タイルカーペット洗浄システム「パイルリセッター」 だれで...
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きます。パイルを構成する繊維は密集しており、しかも歩行によってつぶれた状態にでもなれば、いったんパイルの奥まで入り込んでしまった汚れを除去するのはとても難しくなります。
一長一短ある各種のクリーニング技術 カーペット床管理の基本は、次の事項がポイントです。①日常清掃でバキュームがけを丁寧に行い、持ち込まれた土砂類の汚れをできるだけ除去する②そのためにも、入口付近にマットを敷設し、除塵をしっかり行う③付着したしみ汚れを放置せずすぐに処置する④適切な方法により定期的にクリーニングを行い、パイル奥まで入り込んだ汚れを除去し、美観を回復させる
タイルカーペットは、日常作業をどんなに手厚くしても、④の定期的なクリーニングが必要です。
管理が難しいタイルカーペット
タイルカーペットは現在、主要な床材の一つとして市場に認知され、オフィスビルのみならず、ショッピングモール、公共施設、医療施設など、さまざまな場所で広く使用されています。 その理由として、歩行感がよい、転倒しても安全、防音効果がある、断熱性に優れるなど、カーペットが有するさまざまな特長があげられます。そのため、タイルカーペットを多用する傾向は、今後も変わることなく、むしろ増えていくものと思われます。 一方で、清掃する側から見ると、タイルカーペットのメンテナンスは難しく、簡単に管理できるものではありません。 タイルカーペットは、パイルなどの立体構造でできており、人の歩行によって発生した汚れは、パイル表面に付着するだけでなく、パイル内部に徐々に蓄積されてい
そのため、これまで各種クリーニング技法が開発され、システム化もされてきました。 しかし、どんな手法や洗浄システムにせよ、パイル内に蓄積された汚れを完全に除去することはできません。それどころか、クリーニングに使用した洗剤を残留させてしまうことで、逆に汚れの付着を促進してしまう場合もあるのです。 もっとも有効な方法は、多量の水を使用して洗浄することです。ところが汚水の回収には限度があり、残った水分の乾燥にどうしても時間がかかってしまいます。とくにオフィスビルのような利用頻度の高い場所では、限られた作業時間の中で効果的に洗浄すること
ビルクリ資機材情報
シーバイエス㈱ソリューション開発本部マシン&ツールグループ 宮澤宏明
タイルカーペット洗浄システム「パイルリセッター」
だれでも、どこでも、剥がして洗って新品同様の仕上がりに!
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は非常に難しいのです。 逆に、早く乾燥する手法は、十分な洗浄力が得られないなどのデメリットが生じます。このように、各種あるクリーニング技法は一長一短あり、完璧なクリーニング手法が存在しないのが実情です。
7年で廃棄されるタイルカーペット その結果、タイルカーペットの現場では、こんな悪循環が生まれています。
メンテナンスによってきれいにならないため、現状ではタイルカーペットの張り替え周期は7年に1度とされています。張り替えに必要なコストは非常に莫大です。 例えば、20階建てオフィスビル共用部分のタイルカーペット張り替えには、約1,500~2,000万円かかると推測されます。また、張り替えた使用済みタイルカーペットは産業廃棄物として処理する必要があり、年間約10万トンの産業廃棄物が発生しているといわれています。 このような悪循環を、新しいクリーニング手法により解消できないかと考え、開発に踏み切ったのが、今回ご紹介する「パイルリ
セッター」なのです。
開発のテーマはコンパクト化と省電力化 パイルリセッターの前身は、本誌2013年4月号で取り上げられたバルチャーオートZERO(以下、
「ゼロ」という)です。取り外しができるタイルカーペットの利点を生かし、別の場所で豊富な水量で洗い、水切りもしっかり行うというものでした。 タイルカーペットを剥がして別の場所で洗浄する方式を「オフロケーション方式」といいますが、これならきわめて効果的な洗浄が可能です。しかし、理想的ではあるものの、必ずしも実用的なものとはいえませんでした。 そこで、実用化と普及に向け、開発者の蔵王産業㈱と共同で改良に着手しました。 共同開発にあたって目標としたのは、①大きさを半分に、②本体を1電源に、③価格も半分に、でした。 コンパクトにする理由は、機械を倉庫などの洗い場に設置して作業するのではなく、洗いたいその
場所に持ち込んで作業ができるようにするためです。それには通常のエレベーターに積載できる大きさでなければなりません。 電源も、ゼロは本体2、バキューム1の合わせて3電源を使いましたが、現場では2電源に抑えなければなりません。コンパクト化と省電力化は容易ではなく、設計と試行を繰り返し、1年がかりでようやく完成にこぎつけました。
パイルリセッターの洗浄工程 こうして完成した、究極のカーペットオフロケ洗浄システム「パイルリセッター」のクリーニング工程を見てみましょう(図参照)。
まず作業者は、現場の作業範囲を決め、対象となるタイルカーペットを剥がします。
剥がしたタイルカーペットを専用洗剤「パイルリフレッシュ」
(300倍希釈)の入った容器(浸漬槽)に約10分間浸け込みます。これにより、土砂等で固まったパ
効果的な洗浄が難しい →きれいにならない →短期間で張り替える →産業廃棄物が発生する
タイルカーペットを剥がす1
10分間洗剤液に浸す2
図 パイルリセッターによる洗浄工程
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イル内の汚れを緩ませます。
洗剤液に浸したタイルカーペットを、1枚ずつ差し込み口から挿入します。ここからはパイルリセッターが自動でクリーニングを行います。
挿入されたタイルカーペットはベルトコンベアで自動的に機内に送られ、パイルリフレッシュ(約500倍に自動希釈)を噴霧、続いて3つのブラシ(バルチャー製
「スリーブラシ」)で強力に洗浄、タイルカーペット内の汚れをかきだします。 洗浄部分は適度な水量が溜まる構造になっており、それにより洗濯機のような丸洗いを行います。
スリーブラシを通過したタイルカーペットは、絞りプレートで汚水を掻き出します。これもゼロにはなかった機能で、これによって600ccの水を含んでいたものが約5分の1となり、その直後、多量の水ですすがれ絞りローラーで脱水されます。次のバキューム工程の効率を上げます。
絞りローラーで脱水されたタイルカーペットはただちにバキュームで残った水分が除去されます。最後にブロアにて風圧を与えら
れ、取り出し口に送られます。 この段階で残水率は約18%となっており、一般的なエクストラクターによる吸引除去と比べると残水率は半分以下となり、手で触れてもほとんど乾いた状態となっています。そのまま元の位置に敷き込んでも、歩行等に問題は生じません。
パイルリセッターのユニット パイルリセッターは、本体の洗浄マシンのほか、洗剤液に浸け置きするためのⒶ浸漬槽、水を吸引するためのⒷウエットバキューム、SKに排水するためのⒸ排水ポンプなど、いくつかのユニットで構成されています。
Ⓐ浸漬槽(しんせきそう)
剥がしたタイルカーペットを前処理するための水槽です。縦に差し込むように挿入できる容器を用意し、タイルカーペットを洗浄液に浸けます。
Ⓑウエットバキューム
すすぎ後の水を吸引除去するためのバキュームです。専用の強力2連モーター式ウエットバキュームです。Ⓒ排水ポンプ
パイルリセッターをセッティングするのは、できればトイレ付近などの排水が可能な場所をお勧めします。排水がSKなど少し高い位置にある場合に、この排水ポンプを用いて排水します。
パイルリセッターの3大特長
パイルリセッターはタイルカーペットの洗濯機といえます。カーペットの素材は衣類と同じ繊維です。衣類は洗濯機で丸洗いすることできれいになるように、パイルリセッターもたくさんの水と洗剤を使い、タイルカーペットを丸洗いすることで、まるで新品の仕上がりを実現します。 敷き込んだまま洗浄する従来の方式では、実際の洗浄時間は15秒程度ですが、パイルリセッターは漬け込みも含めて10数分間、洗いつづける計算になります。 しかも、残水率は約18%を実現。洗浄後、すぐに敷き込みができますので、作業時間の効率化が図れます。
タイルカーペットを10分浸ける 一枚ずつマシンに挿入する 内部で3つのブラシで洗浄 脱水されて出てくる
パイルリセッターに挿入する3
スリーブラシで洗う4
圧倒的な洗浄効果特長1
リンス&脱水する5
バキュームする6
元の位置に戻す7
2 3 4 6
Ⓐ Ⓒ Ⓑ
352014.10
シーバイエス株 式 会 社
問い合わせシーバイエス株式会社 TEL 045-640-2280(お客様相談窓口)
URL https://cxs.co.jp/contact/
パイルリセッターはだれでも簡単に使用できるよう、スイッチ類を限りなく少なくしています。 汚れの度合いにあわせ運転モードは2つ。「標準」モード(生産性1時間あたり30㎡)、「しっかり」モード(生産性1時間あたり15㎡)のどちらかのスイッチを押すだけ、あとはタイルカーペットを挿入すれば、自動で洗浄から乾燥まで行います。作業をやめるときはストップボタンを押すだけです。スイッチもわかりやすく色分けしました。だれでも簡単に作業することができます。
パイルリセッターは、持ち運びすることを前提としています。本体 サ イ ズ は 幅740mm、 奥 行 き900mm、高さ1,053mm、ワンボックスカーに積み移動することができます。 また、エレベーターにも載せることができますので、クリーニングしたい場所のそばまで移動し、作業できます(写真1)。 必要な電源は100ボルト2電源
(本体1電源、バキュームユニット1電源)ですので、電源が足りない現場でも使用することができます。
パイルリセッターの使用例 パイルリセッターは持ち運びを前提としていますので、複数の現場でローテーションを組んで計画的に作業することができます。例えば、洗浄対象となるタイルカーペットの面積が3,000㎡のビルであれば、毎日60㎡ずつ洗ったとしても、年間50日で全館の洗浄が完了します。こうした現場が複数あれば利益率も高まります。 移動ができるということは、当然、店舗など小スペースの定期清掃にも活用できます。しかも新品同様に仕上がりますので、顧客からの信用も高まります。 さらに、私どもはこのマシンをぜひ障害者の雇用に役立ててもらいたいと思います。例えば、差し替えのタイルカーペットを多数用意し、前日に現場からタイルカーペットを集めておけば、作業場で作業を行うことも可能です。その
ために、「だれでも簡単に使用できる」を念頭に開発したのです。
日常作業を省力化し人手不足の課題を克服 写真2は、弊社の事務所で15年間一度も洗浄しなかったタイルカーペットです。市松状の模様がはっきり浮き出たほうが洗浄後、白いほうは洗ったもの。黒っぽいほうは洗っていないものです。 このように、目に見える美観回復が、パイルリセッターの最大の魅力です。 新品同様に美観回復ができるということは、裏返せば日常管理手法の変更も可能になることを意味します。現在、当業界も非常に深刻な人手不足に陥っていますので、時間のかかるバキューム作業をスイーパー作業に切り替えて省力化し、パイルリセッターで定期的に美観回復するほうが、全体のコスト削減に有効です。 パイルリセッターは、美観の維持、作業効率化ばかりでなく、タイルカーペットの寿命を延ばし、環境負荷の低減にも役立ちます。
写真1 エレベータにも積載可能
写真2 一枚おきに剥がして洗い、再び敷き込むとその差は歴然
だれでも簡単に使える特長2
どこでも使える特長3
洗浄前
洗浄後
~関連動画公開中~「ビルクリーニング ON LINE」http://www.bc-ol.com/をご覧ください!