負荷 試験検査をすべて行っていた。中央処置 室の受付では,診察前採血患者が長蛇の 列をつくって,待合室廊下を塞ぎ,車い クレームを未然に防ぐ! 外来看護師の接遇・患者対応 戸田恭子 JA秋田厚生連  秋田厚生医療センター 看護師長 1979年秋田県立衛生看護学院卒業,秋田組合総合 病院(現・秋田厚生医療センター)入職。2006年看護師長就任,外 来,内科病棟,退院支援を経験。2010年認定看護管理者教育課程セ カンドレベル修了。2012年より外来看護師長として中央処置室に勤 務,現在に至る。 病 院 概 要(2017年2月現在) 病床数:479床(一般421床,感染症2床,HCU6 床,地域包括50床) 診療科:25科  1日平均外来患者数:1,083人 1日平均入院患者数:427人 平均在院日数:14.6日  病床稼働率:90.0% 指定および施設基準 :救急告示病院,災害拠点病院, 第二種感染症指定医療機関,基幹病院型臨床研修 病院,地域がん診療連携拠点病院,入院基本料7 対1看護配置 職員数:職員852人,うち看護職員501人(保 健 師 8 人,助 産 師26人,看 護 師349人,准 看護師17人,看護補助者54人)(2017年2 月28日現在) 〈外来概要〉 看護職員数:59人(助産師4人,看護師42人, 准看護師4人,看護補助者9人) 勤務体制:2交代制(救急センターの当直,遅 番,日直,半日直) 継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.2 093

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Page 1: クレームを未然に防ぐ! 外来看護師の接遇・患者対応病院概要(2017年2月現在) 病床数:479床(一般421床,感染症2床,HCU6 床,地域包括50床)

特集2

患者からの苦情・クレームへの対応

特集2

患者からの苦情・クレームへの対応

 当院は,秋田市北部の中核病院として

の役割を担う二次救急指定病院である。

看護部は,「生命の尊重と人間愛を大切

にした『患者さん中心の看護』『患者さ

んに寄り添う看護』を誇りと責任を持ち

実践します」を理念に,看護の質の向上

に努めている。

外来の現状と問題 診療体制は,一部の外来を除き予約制

を導入しているが,診療科や担当医師に

よっては予約枠を越えているため,待ち

時間が生じている。各診療科は予約患者

を優先し,新患や予約外患者は予約の合

間に診察をしたり,予約患者が少ない医

師へ診察を依頼したりするなどで対応を

している。

 外来では,看護師が日々患者から受け

るクレームや意見に対して,試行錯誤し

ながら改善に努めており,少しずつでは

あるが患者満足度の向上につながってい

る(図1)。

 本稿では,患者からのクレームや意見

に対する外来の取り組みを紹介する。

外来に多く寄せられる クレームや意見・毎回採血までに時間がかかる。

・待ち時間が長い。

・目安になるものが欲しい。

・順番が近付いたら,知らせるようなシ

ステムを導入すべきだ。

・受け付けをしてからどこへ行けばよい

のか分からない。

・看護師が忙しそうで話しかけられない。

改善に向けた取り組み 中央処置室では,小児科を除く診療科

の患者の採血,注射,点滴,輸血,負荷

試験検査をすべて行っていた。中央処置

室の受付では,診察前採血患者が長蛇の

列をつくって,待合室廊下を塞ぎ,車い

クレームを未然に防ぐ!外来看護師の接遇・患者対応

戸田恭子 JA秋田厚生連 秋田厚生医療センター

看護師長1979年秋田県立衛生看護学院卒業,秋田組合総合病院(現・秋田厚生医療センター)入職。2006年看護師長就任,外来,内科病棟,退院支援を経験。2010年認定看護管理者教育課程セカンドレベル修了。2012年より外来看護師長として中央処置室に勤務,現在に至る。

◆病院概要(2017年2月現在)病床数:479床(一般421床,感染症2床,HCU6床,地域包括50床)

診療科:25科  1日平均外来患者数:1,083人1日平均入院患者数:427人平均在院日数:14.6日  病床稼働率:90.0%指定および施設基準:救急告示病院,災害拠点病院,第二種感染症指定医療機関,基幹病院型臨床研修病院,地域がん診療連携拠点病院,入院基本料7対1看護配置

職員数:職員852人,うち看護職員501人(保健師8人,助産師26人,看護師349人,准看護師17人,看護補助者54人)(2017年2月28日現在)

〈外来概要〉看護職員数:59人(助産師4人,看護師42人,准看護師4人,看護補助者9人)勤務体制:2交代制(救急センターの当直,遅番,日直,半日直)

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.2 093

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すの患者や高齢患者の家族からクレーム

が聞かれた。

 また,検査科担当職員が順番に5人ず

つ呼び出し,中央処置室へ案内していた

が,室内には採血カウンターと点滴用

ベッドが設置されていたため,スペース

が狭く混雑し,効率が悪かった。

 さらに,採血だけの患者も,注射,点滴

の患者も受け付け順に呼び入れていたが,

看護師は注射や点滴の薬剤の確認や準備

に時間がかかり,そのために採血する看護

師も不足し,待ち時間につながっていた。

◦中央処置室の改革音声付き番号呼び出しディスプレイの設置 中央処置室での待ち時間を少しでも短

縮するために検査部門と話し合いを重ね

た結果,待合ホール,受付係用,採血係

用に3台の音声付き番号呼び出しディス

プレイを設置した。これは,待っている

間の患者の精神的不安の軽減,患者と職

員の情報共有につながっている(写真1)。

看護部からの採血応援 以前は,採血患者数が多くなると看護

部に応援要請をしていたが,現在では毎

月の予定表に組み入れられ,患者が集中

する時間帯に毎日採血応援の人員が確保

されている。

点滴室の開設 中央処置室の混雑を解消するため,

2014年6月に点滴室が開設された。こ

れにより,点滴室では注射と点滴が施行

され,中央処置室では採血や輸血,午後

の自己血採血が施行されることとなっ

た。また,音声付きの番号呼び出しディ

スプレイとボランティアの協力によりス

ムーズな誘導が可能となった。

写真1 音声付き番号呼び出しディスプレイの設置

待合ホール 中央処置室

患者の精神的不安の軽減,患者と職員の情報共有につながっている。

中央処置室内ディスプレイ中央処置室内ディスプレイ

スタッフ操作用パソコン

スタッフ操作用パソコン

外来待合ホールディスプレイ外来待合ホールディスプレイ

図1 当センター患者満足度調査結果(外来)

2013年度

2014年度

2015年度

2016年度

当院の職員の全体的な印象・対応はいかがでしたか?

0 20 40 60 80 100

36.3%

50.9%

53.0%

57.6% 40.4%

43.9%

41.8%

48.2%

12.9% 1.6%

1.0%

6.3% 0.4%

0.6%

3.0%

2.0%

■とても良い(満足) ■まあまあ良い(満足) ■どちらとも言えない ■やや悪い(不満) ■とても悪い(不満)

(%)

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.2094

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◦診察案内表示システムの導入 これまでも,いつ呼ばれるのか,今何

番まで呼ばれているのか,各診療科の看

護師が診察の進行状況をこまめに伝えた

り,長時間待っている患者へ声かけをし

たりしていた。また,手作りで番号や時

間の表示をするなど工夫を凝らして対応

していたが,なかなか改善につながらな

かった。

 そこで,患者に診察の進行状況が分か

る方法を協議した結果,2015年8月,

待ち時間による患者のいらいらの解消,

院内の混雑緩和を目的に診察案内表示シ

ステムが導入された。各診療科の待合

ホールとエントランス,そしてレストラ

ンに設置されたことにより,患者が外来

のどこにいても自分の順番を確認できる

ようになった(写真2)。

 また,登録した人には携帯電話へメー

ルで知らせる機能もあり,少数ではある

が利用されており,待ち時間の短縮につ

ながっている。

◦医療コンシェルジュの導入 総合案内には以前,各部署の看護師長

が交代で受診科の相談や入院,新患,再

来の案内を行っていたが,2015年4月

より医療コンシェルジュ3人を起用し

た。エントランスホールを中心に,初め

て受診する患者や病院に不慣れな患者に

対して,移動場所や問診票の記入方法,

自動再来受付機の操作方法の説明,診療

科との連絡などを担当している(写真

3)。また,各外来待合室をラウンドし

て,支援の必要な患者への声かけや車い

す移動のサポートも行っている。

 導入当初,患者からは「ホテルじゃあ

るまいし」「ボランティアが居るのに必

要か」など否定的な意見もあったが,優

しく丁寧な対応と笑顔での案内が好評

で,今ではなくてはならない存在になっ

ている。

◦外来案内パンフレットの作成 エントランスホールには以前から外来

診療の流れを掲示していたが,患者から

「受け付けをしてから次はどこへ行けば

よいのか分からず迷う」という声があっ

た。職員やボランティアが案内していた

が,それでも周知には不十分であった。

 そこで,院内患者サービス向上委員会

の協力の下,パンフレット「外来のご案

写真2 診察案内表示システムの導入

いつ呼ばれるのか,今何番まで呼ばれているのか,診察の進行状況が分かる。

写真3 医療コンシェルジュの導入

優しく丁寧な対応と笑顔での案内が好評。

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.2 095

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内」を作成した。受け付けから診療まで

の流れ,診療の流れ,診療終了後の流れ,

外来案内図や病院内設備,医療費や介護

サービスの相談窓口,病院駐車場などに

ついて詳しく明記されており,初診患者

に手渡し,待ち時間を利用して読んでも

らっている。

◦環境の整備 待ち時間に対するストレスを軽減する

ための環境としては,絵画の展示のほ

か,くつろげるスペースとして中庭を開

放している。中庭は1階レストラン入り

口横から出入り可能で,いすやテーブル

が設置されており,軽食を持ち込んで休

憩することができる。また,散歩もでき

るよう整備されている(写真4)。

 さらに,待合ホールの環境改善として

は,キッズコーナーや外来待合図書を設

置した(写真5)。また,5カ所の待合

ホールに「車いす,ストレッチャー優先

スペース」であることを示すマークを設

置し,来院患者・家族に利用してもらっ

ている(写真6)。

◦入院支援の取り組み 外来では,治療や手術,検査により入

院が必要な患者への入院説明を診療科ご

写真4 中庭の開放

いすやテーブルが設置され,散歩もできるよう整備されている。

写真5 待合室の環境改善

待ち時間に対するストレスの軽減に一役買っている。

キッズコーナーの設置外来待合図書の設置

写真6 「車いす,ストレッチャー優先スペース」で あることを示すマークの設置

車いすやストレッチャーの利用者の待ち時間を少しでも快適に。

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.2096

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とに行っていた。診察介助の合間に入院

に必要な書類をそろえ,休薬確認などの

準備をするため,待ち時間が発生してい

た。また,説明中も,他の対応のために

説明を中断しなければならないことが

度々あり,患者・家族からの質問や相談

にじっくりとかかわることができない状

況が続いていた。

 そこで,2015年4月から担当者を配

置し,少しでも不安が軽減され,安心・

安全に入院生活を送れるようサポートす

ることを目的に入院支援に取り組んだ。

担当者は,入院決定後,患者・家族に対

して必要な情報を聴取しながら,入院に

関する説明を行うようにした。

 当初は説明場所の確保が難しく,エン

トランスホールの一角で行っていたが,

翌年からは地域連携センター内に入退院

支援室が設置され,専任の看護師が入院

予定者への事前説明を行う体制が整っ

た。患者が入院に際しての不安や心配事

を相談できるようになり,各診療科での

待ち時間の短縮にもつながっている。

外来看護師の接遇教育 外来看護小集団チームは6チームに編

成されており,その中の患者サポート・

接遇チームは診察案内表示システムの活

用方法を検討したり,外来の接遇向上に

向けてスタッフの身だしなみ・標準話法

(電話編)・接遇をチェックリストで評価

したりしている。

 接遇チェックリストの内容は次のとお

りである。

①待合室の患者様に気配り・目配りして

いますか?

②院内で明るいあいさつができています

か?

③笑顔で対応していますか?

④返事・うなずきをしっかり行っていま

すか?

⑤相手の理解に合わせて分かりやすい説

明をしていますか?

⑥患者様の視線などを意識していますか?

⑦忙しくても普段と同じ対応ができてい

ますか?

⑧患者様の立場を想像しながら応対して

いますか?

⑨「どうぞ,お大事に」は患者様の方を

見ながら言っていますか?

 これらの内容について,できる○,大

体できる△,できない×の3段階で自己

評価を行っている。定期的に実施するこ

とで,日々の行動を振り返ることがで

き,スタッフ一人ひとりにとって接遇へ

の意識付けになっている。

 また,院内の接遇教育委員会が発刊し

ている「接遇図鑑」を参考に学習を行っ

ている(写真7)。図2に,「接遇図鑑」

から「おわび(ク

レーム対応)」の

内容を紹介する。

写真7 院内接遇教育 委員会発刊の 接遇図鑑

接遇を学ぶ際の教材として活用。

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.2 097

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図2 「接遇図鑑」より抜粋:おわび(クレーム対応)

おわび(クレーム対応)

クレーム患者様をファンに変える5つのステップ

 おわびやクレームへの対応は気が重いものです(その原因に自分の責任があってもなくても)。 しかし,クレーム患者様は,逆にあなたのファンになってくれる候補者でもあります。誠意ある対応を行い,ぜひあなたのファンをたくさんつくってください。 トラブルやクレームは必ず上司にホウレンソウ(報告・連絡・相談)を。

1.患者様との信頼関係をつくる●まずは,不愉快な思いをさせてしまったことに対して,丁寧に素直に謝罪の意を表明しましょう。●必ず相手のお名前を確認しましょう。●謝罪する時の姿勢は,相手に誠意が伝わるように最敬礼(45°のおじぎ)をしましょう。●「受け止めてから返す」が基本です。原因に直接関係がなくても,病院の代表として対応しましょう。 例)「まだですか? いつまで待てばいいんですか!」   →悪い例 「今日は休み明けで混んでいます。もう少しお待ちください」

良い例 「お待たせして申し訳ありません。今日は休み明けで混んでおります。受け付けは何番でしたか? 確認してまいりますので,少しお待ちいただけますか」

2.状況を把握する●訴えを傾聴しましょう。否定的な発言は禁物です。相手の思いに理解を示しましょう。 「~ということですね」「そうですか」「おっしゃるとおりです」●オープン質問を用いましょう。答えが「はい」「いいえ」とならないような質問の仕方で,相手自身から話してもらうようにして情報を引き出しましょう。

4.クレームへの感謝とフォロー●クレームをいただいたことに感謝しましょう。大抵の人はクレームや苦情を勇気を振り絞って訴えています。「貴重なご意見をありがとうございました」「今後はこのようなことがないように努力いたします」「ご意見をいただいたお陰で,当院の改善につながります」

5.クレームをチャンスとして生かす●クレームの内容をその部署で共有し,原因を検討し,解決のためにフィードバックしましょう。次回来院された時に窓口で「先日は大変失礼いたしました」と言われれば,満足度はアップします。クレームをくださった方は一転してファンとなってくださるでしょう。

3.問題を解決する●クレーム処理は迅速が第一です。どんなに多忙であっても,問題への対処を第一に考えましょう。たとえ結果が期待したものでなくても,一生懸命に対応したことが伝われば問題解決につながります。

●興奮している相手には3つの「変える」が効果的です。人を変える(担当者や上司に代わる),場所を変える(待合室から相談室に移動する),時間を変える(対応日を変える,時間を置く)「担当の者を呼んでまいりますので,こちらで少々お待ちいただけますか」「上の者と相談し後日連絡いたしたいと思いますが,よろしいでしょうか」

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.2098

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報告・連絡・相談 各診療科でクレームが発生した場合は,

必ず看護師長へ報告している。自分の対

応で良かったのか,患者・家族が説明に

納得したのか,スタッフ間で状況を共

有・検討し,次回からの再発防止に努め

ている。

 待合ホールで大声で怒鳴ったり,興奮

したりしている患者は,診察室や周囲の

患者への悪影響もあることから,対応が

難しいクレームについては医療安全対策

室や警察OBの警備員への連絡体制を整

備している。また,医療安全研修会では,

「コンフリクト・マネジメント〜患者さ

んと医療者の齟齬をなくすために」を

テーマとした研修を全員が受講し,患者

対応について演習し,実践に生かすよう

取り組んでいる。

今後の課題 クレームの予防には,アメニティーや

システムの充実はもちろんだが,外来を

受診する患者・家族の気持ちにどれだけ

寄り添うことができるかが大切であり,

それが安心と満足感につながる。さまざ

まな場面で,その人に合った「気配り」

や「配慮」が「自分のことを気にかけて

くれている」という思いを生み,信頼関

係が構築されると考える。

 また,待ち時間に対するクレーム(意

見)は,私たち医療者側に「気づき」を

与えてくれる。クレームをチャンスとし

て生かし,スタッフ間で共有し,改善に

向けて検討することが大切である。

 患者・家族は,外来受け付けをしてか

ら診察,検査,会計が終了するまでに院

内でさまざまな医療者とかかわることか

ら,全職員が同じ目線で患者満足度の向

上に向けて取り組む必要がある。丁寧な

対応,明るく元気なあいさつと笑顔など,

まずはできることから始め,患者と医療者

とのより良い関係を築き上げていきたい。

 今回の執筆にあたり,来院され

る患者・家族の目線に立ち,寄り

添った看護の大切さを改めて感じています。

今後も真摯に向き合い,他部門との連携を

強化し情報を共有しながら,職員の統一し

た対応を心掛けていきたいと思っています。

執筆後記

継続看護を担う体質強化 外来看護 Vol.22 No.2 099