名フィル・ウィンド・オーケストラ2020 · 2020. 9. 23. · alfred reed (1921-2005):...

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2020-21 SEASON 名フィル・ウィンド・オーケストラ2020 9月27日(日) 9 9 2020 September

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  • 2020-21 SEASON

    名フィル・ウィンド・オーケストラ20209月27日(日)

    992020 September

  • プログラム Program

    3:00pm, Sunday September 27, 2020 at NTK Hall Forest Hall2020年9月27日(日)15:00 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール

    Nagoya Philharmonic Wind Orchestra 2020名フィル・ウィンド・オーケストラ2020

    主  催 :後  援 :

    公益財団法人名古屋フィルハーモニー交響楽団愛知県・愛知県教育委員会・名古屋市・名古屋市教育委員会・公益財団法人名古屋市文化振興事業団・朝日新聞社・メ~テレ・愛知県吹奏楽連盟

    Alfred Reed (1921-2005): The Hounds of Spring (A Concert Overture for Winds)アルフレッド・リード:序曲『春の猟犬』 (約9分)

    Robert Jager (1939- ): Sinfonia Nobilissima for Bandロバート・ジェイガー:シンフォニア・ノビリッシマ (約7分)

    Jan Van der Roost (1956- ): Canterbury Choraleヤン・ヴァン・デル・ロースト:カンタベリー・コラール (約7分)

    Jun Nagao (1964- ): Paganini Lost in Wind長生淳:パガニーニ・ロスト イン ウィンド (約10分)

    Toshio Mashima (1949-2016): Seagull (Ballad for Alto Saxophone and Band)真島俊夫:アルト・サクソフォンと吹奏楽のためのバラード『シーガル』* (約6分)

    Alan Menken (1949- ) [arr. Hideaki Miura (1982- )]: “Aladdin” Symphonic Medleyアラン・メンケン[三浦秀秋編]:『アラジン』シンフォニック・メドレー (約9分)

    Hirotaka Izumi (1958- ) [arr. Toshio Mashima]: Omens of Love和泉宏隆[真島俊夫編]:オーメンズ・オブ・ラブ (約5分)

    Masamicz Amano (1957- ): Finding Oedo Nihonbashi天野正道:ファインディング・お江戸日本橋*

    第1楽章

    第2楽章

    第3楽章

    お江戸日本橋

    メモワール ドゥ T.M.

    フィナーレ

    Oedo Nihonnbashi

    Mémoire de T.M.

    Finale

    (約17分)

    Nobuya SUGAWA, Conductor / Saxophone指揮・サクソフォン*:須川展也

    休憩 Intermission (20分)

  • プロフィール Biography

    日本が世界に誇るサクソフォン奏者。そのハイレベルな演奏と、自身が開拓してきた唯一無二のレパートリーが国際的に熱狂的な支持を集めている。名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱・初演された多くの作品がクラシカル・サクソフォンの主要レパートリーとして国際的に広まっている。近年では坂本龍一「Fantasia」、チック・コリア「Florida to Tokyo」、ファジル・サイ「組曲」「サクソフォン協奏曲」などがある。また最近はサクソフォン1本による無伴奏の世界にも新たに取り組んでいる。N響をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演、海外でもBBCフィル、フィルハーモニア管、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団等と多数共演を重ねている。東京藝術大学卒業。第51回日本音楽コンクール、第1回日本管打楽器コンクール最高位受賞。出光音楽賞、村松賞を受賞。1998年JTのTVCM、2002年NHK連続テレビ小説「さくら」のテーマ演奏をはじめ、TV・ラジオへの出演も多い。1989年から2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを務めた。2014年にデビュー30周年を迎え、東京文化会館大ホールでの記念公演は完全完売の大盛況となった。2019年にデビュー35周年を迎えた。これまでに約30枚のCDをリリース。最新CDは自身初の無伴奏作品となる「バッハ・シークェンス」(2020年10月21日発売予定)。2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」を刊行。サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。また現在、ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督を務めている。東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。

    須川展也 (指揮/サクソフォン) Nobuya SUGAWA, Conductor / Saxophone

    使用楽器:ソプラノSax:YSS-875EXGアルトSax:YAS-875EXG(いずれもヤマハ株式会社)

    http://www.sugawasax.comYouTubeにてレッスン動画シリーズ「須川展也のSAXTIPS」公開中

    FacebookTwitter更新中

  • 曲目解説 Program Note

    アルフレッド・リード序曲『春の猟犬』

    ロバート・ジェイガーシンフォニア・ノビリッシマ

    ヤン・ヴァン・デル・ローストカンタベリー・コラール

    中橋愛生(作曲家)

    吹奏楽の神様、とまで言われるアメリカの作曲家リード(1921-2005)。代表作「アルメニアン・ダンス」は吹奏楽を象徴する一曲と言えるほどの存在だ。1980年に発表された「春の猟犬」は数あるリードの作品でも人気のある作品。タイトルは、イギリスの詩人アルジャーノン・チャールズ・スウィンバーン(1837-1909)がギリシア悲劇を元に創作した「カリドンのアタランタ」という劇詩の冒頭、「春の猟犬が冬の足跡を辿る頃、月の女神が牧場で草原で暗がりを、風吹く場所を葉音、雨音で満たす」という一節から取られている。詩の内容、というより世界観からインスピレーションを受け、若さ溢れる活き活きとした様子と、優しい恋の甘さが音で鮮やかに描かれている。

    ジェイガー(1939- )はアメリカの作曲家で、アメリカ吹奏楽指導者協会が制定している権威ある作曲賞のABAオストワルド作曲賞を三度受賞するなど、その実績は高く評価されている。ジェイガーは日本でも人気が高く、なかでもこの「シンフォニア・ノビリッシマ」は1970年代より絶大な支持を得ている。ジェイガーの作品はシリアスなものが多いが、最初期の作品にして代表作として知られている本作は、例外的なまでに温かく親しみやすい雰囲気のもの。それは、この曲が作曲当時に恋人でのちに妻となった女性に捧げられていることと無関係ではあるまい。タイトルは「高貴な器楽曲」というような意味で、古典的なソナタ形式のスタイルで書かれている。

    ヴァン・デル・ロースト(1956- )はベルギーの作曲家。日本の吹奏楽で演奏されるのはかつてはアメリカの作品が中心であったが1990年代あたりよりヨーロッパの作品に比重が移っている。その中でも特に人気が高いのがヴァン・デル・ローストだ。様々な曲想の作品があるが、ゆったりとした内容での一番人気となっているのが、この「カンタベリー・コラール」。1991年に英国式金管バンドのために作られ、

    1993年に吹奏楽版も編まれている。1130年に完成したイギリス国教会の総本山であるカンタベリー大聖堂にヴァン・デル・ローストが訪れた際の印象から作られた、温かさと厳粛さの同居するコラールである。

    長生淳(1964- )はテレビやラジオのための音楽から現代音楽に至るまで、多岐に渡る内容の作品を発表している作曲家。吹奏楽作品も数多く発表しており、その繊細で緻密な音楽は高く評価されている。本日の指揮者である須川展也との交流は深く、様々な機会に楽曲を提供している。本作は須川の委嘱で2008年に書かれた2本のサクソフォンとピアノのための

    「パガニーニ・ロスト」を、2011年に東京佼成ウインドオーケストラの委嘱で拡大・編曲した作。いわゆる「パガニーニの主題」を用いた変奏曲だが、その主題「そのもの」が出てくることはない。これは長生によると、須川に感じた「音楽における求道的な姿勢」ひいては「今の世の中にあってしばしば見失われがちな、本当に大切ななにかを追い求める気持ち」によるとのこと。また菱山修三の詩集「夢の女」所収の詩「Paradise Lost」に漂う喪失感も、根底にあるという。

    やはり須川のために作られた本作は、映像音楽から現代音楽、ポップスまで幅広い分野に作品を提供し、吹奏楽でも絶大な人気を誇る作曲家・天野正道(1957- )による。2019年に須川の独奏・指揮で、今年末まで須川が常任指揮者を務めるヤマハ吹奏楽団により録音初演された協奏曲スタイルの作品である。タイトル通り、東海道五十三次の宿場名を歌った民謡「お江戸日本橋」の旋律を素材に構成され、全編がジャズ・テイストに満ちている。この題材は、2020年に東京オリンピックが予定されていたことから須川が提案したのだという。第1楽章「お江戸日本橋」、第2楽章「メモワール ドゥ T.M.」、第3楽章「フィナーレ」

    という3楽章構成を取っている。第2楽章にある「T.M.」とは作曲家・真島俊夫のことで、真島の作品である後述する「シーガル」と「夢」(天野が録音初演の指揮を担当した、アルト・サクソフォンと吹奏楽のための作品)の2曲が盛り込まれている。

    日本の吹奏楽界を代表する作曲家の一人であり、吹奏楽によるシンフォニック・ポップスの第一人者である真島俊夫(1949-2016)が1994年に須川のために書き下ろした作品。「シーガル」は「かもめ」の意味。元々はアルト・サクソフォンと弦楽合奏とギター、という編成だったが、吹奏楽伴奏版も作られた。単独の楽曲だったが、須川との協議で2つの楽章「スワロー」と「フェニックス」を書き加え、2009年に「シーガル」を第2楽章とした協奏曲「バーズ」(鳥たち)となっている。この曲の旋律が「生涯で作ったもので最もお気に入り」とは、生前の真島が筆者に語った談。

    1992年にディズニーが製作したアニメーション映画「アラジン」の音楽は、アカデミー賞など数々の受賞歴のあるアメリカの作曲家メンケン(1949- )による。それを、吹奏楽ではニュー・サウンズ・イン・ブラスなどで、管弦楽では多くのプロ楽団へのアレンジ提供で活躍する作編曲家・三浦秀秋(1982- )がヤマハ吹奏楽団のために2018年に編曲したのが、今回演奏されるもの。「アラビアンナイト」、「フレンドライクミー」、「ホールニューワールド」の3曲によるメドレーで、ソロから全合奏まで吹奏楽の機能を存分に活かしたアレンジとなっている。

    原曲はフュージョン・バンド「T-SQUARE」が1985年にリリースした曲で、作曲は1998年までメンバーだったキーボーディスト・和泉宏隆(1958- )による。それを前述の真島が1986年の「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」のために吹奏楽アレンジをし、やはり和泉の作である「宝島」とともに、吹奏楽の定番レパートリーとなっている。タイトルは「恋の予感」というような意味。ちなみに、原曲はインストゥルメンタルのため歌詞は無かったが、のちに松本隆によって歌詞が付けられ「ウィンク・クラー」というタイトルで発表、小泉今日子などによってカバーされている。

  • 長生淳パガニーニ・ロスト イン ウィンド

    天野正道ファインディング・お江戸日本橋

    中橋愛生(作曲家)

    吹奏楽の神様、とまで言われるアメリカの作曲家リード(1921-2005)。代表作「アルメニアン・ダンス」は吹奏楽を象徴する一曲と言えるほどの存在だ。1980年に発表された「春の猟犬」は数あるリードの作品でも人気のある作品。タイトルは、イギリスの詩人アルジャーノン・チャールズ・スウィンバーン(1837-1909)がギリシア悲劇を元に創作した「カリドンのアタランタ」という劇詩の冒頭、「春の猟犬が冬の足跡を辿る頃、月の女神が牧場で草原で暗がりを、風吹く場所を葉音、雨音で満たす」という一節から取られている。詩の内容、というより世界観からインスピレーションを受け、若さ溢れる活き活きとした様子と、優しい恋の甘さが音で鮮やかに描かれている。

    ジェイガー(1939- )はアメリカの作曲家で、アメリカ吹奏楽指導者協会が制定している権威ある作曲賞のABAオストワルド作曲賞を三度受賞するなど、その実績は高く評価されている。ジェイガーは日本でも人気が高く、なかでもこの「シンフォニア・ノビリッシマ」は1970年代より絶大な支持を得ている。ジェイガーの作品はシリアスなものが多いが、最初期の作品にして代表作として知られている本作は、例外的なまでに温かく親しみやすい雰囲気のもの。それは、この曲が作曲当時に恋人でのちに妻となった女性に捧げられていることと無関係ではあるまい。タイトルは「高貴な器楽曲」というような意味で、古典的なソナタ形式のスタイルで書かれている。

    ヴァン・デル・ロースト(1956- )はベルギーの作曲家。日本の吹奏楽で演奏されるのはかつてはアメリカの作品が中心であったが1990年代あたりよりヨーロッパの作品に比重が移っている。その中でも特に人気が高いのがヴァン・デル・ローストだ。様々な曲想の作品があるが、ゆったりとした内容での一番人気となっているのが、この「カンタベリー・コラール」。1991年に英国式金管バンドのために作られ、

    1993年に吹奏楽版も編まれている。1130年に完成したイギリス国教会の総本山であるカンタベリー大聖堂にヴァン・デル・ローストが訪れた際の印象から作られた、温かさと厳粛さの同居するコラールである。

    長生淳(1964- )はテレビやラジオのための音楽から現代音楽に至るまで、多岐に渡る内容の作品を発表している作曲家。吹奏楽作品も数多く発表しており、その繊細で緻密な音楽は高く評価されている。本日の指揮者である須川展也との交流は深く、様々な機会に楽曲を提供している。本作は須川の委嘱で2008年に書かれた2本のサクソフォンとピアノのための

    「パガニーニ・ロスト」を、2011年に東京佼成ウインドオーケストラの委嘱で拡大・編曲した作。いわゆる「パガニーニの主題」を用いた変奏曲だが、その主題「そのもの」が出てくることはない。これは長生によると、須川に感じた「音楽における求道的な姿勢」ひいては「今の世の中にあってしばしば見失われがちな、本当に大切ななにかを追い求める気持ち」によるとのこと。また菱山修三の詩集「夢の女」所収の詩「Paradise Lost」に漂う喪失感も、根底にあるという。

    やはり須川のために作られた本作は、映像音楽から現代音楽、ポップスまで幅広い分野に作品を提供し、吹奏楽でも絶大な人気を誇る作曲家・天野正道(1957- )による。2019年に須川の独奏・指揮で、今年末まで須川が常任指揮者を務めるヤマハ吹奏楽団により録音初演された協奏曲スタイルの作品である。タイトル通り、東海道五十三次の宿場名を歌った民謡「お江戸日本橋」の旋律を素材に構成され、全編がジャズ・テイストに満ちている。この題材は、2020年に東京オリンピックが予定されていたことから須川が提案したのだという。第1楽章「お江戸日本橋」、第2楽章「メモワール ドゥ T.M.」、第3楽章「フィナーレ」

    という3楽章構成を取っている。第2楽章にある「T.M.」とは作曲家・真島俊夫のことで、真島の作品である後述する「シーガル」と「夢」(天野が録音初演の指揮を担当した、アルト・サクソフォンと吹奏楽のための作品)の2曲が盛り込まれている。

    日本の吹奏楽界を代表する作曲家の一人であり、吹奏楽によるシンフォニック・ポップスの第一人者である真島俊夫(1949-2016)が1994年に須川のために書き下ろした作品。「シーガル」は「かもめ」の意味。元々はアルト・サクソフォンと弦楽合奏とギター、という編成だったが、吹奏楽伴奏版も作られた。単独の楽曲だったが、須川との協議で2つの楽章「スワロー」と「フェニックス」を書き加え、2009年に「シーガル」を第2楽章とした協奏曲「バーズ」(鳥たち)となっている。この曲の旋律が「生涯で作ったもので最もお気に入り」とは、生前の真島が筆者に語った談。

    1992年にディズニーが製作したアニメーション映画「アラジン」の音楽は、アカデミー賞など数々の受賞歴のあるアメリカの作曲家メンケン(1949- )による。それを、吹奏楽ではニュー・サウンズ・イン・ブラスなどで、管弦楽では多くのプロ楽団へのアレンジ提供で活躍する作編曲家・三浦秀秋(1982- )がヤマハ吹奏楽団のために2018年に編曲したのが、今回演奏されるもの。「アラビアンナイト」、「フレンドライクミー」、「ホールニューワールド」の3曲によるメドレーで、ソロから全合奏まで吹奏楽の機能を存分に活かしたアレンジとなっている。

    原曲はフュージョン・バンド「T-SQUARE」が1985年にリリースした曲で、作曲は1998年までメンバーだったキーボーディスト・和泉宏隆(1958- )による。それを前述の真島が1986年の「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」のために吹奏楽アレンジをし、やはり和泉の作である「宝島」とともに、吹奏楽の定番レパートリーとなっている。タイトルは「恋の予感」というような意味。ちなみに、原曲はインストゥルメンタルのため歌詞は無かったが、のちに松本隆によって歌詞が付けられ「ウィンク・クラー」というタイトルで発表、小泉今日子などによってカバーされている。

  • 真島俊夫アルト・サクソフォンと吹奏楽のためのバラード『シーガル』

    アラン・メンケン[三浦秀秋編]『アラジン』シンフォニック・メドレー

    和泉宏隆[真島俊夫編]オーメンズ・オブ・ラブ

    中橋愛生(作曲家)

    吹奏楽の神様、とまで言われるアメリカの作曲家リード(1921-2005)。代表作「アルメニアン・ダンス」は吹奏楽を象徴する一曲と言えるほどの存在だ。1980年に発表された「春の猟犬」は数あるリードの作品でも人気のある作品。タイトルは、イギリスの詩人アルジャーノン・チャールズ・スウィンバーン(1837-1909)がギリシア悲劇を元に創作した「カリドンのアタランタ」という劇詩の冒頭、「春の猟犬が冬の足跡を辿る頃、月の女神が牧場で草原で暗がりを、風吹く場所を葉音、雨音で満たす」という一節から取られている。詩の内容、というより世界観からインスピレーションを受け、若さ溢れる活き活きとした様子と、優しい恋の甘さが音で鮮やかに描かれている。

    ジェイガー(1939- )はアメリカの作曲家で、アメリカ吹奏楽指導者協会が制定している権威ある作曲賞のABAオストワルド作曲賞を三度受賞するなど、その実績は高く評価されている。ジェイガーは日本でも人気が高く、なかでもこの「シンフォニア・ノビリッシマ」は1970年代より絶大な支持を得ている。ジェイガーの作品はシリアスなものが多いが、最初期の作品にして代表作として知られている本作は、例外的なまでに温かく親しみやすい雰囲気のもの。それは、この曲が作曲当時に恋人でのちに妻となった女性に捧げられていることと無関係ではあるまい。タイトルは「高貴な器楽曲」というような意味で、古典的なソナタ形式のスタイルで書かれている。

    ヴァン・デル・ロースト(1956- )はベルギーの作曲家。日本の吹奏楽で演奏されるのはかつてはアメリカの作品が中心であったが1990年代あたりよりヨーロッパの作品に比重が移っている。その中でも特に人気が高いのがヴァン・デル・ローストだ。様々な曲想の作品があるが、ゆったりとした内容での一番人気となっているのが、この「カンタベリー・コラール」。1991年に英国式金管バンドのために作られ、

    1993年に吹奏楽版も編まれている。1130年に完成したイギリス国教会の総本山であるカンタベリー大聖堂にヴァン・デル・ローストが訪れた際の印象から作られた、温かさと厳粛さの同居するコラールである。

    長生淳(1964- )はテレビやラジオのための音楽から現代音楽に至るまで、多岐に渡る内容の作品を発表している作曲家。吹奏楽作品も数多く発表しており、その繊細で緻密な音楽は高く評価されている。本日の指揮者である須川展也との交流は深く、様々な機会に楽曲を提供している。本作は須川の委嘱で2008年に書かれた2本のサクソフォンとピアノのための

    「パガニーニ・ロスト」を、2011年に東京佼成ウインドオーケストラの委嘱で拡大・編曲した作。いわゆる「パガニーニの主題」を用いた変奏曲だが、その主題「そのもの」が出てくることはない。これは長生によると、須川に感じた「音楽における求道的な姿勢」ひいては「今の世の中にあってしばしば見失われがちな、本当に大切ななにかを追い求める気持ち」によるとのこと。また菱山修三の詩集「夢の女」所収の詩「Paradise Lost」に漂う喪失感も、根底にあるという。

    やはり須川のために作られた本作は、映像音楽から現代音楽、ポップスまで幅広い分野に作品を提供し、吹奏楽でも絶大な人気を誇る作曲家・天野正道(1957- )による。2019年に須川の独奏・指揮で、今年末まで須川が常任指揮者を務めるヤマハ吹奏楽団により録音初演された協奏曲スタイルの作品である。タイトル通り、東海道五十三次の宿場名を歌った民謡「お江戸日本橋」の旋律を素材に構成され、全編がジャズ・テイストに満ちている。この題材は、2020年に東京オリンピックが予定されていたことから須川が提案したのだという。第1楽章「お江戸日本橋」、第2楽章「メモワール ドゥ T.M.」、第3楽章「フィナーレ」

    という3楽章構成を取っている。第2楽章にある「T.M.」とは作曲家・真島俊夫のことで、真島の作品である後述する「シーガル」と「夢」(天野が録音初演の指揮を担当した、アルト・サクソフォンと吹奏楽のための作品)の2曲が盛り込まれている。

    日本の吹奏楽界を代表する作曲家の一人であり、吹奏楽によるシンフォニック・ポップスの第一人者である真島俊夫(1949-2016)が1994年に須川のために書き下ろした作品。「シーガル」は「かもめ」の意味。元々はアルト・サクソフォンと弦楽合奏とギター、という編成だったが、吹奏楽伴奏版も作られた。単独の楽曲だったが、須川との協議で2つの楽章「スワロー」と「フェニックス」を書き加え、2009年に「シーガル」を第2楽章とした協奏曲「バーズ」(鳥たち)となっている。この曲の旋律が「生涯で作ったもので最もお気に入り」とは、生前の真島が筆者に語った談。

    1992年にディズニーが製作したアニメーション映画「アラジン」の音楽は、アカデミー賞など数々の受賞歴のあるアメリカの作曲家メンケン(1949- )による。それを、吹奏楽ではニュー・サウンズ・イン・ブラスなどで、管弦楽では多くのプロ楽団へのアレンジ提供で活躍する作編曲家・三浦秀秋(1982- )がヤマハ吹奏楽団のために2018年に編曲したのが、今回演奏されるもの。「アラビアンナイト」、「フレンドライクミー」、「ホールニューワールド」の3曲によるメドレーで、ソロから全合奏まで吹奏楽の機能を存分に活かしたアレンジとなっている。

    原曲はフュージョン・バンド「T-SQUARE」が1985年にリリースした曲で、作曲は1998年までメンバーだったキーボーディスト・和泉宏隆(1958- )による。それを前述の真島が1986年の「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」のために吹奏楽アレンジをし、やはり和泉の作である「宝島」とともに、吹奏楽の定番レパートリーとなっている。タイトルは「恋の予感」というような意味。ちなみに、原曲はインストゥルメンタルのため歌詞は無かったが、のちに松本隆によって歌詞が付けられ「ウィンク・クラー」というタイトルで発表、小泉今日子などによってカバーされている。