レーザーキャビテーションバブルを用いた熱硬化性 透明樹脂pdms ... ·...
TRANSCRIPT
1
レーザーキャビテーションバブルを用いた熱硬化性透明樹脂PDMSの微細加工技術
弘前大学 大学院理工学研究科
知能機械システム工学専攻 准教授 花田 修賢
2
発表内容
• 熱硬化性透明樹脂(例えばPDMS)について
• 従来加工法について
• 開発した技術について
• 課題および用途、期待など
3
熱硬化性透明樹脂について(熱処理により「液体が固化」する透明樹脂)
樹脂名 エポキシ 不飽和ポリエステル
ポリウレタン メラミン ユリア シリコン(PDMS)
粘度 100~10500
[mPa・s]
200~1050 [mPa・s]
160~10000
[mPa・s]
不明 不明 5000
[mPa・s]
特性 耐水、耐薬電気絶縁
耐熱、耐薬 耐衝撃電気絶縁性
耐摩耗耐衝撃耐薬
高硬度耐摩耗耐水、耐熱耐衝撃
着色性高硬度
耐熱、耐寒耐薬低硬度電気絶縁
用途 接着剤、半導体封止材
ヘルメット、浴槽、漁船、塗料、パテ、接着剤
防水材、合成皮革、断熱材、塗料
電気部品、コネクタ、スイッチ、塗料
ボタン、キャップ、雑貨
医薬品、化粧品、塗料
中でもPDMSは安価であり軽量・柔軟、透過性、生体適合性などの諸特性を有している ⇒ 近年ではバイオチップや医療材料として応用されている。
4
(熱硬化性)透明材料の従来加工法
• 光加工(フォトリソグラフィやレーザー加工)
• モールディング(鋳型を用いた射出成型)
の問題点について↓
✓ PDMSを含む熱硬化性透明樹脂の従来微細加工技術は、①光加工や
②鋳型を用いたモールディングがあるが、それぞれの技術に問題がある(作業時間やコスト高など)。
✓ 開発を行った技術は、簡便かつコスト安に樹脂の微細加工を実現可能にする。
5
従来加工法(光加工①:フォトリソグラフィ&レーザー)
フォトリソグラフィ レーザー直接描画
安価であるが、➢ 行程数が多い(作業時間が長い)➢ 任意加工が困難
任意加工可能であるが➢ 加工効率が悪い(作業時間が長い)➢ 材料にあわせた波長選択が必要
6
従来加工法(光加工②:レーザー特殊加工)
LIPAA法(1)やLIBWE法(2)など、加工対象となる固体自体に光吸収がなくても微細加工可能な特殊加工がある
⇒加工速度に問題
➢ LIPAA法:金属配線に特化
➢ LIBWE法:深溝加工に特化
1. Yasutaka Hanada et al., SPIE newsroom (2006)2. Yoshizo Kawaguchi et al., J. Photochem. Photobiol. A: Chem. (2004)など
7
従来加工法(鋳型を用いたモールディング)
鋳型
PDMS注入
加熱
引き剥がし
PDMS基板
鋳型が必要であり、また、引き剥がした際の転写率や任意加工(ラピッドプロトタイプ)が出来ない。
8
開発した加工技術の概要
開発を行った加工技術は、
✓ 熱硬化性透明樹脂のマイクロメートルオーダーの微細加工が可能。加工特性について、従来技術に比べアスペクト比が高く、簡便かつ高品質な加工が可能である。
✓ 加工領域に選択的に金属配線が形成できる。
✓ 工業用途で使用されているナノ秒レーザーなど安価なレーザーを使用したラピッドプロトタイピングが可能である。
9
レーザー加工において本来、「バブル」は邪魔であるがそのバブルを利用する加工技術
開発した加工技術の概要
液状PDMS
ライン状のバブルが形成される金属板(銅板)
対物レンズ(x20 NA:0.35)
液状PDMS
金属板(銅)
液状PDMS-金属板の界面へのレーザー照射とステージ走査により金属粒子を含むライン状のバブルを生成
汎用レーザー(液状樹脂に対して透明な波長)
レーザー走査するためなので、ステージは固定の場合もあり。
10
開発した加工技術の概要
*金属粒子は後に酸処理により除去可能
照射系模式図
バブルの形状は照射条件にもよるが現状、マイクロメートルオーダー
深溝加工が可能
11
PDMSの加工結果例
✓ 溝の深さと幅のアスペクト比がほぼ1:1 ⇒ バブル形状を反映した加工✓ 従来加工を超えるアスペクト比が簡単に得られる
12
レーザー照射条件
2500um/s
レーザー顕微鏡像(倍率:100倍)
10000um/s7500um/s5000um/s
0.5 uJ/pulse
1 uJ/pulse
条件によっては溝加工ではなく表面改質になる
13
PDMS メッキ前 PDMS メッキ後
加工を行った後にめっき処理を行うことで、加工領域のみに選択的に金属配線を形成できる。
加工領域への金属配線形成
14
PDMS メッキ前 PDMS メッキ後
溝あり
溝なし
*加工溝の有無に関わらず金属配線を形成できる
反射顕微鏡像 (倍率100倍)
金属配線形成
15
用途と産業応用
• μTASやLab on a Chipと呼ばれるバイオチップへの応用⇒海外において特に盛んに応用されている。日本では研究用途が多い?
• 簡便かつ高速に加工が可能であることから“実際に使用する側”にとっても利点があると考えている。
• 各種センサーやコーティング材料しても応用
16
実用化に向けた課題
• 現状、所有している汎用YAGレーザーを用いた実
験条件の最適化を行っており、加工の基礎特性は、ほぼ得ている。
• 課題1:バブル形状を光学的に変化させた加工や深溝加工がどこまでできるか⇒検討中
• 課題2:将来的に実用化を考慮した際に、より微細な加工が必要になる可能性あり⇒検討中
17
企業への期待
• 医療機器や化学、(透明)材料メーカーおよび(レーザー)微細加工に関連した企業との共同研究などをご検討頂ければ幸いです。
• 開発した加工技術を用いたバイオチップ応用は海外において産業化されつつあり、今後、バイオはもちろんの事、様々な分野における応用が期待されています。この分野への展開を考えられている企業には、本技術の導入等、ご検討いただければ幸いです。
18
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :透明材料の加工方法
• 出願番号 :特願2018-000508
• 出願人 :国立大学法人弘前大学
• 発明者 :花田修賢
19
お問い合わせ先
弘前大学 研究・イノベーション推進機構
知的資産部門
産学官連携コーディネーター 三上 夫美加
TEL: 0172-39-3178
FAX: 0172-39-3919
E-mail: [email protected]