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Agilent Technologies TRL* 校正を使用した インフィクスチャ・ マイクロストリップ・デバイス測定 プロダクト・ノート 8720-2

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Agilent TechnologiesTRL*校正を使用したインフィクスチャ・マイクロストリップ・デバイス測定

プロダクト・ノート8720-2

kani
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はじめに

Agilent Technologies 8720C、8719C、および8722Aマイクロ波ネットワーク・アナライザは、TRL*(TRL-スター)校正方法を使用して便利なマイクロストリップ・デバイスのインフィクスチャ測定を行います。TRL*は、マイクロストリップなどのフィクスチャ測定環境で使用される8720Cファミリのネットワーク・アナライザが採用する3サンプラ・レシーバ・アーキテクチャに適応するよう、TRL(8510Bネットワーク・アナライザで最初に導入)を改良した校正方法です。TRL*は、ファームウェア・バージョン2.0以上の8720Bおよび8719Aネットワーク・アナライザでも使用できます。これらのネットワーク・アナライザは86386A/Bアップグレード・キットによりファームウェア・アップグレード・パッケージが利用可能です。

本ノートの測定には、Inter-ContinentalMicrowave(ICM)シリーズTF-3000アジャスタブル・テスト・フィクスチャが使用されています。

マイクロストリップ・デバイス測定

チップ、MMIC、パッケージ・トランジスタや、ビーム・リード・ダイオードなどのマイクロストリップ・デバイスを、8720Cのようなネットワーク・アナライザの同軸ポートに直接接続することはできません。被測定デバイス(DUT)はトランジション・ネットワークやフィクスチャを使用して、物理的にネットワーク・アナライザに接続する必要があります。そのためマイクロストリップのフィクスチャ測定の校正は、さらに困難なものとなっています。

ネットワーク・アナライザの同軸ポートにおける校正によって、ネットワーク・アナライザおよびフィクスチャに

接続されたケーブルやアダプタなどの影響は除去できますが、フィクスチャ自体の影響を除去することはできません。そこでインフィクスチャ校正が望ましいのですが、デバイスの希望の測定プレーンにおいて、従来からのシステムのフル2ポート校正を可能にするような、高品質のShort-Open-Load-Thru(SOLT)基準を得るのは容易ではありません。マイクロストリップでは、ショート回路は誘電的で、オープン回路はエネルギーを放射し、高品質の純粋な抵抗負荷を広い周波数範囲で作ることは困難です。Thru-Ref lect -Line*(TRL*)2ポート校正は、従来のSOLTフル2ポート校正方法に代わる校正方法として、マイクロストリップ環境のデバイス測定においてより単純で使いやすい基準を使用しています。

2

目次 ページはじめに 2

マイクロストリップ・デバイス測定 2

フィクスチャされたデバイスの測定方法 3

8720C TRL*校正 6

TRL*校正手順 8

測定結果 11

付録A-TRL*の背景理論 12

図1 マイクロストリップ伝送ラインの構成

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フィクスチャされたデバイスの測定方法

マイクロストリップ環境でのデバイス測定からテスト・フィクスチャの影響を除去するには、いくつかの方法があります。目的とするアプリケーションにどの方法がもっとも適しているかは、希望の確度、校正基準、および測定に費やすことのできる時間数によって異なってきます。インフィクスチャ校正を除きここで説明する各方法を実行する場合、テスト・フィクスチャを接続するポイントのできるだけ近くで、まず同軸校正を行うことをお勧めします。同軸校正後も、フィクスチャの長さ、ロス、およびミスマッチの影響をDUTから取り除くことはできません。

リファレンスプレーン・ローテーション

フィクスチャにごく僅かなロスおよびミスマッチがある場合8720ファミリのネットワーク・アナライザには、測定データからフィクスチャの長さに起因する位相影響を除去するための2つの機能が備わっています。電気的遅延では、位相がリニアに変化するよう計算して基準信号経路に遅延を加え、フィクスチャの長さに起因する位相を打ち消すようにします。これに対しポート・エクステンションでは、各ポートで見られる遅延を減算していくため、各テストポートのリファレンスプレーンをフィクスチャを通してデバイスまで延長することができます。測定からフィクスチャの長さによる影響を除去するためには、なるべくポート・エクステンションを使用してください。電気的遅延は、その際デバイスの実際の遅延の測定に使用できます。

どちらの方法においても、リファレンスプレーンの設置には単純なインフィクスチャ校正基準のみが必要となります(反射測定に対しopen/short、伝送測定に対しthru)。目的とするパラメータの位相フォーマットを観察しながら、表示トレースがフラットになるまで電気的遅延またはポート・エクステンションを加えます。これにより、リファレンスプレーンがフィクスチャを通してデバイスまで延長されます。

図2 同軸校正とインフィクスチャ校正を比較したFET測定

図3 参照プレーンの設定

図4 ポート延長とインフィクスチャ校正を比較したFET測定

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ノーマライゼーション

フィクスチャにごく僅かなミスマッチがある場合高周波数では、通常フィクスチャには長さに加えて測定可能なロスがあります。したがってフィクスチャとデバイス間で、位相に加え振幅におけるシフトも生じます。そこで表示データからこれらの影響を除去するために、ノーマライゼーションという手順が使用できます。フィクスチャのロスおよび長さの測定には、単純なインフィクスチャ基準のみが必要となります(反射測定に対しopen/short、伝送測定に対しthru)。アナライザの内部メモリに目的とするパラメータのデータをストアして[DATA/MEM]を押し、測定からフィクスチャの影響を減算するとデバイスのロスおよび長さが表示されます。

タイムドメイン・ゲーティング

フィクスチャにごく僅かなロスがある場合タイムドメイン反射計測(TDR)により、テスト・フィクスチャの不連続性に起因する反射位置を正確に測定できます。TDRは、8720ファミリのネットワーク・アナライザ(オプション010装備)によって実行され、周波数ドメイン応答の逆高速フーリエ変換(FFT)を計算し、計算されたタイムドメイン応答を表示してフィクスチャに起因する個々の反射応答を観察します。その後タイムドメイン・ゲートを適用し、デバイス周辺にのみゲート・スタートおよびストップ・マーカを設定することにより、フィクスチャの不必要な応答を選択的に除去します。タイムドメイン・ゲートをアクティブにすると、ゲート外の応答が効果的に除去されます。またタイム・ドメイン・ゲートを適用したまま周波数ドメインに戻れば、フィクスチャ応答の影響なしで測定のデバイス・データを見ることができます。

ディ-エンベディング

フィクスチャの特性が既知の場合ディ-エンベディングは、フィクスチャを表す等価ネットワークを減算することで、データに埋め込まれたフィクスチャの影響を除去する計算プロセスです。フィクスチャを表すには、測定したSパラメータ・データを使用する方法とモデル化したデータを使用する方法の2つがあります。データを測定する場合、個々の周波数においてフィクスチャの各半分を直接測定する必要があります。フィクスチャの半分の等価集中要素コンポーネント・モデルは、リニア回路シミュレータを使用して各測定周波数ポイントにおけるフィクスチャの影響を計算して求めます。測定あるいはモデル化によってフィクスチャのSパラメータが既知となれば、それらは測定されたDUTの応答からディ-エンベッド(除去)できます。この方法により、インフィクスチャ校正を繰り返し行うことなく、インフィクスチャのリファレンスプレーンを得ることができます。

図5 ノーマライゼーションとインフィクスチャ校正を比較したFET測定

図6 タイムドメイン・ゲーティング(ゲート・オンおよびゲート・オフ)とインフィクスチャ校正を比較したFET測定

図7 ディ-エンベディングとインフィクスチャ校正を比較したFET測定

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インフィクスチャ校正

インフィクスチャ校正基準が利用できる場合測定からテスト・フィクスチャのイフェクトを完全に取り除くためには、インフィクスチャ校正基準が必要になります。従来のSOLT (Short-Open-Load-Thru)フル2ポート校正方法では、3つの既知インピーダンス基準が必要です。SOLT校正により理論的にはフィクスチャによるロス、長さおよびミスマッチの影響を除去することは可能ですが、マイクロ波周波数におけるマイクロストリップのための高品質基準の実現は一般的に不可能です。TRL*(Thru-Reflect-Line)は、マイクロ波周波数におけるマイクロストリップ測定に使用可能な2ポート校正方法です。TRL*校正プロセスは、離散的なインピーダンス基準の集合よりも、単純な伝送ラインの特性インピーダンスに依存します。TRL*はフィクスチャによるロスおよび長さの影響を除去しますが、フィクスチャのミスマッチに起因する影響を完全に除去することはできません。

図8 インフィクスチャTRL*校正を使用した FET測定(マッチ向上のため固定減衰器を使用)

方法 平易度 精度 マイクロ波周波数 影響パラメータ ファクスチャの

における適用性 想定

電気的遅延 A C 不可 単一 ロスおよび

ミスマッチなし

ポート A C 不可 ポート1:S11、 ロスおよび

エクステンション S21、S12、 ミスマッチなし

ポート2:S22、

S12、S21

ノーマライゼーション B B 不可 単一 ミスマッチなし

タイムドメイン B B 可能 S11またはS22 ロスなし、応答

ゲーティング の分離が良い

ディ-エンベディング C A 可能 全 モデル化または

測定したS-パラ

メータが利用可能

SOLT C B 不可 全 インフィクスチャ

基準が利用可能

TRL* B B 可能 全 ミスマッチなし、

簡単なインフィク

スチャ基準が

利用可能

A=より大 B=より小

表1 フィクスチャされたデバイス測定方法のまとめ

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8720C TRL*校正

TRL*(Thru-Reflect-Line)は2ポート校正で、従来のSOLT(Short-Open-Load-Thru)フル2ポート校正と同じ12項の誤り補正モデルが得られます。TRL*の主な長所は、伝送ラインを参照基準として使用する点にあります。なぜなら伝送ラインのインピーダンスは、マイクロストリップ・メディアにおいて理解するには最も単純な要素のひとつであるばかりでなく、物理的寸法や材料からも値を求めることができるからです。

TRL* 2ポート校正のプロセスには、基本的なステップが3つあります。このうち最初のステップは、フル2ポート校正の伝送ステップと同じです。THRUステップでは、テスト・ポートは直接互いに接続するか、短い伝送ラインで接続します。REFLECTステップでは、同一の1ポート高反射係数基準を各テスト・ポートに接続します。LINEステップでは、短い伝送ライン(THRUの場合とは異なる長さ)をポート1とポート2の間に挿入します。

8720Cネットワーク・アナライザは3サンプラ・レシーバ・アーキテクチャをとっているので、8510(4サンプラ・レシーバ・アーキテクチャ)で実行されるTRLアルゴリズムを適用することはできません。そのためTRL*の校正では、実効ソース・マッチおよびロード・マッチの影響が完全には誤り補正されません。TRL*校正後の残留マッチは、ネットワーク・アナライザの生(未補正)のテスト・ポートのミスマッチ特性より僅かに良い程度です。

高品質のインピーダンス基準(負荷)が簡単に利用できる同軸、導波管、オンウェーハやそのほかの測定環境では、マッチの項が完全に誤り補正されるため、依然SOLTが最も正確な校正方法といえます。しかし、SOLT基準が実用的でないマイクロストリップの測定環境では、TRL*校正の方が適しています。

未補正でのソース・マッチおよびロード・マッチの改善

未補正でのテスト・ポートのミスマッチの改善策として、測定プレーンのできるだけ近くに高品質の固定アッテネータ(8493Cや8490Dなど)を接続する方法があります。固定アッテネータのリターンロスは通常ネットワーク・アナライザのリターンロスよりも良いので、システムの実効マッチが改善されます。さらにアッテネータはある程度、反射信号のアイソレーションをもたらします。アッテネータはまたε11とε22のエラー項をより等しくするので、ソース・マッチとロード・マッチ間の差が最小になります(「付録A-TRL*に関する理論」を参照)。

アッテネータの設置によりシステムの実効ポート・マッチが改善されれば、校正後はフィクスチャ伝送のミスマッチ自体が測定エラーの中心となります。

図9 マイクロストリップ・フィクスチャに対するTRL*校正ステップ

LRM*(Line-Reflect-Match)

アプリケーションによっては、TRL*の実行に制限が設けられます。通常8:1の周波数帯域幅で使用されるTRL*のLINE基準は一つですが、広い周波数範囲をカバーするためには複数のLINE基準を使用する必要があります。さらに低周波数において、LINEの物理的長さが不便なほど長くなる場合があります。

LRM*(LRM-スター)校正はTRL*と関連しますが、第3の測定基準となる測定の特性インピーダンスが伝

送ラインでなくマッチしたZ0終端に基づく点で異なります。TRL* のTHRU基準と同様、LRM*のLINE基準はゼロ長またはノンゼロ長のいずれかです。TRL*で使用するのと同じTHRU基準およびREFLECT基準が、LRM*でも適用されます。

LRM*には周波数範囲の制限がないため、測定状況によってはより便利です。さらに、TRL*ではTHRU基準とLINE基準で異なる物理的長さを必要とするため、互いに固定された物理的距離のコンタクトを持つフィクスチャに使用するのは、実際的ではありません。

''Thru''

''Reflect''

''Line''

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デバイス測定がバイアスを要求する場合は、固定アッテネータとフィクスチャの間に外部バイアス・ティー(11612A/Bなど)を追加する必要があります。8720Cの内部バイアス・ティーは、外部固定アッテネータを介すると正しくバイアスを渡しません。測定から外部バイアス・ティーの影響を除去するために、バイアス・ティーを設置した後で必ず校正を行ってください(校正中にバイアスをかけないこと)。バイアス・ティーはアッテネータの後に置かなくてはならないため、実質的にはフィクスチャの一部となります。

したがって、測定に対するミスマッチの影響がアッテネータにより改善されることはありません。

固定アッテネータはネットワーク・アナライザ・システムの生のミスマッチを改善しますが、全体的に測定ダイナミック・レンジを劣化します。表3に、(いくつかのアッテネータペアを用い)代表的なマイクロストリップ・フィクスチャに20GHzでTRL*校正を実行した際の、測定システムの実効ソース・マッチと、対応するダイナミック・レンジの劣化を示します。

この校正後のシステムの実効ミスマッチは、高反射デバイスの反射測定での最大の影響をもたらします。同様に、良くマッチしたデバイスでは、ミスマッチの影響はほとんど無視できる程度です。このことは次の近似式で示すことができます。

反射量

不確実さ=ED+ERS11+ES(S11)2+ELS21S12

伝送量

不確実さ=EX+ETS21+ESS11S21+ELS22S21

ここで、ED=実効方向性ER=実効反射トラッキングES=実効ソース・マッチEL=実効ロード・マッチEX=実効クロストークER=実効伝送トラッキング

図10 測定セットアップの代表例

リターンロス(代表値)

2GHz 8GHz 13.5GHz 20GHz 40GHz

ネットワーク・アナライザ(未補正):

8719C

ソース 18dB 14dB 10dB - -

ロード 24dB 15dB 12dB - -

8720C

ソース 18dB 14dB 10dB 10dB -

ロード 24dB 15dB 12dB 12dB -

8722A

ソース 20dB 16dB 12dB 10dB 10dB

ロード 24dB 18dB 14dB 14dB 12dB

アッテネータ:

8493C 26dB 26dB 19dB 19dB -

8490D 23dB 23dB 23dB 23dB 19dB

バイアス・ティー:

11612A 20dB 20dB 18dB 14dB -

11612B 20dB 20dB 18dB 14dB 10dB

フィクスチャ

マイクロストリップ 24dB 24dB 24dB 20dB 18dB

表2 ミスマッチの影響の比較

アッテネータ使用時のTRL*校正

なし 3dB 6dB 10dB

実効ソース・マッチ

同軸ポート 10dB 11.5dB 14.5dB 17dB

インフィクスチャ 7.5dB 8.5dB 11dB 12.5dB

ダイナミック・レンジの劣化 0dB 6dB 12dB 20dB

表3 固定アッテネータペア設置時のソース・マッチの改善とダイナミック・レンジの劣化(フィクスチャのリターンロスは20dB、20GHzにおけるロスは無視できると仮定)

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TRL*校正手順

マイクロストリップ環境に対するTRL*基準を構築するとき、各基準タイプに対し次の必要条件が満足されなければなりません。

THRUゼロ長* ロスおよび特性インピーダンスなし(Z0)* S21=S12=1<0゜* S11=S22=0ノンゼロ長* THRUのZ0は、LINEに同じでなければなりません(同じでない場合、平均インピーダンスが使用されます)。* THRUの減衰量が既知である必要はありません。* 基準プレーンの設定にTHRUを使用する場合は、挿入位相または電気的長さが周知であり、指定されなければなりません。THRUノンゼロ長がゼロ遅延を持つと指定した場合、基準プレーンはTHRUの中央に設置されます。

REFLECT* 反射係数(Γ)量は1.0が最適ですが、既知である必要はありません。* Γ位相は既知の値で、±1/4波長または±90゜内に指定されなければなりません。誤りモデルの計算において、2次方程式の解のルート選択は反射データに基づき行われます。定義に誤りがあると、測定中の位相が180゜ずれて現れます。* Γは両ポートで同一でなければなりません。* 基準プレーンの設定にREFLECTを使用する場合は、位相応答が周知であり、指定されなければなりません。

LINE/MATCHLINE* LINEのZ0が測定の基準インピーダンスを構築します(S11=S22=0)。システム・インピーダンスはLINEのZ0と同じに定義されます。Z0が既知であるが希望の値でない(つまり50Ωでない)ときは、TRL*/LRM*オプション・メニューのSYSTEM Z0が使用されます。* LINEの挿入位相がTHRU(ゼロ長またはノンゼロ長)に同じであってはなりません。THRUとLINEの相違は(20゜および60゜)±n×180゜内である必要があります。挿入位相が0、または180゜の整数倍に近いとき、測定の不確実さが著しく増加します。* 最適なLINE長は、1/4波長か、あるいは希望する周波数スパンの中央においてTHRUに対する挿入位相が90゜となる長さです。2

* シングルTHRU/LINEペアに対する使用可能な帯域幅は、8:1(周波数スパン:スタート周波数)です。* 伝送ラインが利用できる程度まで帯域幅を拡張するために、複数のTHRU/LINEペア(Z0を同一と想定)を使用できます。3

* LINEの減衰量が既知である必要はありません。* 挿入位相は既知であり、±1/4波長または±90゜内で指定されなければなりません。MATCH* MATCHのZ0が測定の参照インピーダンスを構築します。* Γは両ポートで同一でなければなりません。

2 1/4波長LINEの挿入位相は、周波数により変化します。位相(度)=(360×周波数×電気的長さ)/cです。この式をアレンジして、中央周波数における1/4波長LINEの電気的長さを求めることができます。電気的長さ(cm)=15/[スタート周波数(GHz)+ストップ周波数(GHz)]です。超マイクロ波周波数(>20GHz)においては1/4波長LINEは非常に短く、構築が難しくなります。この問題の解決策として、1/4波長相違するTHRUとLINEを構築します。しかし、この際ノンゼロ長THRUを必要とします。

3 複数のLINEで周波数スパンをカバーするために、希望する周波数スパンを分割しなければならない場合、最適な区切り周波数は幾何学的平均周波数[√(スタート周波数×ストップ周波数)]となります。

表4 TRL*基準の必要条件

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TRL*オプション

TRL*/LRM*オプションのサブメニューには、キャリブレーションZ0(CALZ0)およびセット・リファレンス(SET REF)の2つの選択があります。

校正の間に使用する特性インピーダンス(CAL Z0)は、LINE基準(LINEZ0)、あるいはシステム(SYSTEM Z0)への参照が可能です。HP 8720Cは、LINE基準(LRM*ではMATCH基準)に等しい基準インピーダンスに初期設定されます。

LINE Z0を選択すると、LINE基準のインピーダンスはシステム・インピーダンスに正確に一致する(LINE基準は反射なし)と見なされます。校正後、すべての測定はLINE基準のインピーダンスを参照します。たとえばLINE基準が再測定されると、その応答はスミス・チャートの中央に現れます。LINE Z0を選択すると、SET SYSTEMZ0(CALメニュー内)およびOFFSETZ0(基準定義表内)に入力された値は無視されます。

SYSTEM Z0は、必要とする測定インピーダンスがLINE基準のインピーダンスと異なるときに選択します。このためには、LINEのZ0の値を正確に知っている必要があります。システムの基準インピーダンスは、CALメニュー内のSET SYSTEM Z0により設定します。LINEの実際のインピーダンスは、校正基準定義表にOFFSET Z0としてLINEインピーダンスの実数部を入力することにより設定します。たとえば、LINEが特性インピーダンス 51 Ωを持つ(OFFSET Z0=51Ω)ことがわかれば、これを50Ω測定(SET SYSTEM Z0=50Ω)に対する校正にも使用できます。校正後、すべての測定は51Ωではなく、50Ωへの参照となります。LINE基準を再測定すると、スミス・チャートの中央はSET SYSTEM Z0の現在の値(この場合50Ω)となります。LINE基準として選択できるOFFSET Z0の値は1つだけなので、Z0の値が意味を持つためには、目的とする周波数レンジ内の定数値でなければなりません。

TRL*測定に対する基準プレーンの位置(SET REF)は、THRUまたはREFLECT基準により設定できます。デフォルトの参照プレーン設定はTHRU基準を使用し、ここでは挿入位相または電気的長さが既知でなければなりません。ノンゼロ長THRUがゼロ遅延を持つと指定したときは、基準プレーンはTHRUの中央に設置されます。REFLECT基準の位相応答(オフセット値、リアクタンス値および基準タイプ)が既知であり校正キット定義において指定されるとき、THRUの代りにREFLECT基準が基準プレーンの設定に使用できます。

分散効果

分散は、伝送媒体が周波数の関数としての可変伝播や位相速度を見せるときに起こります。分散の結果は周波数に対する非線形位相偏移となり、これは一定でない群遅延をもたらします。ここでTRL*校正方法は、以下の条件のとき、校正プレーンに至るまでのテスト・フィクスチャの分散効果を計算に入れます。

1. THRU(ゼロまたはノンゼロ長)がゼロ電気長を持つと定義され、基準プレーンの設定に使用されている(SET REF:THRU)。

2. 校正基準として使用される伝送ラインが同一の分散特性(すなわち同一の高さ、幅および比誘電率)を持つ。

THRUが物理長を持つにもかかわらず、基準プレーンの設定にノンゼロ長THRUを使用したときは、TRL*基

準定義においてゼロ長を持つと定義されなければなりません。その後TRL*校正キット定義において各LINE基準の実際の電気長から、THRU基準の実際の電気長を減算する必要があります。それから、それぞれの長さがノンゼロ長THRU基準の長さの正確に2分の1になるようにして、デバイスを伝送ラインの2つのショート長間にマウントします。この構成において、デバイスのポイントに至るまで、測定は正しく校正されます。

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TRL*基準の定義

TRL*校正は、8720C TRL*校正キットの定義を変更することにより実行されます。ガイドラインとしてHP 8720CにTRL*テンプレートが提供されていますが、これはすべての測定状況をカバーするものではありません。

マイクロストリップ測定のための、8720Cの修正基準クラス割当て表および基準定義表を示します。本校正キットは、0.7GHzを超える範囲についてはTRL*を、0.7GHzを下回る範囲についてはLRM*を使用しています。

ゼロ長THRUは、フィクスチャの半分を直接互いに接続して作成します。

THRU基準(No.4)では、OFFSETDELAYを 0ps、周波数レンジを0~20GHz に設定しています。ゼロ長THRUは、伝送媒体がサポートできるどの周波数スパンでも使用できます。ゼロ長THRUの遅延は正確な値が得られるため、これが通常基準プレーンの設置に使用されます。

REFLECT基準(No.1)として、フラッシュショート回路が使用されています。その位相の公称仕様のみが要求され、OFFSET DELAYが0ps、周波数レンジが0~ 20GHzに設定されています。ショート回路が最大周波数において90゜以上基準プレーンからオフセットされているならば、その遅延の近似値を入力することができます。

TRL* LINE/MATCHクラスの割当てには、広い周波数範囲をカバーするために3つの基準を使用しています。既知の長さの2つのLINE基準(No.1と8)が、0.7~4.3GHzおよび4.3~20GHzの周波数範囲をカバーするために使用されています。0.05~0.7GHzの範囲のカバーには、不都合なほど長いLINE基準の使用を避けるため、MATCH基準(No.6)を使用しています。LINE/MATCH基準のOFFSET LOSSは、指定の必要はありません。オフセットZ0は、LINE/MATCHの既知インピーダンスとして、ここでは50Ωに設定されています。各LINE/MATCH基準の周波数リミットが、周波数分解能エラーを避けるために、境界周波数の0.7GHzおよび4.3GHzでオーバラップしていることに注意してください。

A B C D E F G 基準クラス・ラベル

TRL Thru 4 TRL THRU

TRL Reflect 1 TRL SHORT

RL Line/Match 6 7 8 TRL LINE/MATCH

基準C0 x C1 x C2 x C3 x

固定また 終端イン オフセット 周波数(GHz)同軸また 基準

NO. タイプ 10-15F 10-27F/Hz 10-36F/Hz2 10-45F/Hz3はスライ ピーダン 遅延 Z0 ロス 最小 最大

は導波管 ラベルディング スΩ ps Ω GΩ/s

1 SHORT 0 50 0 20 COAX SHORT

2

3

4 DELAY/ 0 50 0 20 COAX THRUTHRU

5

6 LOAD 0 50 .05 .71 COAX MATCH

7 DELAY/ 85.6 50 .69 4.31 COAX LINE1THRU

8 DELAY/ 17.3 50 4.29 20 COAX LINE2THRU

表5 TRL*基準クラス割当て表および基準定義表

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修正USER KITの保存

TRL*構成キットを修正後、必ずキットに適切なラベルを付け、[SAVEUWER KIT]を押してセーブしておきます。このUSER KITは、不揮発性メモリにセーブされます。以後の使用のために、外部ディスクドライブにより修正キットをディスクにセーブしておくのもよいでしょう。これには、[CAL][CAL KIT][USER KIT][SAVE][STORE TO DISK][STORE(title file)]を押します。USER KITは、保存時点でのアクティブ・キットである必要があります。

8720ファミリのネットワーク・アナライザにおける構成キットの定義方法についての詳細は、操作マニュアルおよびプログラミング・マニュアルを参照してください。

校正の手順

次に示す手順は、フィクスチャされたマイクロストリップ・デバイスの測定に対し、8720Cネットワーク・アナライザが行う代表的な校正手順です。

1. 8720Cを、2ポートSパラメータ測定用に構成します。10dB固定アッテネータを各ポートに接続し、次にアッテネータ間にフィクスチャを接続します。デバイスがバイアスを必要とするときは、外部バイアス・ティーをアッテネータとフィクスチャ間に接続します。

2. 測定に対する必要なスティミュラス条件(スタートおよびストップ周波数、ポイント数、パワー・レベル、IF帯域幅など)を設定します。

3. [CAL][CAL KIT][USER KIT][RETURN][CALIBRATE MENU][TRL*/LRM* 2-PORT]を押します。TRL*/LRM*校正サブメニューが表示されます。校正のTHRU、S11REFL、S22 REFL、ISOLATION、LINE/MATCHの各ステップが都合の良い順で実行できます。

4. THRUによりフィクスチャの半分を互いに接続し、[THRU THRU]を押します。4つのSパラメータすべてが測定され、これらの測定が完了するとTHRUにアンダラインが引かれます。

5. フィクスチャの半分を離し、それらの間に高REFLECT基準(ショート回路)を挿入します。[S11 REFLSHORT]を押すと反射係数が測定され、SHORTにアンダラインが引かれます。[S22 REFL SHORT]を押し、反射係数が測定され、SHORTにアンダラインが引かれます。

6. ネットワーク・アナライザのテスト・セットのシステマチック・クロストークを測定するには、各ポートを終端してアイソレーションを測定します(S21およびS12)。この例のように、システマチック・クロストークが測定しようとするレベルよりも十分に下回っているときは、特性付けの必要はありません。[ISOLATION][OMIT ISO-LATION]を押します。

7. ショート回路を取り外し、フィクスチャ・ハーフ間にLINE基準を挿入します。[LINE MATCH][DOBOTH FWD+REV][LINE]を押し、4つのSパラメータすべてを測定します。周波数スパンがシングル・ラインの範囲を超える場合は、ここで他のLINEまたはMATCH基準の測定を行います。

8. [DONE TRL*/LRM* CAL]を押します。[SAVE REG1]を押して校正をレジスタにセーブします。

9. デバイスをフィクスチャ・ハーフ間に接続します。[MEAS]を押して4つのSパラメータすべてを更新します。

測定結果

シンプルで利用しやすいインフィクスチャ校正基準を使用したTRL*は、多くのマイクロストリップ・デバイス測定に対し有効な校正方法です。しかしソースおよびロード・マッチの項が完全には補正されないので、フィクスチャ同軸ポートへ固定アッテネータペアを接続すれば測定が改善される可能性があります。図11に、フィクスチャのミスマッチ・エラー改善のために10dB固定アッテネータを接続した場合と、接続しない場合の測定結果を示します。インフィクスチャ測定に対し最高の確度が要求され、しかも校正基準が利用できて正確な値が知られている場合には、SOLT校正が最良の総合結果をうみ出します。

図11 10dB固定アッテネータを接続した場合と接続しない場合の、TRL*校正を使用したFET測定

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付録ATRL*の背景理論

測定エラー

測定システム(ネットワーク・アナライザ、テスト・セット、ケーブル、アダプタ、フィクスチャなど)の不完全性に起因するエラーは、ランダム、またはシステマチックなものに分けられます。システマチック・エラーは反復性のあるエラーで、ミスマッチ、方向性、トラッキング・エラーなどがあげられます。これらのエラーは測定して、8720ネットワーク・アナライザの内蔵エラー補正機能により計算的に測定から除去することができます。ノイズ、ドリフト、接続反復性のようなランダム・エラーはベクトル・エラー補正機能では改善できませんが、ネットワーク・アナライザに備わるその他のツール(アベレージング、IF帯域幅など)を使用することによって、最小限に抑えることができます。

測定校正の間、一連の既知デバイス(基準)が接続されます。システマチック・エラーは、基準の測定された応答と既知の応答間の差により決定されます。特性評価がなされると、これらのエラーは信号フロー・グラフを解くことにより、数学的に関連付けられます。図12で示す12項のエラー・モデルには、2ポート・デバイス測定における重要でシステマチックな影響のすべてが含まれています。

従来のSOLTフル2ポート校正では3つの既知のインピーダンス基準と1つの伝送基準が必要となります。これらの基準の既知確度が、システマチック・エラーがどこまで良く特性付けられるかを決定します。校正されたシステムの有効性を表す広く確立された数値は、残留するシステマチックな影響(実効方向性、実効ソース・マッチなど)の大きさです。これらの残留影響は、校正基準の不完全性のために校正されずに残ったシステマチック・エラーの一部です。

TRL*エラー・モデル

8720CのTRL* 2ポート校正では計10回の測定を行い、8つの未知項(2つのアイソレーション・エラー項を除く)の定量化を行います。EXFとEXRの2つの伝送リーケージ項は、従来の方法を用いて測定するものとします。8つのTRL*のエラー項は、図14に示すエラー・アダプタによって表されます。このエラー・モデルは従来のフル2ポート12項のモデルと多少異なりますが、従来からのエラー項はそこから得られる可能性があります。たとえば、フォワードの反射トラッキング(ERF)は、ε10とε01の積により表されます。また、フォワード・ソース・マッチ(ESF)とリバース・ロード・マッチ(ELR)がともにε11で表され、リバース・ソース・マッチ(ESR)とフォワード・ロード・マッチ(ELF)がともにε22で表されることに注意してください。これらの8つの未知のTRL*エラー項を求めるには、8つの一次独立式が必要となります。

図12 2ポート12項エラー・モデル

図13 2ポート・エラー補正測定システムのHP 8720C機能ブロック図

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TRL* 2ポート校正プロセスの最初のステップは、フル2ポート校正の伝送ステップと同じです。THRUステップでは、テスト・ポートを互いに直接に(ゼロ長THRU)、あるいは長さの短い伝送ラインで(ノンゼロ長THRU)接続し、また4つのSパラメータすべてを測定することにより、伝送周波数応答とポート・マッチを双方向で測定します。

REFLECTステップでは、同一の高反射係数基準(一般にオープンまたはショート回路)を各テスト・ポートに接続し、測定を行います(S11およびS22)。

LINEステップでは、長さの短い伝送ライン(長さはTHRUの場合と異なる)をポート1とポート2の間に挿入し、ここでも4つのSパラメータすべてを測定することにより、周波数応答とポート・マッチを双方向で測定します。

合計10回の測定で、10個の独立式が得られます。しかしTRL*エラー・モデルで求めなければならないエラー項は8つだけです。未知の項の数より測定回数が多いので、校正デバイスを定義する2つの定数も決定することができます。TRL*解ではREFLECT基準の複素反射係数と、LINE基準の伝播定数が得られます。これらの項は解により得られるので、はじめに指定する必要はありません。LINE基準の特性インピーダンスが測定基準となるため、典型(または正確に知られ定義されている)とみなされなければなりません。

ここで、フォワードおよびリバース方向性(EDFおよびEDR)、伝送トラッキング(ETFおよびETR)、反射トラッキング(ERFおよびERR)の各項がTRL*エラー項から得られる可能性があります。これにより、残るのはアイソレーション(EXFおよびEXR)、ソース・マッチ(ESFおよびESR)、ロード・マッチ(ELFおよびELR)の各項となります。

アイソレーション

アイソレーション項(EXFおよびEXR)を求めるには、さらに2つの測定が必要になります。アイソレーションの特性付けは、フル2ポート校正と同様に行います。フォワードおよびリバース・アイソレーションは、終端されたポート1から終端されたポート2へのリーケージ(またはクロストーク)として測定されます。校正のアイソレーション部分は、一般にロスの高いデバイス(70dB以上)の測定時にのみ必要となります。アイソレーション校正を行う場合、フィクスチャのリーケージはアイソレーション校正と測定において同一でなければなりません。

ソース・マッチとロード・マッチ

ε11項がフォワード・ソース・マッチ(ESF)とリバース・ロード・マッチ(ELR)の両方を表し、ε22項がリバース・ソース・マッチ(ESR)とフォワード・ロード・マッチ(ELF)の両方を表すことからわかるように、TRL*校正は、完全につり合いのとれたテス

ト・セット・アーキテクチャを想定しています。しかしスイッチング・テスト・セットでは、切換えスイッチが異なる終端インピーダンス(ポート1とポート2間で変化するため)をもたらすために、ソースおよびロード・マッチ項は等しくなりません。

8720ファミリのネットワーク・アナライザは3サンプラ・レシーバ・アーキテクチャに基づいているため、ソース・マッチ項とロード・マッチ項を区別することはできません。スイッチの終端インピーダンスは、双方向で同一と見なされます。したがって、テスト・ポート・ミスマッチは完全には補正されません。次のような想定がなされます。

forward source match (ESF) =reverse load match (ELR) = ε11

reverse source match (ESR) =forward load match (ELF) = ε22

TRL*校正の後、残留ソース・マッチおよびロード・マッチは、ネットワーク・アナライザの生の(未補正の)テスト・ポート・ミスマッチ特性よりも多少改善されます。以上が、8720Cネットワーク・アナライザのTRL*校正が、8510ネットワーク・アナライザのTRL校正と異なる点です。

図14 8項TRL*エラー・モデルと、一般係数

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8510との比較

8510のTRL校正では、10の未知項(2つのアイソレーション・エラー項を除く)を定量化するために全部で14の測定を必要とします。8510が 4サンプラ・レシーバ・アーキテクチャであるため、THRUとLINEステップで入射信号(a1およびa2)の比を測定することにより、ソース・マッチとロード・マッチ項がさらに補正されます。スイッチのインピーダンスが測定されれば、それがε11とε22エラー項の修正に使用されます。ε11タームは修正されて、フォワード・ソース・マッチ(ESF)とリバース・ロード・マッチ(ELR)を生成します。同様にε22は修正されて、リバース・ソース・マッチ(ESR)とフォワード・ロード・マッチ(ELF)を生成します。8510ネットワーク・アナライザの場合、2ポート・エラー・モデルの12項すべてを決定することができます。

8510ネットワーク・アナライザのTRLは、インフィクスチャ測定用の便利な校正方法としてだけでなく高確度を得ることのできる理想的な校正方法として確立されています。8510の4サンプラTRLを使用したデバイス測定を、8720Cの3サンプラTRL*の場合と比較すれば、8720CによるTRL*が適切となる状況を実際に示すことができます。図16では、外部減衰器を接続しない場合の8510測定と、外部10dB固定アッテネータとバイアス・ティーのペアをフクスチャの前で使用した場合の8720C測定を比較します。

図15 2 ポート・エラー補正測定システムのための、8720(a)および8510(b)機能ブロック図の比較

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図16 8510と8720により行ったFET測定

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