テーマ別パネルディスカッションⅠ「休職者の復職 …...36...

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36 テーマ別パネルディスカッションⅠ「休職者の復職支援における効果的な連携」 司会者:今若 修(障害者職業総合センター職業センター 企画課長) パネリスト(五十音順) :五十嵐 良雄氏(メディカルケア虎ノ門 院長/うつ病リワーク研究会 代表世話人) :稲田 憲弘(東京障害者職業センター 主幹障害者職業カウンセラー) :川浦 且博氏(KYB株式会社 人事本部 岐阜人事部 部長) 司会(今若):ただいまから、「第22回職業リハビリテーション研究・実践発表会」最後 のプログラムでございます。テーマ別パネルディスカッション、「休職者の復職支援におけ る効果的な連携」というテーマで、約100分の予定でパネルディスカッションを進めて まいりたいと思います。 改めまして、私、本日の進行をいたします障害職業総合センター職業 センターの今若と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 司会(今若):開催に当たりまして、私から簡単に本日のパネルディス カッションの趣旨、目的についてお話をさせていただきます。 近年、事業場におけるメンタルヘルス対策の着実な実施が重要と言わ れ、厚生労働省は、平成18年に労働者の心の健康の保持・増進のため の指針を策定し、平成21年にメンタルヘルス対策の重要な要素である心の健康問題によ り休職した労働者の職場復帰支援の手引きを改定しております。 事業所はそれらに基づき、休職者に対して職場復帰のための取り組みを、みずから実施 されているところです。 全国の地域障害者職業センターでは、平成17年10月から、うつ病による休職者を対 象とした職場復帰のための専門的支援、いわゆるリワーク支援が開始されました。 また近年、精神科医療機関においても、職場復帰のための専門的支援が実施され、年々 その数が増えてきており、平成20年には精神科医療機関においてうつ病リワーク研究会 が組織され、職場復帰のための取組みが精神科医療のストリームの一つになりつつあると 考えるところです。 精神科医療機関での取組みの広がりは、地域センターのリワーク支援を実施する当たり、 精神科医療機関との新たな連携スタイルを模索する必要性を生むこととなりました。そこ で職業センターでは、リワークプログラムを実施する精神科医療機関との連携スタイルの 構築を目的に、本日パネリストとしてご出席のメディカルケア虎ノ門にご協力をいただき、 連携支援を試行実施し、その結果を平成26年3月に報告書として取りまとめ、関係機関 に配布をしたところです。 うつ病による休職者の職場復帰支援は、事業主、医療機関、地域センターなど、職業リ ハビリテーション機関の3者の協同が重要となります。その3者が相互に連絡、調整を行 いながら、段階的に支援を行うことが効果的であると言われています。 このパネルディスカッションでは、うつ病による休職者の職場復帰支援に関して、まず 各機関の取り組みについて、相互に理解を深めること。2つ目、それぞれの強みと専門性

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テーマ別パネルディスカッションⅠ「休職者の復職支援における効果的な連携」

司会者:今若 修(障害者職業総合センター職業センター 企画課長)

パネリスト(五十音順)

:五十嵐 良雄氏(メディカルケア虎ノ門 院長/うつ病リワーク研究会 代表世話人)

:稲田 憲弘(東京障害者職業センター 主幹障害者職業カウンセラー)

:川浦 且博氏(KYB株式会社 人事本部 岐阜人事部 部長)

司会(今若):ただいまから、「第22回職業リハビリテーション研究・実践発表会」最後

のプログラムでございます。テーマ別パネルディスカッション、「休職者の復職支援におけ

る効果的な連携」というテーマで、約100分の予定でパネルディスカッションを進めて

まいりたいと思います。

改めまして、私、本日の進行をいたします障害職業総合センター職業

センターの今若と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

司会(今若):開催に当たりまして、私から簡単に本日のパネルディス

カッションの趣旨、目的についてお話をさせていただきます。

近年、事業場におけるメンタルヘルス対策の着実な実施が重要と言わ

れ、厚生労働省は、平成18年に労働者の心の健康の保持・増進のため

の指針を策定し、平成21年にメンタルヘルス対策の重要な要素である心の健康問題によ

り休職した労働者の職場復帰支援の手引きを改定しております。

事業所はそれらに基づき、休職者に対して職場復帰のための取り組みを、みずから実施

されているところです。

全国の地域障害者職業センターでは、平成17年10月から、うつ病による休職者を対

象とした職場復帰のための専門的支援、いわゆるリワーク支援が開始されました。

また近年、精神科医療機関においても、職場復帰のための専門的支援が実施され、年々

その数が増えてきており、平成20年には精神科医療機関においてうつ病リワーク研究会

が組織され、職場復帰のための取組みが精神科医療のストリームの一つになりつつあると

考えるところです。

精神科医療機関での取組みの広がりは、地域センターのリワーク支援を実施する当たり、

精神科医療機関との新たな連携スタイルを模索する必要性を生むこととなりました。そこ

で職業センターでは、リワークプログラムを実施する精神科医療機関との連携スタイルの

構築を目的に、本日パネリストとしてご出席のメディカルケア虎ノ門にご協力をいただき、

連携支援を試行実施し、その結果を平成26年3月に報告書として取りまとめ、関係機関

に配布をしたところです。

うつ病による休職者の職場復帰支援は、事業主、医療機関、地域センターなど、職業リ

ハビリテーション機関の3者の協同が重要となります。その3者が相互に連絡、調整を行

いながら、段階的に支援を行うことが効果的であると言われています。

このパネルディスカッションでは、うつ病による休職者の職場復帰支援に関して、まず

各機関の取り組みについて、相互に理解を深めること。2つ目、それぞれの強みと専門性

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を生かすことができる連携の方策を考えること。3つ目、それらの連携が各地域で広がる

きっかけにすること。この3点を目的に進めてまいりたいと考えております。

それでは、3名のパネリストの方から順にご発表をいただきたいというふうに思います。

まず最初にKYB株式会社、川浦部長、よろしくお願いいたします。

川浦:皆さん、こんにちは。

今日は、KYBが民間企業として、また休職者の復職支援における効果的な連携として、

現場サイドで実際に取り組んでいる内容を発表したいと思います。

まず初めに、私たちKYBとい

う会社について簡単にご説明させ

ていただきます。

創立は1935年3月10日で、

来年80周年を迎えます。創立7

0周年のときにKYBを通称社名

として、今はKYB株式会社と呼

んでおります。

従業員は、連結ベースで大体1

万3000名位、単独は3600

名位の従業員数となっています。

KYBの拠点ですが、岐阜地区

が非常に多く、岐阜地区の中に北工場、南工場、東工場といった生産工場があります。他

に関東では、埼玉県熊谷市と神奈川県相模原市に工場があります。このほか研究所とかも

あります。

本社は東京の港区、貿易センタービルにあります。工場、生産、営業の拠点が全部で2

4カ所。さらにアメリカ、ヨーロッパ、ASEANなどに工場などの拠点があります。

油圧関係の企業で、油圧の緩衝器、自動車でいきますと、ショークアブソーバーとか、

パワーステアリング、オートバイでは、フロントフォーク、サスペンション、そういった

ものがあります。

それでは、これから本題に入りたいと思います。

まず、内容的には今回健康管理の体制、組織、それとメンタル

疾患の際の復帰フロー、それと特に気をつけていること。あと

医療機関との連携、内容と課題。さらに障害者職業センター、

そういった支援機関との連携の内容と課題と。さらに復帰事例の紹介をさせていただき、

最終的にまとめという流れでいきたいと思います。

まず、組織のほうですが、我々人事本部の中に人財育成センターと岐阜人事部、あと健

康管理センターがあります。この健康管理センターは、今年の4月に新しく組織を立ち上

げたものです。近年、いろいろなメンタルや健康の問題が重要視されており、弊社でもそ

ういう従業員が多いこともありますので、センターとして組織を立ち上げ、従業員の皆さ

んの健康管理やメンタル面の課題を減らすための活動を進めております。

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センターには、全部で11名のスタッフがおり、本社、相模原、熊谷の工場と岐阜地区

の各工場に保健師、看護師を1名から3名程度配属して従業員の健康管理をしております。

我々が行っているメンタルの疾患者の復職フローとしましては、発症から休業開始まで、

これはどこの企業さんでも行われていると思います。さらに、休業中については職場と人

事部が連携をとり休業中の者への対応に取り組んでいます。次いで、復職調整です。ここ

にある程度力を入れております。実際に発症してしまった疾患については医療機関にお願

いしてしっかり直す。企業としては復帰するまでの準備などの対応を検討するというとこ

ろです。

まず復職の準備の段階ですが、本人か

ら復職希望の連絡を復職の 1 ヶ月前まで

に受けて、相談します。そのときには主

治医にも情報提供して、実際には診断書

の依頼をします。また復職の面談などの

日程調整、また復職するのに元の職場と

の調整、会社の制度の中で職場の復帰、

短時間勤務制度、それらを利用するか、

復職前にいろいろな調整、判断もします。

あと産業医との復職面談を実施して、実

際にメンタルで長期で休職をされていた方については、やはり短時間勤務などを利用しな

がら進めている現状であります。

実際に復職に関する制度を利用する時には、事前に職場でどういった業務をさせるかと

いうプログラムをしっかりと作り、無理のない計画を立てて最終的に復帰に向けると。う

ちの制度では、1カ月から2カ月位を目処に短時間勤務を利用しながら復帰をさせている

ところです。それである程度オーケーになった段階で、完全にフルで仕事をしていただく

という取り組みをしております。

その後には、復職時就業制限解除と

いったものがあります。こちらは特に

復職の状況の確認、これは産業医の復

職後の評価面談や、担当者が継続的に

コミュニケーションをとりながら進め

ていますが、これで最終的に復帰、要

はフルで仕事ができるということが確

認できた段階で、短時間の制限を解除

するという流れです。メンタルの疾患

の復職のフローはこんな形です。

特徴としては、発症してから一貫し

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て一人の産業保健のスタッフが対応することです。このスタッフが発症したAさんへの対

応を復帰してからも継続して、その後の職場での対応、また現状どうなっているかという

確認についても常にフォローしている状況です。今のところは、途中で人を替えるという

ことはしていません。

そういった中で、特に気をつけてい

るポイントです。まず、休職中から産

業医、保健スタッフがアプローチをす

ることです。休職中には所属、所属長

は、基本的に介入させない、全く手を

出さないこととしています。これは窓

口を保健スタッフに絞り、所属長の負

荷の軽減を図るということです。もう

一つが診断書の提出のタイミングをコ

ントロールすることです。過去に非常

に苦労したのが、突然復帰診断書が提

出され、その診断書で復帰しますと言われると、職場のほうが対応できないことがあるの

で、これは休職中からコミュニケーションをとり、復帰時期についても検討して、時期が

近づいてきたら、診断書に記入していただくことにしています。そのため、復職受入の準

備の時間、これにかなりの時間を費やしています。

あとは生活状況の確認です。復帰がそろそろという状況であっても、日常生活のリズム

や体力が戻っているか、そういったものを復帰前に必ずチェックをします。これは最低1

カ月ぐらい出社練習という形で、朝8時前に来ていただき、ラジオ体操をして、またそこ

から帰っていただくというものです。また日常生活リズムや日々の活動、行動したことを、

日誌につけて、それを提出していただいています。それでオーケーとなった段階で受け入

れるというやり方もしています。

あと復帰後の業務について積極的に介入をしています。これは職場に全てを任せないと

いうことです。やはり専門的な立場からアドバイスを行い、大きくこの4つのポイントに

気をつけて、休職者の復職に向けて取り組んでおります。

次に医療機関と連携内容と課題ですが、診断書というのは、正直本人の意向が強く反映

されることがあります。職場復帰などが本当は無理な場合でも、例えば休職期間、これは

規則として、期間満了で退職になる可能性がありますが、それを避けるために無理をして、

復帰可という診断書を持ってきて、とにかく復帰を希望することがあります。

また、逆に、いつまでも休み続けてしまうこともあります。これどう見ても元気だよ、

もう復帰できるよねという方でも、何故かそのまま診断書が提出され、ぎりぎりまで休ん

でしまうことがあります。それは医療機関の特徴として認識して、対策をとっています。

具体的にはやはり連携の重要性ですね。主治医と本人、会社、この信頼関係を作るのが重

要かと思います。実際には初診時の介入、あとは紹介状を持たせて、実際に同行して受診

することもあります。また、症状などの変化点では、医療連絡をとりながら、連携を密に

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して、主治医、本人、会社の信頼関係を築き上げる取り組みをしております。

あと看護職が、医療機関と会社とのある意味通訳となって、主治医や本人から得た情報

が、それぞれに生かせるように、わかりやすく伝えております。ともすると、本人が医師

に伝えている内容と会社が思っていること、または実際に携わっている専門スタッフが持

っている情報と全く違うことがありますので、そういった乖離がないように取り組んでお

ります。

次に、障害者職業センターといった支援機関との連携内容と課題です。2007年から

13年までで、統計的に年間大体20件余りの職場復帰者がありますが、リワークを利用

できるのは、年間に実は1人程度ですね。リワークに通所できた人のほとんどは復帰を果

たして、再休業もなく、また中には治療まで終了しています。

ただ、一方で失敗した例もあります。これは後ほど事例として発表いたしますが、本人

の考え方、意思、そういったものが大きく影響して失敗につながったと思われます。

企業で実際に困っているのは、むしろ新型のうつといわれる方、または発達障害とか人

格障害があって、利用できるプログラムがないということがあります。こういった状況に

非常に苦慮しているというのが、我々の今の課題となっております。

ここで事例の説明をします。まずAさんの場合です。これは成功した事例です。Aさん

は生真面目で完璧主義、そういった方がメンタルになりやすいと世間では言われておりま

すが、非常に仕事もできる、ただし仕事を自分で抱えてしまう。そういったタイプです。

Aさんがグループリーダーになると、仕事を他の者に振れず、自分で抱えてしまい、うつ

状態になってしまった事例です。これは3カ月、6カ月、2カ月、8カ月と、2年半の間

に4回、休職を繰り返しておりました。業務の方でもできるだけの配慮はしたのですが、

自分で仕事の難易度を上げてしまう、そういったタイプでした。そこでリワークを紹介し、

本人が一度利用してみるというので、実際に登録、利用をしてみたら、業務の負荷を自ら

上げてしまう傾向を理解し、どのように対処すべきかということに気がついて、うまく仕

事をコントロールできるようになって、時間管理、そういったもの、コラム法を自分なり

に活用して、実際これは非常によかったです。最終的には結婚して家庭まで持ったという

事例です。

次は、Bさんの失敗した事例です。失敗した、というかリワーク自体を利用しなかった

ものです。Bさんは真面目でこだわりが強い、意思を曲げることがない、そういった性格

でした。仕事自体は優秀でしたが、休職6カ月、出社3カ月で再び2年6カ月を休職して

しまいました。最終的にはこの方は休職期間満了で退職をされています。Bさんにリワー

クを紹介し、本人もわかりました、ほんなら一度利用しますということで障害者職業セン

ターに行ったのですが、事前に心理検査とかをやったときに、その結果を聞いて本人が、「そ

のとおりです。もう自分が目指している姿、結果もう出ました。素晴らしい。」と。逆に、

そのことに自分が納得してしまっているからこれ以上やることがないと。こういった方は

リワークの目的、目標が持てなくなって、この段階で終わってしまったという方です。

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まとめです。記載しておりますが、

これは医療機関との連携では、看護

職を仲介として、良好な関係の構築、

障害者職業センター等支援機関と

の連係については、自己の問題に気

がつかない者へのプログラムなど

を期待します。

最後にKYBの今メンタルへの

取り組みの現状を簡単に紹介しま

す。休業者はピーク時の数に対して、

3分の2程度に減少しています。自

殺者もこの8年間はゼロになりま

した。過去は大体5年間で1.5人

ぐらいいらっしゃいました。

我々KYBの取り組みは、200

8年が変化点となります。2008

年に、一気に保健師、看護師などを

採用して、一時予防、予防対策を重

点的に行いました。特に①教育、若

い年代を中心としたセルフケア。こ

れは新入社員や入社3年目、あと指

導職へ上がった時に必ず教育を行

っています。あとは管理監督者を中心にしたラインケアです。これはグループ長、係長、

課長、部長といった方の教育を行っています。特に課長、部長については、これは1日コ

ースでみっちりと教育をしております。

もう一つの特徴が、②面談です。これは、全従業員一人一人に看護職が面談をしており

ます。これは健康診断、その後の健康の指導、あとストレスチェック、これを大体1人1

時間弱かけて行います。かなりの人数で、看護職には高負荷になっておりますが、これが

今大きく効果が出てきていると思っています。

あと①、②をやることと、早期の相談、気軽に全員面談もやっているものですから、す

ぐに何かあったときに相談できるというそういった窓口を開設して、職場の調整を積極的

に行うようにしております。

また、ストレスチェックの結果をフィードバックもしております。これは職場の所属長、

これはライン部長に報告して、おたくの職場の環境は今こういう状況ですと。個人名は出

しませんが、ストレスチェックの結果では、こういった状況の職場になっていますから、

もう少しここを改善してくださいとか、逆に非常に負荷がかかって忙しい職場でも、中に

は非常にメンタルのストレスがすごく低い職場もありますので、そういったところの取り

組みを紹介して、できるだけ予防につなげております。

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2014年度からは、海外出向者、先ほど言いました140名の方とか、あとグループ

会社についても教育の支援などを行っています。海外の出張者には直接出向いて面談、ス

トレスチェック、そういったものも行っております。こういった「予防」にできるだけ力

を入れて、1人でもうちの従業員からメンタルの病気になる方を減らすという思いで取り

組んでおります。

以上でKYBの今回の発表となります。どうもありがとうございました。(拍手)

司会(今若):ありがとうございました。

それでは続きまして、東京障害者職業センター、稲田主幹、よろしくお願いいたします。

稲田:皆さん、こんにちは。

ご紹介いただきました東京障害者職業センターの稲田と申します。

では、東京センターの本所での取り組みを中心にお話をさせていただき

ます。

まず初めにリワーク支援の概要ですが、全国の地域センターにおきまし

ては、うつ病などで休職されている方で、休職している社員の復職を考え

る事業所に対しまして、主治医の先生の助言を得ながらリワーク支援とい

うのを行っております。

上野にあります東京センターの本所

におきましては、今年度からリワーク

支援室を拡充、移転しました。現在は

リワークセンター東京として受け入れ

人数とカリキュラムを拡充して対応さ

せていただいております。

次に、当センターでのリワーク支援

の流れです。まず休職者ご本人に説明

会に参加をしていただきます。説明会

に参加していただいた後に、当センタ

ーのリワーク支援をご利用されるかど

うかという点について、ご本人に検討していただきます。利用希望の方につきましては、

受付会でお申し込みをいただきます。そして、後ほど説明させていただきます職場復帰の

コーディネートという過程を経まして、リワーク支援の受講という流れになります。

次に当センターのリワーク支援プログラムは、大きく分けて講座、作業、集団課題、自

主課題という4つの構成となります。

講座は、ストレスマネジメントとかアサーションなどを、講義形式で学習するものです。

なお、認知行動療法については、センターのスタッフ以外に、五十嵐院長のメディカルケ

ア虎ノ門から臨床心理士の先生を外部講師としてご講義をいただいております。

作業は、主に事務作業を通じ、ご本人に現在の作業遂行状況、例えば集中力や持続力、

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疲労などについて確認をしていただきます。

集団課題では、コミュニケーションや対人関係に不安を感じていらっしゃる方にグルー

プワーク形式で自己表現の学習をしていただくものです。

自主課題は、担当カウンセラーと相談をしながら、休職に至るまでの経緯を振り返って

整理したり、あるいはうつ病に関する書籍を読んでまとめていただくといったものになり

ます。とりわけ不調を繰り返されている場合は、これまでのキャリアですとか、あるいは

不調の経過などをじっくりと振り返り、ご自身の不調のサインや波みたいなところをご本

人に理解していただき、自己管理ができるような支援を心がけております。

どの講座をどのように受講するかは、当センターでは、ご本人の主体的な取り組みも促

進しようという観点から、必要な講座をご本人が選択する形式をとっています。そのご希

望以外にも、事業所の方からお聞きしたご要望や、主治医の先生のご意見などを踏まえ、

担当カウンセラーがご本人に助言しつつ、最終的に受講プログラムを固めるという流れを

とっております。

続きまして、これは本日のメインテー

マの連携とも関係する話ですが、当セン

ターを含めた障害者職業センターの行う

リワーク支援の特徴について3点、お話

をさせていただきます。

1つ目の特徴は、休職者と企業、双方

に支援をご提供する点です。地域センタ

ーのリワーク支援は、休職者ご本人への

支援だけでなく、復帰先の事業所の方へ

も、復帰後の配慮事項や労働条件、職務

内容の設定といった助言、あるいは障害

理解を促進するための社内研修への協力

といった支援を行います。企業支援の具

体例としてあげましたが、ご本人の復帰

後の出勤ペースとか、仕事の内容などを

事業所の方々と連携、相談しながら、助

言をさせていただくということです。

2つ目の特徴は、リワーク支援の流れ

でもご説明しましたけれども、職場復帰

のコーディネートです。このコーディネ

ートは、リワーク支援終了後のスムーズな職場復帰ですとか、復帰後の安定した継続勤務

を目指しておりまして、センター内でのリワーク支援プログラム開始前に、職場復帰の進

め方や目標についてご本人、事業所の方、主治医の3者の合意形成を図るという取り組み

です。具体的には、ご本人が復帰を希望していること、事業所の方が復帰を勧める意思を

有していること、加えて主治医の先生が復帰に向けた活動を認めていることを確認させて

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いただいた上で、リワーク支援をスタート形をとっております。

最後の特徴としては全国ネットの活用ということです。御承知のとおり、全国の地域セ

ンターでリワーク支援を展開しておりまして、この図にありますように県をまたいだ地域

センター間での連携というのが可能なのですが、今日のテーマに則して申し上げるならば、

各都道府県の地域センターでコーディネートから始まるリワーク支援を進める際に、全国

各地の事業所や医療機関の方々と連携を図ることが可能であるということです。

簡単ではございますが、以上でございます。(拍手)

司会(今若):ありがとうございました。

それでは、ご発表の最後になりますメディカルケア虎ノ門、五十嵐院長、よろしくお願

いいたします。

五十嵐:きょうはお招きいただきまして、ありがとうございます。

障害者職業センターの方と直接お会いするチャンスというのはなか

なかなくて、ただ、今年度、全国何カ所かで医療機関とそれからその

地域の障害者職業センターの方とで交流するような講演会をやってお

りまして、来年もう一カ所、広島で行います。そういった事業をやっ

ている中で、その地方地方で随分とリワークのあり様というのは違う

のだなと実感しております。

時間の関係もありますので、先に進めてさせていただきますが、医

療機関の立場から今日はお話をいたします。

まず精神疾患で休職している人はどのぐらいいるか、というのは実はわかってなくて、

仕事をやめちている人はどのぐらいいるのかというのと、一緒に調べました。これは昨年

の今ごろ11月に、対象は日本精神科診療所協会、全国の1700程度の精神科の診療所

が加盟する団体ですけど、そこに調査をかけて、外来の患者さんの個人票を1万2881

人分いただき、解析しました。そうすると、予想どおり、統合失調症が15%ぐらいの割

合で、気分障害は約半分、それから神経症が3割ぐらい。すなわちうつ病圏、気分障害圏

が非常に多いというのがわかったわけです。

それで2011年に厚生労働省が患者調査を出しておりますので、そこをもとに今の数

値から仕事をしている人、休んでいる人、仕事をもうやめちゃった人、それから3年以上

そういう状態が続いている人を推計すると、こういうような数値になりました。

ざっくりいいますと、わが国の外来患

者、精神科の診療所という意味です。働

いている人が60万人ぐらいいて、休職

している人が10万人、それから実は大

きな問題だと思うのですけど、仕事をや

めちゃっている人、ただし就労経験ある

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人が20万人、うち3年以上が10万人ぐらいいると。こういう実態があるということを、

意外と世間はわかっていないのじゃないかなと思います。

そういった人に対し、今日は特に10万人の休職者の方の支援ということですが、将来

的にはこの失職した人をどうするかと、医療機関はずっと患者さんとして見ていかなきゃ

いけないわけですので、どのように再就労させるかというのが今後の大きな課題だと思っ

ています。

少し病気の話に戻りますと、昔から気分障害はこんなに若い人たちの病気だったかと、

ちょっと考えます。これは先ほどご紹介した厚生労働省の患者調査、3年ごとのデータを

96年から並べているわけです。余り細かい説明はできませんが、この赤い矢印のこの層

は、35歳から44歳の層ですね。どんどん上がっている。そのかわりに、2008年か

ら11年、一番後ろの層、

65歳以上は減っている。

この減っている意味がち

ょっと難しいんですけど

も、東北3県の調査があり

ませんでしたから、震災の

関係で。そういったものも

あるのかもしれません。で

も若い年齢層、20代後半

から30代というのは、か

なり増えているという実

態が国の調査としてある

わけですね。

じゃ、世界に目を向

けるとどうかというと、

これはWHOの200

0年のデータです。全

ての気分障害の人を対

象にしていますけども、

ここではブラジル、カ

ナダ、メキシコ、それ

からオランダ、トルコ、

アメリカと出ています

が、これは何を調査し

たかというと、45歳

以上の人を1としたと

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きに、例えばブラジルを見ますと、18歳から24歳の人が気分障害にかかるリスクは3.

9倍あると。カナダでも3.8倍、メキシコでも6.3倍、要するに世界的に、こういう

ことはわかっているわけです。だから、「もっと注意しなきゃいけない」ということは、国

際的にも認知されていると考えていいんじゃないでしょうか。

日本だけをちょっと考えてみますと、90年代の後半からバブルが崩壊して、就職氷河

期が随分続いた。ロストジェネレーションなんていう呼び方もされ、そういう時代であっ

た。それからIT化が随分急激に進んできた。当然会社の中での働き方、働かせ方が変わ

った。おのずと業務負荷は高くなる。一方で今の日本の大問題ですけども、少子化、高齢

化が進んでいる。学歴だけは高くなってくる。大学院を出て就職がうまくいくかどうかは

別として、相当の人が大学院に行く。どうも育てられ方も、育て方も変わってきて、新た

な世代が生まれてきている。これは昔から繰り返しているわけですね。

世界的にもどうもいろんなリスクがある。イギリスの社会学者ですけども、リスク社会

とも言っています。そういった中で全世界的に若い人たちがうつ状態といいますか、これ

が増えているのだろうと思うのですね。

私は2003年に虎ノ門にクリニックを開いて、その最初の年に、自分の責任はこっち

に置いといて、会社のせいでうつ病になったと言うような人たちが凄く多いなと感じまし

た。精神科医にとって他罰性というのは確かに課題ではあるのですけど、ここまでうつ病

の人が他罰的な言動をするかというぐらいのことを聞いて、びっくりしました。同時に不

安が非常に強いうつ状態、不安が強いと身体の症状が出るんですね。これは脳がそのよう

にできていますから当たり前なのですけど、そういった身体の症状を訴える抑うつ状態の

人が凄く多いと感じました。

この人たちを見ていて、私の経験として復職にことごとく失敗したわけです。それで2

005年にデイケアというものを利用してリワークプログラムを始めました。1年位経っ

たころに、よく見ていると軽躁状態が多いと。昔から軽躁状態というのは精神科医は知っ

てますけども、大したものじゃなかった。本当の躁状態というのは凄く重大な疾患状態で、

何とかしなきゃいけないんですけど、軽躁状態というのは、ちょこちょこあったなと思う

のですけども、でもこれほどまでに軽躁状態が多かったかな、ということを感じました。

さらに2年後の2008年

ごろから、頭は良いのだけど、

空気を読めない発達障害がベ

ースにある不適応、適応障害

の人が多いと感じました。す

なわち、我々のプログラムは

抑うつ状態の治療の場だろう

と。我々精神科医にとっては、

診断する場所だと考えるよう

になって、実際のプログラム

はコメディカルがほとんどや

ってくれるわけですけども、

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医者は診断をして治療するというプログラムになってきました。

プログラムのお話をちょっとします。一体どういったことを大事にしているかというこ

とです。そもそも私がこのプログラムを始めた時に作った図ですけども、ある健康状態が

こうありまして、だんだん病状が進んでくると、どこかで会社に行けなくなる。これは病

気が進んだ必然です。そうなると診断書を書くわけです。で、お休みしてもらう。治療の

基本は休養と薬物と言われてましたから、お薬をあげて経過を見る。どこかでもう大丈夫

かなと思って診断書を書く。この黄色のポイントですね。これは一応主治医が復職可能だ

ろうと経験から割り出したポイントですけども、それで復職させるとうまくいかなかった。

そのとき考えた図です。そうすると、ここにプログラムをかませれば、この黄色じゃなく

て青、これが会社の求めるレベルで、復職させられるだろうと考えた。

これがプログラムの一つの役割だろうと思ったのですが、実は今2014年ですけども、

会社の求めるレベルは明らかに上がっています。もう10年位こういうことをやってるわ

けですが、会社の復職基準が東京あたりでは定時勤務は当たり前、3、4カ月の就業制限

がかかりますけども、だんだんそれが外れていっちゃう。今大体6カ月から9カ月のプロ

グラムをやらないと、この赤のポイントが見つからないという現実でございます。

我々のところにいらっしゃる患者さんは、非常に重篤な人が多いなという印象はありま

すけれども、ミニマムで6カ月かかってるという現実がございます。

どういう治療構造を持っているかというと、我々はあくまでも薬と同じようなリハビリ

テーションとしての治療をやっていますので、こういうことになるわけですけども、外来

診療をして生活指導をすると。当たり前ですが、朝起きて夜決まった時間に寝て、出社で

きる時間に起きられなければ仕事どころじゃないわけですね。気分も戻ってなければ仕事

なんかさせられない。それを回復させて、あるところでプログラムが始まる。まずは集団

になじませます。集団になじんだところで病気の勉強をしてもらう。それから生活指導を

もう一度しっかりやるということをやって、それから内省をさせます。

その次は、我々は自己分析と呼んでいます。一体どういうことで休んだ。これは職場の

要因も多々あるわけですけど、自分にも課題があったから具合が悪くなったという、自己

をしっかり見つめなくちゃ。これは

我々にとって診断につながります。

診断が変わることもありますし、そ

れからご本人が気づいてないことが

多々ある。この自分の課題をしっか

り気づかなきゃ駄目なんですね。そ

の気づいたところに心理プログラム

が与えられる。一体自分が何に気を

つけなきゃいけないのか、だからこ

ういう心理プログラムは役立つとい

う、この順番が物すごく大事なわけ

ですね。

これは頭でわかっているレベルです。頭で十分わかっているけど、でもやっちゃうのが

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人間です。我々のプログラムではこの集団プログラムと書いてありますけど、会社組織の

ようにして、実際にやってもらう、行動療法に近いわけです。そうすると、やっぱり失敗

する。自分でちゃんと自己分析をして書いてるわけですけど、同じことをやっちゃう。そ

れはもう会社に戻ってなくてよかったねという話になるわけですけども、そこで実はスタ

ッフが介入するというのが治療的な接近だと思っています。そこで復職させる。復職させ

たらフォローをしっかりする。この復職直後が特に危ないので、どこかに相談するような

場所をしっかり設けてフォローしていく。ずっと治療を続けて、どこかで薬がなくなる。

目標は治癒です。お薬がなくなって普通に働いてる。大体我々のところにいらして5年ぐ

らいかかってここまで持っていくというようなことです。

すなわちプログラムは、まず第1条

件として最低限必要なことがある。こ

れは生活リズムを整えて、症状を回復

させる段階。それから認知の修正とい

いますけど、要するに病気をちゃんと

わかっている、これは当たり前ですけ

ども、それだけではなくて、発症要因

がちゃんとわかってなきゃだめとい

う段階があって、それから対人関係能

力を改善してなくちゃだめなのです

けど、実はそれは行動、コミュニケー

ションなわけですよね。行動変容があ

るという3段階を経て復職していくことが大事だと思ってます。

先ほど稲田さんのほうから

ご紹介もありましたけども、

我々も似たようなプログラム

をやっていて、個人のプログ

ラム、それから特定の心理プ

ログラム、それから教育のプ

ログラム、集団のプログラム、

それからその他というふうに

分けています。

似たようなことなのですが、

これは3年間の我々会員の調

査の結果をお示ししています

が、3年間調査した結果、こ

れはすいません、年度が入っていませんね。20年度、21年度、22年度だったと思い

ますが、個人プログラムはほとんど変わってない。特定の心理プログラムは余り変わらな

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い。教育プログラムは余り変わってない。変わったのは集団プログラムがどんとふえて一

番多くなっている。要するに我々心理プログラムだけやってればいいと思ったらそうじゃ

なくて、集団で何かさせないとだめだ。そこでうまくいくだけじゃなくて、失敗もしなき

ゃいけないと。失敗したときが介入のチャンスですね。その行動変容がないと、やっぱり

うまくいかないです。ということが、だんだんわかってきました。

我々はあくまでも医療機関ですので、リハビリテーションを行っています。これは治療

です。お薬と同じ治療です。すなわち無理はさせられない。一定の開始条件があって、一

定のステップ、それから無理だったら、中止ということにします。何を目標にしているか

というと、症状が安定してそれが続いてればどこかで終わっちゃうわけですね。復職準備

性の評価というものをします。こういったリハビリテーションをやっているのですけど、

その対象はやっぱり仲間ができるんですね。目標が大体同じです。再休職を予防するとい

うことが目標。抑鬱状態の人たちがいますから、皆さんお友達になるわけです。この仲間

の中で治っていくというのが大事だなと思っています。中には軽い統合失調症の人なども

いますし、双極性障害の人も3割ぐらいいるしと、いろんな疾患がまじっていますけど。

行っている内容は心理社会療法という治療です。これは皆さん御存じだと思います。

さて、今日はリワークのお話です。我々が行う治療は、医療リワークと最近呼んでいる

のですけど、障害者職業センターのリワーク支援とはやや違うところがあると考えており

ます。その違いがあるから連携があるわけです。全く同じことであれば、連携の必要もな

いわけです。それから最近は企業内で復職時に実施するプログラムがある、これもリワー

クといっているわけです。これはいろんな企業で最近始まっていますが、ないしはEAP

でこういうことをやっていますけど、これは復職が可能かどうかを見ているということだ

ろうと思いますので、これも少し別のことだろうと思います。その違いについて、我々の

ところは医療機関ですので、健康保険を使います。3割負担、場合によっては自立支援医

療で1割。対象は休職者。これはあくまでも治療であり、再発、再休職予防を目的として

いる治療でございます。

それから職業リワーク、障害者職業センターで行っているこのリワークは、労働保険で

行っている。ですから、公務員の方は対象にならないわけですけども、支援プランに基づ

く支援をされていると思います。それから職場リワークは、あくまでも企業が負担して、

労働させていいかどうかを見きわめている。この3者はやや違うということをご確認いた

だければと思います。

これは障害者職業センターのリワーク支援をステップ1、2、3、4とまとめてありま

すけども、ここで特徴づけられるのは、やはり最初です。ステップ1から企業担当者が入

っているということですね。それが違う。特にこのステップ3において事業主に対して助

言や支援をするというところが違う。ここのところで我々と連携ができるかなというよう

に考えております。

さて、実際に連携をしてみましたということを冒頭にご紹介いただきました。それにつ

いて少し触れてみたいと思います。これは障害者職業総合センターに対し我々が研究協力

をさせていただいたということです。その背景としましては、対応困難な利用者が随分増

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えてきたということがあったと。これは例えば常識的に考えて、職業人に求められる基礎

的要件の獲得が不十分なものとか、やたらに怒りっぽい人とか、発達障害の傾向を有する

者とか、全体の20%ぐらいいるのじゃないかと。これは確かに我々もそういうふうに感

じているわけですし、これは病気だと我々は見ますので、病気に対してどうするかという

発想ですけども、障害者職業センターではなかなかそうはいかないと思います。そこをど

うするかということが、一つのテーマでした。そういうことを通じて、地域の障害者職業

センターのリワーク支援の内容を補強する目的で、これを始めたということでございます。

基礎力がない人たちについて連携するには、最初に我々のところのプログラムをやって、

病状も確認して診断もはっきりさせて、本人にもちゃんと、あなたはこういう病気でこう

なのだということもわかってもらって、それで途中から障害者職業総合センターと乗り入

れをして、それで我々のところのプログラムを終わって、ビジネス基礎力再構築支援プロ

グラムというようなものをセンターのほうでやっていただいた、という例が何例かありま

した。現在も、この人たちはうまくいっています。

それからもう一つは、医療連携型短期復職支援プログラムの連携スキーム、これはもう

ちょっと短期間にやろうとしたのですけど、この例は余りできませんでした。報告書とな

っていると思いますので、ご覧いただければと思います。

今回、こういった連携を考

えていく場合、これは厚生労

働省の就労支援モデル事業

のこの企画書ですけども、今

年度私たちもこのモデル事

業を受託して行ってます。

どういうことを行ってる

かというと、我々のところに

1人分の人件費分をいただ

いて、就労支援担当者のよう

なコーディネーターを置い

て、それで我々内部の障害者

とかスタッフに対する支援

をするけども、むしろ外に向けて企業とか就労支援機関、特に障害者職業センターとかハ

ローワークと連携をとりながら、うまく復職してもらうという事業です。

これが始まって、今年度が2年目でございます。こういったことも、できれば本事業に

なっていってもらいたいなと考えているわけです。やはり人が連携をするということはす

ごく有効だということで、ことしも札幌駅前クリニックと、これは宇都宮のさくら・ら診

療内科と我々のところでプログラムを行っております。これはまた報告書として出ると思

います。

それで、我々のような医療機関で行うリワークのアウトカムというのは、一体どのぐら

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いの効果があるというのをちょっとお示しします。

これは休職2回以上、ま

たは1回目であっても18

0日ですから、半年以上休

職している人たちを対象に

調査をしました。我々の仲

間の全国の13施設が協力

してくれました。どういう

ことをしたかというと、

我々のプログラムに入って

るときに手を挙げてもらっ

て、情報をくれますか、い

いですよという人は、この

研究に組み入れたわけです。

あるとき復職します。復職後、3、6、9と3カ月ごとにずっと追っていったと。昨年の

12月31日で追跡を終わっています。

そうしますと、最初は625人対象がいたんですけども、研究参加に「これちょっと無

理です」とか、途中で脱落しちゃう人とか、最終的に210人復職した人を追っていった

んです。そうすると、これが結果になるんですけども、ゼロ日目からずっとだんだん右下

がりに下がってくる。これは生存曲線といって、カプラン・マイヤー法という算数を使う

とこういうのができて、例えば抗がん剤の効果がこうですみたいなのがあらわされるよう

な分析方法です。だんだんと再休職する人が増えてくる。ですから、就労継続の推定値と

して、この1年後に、86%就労してる。2年後は71%というようなことが出て、非常

に満足すべき結果だと思ってます。

我々の研究会をご紹介します。残念ながら、山形とか奈良、山口、島根がまだなんです

けども、ほぼ来年にはこの空白県も何とか会員ができると。今現在187の医療機関でリ

ワークのプログラムを行っています。どういう背景があるかというと、半分が独立系のク

リニックです。残りの半分は精神科病院とそのサテライトクリニックで40%ちょっと。

総合病院はわずか3%ですが、大学病院が9カ所、5%ある。大学病院は医者を育てると

ころですので、将来に向かって非常に頼もしいと思っています。

最後にちょっとビデオを見ていただきたいと思います。今プログラムのさわりみたいな

お話をしましたが、これを実際に映像で見ると、非常によくわかります。勉強のためにド

ラマで学んで、プログラムというのはこういうものだというのをわかっていただきたいと

いうことで作りました。

これをプロデュースしてくれたのは、私のもとの患者さんで、もう治療が終わっている

人ですが、映画監督をやっている人で、ここに登場している人たちは皆さんプロの俳優さ

んたちです。

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(映像)

時間は175分ですけど、私も

ちょっとレクチャーなんかしてい

ます。今のようなドラマで若いス

タッフが失敗をしながら成長して

いくと。ご本人が復職していくの

をドラマ風に描いています。失敗

のときにどうすればいいかという

ことを、このプログラムではレク

チャーパートとして挿入していま

すので、ぜひ一度ご覧になってい

ただければと思います。

私の話は、以上で終わらせていただきます。どうもご静聴ありがとうございました。(拍

手)

司会(今若):ありがとうございました。

3人のパネリストのご発表から、いろいろと配慮をしつつ、専門性を生かした支援、あ

るいは企業として復職に向けた取り組みをされていることがわかりました。この中にも、

今後連携を進めていくモチーフが幾つかちりばめられていたのではないかと思います。

そういった意味でお三方に同じご質問をさせていただければと思っております。

復職に向けた取り組み、または支援を行うに当たって、自分としては難しさを感じてい

て、他の専門的な協力を得る必要があるなと感じられる点がございましたら、お一方ずつ

簡単にお話しいただければと思います。

では、川浦部長から、いかがでございましょうか。

川浦:企業としてですが、やはり企業としては専門ではない。病気になった以上は、完全

に主治医、先生にお願いするという形になるかと思います。

あと復帰に向けて、会社としてはこの復帰についてのある程度の目処というのは、単独

の判断ではなかなか難しい面があります。先ほどの発表でも言いましたけど、気をつけて

いる部分で、主治医との連携などが、まず重要だと。実際に病気になって治療している方

について情報を交換する。これはどこまでできるかというのはあると思うのですけれど、

できるだけ情報交換することがまず重要、そのための信頼関係をつくっていくと。

我々企業としては、そういった従業員に対して、これこれを努力して、何とか復帰をさ

せたいという思いがある、ということを、いかに専門職、主治医の方、またリワークに対

してお伝えをするか。そういったことができないと、なかなか復帰というのは難しい。

また、先ほど先生のほうも触れられた、なかなか復帰が難しい適応障害的な者などの支

援が、大きな課題です。この辺も主治医とかと相談しながら、どういった復職のプログラ

ムがいいか、我々企業としてはやはり実際に復職、職場に戻ることになり、そのプログラ

ムでの仕事の量、質、そういったものを検討しなければいけないので、主治医との連携や

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リワークを含めたプログラムの内容、そういったものが今後の課題と思ってます。

司会(今若):ありがとうございます。

それでは、稲田主幹、よろしくお願いいたします。

稲田:五十嵐先生も先ほど触れていただきました職場復帰のコーディネートというのが、

連携の第一歩と考えています。この3者というのが、同じ方向に進むということがスムー

ズな職場復帰につながると考えますので、このコーディネートというステップは、非常に

重要だと考えております。

この時間でまず主治医との連携についてお話をさせていただきたいのですが、地域セン

ターには、医療リワークとは違い、精神科医療の専門スタッフは常駐しておりませんし、

医療的体制は整備はされておりません。したがいまして、ご本人の状態像を精神医学的な

観点から適切に評価するだけの専門知見というのが十分蓄積されているとは言いがたい状

況と考えております。

このため、言うまでもなく主治医の先生を初めとした医療機関の方々との連携が欠かせ

ないと考えております。

リワーク支援の際にご本人の様子とか、活動内容で気になる変化が見られたときはなお

のことですが、復帰先の職場を、先ほど五十嵐先生がここ10年で求められるレベルが上

がったというお話もありましたけれど、そういうものを想定して、どの程度、どのぐらい

の時期に負荷をかけていけば良いか、そういったところは、やはり私どもだけではかなり

逡巡する場面がございます。このような際に、主治医の先生から、継続的にご助言をいた

だけますと、センターとしても安心ですし、何よりご本人に対してより適切な支援ができ

るのではないかと考えております。

先ほど来お話に出ています障害となるその疾患なり、障害の多様性なり、あと支援の困

難性といったこと地域センターでも感じているところでして、より主治医と、企業の方は

もちろんですけれども、川浦部長からもご意見がございましたように、連携して対応しな

いと地域センター単独で全てを受けとめていくことは難しいと。そういった意味合いから

も連携の重要性は、ますます高まっていると考えております。

司会(今若):ありがとうございました。

では、五十嵐委員長、医療リワークのプログラムの立場から、この領域については例え

ば職リハ機関にお願いしたい、ということがございましたら、お願いいたします。

五十嵐:プログラムを実際行っていて難しさというのは、まずご本人のモチベーションが

ない人をプログラムに入れて、プログラムをやってもらうことはまず不可能なので、モチ

ベーションをいかに作ってもらうかというのは、企業さんのほうにお願いしたいことかな

と。

プログラムはご本人のモチベーションがあれば、どんな疾患でも何とかなるんですね。

入ってきてくれれば、きちんと復職というところまでいくと思います。会社に命令された

とか、虎ノ門のプログラムに参加しないと復職させないとかというモチベーションレベル

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では到底続きません。そういったところが難しいなというふうに1つ思います。

ちなみに、我々のところにご紹介いただく利用者の方、半分ぐらいは産業医の先生が説

得してくれているんですね。これが必要だと。かくかくしかじかということを十分言い含

めて、いらっしゃっていただいています。そういう人たちはうまくいくのですけど、だか

ら会社といかに上手に連携するか、すごく大事なところでございます。

それからもう一つ難しいなと思うのは、例えば我々医療機関の人間が会社に行って、人

事と会いたいと言っても、いや、ここからは入っては困りますとかそういう場所があって、

なかなか会社に入れてもらえないという現実も一方である。最近そういったリワークプロ

グラムなんかもわかっていただけるようになって、人事の方も大分迎え入れてくれるよう

にはなりましたけども、なかなかハードルは高いですね。そういう点では、障害者職業セ

ンターは錦の御旗といいますか、ご本人の了解を得ているわけだし、医療機関のスタッフ

とはちょっと違うという意味で、この連携を会社ととるのは非常に得意なのだろうと思い

ます。むしろ図式的に言うと、我々のところでプログラムをしっかりやって、診断までは

っきり決まって安定して、最後の総仕上げのところをお願いしたいケースは実はあるんで

すね。それは会社で復職までの間にかなり事例性が高くなっているもので、いろんなトラ

ブルが起こっているとか、会社としては困っているというような人たちに関しては、セン

ターにお願いして、やっていただくということも大事かもしれないと思うんですね。それ

をうまく流していくためにもコーディネーターがいると非常にやりやすい、スムーズにい

くという側面があります。

難しさに関していうと、その2点に集約されるかなと思います。

司会(今若):ありがとうございました。

川浦部長、稲田主幹にお聞きしたいと思います。事業主が復職を進めていくに当たって、

支援機関を効果的に活用する、ご発表の中でもございましたが、その活用、あるいはその

活用に当たっての留意点などがございましたら。

川浦部長、よろしいでしょうか。

川浦:特に企業として、やはりこういった支援機関、リワークに対しては、まず本人に紹

介するという立場しかとれない状況があります。あとは本人がどう対応していくか。ただ、

実際にはその紹介によって、自らリワークを利用したいというふうに、ある意味しむける

のですけれど、強制はしません。それでも、やはり本人も、僕も復職、復帰をしたいとい

う思いがある。先ほど先生もモチベーションと言われました。やはりそういうお気持ちに

させた上で紹介をしているということがあります。いかにうまく本人にリワークを利用し

ていただくかという、ある意味持っていき方ですかね、そのように進めている現状です。

リワーク支援を進める中では、今の専門スタッフと、あとリワーク支援の方で多い時は

月に数回、会社で情報交換や今の状況の説明をしてもらって、いま少し状況変わりました

よといったときにはすぐに主治医に情報を流して、プログラムを本人が復帰できる内容に

していく。そういう変化点をいかに早目に見つけて対応するか、結構気を使ってるところ

です。

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司会(今若):ありがとうございます。

では、稲田主幹、いかがでしょうか。

稲田:支援機関の立場からということで、お話をさせていただきたいと思います。

地域センターとしては五十嵐先生がおっしゃってくださったように、主治医の先生や機

関等をつなぐコーディネートを含めて行っていく、そういった役割を発揮できる部分があ

るのではないかと考えております。

その中で、職リハ機関ということでいいますと、特に復帰後の職場適応を見据えた企業

様との連携というところが、私どもができる部分と考えております。

企業さんとの連携に関しては、できる限り事業所の方と直接お会いして、連絡を密に取

り合う中で、より近い関係構築を目指したいと考えています。事業所の方に積極的に関わ

っていただけると、支援開始前から率直に意見交換をさせていただけて、かなりスムーズ

な復帰が実現しているケースもあります。支援終了後も継続させていただくことで、ご本

人がその後の体調の変化などがあったときに、事業所の方と仕事量の調節について検討す

るだとか、迅速な対応が可能と考えております。

ご本人の側から見ると、ご自身の取り組みの努力や、あるいは成果について、会社さん

が見ていてくださるということが励みになるといったお話も、ご本人から出ております。

やはり会社様の積極的な関わり、あるいは私どもとの連携を引き続きお願いしたいと思っ

ております。

また、障害の多様性についてですが、会社との直接交渉などをご本人にお任せすると不

安が強くなる、あるいはコミュニケーション能力に制限があるという方もいらっしゃいま

す。そういった方につきましては、職リハ機関が関与することが有効ではないかと考えて

おります。

司会(今若):ありがとうございました。

五十嵐院長にお聞きしたいと思います。主治医との連携という点につきまして、医師の

お立場から何かアドバイスをいただければと思います。

五十嵐:いろいろ生々しい話をしますと切りがないですけども、主治医も例えば日本精神

神経学会というような学会の専門医制度、精神科の領域でもっているわけですね。1万2

000人ぐらいの会員がいるわけです。ですから1万2000人もいればさまざまなので

すね。どの先生がこういった復職ということに慣れていて、会社の事情がわかっていて、

いろいろ助けてくれる先生か。いや、それじゃなくて余りそういうことに興味のない人も

いるわけですね。ですから、興味がない先生のところに行っている患者さんというのは、

やっぱり不幸だと私は思います。できることであれば、そういうことに興味を持って積極

的に後押しをしてくれる先生のところに変わった方がいいというふうに、私は率直に申し

上げます。

ただ、1万2000人もいると、一体誰がどうなのか、というのは、本当にわからない、

困る。という中で、6月に法案が通って、来年の今ごろにはほぼ実施がされるんでしょう

けども、50人以上の事業所でストレスチェックが行われるわけですね。ですから、産業

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保健領域では、このことは今の最大の課題になっていて、会社でそういうストレスチェッ

クをやって具合が悪いという人が出てきたときに、医療機関はどこに紹介すればいいのか

わからない、困ったと、何とかしろ、という話があちこちから出てきています。精神科診

療所協会と日本産業精神保健学会というのがありまして、そこで、この先生なら大丈夫だ

ろうというリストを作ろうと。それをインターネット上で公開するという事業が始まりま

した。法人が設立されたのが昨日じゃないかと思います。これからこの人は大丈夫という

ようなノミネートをしていく段階ですので、そういう先生のところに行っていれば一応大

丈夫かもしれないと。そういう精神科医の基準としては、全ては覚えていませんけども、

精神科産業医の経験が何年か、それから専門医はもちろん取っている、指定医ももちろん

取っている、臨床経験も十分ある、という先生を全国20人ぐらいの理事が推挙する形で

作っていきますので、ぜひ利用していただけば良いと思います。

ですから、主治医との連携といっても、ちゃんと連携をしてくれる先生と連携しないと

駄目なのだなということでございます。一番の被害者というか痛みを感じるのは患者さん

であり社員の方ですので、そういったことを我々は今始めたところです。

司会(今若):ありがとうございました。

最後に一言、五十嵐院長にお話しいただければと思います。

私ども職業センターとのモデル的連携を踏まえまして、今後地域においてリワーク機能

を有する医療機関とその地域センターとの連携の充実、あるいは拡充につきまして何かご

意見がございましたらお願いいたします。

五十嵐:冒頭お話をしましたけども、今年度は5カ所で講演会を行っています。そのやり

方というのは、まずその地域の障害者職業センターに出てきていただいて、お話をいただ

くと。大体30分ぐらいお話をして、その地域にある我々の仲間、医療機関でリワークを

やっているところ、それが手挙げ方式ですけども、自分たちのプログラム等を紹介すると

いう場をつくっております。そういう活動が1つできるといいなと思いますし、その地域

の中で、一緒に研究会をやったり、一緒の集まりをやっているところがあります。そうい

うものをどんどん紹介していきたいと思っています。今後もそういった形で事業が続けら

れればと考えている次第です。

司会(今若):ありがとうございました。

そういった地域での活動に積極的に参加し、連携を深めていくことでより質の高い充実

した支援が行えるのではないかと思います。

では、最後に簡単にまとめさせていただければと思います。

本日のパネルディスカッションの目的は幾つか冒頭述べさせていただきました。私の進

行の不手際もあり、それについて十分皆様に情報提供できたかどうかというのは、反省を

するところでございます。ただ、3名のパネリストからのご発表、あるいはご発言により、

いろいろな部分でご示唆をいただけたのではないかと思っております。

本日のこのご意見を踏まえ、今後、各支援現場において強みと専門性を重ね合わせるよ

うな連携を行うことができれば、と考えております。特に全国各地に広がりつつあります

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うつ病リワーク研究会と地域センターのリワーク支援の連携の充実が図られることを期待

したいと思います。

最後に、もう一つの視点でまとめを行ってみたいと思います。

平成30年に障害者雇用率制度における精神障害者の雇用義務化が予定されております。

この法律の施行によって、企業は精神障害者の雇い入れを本格的に検討し始めるものと考

えます。この雇用義務化の動向と、休職者の職場復帰支援の実施は決して無関係のもので

はないと思います。

社員が休職などにより企業の生産活動に寄与できない状況が発生することは、企業にと

ってさまざまな意味で大きな損失となります。企業は、その損失の問題の解決に取り組ん

でいると言えます。

そこに精神障害者の雇用義務化に伴う新たな雇い入れの課題が加わることになります。

支援機関は精神障害者に関連したこの2つの課題について、引き続き支援を行っていくこ

とになります。私は休職者による企業の損失の問題解決に協力するということは、必ず精

神障害者の新たな雇い入れにつながるものと信じております。すなわち、うつ病による休

職者に対する職場復帰支援の取り組みは、精神障害者の雇用の促進と雇用の継続という点

においても重要であると考えるところであります。この視点を持って、今後企業、医療機

関、支援機関が円滑に連携し、これらの課題に取り組んでいただきたいと考えます。

以上でございます。

改めまして、パネリストの皆様、そして本日会場に起こしいただきました皆様にお礼を

申し上げ、本会場のパネルディスカッションを終了いたします。

皆様、大変ありがとうございました。(拍手)