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平成 28 年度観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等 支援事業(魅力あるスタジアム・アリーナを核としたまちづくりに 関する計画策定等事業)(1) 報告書 アビームコンサルティング株式会社

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平成 28 年度観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等

支援事業(魅力あるスタジアム・アリーナを核としたまちづくりに

関する計画策定等事業)(1)

報告書

アビームコンサルティング株式会社

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目次

はじめに ....................................................................... 1

(1) 本事業について ............................................................. 1

山形の地域づくりの方向とスタジアム ............................................. 2

(1) 県における地域づくりの方向 ................................................. 2

山形県総合発展計画(長期構想) ............................................. 2

山形県総合発展計画(短期アクションプラン) ................................. 2

やまがた創生総合戦略 ....................................................... 2

(2) スタジアムの持つ可能性 ..................................................... 4

政府の方針:日本再興戦略 2016 ............................................... 4

スポーツ未来開拓会議 ....................................................... 5

(3) 山形の地域活性化・地域創生に向けたスタジアムの有効性 ....................... 7

スタジアムのモデルスタディ ..................................................... 8

(1) モデルスタディの前提条件 ................................................... 8

JリーグホームスタジアムとしてのNDソフトスタジアムの課題 ................. 8

街なかと郊外におけるスタジアム整備のモデルスタディを検討 ................... 9

モデルスタディにおける収容人数の設定 ...................................... 10

(2) 街なか型スタジアムのモデルスタディ ........................................ 11

街なか型でのスタジアムの役割とまちづくりの方向 ............................ 11

街なか型での地域づくりの戦略 .............................................. 11

街なか型での導入機能 ...................................................... 13

(3) 郊外型スタジアムのモデルスタディ .......................................... 22

郊外型でのスタジアムの役割とまちづくりの方向 .............................. 22

郊外型での地域づくりの戦略 ................................................ 22

郊外型での導入機能 ........................................................ 24

(4) スタジアムの立地場所の要件 ................................................ 32

Jリーグの試合開催に必要とされるスタジアムの基準 .......................... 32

スタジアム経営や地域活性化からの視点 ...................................... 32

街なか・郊外でのスタジアム立地場所の要件 .................................. 33

事業計画 ...................................................................... 35

(1) スタジアムの空間イメージとビジネスモデルの組み合わせ ...................... 35

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実現に向けたイメージ ...................................................... 35

(2) 事業スキーム .............................................................. 36

事業スキームの検討 ........................................................ 36

(3) 建設コスト ................................................................ 37

建設コストの考え方 ........................................................ 37

建設コストの試算 .......................................................... 38

建設コストの縮減にむけた方向性 ............................................ 38

ランニングコストの縮減に向けた方向性 ...................................... 39

環境への配慮 .............................................................. 39

(4) 収益モデル ................................................................ 41

収益モデルの検討 .......................................................... 41

収益向上に向けた取組み .................................................... 41

(5) 事業計画 .................................................................. 48

街なか型と郊外型の収益構造の違い .......................................... 48

損益計画 .................................................................. 49

(6) 経済効果の推計 ............................................................ 50

経済効果推計の考え方 ...................................................... 50

経済効果推計(スタジアム建設・施設運営維持) .............................. 51

経済効果推計(スタジアムのサービス提供等による需要) ...................... 51

新スタジアム建設・運営による総需要 ........................................ 51

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1

はじめに

(1) 本事業について

山形県内では、2016 年 11 月に地域経済を担う民間企業やスポーツ団体からなる委員により

新スタジアム推進事業体設立検討委員会が設立された。同検討委員会では、新スタジアムの計

画策定、事業化支援、設計・建設及び運営の事業を行う新会社の設立を決定しており、2017 年

9月に新スタジアム事業推進を目的とする民間 100%出資の株式会社[新スタジアム推進事業

株式会社]が設立された。これは我が国で初の試みである。

本報告書では、これらの経緯を踏まえ、新たなスタジアムが「まち」を活性化させ、活力あ

るまちがスタジアムの円滑な経営を支えるという好循環の構築に向けた各種検討を計画とし

て取りまとめる。

図 1 新スタジアム検討の経緯

モンテディオ山形サポーターミーティング等にて新スタジアム等の議論が活発化する

山形市長が山形市内にモンテディオ山形のスタジアムを建設したいとの考えを表明したところ、天童市議会は本拠地の存続などを

求める要望書を山形県知事に提出する旨の議案を全会一致で可決

県サッカー協会や地域経済を担う民間企業、有識者及び一般の方により新スタジアム構想検討委員会を組織し議論を重ね、”

新スタジアム整備検討に基づく構想書~スタジアム整備検討の基本的骨格について「スタジアムは地域活性化の新たな起爆剤」

~”を公表

モンテディオ山形に「新スタジアム推進室」、取締役会に「新スタジアム推進に係る作業部会」を設置し、以下の方針を決定

1. 構想実現には、スタジアム建設・運営を目的とした推進事業体が必要であること

2. 推進事業体は、オール山形で推進できる組織を目指すこと

3. 推進事業体設立に向け、設立委員会の立ち上げ準備を進めること

地域経済を担う民間企業やスポーツ団体からなる「新スタジアム推進事業体設立検討委員会」を設立

新スタジアムの計画策定、事業化支援、設計・建設及び運営を事業とする新会社の設立が決定

2013

~15年

2012年

2016年

2017年

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山形の地域づくりの方向とスタジアム

(1) 県における地域づくりの方向

山形県総合発展計画(長期構想)

山形県では、平成 22 年3月に中長期的な県づくりの指針として「第3次山形県総合発展

計画(長期構想)」策定した(計画期間:平成 22 年度から概ね 10 年)。

「少子高齢化を伴う人口減少」「ICT の進歩と社会経済のグローバル化の拡大」「環境へ

資源面での制約の高まり」「暮らしの様々な不安の顕在化」といった山形県を取り巻く環境

の変化に対応すべく、人材を始めとした「未来に向けた発展の源泉」を「生み・育て・活か

す」ことを基本的な考え方に据えた計画となっている。

山形県総合発展計画(短期アクションプラン)

「第3次山形県総合発展計画(長期構想)」では、短期アクションプランを 3 年ごとに策

定し、長期構想の実現へとつなげている。

平成 29 年3月にとりまとめられた総合発展計画の実施計画「短期アクションプラン(平

成 29 年度~32 年度)」では、7つのテーマについて取り組むことしており、このうちスポ

ーツについては、人づくり(テーマ1)や観光立県(テーマ5)を支える役割として位置づ

けられており、地域活性化や交流人口の拡大に資する取組みとされている。

図 2 山形県総合発展計画における“スポーツ”の位置づけ

(出典:第3次山形県総合発展計画短期アクションプラン(平成 29 年度~32 年度))

やまがた創生総合戦略

県内人口は、自然減少と社会減少の双方が加速しており厳しさを増している。このため

山形県では、人口の減少を県政の最重要課題として捉え、積極的に対策に取組んでいる。

平成 27 年 10 月には「やまがた創生総合戦略」を県が策定し、「人口減少問題の克服」と

テーマ1 郷土愛を育み未来を築く子育て支援・多彩に

活躍する人づくり

<施策5 文化・芸術、スポーツの振興>

(3)文化・芸術、スポーツを活用した地域活性化

• 県内のプロスポーツ等を活用した地域主体の賑わいづくりへの支援の推進

• 合宿やイベントの誘致拡大など、スポーツコミッションによる取組みの推進 など

テーマ5世界に誇る山形の魅力を発信し国内外の旺盛な活力を

引き込む「観光立県山形」の確立

<施策4 インバウンド推進による交流人口の拡大>

(3)観光誘客やビジネス機会を創出する国際交流の拡大

• 文化や教育、スポーツなど、多様な分野における交流への支援の展開 など

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「成長力の確保」に向け、4本の基本目標と 15 の主要プロジェクトを掲げている。

この「やまがた創生総合戦略」においても、スポーツに係る施策が数多く盛り込まれてい

る。具体的には、観光を通じての雇用の創出や、地域への愛着・誇りの醸成などの役割が期

待されている。

表 1 「やまがた創生総合戦略」における、スポーツが関連する施策(抜粋)

(出典:やまがた創生総合戦略を参考にアビームコンサルティング作成)

大項目 項目 施策名

《基本目標1》

豊かな山形の資源を

活かして雇用を創出

(2)観光立県山形で「しごと」

を創出

情報発信の強化や近隣県との連携などにより海外等からの観

光誘客を促進

→スポーツ大会や事前合宿等の誘致を促進

山形の魅力を活かした先導的ツアーを推進

→スポーツツーリズム(マラソン、W杯ジャンプ、プロスポーツな

ど)

《基本目標4》

安心と活力ある地域

を創出

(1)文化等を通して地域への

愛着・誇りを醸成

芸術文化団体等による子どもの頃から伝統・文化・スポーツに

触れる機会を拡大

→夢や希望、郷土への自信や誇りを抱かせる競技スポーツを

推進、地域のスポーツニーズに応える総合型地域スポーツクラ

ブの活動支援

主要プロジェクト

主要プロジェクト2

観光立県山形で「しごと」を創出

山形の魅力を活かした先導的ツアーを推進

→山形ならではのスポーツ観戦と周遊観光を組合せた新たな

ツアー

主要プロジェクト 12

文化等を通して地域への愛着・

誇りを醸成

芸術文化団体等による子どもの頃から伝統・文化・スポーツに

触れる機会を拡大

→スポーツに親しむ気運の醸成、スポーツ環境の整備促進な

ど、総合型地域スポーツクラブ活動への支援

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(2) スタジアムの持つ可能性

政府の方針:日本再興戦略 2016

政府ではスポーツをこれからのわが国の成長戦略の一端を担うものと捉えており、スポ

ーツ庁の設置に代表されるように、積極的な施策展開を行っている。

例えば、日本経済再生本部(本部長:安倍総理)の「日本再興戦略 2016」では、新たに

創出すべき有望成長市場の 1 つとして、「スポーツ」を掲げ、2020 年東京オリンピック・

パラリンピック競技大会の開催を契機としつつ、それ以降も展望したスポーツ産業の活性

化を図り、スポーツ産業を我が国基幹産業へ成長させるとしている。

そのための具体的な施策として、「スタジアム・アリーナ改革(コストセンターからプロ

フィットセンターへ)」の実施を掲げ、「スタジアム・アリーナに関するガイドラインの策

定」や「「スマート・ベニュー」の考え方を取り入れた多機能型施設の先進事例の形成支援

に取り組むこととしている。

同戦略では、これらの取組みを通じて、2016年度に 5.5 兆円だったスポーツ市場規模を、

2020 年までに 10 兆円、2025 年までに 15 兆円に拡大することを目指すとしている。

図 3 日本再興戦略 2016 におけるスポーツ産業

(出典:スタジアム・アリーナ推進官民連携協議会(第 1 回)資料より)

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スポーツ未来開拓会議

現在、スポーツ庁と経済産業省とが設置した「スポーツ未来開拓会議」(スポーツビジネ

スの戦略方針の策定を目的とした有識者会議)や「スタジアム・アリーナ推進官民連携協議

会」(スタジアム・アリーナの新たなビジネスモデルを開発とその公共的な価値の最大化を

推進する官民連携型協議会)においても、「日本再興戦略 2016」と軌を一とした議論がな

されている。

例えば、「スポーツ未来開拓会議」の中間報告(スポーツ庁/経産省 H28 年 6 月)では、

今後のスタジアムのあり方として、①収益モデルの確立(コストセンターからプロフィッ

トセンターへ)、②スタジアム・アリーナを核とした街づくり(スマート・ベニュー構想)

の実現、③民間資金の活用・公民連携の促進(PPP/PFI の活用等)を挙げ、今後これらの

確立に向けた具体的な取組みの推進・支援を実施すべきとしている。

このうちスマート・ベニューとは、スタジアム・アリーナを公共施設や商業施設などと複

合化することに加え、周辺のエリアマネジメントを含めた、サステナブルな交流施設とす

ることで、地域活性化・街づくりの起爆剤とする取組みを呼ぶ。

これにより、投資回収のための源泉を多様化するとともに、地域のサービス業活性化に

も繋がるなどの効果が期待されるとしている。

図 4 スマート・ベニューの考え方

(出典:スポーツ未来開拓会議中間報告(スポーツ庁/経産省 H28 年 6 月))

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[ スマート・ベニュー® ]

(株)日本政策投資銀行では、日本国内において、従来の体育施設の枠を超えた、街づく

りの中核となる新たなスタジアム・アリーナ等のあり方を検討し、地域活性化を促す提案

を行うため、「スマート・ベニュー研究会」(委員長:早稲田大学間野義之教授)を設立し、

2013 年 8 月には報告書「スポーツを核とした街づくりを担う『スマート・ベニュー®』」

を発行した。

「ベニュー」とは、「開催地」などを意味する英語である。日本政策投資銀行は新たな用

語として「スマート・ベニュー®」を採用し、「周辺のエリアマネジメントを含む、複合的

な機能を組み合わせたサステナブルな交流施設」と定義し、その代表的な例としてスタジ

アム・アリーナについて、施設のあり方や地域活性化への寄与、ファイナンスのあり方等に

ついて検討している 。同行の報告書では、スタジアム・アリーナの整備は、ビジターの増

加による地域経済への波及や、コミュニティ・交流空間の形成、都市機能の補完(スポーツ、

防災等)による地域住民・地域企業の利便性の向上等につながり、都市機能面、経済面での

価値を創出することが期待されている。また街の活性化やコンパクトシティの推進につな

がる取組みとしている。

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(3) 山形の地域活性化・地域創生に向けたスタジアムの有効性

山形県では、これまでも少子高齢化社会の到来などを踏まえつつ、地域活性化や交流人口の

拡大、地域への愛着・誇りの醸成といった視点からスポーツの振興を行っている。

一方、国の「スタジアム・アリーナ改革」や日本政策投資銀行の調査が示すように、スタジ

アムには、交流人口を生み出すとともに、周辺地域への経済効果、地域住民・地域企業に対す

る利便性の向上などをもたらす力が期待される。

本業務では、これらを踏まえ、「スタジアムは地域活性化や地方創生の有効な手立てのひと

つ」であると考え、本県において新しいスタジアムを建設する際の、スタジアム経営のあり方

やまちづくりの方向について検討を進めることとした。

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スタジアムのモデルスタディ

(1) モデルスタディの前提条件

JリーグホームスタジアムとしてのNDソフトスタジアムの課題

NDソフトスタジアム山形は、山形県におけるスポーツ振興の中心的な施設として、こ

れまでも県民に親しまれるとともに、Jリーグクラブモンテディオ山形のホームスタジア

ムとして活用されている。

一方、同スタジアムは、国体標準で整備されており、Jリーグクラブライセンス基準に適

合していない項目も見られる。

図 5 NDソフトスタジアム

(出典:株式会社モンテディオ山形ウェブサイト)

表 2 2015 年度のJリーグクラブライセンス検査結果(抜粋)

必要とされる設備 内容 施設整備状況 1.入場可能者数 J1 では 15,000 人以上、J2 は 10,000 人以上

(芝生席はカウントしない) 満たしている (20,772 人入場可能)

2. 座席 椅子席で 10,000 席以上の座席があること (ベンチシートは 1席あたりの幅を 45cm以上とする) どの席からも、ピッチ全体が見渡せること

満たしている (観客席:20,664 席)

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必要とされる設備 内容 施設整備状況 3. 屋根 新設及び大規模改修を行うスタジアムについては、原

則として屋根はすべての観客席を覆うこと 屋根は一部のみ設置されており、雨

(雪)を防ぐことができない。(3 分

の 1 以下であり制裁措置対象) 4. 照明 ピッチ内のいずれの個所において照度 1,500 ルクス以

上の明るさを保持し、均一であること 満たしている

5. トイレ 1,000 人の観客に対し、少なくとも洋式トイレ 5 台、

男性の観客 1,000 人に対し、男性用小便器 8 台を

備えること

満たしている(ただし 60%入場ルー

ル適用による)

街なかと郊外におけるスタジアム整備のモデルスタディを検討

Jリーグクラブライセンス基準を満たす新サッカースタジアムの整備にあたっては、ス

タジアムの持つ「交流人口を拡大させる力」と既存の地域資源とを連携し、相乗効果を発揮

させる視点が重要となる。

国等が推進する「スマート・ベニュー構想」においても、スタジアムやアリーナが、コン

パクトシティ化や街なか活性化を先導することが強調されている。山形県においてもスタ

ジアムの整備が、これらの政策・施策を実現するための、強力な手立てのひとつとなると考

えられることから、街なかにおけるスタジアム整備についてモデルスタディを実施する。

一方、地方都市のライフスタイルを考慮すると、自動車での来場が相当の割合を占める

ことが想定され、その円滑な誘導は必須の課題となる。また街なかにおいては、スタジアム

建設に必要な一団の用地の取得が、円滑に進まないことも想定される。このため、本事業で

は、郊外におけるスタジアム整備のイメージについても検討し、スポーツ、防災といった都

市機能の充実による地域活性化の方向についてモデルスタディを実施する。

図 6 スタジアム整備からみた街なかと郊外の比較

公共交通の利便性が相対的に低い

暮らしやすさの維持・創造、魅力づくりが課題

総じて、幹線道路、高速等のアクセスに優れる

住宅、商業に加え、エリアによってはスポーツ、医療、学校等が立地

郊外

用地が取得しやすく、取得費が低い

駐車場を確保しやすい

鉄道やバスなど公共交通の利便性が高い

市街地の活性化が課題

総じて、幹線道路、高速等のアクセスに優れる

観光資源や飲食・サービス機能が立地

行政機能や業務機能等が立地

公共交通

アクセス

主たる地域課題

周辺施設

土地の確保が容易ではなく、取得費が高い用地

自動車交通については渋滞や駐車場の確保等が課題となるケースがある

街なか

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モデルスタディにおける収容人数の設定

Jリーグは、収容人数 15,000 人以上のスタジアムの確保をJ1 クラブライセンス交付の

条件としている。また、日本サッカー協会は、スタジアム標準(ガイドライン)にて、J1

の公式試合及び AFC チャンピオンズリーグの公式試合においては収容人数 20,000 人~

40,000 人のスタジアムを推奨している。

モンテディオ山形の公式試合において、観客動員数 15,000 人を超えた実績は過去 13 試

合あり、新スタジアム建設によって観客数の大幅増も期待できる。さらに、サッカー五輪代

表戦やコンサート等のイベントの開催まで視野に入れた場合、収容人数 20,000 人規模のス

タジアムが望ましいと考える。

一方、街なかにおいては、広大な用地取得が困難であることが予想されるため、J1 ライ

センス最低基準の収容人数 15,000 人規模のスタジアムを仮説として検証する。

図 7 本計画で想定するスタジアムのキャパシティ

Jリーグクラブライセンス交付規則• J1クラブ主管公式試合:15,000人以上• J2クラブ主管公式試合:10,000人以上

財団法人 日本サッカー協会 スタジアム標準• クラス1:20,000~40,000人

AFCチャンピオンズリーグ J1 五輪代表公式試合、親善試合 等

• クラス2:15,000~20,000人 J2 等

レギュレーション- 収容人数について抜粋

モンテディオ山形 実績- 観客動員数 15,000人以上の試合

新スタジアムにおけるスポーツ以外の新たな利用可能性

• コンサート• 大規模コンベンション 等

収容人数 20,000人規模のスタジアム(街なか型は用地取得を考慮し、15,000人規模にて検証)

直近のサッカー五輪代表戦・なでしこジャパン戦開催スタジアム

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(2) 街なか型スタジアムのモデルスタディ

街なか型でのスタジアムの役割とまちづくりの方向

山形県内においても、街なかでは、人通りや賑わい、居住人口の回復などといった再活性

が大きな課題となっている。一方で、鉄道を始めとした公共交通の利便性や、商業業務機能

や観光資源など既存の地域資源がコンパクトなエリアに集中して立地しているという特徴

がある。

このため、街なかでスタジアムを中心としたまちづくりを進める際には、スタジアムの持

つ広域的な“集客力”を活かし、人を集めるための起爆剤としてスタジアムを位置づけ、県

内外からの交流人口を生み出していく。

具体的には、既存の街なかや周辺施設、公共交通拠点、既存の駐車場などと連携・連動し

たまちのトータルプロデュースを進めることで、歩行者を始めとした来街者の賑わいを再

生し、スタジアム整備の効果をまち全体に波及させていくことが重要となる。

図 8 街なか型におけるスタジアムコンセプト

街なか型での地域づくりの戦略

スタジアムが人を集めるための起爆剤としての役割を担う、街なか型のスタジアム整備

では、スタジアムに集まった来訪者がまちへと回遊し地域全体にスタジアムの整備効果が

波及させることが重要となる。

歩行者の増加に向け、目的の施設に自動車等で直行するのではなく、鉄道駅やバスターミ

ナル、街なかに散在する駐車場などから、歩いてスタジアムにアクセスする環境を整備す

る。また、継続的な来訪者の増加に向け、街路や路面店等歩行空間の充実を図り、魅力ある

まちを演出することが必要である。

これらの取組みを進めるためには、まちとスタジアムとを一体的に運営する視点が重要

となり、国などが推進しスマート・ベニュー構想にも取り入れられているエリアマネジメン

トを導入することを検討する。

スタジアムを核としたまちづくりの方向

既存の市街地や周辺施設、公共交通

拠点、既存の駐車場などと連携・連動し

たまちのトータルプロデュースを進め、歩

行者の賑わいを生み出す

県内外からの充実したアクセス性を活か

し、スタジアム核とした広域的な交流人

口を生み出す街に人を集める

起爆剤となる

スタジアム

鉄道やバスなど公共交通の利便性が高い

市街地の活性化が課題

総じて、幹線道路、高速等のアクセスに優れる

観光資源や飲食・サービス機能が立地

行政機能や業務機能等が立地

公共交通

アクセス

主たる地域課題

周辺施設

土地の確保が容易ではなく、取得費が高い用地

自動車交通については渋滞や駐車場の確保等が課題となるケースがある

中心市街地の特徴

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図 9 街なか型における地域づくり戦略

参考 エリアマネジメントとは

スタジアムと通りに面した商店や飲食店などが連携し、まちの魅力をトータルプロデュ

ースするためには、商店街や観光関係者、交通事業者等とスタジアム関係者との連携体制

を構築する「エリアマネジメント」の視点が有効である。

「エリアマネジメント」とは、優れた環境やまちの価値を維持・向上させるため、地域の

住民や民間企業、地権者などが連携し、活動を行うもので、近年、全国の都心地区などで急

速に広がりつつある。ある一定の区域を区切りながら、まちのマネジメントを行う組織(エ

リアマネジメント組織)を立ち上げ、地域が一体となって、地域ブランドの向上や地域課題

の解決、イベントの開催などを行う取組みである。

国家戦略特区制度を活用した道路法の特例により、エリアマネジメント組織が、公道に

おいてカフェ等の設置・運営や、イベント開催等を行う例も見られている。本県の街なかに

おいても、スタジアムと周辺の街路とを連携させ、まち全体で来訪者をおもてなしする視

点が重要となる。

図 10 大手町・丸の内・有楽町地区でのエリアマネジメント例

地域づくりの戦略

街に人を集める起爆剤となるスタジアム

地域貢献の考え方

地域整備の方法

地域経営

アクセス

都市施設

整備手順

スタジアムの位置付け

用途

設置機能

目的

スマートスタジアム化の方針

街なかの交流人口増加と回遊性の復活

エリアマネジメント

公共交通・歩行者を重視

歩行空間の充実

スタジアムとアクセス歩行空間の先行的整備

多目的施設

商業、業務、観光サービス関連施設

恒常的に人を呼び込む

ICTを活用したまちと繋がる仕掛け

中心市街地の再活性化をスタジアムの集客を生かして解決する。

商店街等、スタジアム以外の地域団体と連携して魅力をトータルプロデュースするため、エリアマネジメントの概念を導入する。

賑わいを創出するため、歩行者が増えるよう配慮する。

駅や駐車場からスタジアムまで人が歩き、かつまちを回遊するよう、歩行空間の充実を図る。

地域にスタジアム整備のインパクトを波及させるために、歩行者空間の整備を優先的に実施する必要がある。

恒常的に人を呼び込むためには、プロスポーツ開催時以外においても人が訪れる施設とする。

スポーツ機能に加え、商業、業務、観光サービス等を導入する。

まちなか再生の起爆剤として、365日人が訪れる施設とする。

活性化に向け、まちとスタジアムとを情報で結ぶ。

東京都では、国家戦略特区制度を活用した「エリ

アマネジメントに係る道路法の特例」を5地区で運

用しており、エリアマネジメント主体が公道の利用

方法を企画し、カフェやベンチ、広告の設置等を

行う取組が進められている。

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街なか型での導入機能

スタジアムは、交流人口の拡大やスタジアム経営の安定化の観点から、サッカーなどプ

ロスポーツに加え、ライブやコンベンション等を行うなど多目的利用を推進し、稼動率の

向上を図る。加えて、商業、観光、業務等の機能が入居する複合施設化を併せて進め、365

日人が集う施設としていく。

スタジアム周辺の街なかにおいては、スタジアムに連なる歩行空間の充実を図るため、

デザイン性の高い舗装やストリートファニチャーを整備する。

また、スタジアムとまちをつなぐ役割として ICT を活用する。

図 11 街なかスタジアムの導入機能

導入機能のイメージ①:スタジアムの多目的利用と複合施設化

稼働率・収益性を高めるため、サッカーの試合だけではなくコンサートやコンベンシ

ョンを実施し、多目的利用が可能なスタジアムとする。

恒常的に人が訪れる施設とするため、ショップ、レストラン等の商業施設、ビジター

センター等の観光情報発信施設のような行政機能等の業務施設などが入居する複合施

設を想定する。

また、街なかの多くは、住宅等の老朽化により、地震や火災に対して脆弱である。こ

のため本スタジアムにおいても、地域の避難拠点としての機能を付加する。

導入機能

の方針

地域戦略 街に人を集める起爆剤となるスタジアム

スタジアム

フィールド

コンコース

併設施設

災害時

ICT

スタジアム周辺

サッカーの試合 ライブ・コンベンションなどの実施

地域避難拠点

交流人口の増加やスタジアム経営の安定化に向け、プロスポーツに

加え、ライブやコンベンションなどの開催により稼働率をあげる。

人口密度が高い反面、地震・火災への脆弱性が高い街なかにおける住民・就業者等の避難拠点機能を備える。

商業施設(ショップ、カフェ、レストランなど) 観光情報発信施設(ビジターセンター) 業務施設(市役所機能の一部、移転など)

街路等歩行空間の整備 コンコース:散歩・ジョギングコース

周辺の飲食店・駐車場の混雑状況の通知 周辺の飲食店からの商品デリバリー スタジアム・コンコースへのタッチパネル式のデジタル・サイネージ設置

Beaconを活用した座席案内 集約型データセンターによる制御系/音声/映像データの集中管理

恒常的に人を呼び込むとともに、テナント事業による経営の安定化の

視点から、コンコース等において商業、観光、業務等の機能を導入

する。

スタジアムに連なるまちの魅力の向上に向け、舗装、伝線地中化、ストリートファニチャー等の充実を図る。

まちからスタジアムへ人を誘導する仕掛け、スタジアムからまちへ人を引き出す仕掛けの充実を図る。

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図 12 スポーツ施設の多目的利用

導入機能のイメージ②:アクセス歩行空間の充実

スタジアムを訪れる歩行者の増加に向け、アクセス道路の魅力を向上させる、デザイ

ン性の高い舗装やストリートファニチャーを導入する。

スタジアムコンコースは、サッカーの試合開催の無い日は散歩・ジョギングコースと

して活用可能とし、スタジアム周辺の回遊性を高める。

図 13 アクセス歩行空間の整備

図 14 賑わいあるスタジアムコンコース

宮城県仙台市にある多目的型スポーツアリーナ「ゼビオアリーナ仙

台」では、バスケットボールやバレーボールのプロスポーツを始め、コ

ンサートライブ、コンベンションなどにも利用可能にし、開催するイ

ベントの数を増やすことで収益性を高めている。89ERSや仙台ベ

ルフィーユのホームゲーム、フットサルの大会、ボクシングマッチ、スケー

ト教室といったスポーツ関連での利用が最も多いが、アーティストのラ

イブやコンサートも実施されている。

周辺施設として、ホテルやマンション、カフェやレストランなどを集めるこ

とで人の流れを作り、地域の活性化を図っている。

広島駅からスタジアムへと向かうJR線路沿いの歩道は、赤色にカラー

舗装されており、試合前後は歩行者天国になる。

歩道を抜けると、内野席に続く全長200mのスロープ「広島市西蟹

屋プロムナード」が設置されている。

広島駅からスタジアムを結ぶ高架通路の整備が計画されているが、

現在一部計画の見直しが議論されている。

広島県広島市にある「広島市民球場 (Mazda Zoom-Zoom スタ

ジアム広島)」では、内野部分12m・外野部分8mの幅を持つコンコ

ースには多数の売店・トイレが用意されており、どの位置からでもフィール

ド上の選手のプレーを眺めることができる。一時的にフィールドが見えなく

なるサインボード裏にはモニターが設置されており、コンコースで球場を周

回していても、試合の状況を把握することが出来る。

スタジアムコンコースは、試合開催が無い日も散歩・ジョギングコースとし

て利用が出来る。

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導入機能のイメージ③:ICT を活用した人の回遊性の創出

スタジアムの利便性を高めるとともに、スタジアムの整備効果をまち全体に波及さ

せるため、スタジアム周辺の飲食店や駐車場の混雑状況を通知する仕組みを作り、歩行

者の回遊性を高める。

また、スタジアムコンコースにタッチパネル式のデジタル・サイネージを設置し、大

型映像表示装置コンテンツの同時表示、クラブやスタジアムからのファンへの告知、地

域の応援店情報等を提供することで、外に開かれたスタジアムを実現する。また、ビー

コンの位置情報を活用して座席案内、スタジアム内外のお店から座席への飲食デリバ

リーを行う。

図 15 デジタル・サイネージの活用

図 16 オーダリングシステム・混雑検知・表示

サッカースタジアム内外の各所に設置したマルチディスプレイやディスプレ

イで試合のライブ映像や選手情報などのスポーツ・コンテンツを提供し、

スタジアム空間及び周辺エリアにおける一体的な試合体験を創出する。

市立吹田サッカースタジアムでは、コンコース、VIPエリア、飲食・グッズの

店舗などにディスプレイを設置する実証実験を実施している。

スタジアム内のビーコン(センサーを利用した近距離無線通信技

術)から入手する正確な位置情報を活用して、スタジアム専用のス

マホ用アプリから、料理や飲み物の注文・座席へのデリバリー、道案

内、混雑検知、表示などのサービスを提供する。

アメリカのメジャーリーグのスタジアムでは多く導入事例があり、日本で

も京セラドーム大阪球場、QVCマリンフィールド等で導入されている。

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街なか型スタジアムの空間イメージ:機能配置~街との連携を重視~

人が集まり賑わいある空間とするため、道路に接しているエリアをイベント広場と

し、まちとの一体感を醸成する。また、イベント広場に面した 1 階部分の附帯機能ス

ペースを複合利用(商業/業務施設・ビジターセンター等)の場とし、365 日まちとの

間に人が行き交うスタジアムとする。(広大な用地取得が困難なことも予想されるた

め、本事業ではJ1 ライセンス最低基準の収容人数 15,000 人規模のスタジアムとして

検討を行った。)

図 17 スタジアム配置図

イベント広場

100m

スタジアムへのアクセス

付加機能スペースへのアクセス

まちからの人の流れ

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図 18 スタジアム平面図

街なか型スタジアムの空間イメージ:運営を見据えた工夫

Jリーグではフィールドを天然芝とすることを義務づけている。しかし、天然芝は痛

みやすく、試合後に養生期間を要することやイベント等での活用がしにくいなどの課

題がある。

多目的利用を進めスタジアムの稼働率を上げるために、フィールド上に可動スクリ

ーンと仮設舞台を設置し、芝を可能な限り傷つけずに、イベント等を開催できるよう建

築面での工夫を行うこととした。

< B1F平面図> < 1F平面図>

<2F平面図> < 3F平面図>

試合関係諸室

試合関係諸室

選手出入口

メディア出入口

INA A’

メインエントランス

付加機能スペース

付加機能スペース

IN

Bコンコースコンコース

VIP席/記者席/放送席

大型映像操作室等

バックスタンドメインスタンド

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図 19 A-A’ 断面図

図 20 B-B’ 断面図

なお、本県の冬季の気象条件をふまえ、屋根付きのスタジアムの検討を行ったが、周

辺に住宅等が隣接する街なか型では、フィールドを覆う屋根を設けた場合、建築基準法

に基づく高さ規制の制限を越えるケースが想定される。このため、本検討では、観客席

のみを屋根で覆う方式を採用した。

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図 21 メインスタンドのみを利用してイベントを開催する場合

バックヤード

バックヤード

仮設舞台

(屋根付)

可動スクリーン

仮設舞台

メインスタンド メインスタンド

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街なか型スタジアムの空間イメージ:外観パースと活動イメージ

まちと連動した賑わいづくりをすすめるために、イベント広場では試合日のみなら

ず、年間を通じて様々な催し物を開催する。

スタジアムの外から一部フィールド内をのぞき見ることが出来るようにすることで、

サッカーに興味がない人も「今度来てみよう」と思うきっかけを創るなど、まちの賑わ

いをスタジアムに引き込む仕掛けを建築の中に組み込む。

図 22 街なか型スタジアム鳥瞰図

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図 23 イベント広場からの外観図

図 24 メインスタンド裏からの外観図

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(3) 郊外型スタジアムのモデルスタディ

郊外型でのスタジアムの役割とまちづくりの方向

高度成長期に形成された郊外では、近年世代交代の時期を迎え、暮らしやすさの維持・創

造が、全国的にも課題となっている。また郊外においては、街なかに比べ歴史・文化資源等

の地域資源が少ないケースも多く、それぞれのエリアの特徴に合った魅力づくりを進める

ことが必要となる。

このため郊外で、スタジアムを中心としたまちづくりを進める際には、スタジアムの持

つ“スポーツ”という点に着目し、“観るスポーツ”“自ら楽しむスポーツ”などを通して

まちと暮らしの魅力づくりをすすめていく。広い空間を活かして、スポーツと親しむライ

フスタイルを先導することで、地域の新たな魅力づくりを推進する。また施設に、防災面で

の機能を付加し、安全・安心面の充実を図るなど都市機能の強化を行う視点が重要となる。

なお本業務では、全国的に限られた予算のなかで効果的・効率的なスポーツ施設運営が

求められていることを念頭に、用地取得費が低い郊外型では、より低コストなスタジアム

整備・運営の検討を行う。

図 25 郊外型におけるスタジアムコンセプト

郊外型での地域づくりの戦略

広場や公園、周辺のスポーツ施設などと一体化した運用を図るためには、街なかにおけ

るエリアマネジメントと同様に、多様な主体が連携しながら、トータルに地域の魅力を創

出していくことが必要となる。近年、広場や公園、社会教育施設(動物園等)を公民連携型

で運営するパークマネジメントの取組みが全国的に進められており、本事業においてもそ

の導入を視野に入れる。

また、用地取得費の低廉性を活かし、地方都市でも持続的に展開可能なスタジアムのモ

デルとなるよう、建設単価の低減に加え、防災機能やバス等の結節機能、広場・公園を活か

したレクリエーションなど、公的な役割も担うスタジアムとしていく。

スタジアムを核としたまちづくりの方向

公共交通

アクセス

主たる地域課題

周辺施設

用地

郊外の特徴

用地の低廉性等を活かし、低コストで地方都

市でも持続可能な運営を確立する。

低コストで

地方都市でも

展開可能な

スポーツ中心の

スタジアム

車でのアクセス性を念頭に、スポーツに

特化した広場・公園・スタジアムを作る。

公共交通の利便性が相対的に低い

暮らしやすさの維持・創造、魅力づくりが課題

幹線道路、高速等のアクセスに優れる

住宅、商業に加え、エリアによってはスポーツ、医療、学校等が立地

用地が取得しやすく、取得費が低い

駐車場を確保しやすい

“観る”“自ら楽しむ”スポーツなどにより

地域の魅力づくりを先導する。

防災性の強化により、地域の安全・安

心を推進する。

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図 26 郊外型における地域づくり戦略

参考 パークマネジメントとは

プロスポーツ開催時以外においても、人が訪れるエリアとするためには、広場や公園、周

辺のスポーツ施設などとスタジアムを一体化した運用を図り、プロスポーツ観戦以外の来

訪目的を生み出していくことが重要となる。このため集客ノウハウに長けた民間等を選定

し、公共施設部分を含めてトータルに管理し、賑わいを創出していくことが有効な手段の

一つとなる。こうした公民連携型の広場や公園の運営は「パークマネジメント」と呼ばれて

おり、国土交通省による公園への民間ノウハウ導入の方針とも相俟って、近年に導入事例

が増えている。郊外型では、公民連携の体制を構築し、試合開催時以外にも人が訪れるよう

多彩なスポーツ体験が可能な広場、公園、スタジアムを整備することを検討する。またスポ

ーツの前後の時間を楽しむことのできる飲食機能等の充実を図るなど、常に人が訪れる空

間づくりをすすめる。

図 27 「パークマネジメント」による公園運営事例(天王寺公園エントランスエリア)

基本方針

地域戦略 スポーツにより地域に新たな魅力をつくるスタジアム

地域貢献の考え方

地域整備の方法

地域経営

アクセス

都市施設

整備手順

スタジアムの位置付け

用途

設置機能

目的

スマートスタジアム化の方針

低コストで持続可能なスポーツ施設の整備

パークマネジメント

自動車アクセスが中心

公園・スポーツ機能の充実

ニーズ変化に対応した段階整備

単機能(スポーツスタジアム)

1年中スポーツを楽しむことが出来る

スポーツを観る・楽しむ人を集める

ICTを活用した大規模演出や自動車での来場支援

スポーツと親しむライフスタイルを先導する。また、用地の低廉性を活かし、地方都市でも展開可能性の高いスタジアムのモデルとする。

利用者の利便性向上等にむけ、既存のスポーツ施設や、広場・公園などと連携した運用を行う。

自動車では、歩行者に比べ目的性の高い来場が多くなる。スポーツに特化し、ここしかない機能を備えることで、来場者を拡大する。

県内で他に比類のない、スポーツを観る、楽しむ機会を創出する。また防災・交通結節機能を併せて強化し、公的な役割も担う。

事業性に配慮し、必要最低限のスタジアム機能や公園機能の整備からスタートする。ニーズに応じて段階的に拡張等を図る。

スポーツスタジアムとしての機能に特化する。ただし、スタジアムで開催可能なライブ等については実施する。

冬場はスポーツイベントの開催やスポーツを楽しむ機会が限定される本県の特徴を踏まえ、1年中利用かのうな施設としていく。

車利用が多いこと、周辺地域への回遊等が想定しにくいことなどから、スポーツに特化したスタジアムとする。

広い空間を活かした大規模演出とともに、車による来場者の支援をICTの活用により充実させる。

これまで公共施設である公園は、その設置者である国や自治体が維

持管理を行い、民間活力を導入する場合であっても、一部施設の運

営委託や維持管理に留まることが多かった。

これに対し、近年は事業コンペで公園全体の運営管理者を決定し、

集客数を大幅に増加させる事例が生まれるとともに、国土交通省も。

民間事業者が収益施設と公共部分を一体で整備する「Park-PFI

」を制度化し、民間事業者が各施設の設計から運営までを一括で行

うことができるようにするなど、民間のノウハウをより一層活用した公園運

営事例が増えつつある。パークマネジメントとはこれらの取組の総称であ

り、公的セクターに加え、民間を始めとした多様な主体が参画しながら

、公園全体を戦略的に運営していく試みを指す。

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郊外型での導入機能

冬季は野外スポーツが限定されるという本県の特徴を踏まえ、一年を通してスポーツ観

戦や競技を楽しむことができるよう、屋根付きのスタジアムとする。なお芝の養生の観点

から、屋根は開閉式とする。

またスタジアムは、スポーツスタジアムとして役割を中心とする。一方、稼働率の向上を

図るため、過剰な投資が発生しないよう配慮しつつライブやコンベンション等の多目的利

用をすすめる。

スタジアム周辺の広場・公園では、多様なスポーツやイベント等を楽しむことできるよ

う整備を進め、プロスポーツ開催時以外においても人が訪れるエリアとしていく。

図 28 郊外スタジアムの導入機能

導入機能のイメージ①:スポーツへの特化、スポーツからの発展

プロスポーツ開催時以外においても人が訪れるよう、フィットネスやトレーニング

施設など「自ら楽しむ」「健康や美容につなげる」ためのスポーツ関連施設を併設する。

また将来的には、教育機関、医療機関と連携した先導的なスポーツ医療、科学の研究

拠点等公的な役割も担い、地域に貢献する機能の導入をあわせて行うことを検討する。

図 29 スポーツに特化した地域開発(軽井沢風越公園の事例)

開閉式屋根の設置 ライブ・コンベンションなどの実施

導入機能

地域戦略

スタジアム

フィールド

コンコース

併設施設

災害時

ICT

スタジアム周辺

災害物流拠点

冬場においてもスポーツを楽しむことが出来るよう、開閉式の屋根を設置する。また、過大な追加投資が発生しないよう配慮しつつ、スタジアムの多目的利用を進める。

幹線道路とのアクセスや街なかの入り口に位置する立地などを活かし、災害物流拠点としての機能を果たすことが出来るよう整備する。

フィットネス・トレーニング施設 スポーツ医療・科学の研究拠点施設

広場・公園 駐車場

大型ビジョン、プロジェクションマッピングによる演出 シャトルバスの発着時間の通知 ゲートレス駐車場スタジアム・コンコースへのタッチパネル式のデジタル・ サイネージ設置

Beaconを活用した座席案内 集約型データセンターによる制御系/音声/映像データの集中管理

スポーツにより地域に新たな魅力をつくるスタジアム

プロスポーツ開催時以外においても人が訪れるよう、スポーツを楽しむ

機能等を追加する。

恒常的に人を呼び込むため、多様なスポーツやイベント等を楽しむことができる空間をつくる。周辺にスポーツ施設が立地している場合には、それらとの一体的な運用を図る。

広い空間を活かした大規模演出として、大型ビジョンやプロジェクトマ

ッピングによる演出等を検討する。

車などによる来場者の支援として、ICTを活用した交通施策を実施

する。

「軽井沢風越公園」は、スケート、フィギュア、カーリング、アイスホッケー、テ

ニス、野球、サッカーなどのトレーニング施設や合宿施設として利用可能な

総合スポーツ施設であり、利用者は年間約20万人超である。

そのうち、日本最大級の通年型カーリングホールである「軽井沢アイスパー

ク」では、カーリングの国際大会の開催が可能であり、またスポーツを通した

コミュニケーション・ビジネス研修プログラムやカーリング体験等も提供してい

る。

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図 30 公民学連携による先導的なまちづくり(柏の葉キャンパスの事例)

導入機能のイメージ②:目的性の高いスポーツ体験と民間のノウハウの活用

エリアの集客力を高めるために、“ここでしか体験できない”スポーツ経験を提供で

きるよう公園や広場の運営を行う。スタジアムにおいて「観る」スポーツが中心となる

ことを踏まえながら、広場・公園では、「自ら楽しむ」、「学ぶ・教える」、「健康や

美容につなげる」といった機能を充実させる。また、スポーツの前後の時間を楽しむこ

とができるよう、民間のノウハウを活用しつつ飲食・物販等の機能の充実を図る。ま

た、車・バスでのアクセスを前提とし、駐車場やバスターミナルを整備する。

図 31 多様なスポーツのための広場(スノーピークの事例)

図 32 民間のノウハウを導入した公園(てんしばの事例)

「柏の葉キャンパス」 は、「公民学連携による国際学術研究都市・次世

代環境都市」を理念とし、自然と共生し、質の高いデザインを実現した持

続性の高い次世代の環境都市づくり、そして、市民や企業、自治体と最

先端の大学や公的研究機関が双方向に連携・交流するなかで、新たな

産業や文化的価値を創造していく都市づくり、さらには、地域に暮らす全

ての人々が大学と係わりを持ち、創造的環境の中で環境に優しく健康的

なライフスタイルを実現できる都市づくりを目指している。

スノーピーク Headquarters キャンプフィールドでは、工場、本社が位置

する約5万坪の開かれた敷地をキャンプフィールドとして活用出来る。

店舗も併設しており、スノーピークの全ての商品を実際にフィールドに設営

して確認することが出来る。またレンタル品の貸し出しも行っているため、道

具を持たずにキャンプを行うことが出来る。

天王寺公園エントランスエリア “てんしば” は、「天王寺・阿倍野地区」全

体の活性化に向け、その核となる「天王寺公園」のエントランスエリア等に

おいて、民間活力の導入により同エリアのリニューアルと魅力向上を図るこ

とを目的とした、近鉄不動産株式会社との官民連携の取組みである。

公園内に飲食・物販・アウトドア施設、インバウンド向け観光拠点などを配

置し、リニューアル前に比べて3.5倍の入場者数となった。デジタルサイネー

ジ・案内サインの広告枠を販売しており、広告収入も確保している。

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導入機能のイメージ②:利便性やスポーツ体験を向上させる ICT の活用

スタジアムを訪れる来訪者の利便性を向上させ、渋滞等を回避するために、ゲートレ

ス駐車場やシャトルバスの発着時間の通知などを行う。

郊外の広々とした敷地を活用して、大型ビジョン、プロジェクションマッピング、3D

等による大規模演出を行う。

図 33 ゲートレス駐車場(ナンバー認識技術)

図 34 ICT を活用した大規模演出(スポーツ施設におけるプロジェクションマッピン

グの事例)

メガピクセルカメラと、ナンバー認識ソフトにより、車両を特定し、入出庫

を管理する方法で、試合後の駐車場の混雑緩和に効果がある。

インターネット回線を利用して、場内の遠隔監視や、過去の画像検索

も可能である。

オリンピックのセレモニー、プロバスケットボールの試合、アイスショー等で

は近年プロジェクションマッピングによる大規模演出の手法が活用されて

いる。

サッカースタジアムでは、市立吹田サッカースタジアムにおいて、日本初

のピッチを使ったプロジェクションマッピングによる演出を行った。

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郊外型スタジアムの空間イメージ:機能配置~周辺施設との連携を重視~

プロスポーツ開催日以外においても来訪者があるよう、広場・公園や既存の施設等と

融合した施設配置を行う。また、自動車でのアクセスしやすいよう広い駐車場を確保す

るとともに、地域交通の利便性向上も兼ねてバスターミナル機能も設置する。

図 35 配置図

図 36 配置図

付加機能スペース

駐車場エリア

駐車場エリア

エントランスイベント広場

回転型開閉屋根(テント膜)

スタジアムへのアクセス

付加機能スペースへのアクセス

試合関係者のアクセス

バスターミナル

(例)既存のスポーツ施設

(例)既存の広場・公園

<A-A’ 断面図> <B-B’ 断面図>

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図 37 平面図

郊外型スタジアムの空間イメージ:運営上の工夫と外観イメージ

冬場の県民のスポーツニーズに対応するとともに、施設の稼働率を高めるために、郊

外型のスタジアムにおいては、フィールドを覆うことが可能な屋根を設置する。屋根

は、芝への日照の確保などの必要性から、開閉型のものとする。

街なか型では、近隣の住宅等との関係から建築物の高さ規制がかかることが想定さ

れる。一方、周辺に建物が少なく、余裕を持った土地の確保できる郊外においては、フ

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ィールドまで覆う屋根をかけることが可能である。本モデルスタディでは、開閉に係る

コストや高いシンボル性等を考慮し、回転型の開閉屋根を有するスタジアムとした。

図 38 郊外型スタジアム鳥瞰図

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図 39 郊外型スタジアムスタンド内観図

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図 40 イベント広場からの外観図

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(4) スタジアムの立地場所の要件

Jリーグの試合開催に必要とされるスタジアムの基準

日本サッカー協会では 2010 年 3 月にサッカースタジアムの建設・改修にあたっての

ガイドラインとなる「スタジアム標準」を発行している。このガイドラインでは、J1、

J2 といったクラス別の収容規模を始め、スタジアムが備えるべき機能やアクセス等望

ましい周辺環境の整備についても規定している。

図 41 スタジアム標準に基づく検討課題

(出典:JFA スタジアム標準よりアビームコンサルティング作成)

スタジアム経営や地域活性化からの視点

将来にわたって活用されるとともに、地域から愛されるスタジアムとするためには、

日本サッカー協会の「スタジアム標準」に加え、事業性(スタジアム経営の視点)と地

域貢献(地域活性化の視点)を兼ね備えた立地選定を進める必要がある。

スタジアム周辺における

土地の確保

スタジアム規模

環境問題の回避・緩和

アクセス

考慮・設置すべき事項

スタジアムの立地場所は以下のアクセス条件を満たすべきである。

• 鉄道・地下鉄など複数の公共交通利用の確保

• 幹線道路からのアクセスの利便性

• 歩行者導線の安全性、快適性の確保

スタジアム建設で生じる以下の環境問題の周辺地域への影響の回避もしくは適切な分析・設計・運営管理に

より緩和する。

• 交通量の増加

• サポーターの往来による喧騒

• イベントによる騒音

• 照明による光害

• 試合開催時以外の閑散化

Jリーグの試合開催を前提とするスタジアムは、各クラスにおいて以下の規模を標準とする。

• J1:20,000~40,000人

• J2:15,000人~20,000人

スタジアムの周辺には以下を確保出来る十分な面積が必要である。

• 広く安全な屋外の導線エリア(活動エリア)

• サービス車両用の駐車スペース

• 各種施設の立地スペース

• 将来的な拡張や再開発に対応するための予備スペース

項目

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図 42 スタジアム立地場所の検討観点

街なか・郊外でのスタジアム立地場所の要件

事業性や地域貢献、Jリーグ基準をふまえ、街なかと郊外での望ましいスタジアム立

地要件を検討した。

○ 街なか型では、既存の地域資源との相乗効果や公共交通の利便性を重視し、商

業・業務機能や観光資源が既に立地し、鉄道駅から歩いてアクセスできるエリア

でのスタジアム立地が望ましい。

○ 郊外型では、周辺環境との調和と郊外の新たな魅力創造との両立ができる場所

が望まれる。

○ また街なか、郊外ともに、県等の既存計画との合致や県民の利便性・アクセスに

優れることを重視する。

スタジアム周辺における

土地の確保

スタジアム規模

環境問題の回避・緩和

アクセス

スタジアム設置に向け考慮・設置すべき事項(日本サッカー協会「スタジアム標準」)

・鉄道・地下鉄など複数の公共交通利用の確保 ・幹線道路からのアクセスの利便性 ・歩行者導線の安全性、快適性の確保

・交通量の増加 ・サポーターの往来による喧騒 ・イベントによる騒音 ・照明による光害 ・試合開催時以外の閑散化

・J1:20,000~40,000人 ・J2:15,000人~20,000人

・広く安全な屋外の導線エリア(活動エリア) ・サービス車両用の駐車スペース

・各種施設の立地スペース ・将来的な拡張や再開発に対応するための予備スペース出典:日本サッカー協会「スタジアム標準」

スタジアム経営の視点

地域活性化の視点

利用者数の確保

・Jリーグ開催時の集客力の維持・向上に向け、現状と同等以上のアクセスに優れること

・Jリーグ以外のスポーツ利用、イベント利用等が見込まれること

・プロスポーツやイベント開催時以外においても、来場者・利用者がいること

既存計画との調和・都市計画など、県の土地利用の方針と齟齬がないこと

・県・自治体の既存計画において、スポーツを核とした地域活性化(交流人口の拡大、観光等)の推進を位置づけていること

周辺地域との調和・県民や県外からの来訪者、県内企業・団体にとって利便性の高く、波及効果が期待できるエリアであること

・スタジアムと周辺環境との調和がとれること

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図 43 スタジアム立地場所の取りまとめ

郊外型スタジアムの立地場所の要件街なか型スタジアムの立地場所の要件

交流人口を創出し、地域の活性化を先導するスタジアム

スポーツにより地域の新たな魅力をつくるスタジアムスタジアムの役割

県の計画により、拠点性の高い中心市街地として位置づけられていること(都心核、交流核など)

既存の計画において、スポーツを中心とした地域活性化の推進を位置づけていること。

計画的な

位置づけ

Jリーグの試合開催時に、県民が来訪する際の時間距離が、現状と同等程度以下であること

Jリーグの試合開催時に、県民が来訪する際の時間距離が、現状と同等程度以下であること。

県民の

利便性

鉄道駅から徒歩圏であること。 周辺エリア内で必要な駐車台数を確保できること。

都市間を結ぶ主要な幹線道路と近接していること。 敷地内に駐車場を確保できること。

アクセス

候補地から徒歩圏において、商業・業務機能、観光資源が立地しており、スタジアムの立地と地域の既存機能との間に相乗効果が期待されること。具体的には就業者数が多く、県外からの滞在人口の多いエリアであること。

周辺の自然・生活・営農環境等と調和が確保できるエリアであること。具体的には、既成市街地内もしくはそれと隣接しており、既存の市街地の魅力創造につながるエリアであること。農用地解除を念頭に置く場合には、農地の連担性を損ねないこと。

周辺環境

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35

事業計画

(1) スタジアムの空間イメージとビジネスモデルの組み合わせ

実現に向けたイメージ

これまで、スタジアムビジネスモデルを大きく左右する立地条件(街なか・郊外)と、ス

タジアム空間イメージ(非可動屋根・開閉式可動屋根)を定義した。街なか型においては、

用地確保の観点から非可動屋根との組み合わせとしたが、用地確保が可能であればこの限

りでない。そのため、スタジアムの実現に向けたイメージとしては、スタジアムの空間イメ

ージ(非可動屋根・可動屋根)と、立地に紐づくビジネスモデル(街なか・郊外)の組み合

わせとなる。

図 44 スタジアム空間イメージとスタジアムビジネスモデル(立地)の組み合わせイメージ

非可動屋根型

全席屋根付き

15,000人

収容のスタジアム

街なかビジネスモデル

ビジターセンター化(宿泊施設の予約、アウト

ドア用品レンタル、手ぶら観光の推進)→山

形に来たらまずはここに立ち寄る場所

可動屋根型

可動屋根付き

20,000人

収容のスタジアム

郊外ビジネスモデル

アンカーテナントとして、スポーツを”する”ことを

楽しめるFitnessを併設。仙台、山形に無い「

非日常感」を味わえるような空間の提供

スタジアム空間イメージ ビジネスモデル(街なか・郊外)

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(2) 事業スキーム

事業スキームの検討

山形県は、多くの地方都市と同様に地域の経済基盤が強くないため、市立吹田スタジア

ムのように民間によるスタジアム建設費の調達(寄付など)は困難であることが推測され

る。一方、運営の観点からは、事業運営を見据えた設計・建設が必要である。そのため、設

計・建設時から民間事業者が参画し、そのノウハウを活用していくことが重要である。これ

らを考慮しながら事業スキームについて今後深掘りする必要がある。

図 45 事業スキームの整理

BOO

BOT

BTO

公設・民営

(DBO)

公設・公営

P

F

I

概要

公共が資金調達主体から運営維持まで原則全てを担う。(運営・維持は指定管理制度にて民間への委託も可能)

公共が資金調達を担う。民間に施設の設計・建設、運営等を包括的に委託する

民間が資金調達・建設を担う。完成後は所有権を公共に移転し、その後は一定期間、運営を同一の民間に委ねる

民間が施設を建設・維持管理・運営し、契約期間終了後に公共へ所有権を移転する

民間が施設を建設・維持管理・運営し、契約期間終了後も民間が施設を所有し続ける

所有(建設時)

所有(運営時)設計・建設 運営・維持資金調達

公共 公共 公共 公共公共

公共 民間 公共 公共 民間

民間 民間 民間 公共 民間

民間 民間 民間 民間 民間

民間 民間 民間 民間 民間

民間

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37

(3) 建設コスト

建設コストの考え方

サステナブルなスタジアムを実現するためには、建設コストの低減が求められる。図 48

に示すとおり、運営維持を考慮すると 1 席あたり 25 万円から最大でも 50 万円のレンジ内

に抑える必要がある。今回の試算では①街なか型はスケールメリットが小さく(座席数

15,000 席)、②郊外型はドーム可動屋根設置のコストが上乗せされるが、両スタジアムと

もに 1 席当たりの建設コストを 50 万円/席以下に抑えた。

また、郊外型については、より低コストを求めた③可動屋根のない(観客席のみ屋根設

置)ケースも加え、建設コストを算出した。

図 46 サッカー専用競技場 建設コスト比較

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38

建設コストの試算

表 3 本計画で想定するスタジアム建設コスト

モデルと立地の組み合わせ 総工費(百万円) 1席あたり建設コスト(千円)

街なか型+非可動屋根 6,498 433

郊外型+可動屋根 9,164 458

郊外型+非可動屋根 6,444 322

※※用地取得及び屋外付帯部分(舗装・植栽等)のコストは含まない

図 47 建設コスト内訳

建設コストの縮減にむけた方向性

合理的な構法を採用し、工期短縮と建設コスト縮減を図る。

ユニット化による工期短縮・建設コスト縮減

ユニット化された建設部材を積極的に採用することで現場作業を短縮し、コス

ト縮減を図る。

例)外壁タイル打ち込み乾式パネル・間仕切りのユニット化・機器廻りの配管のユニ

ット化

既製品部材・汎用品の採用

コンクリート部材はプレキャスト化を多用することで、現場作業を低減し、工期

短縮と合理化を図る。

設備システムは汎用機器で構築し、特別なコストはかからないように計画する。

※屋外付帯部分(舗装・植栽等)のコストは含まない

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機器使用の整理

使用する設備機器は、品目を増やさず限定した機器で構成することで施工を簡

素化する。運用段階における予備品の点数も縮小し、備品倉庫をコンパクト化す

る。

無駄を省いたメリハリのある内装計画

普段あまり使用されない場所や来訪者が利用しない場所等は、無駄を省いた内

装計画とする。全てを均一的に仕上げるのではなく、こと細かく、適材適所の材

料、空間、性能を決定する。

ランニングコストの縮減に向けた方向性

将来的な機能変化やメンテナンスまで見通した設計により、ランニングコストの縮減を

図る。

将来対応を見込んだゆとりのある計画

将来の機能変化に柔軟に対応できるように設備配管や配線はゆとりのあるスペ

ースに集約し、将来の改修・増設の際に他の壁や天井のやり替えを行う「道づれ

工事」がない計画とする。設備の配管・配線用にシャフトに予備のスペースを確

保し、更新時に施設の機能が停止せずに施工が行われるように配慮する。

躯体・設備の長寿命化

コンクリートの被りを厚くし、中性化を低減する。また、高性能 AE 剤を採用す

るなど、施工性を向上させ、極めて質の高い緻密な耐久性の高い計画をする。

メンテナンスしやすい仕組みづくり

外壁の外周にメンテンス用のデッキを設ける等、特別な足場を設けることがな

く、清掃はできるように配慮し、メンテナンス費の低減に努める。

運用の効率化

照明設備:利用状況を分析し、各場面に必要とされる照度を明確し、段階的な点

滅パターンにより運用の最適化を徹底する。

通信・電話:観客席には、無線 LAN のアクセスポイントを設置する。

設備運用:ネットによる予約システムの導入により、運用管理業務の効率化を図

る。

環境への配慮

環境に配慮した設備計画により、自然の恵みを生かすことで、水光熱費の縮減を図る。

太陽光発電設備

太陽光発電設備を設置し、蓄電池を設け、災害時の非常用電源として機能するよ

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40

うにする。また、系統連係を行い、駐車場照明電力等を補う。

雨水再利用

屋根部に降水した雨水については、地下ピットの雨水貯留槽に貯留し、ろ過を行

い、フィールドの散水及び便所洗浄水等へ再利用する。

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(4) 収益モデル

収益モデルの検討

スタジアムの収益構造は、フィールド/スタンドにおける利用料(スポーツ利用)・利用

料(その他興行利用)・広告料・コンコース売店、付帯施設におけるテナント料の 5 つに大

別することができる。

スタジアムビジネスの収益面での成功要因は、フィールド/スタンドにおいては ①稼動

率を高めること、②興行1回当たりの収益を高めること、付帯施設においては ③稼働日以

外の集客・収益を確保することの3点であると考えている。

図 48 スタジアムの収益構造と収益向上の考え方

収益向上に向けた取組み

稼働率の向上

稼動率を向上させるために、街なか型では「メインスタンドのみを利用した興行の開

催用設備」、郊外型では「可動屋根」の設置を計画した。

街なか型:ステージの大部分をピッチ外に設けることにより、シーズン中でも芝

を痛めることなく 5,000 人規模のコンサート等を開催することが可能になる

郊外型:可動屋根の設置により、シーズンオフのコンベンション利用やコンサー

ト等を開催することが可能になる

また、興行用機材搬入にも対応可能な設計を想定している。

プロ利用

アマ利用

ネーミングライツ

広告看板

利用料(スポーツ)

利用料(その他興行)

広告料

テナント料

コンコース売店

フィールド/スタンド

付帯施設

フィールド/スタンド

稼働率の向上

成功要因①

1興行当たりの収益向上

成功要因②

付帯施設

興行開催時以外の集客・収益確保

成功要因③

×

収益向上

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42

図 49 街なか型におけるメインスタンドの活用イメージ

図 50 可動屋根スタジアムにおける活用イメージ

仮設舞台と可動スクリーン設置による「メインスタンドのみを利用し

た興行開催」

<平面図>

<断面図>

可動屋根設置による「コンベンション利用やコンサート等開催」

<断面図>

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1 興行あたりの収益向上

1 興業当たりの収益を考えた場合、スポーツ以外の興行においては、開催する興行の

コンテンツに収益が左右される要素が強いと想定される。そのため、 恒常的に 1 興行

当たりの収益を向上するためには、主たる利用者として想定されるプロサッカークラ

ブの試合における集客力を強化する必要がある。

プロサッカークラブの試合における集客力が向上することで、広告料の向上やコン

コース売店の向上、テナント料の向上、また、プロ利用による利用料の増加も見込め、

スタジアムの収益全体の底上げになることが推察される。

図 51 「プロサッカークラブの試合における集客力向上」による相乗効果

プロ利用

アマ利用

ネーミングライツ

広告看板

利用料(スポーツ)

利用料(その他興行)

広告料

テナント料

コンコース売店

集客力向上

スタジアム価値向上

売上向上賃料向上

開催コンテンツにより

収益が左右される

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① スカイボックス、ビジネスラウンジ等シートアレンジ

山形県は、人口減少傾向が続き市場規模の縮小に直面しており、集客力を強化す

るためには、「顧客層を拡大すること」が重要になる。

新スタジアムでは、多様なシートを設け、様々な観戦スタイルを可能にすること

で、顧客層拡大を図る。

図 52 シートアレンジイメージ

<スウィートボックス>

<テラスシート>

<パーティーシート>

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45

② キッズルームの設置

子供にとって、長時間座り続けてサッカー観戦をすることは窮屈で退屈な時間に

感じることもある。モンテディオ山形の試合においても、試合開始直後からコンコ

ースで座ってゲーム等をしている子供も多く、試合開始 30 分後にはさらに多くの

子供達がコンコースに滞留しているのが現状である。

キッズルームの設置により、試合観戦に疲れた子供が回避することができる。ま

た、ルーム内で大型ビジョンにより試合を放映することで、回避してきた子供はも

ちろん、保護者もここで一緒に試合観戦を楽しむことができる。

試合のない日も、大型プレイルームとして家族が一緒に楽しむことができる。

図 53 キッズルームイメージ

興行時以外の収益向上

興行開催時以外に集客し、収益を向上させるためには、従来の山形にはなかった新た

な価値を提供する必要がある。

モノ消費を促すだけの商業施設では、既存のコンビニや SC と差別化を図ることがで

きず、集客は困難であると想定される。そのため、コト消費を重視し、街なか型は立地

を活かし”ついで”来場を促すアンカーテナント、郊外型は平日の仕事帰り等でも”目

的”を持った来場を促すことができるアンカーテナントを目指す必要があると考える。

<NDスタジアム 試合開始直後> <キッズルームイメージ>

<試合開始30分後>

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46

図 54 スタジアム来場者のポジショニング

① 興行開催時以外の収益向上(街なか型)

山形県は様々な観光資源を有し、「観光立県山形」の実現を目指している。イン

バウンドも含め、観光需要は今後も増加が予想される。

街なか型では、スタジアムをビジターセンター化し、各種情報の提供はもちろん

のこと、宿泊施設の予約からアウトドア用品レンタル、”手ぶら観光”の推進まで、

観光の価値向上を果たす機能・商品をワンストップで提供し、「山形に来たらまず

はここに立ち寄る」場所を目指す。

また、オープンテラスのカフェや山形の日本酒・ワインを取り揃えたダイニング

をテナントとしてビジターセンターを取り囲み、賑わいを創出する。

郊外型

スタジアム

街なか型

スタジアム

SC専門店

コンビニスーパー

駅前商店街

“目的”来場

“ついで”来場

コト消費

モノ消費

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図 55 ビジターセンターイメージ

② 興行開催時以外の収益向上(郊外型)

郊外型では、スポーツに特化したスタジアムを整備した場合、アンカーテナント

として、スポーツを”する”ことを楽しめる Fitness を想定している。

“するスポーツ”の魅力の1つである「リフレッシュ感」を最大限に引き出し、

「非日常感」を味わえるよう、Spa の充実を図り、ホテルライクな空間を提供する

ことを目指す。

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48

(5) 事業計画

街なか型と郊外型の収益構造の違い

街なか型は、(シーズン中も含め)メインスタンドのみを利用した興行収入、街なか立地

を活かした飲食店やビジターセンターによるテナント収入により、収益向上を図る。

郊外型(可動屋根)は、(シーズンオフを中心に)大規模なコンサートやコンベンションに

よる興行収入、Spa&Fitness によるテナント収入により、収益向上を図る。

郊外型(可動屋根)は街なか型に比べ収益は大きくなるが、スタジアム規模及び可動屋根

維持費により売上原価も大きくなる想定である。

図 56 街なか型・郊外型の収益構造の違い

プロ利用

アマ利用

ネーミングライツ

広告看板

利用料(スポーツ)

利用料(その他興行)

広告料テナント料

コンコース売店

街なか型

44.6

30

43

4.515

プロ利用

アマ利用

ネーミングライツ

広告看板

利用料(スポーツ)

利用料(その他興行)

広告料テナント料

コンコース売店

郊外型(可動屋根)

44.6

47.5

43

4.412

(単位:百万円)

コンサート等:15×1回=15 コンサート等(メインスタンドのみ):5×3回=15

飲食店:1.8/年×5店舗=9 ビジターセンター:6/年

コンサート等:20×2回=40 コンベンション等:0.5×15日=7.5

Spa&Fitness:12/年計.137百万円

計. 151百万円

売上原価

売上原価

133

149

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損益計画

指定管理料等については、原則、公共的用途に関わる施設部分のみの管理料とし、街なか

型は「防災機能」「ビジターセンター機能」に係る施設部分、郊外型は「防災機能」に係る

施設部分の管理料を想定している。営業利益で、街なか型は 22 百万円、郊外型(可動屋根)

は 16 百万円の利益創出を目指す。

図 57 損益計画(初年度)

(単位:千円)

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50

(6) 経済効果の推計

経済効果推計の考え方

新スタジアム建設に係る経済効果推計は、大きく「スタジアム建設に係る経済効果」と

「スタジアム建設後の施設運営維持に係る経済効果」の2つがあり、これらについて山形

県全体に係る経済効果を推計する。

また、新スタジアム設置による観客数増を想定した運営時の需要及び新スタジアムによ

るサービスの需要も合わせて推計する。

図 58 経済効果推計の考え方

新スタジアム建設に係る経済効果推計では、山形県の産業連関表を用いた一般的な算出

手法により、経済効果を推計する。

図 59 建設関連・施設運営維持需要の経済効果推計ロジック

<需要>

スタジアム建設関連・運営維持需要

スタジアム建設効果と建設後の施設運営による効果の2つを推計する。

スタジアムのサービス提供等による需要

新スタジアムによる観客数増を想定した運営時の需要、

新スタジアムによる新サービスの需要を推計する。

<新規需要>

スタジアム建設関連支出 施設運営維持

スタジアム建設効果と建設後の施設運営による効果の2つを推計する。

<直接効果>

直接効果

自給率 →自給できない部分は除外する

新規需要額に対して自給率を考慮することで、直

接効果を実態に合わせる。

<1次波及効果>

1次波及効果

直接効果により需要が増加した部門が他の部門

の経済効果を誘発した額

(例:建設作業員が食事をするために蕎麦屋を

利用→67 対個人サービスを誘発

<2次波及効果>

2次波及効果

雇用者所得から発生する消費がもたらす経済効

果を誘発した額

(例:可処分所得から家計等の受取分を控除

し、最終消費支出に消費性向を乗じた額)

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経済効果推計(スタジアム建設・施設運営維持)

新スタジアム建設・施設運用維持に係る経済効果推計結果を見ると、新スタジアムの建

設による新規需要(直接的な投資)約 64 億 9700 万円から 91 億 6,400 万円に対して、直接

効果、一次波及効果、二次波及効果を合計した生産誘発額は 89 億 7400 万円から 129 億 7700

万円が見込まれる。また建設、運営維持管理(1 年)を合計した経済波及効果は、91 億 1600

円から 131 億 2900 万円が見込まれる。

表 4 スタジアム新設時の経済波及効果

費目 建設効果 運営効果

(単年)

合計 算出式

A:新規需要(億円) 64.97~91.64 1.33~1.51 66.30~93.15

B:直接効果(億円) 56.39~81.75 0.91~0.97 57.30~82.72

C:一次波及効果(億円) 18.90~26.66 0.27~0.30 19.17~26.69

D:二次波及効果(億円) 14.45~21.37 0.24~0.26 14.69~21.63

E:生産誘発額(億円) 89.74~129.77 1.42~1.52 91.16~131.29 E=B+C+D

F:労働誘発効果(人) 772.23~1160.06 12.19~13.03 784.42~1173.09

経済効果推計(スタジアムのサービス提供等による需要)

新スタジアム新設による観客数増加率を1.4倍と仮定した場合に得られるチケット収

入、飲食・グッズ等需要、その他消費(宿泊等)を算出すると、年間 11 億円程度(純増分

は4億円弱)の経済効果が見込まれる。

表 5 スタジアムのサービス提供等による需要(年)

費目 需要額(億円) 備考

A:チケット需要 4.19 シーズンシート含む

B:飲食・グッズ需要 2.12

C:その他消費 4.00 交通費・宿泊等含む

D:スタジアム新サービス(テナント料) 0.32~0.40

E:スタジアム新サービス(イベント等) 0.30~0.47

F:合計/年 11.01~11.10

新スタジアム建設・運営による総需要

スタジアム関連支出・施設運営維持需要とスタジアムのサービス提供等による需要を合

計すると、10 年間で 214 億 400 万円から 255 億 9700 万円の経済効果が見込まれる。

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図 60 新スタジアム建設及び運用維持(10 年間)に係る総需要

建設需要

89.74~129.77

維持管理需要

14.2~ 15.2

チケット需要

41.9

飲食・グッズ需要

21.2

その他消費 40

テナント料等 3.2~4 イベント等 3~4.7

スタジアム建設による総需要

(10年の運用含む)

214億 400万円~

255億9700万円

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平成28年度観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(魅力あるスタジアム・アリーナを核としたまちづくりに関する計画策定等事業)(1)報告書

平成29年12月15日

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目次

I. はじめに

II.山形の地域づくりの方向とスタジアム

III.スタジアムのモデルスタディ

IV.事業計画

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I. はじめに

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Ⅰ はじめに1.新スタジアムの検討状況と本報告書の位置づけ 山形県内では、2016年11月に地域経済を担う民間企業やスポーツ団体からなる委員により新スタジ

アム推進事業体設立検討委員会が設立された。同検討委員会では、新スタジアムの計画策定、事業化支援、設計・建設及び運営の事業を行う新会社の設立を決定し、2017年9月に新スタジアム事業推進を目的とする民間100%出資の株式会社[新スタジアム推進事業株式会社]が設立された。これは我が国で初の試みである。

本報告書では、これらの経緯を踏まえ、新たなスタジアムがまちを活性化させ、活力あるまちがスタジアムの円滑な経営を支えるという好循環の構築に向けた各種検討を、計画として取りまとめる。

モンテディオ山形サポーターミーティング等にて新スタジアム等の議論が活発化する

山形市長が山形市内にモンテディオ山形のスタジアムを建設したいとの考えを表明したところ、天童市議会は本拠地の存続などを

求める要望書を山形県知事に提出する旨の議案を全会一致で可決

県サッカー協会や地域経済を担う民間企業、有識者及び一般の方により新スタジアム構想検討委員会を組織し議論を重ね、”

新スタジアム整備検討に基づく構想書~スタジアム整備検討の基本的骨格について「スタジアムは地域活性化の新たな起爆剤」

~”を公表

モンテディオ山形に「新スタジアム推進室」、取締役会に「新スタジアム推進に係る作業部会」を設置し、以下の方針を決定

1. 構想実現には、スタジアム建設・運営を目的とした推進事業体が必要であること

2. 推進事業体は、オール山形で推進できる組織を目指すこと

3. 推進事業体設立に向け、設立委員会の立ち上げ準備を進めること

地域経済を担う民間企業やスポーツ団体からなる「新スタジアム推進事業体設立検討委員会」を設立

新スタジアムの計画策定、事業化支援、設計・建設及び運営を事業とする新会社の設立が決定

2013

~15年

2012年

2016年

2017年

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II. 山形の地域づくりの方向とスタジアム

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Ⅱ 山形の地域づくりの方向とスタジアム1.県における地域づくりの方向

(1)山形県総合発展計画(長期構想)

山形県では、平成22年3月に中長期的な県づくりの指針として「第3次山形県総合発展計画(長期構想)」策定した(計画期間:平成22年度から概ね10年)。

「少子高齢化を伴う人口減少」「ICTの進歩と社会経済のグローバル化の拡大」「環境へ資源面での制約の高まり」「暮らしの様々な不安の顕在化」といった山形県を取り巻く環境の変化に対応すべく、人材を始めとした「未来に向けた発展の源泉」を「生み・育て・活かす」ことを基本的な考え方に据えた計画となっている。

出典:第3次山形県総合発展計画長期構想(概要版)

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Ⅱ 山形の地域づくりの方向とスタジアム1.県における地域づくりの方向

(1)山形県総合発展計画(短期アクションプラン)

「第3次山形県総合発展計画(長期構想)」では、短期アクションプランを3年ごとに策定し、長期構想の実現へとつなげている。

平成29年3月にとりまとめられた総合発展計画の実施計画「短期アクションプラン(平成29年度~32年度)」では、7つのテーマについて取り組むことしており、このうちスポーツについては、人づくり(テーマ1)や観光立県(テーマ5)を支える役割として位置づけられており、地域活性化や交流人口の拡大に資する取組みとされている。

テーマ1 郷土愛を育み未来を築く子育て支援・多彩に

活躍する人づくり

<施策5 文化・芸術、スポーツの振興>

(3)文化・芸術、スポーツを活用した地域活性化

• 県内のプロスポーツ等を活用した地域主体の賑わいづくりへの支援の推進

• 合宿やイベントの誘致拡大など、スポーツコミッションによる取組みの推進 など

テーマ5世界に誇る山形の魅力を発信し国内外の旺盛な活力を

引き込む「観光立県山形」の確立

<施策4 インバウンド推進による交流人口の拡大>

(3)観光誘客やビジネス機会を創出する国際交流の拡大

• 文化や教育、スポーツなど、多様な分野における交流への支援の展開 など出典:第3次山形県総合発展計画短期アクションプラン(平成29年度~32年度)

<山形県総合発展計画における“スポーツ”の位置づけ>

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Ⅱ 山形の地域づくりの方向とスタジアム2.県における地域づくりの方向(2)やまがた創生総合戦略

県内人口は、自然減少と社会減少の双方が加速しており厳しさを増している。このため山形県では、人口の減少を県政の最重要課題として捉え、積極的に対策に取組んでいる。

平成27年10月には「やまがた創生総合戦略」を県が策定し、「人口減少問題の克服」と「成長力の確保」に向け、4本の基本目標と15の主要プロジェクトを掲げている。

この「やまがた創生総合戦略」においても、スポーツに係る施策が数多く盛り込まれている。具体的には、観光を通じての雇用の創出や、地域への愛着・誇りの醸成などの役割が期待されている。

出典:やまがた創生総合戦略

<「やまがた創生総合戦略」における、スポーツが関連する施策(抜粋)>

大項目 項目 施策名

《基本目標1》豊かな山形の資源を活かして雇用を創出

(2)観光立県山形で「しごと」を創出

情報発信の強化や近隣県との連携などにより海外等からの観光誘客を促進→スポーツ大会や事前合宿等の誘致を促進

山形の魅力を活かした先導的ツアーを推進→スポーツツーリズム(マラソン、W杯ジャンプ、プロスポーツなど)

《基本目標4》安心と活力ある地域を創出

(1)文化等を通して地域への愛着・誇りを醸成

芸術文化団体等による子どもの頃から伝統・文化・スポーツに触れる機会を拡大→夢や希望、郷土への自信や誇りを抱かせる競技スポーツを推進、地域のスポーツニーズに応える総合型地域スポーツクラブの活動支援

主要プロジェクト

主要プロジェクト2観光立県山形で「しごと」を創出

山形の魅力を活かした先導的ツアーを推進→山形ならではのスポーツ観戦と周遊観光を組合せた新たなツアー

主要プロジェクト12文化等を通して地域への愛着・誇りを醸成

芸術文化団体等による子どもの頃から伝統・文化・スポーツに触れる機会を拡大→スポーツに親しむ気運の醸成、スポーツ環境の整備促進など、総合型地域スポーツクラブ活動への支援

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Ⅱ 山形の地域づくりの方向とスタジアム3.スタジアムは山形の地域活性化・地域創生の有効な手立てのひとつ

山形県では、これまでも少子高齢化社会の到来などを踏まえつつ、地域活性化や交流人口の拡大、地域への愛着・誇りの醸成といった視点からスポーツの振興を行っている。

一方、国の「スタジアム・アリーナ改革」や日本政策投資銀行の調査が示すように、スタジアムには、交流人口を生み出すとともに、周辺地域への経済効果、地域住民・地域企業に対する利便性の向上などをもたらす力が期待される。

本業務では、これらを踏まえ、「スタジアムは地域活性化や地方創生の有効な手立てのひとつ」であると考え、本県において新しいスタジアムを建設する際の、スタジアム経営のあり方やまちづくりの方向について検討をすすめることとした。

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III.スタジアムのモデルスタディ

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Ⅲ スタジアムのモデルスタディ1.モデルスタディの前提条件

(1)JリーグホームスタジアムとしてのNDソフトスタジアムの課題

NDソフトスタジアム山形は、山形県におけるスポーツ振興の中心的な施設として、これまでも県民に親しまれるとともに、Jリーグクラブモンテディオ山形のホームスタジアムとして活用されている。

一方、同スタジアムは、国体標準で整備されており、Jリーグクラブライセンス基準に適合していない項目も見られる。

Jリーグクラブライセンススタジアム検査要項+

検査状況 抜粋を挿入(2016年版?)

出典:「株式会社モンテディオ山形ウェブサイト」、「Jリーグウェブサイト」

<NDソフトスタジアム>

必要とされる設備 内容 施設整備状況

1.入場可能者数 J1では15,000人以上、J2は10,000人以上(芝生席はカウントしない)

満たしている(20,772人入場可能)

2. 座席 椅子席で10,000席以上の座席があること(ベンチシートは1席あたりの幅を45cm以上とする)どの席からも、ピッチ全体が見渡せること

満たしている(観客席:20,664席)

3. 屋根 新設及び大規模改修を行うスタジアムについては、原則として屋根はすべての観客席を覆うこと

屋根は一部のみ設置されており、雨(雪)を防ぐことができない。(3分の1以下であり制裁措置対象)

4. 照明 ピッチ内のいずれの個所において照度1,500ルクス以上の明るさを保持し、均一であること

満たしている

5. トイレ 1,000人の観客に対し、少なくとも洋式トイレ5台、男性の観客1,000人に対し、男性用小便器8台を備えること

満たしている(ただし60%入場ルール適用による)

<2016年度のJリーグクラブライセンス検査結果(抜粋)>

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Ⅲ スタジアムのモデルスタディ1.モデルスタディの前提条件

(2)街なかと郊外とでスタジアム整備のモデルスタディを検討

Jリーグクラブライセンス基準を満たす新サッカースタジアムの整備にあたっては、スタジアムの持つ「交流人口を拡大させる力」と既存の地域資源とを連携し、相乗効果を発揮させる視点が重要となる。

国等が推進する「スマート・ベニュー構想」においても、スタジアムやアリーナが、コンパクトシティ化や中心市街地活性化を先導することが強調されている。山形県においてもスタジアムの整備が、これらの政策・施策を実現するための、強力な手立てのひとつとなると考えられることから、街なかにおけるスタジアム整備についてモデルスタディを実施する。

一方、地方都市のライフスタイルを考慮すると、自動車での来場が相当の割合を占めることが想定され、その円滑な誘導は必須の課題となる。また街なかにおいては、スタジアム建設に必要な一団の用地の取得が、円滑に進まないことも想定される。このため、本事業では、郊外におけるスタジアム整備のイメージについても検討し、スポーツ、防災といった都市機能の充実による地域活性化の方向についてモデルスタディを実施する。

公共交通の利便性が相対的に低い

暮らしやすさの維持・創造、魅力づくりが課題

総じて、幹線道路、高速等のアクセスに優れる

住宅、商業に加え、エリアによってはスポーツ、医療、学校等が立地

郊外

用地が取得しやすく、取得費が低い

駐車場を確保しやすい

鉄道やバスなど公共交通の利便性が高い

市街地の活性化が課題

総じて、幹線道路、高速等のアクセスに優れる

観光資源や飲食・サービス機能が立地

行政機能や業務機能等が立地

公共交通

アクセス

主たる地域課題

周辺施設

土地の確保が容易ではなく、取得費が高い用地

自動車交通については渋滞や駐車場の確保等が課題となるケースがある

街なか

<スタジアム整備からみた街なかと郊外の比較>

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(3)モデルスタディにおける収容人数の設定

Jリーグは、収容人数15,000人以上のスタジアムの確保をJ1クラブライセンス交付の条件としている。また、日本サッカー協会は、スタジアム標準(ガイドライン)にて、J1の公式試合及びAFCチャンピオンズリーグの公式試合においては収容人数20,000人~40,000人のスタジアムを推奨している。

モンテディオ山形の公式試合において、観客動員数15,000人を超えた実績は過去13試合あり、新スタジアム建設によって観客数の大幅増も期待できる。さらに、サッカー五輪代表戦やコンサート等のイベントの開催まで視野に入れた場合、収容人数20,000人規模のスタジアムが望ましいと考える。

一方、街なかにおいては、広大な用地取得が困難であることが予想されるため、J1ライセンス最低基準の収容人数15,000人規模のスタジアムをモデルとして検証する。

Jリーグクラブライセンス交付規則• J1クラブ主管公式試合:15,000人以上• J2クラブ主管公式試合:10,000人以上

財団法人 日本サッカー協会 スタジアム標準• クラス1:20,000~40,000人

AFCチャンピオンズリーグ J1 五輪代表公式試合、親善試合 等

• クラス2:15,000~20,000人 J2 等

レギュレーション- 収容人数について抜粋

モンテディオ山形 実績- 観客動員数 15,000人以上の試合

新スタジアムにおけるスポーツ以外の新たな利用可能性

• コンサート• 大規模コンベンション 等

収容人数 20,000人規模のスタジアム(街なか型は用地取得を考慮し、15,000人規模にて検証)

直近のサッカー五輪代表戦・なでしこジャパン戦開催スタジアム

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ1.モデルスタディの前提条件

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(1)街なか型でのスタジアムの役割と、まちづくりの方向

山形県内においても、街なかでは、人通りや賑わい、居住人口の回復などといった再活性が大きな課題となっている。一方で、鉄道を始めとした公共交通の利便性や、商業業務機能や観光資源など既存の地域資源がコンパクトなエリアに集中して立地しているという特徴がある。

このため、街なかでスタジアムを中心としたまちづくりを進める際には、スタジアムの持つ広域的な“集客力”を活かし、人を集めるための起爆剤としてスタジアムを位置づけ、県内外からの交流人口を生み出していく。

具体的には、既存の市街地や周辺施設、公共交通拠点、既存の駐車場などと連携・連動したまちのトータルプロデュースを進めることで、歩行者を始めとした来街者の賑わいを再生し、スタジアム整備の効果をまち全体に波及させていくことが重要となる。

スタジアムを核としたまちづくりの方向

既存の市街地や周辺施設、公共交通

拠点、既存の駐車場などと連携・連動し

たまちのトータルプロデュースを進め、歩

行者の賑わいを生み出す

県内外からの充実したアクセス性を活か

し、スタジアム核とした広域的な交流人

口を生み出す街に人を集める

起爆剤となる

スタジアム

鉄道やバスなど公共交通の利便性が高い

市街地の活性化が課題

総じて、幹線道路、高速等のアクセスに優れる

観光資源や飲食・サービス機能が立地

行政機能や業務機能等が立地

公共交通

アクセス

主たる地域課題

周辺施設

土地の確保が容易ではなく、取得費が高い用地

自動車交通については渋滞や駐車場の確保等が課題となるケースがある

中心市街地の特徴

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ2.街なか型スタジアムのモデルスタディ

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地域づくりの戦略

街に人を集める起爆剤となるスタジアム

地域貢献の考え方

地域整備の方法

地域経営

アクセス

都市施設

整備手順

スタジアムの位置付け

用途

設置機能

(2)街なか型での地域づくりの戦略

スタジアムが人を集めるための起爆剤としての役割を担う、街なか型のスタジアム整備では、スタジアムに集まった来訪者がまちへと回遊し地域全体にスタジアムの整備効果が波及させることが重要となる。

歩行者の増加に向け、目的の施設に自動車等で直行するのではなく、鉄道駅やバスターミナル、街なかに散在する駐車場などから、歩いてスタジアムにアクセスする環境を整備する。また、継続的な来訪者の増加に向け、街路や路面店等歩行空間の充実を図り、魅力あるまちを演出することが必要である。

これらの取組みを進めるためには、まちとスタジアムとを一体的に運営する視点が重要となり、国などが推進するスマート・ベニュー構想にも取り入れられているエリアマネジメントを導入することを検討する。

目的

スマートスタジアム化の方針

街なかの交流人口増加と回遊性の復活

エリアマネジメント

公共交通・歩行者を重視

歩行空間の充実

スタジアムとアクセス歩行空間の先行的整備

多目的施設

商業、業務、観光サービス関連施設

恒常的に人を呼び込む

ICTを活用したまちと繋がる仕掛け

中心市街地の再活性化をスタジアムの集客を生かして解決する。

商店街等、スタジアム以外の地域団体と連携して魅力をトータルプロデュースするため、エリアマネジメントの概念を導入する。

賑わいを創出するため、歩行者が増えるよう配慮する。

駅や駐車場からスタジアムまで人が歩き、かつまちを回遊するよう、歩行空間の充実を図る。

地域にスタジアム整備のインパクトを波及させるために、歩行者空間の整備を優先的に実施する必要がある。

恒常的に人を呼び込むためには、プロスポーツ開催時以外においても人が訪れる施設とする。

スポーツ機能に加え、商業、業務、観光サービス等を導入する。

まちなか再生の起爆剤として、365日人が訪れる施設とする。

活性化に向け、まちとスタジアムとを情報で結ぶ。

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ2.街なか型スタジアムのモデルスタディ

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(3)街なか型での導入機能

スタジアムは、交流人口の拡大やスタジアム経営の安定化の観点から、サッカーなどプロスポーツに加え、ライブやコンベンション等を行うなど多目的利用を推進し、稼動率の向上を図る。加えて、商業、観光、業務等の機能が入居する複合施設化を併せて進め、365日人が集う施設としていく。

スタジアム周辺においては、スタジアムに連なる歩行空間の充実を図るため、デザイン性の高い舗装やストリートファニチャーを整備する。

また、スタジアムとまちをつなぐ役割としてICTを活用する。

導入機能

の方針

地域戦略 街に人を集める起爆剤となるスタジアム

スタジアム

フィールド

コンコース

併設施設

災害時

ICT

スタジアム周辺

サッカーの試合 ライブ・コンベンションなどの実施

地域避難拠点

交流人口の増加やスタジアム経営の安定化に向け、プロスポーツに

加え、ライブやコンベンションなどの開催により稼動率をあげる。

人口密度が高い反面、地震・火災への脆弱性が高い街なかにおける住民・就業者等の避難拠点機能を備える。

商業施設(ショップ、カフェ、レストランなど) 観光情報発信施設(ビジターセンター) 業務施設(市役所機能の一部、移転など)

街路等歩行空間の整備 コンコース:散歩・ジョギングコース

周辺の飲食店・駐車場の混雑状況の通知 周辺の飲食店からの商品デリバリー スタジアム・コンコースへのタッチパネル式のデジタル・

サイネージ設置 Beaconを活用した座席案内 集約型データセンターによる制御系/音声/映像

データの集中管理

恒常的に人を呼び込むとともに、テナント事業による経営の安定化の

視点から、コンコース等において商業、観光、業務等の機能を導入

する。

スタジアムに連なるまちの魅力の向上に向け、舗装、伝線地中化、ストリートファニチャー等の充実を図る。

まちからスタジアムへ人を誘導する仕掛け、スタジアムからまちへ人を引き出す仕掛けの充実を図る。

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ2.街なか型スタジアムのモデルスタディ

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(4)街なか型スタジアムの空間イメージ:機能配置~街との連携を重視~

人が集まり賑わいある空間とするため、道路に接しているエリアをイベント広場とし、まちとの一体感を醸成する。また、イベント広場に面した1階部分の附帯機能スペースを複合利用(商業/業務施設・ビジターセンター等)の場とし、365日まちとの間に人が行き交うスタジアムとする。

イベント広場

100m

スタジアムへのアクセス

付加機能スペースへのアクセス

<配置図>

< B1F平面図> < 1F平面図>

<2F平面図> < 3F平面図>

試合関係諸室

試合関係諸室

選手出入口

メディア出入口

INA A’

まちからの人の流れ

メインエントランス

付加機能スペース

付加機能スペース

IN

B’

コンコースコンコース

VIP席/記者席/放送席

大型映像操作室等

バックスタンドメインスタンド

※広大な用地取得が困難なことも予想されるため、本事業ではJ1ライセンス最低基準の収容人数15,000人規模のスタジアムとして検討を行った。

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ2.街なか型スタジアムのモデルスタディ

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(4)街なか型スタジアムの空間イメージ:運営を見据えた工夫

Jリーグではフィールドを天然芝とすることを義務づけている。しかし、天然芝は痛みやすく、試合後に養生期間を要することやイベント等での活用がしにくいなどの課題がある。

多目的利用を進めスタジアムの稼動率を上げるために、フィールド上に可動スクリーンと仮設舞台を設置し、芝を可能な限り傷つけずに、イベント等を開催できるよう建築面での工夫を行うこととした。

<A-A’ 断面図> <B-B’断面図>

コンコースコンコース コンコースコンコース

メインスタンド バックスタンド

VIP席/記者席/放送席

大型映像操作室等

バックヤード

バックヤード

仮設舞台

(屋根付)

可動スクリーン

仮設舞台

メインスタンド メインスタンド

<メインスタンドのみを利用してイベントを開催する場合>

なお、本県の冬季の気象条件をふまえ、屋根付きのスタジアムの検討を行ったが、周辺に住宅等が隣接する街なか型では、フィールドを覆う屋根を設けた場合、建築基準法に基づく高さ規制の制限を越えるケースが想定される。このため、本検討では、観客席のみを屋根で覆う方式を採用した。

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ2.街なか型スタジアムのモデルスタディ

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(4)街なか型スタジアムの空間イメージ:外観パースと活動イメージ

まちと連動した賑わいづくりをすすめるために、イベント広場では試合日のみならず、年間を通じて様々な催し物を開催する。

スタジアムの外から一部フィールド内をのぞき見ることが出来るようにすることで、サッカーに興味が

<鳥瞰図>

<イベント広場からの外観図> <メインスタンド裏からの外観図>

ない人も「今度来てみよう」と思うきっかけを創るなど、まちの賑わいをスタジアムに引き込む仕掛けを建築の中に組み込む。

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ2.街なか型スタジアムのモデルスタディ

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(1)郊外型でのスタジアムの役割と、まちづくりの方向

高度成長期に形成された郊外では、近年世代交代の時期を迎え、暮らしやすさの維持・創造が、全国的にも課題となっている。また郊外においては、街なかに比べ歴史・文化資源等の地域資源が少ないケースも多く、それぞれのエリアの特徴に合った魅力づくりを進めることが必要となる。

このため郊外で、スタジアムを中心としたまちづくりを進める際には、スタジアムの持つ“スポーツ”という点に着目し、“観るスポーツ”“自ら楽しむスポーツ”などを通してまちと暮らしの魅力づくりをすすめていく。広い空間を活かして、スポーツと親しむライフスタイルを先導することで、地域の新たな魅力づくりを推進する。また施設に、防災面での機能を付加し、安全・安心面の充実を図るなど都市機能の強化を行う視点が重要となる。

なお本業務では、全国的に限られた予算のなかで効果的・効率的なスポーツ施設運営が求められていることを念頭に、用地取得費が低い郊外型では、より低コストなスタジアム整備・運営の検討を行う。

スタジアムを核としたまちづくりの方向

公共交通

アクセス

主たる地域課題

周辺施設

用地

郊外の特徴

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ3.郊外型スタジアムのモデルスタディ

用地の低廉性等を活かし、低コストで地方都

市でも持続可能な運営を確立する。

低コストで

地方都市でも

展開可能な

スポーツ中心の

スタジアム

車でのアクセス性を念頭に、スポーツに

特化した広場・公園・スタジアムを作る。

公共交通の利便性が相対的に低い

暮らしやすさの維持・創造、魅力づくりが課題

幹線道路、高速等のアクセスに優れる

住宅、商業に加え、エリアによってはスポーツ、医療、学校等が立地

用地が取得しやすく、取得費が低い

駐車場を確保しやすい

“観る”“自ら楽しむ”スポーツなどにより

地域の魅力づくりを先導する。

防災性の強化により、地域の安全・安

心を推進する。

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広場や公園、周辺のスポーツ施設などとを一体化した運用を図るためには、街なかにおけるエリアマネジメントと同様に、多様な主体が連携しながら、トータルに地域の魅力を創出していくことが必要となる。近年、広場や公園、社会教育施設(動物園等)を公民連携型で運営するパークマネジメントの取組みが全国が進められており、本事業においてもその導入を視野に入れる。

また、用地取得費の低廉性を活かし、地方都市でも持続的に展開可能なスタジアムのモデルとなるよう、建設単価の低減に加え、防災機能やバス等の結節機能、広場・公園を活かしたレクリエーションなど、公的な役割をも担うスタジアムとしていく。

基本方針

地域戦略 スポーツにより地域に新たな魅力をつくるスタジアム

地域貢献の考え方

地域整備の方法

地域経営

アクセス

都市施設

整備手順

スタジアムの位置付け

用途

設置機能

目的

スマートスタジアム化の方針

低コストで持続可能なスポーツ施設の整備

パークマネジメント

自動車アクセスが中心

公園・スポーツ機能の充実

ニーズ変化に対応した段階整備

単機能(スポーツスタジアム)

1年中スポーツを楽しむことが出来る

スポーツを観る・楽しむ人を集める

ICTを活用した大規模演出や自動車での来場支援

スポーツと親しむライフスタイルを先導する。また、用地の低廉性を活かし、地方都市でも展開可能性の高いスタジアムのモデルとする。

利用者の利便性向上等にむけ、既存のスポーツ施設や、広場・公園などと連携した運用を行う。

自動車では、歩行者に比べ目的性の高い来場が多くなる。スポーツに特化し、ここしかない機能を備えることで、来場者を拡大する。

県内で他に比類のない、スポーツを観る、楽しむ機会を創出する。また防災・交通結節機能を併せて強化し、公的な役割も担う。

事業性に配慮し、必要最低限のスタジアム機能や公園機能の整備からスタートする。ニーズに応じて段階的に拡張等を図る。

スポーツスタジアムとしての機能に特化する。ただし、スタジアムで開催可能なライブ等については実施する。

冬場はスポーツイベントの開催やスポーツを楽しむ機会が限定される本県の特徴を踏まえ、1年中利用かのうな施設としていく。

車利用が多いこと、周辺地域への回遊等が想定しにくいことなどから、スポーツに特化したスタジアムとする。

広い空間を活かした大規模演出とともに、車による来場者の支援をICTの活用により充実させる。

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ3.郊外型スタジアムのモデルスタディ(2)郊外型での地域づくりの戦略

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(3)郊外型での導入機能

冬季は野外スポーツが限定されるという本県の特徴を踏まえ、一年を通してスポーツ観戦や競技を楽しむことができるよう、屋根付きのスタジアムとする。なお芝の養生の観点から、屋根は開閉式とする。

またスタジアムは、スポーツスタジアムとして役割を中心する。一方、稼動率の向上を図るため、過剰な投資が発生しないよう配慮しつつライブやコンベンション等の多目的利用をすすめる。

スタジアム周辺の広場・公園では、多様なスポーツやイベント等を楽しむことできるよう整備を進め、プロスポーツ開催時以外においても人が訪れるエリアとしていく。

開閉式屋根の設置 ライブ・コンベンションなどの実施

導入機能

地域戦略

スタジアム

フィールド

コンコース

併設施設

災害時

ICT

スタジアム周辺

災害物流拠点

冬場においてもスポーツを楽しむことが出来るよう、開閉式の屋根を設置する。また、過大な追加投資が発生しないよう配慮しつつ、スタジアムの多目的利用を進める。

幹線道路とのアクセスや街なかの入り口に位置する立地などを活かし、災害物流拠点としての機能を果たすことが出来るよう整備する。

フィットネス・トレーニング施設 スポーツ医療・科学の研究拠点施設

広場・公園 駐車場

大型ビジョン、プロジェクションマッピングによる演出 シャトルバスの発着時間の通知 ゲートレス駐車場スタジアム・コンコースへのタッチパネ

ル式のデジタル・ サイネージ設置 Beaconを活用した座席案内 集約型データセンターによる制御系/音声/映像

データの集中管理

スポーツにより地域に新たな魅力をつくるスタジアム

プロスポーツ開催時以外においても人が訪れるよう、スポーツを楽しむ

機能等を追加する。

恒常的に人を呼び込むため、多様なスポーツやイベント等を楽しむことができる空間をつくる。周辺にスポーツ施設が立地している場合には、それらとの一体的な運用を図る。

広い空間を活かした大規模演出として、大型ビジョンやプロジェクトマ

ッピングによる演出等を検討する。

車などによる来場者の支援として、ICTを活用した交通施策を実施

する。

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ3.郊外型スタジアムのモデルスタディ

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(4)郊外型スタジアムの空間イメージ:機能配置~周辺施設との連携を重視~

プロスポーツ開催日以外においても来訪者があるよう、広場・公園や既存の施設等と融合した施設配置を行う。また、自動車でのアクセスしやすいよう広い駐車場を確保するとともに、地域交通の利便性向上も兼ねてバスターミナル機能も設置する。

付加機能スペース

A’

<A-A’ 断面図> <B-B’ 断面図>

駐車場エリア

駐車場エリア

エントランスイベント広場

回転型開閉屋根(テント膜)

スタジアムへのアクセス

付加機能スペースへのアクセス<配置図>

試合関係者のアクセス

バスターミナル

(例)既存のスポーツ施設

(例)既存の広場・公園

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ3.郊外型スタジアムのモデルスタディ

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(4)郊外型スタジアムの空間イメージ:運営上の工夫と外観イメージ

冬場の県民のスポーツニーズに対応するとともに、施設の稼動率を高めるために、郊外型のスタジアムにおいては、フィールドを覆うことが可能な屋根を設置する。屋根は、芝への日照の確保などの必要性から、開閉型のものとする。

街なか型では、近隣の住宅等との関係から建築物の高さ規制がかかることが想定される。一方、周辺に建物が少なく、余裕を持った土地の確保できる郊外においては、フィールドまで覆う屋根をかけることが可能である。本モデルスタディでは、開閉に係るコストや高いシンボル性等を考慮し、回転型の開閉屋根を有するスタジアムとした。

<鳥瞰図> <イベント広場からの外観図><メインスタンド内観図>

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ3.郊外型スタジアムのモデルスタディ

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スタジアム周辺における

土地の確保

スタジアム規模

環境問題の回避・緩和

(1)Jリーグの試合開催に必要とされるスタジアムの基準

日本サッカー協会では2010年3月にサッカースタジアムの建設・改修にあたってのガイドラインとなる「スタジアム標準」を発行している。このガイドラインでは、J1、J2といったクラス別の収容規模を始め、スタジアムが備えるべき機能やアクセス等望ましい周辺環境の整備についても規定している。

アクセス

考慮・設置すべき事項

スタジアムの立地場所は以下のアクセス条件を満たすべきである。

• 鉄道・地下鉄など複数の公共交通利用の確保

• 幹線道路からのアクセスの利便性

• 歩行者導線の安全性、快適性の確保

出典:日本サッカー協会「スタジアム標準」

スタジアム建設で生じる以下の環境問題の周辺地域への影響の回避もしくは適切な分析・設計・運営管理に

より緩和する。

• 交通量の増加

• サポーターの往来による喧騒

• イベントによる騒音

• 照明による光害

• 試合開催時以外の閑散化

Jリーグの試合開催を前提とするスタジアムは、各クラスにおいて以下の規模を標準とする。

• J1:20,000~40,000人

• J2:15,000人~20,000人

スタジアムの周辺には以下を確保出来る十分な面積が必要である。

• 広く安全な屋外の導線エリア(活動エリア)

• サービス車両用の駐車スペース

• 各種施設の立地スペース

• 将来的な拡張や再開発に対応するための予備スペース

項目

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ4.スタジアムの立地場所の要件

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スタジアム周辺における

土地の確保

スタジアム規模

環境問題の回避・緩和

(2)スタジアム経営や地域活性化からの視点

将来にわたって活用されるとともに、地域から愛されるスタジアムとするためには、日本サッカー協会の「スタジアム標準」に加え、事業性(スタジアム経営の視点)と地域貢献(地域活性化の視点)を兼ね備えた立地選定を進める必要がある。

アクセス

スタジアム設置に向け考慮・設置すべき事項(日本サッカー協会「スタジアム標準」)

・鉄道・地下鉄など複数の公共交通利用の確保 ・幹線道路からのアクセスの利便性 ・歩行者導線の安全性、快適性の確保

・交通量の増加 ・サポーターの往来による喧騒 ・イベントによる騒音 ・照明による光害 ・試合開催時以外の閑散化

・J1:20,000~40,000人 ・J2:15,000人~20,000人

・広く安全な屋外の導線エリア(活動エリア) ・サービス車両用の駐車スペース

・各種施設の立地スペース ・将来的な拡張や再開発に対応するための予備スペース

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ4.スタジアムの立地場所の要件

出典:日本サッカー協会「スタジアム標準」

スタジアム経営の視点

地域活性化の視点

利用者数の確保

・Jリーグ開催時の集客力の維持・向上に向け、現状と同等以上のアクセスに優れること

・Jリーグ以外のスポーツ利用、イベント利用等が見込まれること

・プロスポーツやイベント開催時以外においても、来場者・利用者がいること

既存計画との調和・都市計画など、県の土地利用の方針と齟齬がないこと

・県・自治体の既存計画において、スポーツを核とした地域活性化(交流人口の拡大、観光等)の推進を位置づけていること

周辺地域との調和・県民や県外からの来訪者、県内企業・団体にとって利便性の高く、波及効果が期待できるエリアであること

・スタジアムと周辺環境との調和がとれること

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(2)街なか・郊外でのスタジアム立地場所の要件

事業性や地域貢献、Jリーグ基準をふまえ、街なかと郊外での望ましいスタジアム立地要件を検討した。

街なか型では、既存の地域資源との相乗効果や公共交通の利便性を重視し、商業・業務機能や観光資源が既に立地し、鉄道駅から歩いてアクセスできるエリアでのスタジアム立地が望ましい。

郊外型では、周辺環境との調和と新たな魅力創造との両立ができる場所が望まれる。

また街なか、郊外ともに、県等の既存計画との合致や県民の利便性・アクセスに優れることを重視する。

Ⅲ スタジアムのモデルスタディ4.スタジアムの立地場所の要件

郊外型スタジアムの立地場所の要件街なか型スタジアムの立地場所の要件

交流人口を創出し、地域の活性化を先導するスタジアム

スポーツにより地域の新たな魅力をつくるスタジアムスタジアムの役割

県の計画により、拠点性の高い中心市街地として位置づけられていること(都心核、交流核など)

既存の計画において、スポーツを中心とした地域活性化の推進を位置づけていること。

計画的な

位置づけ

Jリーグの試合開催時に、県民が来訪する際の時間距離が、現状と同等程度以下であること

Jリーグの試合開催時に、県民が来訪する際の時間距離が、現状と同等程度以下であること。

県民の

利便性

鉄道駅から徒歩圏であること。 周辺エリア内で必要な駐車台数を確保できること。

都市間を結ぶ主要な幹線道路と近接していること。 敷地内に駐車場を確保できること。

アクセス

候補地から徒歩圏において、商業・業務機能、観光資源が立地しており、スタジアムの立地と地域の既存機能との間に相乗効果が期待されること。具体的には就業者数が多く、県外からの滞在人口の多いエリアであること。

周辺の自然・生活・営農環境等と調和が確保できるエリアであること。具体的には、既成市街地内もしくはそれと隣接しており、既存の市街地の魅力創造につながるエリアであること。農用地解除を念頭に置く場合には、農地の連担性を損ねないこと。

周辺環境

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IV. 事業計画

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(1)実現に向けたイメージ

これまで、スタジアムビジネスモデルを大きく左右する立地条件(街なか・郊外)と、スタジアム空間イメージ(非可動屋根・開閉式可動屋根)を定義した。街なか型においては、用地確保の観点から非可動屋根との組み合わせとしたが、用地確保が可能であればこの限りでない。そのため、スタジアムの実現に向けたイメージとしては、スタジアムの空間イメージ(非可動屋根・可動屋根)と、立地に紐づくビジネスモデル(街なか・郊外)の組み合わせとなる。

Ⅳ 事業計画1.スタジアムの空間イメージとビジネスモデルの組み合わせ

非可動屋根型

全席屋根付き

15,000人

収容のスタジアム

街なかビジネスモデル

ビジターセンター化(宿泊施設の予約、アウト

ドア用品レンタル、手ぶら観光の推進)

→山形に来たらまずはここに立ち寄る場所

可動屋根型

可動屋根付き

20,000人

収容のスタジアム

郊外ビジネスモデル

アンカーテナントとして、スポーツを”する”ことを

楽しめるFitnessを併設。仙台、山形に無い「

非日常感」を味わえるような空間の提供

スタジアム空間イメージ ビジネスモデル(街なか・郊外)

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(1)事業スキームの検討

山形県は、多くの地方都市と同様に地域の経済基盤が強くないため、吹田スタジアムのように民間によるスタジアム建設費の調達(寄付など)は困難であることが推測される。

一方、運営の観点からは、事業運営を見据えた設計・建設が必要である。そのため、設計・建設時から民間事業者が参画し、そのノウハウを活用していくことが重要である。これらを考慮しながら事業スキームについて今後深掘りする必要がある。

BOO

BOT

BTO

公設・民営

(DBO)

公設・公営

P

F

I

概要

公共が資金調達主体から運営維持まで原則全てを担う。(運営・維持は指定管理制度にて民間への委託も可能)

公共が資金調達を担う。民間に施設の設計・建設、運営等を包括的に委託する

民間が資金調達・建設を担う。完成後は所有権を公共に移転し、その後は一定期間、運営を同一の民間に委ねる

民間が施設を建設・維持管理・運営し、契約期間終了後に公共へ所有権を移転する

民間が施設を建設・維持管理・運営し、契約期間終了後も民間が施設を所有し続ける

所有(建設時)

所有(運営時)設計・建設 運営・維持資金調達

公共 公共 公共 公共公共

公共 民間 公共 公共 民間

民間 民間 民間 公共 民間

民間 民間 民間 民間 民間

民間 民間 民間 民間 民間

民間

Ⅳ 事業計画1.事業スキーム

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(1)建設コストの考え方

サステナブルなスタジアムを実現するためには、建設コストの低減が求められる。

①街なか型はスケールメリットが小さく(座席数15,000席)、②郊外型はドーム可動屋根設置のコストが上乗せされるが、両スタジアムともに1席当たりの建設コストを50万円/席以下に抑えた。

また、郊外型については、より低コストを求めた③可動屋根のない(観客席のみ屋根設置)ケースも加え、建設コストを算出した。

サッカー専用競技場 建設コスト比較

Ⅳ 事業計画2.建設コスト

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総工費

① 街なか型(非可動屋根) :6,498百万円

② 郊外型(可動屋根) :9,164百万円

③ 郊外型(非可動屋根) :6,444百万円

1席当たりの建設コスト

① 街なか型(非可動屋根) :433(千円/席)

② 郊外型(可動屋根) :458(千円/席)

③ 郊外型(非可動屋根) :322(千円/席)

Ⅳ 事業計画2.建設コスト

※用地取得及び屋外付帯部分(舗装・植栽等)のコストは含まない

(2)建設コストの試算

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(1)収益モデルの検討

スタジアムの収益構造は、フィールド/スタンドにおける利用料(スポーツ利用)・利用料(その他興行利用)・広告料・コンコース売店、付帯施設におけるテナント料の5つに大別することができる。

スタジアムビジネスの収益面での成功要因は、フィールド/スタンドにおいては ①稼動率を高めること、②興行1回当たりの収益を高めること、付帯施設においては ③稼動日以外の集客・収益を確保することの3点であると考えている。

プロ利用

アマ利用

ネーミングライツ

広告看板

利用料(スポーツ)

利用料(その他興行)

広告料

テナント料

コンコース売店

スタジアムの収益構造 成功要因

フィールド

/スタンド

付帯施設

フィールド/スタンド

稼動率の向上

成功要因①

1興行当たりの収益向上

成功要因②

付帯施設

興行開催時以外の集客・収益確保

成功要因③

×

収益向上

Ⅳ 事業計画3.収益モデル

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Ⅳ 事業計画3.収益モデル

(2)収益向上に向けた取組み –稼動率の向上

稼動率を向上させるために、街なか型では「メインスタンドのみを利用した興行の開催用設備」、郊外型では「可動屋根」の設置を計画した。

街なか型:ステージの大部分をピッチ外に設けることにより、シーズン中でも芝を痛めることなく5,000人規模のコンサート等を開催することが可能になる

郊外型:可動屋根の設置により、シーズンオフのコンベンション利用やコンサート等を開催することが可能になる

また、興行用機材搬入にも対応可能な設計を想定している。

街なか型 郊外型

仮設舞台と可動スクリーン設置による「メインスタンドのみを利用し

た興行開催」

可動屋根設置による「コンベンション利用やコンサート等開催」

<平面図>

<断面図>

<断面図>

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Ⅳ 事業計画3.収益モデル

(2)収益向上に向けた取組み –1興行当りの収益向上

1興業当たりの収益を考えた場合、スポーツ以外の興行においては、開催する興行のコンテンツに収益が左右される要素が強いと想定される。そのため、 恒常的に1興行当たりの収益を向上するためには、主たる利用者として想定されるプロサッカークラブの試合における集客力を強化する必要がある。

プロサッカークラブの試合における集客力が向上することで、広告料の向上やコンコース売店の向上、テナント料の向上、また、プロ利用による利用料の増加も見込め、スタジアムの収益全体の底上げになることが推察される。

プロ利用

アマ利用

ネーミングライツ

広告看板

利用料(スポーツ)

利用料(その他興行)

広告料

テナント料

コンコース売店

「プロサッカークラブの試合における集客力向上」による相乗効果

集客力向上

スタジアム価値向上

売上向上賃料向上

開催コンテンツにより

収益が左右される

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(1)街なか型と郊外型の収益構造の違い

街なか型は、(シーズン中も含め)メインスタンドのみを利用した興行収入、街なか立地を活かした飲食店やビジターセンターによるテナント収入により、収益向上を図る。

郊外型(可動屋根)は、(シーズンオフを中心に)大規模なコンサートやコンベンションによる興行収入、Spa&Fitnessによるテナント収入により、収益向上を図る。

郊外型(可動屋根)は街なか型に比べ収益は大きくなるが、スタジアム規模及び可動屋根維持費により売上原価も大きくなる想定である。

プロ利用

アマ利用

ネーミングライツ

広告看板

利用料(スポーツ)

利用料(その他興行)

広告料テナント料

コンコース売店

街なか型

44.6

30

43

4.515

プロ利用

アマ利用

ネーミングライツ

広告看板

利用料(スポーツ)

利用料(その他興行)

広告料テナント料

コンコース売店

郊外型(可動屋根)

44.6

47.5

43

4.412

(単位:百万円)

コンサート等:15×1回=15 コンサート等(メインスタンドのみ):5×3回=15

飲食店:1.8/年×5店舗=9 ビジターセンター:6/年

コンサート等:20×2回=40 コンベンション等:0.5×15日=7.5

Spa&Fitness:12/年計.137百万円

計. 151百万円

Ⅳ 事業計画4.事業計画

売上原価

売上原価

133

149

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Ⅳ 事業計画5.経済効果の推計

(1)経済推計の考え方

新スタジアム建設に係る経済効果推計は、大きく「スタジアム建設に係る経済効果」と「スタジアム建設後の施設運営維持に係る経済効果」の2つがあり、これらについて山形県全体に係る経済効果を推計する。

<需要>

スタジアム建設関連・運営維持需要

スタジアム建設効果と建設後の施設運営による効果の2つを推計する。

スタジアムのサービス提供等による需要

新スタジアムによる観客数増を想定した運営時の需要、

新スタジアムによる新サービスの需要を推計する。

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Ⅳ 事業計画5.経済効果の推計

(2)経済効果推計(新スタジアム建設・運営)

新スタジアム建設・施設運用維持に係る経済効果推計結果を見ると、新スタジアムの建設による新規需要(直接的な投資)約64億9700万円から91億6,400万円に対して、直接効果、一次波及効果、二次波及効果を合計した生産誘発額は89億7400万円から129億7700万円が見込まれる。また建設、運営維持管理(1年)を合計した経済波及効果は、91億1600円から131億2900万円が見込まれる。

<スタジアム新設時の経済波及効果まとめ>

費目 建設効果 運営効果(単年)

合計 算出式

A:新規需要(億円) 64.97~91.64 1.33~1.51 66.30~93.15

B:直接効果(億円) 56.39~81.75 0.91~0.97 57.30~82.72

C:一次波及効果(億円) 18.90~26.66 0.27~0.30 19.17~26.69

D:二次波及効果(億円) 14.45~21.37 0.24~0.26 14.69~21.63

E:生産誘発額(億円) 89.74~129.77 1.42~1.52 91.16~131.29 E=B+C+D

F:労働誘発効果(人) 772.23~1160.06 12.19~13.03 784.42~1173.09

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Ⅳ 事業計画5.経済効果の推計

(3)経済効果推計(スタジアムのサービス提供等による需要)

新スタジアム新設による観客数増加率を1.4倍と仮定した場合に得られるチケット収入、飲食・グッズ等需要、その他消費(宿泊等)を算出すると、年間11億円程度(純増分は4億円弱)の経済効果が見込まれる。

<スタジアムのサービス提供等による需要(年)>

費目 需要額(億円) 備考

A:チケット需要 4.19 シーズンシート含む

B:飲食・グッズ需要 2.12

C:その他消費 4.00 交通費・宿泊等含む

D:スタジアム新サービス(テナント料) 0.32~0.40

E:スタジアム新サービス(イベント等) 0.30~0.47

F:合計/年 11.01~11.10

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建設需要

89.74~129.77

維持管理需要

14.2~ 15.2

チケット需要

41.9

飲食・グッズ需要

21.2

その他消費 40

テナント料等 3.2~4 イベント等 3~4.7

Ⅳ 事業計画5.経済効果の推計

(4)新スタジアム建設・運営による総需要

スタジアム関連支出・施設運営維持需要とスタジアムのサービス提供等による需要を合計すると、10年間で214億400万円から255億9700万円の経済効果が見込まれる。

スタジアム建設による総需要

(10年の運用含む)

214億 400万円~

255億9700万円