トランスレーショナルリサーチ入門 研究が実用になるまで -...

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201612月1日 第39回日本分子生物学会年会ランチョンセミナー 第4回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム あなたの研究が世界を変える/基礎と臨床の架け橋 トランスレーショナルリサーチの未来〜 あなたの研究が世界を変える/基礎と臨床の架け橋 トランスレーショナルリサーチの未来〜 トランスレーショナルリサーチ入門 トランスレーショナルリサーチ入門 研究が実用になるまで 勝野 雅央 勝野 雅央 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科

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2016年12月1日第39回日本分子生物学会年会ランチョンセミナー

第4回ヤング・サイエンティスト・シンポジウム〜あなたの研究が世界を変える/基礎と臨床の架け橋 トランスレーショナルリサーチの未来〜〜あなたの研究が世界を変える/基礎と臨床の架け橋 トランスレーショナルリサーチの未来〜

トランスレーショナルリサーチ入門トランスレーショナルリサーチ入門研究が実用になるまで研究が実用になるまで

勝野 雅央勝野 雅央

名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科

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トランスレーション(Translation)

翻訳翻訳

Airplane ⾶⾏機Airplane ⾶⾏機

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もう一つのトランスレーション

原理 実用原理 実用

気流が早い

(空気が薄い)

気流が遅い

(空気が濃い)

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トランスレーショナルリサーチ(TR)

治療ターゲットの同定

細胞・動物モデル

治療ターゲットの同定

臨床試験での検証細胞・動物モデル

を用いた病態解析臨床試験での検証

トランスレーショナル

リサーチ(TR)

基礎研究 臨床試験

リサーチ(TR)

基礎研究で⾒出したことを、

患者さんの治療や診断に繋げる︕患者さんの治療や診断に繋げる︕

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基礎から臨床への道のり

培養細胞 臨床試験(治験*)

動物実験(非臨床試験) (治験 )(非臨床試験)

第Ⅲ相臨床試験(検証的)

第Ⅱ相臨床試験(探索的)

第Ⅰ相臨床試験(健常者) (検証的)(探索的)(健常者)

*薬事承認を目指して⾏なう臨床試験のことを「治験」といいます

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神経変性疾患

中⾼年で発症し、進⾏性の神経脱落症状を呈する難治性疾患臨床

アルツハイマー病認知機能障害

ハンチントン病運動/認知障害

パーキンソン病筋萎縮性側索硬化症 (ALS) パーキンソン病運動機能障害

筋萎縮性側索硬化症 (ALS)運動機能障害

中枢神経における選択的ニューロン脱落(神経細胞死)病理

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神経変性疾患における異常蛋⽩質と遺伝⼦異常

アルツハイマー病 パーキンソン病 ALSアルツハイマー病 パーキンソン病 ALS

アミロイドβ タウ αシヌクレイン TDP-43

患者さんの脳では異常な蛋⽩質の蓄積がみられる

しかもしかも

これらの遺伝⼦異常を持っていると神経変性が遺伝する

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初期 機能障害

神経変性疾患の病態と治療

初期 機能障害

異常蛋⽩質の蓄積転写障害

細胞死軸索輸送障害

ミトコンドリア機能不全

神経伝達物質細胞死軸索輸送障害

DNA損傷︖

神経伝達物質の減少

Caspase活性化︖

シナプス機能障害DNA損傷︖

活性化︖

Disease-modifying therapy 補充療法Disease-modifying therapy (疾患修飾療法)

補充療法

(eg. L-dopa)

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球脊髄性筋萎縮症(SBMA)

疾患概念

男性にのみ発症

運動ニューロンと骨格筋が変性運動ニューロンと骨格筋が変性

有病率 1-2/100,000

運動ニューロン 陰嚢皮膚症候

四肢・顔⾯・咽頭などの筋⼒低下・筋萎縮

血清CK高値, 血清クレアチニン低値

運動ニューロン 陰嚢皮膚

血清CK高値, 血清クレアチニン低値

15〜20年の経過で緩徐に進⾏

原因

アンドロゲン受容体 (AR) 遺伝⼦翻訳領域

におけるCAG繰り返し配列の異常伸⻑におけるCAG繰り返し配列の異常伸⻑

病理

脊髄・脳幹の運動ニューロンの脱落脊髄・脳幹の運動ニューロンの脱落

変異ARの核内集積

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ポリグルタミン病(CAGリピート病)

主な症状疾患 遺伝形式 原因遺伝子

SBMA

ハンチントン病

筋⼒低下

不随意運動・認知症

X-linked

AD

アンドロゲン受容体

ハンチンチンハンチントン病

脊髄小脳失調症

SCA1

不随意運動・認知症

小脳失調

AD

AD

ハンチンチン

アタキシン1SCA1

SCA2

SCA3

小脳失調

小脳失調

小脳失調

AD

AD

AD

アタキシン1

アタキシン2

アタキシン3SCA3

SCA6

SCA7

小脳失調

小脳失調

⼩脳失調・視⼒障害

AD

AD

AD

アタキシン3

カルシウムチャンネル

アタキシン7SCA7

SCA17

DRPLA

⼩脳失調・視⼒障害

小脳失調

小脳失調・認知症

AD

AD

AD

アタキシン7

TATA結合蛋白質

アトロフィンDRPLA 小脳失調・認知症AD アトロフィン

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CAGCAGCAGCAGCAG

ポリグルタミン病の病態メカニズム

DNACAGCAGCAGCAGCAG

GlnGlnGlnGlnGlnGlnGln蛋白質

GlnGlnGlnGlnGlnGlnGln

変異ハンチンチンの集積

ポリグルタミン

変異ハンチンチンの集積

神経細胞の核内に集積

ニューロンの機能障害

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SBMAのトランスジェニックマウスモデル

Chicken β-actin promoter Wildtype

Male FemaleTransgene Construct

Human full-length AR

Chicken β-actin promoter

Transgenic(CAG)97

Transgenic

運動機能における性差

Immunohistochemistry (1C2: anti-polyglutamine)

Male Female

150

200Female

Male Female

Spin

al cord(s

ec)

50

100

MaleS

pin

al cord

歩⾏機能

(sec)

05 10 15 20 25 30

Spin

al cord

Katsuno et al. Neuron 35: 843-54, 2002Weeks

歩⾏機能

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SBMAマウス(♂)に対する去勢

Immunohistochemistry (1C2)

150

200

(sec)

去勢去勢 Sham

Immunohistochemistry (1C2)

50

100

150

歩⾏機能

(sec)

Sham

脊髄

0

50

5 10 15 20 25 30

歩⾏機能

Sham

1

去勢骨格筋

Sham.4

.6

.8

累積⽣存率

Sham

去勢

Sham

0

.2

.4累積⽣存率

去勢 00 10 20 30

週齢

Katsuno et al. Neuron 35: 843-54, 2002

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SBMAマウス(♀)に対するtestosterone

Immunohistochemistry (1C2)

(sec)

TestosteroneImmunohistochemistry (1C2)

Vehicle150

200 Vehicle

歩⾏機能

(sec)

脊髄

50

100

Testosterone

歩⾏機能

0

50

5 10 15 20 25 30

Testosterone

骨格筋

.8

1

5 10 15 20 25 30

Vehicle

Vehicle

累積⽣存率

.4

.6

.8

Testosterone

Testosterone

Vehicle

累積⽣存率

0

.2

.4 Testosterone

Testosterone週齢

0

0 10 20 30

Katsuno et al. Neuron 35: 843-54, 2002

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SBMAの病態仮説

変異AR蛋白質

細胞質 核

テストステロンテストステロン(Androgen)

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SBMAモデルマウスに対するtestosterone低下療法

leuprorelin

Vehicle

25

30

testo

ste

ron

e (

ng

/m

l)

200

Leuprorelin

leuprorelin

20

25te

sto

ste

ron

e (

ng

/m

l)

100

Leuprorelin

Vehicle脊髄前角 膵臓 骨格筋

testo

ste

ron

e (

ng

/m

l)

Vehicle Leuprorelin

歩⾏

機能

(sec)

(週)

0

10 205 15 25

Vehicle脊髄前角 膵臓

Vehicle

骨格筋

歩⾏

機能

1.0

0.5

LeuprorelinVehicle

累積

⽣存

0.5

Vehicle

Leuprorelin累

積⽣

存率

0

(週)10 20 300

Katsuno et al. Nat Med. 9:768-773, 2003

Leuprorelin

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Leuprorelinの第Ⅱ相臨床試験

0週 48週

リュープロレリン 11.25 mgを12週毎に投与リュープロレリン 11.25 mgを12週毎に投与

リュープロレリン 11.25 mgを12週毎に投与

プラセボを12週毎に投与

本試験(二重盲検) 継続試験(非盲検)本試験(二重盲検) 継続試験(非盲検)

主要評価項目︓運動機能スコア

副次評価項目︓⾎清CK、陰嚢皮膚生検、嚥下造影、など

1群25例 合計50例 (単施設)被験者数

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第Ⅱ相臨床試験の結果

Banno et al.,

Ann Neurol

65: 140-150, 65: 140-150,

2009

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Leuprorelinの医師主導治験(JASMITT)

JASMITT 体制

武田薬品工業

JASMITT実施医療機関① 北海道⼤学

② 東北⼤学

日本医師会治験促進センター

イーピーエス株式会社

武田薬品工業株式会社

治験薬提供

厚⽣労働省② 東北⼤学

③ 自治医科大学

④ 千葉⼤学

⑤ 東京医科⻭科⼤学1

治験調整委員会

治験促進センター

名古屋大学神経内科

イーピーエス株式会社

データマネジメント統計解析監査

厚生労働科研費

⑤ 東京医科⻭科⼤学

⑥ 東京大学

⑦ NHO相模原病院

⑧ 新潟大学治験調整委員会(委員⻑︓祖⽗江 元)

JASMITT事務局MICメディカル

監査治験総括報告書

8

2

⑧ 新潟大学

⑨ 浜松医科大学

⑩ 名古屋大学

⑪ 神⼾⼤学

登録センター

実施施設 実施施設実施施設臨床検査

測定機関

モニタリング

動的割付

8

5

3

1012

4

9

7

6

⑪ 神⼾⼤学

⑫ 鳥取大学

⑬ ⻑崎⼤学

⑭ 熊本大学実施施設

治験責任医師

IRBCRC

実施施設

治験責任医師

IRBCRC

実施施設

治験責任医師

IRBCRC

測定機関

読影委員会

効果安全性評価委員会

10

11

12

13

9

IRBCRC

IRBCRC

IRBCRC 効果安全性評価委員会 13

14

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JASMITTの試験デザイン

0週 48週 96週 144週

TAP-144-SR(3M) 11.25 mgを12週毎に投与

プラセボを12週毎に投与

TAP-144-SR(3M) 11.25 mgを12週毎に投与

プラセボを12週毎に投与

本治験(二重盲検) 継続治験(非盲検)

主要評価項目︓嚥下造影における咽頭部バリウム残留率

副次評価項目︓運動機能スコア、QOLスコア、血清CKなど副次評価項目︓運動機能スコア、QOLスコア、血清CKなど

計画被験者数 1群85例 合計170例計画被験者数 1群85例 合計170例

登録被験者数 合計204例

被験者数

治験と並⾏して⾃然歴の前向き観察研究

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JASMITTの結果①

主要評価項目

Leuprorelin Placebo p

48週の変化

主要評価項目

咽頭部バリウム残留率(初回嚥下後) -5.1 ± 21.0 0.2 ± 18.2 0.063

咽頭部バリウム残留率(複数回嚥下後) -1.6 ± 12.9 1.7 ± 9.3 0.049*

副次評価項目

陰嚢皮膚 変異AR陽性細胞数 -11.9 ± 13.0 2.7 ± 12.1 <0.0001陰嚢皮膚 変異AR陽性細胞数

血清CK

運動機能スコア(ALSFRS-R)

-11.9 ± 13.0

-121.5 ± 245.1

-0.4 ± 2.8

2.7 ± 12.1

-20.0 ± 273.2

-0.1 ± 2.4

<0.0001

0.006

0.537運動機能スコア(ALSFRS-R)

6分間歩⾏距離

-0.4 ± 2.8

-24.2 ± 48.8

-0.1 ± 2.4

-14.0 ± 46.8

0.537

0.132

*調整解析の結果、有意差なし

Katsuno, Banno, Susuzki et al. Lancet Neurol. 9: 875-884, 2010

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JASMITTの結果②

咽頭部バリウム残留率の変化悪

化悪

化改

全症例 罹病期間<10年

罹病期間の短い患者に絞った追加治験を実施罹病期間の短い患者に絞った追加治験を実施

Katsuno, Banno, Susuzki et al. Lancet Neurol. 9: 875-884, 2010

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アミロイドββββに対するワクチン療法

無治療

18ヶ月齢ワクチン投与

18ヶ月齢無治療 ワクチン投与

Time to severe dementia

Schenk et al. Nature 1999Morgan et al. Nature 2000 Holmes et al. Lancet 2008

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トランスレーショナルリサーチの問題点

培養細胞 第Ⅲ相臨床試験(検証的)

動物実験(非臨床試験)

第Ⅱ相臨床試験(探索的) (検証的)(非臨床試験) (探索的)

死の谷(death valley)死の谷(death valley)

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トランスレーショナルリサーチの推進に向けてトランスレーショナルリサーチの推進に向けて

1. 発症前へのアプローチ1. 発症前へのアプローチ

2. ヒトの病態に基づく治療法開発2. ヒトの病態に基づく治療法開発

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早期介入/予防の必要性/程

度重

症度

/

病理学的変化 機能低下 自覚症状

早期/発症前へのアプローチが必要

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アルツハイマー病における病態変化

アミロイドβ沈着は認知症発症の20年前から出現20年前から出現

Bateman et al. New Eng J Med 367: 795-804, 2012

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パーキンソン病における病態変化

Kalia & Lang, Lancet 386: 896-912, 2015

便秘は運動症状発症の便秘は運動症状発症の

20年前から出現

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SBMAにおけるバイオマーカーの経時変化

運動機能スコア (ALSFRS-R)正常=48

血清クレアチニン

44

46

48

正常=48

0.7

0.8

(mg/dL)

Normal (0.6-1.1)

36

38

40

42

44

0.5

0.6

0.7

30

32

34

36

0.3

0.4

0.5

24

26

28

30

0.1

0.2

0 5 10 15 20 25罹病期間(年)

Hashizume et al. Brain 135: 2838-2848, 2012Hijikata et al. Ann Clin Transl Neurol. 3: 537-546, 2016

0 5 10 15 20 25罹病期間(年)

⾎清クレアチニンは発症時すでに低値である=発症前から低下︖

Hashizume et al. Brain 135: 2838-2848, 2012Hijikata et al. Ann Clin Transl Neurol. 3: 537-546, 2016

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神経変性疾患のパラダイムシフト

中⾼年で発症し、進⾏性の神経脱落症状を呈する難治性疾患臨床

アルツハイマー病認知機能障害

ハンチントン病運動/認知障害分子のレベルでは認知機能障害 運動/認知障害分子のレベルでは

若年期で「発症」

パーキンソン病運動機能障害

筋萎縮性側索硬化症 (ALS)運動機能障害

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動物モデル=患者 ではない

SBMAにおける変異ARの集積

患者 マウス

SBMAにおける変異ARの集積

脊髄前角

脊髄前角

小脳

小脳

ヒトの病態に基づいた治療開発が必要

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SBMA患者における血清クレアチニン低下

1.2

1.0

: HC (n=22)

r = 0.448, p = 0.0361.2

1.0

Cr

(mg

/d

l)

: HC (n=22)

r = 0.448, p = 0.036

Cr

(mg

/d

l) 1.0

0.8

0.6

1.0

0.8

0.6Cr

(mg

/d

l)

Cr

(mg

/d

l)

0.6

0.4: ALS (n=24)

r = 0.501, p = 0.013

0.6

0.4血清

Cr

(mg

/d

l)

: SBMA (n=52)

r = 0.364, p = 0.008

血清

Cr

(mg

/d

l)

0.2

骨格筋量 (kg)

r = 0.501, p = 0.013

0.210 20 30

r = 0.364, p = 0.008

骨格筋量 (kg)

10 20 30

単に筋⾁量減少にともなって⾎清クレアチニンが低下したのではない単に筋⾁量減少にともなって⾎清クレアチニンが低下したのではない

Hijikata et al. Ann Clin Transl Neurol. 3: 537-534, 62016

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クレアチン-クレアチニン代謝

エネルギー源

クレアチン (血中)

クレアチン エネルギー源

クレアチン

クレアチントランスポーター

クレアチンの

クレアチニン (Cr)

クレアチンクレアチンの取り込み障害︖

クレアチニン (Cr)

CrCr

Hijikata et al. Ann Clin Transl Neurol. 3: 537-534, 62016

Page 34: トランスレーショナルリサーチ入門 研究が実用になるまで - …yss.umin.jp/elements/pdf/slide_katuno.pdfBateman et al. New Eng J Med 367: 795-804, 2012 パーキンソン病における病態変化

SBMA骨格筋におけるクレアチントランスポーター

A B

免疫染色(患者骨格筋) ウエスタンブロッティングA B

C *p < 0.05, **p < 0.01

Hijikata et al. Ann Clin Transl Neurol. 3: 537-534, 62016

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ヒトの病態に即した「リバースTR」

治療標的分⼦の同定

細胞・動物モデルを用

いた病態解析臨床試験での検証

トランスレーショナル

基礎研究 臨床試験

いた病態解析トランスレーショナル

リサーチ(TR)

基礎研究 臨床試験

「リバース」

健常者〜患者における健常者〜患者における分子レベルでの分子レベルでの

「リバース」

TR健常者〜患者における

バイオマーカーの同定健常者〜患者における

バイオマーカーの同定分子レベルでの病態解明

分子レベルでの病態解明

動物モデル・iPSを用いた動物モデル・iPSを用いた動物モデル・iPSを用いた標的分子の検証

動物モデル・iPSを用いた標的分子の検証