バングラデシュ国ダッカ都市交通整備事業(tod)...

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バングラデシュ国ダッカ都市交通整備事業(TOD)準備調査 ファイナルレポート 3-85 3.4 MRT 5 号線 1) Hemayetpur(a) 駅勢圏の土地利用現況 3.106 サバールとダッカ市内の中間地点に位置する 5 号線の西側終点駅であり、将来的 に人口増加が見込まれる。周囲は商業地域に指定されているが、実態は地元住民向けのマ ーケットや低中層住宅や店舗が立地している。また、服飾メーカーの AKH グループ本社 が駅予定位置の正面に立地している。沿道以外には湿地や農地が広がり、十分な土地を確 保することが出来るが、雨季になると水没する用地も多い。建設工事が進行中の建物が多 く、今後開発が進むことが予想される。駅から西側のサバール方面には、服飾産業の工場 や住居が広がっている。 3.107 周辺に大規模な開発計画を確認されていないが、沿道において中高層住居の建設 工事が進行中である。また、駅予定位置から東へ 700m 程の位置にアロムノゴルレジデン シャルエリアがあるが、全ての土地が埋まっておらず、空地も確認することが出来る。ア ロムノゴルレジデンシャルエリアの建築の多くが中層住宅であり、高校やモスク、バス置 場等が近接している。 出典:調査団作成 3.4.1 ヘマイェットプール駅周辺地区の土地利用

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バングラデシュ国ダッカ都市交通整備事業(TOD)準備調査 ファイナルレポート

3-85

3.4 MRT 5 号線

1) Hemayetpur駅

(a) 駅勢圏の土地利用現況

3.106 サバールとダッカ市内の中間地点に位置する 5 号線の西側終点駅であり、将来的

に人口増加が見込まれる。周囲は商業地域に指定されているが、実態は地元住民向けのマ

ーケットや低中層住宅や店舗が立地している。また、服飾メーカーの AKH グループ本社

が駅予定位置の正面に立地している。沿道以外には湿地や農地が広がり、十分な土地を確

保することが出来るが、雨季になると水没する用地も多い。建設工事が進行中の建物が多

く、今後開発が進むことが予想される。駅から西側のサバール方面には、服飾産業の工場

や住居が広がっている。

3.107 周辺に大規模な開発計画を確認されていないが、沿道において中高層住居の建設

工事が進行中である。また、駅予定位置から東へ 700m 程の位置にアロムノゴルレジデン

シャルエリアがあるが、全ての土地が埋まっておらず、空地も確認することが出来る。ア

ロムノゴルレジデンシャルエリアの建築の多くが中層住宅であり、高校やモスク、バス置

場等が近接している。

出典:調査団作成

図 3.4.1 ヘマイェットプール駅周辺地区の土地利用

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1 2 3

Commercial land use near station area Residential Housing project within 1km of Station

Industrial area near station area

4 5 6

Traffic scenario at station area Bazar (Market place) near station Mixed Use building near station 出典:調査団作成

図 3.4.2 ヘマイェットプール駅周辺地区の現況(写真)

(b) 駅勢圏の交通現況

3.108 駅周辺の交通現況に係る特徴は下記である。

(i) ダッカ市内と郊外を接続するダッカアリチャハイウェイは、中央分離帯付の片側 2車線道路である。沿道はマーケットが林立していることから、特定の箇所での Uターン車両によって渋滞が発生している。

(ii) ダッカアリチャハイウェイは、バングラデシュ南西部へ向かう高速バスも多く、

交通量が大きい。路肩で乗降が行われている。歩道が途切れており大部分が未整

備の状態である。

(iii) 住宅地へのアクセス道路は幅員が狭く、未舗装であり、大部分は歩道がない。

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3-87

出典:調査団作成

図 3.4.3 ヘマイェットプール駅周辺の交通ネットワーク現況 Id Cross-Section Photo

W14-1 Dhaka

Manikganj Highway

W = 17.8 m

W14-11 Dhaka-Aricha Highway

W = 16.9 m W14-12

Dhaka-Aricha Highway

W = 39.9 m W14-14

Dhaka-Aricha Highway

W = 53.1 m 出典:調査団作成

図 3.4.4 ヘマイェットプール駅周辺主要道路状況

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Id Cross-Section Photo W14-2

Natun Bazar, Purba Hati road

W = 7.6 m

W14-3 Natun Bazar, Purba

Hati road

W = 7.3 m

W14-4 Hemayetpur Boro

Masjid Road

W = 6.5 m

W14-5 Hemayetpur Boro

Masjid Road

W = 6.1 m

W14-7 Madrasa Road

W = 5.5 m

W14-8 Jadurchar Chowrasta

W14-9

Jadurchar Chowrasta

W14-10

Jadurchar Chowrasta

W14-13

Joyna Bari Road

出典:調査団作成

図 3.4.5 ヘマイェットプール駅周辺生活道路状況

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3-89

(c) MRT の開発インパクト

3.109 MRT 整備による駅周辺地区へのインパクトとして、下記が想定される。

(i) 駅周辺は服飾関連の工場が多く、さらに北西部のサバール方面に多くの工場が立

地している。MRT 整備によって周辺地域への通勤やダッカ市内へのアクセスに関

する時間の短縮効果が見込まれる。主に住居地域としての開発が進むことが予想

される。(夜間人口 36,500 人から 75,900 人)

(ii) ダッカアリチャハイウェイ沿線には住宅・工場が立地しているが、沿道から離れ

ると湿地帯や密集した低層市街地が形成されている。MRT 整備により既成市街地

の再編と住宅地としての開発が促進される。

表 3.4.1 ヘマイェットプール駅周辺の社会経済指標予測(半径 1km 圏) 2015 2035

Population Day No.(000) 32.8 64.3

Density (No/ha) 104.6 204.6

Night No.(000) 36.5 75.9 Density (No/ha) 116.2 241.5

Daytime Population Worker (000) 11.7 28.5 Student (000) 5.7 10.6

Total 17.3 39.1

Night Population

Worker (000) 15.0 34.9 Student (000) 6.0 15.8

Total 21.0 50.7 Population Day/Night Ration (000) 0.9 0.8

出典:RSTP データベースをもとに調査団作成

(d) TOD に関する留意点と方向性

3.110 将来的に、MRT5 号線がサバール方面まで延伸された際、ヘマイェットプール駅は

ダッカ市内とサバ―ルの中間地点となる。周囲には縫製工場が位置しているが、住宅地と

しての開発も進み、ダッカ市内やサバールの工業地域へ通勤する就業者が住むことが考え

られる。ヘマイェットプール駅における TOD の整備方針は以下である。

(i) 駅前広場と駐車場の整備:ヘマイェットプール駅は MRT5 号線フェーズ 1 区間の

ターミナル駅である。将来的に延伸が実施されるまでは、バスなど他モードを介

して UMRT の整備されていない地域との接続を図る必要があり、十分な規模の駅

前広場と駐車場の整備が必要となる。また前面道路にはダッカアリチャハイウェ

イにバングラデシュ南西部への長距離バスが運行しており、路上での乗客の乗降

が頻繁に行われていることから混雑が発生している。駅前広場の整備によって、

渋滞解消効果も期待できる。また、ターミナル駅として多くの利用者が郊外から

訪れることが予想されるため駐車場の整備が必要である。

(ii) 歩行者ネットワークの整備:ダッカアリチャハイウェイには歩道が整備されてい

ない区間も多い。また、既成市街地からの歩道も舗装されておらず幅員が狭い。

そのため、駅へのアクセス改善のための歩行者ネットワークの整備が必要である。

(iii) 住宅拠点としての開発:ヘマイェットプール駅はダッカとサバールの中間地点に

位置し、両市へのアクセス利便性から住宅地域としての開発ポテンシャルが高く

なると予想される。現在、駅予定位置の南側には住居地域や小規模なマーケット

が混在しているため、区画整理事業等と併せ駅周辺の住環境改善を実施する。

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3-90

出典:調査団作成

図 3.4.6 ヘマイェットプール駅周辺地区開発コンセプト案

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3-91

2) Baliapur駅

(a) 駅勢圏の土地利用現況

3.111 周辺には大きな農地や湿地帯があり、住居地域が限られたている。周囲にはレン

ガ工場、アミンバザールゴミ廃棄場や CNG スタンドが位置しており、NG スタンドには多

くのバスが停車している。駅予定位置の南側の大部分が雨季になると湿地となり水没して

しまう。しかし、盛土や比較的高い地盤にはレンガ工場や開発が進んでおり、公園・住宅

開発が行われている。DAP において地域一体を湿地帯として指定しており現状では開発が

進むと想定されておらず、民間により実施された開発計画も未承認のまま事業が止まって

いる。

3.112 前面道路の国道 5 号線は運輸省道路局による拡幅計画はあるが、現在のところ実

施されていない。今後開発を進める場合は、DAP における土地利用の変更を要するが、こ

の地域はダッカ近郊の調整池としての重要な役割を果たしていることや、開発に際して盛

土や地盤補強などの莫大な費用を要するなどのネックが存在する。

図 3.4.7 バリアプール駅周辺地区の土地利用

(b) 駅勢圏の交通現況

3.113 駅周辺の交通現況に係る特徴は下記である。

(i) ダッカアリチャハイウェイは、バングラデシュ郊外へ向かう主要道路であるが歩

道の整備がされていない。長距離バスやトラックのシェアが高く、徒歩での移動

は危険である。

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3-92

(ii) バリアプール駅北西部には住宅地域があるが、歩道は一切整備されておらず車道

幅員も狭いため、歩行者と車のすれ違いも困難である。住宅は密集しており道路

の拡幅も難しい。

出典:調査団作成

図 3.4.8 バリアプール駅周辺の交通ネットワーク現況 Id Cross-Section Photo

W11-1

n/a

W = 17.9 m 出典:調査団作成

図 3.4.9 バリアプール駅周辺主要道路状況 Id Cross-Section Photo

W11-2

n/a

W12-1

n/a

W12-2

n/a

W12-4

n/a

W12-5

n/a

出典:調査団作成

図 3.4.10 バリアプール駅周辺生活道路状況

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3-93

(c) MRT の開発インパクト

3.114 MRT 整備による駅周辺地区へのインパクトとして、下記が想定される。

(i) 駅周辺に住宅開発計画が進んでいる様子は見られず、民間企業による開発計画も

停止されている。DAP によって開発が規制されているが、MRT 整備により開発需

要が高まり、DAP が改正されれば、大規模な開発が実施される。

(ii) 駅周辺の湿地帯は、調整池として重要な機能を持っているため、DAP 改定時には

代替地や都市全体の排水機能の検討が必要である。

表 3.4.2 バリアプール駅周辺の社会経済指標予測(半径 1km 圏) 2015 2035

Population Day No.(000) 11.6 24.5

Density (No/ha) 37.1 78.0

Night No.(000) 13.2 28.0 Density (No/ha) 42.0 89.2

Daytime Population Worker (000) 3.9 11.5 Student (000) 2.1 3.7

Total 6.0 15.2

Night Population

Worker (000) 5.2 12.9 Student (000) 2.3 5.8

Total 7.5 18.7 Population Day/Night Ration (000) 0.9 0.9

出典:RSTP データベースをもとに調査団作成

(d) TOD に関する留意点と方向性

3.115 バリアプールは現在、DAP の中で開発が規制されている地域である。しかし、駅

の立地により開発需要が高まった場合には、駅周辺が全て空地となっているため開発が急

速に進む可能性も考えられる。バリアプール駅における TOD の整備方針は以下である。

(i) 駅前広場の整備:現在、開発規制により駅周辺は空地である。しかし、駅が立地

することにより周辺開発が進む可能性があるため、空地を利用し駅前広場を整備

する。

(ii) 歩行ネットワークの整備:ダッカアリチャハイウェイのアミンバザール駅からヘ

マイェットプール駅区間には歩道は整備されていない。そのため、徒歩による東

西方向の移動が妨げられており、ダッカアリチャハイウェイには歩道整備が必要

である。また、将来的な開発が実施された場合には、住宅地からの歩道整備も欠

かすことが出来ない。

(iii) 湿地と共存した開発計画の実施:バリアプールからアミンバザール駅までの区間

に位置している湿地は都市排水の重要な機能を持っており、安易に開発は進める

ことはダッカの都市型水害の原因となり兼ねない。その為、開発を進める場合に

は、緑地や湿地保全と合わせた開発計画策定が必要である。

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3-94

出典:調査団作成

図 3.4.11 バリアプール駅周辺地区開発コンセプト案 3) Bilamaria駅

(a) 駅勢圏の土地利用現況

3.116 駅予定地周辺の大部分は湿地帯であり、雨季になると水沈してしまう。地盤の高

い敷地には住宅開発が進められており、ゴミ廃棄場も近くに位置している。ガブトリバス

ターミナルから近いことから CNG スタンドが点在している。

3.117 住宅地域が計画されていたが、承認を受けておらず裁判所に違法であると判断さ

れ、現在は開発が停止している。周囲が湿地であり、DAP において湿地帯として指定され

ているため開発用地は限定される。周囲にはごみ処理場やレンガ工場が位置しており、住

宅地価に影響を与えることが考えられる。さらに、大量の盛土、地盤改良が必要になるた

め、将来的な開発を進めるためには DAP の変更、宅地造成、ごみ処理場などの移転など

様々な課題が存在する。

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3-95

図 3.4.12 ビラマリア駅周辺地区の土地利用

(b) 駅勢圏の交通現況

3.118 駅周辺の交通現況に係る特徴は下記である。

(i) ダッカアリチャハイウェイは、バングラデシュ郊外へ向かう主要道路であるが歩

道の整備がされていない。長距離バスやトラックのシェアが高く、徒歩での移動

は危険である。

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3-96

出典:調査団作成

図 3.4.13 ビラマリア駅周辺の交通ネットワーク現況 Id Cross-Section Photo

W11-1

W=17.9 m 出典:調査団作成

図 3.4.14 ビラマリア駅周辺主要道路状況 Id Cross-Section Photo

W11-2

W11-3

W11-4

出典:調査団作成

図 3.4.15 ビラマリア駅周辺生活道路状況

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3-97

(c) MRT の開発インパクト

3.119 MRT 整備による駅周辺地区へのインパクトとして、下記が想定される。

(i) MRT 建設による開発需要が高まり、DAP 変更により住宅や開発許可が進むことに

なれば大規模な開発が進む可能性がある。

(ii) MRT 建設後は、ダッカ市内からのアクセスも向上し、住宅地としての開発が進む。

表 3.4.3 ビラマリア駅周辺の社会経済指標予測(半径 1km 圏) 2015 2035

Population Day No.(000) 1.1 6.9

Density (No/ha) 3.5 22.1

Night No.(000) 1.2 8.4 Density (No/ha) 3.9 26.6

Daytime Population Worker (000) 0.4 3.0 Student (000) 0.2 1.2

Total 0.6 4.2

Night Population

Worker (000) 0.5 3.8 Student (000) 0.2 1.7

Total 0.7 5.6 Population Day/Night Ration (000) 0.9 0.8

出典:RSTP データベースをもとに調査団作成

(d) TOD に関する留意点と方向性

3.120 ビラマリアはバリアプール駅と同様、DAP の中で開発が規制されている地域であ

る。しかし、駅の立地により開発需要が高まった場合には、駅周辺が全て空地となってい

るため開発が急速に進む可能性も考えられる。ビラマリア駅における TOD の整備方針は

以下である。

(i) 駅前広場の整備:現在、開発規制により駅周辺は空地である。しかし、駅が立地

することにより周辺開発が進む可能性があるため、空地を利用し駅前広場を整備

する。

(ii) 歩行ネットワークの整備:ダッカアリチャハイウェイのアミンバザール駅からヘ

マイェットプール駅区間には歩道は整備されていない。そのため、徒歩による東

西方向の移動が妨げられており、ダッカアリチャハイウェイには歩道整備が必要

である。また、将来的な開発が実施された場合には、住宅地からの歩道整備も欠

かすことが出来ない。

(iii) 湿地と共存した開発計画の実施:バリアプールからアミンバザール駅までの区間

に位置している湿地は都市排水の重要な機能を持っており、安易に開発は進める

ことはダッカの都市型水害の原因となり兼ねない。その為、開発を進める場合に

は、緑地や湿地保全と合わせた開発計画策定が必要である。

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3-98

出典:調査団作成

図 3.4.16 ビラマリア駅周辺地区開発コンセプト案 4) Amin Bazar駅

(a) 駅勢圏の土地利用現況

3.121 アミンバザールの駅予定地周辺には湿地帯が大部分を占めており、レンガ工場や

発電所が位置している。広大な敷地に数多くのレンガ工場が位置しており、沿道には工場

関係者の車が停められている。また、駅予定位置の東側に立地しているアミンバザールの

住宅地域は古くから計画され、元々は高所得者が多い地域であった。その為、ビジネスマ

ンが多くダッカ市内へ通勤している。周辺にはトラックターミナルやフェリーターミナル

が位置している。

3.122 駅予定位置周囲に都市開発計画が実施されている形跡はないが、東側の既成市街

地周辺には人口が集積しており、建物も古いものが多い。

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3-99

出典:調査団作成

図 3.4.17 アミンバザール駅周辺地区の土地利用

(b) 駅勢圏の交通現況

3.123 駅周辺の交通現況に係る特徴は下記である。

(i) 東部の住居地域からの徒歩アクセスが重要であるが、ダッカアリチャハイウェイ

にはダッカ市から郊外へ向けて歩道がなくなり、駅予定地周辺では歩道が整備さ

れていない。

(ii) 周辺の住宅地域何の生活道路も、歩道が整備されておらず幅員も狭い。

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3-100

出典:調査団作成

図 3.4.18 アミンバザール駅周辺の交通ネットワーク現況 Id Cross-Section Photo

W10-1

W = 23.4 m

出典:調査団作成

図 3.4.19 アミンバザール駅周辺主要道路状況 Id Cross-Section Photo

W10-2

W10-3

出典:調査団作成

図 3.4.20 アミンバザール駅周辺生活道路状況

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3-101

(c) MRT の開発インパクト

3.124 MRT 整備による駅周辺地区へのインパクトとして、下記が想定される。

(i) アミンバザール駅は古くから住宅地域として利用されており、ダッカ市内への通

勤者が多く居住している。MRT 整備によりダッカ市内へのアクセスが向上するこ

とからダッカ市内で働く居住者がさらに増加し、将来的に住宅開発が進む可能性

が考えられる。特に既成市街地が古いため、駅の立地により建て替えの促進及び

住居の高層化が進むことが予想される。(夜間人口 8,800 人から 18,700 人)

(ii) MRT 建設により、周辺の開発需要が高まり、既存市街地の環境改善につながる。

表 3.4.4 アミンバザール駅周辺の社会経済指標予測(半径 1km 圏) 2015 2035

Population Day No.(000) 7.9 13.9

Density (No/ha) 25.0 44.4

Night No.(000) 8.8 18.7 Density (No/ha) 27.9 59.6

Daytime Population Worker (000) 2.6 5.0 Student (000) 1.6 2.7

Total 4.2 7.7

Night Population

Worker (000) 3.4 8.6 Student (000) 1.7 3.9

Total 5.1 12.5 Population Day/Night Ration (000) 0.9 0.7

出典:RSTP データベースをもとに調査団作成

(d) TOD に関する留意点と方向性

3.125 アミンバザール駅における TOD の整備方針は以下である。

(i) 駅前広場の整備:アミンバザール駅の東側は住宅地域が広がっており西側は未だ

開発は進んでいない。確保可能な空地を利用し、駅前広場の整備を行う。

(ii) 歩行ネットワークの整備:ダッカアリチャハイウェイのアミンバザール駅からヘ

マイェットプール駅区間には歩道は整備されていない。そのため、徒歩による東

西方向の移動が妨げられており、ダッカアリチャハイウェイには歩道整備が必要

である。

(iii) 既成市街地の環境改善:付近の既成市街地は古くから立地しており、路地は入り

組んでいるため歩行者アクセスも確保されていない。MRT 建設後には建て替えが

促進され住環境が改善される。

(iv) 湿地と共存した開発計画の実施:バリアプールからアミンバザール駅までの区間

に位置している湿地は都市排水の重要な機能を持っており、安易に開発は進める

ことはダッカの都市型水害の原因となり兼ねない。その為、開発を進める場合に

は、緑地や湿地保全と合わせた開発計画策定が必要である。

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3-102

出典:調査団作成

図 3.4.21 アミンバザール駅周辺地区開発コンセプト案 5) Gabtoli駅

(a) 駅勢圏の土地利用現況

3.126 ガブトリ駅周辺にはガブトリバスターミナルが立地しダッカ郊外への移動の重要

拠点となっている。周辺には牛市場やマーケット、CNG スタンドなども位置している。

ブリゴンガ川のフェリーターミナル付近では現在都市開発が進められている。また、アミ

ンバザールやビラマリア付近で生産されているレンガの置場や石炭の輸送拠点となって

いる。北部には高密な住宅地域が広がっており、バスターミナルの南側には湿地帯が広が

り農業省の管轄となっている。

3.127 国道 5 号線沿いにはバスの事業者が点在しており、チケットの販売やバスの乗降

を行っているため混雑が著しい。アミンバザール橋の幅員が狭くバスターミナルやトラッ

クが渋滞を引き起こしている。さらに、郊外から戻ってきた長距離バスが、ガブトリバス

ターミナル付近で U ターンし、ガブトリバスターミナルへ入庫するため、近傍交差点の手

前で渋滞を引き起こしている。

3.128 ガブトリフェリーターミナルは、2013 年に導入された。当時ショドルガットまで

の運行時間を 30 分と推計していたが、実際は 75 分であった。利用者数が少ないことから

赤字を計上している。フェリーターミナル周辺では石炭や建設資材を運搬する中型船が行

き来するが川幅も狭く、安全面でも大きな問題を抱えている。

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3-103

出典:調査団作成

図 3.4.22 ガブトリ駅周辺地区の土地利用 1 2 3

Gabtoli Inter District Bus Terminal Traffic Scinario at Gabtoli Residential Area Near Gabtoli

4 5 6

Water Bus Terminal Near Gabtoli Low Income Housing Near Gabtoli Traffic Scinario at Gabtoli

出典:調査団作成

図 3.4.23 ガブトリ駅周辺地区の現況(写真)

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3-104

(b) 駅勢圏の交通現況

3.129 駅周辺の交通現況に係る特徴は下記である。

(i) 北側の住居地域からのアクセスが重要であるが、ダッカアリチャハイウェイの横

断のため地下道が整備されてはいるがあまり使われておらず、地上を横断する歩

行者が後を絶たない。

(ii) 北部の住宅地内の生活道路は歩道が整備されておらず幅員も不十分である。

(iii) ガブトリ駅前のダッカアリチャハイウェイには幅員約 3m の歩道は整備されてい

るが、舗装状態が悪く、また小規模店舗が歩道を占有しており、歩行者は車道を

通行している。

(iv) ダッカ南西部に向かうバスの拠点となるガブトリバスターミナルが立地している。

また、MRT5 号線のフェーズ 2 区間の分岐位置としても計画されている。

出典:調査団作成

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3-105

図 3.4.24 ガブトリ駅周辺の交通ネットワーク現況 Id Cross-Section Photo

W10-3 Gabtoli Main Road

W = 43.1 m W10-5

Dhaka-Aricha

Highway

W = 23.3 m W10-9 Mirpur Road

W = 41.4 m

W10-10

n/a

W = 19.1 m 出典:調査団作成

図 3.4.25 ガブトリ駅周辺主要道路状況

Id Cross-Section Photo W10-1

Dipnagar, Beribadh

W10-2 Gabtoli-Sadarghat Road

(Beribadh)

W = 8.8 m W10-4

Gorur Hat Road

W10-6 Dhour Road

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3-106

Id Cross-Section Photo W10-7

Kotbari Road

W10-8

Karmicheal Road

出典:調査団作成

図 3.4.26 ガブトリ駅周辺生活道路状況

(c) MRT の開発インパクト

3.130 MRT 整備による駅周辺地区へのインパクトとして、下記が想定される。

(i) 駅付近の既成市街地は低層住宅が密集している。MRT 駅の開発により、住宅地域

の建て替えが促進され、低層の住宅街から高層建築への建替えが進み、駅周辺に

空地がうまれ、住環境の改善が期待できる。

(ii) ダッカ市外には大きな商業地がないことから、商業地域として駅周辺が開発され

ることで、集客が期待できる。ボシュンドラシティーやジョムナフューチャーパ

ークのようなアミューズメント施設と一体となった商業地域がダッカ西部には立

地しておらず、バスターミナルとの一体開発の可能性は高い。(昼間就業者数

29,600 人から 41,000 人)

表 3.4.5 ガブトリ駅周辺の社会経済指標予測(半径 1km 圏) 2015 2035

Population Day No.(000) 87.2 103.7

Density (No/ha) 277.7 330.0

Night No.(000) 115.7 126.4 Density (No/ha) 368.1 402.5

Daytime Population Worker (000) 29.6 41.0 Student (000) 18.0 20.4

Total 47.6 61.4

Night Population

Worker (000) 40.6 57.9 Student (000) 35.4 26.3

Total 76.0 84.2 Population Day/Night Ration (000) 0.8 0.8

出典:RSTP データベースをもとに調査団作成

(d) TOD に関する留意点と方向性

3.131 ガブトリ駅はバングラデシュ国内の主要バスターミナルの一つでもあるガブトリ

バスターミナルの地下に建設され、将来は MRT5 号線の分岐点となる重要な駅である。ガ

ブトリ駅における TOD の整備方針は以下である。

(i) バスターミナル機能の再編:現在のガブトリバスターミナルの機能は不十分であ

り、バス置場として敷地内が利用されており、乗客は幹線道路上で乗降している。

そのため、現在のバスターミナルを改築し、周辺のバス会社のチケットオフィス

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3-107

をバスターミナル内で全て賄えるようなスペースの整備が重要である。さらに、

MRT 駅が立地した場合には駅周辺の開発ポテンシャルを最大限に活かすため、郊

外へのバスターミナル移転を検討し、駅周辺の開発用地を確保する必要がある。

(ii) バスターミナル周辺の開発促進:ガブトリ駅周辺にはバス事業者のオフィスや

CNG スタンドが多く立地しているが、バス置場や乗降場として使用されており敷

地が活用されていない。これらを集約換地することで、開発用地を確保する。

(iii) 北側住宅地からのアクセス確保:ガブトリバスターミナル北側の既成市街地から

のアクセスが確保されておらず、ダッカアリチャハイウェイの歩道も舗装や幅員

が不十分である。バスやリキシャ、CNG 等が歩道上に停められている状況にある。

既成市街地の再編と歩行者アクセス改善を組み合わせることや歩道橋の整備を実

施する必要がある。現在の地下道のみのアクセスでは不十分であるため、南北の

アクセスを改善する必要がある。

(iv) 既成市街地の区画整理事業:ガブトリバスターミナル北側の規制市街地には沿道

にホテルやバス会社のオフィス兼チケットオフィスが並び、後背地には入り組ん

だ路地と密集した住居地域が広がっている。歩道の整備がされておらず、密集市

街地は災害時に脆弱であり、住環境改善が必要である。

(v) オープンスペースの活用:現在、ブリゴンガ川沿いには建設資材のレンガ置き場

や石炭の運搬、牛市場等として利用されている。駅周辺の開発ポテンシャルを最

大限に活かすため機能を整理し、駅とのアクセス改善及び商業施設を立地させる。

出典:調査団作成

図 3.4.27 ガブトリ駅周辺地区開発コンセプト案

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3-108

6) Dar-us-Salam駅

(a) 駅勢圏の土地利用現況

3.132 駅予定位置周辺には大学病院や公務員向け住居、大学等が立地している。ダッカ

北西部のミルプールへ向かう主要道路上であり、交通量は多い。周辺には教育施設も多い

が、中層の集合住宅が広がっており、古い建物の部分的な建て替えは進んでいるものの、

密集しており人口密度が極めて高い。

出典:調査団作成

図 3.4.28 ダルサラーム駅周辺地区の土地利用

(b) 駅勢圏の交通現況

3.133 駅周辺の交通現況に係る特徴は下記である。

(i) ダルサラーム駅前の道路には幅員 3m 以上の歩道が整備されているが、マーケット

として利用されており実際は機能していない。また、建築残土が放置されている

など歩行者アクセスの妨げとなっている。

(ii) 駅予定位置の西側にある住宅地からのアクセスは非常に入り組んでおり、幅員も

狭いため混雑が予想される。

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3-109

出典:調査団作成

図 3.4.29 ダルサラーム駅周辺の交通ネットワーク現況 Id Cross-Section Photo

W8-1

W = 22.5 m W8-2

W = 37.4 m W10-9 Mirpur Road

W = 41.4 m

W10-10

n/a

W = 19.1 m 出典:調査団作成

図 3.4.30 ダルサラーム駅周辺主要道路状況

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3-110

Id Cross-Section Photo W8-6

n/a

W = 21.5 m 出典:調査団作成

図 3.4.31 ダルサラーム駅周辺生活道路状況

(c) MRT の開発インパクト

3.134 MRT 整備による駅周辺地区へのインパクトとして、下記が想定される。

(i) ダルサラーム駅周辺には大規模な開発用地は存在しないが、MRT の整備によって

開発需要が高まり、既成市街地の建て替えが促進され、建物の高層化が進められ

る。(夜間人口 237,000 人から 241,500 人)

(ii) 住民の多くがミルプールやグルシャン、ボナニやダッカ南部へ通勤している地域

であり、周辺にミルプール等の商業地域が立地していることから住宅地域として

の開発が進行する。

表 3.4.6 ダルサラーム駅周辺の社会経済指標予測(半径 1km 圏) 2015 2035

Population Day No.(000) 160.3 193.8

Density (No/ha) 510.1 616.8

Night No.(000) 237.0 241.5 Density (No/ha) 754.3 768.6

Daytime Population Worker (000) 32.7 56.4 Student (000) 50.9 56.7

Total 83.6 113.1

Night Population

Worker (000) 84.1 110.5 Student (000) 76.3 50.3

Total 160.3 160.8 Population Day/Night Ration (000) 0.7 0.8

出典:RSTP データベースをもとに調査団作成

(d) TOD に関する留意点と方向性

3.135 ダルサラーム駅周辺は公共用地が多く立地している。古い市街地も広がっており

建替えが進められている。ダルサラーム駅における TOD の整備方針は以下である。

(i) 駅前広場の整備:駅予定位置の正面には公務員住宅があり、築年数も古いため、

建て替え時期に併せて交通結節点の整備と駅周辺敷地を確保する。

(ii) 歩行者アクセスの改善:歩道が整備されていない道路が多く舗装も不充分である。

また、主要道路には建築残土や廃材等が置かれており、歩行者のアクセスを妨げ

ている。舗装と歩道管理を徹底する必要がある。

(iii) 駅周辺開発の促進:駅周辺の公務員住宅の移転が実現すれば大規模な開発用地を

駅周辺に確保することが出来る。現在、低層な公務員住宅として利用されている

敷地の高度化により多くの住居、商業施設を提供することが可能になる。

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3-111

出典:調査団作成

図 3.4.32 ダルサラーム駅周辺地区開発コンセプト案 7) Mirpur 1駅

(a) 駅勢圏の土地利用現況

3.136 ミルプール 1 から 10 にかけてダッカ北西部の商業、教育、行政の中心地となって

おり、ミルプール道路沿道には、グラミン銀行、郵便局、大学等が建ち並んでいる。沿道

の大部分が高層建築物であり、建て替え工事も様々な場所で行われている。

3.137 区画内は住宅地が大部分を占めており、ミルプール道路北側には比較的整形され

た区画に住居が建ち並ぶ一方、南側は入り組んだ路地に住宅が広がっている。従来、開発

需要の高い地域であり複合ビルなどの建設が進められてきた。近年では、ミルプール道路

沿線に高層ビルの建設が進められている。

3.138 駅予定地周辺に空地はなく、複合ビルが建ち並んでいる。周辺に初等教育省等の

行政機関の敷地は残されているが、現在も使用されており敷地内にはモスクなどがある。

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3-112

出典:調査団作成

図 3.4.33 ミルプール 1 駅周辺地区の土地利用 (b) 駅勢圏の交通現況

3.139 駅周辺の交通現況に係る特徴は下記である。

(i) ダッカ北西部の商業中心地区であり、行政機関や大学、商業施設が立地している。

主要道路の歩道は広く、駅北部の住宅地は区画が整形で歩道も整備されている。

そのため、舗装の改善は必要であるが駅北部からのアクセスはしやすい。

(ii) 駅南部には古い市街地が残っており道路幅員も狭く歩道は整備されていない。

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3-113

出典:調査団作成

図 3.4.34 ミルプール 1 駅周辺の交通ネットワーク現況 Id Cross-Section Photo

W8-1

n/a

W = 32.5 m

W8-2

n/a

W = 37.4 m W8-3

n/a

W = 36.6 m W8-4

n/a

W = 20.7 m W8-5

n/a

W = 33.9 m W8-6

n/a

W = 21.5 m

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3-114

Id Cross-Section Photo W8-7

n/a

W = 19.2 m W8-8

n/a

W = 22.5 m W7-4

n/a

W =22.5 m W7-5

n/a

W=21.9 m

W7-6

n/a

W = 35.2 m 出典:調査団作成

図 3.4.35 ミルプール 1 駅周辺主要道路状況

(c) MRT の開発インパクト

3.140 MRT 整備による駅周辺地区へのインパクトとして、下記が想定される。

(i) ミルプール道路の沿道には商業施設や公共施設が立地しておりダッカ北部の商業

中心地区である。MRT 建設により更に商業機能の集積が促進される。(昼間人口

229,500 人から 280,900 人)

(ii) 既に高層化が進められているが MRT 建設により更に建築の建替えが促進され、高

層住宅が増加する。(夜間人口 294,200 人から 329,300 人)

表 3.4.7 ミルプール 1 駅周辺の社会経済指標予測(半径 1km 圏) 2015 2035

Population Day No.(000) 229.5 280.9

Density (No/ha) 730.5 894.2

Night No.(000) 294.2 329.3 Density (No/ha) 936.4 1048.2

Daytime Population Worker (000) 60.4 98.4 Student (000) 70.0 72.6

Total 130.5 171.0

Night Population

Worker (000) 103.2 150.8 Student (000) 92.0 68.6

Total 195.1 219.3 Population Day/Night Ration (000) 0.8 0.9

出典:RSTP データベースをもとに調査団作成

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3-115

(d) TOD に関する留意点と方向性

3.141 ミルプール 1 はダッカ北部の中心業務地区の役割を担っており、駅周辺には商業

地域が密集し、高層化も進んでいる。一方で駅の南側には南側に密集市街地が残されてい

る。ミルプール 1 駅における TOD の整備方針は以下である。

(i) 交通結節点の整備:駅周辺は商業施設や行政、教育機関が集中しており、多くの

人が駅を利用することが想定される。しかし、周囲の開発は既に進められており、

高層複合ビルが建ち並んでいる。駅予定位置周辺の公有地活用を利用した交通結

節点の整備が必要である。

(ii) 南側の既成市街地からの歩行者アクセスの改善:駅予定位置南側の既成市街地は

高密で入り組んだ路地が広がっている。そのため、駅予定位置への歩行者アクセ

スは不十分であり改善の必要がある。

出典:調査団作成

図 3.4.36 ミルプール 1 駅周辺地区開発コンセプト案

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3-116

8) Mirpur 10駅

(a) 駅勢圏の土地利用現況

3.142 MRT5 号線及び 6 号線の乗換駅である。主要道路の交差点付近に位置しており、日

常的に渋滞が発生している。周辺には商業施設や行政機関のほか、消防士学校やナショナ

ルクリケットスタジアムなども位置している。交差点を中心に商業地域が広がっているが、

高密な住宅地域も位置している。ダッカ北西部の商業地域の中心地でもある。

3.143 ミルプール 1 と同様開発需要が高く、周辺に空地は見られない。主要道路の沿道

は部分的に高層ビルへの建て替えが実施されており、現在低層な住宅地も、高層ビルへの

建て替えが進むことが予想される。

出典:調査団作成

図 3.4.37 ミルプール 10 駅周辺地区の土地利用

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3-117

1 2 3

High Rise Residential Buildings Institutional High Rise Building (Proshika

NGO Building) Sher-e-Bangla National Stadium

4 5 6

Traffic scenario at Rokeya Sarani Traffic scenario at Mirpur Road Commercial Development along Rokeya

Sarani

図 3.4.38 ミルプール 10 駅周辺地区の現況(写真)

(b) 駅勢圏の交通現況

3.144 駅周辺の交通現況に係る特徴は下記である。

(i) ミルプール 10 駅にはクリケットスタジアムが位置しているため、主要道路には、

比較的歩道は広く確保されている。しかし、ゲームのある日には多くの観客が訪

れ、車道に人が溢れ交通が麻痺してしまうことも多い。

(ii) 路線バスが集中するエリアでもあり、交差点の近くで乗降を行う為、渋滞を引き

起こしている。

(iii) 主要道路以外の道路では、幅員が狭く快適に歩行者がアクセスできる環境ではな

い。

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3-118

出典:調査団作成

図 3.4.39 ミルプール 10 駅周辺の交通ネットワーク現況 Id Cross-Section Photo

W7-1 Mirpur Main Road ( Begum Rokeya

Sarani)

W = 33.8 m W7-3

Avenue-5, section-6

W = 22.7 m

W7-4 Nurani masjid

East Side Road (Milk Vita Road)

W = 22.5 m

W7-5 Avenue-3,

Block-2 Road (Hazi Road)

W = 21.9 m

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3-119

Id Cross-Section Photo

W7-6 1 No. Main Road

(Thana Road)

W = 35.2 m

W7-8 Begum Rokeya

Sarani

W = 29.3 m

W7-11 Mipur Road-13

Road

W = 38.8 m

出典:調査団作成

図 3.4.40 ミルプール 10 駅周辺主要道路状況 Id Cross-Section Photo

W7-2 Benarashee Palli Road

W = 14.7 m

W7-7 Senpara

Parbata Road

W = 19.8 m W7-9

Senpara Road-5

W = 12.3 m

W7-10 Shah Ali Road

W7-12

Opposite of Water Tank

Road, section 10

W = 11.6 m

出典:調査団作成

図 3.4.41 ミルプール 10 駅周辺生活道路状況

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3-120

(c) MRT の開発インパクト

3.145 MRT 整備による駅周辺地区へのインパクトとして、下記が想定される。

(i) ミルプール道路北側には比較的整形された住宅区画が多いが、南側には入り組ん

だ路地や低層住宅が多い。MRT の整備により南側エリアの建て替えや再開発が促

進されることが予想される。

表 3.4.8 ミルプール 10 駅周辺の社会経済指標予測(半径 1km 圏) 2015 2035

Population Day No.(000) 295.3 306.3

Density (No/ha) 939.9 974.9

Night No.(000) 329.5 335.0 Density (No/ha) 1048.7 1066.4

Daytime Population Worker (000) 88.7 122.4 Student (000) 94.9 72.1

Total 183.6 194.5

Night Population

Worker (000) 120.6 153.5 Student (000) 97.2 69.7

Total 217.8 223.2 Population Day/Night Ration (000) 0.9 0.9

出典:RSTP データベースをもとに調査団作成

(d) TOD に関する留意点と方向性

3.146 ミルプール 10 駅における TOD の整備方針は以下である。

(i) 駅前広場の整備:MRT5 号線及び 6 号線の乗換駅で、現在もバス停付近が混雑し

ており、交通需要が非常に高い場所に位置している。現在の交通渋滞解決の為に

も、周囲の公共用地やスポーツ施設用地を利用し駅前広場の整備が必要である。

RAJUK敷地の駐車場とモスク敷地内の敷地を部分利用や利用頻度が低いスイミン

グセンターの改修時に追加で敷地を確保する。

(ii) 歩行者空間の確保:クリケットスタジアムが位置しており、イベント時には数万

人規模でスタジアムへ訪れる。MRT によるアクセスも考えられるため駅や駅前広

場からクリケットスタジアムへの歩道環境整備も検討する。

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3-121

出典:調査団作成

図 3.4.42 ミルプール 10 駅周辺地区開発コンセプト案 9) Mirpur 14駅

(a) 駅勢圏の土地利用現況

3.147 駅予定位置の周辺には大学や警察学校等の行政機関、教育機関が多く立地してい

る。ミルプール道路の南側には工場や公務員住宅等、一部商業施設も立地している。周辺

にはカントンメン地域があるため、軍関係者も多い。

3.148 駅予定地周辺の大部分に公共施設や病院が建ち並んでおり、Bijoy Rakeen City 等の

集合住宅群も建設されている。ミルプール道路沿線の建物は、部分的に高層ビルへの建て

替えが実施されている。

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3-122

出典:調査団作成

図 3.4.43 ミルプール 14 駅周辺地区の土地利用

(b) 駅勢圏の交通現況

3.149 駅周辺の交通現況に係る特徴は下記である。

(i) ミルプール 14 駅の北側は警察学校や教育機関が大きな面積を占めているが、北側

の住宅地域へのアクセスは確保され、幅員 3.0m の歩道が確保されている。

(ii) 主要道路でもあるミルプール道路の歩道は幅員 2.0m 未満の箇所もある。

(iii) 駅南西側へのアクセスは道路幅員が狭く、入り組んだ通路により構成されており、

駅へのアクセスが限定されてしまう。

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3-123

出典:調査団作成

図 3.4.44 ミルプール 14 駅周辺の交通ネットワーク現況 Id Cross-Section Photo

W7-1 Mirpur Main

Road ( Begum Rokeya Sarani)

W = 33.8 m

W7-3 Avenue-5, section-6

W = 22.8 m

W7-4 Nurani

masjid East Side Road (Milk Vita

Road) W = 22.5 m

W7-5 Avenue-3,

Block-2 Road (Hazi

Road)

W = 21.9 m

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3-124

Id Cross-Section Photo

W5-1

n/a

W = 34.8 m W7-8

Begum Rokeya Sarani

W = 29.3 m

W7-11 Mipur

Road-13 Road

W = 38.8 m

出典:調査団作成

図 3.4.45 ミルプール 14 駅周辺主要道路状況 Id Cross-Section Photo

W5-2

W = 18.4 m W7-2

Benarashee Palli Road

W = 14.7 m

W7-7 Senpara Parbata Road

W = 19.8 m W7-9

Senpara Road-5

W = 12.3 m

W7-10 Shah Ali

Road

W7-12

Opposite of Water Tank

Road, section 10

W = 11.6 m

出典:調査団作成 図 3.4.46 ミルプール 14 駅周辺生活道路状況

(c) MRT の開発インパクト

3.150 MRT 整備による駅周辺地区へのインパクトとして、下記が想定される。

(i) MRT 整備により既成市街地の開発及び建物の高層化が進む。(夜間人口 80,800人から 269,400 人)

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3-125

(ii) 駅周辺には公共施設が多く、居住者の多くは他地域に通勤している。その為、昼

夜間人口比率は低い。(昼夜間人口比率 0.7 から 0.8)

表 3.4.9 ミルプール 14 駅周辺の社会経済指標予測(半径 1km 圏) 2015 2035

Population Day No.(000) 58.1 211.7

Density (No/ha) 185.1 674.0

Night No.(000) 80.8 269.4 Density (No/ha) 257.3 857.4

Daytime Population Worker (000) 15.0 77.5 Student (000) 14.3 44.3

Total 29.3 121.8

Night Population

Worker (000) 29.9 123.4 Student (000) 22.0 56.1

Total 52.0 179.4 Population Day/Night Ration (000) 0.7 0.8

出典:RSTP データベースをもとに調査団作成 (d) TOD に関する留意点と方向性

3.151 ミルプール 14 駅における TOD の整備方針は以下である。

(i) 駅前広場の整備:警察学校のグランドを利用し駅前広場を整備する。駅の西側に

は充分な用地は確保出来ないが、バスベイの整備を実施する。

(ii) 歩行者アクセスの改善:駅周辺は病院や学校が立地しており、多くの利用者が想

定される。歩道は確保されているものの幅員は充分ではないため、歩道幅員の拡

張と舗装を行い、駅へのアクセスを確保する。

出典:調査団作成

図 3.4.47 ミルプール 14 駅周辺地区開発コンセプト案

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3-126

10) Kochunkhet駅

(a) 駅勢圏の土地利用現況

3.152 ミルプール 14 と同様に軍用地に近い。周辺にはダッカ歯科大学や医科大学を始め

とした教育機関、行政機関が位置している。ミルプール道路沿線は、中高層の商業ビルが

立地している地域もあり、1階部分には電化製品や自動車部品などが販売されている。駅

周辺の東側に大部分が軍用地であり、軍用地内は歩道整備やインフラが整っている。また、

駅の北側には湿地帯を取り囲むように低所得者の居住地が広がっており、車部品の販売や

修理等の小規模な店舗を営んでいる。

出典:調査団作成

図 3.4.48 コチュンケット駅周辺地区の土地利用

(b) 駅勢圏の交通現況

3.153 駅周辺の交通現況に係る特徴は下記である。

(i) コチュンケット駅周辺の道路は幅員が広く歩道の幅員も確保されている。カント

ンメンが近いことから歩行者アクセスも良い。

(ii) 駅南側の密集市街地には幅員が狭く入り組んだ道路が多い。

(iii) 軍用地内の歩行者道は整備されているが、ミルプール道路南側の居住地域からの

歩行者アクセスは整備されていない

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3-127

出典:調査団作成

図 3.4.49 コチュンケット駅周辺の交通ネットワーク現況 Id Cross-Section Photo

W5-1

n/a

W = 37.8 m W5-3

n/a

W = 36.7 m W5-4

n/a

W = 21.7 m W5-5

n/a

W = 36.5 m 出典:調査団作成

図 3.4.50 コチュンケット駅周辺主要道路状況

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3-128

Id Cross-Section Photo W5-2

n/a

W = 18.4 m W5-6

n/a

W = 10.1 m 出典:調査団作成

図 3.4.51 コチュンケット駅周辺生活道路状況

(c) MRT の開発インパクト

3.154 MRT 整備による駅周辺地区へのインパクトとして、下記が想定される。

(i) 駅南側の住宅地域は未だに開発されておらず、老朽化した住宅が残されており、

街路も細く入り組んでいる。MRT 開発後にはボナニやグルシャンといった中心業

務地区へのアクセスも良いため、将来住居地域が増えることが予想される。特に

駅南側の高度利用されていない地域の開発が進む。(夜間人口 186,800 人から

206,900 人)

(ii) 北部の湿地帯周辺には低所得者が住んでおり、自動車部品の売買や修理が行われ

ている。環境も悪く道路も舗装されていない。しかし、MRT の駅勢圏に含まれる

ため、開発需要が高まり居住環境が改善される。

表 3.4.10 コチュンケット駅周辺の社会経済指標予測(半径 1km 圏) 2015 2035

Population Day No.(000) 134.5 154.6

Density (No/ha) 428.1 492.0

Night No.(000) 186.8 206.9 Density (No/ha) 594.6 658.7

Daytime Population Worker (000) 34.0 50.6 Student (000) 34.3 34.9

Total 68.4 85.4

Night Population

Worker (000) 66.3 94.7 Student (000) 54.4 43.1

Total 120.7 137.8 Population Day/Night Ration (000) 0.7 0.7

出典:RSTP データベースをもとに調査団作成

(d) TOD に関する留意点と方向性

3.155 コチュンケット駅の東側大部分は軍用地であり、歩道やインフラが整っている。

また、駅周辺は病院を始めとする公共施設、北部には低所得者の居住地が位置している。

コチュンケット駅における TOD の整備方針は以下である。

(i) 駅前広場の整備:コチュンケット道路とミルプール道路の交差点に整備を行う。

交差点付近に立地する集合住宅群の一部を利用して整備を行う。

(ii) 歩行者アクセスの改善:駅南側の既成市街地は高密であるが、駅へのアクセスが

確保されていない。幅員が狭く未舗装の道路もあるため、拡幅が必要である。

(iii) 低所得者居住地の改善:駅北側には池を中心に低所得者の居住地が位置している。

駅勢圏に含まれるため、MRT 整備と併せた住居開発を促進する。

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3-129

出典:調査団作成

図 3.4.52 コチュンケット駅周辺地区開発コンセプト案 11) Banani駅

(a) 駅勢圏の土地利用現況

3.156 1960 年代に RAJUK により計画された住居地域の 1 つである。敷地形状や区画が

整形されており、インフラも整備されている。土地価格が高く、多くの商業施設やオフィ

ス、住居が位置している。駅予定地はボナニ地区への入り口とダッカ・マイメンシンハイ

ウェイが交差する位置にあり、車の渋滞が激しい。また、国鉄のボナニ駅も位置しており、

交通結節点の整備が欠かすことが出来ない。ボナニには、大学なども位置しており学生を

始めとする若者も多い地域である。また、ダッカ・マイメンシンハイウェイを挟んで西側

にはカントンメンが広がっており、ゴルフ場や住居地域が主に立地している。ボナニ地区

は至る所で高層ビルの建設が進んでおり、開発需要が非常に高い地域である。FAR の上限

近く建設が進められている。

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3-130

出典:調査団作成

図 3.4.53 ボナニ駅周辺地区の土地利用

(b) 駅勢圏の交通現況

3.157 駅周辺の交通現況に係る特徴は下記である。

(i) ボナニは RAJUK により計画された地域である。しかし、歩道幅員が不充分であり、

舗装もされていなことから多くの歩行者が車道に溢れている。

(ii) MRT ボナニ駅はエアポートロードと交差しており、国鉄ボナニ駅も近接している。

駅西側からのアクセスが歩道橋に限られており、MRT 駅から国鉄への乗換や MRT駅へのアクセスの際に、ニューエアポート道路の横断がネックになっている。

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3-131

出典:調査団作成

図 3.4.54 バナニ駅周辺の交通ネットワーク現況 Id Cross-Section Photo

W4-1

n/a

W = 36.7 m W4-2

n/a

W = 18.9 m 出典:調査団作成

図 3.4.55 バナニ駅周辺主要道路状況 Id Cross-Section Photo

W4-3

n/a

W = 15.2 m

W4-4 n/a

W = 15.2 m

W4-5 n/a

W = 12.6 m 出典:調査団作成

図 3.4.56 バナニ駅周辺生活道路状況

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3-132

(c) MRT の開発インパクト

3.158 MRT 整備による駅周辺地区へのインパクトとして、下記が想定される。

(i) ボナニ駅周辺は多くの商業施設が立地しており、高層化が進んでいる。オフィス

も多く、MRT 建設により更に多くの就業者が通勤し、ますます商業地域が拡大す

る。(昼間就業者数 94,600 人から 148,800 人)

(ii) ボナニには BRAC 大学等の大規模な学校や若者向けの店舗もあるため、学生の利

用も想定される。(昼間学生数 45,900 人から 67,200 人)

表 3.4.11 ボナニ駅周辺の社会経済指標予測(半径 1km 圏) 2015 2035

Population Day No.(000) 166.2 267.6

Density (No/ha) 529.1 851.9

Night No.(000) 83.3 154.8 Density (No/ha) 265.1 492.9

Daytime Population Worker (000) 94.6 148.8 Student (000) 45.9 67.2

Total 140.5 216.0

Night Population

Worker (000) 34.8 71.0 Student (000) 22.7 32.2

Total 57.5 103.2 Population Day/Night Ration (000) 2.0 1.7

出典:RSTP データベースをもとに調査団作成

(d) TOD に関する留意点と方向性

3.159 ボナニ駅はグルシャンやバリダラを始めとする中心業務地区の一角であり、商業

地区として栄えている。エアポート道路や BR ボナニ駅等と交差しており、高い乗換需要

が発生する。ボナニ駅における TOD の整備方針は以下である。

(i) 駅前広場の整備:ボナニ駅周辺のダッカ・マイメンシンハイウェイはボナニ・グ

ルシャンなどの業務拠点へのアクセス道路として機能しており、渋滞が激しい。

また、国鉄・バス・歩行者などの様々な交通モードが交わる地域でもある。ダッ

カ・マイメンシンハイウェイ沿線の空地を利用した駅前広場の整備は必要不可欠

である。駅の西側は BR ボナニ駅前の車寄せスペースを有効活用する。

(ii) 歩行者ネットワークの整備:ダッカ・マイメンシンハイウェイによって東西方向

が分断されている。歩道橋はあるが、幅員が充分ではなく、国鉄駅と MRT 駅、カ

ントンメン地域とボナニ地域のアクセスを改善する必要がある。MRT 駅と BR 駅

の乗換に適した位置に幅員の広い歩道橋など、アクセス経路を整備する必要があ

る。

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3-133

出典:調査団作成

図 3.4.57 ボナニ駅周辺地区開発コンセプト案 12) Gulshan 2駅

(a) 駅勢圏の土地利用現況

3.160 ダッカの商業の中心地区であり、グルシャン 1 からグルシャン 2 の間には、高層

ビルが建ち並んでいる。RAJUK により 1960 年代に計画された住居地域の 1 つであり、近

年では住居だけではなく、商業の中心地域として機能している。グルシャン 2 のサークル

周辺にはダッカ北市役所や大型スーパー、銀行等の複合ビルが建ち並び、近年では、グル

シャン 2 サークル付近の建て替えも実施され高層ビル街へと生まれ変わっている。

3.161 グルシャン 2 のサークルを中心に商業施設が位置し、主要道路を外れると閑静な

中高層住宅が広がっている。ダッカ市内でも最も地価の高い地域の一つであり、外資系企

業関係者や富裕層が主に居住している。

3.162 グルシャン近辺のリキシャや CNG の乗り入れが制限され、バス会社もダッカ北市

役所が運営するものに統一されている。バスや CNG による渋滞は緩和されたが、多くの

乗用車が行き来することで通勤時には渋滞が発生している。

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3-134

出典:調査団作成

図 3.4.58 グルシャン 2 駅周辺地区の土地利用

(b) 駅勢圏の交通現況

3.163 駅周辺の交通現況に係る特徴は下記である。

(i) グルシャン周辺は RAJUK により計画されており、道路や歩道は整備されている。

しかし、歩道上に看板が設置されていたり、舗装が不充分である場所も散見され

る。

(ii) 視覚障害者用誘導パネルが設置されているが、歩道が陥没しているなど、舗装の

状態が悪く効果が出ていない。

(iii) グルシャン内は、リキシャや CNG、バスの利用が制限されているため、ダッカ市

役所が運営するバスや徒歩が主な移動手段となる。

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3-135

出典:調査団作成

図 3.4.59 グルシャン 2 駅周辺の交通ネットワーク現況 Id Cross-Section Photo

W3-1

n/a

W = 29.8 m W3-2

n/a

W = 27.7 m N8-7

n/a

W = 22.8 m

出典:調査団作成

図 3.4.60 グルシャン 2 駅周辺主要道路状況

Id Cross-Section Photo W3-3

n/a

W = 18.7 m

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3-136

Id Cross-Section Photo W4-3

n/a

W = 15.2 m W4-5

n/a

W = 12.6 m N8-8

n/a

W = 12.7 m N8-9

n/a

W = 20.5 m N8-10

n/a

W = 15. 2 m 出典:調査団作成

図 3.4.61 グルシャン 2 駅周辺生活道路状況

(c) MRT の開発インパクト

3.164 MRT 整備による駅周辺地区へのインパクトとして、下記が想定される。

(i) 駅周辺は既に多くの建て替え工事が実施されており、FAR 上限に近い高層ビルの

建設が進められている。MRT によってグルシャン内の渋滞を避け移動できるよう

になることから、開発需要がさらに高まり、グルシャンサークル付近だけではな

く、現在高度利用されていない用地においても建て替えが促進され、居住者数が

増加する。(夜間人口 87,700 人から 137,400 人)

(ii) グルシャン 2 サークル付近はオフィス街としての機能を既に持っているが、建て

替えによって更に高度化が進み、ビジネス街としての特性がより強くなる。また、

グルシャン 2 サークル付近にはローカルマーケットが存在しているが、将来の開

発需要の高まりにより開発が進む。(昼間人口 163,000 人から 299,300 人)

表 3.4.12 グルシャン 2 駅周辺の社会経済指標予測(半径 1km 圏) 2015 2035

Population Day No.(000) 163.0 299.3

Density (No/ha) 518.7 952.8

Night No.(000) 87.7 137.4 Density (No/ha) 279.2 437.5

Daytime Population Worker (000) 91.9 179.9 Student (000) 43.9 73.7

Total 135.8 253.6

Night Population

Worker (000) 36.5 63.1 Student (000) 24.1 28.6

Total 60.6 91.7 Population Day/Night Ration (000) 1.9 2.2

出典:RSTP データベースをもとに調査団作成

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3-137

(d) TOD に関する留意点と方向性

3.165 グルシャン 2 はダッカ市内で最も商業施設が集中しており、開発需要が高い地域

である。MRT 建設により、通勤客が増加し更に商業地域として発展する。グルシャン 2駅における TOD の整備方針は以下である。

(i) 駅前広場の整備:既に高密な開発が実施されているが、交通結節点や効率的な交

通システムは導入されてない。MRT 整備と現在のバスの乗換機能の充実を図るた

めに、グルシャン 2 サークルの周辺の機能を整理する必要がある。当該地区は現

在、ダッカ市役所が運営しているバスのみが走っており駅の出口とバス乗場の位

置を調整する必要がある。そのために、サークル周辺の駐車場を交通結節点とし

て利用する必要がある。

(ii) 歩行者ネットワークの改善:グルシャン付近へのバスの乗り入れが制限されてい

ることからノトゥンバザールから徒歩でグルシャン方面へ向かう人が多い。しか

し、歩道は十分に整備されておらず、視覚障碍者誘導ブロックなどもグルシャン

周辺では導入されているが、幅員が狭く、舗装状態も悪いため有効に機能してい

ない。また、サークル周辺の歩道スペースも不充分なため、交通結節点の整備と

合わせて歩行者用のスペースを充分に確保する必要がある。

(iii) 地下鉄出入口の計画:グルシャン 2 駅の利用者は周囲にあるオフィスへの通勤者

が多く、サークルの四方へ徒歩で向かう利用者が多い。そのため、グルシャン 2サークル付近に地下鉄出入口を集中させることは、混雑の原因となるため出入口

を分散して配置する。

出典:調査団作成 図 3.4.62 グルシャン 2 駅周辺地区開発コンセプト案

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3-138

13) Vatara駅

(a) 駅勢圏の土地利用現況

3.166 MRT5 号線の終点駅であり、マダニアベニュー沿いに商業地が立地している。周囲

は中層の住居が多く、道路も新設されており、今後ダッカの東側拠点開発の主要コリドー

となることが想定される。現在、ボシュンドラレジデンシャルエリアや JA(Jholshiri Abashon)プロジェクト等大規模な計画が進められており、将来的には開発需要が増大する

ことが見込まれる。

3.167 駅予定位置周辺には、新設道路や住居等の建設が進められている。しかし、大規

模な高層建築が建設されている訳ではなく、駅周辺には空地が確認出来る。

出典:調査団作成

図 3.4.63 バタラ駅周辺地区の土地利用 1 2 3 4

出典:調査団作成

図 3.4.64 バタラ駅周辺地区の土地利用(写真)

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3-139

(b) 駅勢圏の交通現況

3.168 駅周辺の交通現況に係る特徴は下記である。

(i) ノトゥンバザール駅からバタラ駅方面の道路は建設中であり、将来的に東側方面

へ道路が更に延伸される予定である。工事現場を確認すると歩道は整備されてお

り、確保されている幅員も広い。

(ii) 周辺の住居地域へのアクセス道路は未舗装で道路幅員が狭くアクセスが難しい。

出典:調査団作成

図 3.4.65 バタラ駅周辺の交通ネットワーク現況 Id Cross-Section Photo

W1-4 Madani Avenue

W = 30.0 m

N8-1 Madani Avenue

W = 29.2 m 出典:調査団作成

図 3.4.66 バタラ駅周辺主要道路状況

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3-140

Id Cross-Section Photo W1-1

Madani Avenue (100feet Road)

W1-2

100 feet Mukti Joddha Road

W1-3

100 feet Mukti joddha Road

W1-5 10 No. Masjid

Road

W1-6

Doulot khan Road

W1-7

Solmaid High School Road

W1-8 Solmaid High School Road

W = 5.9 m

W1-9 Solmaid High

School Road (in front of School)

出典:調査団作成

図 3.4.67 バタラ駅周辺生活道路状況

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3-141

(c) MRT の開発インパクト

3.169 MRT 整備による駅周辺地区へのインパクトとして、下記が想定される。

(i) バタラ駅周辺にはボシュンドラレジデンシャルエリアの開発が進められ、将来的

に人口増加が見込まれる。土地利用を見ると商業施設の立地が少なく、大部分が

グルシャンやボナニに通勤することが考えられる。(昼夜間人口比率 0.7 と低い)

(ii) グルシャン、ボナニといったオフィス街から近いため住宅需要が高く、MRT の整

備により、多くの就労者が居住することが考えられる。(夜間人口 78,000 人から

134,900 人)

表 3.4.13 バタラ駅周辺の社会経済指標予測(半径 1km 圏) 2015 2035

Population Day No.(000) 55.7 100.9

Density (No/ha) 177.4 321.1

Night No.(000) 78.0 134.9 Density (No/ha) 248.2 429.4

Daytime Population Worker (000) 13.4 34.3 Student (000) 13.6 21.5

Total 27.1 55.8

Night Population

Worker (000) 27.7 61.7 Student (000) 21.6 28.1

Total 49.3 89.8 Population Day/Night Ration (000) 0.7 0.7

出典:RSTP データベースをもとに調査団作成

(d) TOD に関する留意点と方向性

3.170 バタラ駅は MRT5 号線の東側ターミナル駅であり、東部開発が進むことで延伸さ

れる可能性がある。周辺にはボシュンドラレジデンシャルエリアが位置しており、今後の

急激な人口増加が見込まれる地域である。バタラ駅における TOD の整備方針は以下であ

る。

(i) 駅前広場と駐車場の整備:駅予定位置周辺には未利用の土地が散見される。元は

湿地帯であったため埋め立てが始まっているが、早い段階で用地を取得し駅前広

場と駐車場を整備する。将来的には延伸される予定ではあるが、ターミナル駅と

して駐車場を整備することで、乗客利用者数の増加が見込まれる。

(ii) 既成市街地からの歩行者アクセスの確保:既成市街地には歩道が整備されておら

ず歩行ネットワークの整備が必要である。路地が多く入り組んでいる為、駅前広

場に対しての歩行者アクセスを確保する。

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3-142

出典:調査団作成

図 3.4.68 バタラ駅周辺地区開発コンセプト案

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3-143

3.5 ダッカの TOD 整備方針

1) 各駅の要約

3.171 MRT1 号線と 5 号線の各駅の状況、MRT のインパクト、TOD の整備方針を駅毎に

概観したが、改めてこれを表 3.5.1 に整理する。言うまでもなく MRT へのアクセスをど

のように整備するか、とオフロードの駅前広場や結節点を確保するかが重要で、これがあ

って始めて駅前・沿線開発が促進される。MRT は一旦建設されると長期に渡って存続し、

様々な社会経済間発面のインパクトを周辺地域にもたらす。とりわけ都市開発や土地利用

へのインパクトは長い時間かけて周辺コミュニティの在り方を変える。整理の視点は下記

の通りである。

(1) MRT アクセス環境:主として駅勢圏(800-1,000m)にかける交通状況

駅勢圏の歩行環境の整備

MRT/BRT/BR との接続

路面公共交通や水上交通との接続

(2) 駅前広場の確保:一定規模のオフロードの交通結節施設

(3) 一体的都市開発機会

既成市街地(開発コミュニティ)の住環境整備

民有地の一体開発促進

政府系用地の一体開発

ニュータウン開発との連携(官・民)

(4) 駅位置の調整:駅前広場の確保や一体的都市開発促進の重要性を考慮して鉄道駅の現

計画位置の変更の可能性を検討する。

2) 駅前広場の確保と方法

3.172 更に駅前広場については、駅前広場の重要性、用地確保の可能性、用地確保の方

法について各駅の状況を表 3.5.2 に整理した。駅前広場の路外空間の確保は何れも容易で

はないが、周辺の都市計画や土地利用状況を考慮すれば充分に可能である。具体的には下

記の方法が考えられる。

(i) 建設デポ利用:駅前広場整備の為には駅と近接した位置に用地が必要となってく

る。現在のダッカ市内の現状を鑑みると、駅前広場の為に用地を確保出来る駅は

限られてくる。しかし、建設デポが駅の近くに立地している駅が複数あることか

ら建設デポ用地を駅前広場として継続して利用することが重要である。駅前広場

の用地を確保できない場合には、民間企業による開発等により、駅前の交通結節

点整備が長年に渡り実現できない可能性が高まる。MRT建設の効果も半減し、利用

者の増加も見込めない状況を避けるために、必ず駅前広場の用地として確保する

ことが重要である。

(ii) 公有地の活用:駅予定位置周辺に公共用地を持つ駅が散見される。既に住宅地と

して開発されている地域や民間企業によって開発が進められている地域と比較し、

公共用地であれば土地取得のリスクが低い為、積極的に交渉を進める必要がある。

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3-144

駅前広場が整備されることにより、アクセス改善や公共交通の利便性の向上につ

ながる等、土地を提供する側のメリットも少なくない。継続して交渉にあたり用

地確保に努めることが重要である。

(iii) 民間企業による大規模開発計画の変更:ボシュンドラレジデンシャルエリア等、

MRT建設により民間企業に裨益する駅が存在する。今後の MRT延伸予定地域に関し

ても民間企業による大規模開発が計画されている。Private Residential Land

Development Rules では開発時に必要な用途別面積を定めている。公園や教育施設

用の用地等の開発に欠かすことの出来ない用地確保が義務付けられており、駅前

広場の用地確保も駅立地予定地周辺には用地確保を義務付けるべきである。

(iv) RAJUKによる開発計画の変更:プルバチャールニュータウンのような RAJUKによる

ニュータウン計画は将来的にも実施される可能性が考えられる。その為、MRTの将

来計画に合わせた用地の確保が重要であり、RSTP で策定された MRT 路線計画に沿

って駅位置を想定し、駅前広場となり得る位置に空地を確保しておく必要がある。

短期的に整備される可能性がない場合には公園として利用することで将来計画へ

の対応が可能である。

(v) 駅周辺地域の建替え制限と駅前広場用地の確保:ダッカ市内の開発が進んでおり、

特に主要道路沿道の開発が進められている。その中でも築年数が古く、FARが有効

に使われていない敷地に対して高層ビル建設が進められており、バッダ駅周辺等

は近年住居や複合施設の建設が完了し、駅周辺の用地を確保することが難しい。

ランプーラ駅やマリバーグ駅周辺には、築年数が古い建築が多く、駅前広場予定

地を決定し、用地を確保するために建て替えを制限する。

(vi) 道路空間の利用:駅によっては必要な路外の駅前広場のスペースを確保すること

が事実上不可能と考えられる。こうした場合にも路面公共交通機関との結節は必

要であり、このために道路空間を再編して道路交通を阻害することなく MRT への

アクセスを確保することが必要である。

3.173 表 3.5.1 及び表 3.5.2 の通り、1 号線のプルバチャール線に位置する 7 駅は周辺に開

発用地も多く、駅前広場も整備しやすい。現在、民間企業による大型開発、プルバチャー

ルニュータウンの開発が進んでいるため、MRT との整合性をとり計画を進めることで実

現可能性が高くなる。また、コムラプール駅では建設ヤードを利用した駅前広場の整備に

より、バングラデシュ国鉄との交通結節点整備の可能性が高く、将来的には周辺の再開発

を含めた開発の可能性が高い。5 号線では、バタラ駅やガブトリ駅以西では周辺に空地も

多く開発用地も多く存在するため、適切な都市計画を策定することで TOD の実現性を高

めることが可能である。

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3-145

表 3.5.1 駅別 TOD の可能性

路線 駅

MRT アクセス環境

駅前広場の確保

一体開発機会

駅位置の調整

駅勢圏の

歩行環境の整備

MRT

/ BRT

/BR

との接続

路面公共交通や

水上交通との接続

既成市街地の

住環境整備

民有地の

一体開発促進

政府系用地の

一体開発

ニュータウン開発

との連携(官

・民)

MRT 1 Kamlapur ◎ 〇 〇 ◎ 〇 〇 〇 - - Airport Line Rajarbagh ○ - 〇 〇 〇 〇 〇 - -

Malibagh ○ - 〇 △ 〇 〇 - - - Rampura ○ - 〇 △ 〇 〇 - - - Hatirjheel ○ - ◎ ◎ 〇 - - - 〇 Badda ○ - 〇 △ 〇 〇 - - - Uttar Badda ○ - 〇 △ 〇 〇 - - - Natun Bazar ◎ 〇 〇 ◎ 〇 - - - - Future Park ○ - 〇 〇 〇 〇 - 〇 - Khilkhet ○ - 〇 ◎ 〇 - 〇 - - Airport Terminal 3 ○ - 〇 〇 〇 - 〇 - - Airport ◎ 〇 ◎ ◎ 〇 - 〇 - -

MRT1 Bashundhara ○ - △ 〇 〇 - - 〇 - Purubachal POHS ○ - △ 〇 〇 - 〇 〇 -

Line Mastul ○ - △ ◎ 〇 - - 〇 - Purbachal West ○ - △ ◎ 〇 - - 〇 - Purbachal Central ○ - △ ◎ 〇 - - 〇 〇 Purbachal East ○ - △ ◎ 〇 - - 〇 〇 Purbachal Terminal ○ - △ ◎ 〇 - - 〇 -

MRT 5 Hemayetpur ○ - 〇 〇 〇 〇 - - - Baliapur ○ - △ ◎ 〇 - - - - Bilamaria ○ - △ ◎ 〇 - - - - Amin Bazar 〇 - 〇 ◎ 〇 〇 - - - Gabtoli ◎ 〇 ◎ ◎ 〇 〇 〇 - - Dar-Us-Salam ○ - 〇 〇 〇 - 〇 - - Mirpur 1 ◎ - 〇 〇 〇 - 〇 - - Mirpur 10 ◎ 〇 ◎ ◎ 〇 - 〇 - - Mirpur 14 ○ - 〇 〇 〇 - 〇 - - Kochukhet ○ - 〇 △ 〇 - 〇 - - Banani ◎ 〇 ◎ ◎ 〇 - 〇 - - Gulshan 2 ◎ - 〇 ◎ 〇 〇 - - - Vatara ○ - △ ◎ 〇 〇 - 〇 -

注)◎:特に重要 〇:重要 △:限定的 出典: 調査団

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3-146

表 3.5.2 各駅の駅前広場と駅前・沿線開発実施の可能性

駅前開発

一体開発 機会 駅前広場の

必要性 用地確保の

可能性 用地候補 整備手法

Kamalapur A A 建設デポの利用 ICD 用地の利用 B Rajarbagh B A 公共用地(警察)の利用 C Malibagh B C 区画整理 C Rampura B C 区画整理 C

Hatir Jheel A A 建設デポの利用 C Badda B C 区画整理 C

Uttar Badda B C 区画整理 C Notun Bazar A A 建設デポの利用 C Future Park A B 民間敷地(ジョムナフューチャーパーク)の利用 C

Khilkhet B A 建設デポの利用 C Airport Terminal 3 B B 民間敷地(DEE)の利用、地下道の駅ナカ開発 B

Airport A A BR 用地の利用による交通結節点整備 C

Bashundhara B B 建設デポの利用 民間敷地(ボシュンドラレジデンシャルエリア)の

利用 A

POHS B B POHS の利用 民間敷地(ボシュンドラレジデンシャル)の利用 A

Mastul B A 空地の利用 A Purbachal West A A RAJUK 計画の再考 A

Purbachal Central A A RAJUK 計画の再考 A Purbachal East A A RAJUK 計画の再考 A

Purbachal Terminal A A RAJUK 計画の再考 A Hemayetpur B B 区画整理 B

Baliapur C A 空地(開発制限)の利用 A Bilamalia C A 空地(開発制限)の利用 A

Amin Bazar B A 空地の利用 B Gabtoli A A バスターミナル敷地の利用 B

Dar-us-Salam B B 公共用地の利用 病院寮の利用 C

Mirpur 1 A A 公共用地(初等教育省)の利用 C Mirpur 10 A A 公共用地(RAJUK)の利用 C Mirpur 14 B A 公共用地(警察学校)の利用 C

Kochunkhet B C 軍用地 公共用地の利用 C

Banani A A 沿道の空地の利用 公共用地(BR)の利用 C

Gulshan 2 A A 公共用地(DNCC)の利用 サークルの再編 C

Vatara B A 空地 A 注) A:非常に重要 B:重要 C:限定的 出典:調査団

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3-147

3) 日本の駅前広場事例

3.174 駅前・沿線開発において最も重要なものは交通結節点である。この機能が確保さ

れないと鉄道本来の機能が大きく損なわれるという認識のもとに、鉄道側と都市側の分担

について申し合わせが有り、これが駅前広場の整備に関して、前提条件となっている。日

本の駅前広場の整備に関しては、古い歴史がある。これらの経緯を踏まえて、日本の TOD事例を理解することが必要である。主な点は下記である。

(i) 駅前広場整備の基本方針:駅前広場の整備に関して戦後復興事業において、1946 年の申

し合わせで街路と鉄道用地の一体施設として整備する方針が出され、その用地、費用は、

都市側と鉄道側で折半するとした。以後,現在まで負担割合は変更されているものの,この

方針は変わっていない。すなわち、都市整備部局ないし道路管理者が整備することが原則

と考えられてきた。国鉄の経営悪化や国鉄の民営化等様々な経緯を経て、JR本州3社は平

成 14 年 4 月「都市計画による駅前広場の造成に関する申合わせ」を策定した。しかし、駅ご

とに様々な事業形態が存在しているのが実態である。

(ii) 駅前広場の規模:広場面積の算定式として 1953 年に駅前広場研究委員会式(28 年式)が

示され,乗降人員の関数として面積を決定するものとされた。1972年に建設省と国鉄の間で

駅前広場整備に関する新たな申し合わせ事項(建国協定)が作成され都市側の負担率が

1/2 から 3/4 へと変更された.また広場面積の算定に関しては,計画要素ごとに面積を積み

上げる小浪式(1968 年)や 48 年式(1973 年)等,より合理的な方法が示された。鉄道側と都

市側の負担金に関する制度があったことから、古い駅は、比較的駅前広場が整備されてい

る。しかし、国鉄の民営化以降は、都市側の負担となり、都市施設として整備されている。

(iii) 立地条件にあわせた多様な機能:郊外部の単独駅など駅前広場の整備のみで、バス、タク

シーの発着場の整備という例も多く見られる。地域の拠点的駅などポテンシャルのある駅前

においては、駅前広場の整備と合わせて、駅前広場に面する街区の再開発事業など一体

開発事例も多い。

3.175 このように日本の都市では鉄道駅の駅前広場整備は当然とされ、鉄道側、都市側

の分担比率によって整備されてきた。この中で、駅前広場が都市計画として整備された事

例は、戦前の新宿西口広場の整備事例、戦後の戦災復興事業とされた池袋の駅前広場整備、

近年では新宿南口のバスタ新宿の整備などが挙げられる。何れにしても駅前広場は官が主

導に行われてきた。

3.176 駅前広場の計画を実施するにあたり、最も重要な要素の一つとして鉄道利用者や

バス利用者等が他の交通システムへ乗換えるための交通結節点としての機能が挙げられ

る。その一方で、買い物客や待ち合わせなどの人々の交流や都市景観としての役割も欠か

すことが出来ない。

3.177 具体的には、交通形態への対応、駅周辺地区の拠点としての計画、都市や駅の玄

関口としての役割・都市景観への配慮、都市空間の有効利用、福祉への配慮が挙げられる。

(i) 変化する交通形態への対応:公共交通の発達により、様々な交通形態がみられるようにな

っているが、駅前広場の整備を実施するにあたり将来の交通予測や変化に対応するため

に充分な用地の確保が必要である。

(ii) 都市成長の拠点としての計画:日本では、駅を中心とした市街地の形成が続き、駅周辺に

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3-148

商業業務機能が集積してきたが、都市の成長に見合った駅前広場の整備が不充分であり、

駅前広場の混雑を招いている都市も存在する。将来の都市開発の需要に合わせた駅前

広場の計画が必要である。

(iii) 都市景観への配慮:駅前広場は都市を訪れた人が、都市やまちのイメージを最初に形作

る「都市の顔」である。したがって、駅前広場の計画にあたっては景観やアメニティに配慮

することが必要不可欠であり、シンボル性をもつ空間づくりが必要である。

(iv) 都市空間の有効利用:駅前広場は、駅周辺が高度開発されている都市部において貴重な

公共空間である。日本の駅前広場は、採光、交通処理、安全性の点から、平面利用が一

般的だったが、今後は都市の限られた空間の中で駅前広場に求められる多くの機能を有

効に提供するために、敷地や周辺建物などの計画条件によっては、景観、交通動線に配

慮しつつ、立体利用を行う必要がある。

(v) 福祉への配慮:駅前広場は、人々の生活で身近に利用する機会の多い施設の一つとなる。

そのため、障害者や高齢者などを含むすべての人々にとって利用しやすい施設とするよう

ユニバーサルデザインを取り入れることは最低限必要な要素である。駅前広場の計画に関

しては駅と周辺の歩行者ネットワークと合わせて整備することにより、全ての人々が快適に

利用できるよう配慮する。

3.178 日本には無数の事例があるが、これを規模と整備方式で大まかに表 3.5.3 に整理し、

この中からダッカの参考となるものを紹介する。バスタ新宿は、駅前広場を立体整備した

事例であり、ダッカ市内において駅前広場の為の十分な用地確保が出来ない駅の解決策の

一例として紹介する。また、金沢駅の事例は、充分な駐車場を有した事例であり、バタラ

駅やヘマイェット駅等の郊外ターミナル駅の参考事例となる。

表 3.5.3 日本の駅前広場整備事例

面積 特徴 駅・施設名

大型(敷地面積 10,000 ㎡以

上)

平面整備 金沢駅西口駅前広場 旭川駅前広場

道路拡幅+立体利用 バスタ新宿 再開発+立体利用 旭橋駅周辺地区 用地転換+立体利用 オアシス 21

中・小規模 (10,000 ㎡未満)

再開発+駅前広場整備 武蔵小金井駅南口 武蔵小杉駅南口

住宅・商業集積地での 小規模駅前広場整備

自由が丘駅 駅前広場 阿佐ヶ谷駅 駅前広場

その他 戦後~高度経済成長期からの駅前広場整備の

計画決定・実施 JR 山手線各駅

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3-149

事例 1 バスタ新宿

バスタ新宿は、新宿駅南口地区にある鉄道駅や高速バスターミナル、タクシー乗降場などを集約

した交通ターミナルである。限られた敷地の中で人工地盤を整備し、歩行者広場、タクシー乗降

場、高速路線バス関連施設を立体的に配置している。バスタ新宿の横には JR 新宿ミライナタワ

ーが建設されオフィス機能と商業施設を合わせもっている。

出典:国土交通省 関東地方整備局 HP

図 3.5.1 バスタ新宿概要

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3-150

事例 2 金沢駅西口駅前広場

3.179 北陸新幹線の開業にあわせ、金沢駅の西側に広がる新都心に面して 2014 年に整備

されたバスターミナルを含む駅前広場計画である。金沢駅の東側には歴史のある街並みが

あるが、交通結節点の機能は持っておらず、西側に長距離バス、空港バス、観光ツアー、

送迎バス、臨時バス等が西口側から発着する。駅前広場の下には各機能と接続する為の地

下道も整備されアクセスの改善が行われている。

3.180 周辺には、駅前広場に面して整備された複合商業施設には宿泊機能やバス待合室、

レンタカー営業所、商業施設等が配置されている。

出典:金沢市 HP(金沢駅西広場)

図 3.5.2 金沢駅西口駅前広場概要

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3-151

事例 3 JR 山手線各駅 駅前広場の整備状況

3.181 戦後の高度経済成長期における都市部の人口集中やモータリゼーション化を受け、

駅前の歩行空間・車道空間の確保が必要となり、駅前広場の整備が進められてきた。全国

に存在する駅前広場のうち、約 50%が戦後~高度成長期までに都市計画決定されたもので

ある。東京都の JR山手線における駅前広場整備状況を表 3.5.4 に示す。規模としては 5,000 ~ 10,000 m2程度のものが多いが、当時から市街化が進んでおり、用地の制約を受けつつも

早期からの計画決定を行っている駅が多い。

表 3.5.4 JR 山手線 各駅における駅前広場の整備状況

駅名 駅前広場計画面積 (m2)

鉄道乗降客数 (人/日)

計画決定 年月日

秋葉原駅 217,237 (東口) 4,000 1993.12.10 (西口) 4,300 1996.4.8 浜松町駅 2,500 306,992 2009.4.25

田町駅(東口) 7,000 309,500 1989.1.20 品川駅(東口) 14,000 891,310 1946.4.25 高田馬場駅 2,610 424,572 新宿駅 1,571,602 (西口) 24,600 1980.1.22 (東口) 14,200 1956.12.7 東京駅 396,152

(八重洲口) 10,300 2002.6.28 (丸の内口) 12,200 2002.6.29 新橋駅 499,214 (東口) 9,600 1946.12.7 (西口) 3,090 1946.12.7 目黒駅 1,700 196,688 1946.8.20 五反田駅 252,274 (東口) 4,900 1946.8.20 (西口) 2,020 1946.8.20

大崎駅(西口) 5,740 187,418 1964.2.7 渋谷駅 891,460 (西口) 15,230 1946.8.20 (東口) 8,140 1946.8.20 恵比寿駅 3,767 275,652 1947.2.20 池袋駅 2,620,000 (東口) 13,290 1946.8.20 (西口) 6,180 1946.8.20 大塚駅 105,000 (南口) 9,130 1946.12.7 (北口) 6,490 1946.12.7 巣鴨駅 239,000 (北口) 3,010 1946.12.7 (南口) 1,511 1946.12.7 駒込駅 2,568 119,000 1946.12.7

出典:国土交通省 都市計画年報 (平成 20 年版)

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3-152

田町駅 左:昭和40 年(1965 年)、右:現在

新橋駅 左:昭和 40 年(1965 年)、右:現在

池袋駅 左:昭和 30 年(1955 年)、右:現在

品川駅 左:昭和 56 年(1981 年)、右:現在

出典:http://blog.livedoor.jp/k1959s4405-showa_tokyo/

図 3.5.3 山手線各駅 駅前広場の変遷

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3-153

4) ダッカにおける駅前広場

3.182 各駅の駅前広場整備について前項にて検討を行った。各駅の特徴や用地確保の観

点よりダッカにおける駅前広場を規模ごとに 3 種類に分類を行った。

駅前広場 規模

交通広場 (バス乗降場)

リキシャ CNG

乗用車 タクシープール

駐車場 (乗用車、バイク)

環境空間

大 (10,000 ㎡以上) 〇 〇 〇 〇 〇

中 (5,000 ㎡) 〇 〇 〇 - 〇

小 〇 - - - -

(i) 大型駅前広場(10,000 ㎡以上):大型駅前広場は、コムランプール駅、バタラ駅、ヘマイ

ェットプール駅のようなターミナル駅が想定され、駅周辺からバス、CNG、リキシャ、タクシ

ー、乗用車等の様々なアクセス手法が考えられるため、各交通システムの乗降場及び駐

車場が必要である。また、乗客の滞留空間も必要となるため、ゆとりのある環境空間が必

要となる。

図 3.5.4 大型駅前広場例(コムラプール駅)

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3-154

図 3.5.5 大型駅前広場の構成用途

(ii) 中型駅前広場(5,000 ㎡): バス、乗用車、タクシー、CNG、リキシャの為の交通広場を設

け乗客の滞留空間をもった環境空間を整備する。広場を中心に商業施設が立地し TOD実現の為の核となる。

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3-155

図 3.5.6 中型駅前広場例

図 3.5.7 中型駅前広場の構成用途

(iii) 小型駅前広場: MRT1号線及び 5号線は既成市街地沿いに計画されている区間も多く、

周囲に駅前広場のための用地確保が困難な駅も存在する。しかし、バスや CNG、リキシ

ャ等の他交通との結節は欠かすことは出来ず、最低限の用地確保は実施する必要があ

る。

図 3.5.8 小型駅前広場例

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3.6 TOD 実現の為の政策提言

1) 持続可能な開発実現の為のTODの重要性

(a) 都市圏レベルの役割

3.183 ダッカの都市活動は非常に活発であり、人口の急増、都市圏の拡大、経済活動の

活発化、モータリゼーションの進行などで人々の暮らしはより豊かになっている。一方で、

新たな都市戦略や開発フレームワークがない限り、都市化による負の側面が生じ、慢性的

な交通渋滞、大気汚染、騒音、通勤時間の長期化、アフォーダブル住宅の不足が将来的に

更なる課題となってくる。MRT6 号線や本事業で検討されてる MRT1 号線、5 号線が交通

と土地利用の両方に影響を及ぼし、都市と交通を一体的に検討する必要性が RSTP で明ら

かにされた。即ち都市鉄道は、膨張するダッカの拡大を誘導し鉄道路線沿線の高密度開発

を促し、公共交通指向型の空間構造を実現する。これによって都市中心部へのアクセシビ

リティは向上し、鉄道利用者は混雑に巻き込まれることなく移動できる。郊外部での沿線

開発によって低価格の住宅が供給される。また、自動車交通からの鉄道への転換によって

沿線の大気汚染も軽減される。同時に鉄道によって鉄道駅を中心に人の流れは大きく変わ

り新たな経済開発のチャンスがもたらされる。TOD はこうした鉄道の便益を最大化するた

めの手段であり TOD を促進するためには以下の施策に留意する必要がある。

(i) 法定都市計画への反映:こうした鉄道整備計画に基づく都市計画として Dhaka Structure Plan に反映し、都市開発の基本方針を明らかにして公表する。これによって鉄道路線が

都市計画として担保されその後の土地利用計画や都市開発に影響を及ぼすと同時に行

政が民間開発を規制・誘導するためのツールとなる。

(ii) MRT 影響圏の詳細計画への反映:鉄道路線の事業化が明らかにされた地区について

は、その影響圏(ここでは駅を中心に 1km 圏を想定)を対象とした Detailed Area Plan を

作成し、圏域内の開発を具体的に規制・誘導する。これによって、Structure Plan で示さ

れた基本方針を具体的なものにすることが出来る。

(iii) 沿線開発の促進:とりわけ大規模な開発については、駅勢圏に捉われることなく TOD の

コンセプトに照らした検討とこうした開発を促進することが必要である。

(b) 駅勢圏レベルの役割

3.184 鉄道は駅勢圏を中心に、その沿線地域に交通や土地利用に大きなインパクトをも

たらす。鉄道利用者の大半は徒歩によるものであり、地価は鉄道駅からの距離によって大

きく変わる。この時に重要な役割を果たすのが駅前広場である。駅前広場は交通面からは

交通結節機能、即ち歩行者の安全性・利便性・快適性、バスやリキシャとの乗換えのし易

さ、郊外部におけるパークアンドライド、他の鉄道路線・水上交通・空港とのつながりを

強化することが求められ、都市開発面からは周辺地区の一体開発を促すものである。駅前

広場の有無やデザインは都市鉄道の開発効果を最大限にする重要な要素である。

3.185 ダッカのように鉄道路線が既成市街地を通り、多くの場合鉄道駅予定地が既に高

密に開発されている所では用地の確保が困難である。しかし、鉄道は一旦建設されると

50-100 年と長期にわたって機能するため、現状の制約に捉われるべきではない。例えば、

Detailed Area Plan に駅前広場の位置と現況を明示し、時間をかけてその用地を取得するこ

とや、Detailed Area Plan でその意義を示すことで地権者の協力を得るということもある。

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3.186 駅前広場が確保されると駅勢圏では次のような可能性が一気に拡がり、計画の作

成にあたっては充分な留意が必要である。

(i) フィーダー交通との乗り換えの促進:駅前広場が出来ることによってバスやリキシャとの乗

換えが円滑になり、より多くの利用客が鉄道を利用することになる。このためには、駅前

広場につながるアクセス道路の整備が伴わなければならない。アクセス道路の整備には

自動車交通の管理と歩行者の安全性や快適性に留意する。

(ii) 駅勢圏を中心としたコミュニティ住環境の改善:駅勢圏には鉄道を利用しない人達も多く

いる。しかし、駅前広場とアクセス道路の整備はこうした人達にも便益をもたらす。例えば、

駅前広場に公共交通サービス施設(マーケット、行政窓口、公園)等が併設されたり、ア

クセス道路が域内の生活道路として改善されたりという場合である。鉄道整備を梃子にコ

ミュニティの計画を作成し、同時に事業を進めることで鉄道事業への住民の支持を拡大

し地区の改善を進めることが出来る。

(iii) 開発利益の還元:鉄道が出来ると鉄道駅を中心に地価が上昇することは日本の例からも

明らかである。その上昇幅は鉄道駅の近傍(100m 位)と駅勢圏の外縁(800m 位)で 2-5倍に及ぶ。ダッカにおいてもこうした開発利益をいかに鉄道事業に、あるいはコミュニティ

開発に還元するかが問われてくる。そのためには、まず駅勢圏を目安に TOD 地区を設

定し、この地区のDetailed Area Planを作成し、後述する制度面の改革と併せて運用する

ことが必要となる。

(c) 駅ナカレベルの役割

3.187 駅ナカにも、同様に TOD の機会があり、駅ナカの収益は直接鉄道事業者へ利益の

反映が可能である。駅は大量の利用者が乗降する場所であり、これを対象とした商業開発

の機会は大きい。駅ナカの開発に際して留意すべき点は、駅ナカの開発が鉄道の安全でス

ムーズな運行の妨げにならないようにすることや、予め開発の可能性を見込んだ駅舎計画

としておくことである。

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2) TOD実現の為の法整備

3.188 TOD 実現の為に以下の法整備や規則改訂を提案する。

(a) Detailed Area Plan(DAP)の改訂

3.189 RAJUK エリアでは DAP により用途が定められている。しかし、鉄道の影響が含

まれておらず駅予定地周辺が適切な土地利用となっていない。そのため、駅予定位置周辺

の用途を見直し、適正な土地利用とする。RAJUK により策定されている DAP2016-2035に TOD のコンセプトを含み、駅前広場の位置を定める。今後、建て替え規制などにより

用地を確保する。この時に TOD を促進する地区を明示する。

(b) Mahanagar Building Construction Act の改訂

3.190 駅周辺開発を進めるにあたって、現在のバングラデシュの都市開発スキームでは

DAP だけではなく、Mahanagar Building Construction Act の中で、表 2.3.1 に示したように、

主要道路に面した開発を行う場合には、大規模特別開発委員会により、開発許可が与えら

れる。今回の MRT 路線の大部分が主要道路に計画されていることから、駅周辺開発も委

員会承認となることが予想される。そのため、Mahanagar Building Construction Act の中に、

鉄道駅周辺を範囲に含み、TOD に知識のある人材の参加が望ましい。また、RAJUK への

TOD 専門家の配置や DMTCL に都市開発担当が配置され、開発委員会に参加することが望

ましい。

表 3.6.1 特別許可を必要とする建築計画及び開発計画改訂案

例 種類 1 40 戸以上からなる住宅 2 7,500sq.m 以上の全ての建築 (ただし FAR 基準内) 3 5,000sq.m 以上のショッピングセンター(ただし FAR 基準内) 4 全ての国道、域道、主要道路に直接接続している計画 5 危険や汚染の可能性のある工場 6 建築的または歴史的な建物から 250m 以内にある全ての建築計画及び開発計画 7 自然地域から 250m 以内にある全ての建築計画及び開発計画 8 丘や崖から 50m 以内の全ての建築計画及び開発計画 9 河川から 50m 以内の全ての建築計画及び開発計画 10 MRT 駅から 500m 以内にある全ての建築計画及び開発計画 (追加)

出典: Mahanagar Building Construction Act(第 8 条)に追加

委員会構成メンバー 委員会の役割 Member Planning (RAJUK) President

Urban Planner Director (RAJUK) Member Chief Engineer (RAJUK) Member

Representative of Architecture Department (Assistant Chief Architect’s Rank)

Member

Representative of IAB (Institute of Architects Bangladesh) Member Representative, institution of Engineers Bangladesh Member

Representative, Bangladesh Institute of Planners Member Director (Development and Control), RAJUK Member

TOD Expert (RAJUK or DMTCL) (追加) Member 出典:Mahanagar Building Construction Act (第 32 条)に追加

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(c) 駅周辺既成市街地の建替え規制

3.191 バングラデシュで新たに整備される MRT は既成市街地を通過しており、既に密集

市街地の立地や民間企業による建て替えが行われている。しかし、駅前広場整備は欠かす

ことが出来ず既成市街地であったとしても土地の確保が必要である。そのため、土地収用

を第一に考え、将来的に更なる拡張の可能性を考慮し、駅周辺の決められた地域には建て

替え規制をかけ、土地の確保を促す。

(d) Private Residential Land Development Rules の改訂

3.192 民間の大規模開発が MRT 沿線に進んでいる。大規模開発の承認を得るために、

Private Residential Land Development Rules において各用途の割合が決められており公園も

含まれる。RAJUK が承認を出す際に、鉄道計画を考慮し、沿線に 1ha 以上の土地を確保

することを義務付ける。

(e) 駅前広場整備指針の策定

3.193 現在のバングラデシュにおいて駅前広場の整備指針やガイドラインは存在してい

ない。途上国において、駅前広場の役割は土地収用の困難さから軽視されてきたが、渋滞

解消や鉄道利用者の利便性の向上など欠かすことの出来ない要素である。そのため、駅前

広場の役割を正しく理解し整備するための指針の策定が必要である。日本では駅前広場整

備における様々な手法があり、1 日あたりの駅利用者数や各交通システム分担から必要面

積を求めるようになっている。ダッカにおいて、CNG やリキシャ等様々な交通システム

が存在し、将来的に劇的に変化する可能性も考えられる。DMTCL 等の実施機関が駅前広

場の整備を実施する際に、設計の基礎となるガイドラインが必要である。

(f) 土地公示価格(Government Declare Land Price)と市場価格の乖離の是正

3.194 現在、土地省により土地公示価格が決定されている。市場価格とは大きく異なり

税収を確保する為の最低限の価格を定めたものである。土地の売買において土地公示価格

の 10 倍以上の値段で取引されることは日常であり、大きく乖離がみられる。また、土地

の売買価格の 12-18%(地域によって異なる)の税金が登録料として支払われる。登録料が高

く、公示価格と市場価格に大きな乖離があることから、土地売買価格をごまかすことによ

り税金を逃れる事例が散見される。

3.195 RAJUK が計画するニュータウンの販売価格も公示価格に影響されやすく、販売価

格が低く抑えられている。そのため、公示価格を市場価格に近付けることにより TOD に

よる土地価格上昇分の利益を確保することが可能である。現状の路線価では、土地価格の

上昇による利益確保は困難である。また、ニュータウンの購入者も土地を市場価格で転売

し、莫大な利益を受けている。

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表 3.6.2 プルバチャールニュータウンの住宅区画販売価格

Allotment Type Plot Size Price(000BDT) 1st Phase 2nd Phase

General People (Allotted Plots)

3 Katha Plot 450 525 5 Katha Plot 1,000 1,125

7.5 Katha Plot 1,500 1,875 10 Katha Plot 3,000 4,000

Affected People (land only) 3 Katha Plot 600 600 5 Katha Plot 1,000 1,000

AADIBASHI (had under possession both land and dwelling & other units, homestead vegetation, etc.) 3 katha Plot 75 75

出典:RAJUK (1 カタ=約 67 ㎡)

表 3.6.3 プルバチャールニュータウン住宅区画の転売価格

Plot Size Price Range of the Plots Adjacent to Road Types (000BDT)

Regional Road (120’-300’)

Primary Road (100’)

Secondary Road (54’-75’)

Tertiary Road (30’-54’)

3 Katha Plots n/a n/a 11,000 to 13,000 9,000 to 12,000 5 Katha Plots 22,000 to 25,000 20,000 to 22,000 17,000 to 21,000

7.5 Katha Plots 60,000 to 75,000 40,000 to 50,000 35,000 to 40,000 10 Katha Plots 140,000 to 160,000 65,000 to 85,000 50,000 to 65,000

出典:不動産調査によるヒアリング

(g) 開発利益還元策

3.196 以上のような諸施策が実現すると開発利益の鉄道事業や TOD 地区の住環境改善へ

の還元が進む。例えば改訂された Detailed Area Plan に基づく地区全体あるいは今後の建替

えに伴う負担金を課すことも出来る。

3) TOD実現に向けた各機関の役割

3.197 TOD を実現するためには、関係機関の協働と調整が欠かせない。DTCA、DMTCL、RAJUK、ダッカ市役所、民間企業、コミュニティ等の役割分担が必要であり表 3.6.4 に示

すが、下記に述べられるものである。

(a) DTCA

(i) TOD 指針の策定:TOD を実施するにあたり、TOD 指針の策定が必要である。TODの意義を明確にしないまま TOD という言葉のみが先行し、適切な開発が進まないた

め早い段階での整備が必要である。TOD 指針は鉄道の交通結節点と結節点を含む

TOD 地区の都市開発の両面から策定される必要がある。交通面からは MRT だけで

はなく、他の交通システムとの連携も欠かすことが出来ないため、調整機関として

の役割を担う DTCA が実施する。一方、都市開発面からは RAJUK が主体となって

TOD 指針を策定する。

(ii) 交通システムの管理:ダッカ近郊では、バスの乗降が定められた場所以外で行われ

ており渋滞を引き起こしている。そのため、駅前広場の整備に合わせて、駅前広場

の決められた場所で乗降させるよう管理する必要がある。

(b) DMTCL

(i) 駅前広場の設計指針策定:駅前広場の設計において1日あたりの乗客数や各交通モ

ードの分担率が計算に必要となってくる。バングラデシュにおいて駅前広場の設計

指針が整備されていないことから、駅前広場の設計指針の策定が必要である。また、

実施設計、建設まで実施することが必要である。

(ii) 駅前広場の実施設計:駅前広場の設計指針に則り DMTCL が設計を実施する。

(iii) 駅前広場整備に関る担当者の能力強化:駅前広場整備のノウハウが不十分な状態で

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は、適切な駅前広場の運営は不可能である。設計指針や駅前広場の機能を理解した

担当者による業務実施が不可欠である。

(iv) 駅前広場の維持・管理:駅前広場の維持・管理は事例に応じて対応する必要がある。

基本的には DMTCL や Local Government が実施し、大規模開発と鉄道が密に関係す

る場合には開発事業者(RAJUK や民間企業)が維持・管理を実施する。

(c) RAJUK

3.198 TOD における RAJUK の役割と責任は大きい。望ましい TOD を実現するためには

単に計画面に止まらず、計画の規制・誘導、更には事業化に至る一貫したプロセスでの関

与が必要である。具体的には下記である。

(i) DAP の改訂:RAJUK は DAP2016-2035 において TOD の重要性を理解し、策定に取

り組んでいる。しかし、駅前広場の用地確保の手法や土地利用が不明確であり、今

後更なる改訂が望まれる。TOD 対象地区を DAP の中で明記し駅周辺の土地利用を

改訂し、駅周辺開発計画を策定する。

(ii) Mahanagar Building Construction Act の改訂:現在の大規模特別開発委員会には、

RAJUK や建築局、公共事業局等のメンバーが参加しているが交通分野からの参加が

皆無である。今後、MRT を始めとする交通分野が重要な要素を持つため TOD の専

門家を RAJUK に配置する。

(iii) 駅前広場用地確保のための建替え規制:DAP で駅前広場や駅周辺開発予定位置を明

記し、駅周辺の用地を適切に管理する為に、建て替え規制を行う。短期的に十分な

用地が確保できない場合でも長期的に用地確保に取り組む必要がある。バングラデ

シュの建築の大部分が RC ラーメン造のため、30 年から 40 年で一度建て替えのタイ

ミングが来ることが予想されるため、DAP の改訂と合わせて規制を実施する。

(iv) Private Residential Land Development Rules による民間企業の駅前広場整備負担:民

間企業が大規模開発を実施するにあたり、各用途の面積配分が決められている。駅

周辺には駅前広場の用地を確保することを義務付け、駅の立地により民間企業が大

きな利益を得ることが予想されるため、駅前広場の用地確保、建設、維持・管理を

民間負担とするよう義務付ける。

(d) 地方自治体(ダッカ北市役所、ダッカ南市役所、プルショバ)

(i) 駅前広場の維持・管理:地方自治体は、TOD による地価上昇から税収(holding tax)が増加することが予想される。そのため、駅前広場の維持・管理は、道路等と同様に地

方自治体が役割を担う。駅前広場内での小売店の営業等から得る収入からも利益を得

ることが可能である。

(e) 民間企業、地域社会

(i) 大規模開発に関わる駅前広場の用地確保、建設、維持・管理:民間企業による大規

模開発が行われる場合には、鉄道駅の立地が大きな裨益をもたらすことが予想され

る。そのため、Private Residential Land Development Rules で定められた位置に用地を

確保し、永続的に駅前広場の運営を行う必要がある。

(ii) コミュニティへの情報開示・意見聴取:TOD 地区の DAP の改訂にあたっては計画

から実施に至る全てのステップで適切な情報開示と意見聴取が行われ事業に反映さ

れる必要がある。

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表 3.6.4 TOD 関係機関の役割分担

各機関の役割 DTCA DMTCL RAJUK LG (DNCC, DSCC)

Other Stakeholders

方針・指針策定 A TOD 指針策定

A 駅前広場計画指

針策定

A DAP による 土地利用

B C

計画策定 B 各機関の調整

A 駅前広場

実施計画策定

A 駅周辺開発 計画策定

B C

制度 B B A 民間開発規制 B C

開発許可 B B A

駅周辺開発 許可

B B

土地収用 C A A B A 民間、住民

実施

開発・施工 C A A B B

維持・管理 C B

A (RAJUK による開

発時の負担は

RAJUK)

A B

(大規模開発の民

間負担)

モニタリング C A A

(開発状況に応じ

た DAP の更新) B C

A: 主な実施主体・責任者 B: 協力 C: 意見聴取・相談