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世界の中の日本 2008年の内外景気と今後の企業経営 2008.1

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世界の中の日本

2008年の内外景気と今後の企業経営

2 0 0 8. 1

世界の中の日本 2008年の内外景気と今後の企業経営内外の景気情勢

1-1 世界経済は前半減速するも、後半には増勢

1-2 米政府、FRBは利下げなどで景気維持へ

1-3 依然底堅い米国の雇用・所得環境

1-4 ユーロ圏は成長鈍化へ

1-5 拡大を続けるアジア経済

1-6 高成長維持の中国経済

1-7 チャイナマネーの影響力増大

1-8 日本の生産は踊り場を脱し拡大へ

1-9 多様化する日本の輸出先

1-10 日本の内需回復は遅れ、

利上げペースは緩やか

C O N T E N T S

1

今後の企業経営

2-1 2020年の世界経済予測 

2-2 NOMURA400の地域別収益内訳

2-3 アジア事業等へのシフトを急ぐ

2-4 中国の「サービス経済化」もチャンス

2-5 国内は産業再編とM&Aの活用

2-6 金融資産大国を生かす

2-7 割安圏にある株価、改善余地を残すROE

2-8 自社株買いの増加と株式持ち合いの一部復活

2-9 改めて問われる企業年金運営のあり方

2

AN3666-00_01_本文_01.doc 2008/01/15

1

(前年度比、前年比%)

2006 2007(推) 2008(予)

米国

ユーロ圏

ドイツ

英国

日本 (年度)

アジア

中国

エマージング諸国

2.9 2.3 2.8

2.9 2.8 1.8

3.1 2.7 1.7

2.8 3.0 1.7

2.3 1.5 2.3

8.1 8.3 7.6

11.1 11.4 10.1

6.6 7.1 6.6

2007年は米国のサブプライム・ローン問題に端を発する予

想外の金融市場の混乱を受けて、世界経済の先行きに対する

懸念が強まった。2008年前半はその後遺症が残るが、後半

には、日米を中心に世界経済は再び増勢を取り戻そう。

中国を含むエマージング諸国は、同問題発生後も堅調さを

維持している。原油価格上昇も産油国の経済を潤し、かつ消

費国への資金環流を通じて、かつてほど世界経済の脅威では

なくなっている。

米国では住宅市場の調整は続くが、高い賃金上昇率など所

得環境の堅調さによって個人消費の失速は回避されよう。金

融緩和効果が現れることで、2008年後半には成長率は徐々

に高まろう。

世界経済見通し

(注)1.日本は年度値、日本以外は暦年値の実質GDP成長率。

2.アジア:韓国、中国、香港、台湾、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シン

ガポール、タイ。

3.エマージング諸国:インド、トルコ、ブラジル、アルゼンチン、ロシア。

4.エマージング諸国の成長率は、2005年の米ドル換算の名目GDP比を用いた、各国実

質GDP成長率の加重平均値。

5.ただしインドの実質GDP成長率は年度ベース(4月~3月)を用いた。

(出所)野村證券金融経済研究所

内外の景気情勢 1-1 世界経済は前半減速するも、後半には増勢

AN3666-00_01_本文_01.doc 2008/01/15

2

対応策

1 中央銀行による流動性供給

2 利下げによる景気・資産価格下支え

3大手金融機関の資本増強策(キャピタルクランチの予防)

4 サブプライムローンの金利上昇凍結

5 GSE住宅ローン買取額拡大策

(注)GSE(Government Sponsored Enterprises)とは米連邦住宅抵当金庫や米連邦住宅貸付

抵当公社

(出所)野村證券金融経済研究所

1-2 米政府、FRB は利下げなどで景気維持へ

米国では住宅価格の下落から、サブプライムローンの延滞

率の上昇、証券化商品の格下げ・価格急落、金融機関の巨額

損失計上とサブプライムローン問題は、大きな広がりを見せ

ている。

すでに、FRBは、流動性の供給と複数回の利下げにより

この問題に対処しているが、金融市場の反応を見る限り、ま

だ十分とは言えない情勢である。

その意味で、大手金融機関の資本増強策、サブプライムロ

ーンの金利上昇の凍結策、GSEの住宅ローン買取額の拡大

など、米国政府が支援する対応策も重要である。

これらを総動員して、住宅価格の大幅な下振れを避け、米

景気の維持を図ることになろう。

サブプライムローン問題への対応策

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3

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

10

12

97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07

消費者物価指数

税・社会保障負担雇用者報酬以外の所得

雇用者報酬実質可処分所得

(前年比寄与度%ポイント)

(年)

1-3 依然底堅い米国の雇用・所得環境

政策を総動員することにより、住宅価格の大幅下落という

事態が避けられるとすれば、米国景気の鍵を握る個人消費動

向を左右するのは雇用・所得環境となろう。

可処分所得は安定的な増加基調を辿っている。背景には、

雇用者数が底堅い動きを続ける中、労働需給がタイトな状況

が続いており、賃金が増加基調を辿っていることがあろう。

雇用者数は、住宅・金融関連の雇用は抑制されているものの、

その他サービス業を中心に堅調が維持されている。

これに物価安定基調が加わることで、割合良好な所得環境

が維持されており、個人消費が支えられている。

米国の可処分所得の要因分解

(出所)米国労働省資料より野村證券金融経済研究所作成

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4

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

01 02 03 04 05 06 07 08

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

実質GDP(左軸)

実質政策金利(右軸、逆目盛)

(前年比%)

(年)

(%)

(注)1.実質GDPはEU27カ国ベース。後方3期移動平均を用いた。

2.実質政策金利=(最低応札金利の期末値)-(消費者物価指数上昇率)。6四半期先行。

(出所)欧州統計局、野村證券金融経済研究所

1-4 ユーロ圏は成長鈍化へ

今まで好調な動きを示していたユーロ圏経済は、2008年

には増勢を落とすと見込まれる。

ユーロ圏経済が当面増勢を落とすと考える理由は、これま

で行われてきた金融引き締め策の影響が顕在化してくるこ

とである。欧州中央銀行(ECB)は2005年12月以降、政策

金利を継続的に引き上げてきた。2007年12月時点での累積利

上げ幅は2.0%ポイントに達する。

金融引き締めの影響は、既に住宅投資には見られるが、今

後は設備投資にも波及することが見込まれる。

ユーロ圏の金利上昇と実質GDPの推移

AN3666-00_01_本文_01.doc 2008/01/15

5

(前年比%)

2006年(実績)

2007年(推)

2008年(予)

8.1 8.3 7.6

5.4 5.4 5.3

韓国 5.0 4.9 5.2

台湾 4.7 5.4 4.6

香港 6.8 6.1 5.8

シンガポール 7.9 8.0 7.1

5.5 5.9 5.8

インドネシア 5.5 6.3 6.4

マレーシア 5.9 6.1 5.6

フィリピン 5.4 6.7 5.7

タイ 5.1 4.6 5.2

11.1 11.4 10.1

アジアNIEs

ASEAN4

中国

アジア

1-5 拡大を続けるアジア経済

2008年のアジア経済は、年前半、米国経済減速の影響を

受けるだろうが、欧州、中東向けなどの輸出は好調を維持し、

在庫調整の終了したエレクトロニクス関係も成長を支えよ

う。また、好調な消費など内需もアジア経済を下支えしよう。

国・地域別に見ると、成長率の動きにやや差異が生じると

見られる。アジアNIEsとASEAN4は、エレクトロニクス

の在庫調整一巡等により、2008年の成長率は2007年並みと

見られる。他方中国では、賃金などのコスト上昇と金融引き

締め策によって、成長率は極めて高水準ながらも僅かに低下

すると考えられる。

アジア経済見通し

(出所)野村證券金融経済研究所

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6

-10

-5

0

5

10

15

20

25

91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08

6

8

10

12

14

16

18

(前年比%) (前年比%)

(年)実質GDP(右軸)

消費者物価指数(左軸)

予測

(注)2007年以降は野村證券金融経済研究所による予測値。

(出所)中国統計局資料より野村證券金融経済研究所作成

1-6 高成長維持の中国経済

中国の実質GDPは前年比+10%を超える動きを続けてい

る。輸出、個人消費、設備投資が何れも好調である。こうし

た中、個人投資家の間で株式ブームが起きている。

景気及び株式市場の過熱を抑えるため、中国人民銀行は継

続的な金融引き締め策を実施している。足下のインフレ率上

昇は、振れの激しい食料品の影響が大きい。しかし他方で、

エネルギー価格や労働コストも上昇傾向を強めていること

を考えれば、インフレ率上昇は中期的な中国経済を占う上で

一つの懸念材料である。

インフレのリスクを回避するために、今後も金融引き締め

が行われよう。また人民元切り上げのペースが早まることも

考えられる。これらは、中国経済の拡大ペースを緩やかに落

とすと見込まれる。しかしこうした措置が予想外に中国経済

を抑制しそうな場合には、財政出動が予想されるため、中国

の政治・社会を不安定化させるような急速な景気減速が生じ

る可能性は限られよう。

中国の消費者物価指数と実質GDP

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7

0

1

2

3

4

5

02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/11

香港

中国

日本

(兆ドル)

1-7 チャイナマネーの影響力増大

中国経済の高成長は、直接投資や貿易取引を通じ、急速に

先進国経済や先進国企業に影響を与えている。

また同時に、日本の時価総額を超えるに至った中国株式市

場の巨大化、日本を凌ぐ1兆4000億ドル強の外貨準備とそれ

を使った米国国債の購入、その結果としての米長期金利の低

位安定への寄与、国富ファンド(SWF:ソブリン・ウエル

ス・ファンド)を活用した外国企業への出資など、マネー面

でもその存在感を高めている。

今や、80年代のジャパンマネーと同じような影響力を有

するようになったチャイナマネーの動きから目が離せなく

なっている。

逆転する日中の時価総額

(出所)野村證券金融経済研究所

AN3666-00_01_本文_01.doc 2008/01/15

8

(予)

1.7

-2

-1

0

1

2

3

4

5

03 04 05 06 07

(年)

(前期比:%)素材 IT・デジタル

輸送機械 一般機械

鉱工業

2.2

Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4

(注)製造工業生産予測調査に基づく試算値。実現率、予測修正率による調整を行っている。

素材は、鉄鋼、非鉄、化学。

(出所)経済産業省資料より野村證券金融経済研究所作成

1-8 日本の生産は踊り場を脱し拡大へ

国内の生産活動は持ち直している。2007年前半に低迷して

いた鉱工業生産は、2007年第3四半期にはV字型回復の様相

を呈した。

主な背景には、輸出の持ち直し、IT・デジタル分野の在

庫調整の一巡があろう。業種別に見ても、輸出依存度の高い

輸送機械工業、IT・デジタル分野の中心である電子部品・

デバイス工業が全体の生産活動を牽引する形となっている。

出荷・在庫バランスも05年の景気停滞局面の時よりは良好

だ。2008年も生産活動は堅調に推移することが予想される。

鉱工業生産指数の推移

AN3666-00_01_本文_01.doc 2008/01/15

9

0

5

10

15

20

25

30

35

40

90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07

(年)

(%)

米国

中国(香港を含む)EU(欧州連合)

その他

アジア(中国を除く)

1-9 多様化する日本の輸出先

米国経済の下振れ、原油価格の上昇など、外部環境の悪化

が当面の日本経済の大きな懸念材料である。しかし進展する

輸出の構造変化が、こうした外部環境の悪化に対する抵抗力

を強めている。

日本の輸出先は多様化している。日本の輸出における米国

向けの構成比は、2002年以降顕著に低下している。米国向

けに代わって、構成比を大きく高めてきたのは中国向けであ

る。さらに近年はその他向けも構成比を高めている。

その他向けの中でも特に注目されるのが、産油国である中

東及びロシア向け輸出の拡大である。原油価格の高騰は、こ

れらの国・地域の所得を増加させ、日本の輸出環境の改善に

寄与している。

こうした貿易構造の変化は、日本経済が従来の米国経済頼

みの状況から脱却しつつあることを示唆している。

日本の輸出の国・地域別構成比の推移

(注)3ヶ月移動平均値。

(出所)財務省資料より野村證券金融経済研究所作成

AN3666-00_01_本文_01.doc 2008/01/15

10

-1

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

00 01 02 03 04 05 06 07 08

豪州

英国

カナダ

ユーロ圏

米国

(%)

(年)

日本

スイス

NZ

(注)各国政策金利は以下のとおり。

ニュージーランド(NZ):オフィシャル・キャッシュ・レート

豪州:オフィシャル・キャッシュ・レート 英国:オフィシャル・バンク・レート

カナダ:翌日物銀行間金利 ユーロ圏:短期オペ最低応札金利

米国:フェデラルファンド・レート スイス:3ヶ月LIBOR

日本:無担保コール翌日物レート

(出所)データストリーム資料より野村證券金融経済研究所作成

1-10 日本の内需回復は遅れ、利上げペースは緩やか

日本の政策金利は他国・地域と比較すると、著しく低い。

こうした中で日本銀行は、日本経済が息の長い成長を続けて

いくとのシナリオを堅持しており、利上げスタンスを維持し

ている。

しかし、個人消費、住宅投資など内需回復は遅れ、一部落

ち込みを見せている。内需の弱さは、中小企業、非製造業、

地方経済の弱さにも繋がっている。

このため、今後の政策金利引き上げペースは緩やかなもの

になると見込まれる。具体的には、2008年半ばに0.75%、2008

年度末に1.0%が目安となろう。

世界の政策金利の推移

AN3666-00_02_本文_02.doc 2008/01/15

11

単位:兆米ドル

2005年 2010年 2015年 2020年

日本 4.6 5.2 5.8 6.4中国 2.3 4.0 7.2 9.9

米国 12.6 14.6 16.8 19.3

EU 12.8 14.0 15.3 16.7

アジア主要国計

8.4 11.2 15.5 19.5

単位:米ドル

2005年 2010年 2015年 2020年

日本 35,669 40,356 45,660 51,660

中国 1,720 2,995 5,217 6,981

米国 41,910 46,272 51,088 56,406

ドイツ 33,910 36,711 39,743 43,026

2020年の世界経済予測を見てみよう。2005年基準のドル

ベースの実質GDPで、日本が6.4兆ドル、中国が9.9兆ドル、

米国が19.3兆ドル、EUが16.7兆ドルと見込まれる。

成熟した日本経済と今後も順調に人口の増える米国経済

の差が拡大すること、EU経済圏も依然巨大であること、そ

して、中国経済が一段と大きくなり、日本の1.5倍の規模に

達することが示されている。

中国の経済成長を予測する際、人民元は年5%のペースで

2015年まで切り上がることを織り込んでいる。中国の経済規

模が日本を凌ぐ時期は、この予測では2012年頃と想定され

る。

こういった世界経済地図の変化に、日本企業は的確に対応

していく必要がある。

GDP予測

(注)1.実質GDP成長率は、世界銀行の「Global Economic Prospects 2006」、および野村證券

金融経済研究所作成の予測値を用いる。2005年基準の米ドルベースの実質GDPの値。

2.アジア主要国は日本、中国、韓国、シンガポール、フィリピン、マレーシア、イン

ドネシア、タイの合計値。

(出所)世界銀行"Global Economic Prospects 2006"、国際連合の人口データベースより野村

證券金融経済研究所作成

今後の企業経営 2-1 2020年の世界経済予測

一人当たりGDP予測

AN3666-00_02_本文_02.doc 2008/01/15

12

(%)

日本 北米 アジア 欧州その他の

地域

NOMURA 400 71.1 11.7 9.8 4.9 2.6製造業 66.6 13.1 11.5 5.7 3.2

素材 61.9 5.3 18.2 4.6 10.1

機械 70.7 8.9 10.5 9.3 0.6

自動車 54.5 26.5 10.7 6.4 1.8

電機・精密 78.0 5.0 12.0 4.6 0.4

医薬・ヘルスケア 74.0 17.0 1.8 7.2 0.0

非製造業 82.9 7.9 5.2 2.9 1.0

小売り 88.7 7.3 4.0 0.0 0.0

情報 87.9 3.5 0.0 8.1 0.4

公益・インフラ 83.8 7.2 5.1 2.8 1.1

金融 81.6 8.6 5.8 2.9 1.1

(出所)野村證券金融経済研究所

2-2 NOMURA400の地域別収益内訳

主要な上場会社で構成されるNOMURA400企業の地域別

営業利益構成比を見てみよう。

2006年度実績で、NOMURA400全体では、国内比率が

71%、海外比率は29%。うち製造業の海外比率は33%、非製

造業の海外比率は17%と、欧米企業と比べて海外比率は低

く、特に非製造業で顕著である。

一方、海外の中ではやはり北米の構成比が最も高く、全体

で12%、ついでアジアが10%、欧州が5%、その他地域が3%

となっている。

2020年の世界経済地図からみると、製造業でもチャンス

はアジア等で大きく、非製造業は海外進出を加速させる必要

性が高まっている。

NOMURA400の地域別営業利益構成比(2006年度)

AN3666-00_02_本文_02.doc 2008/01/15

13

(単位:%)

05.1H 05.2H 06.1H 06.2H 07.1H

【前年比営業増益率】

全社 3.4 26.2 15.9 9.0 20.2

米国 1.8 26.9 18.9 6.9 3.6

欧州 -10.0 27.0 37.1 56.8 60.2

アジア 12.2 29.4 13.4 -2.7 23.6

【売上高構成比】

米国 17.7 18.1 18.4 18.1 18.6

欧州 8.8 8.9 9.6 10.3 11.0

アジア 10.8 10.7 11.4 11.1 12.7

【営業利益構成比】

米国 14.9 13.1 15.3 12.9 13.2

欧州 4.6 4.6 5.5 6.6 7.3

アジア 12.9 10.2 12.6 9.1 13.0

2-3 アジア事業等へのシフトを急ぐ

日本企業が今後対応すべき具体策の第一は、海外、特に新

興国経済の成長を取り込むことだろう。

NOMURA400企業の地域別営業利益分析によれば、米国

事業が緩やかに減速する一方、アジア、欧州事業の好調が目

立っている。

特に、アジア事業は利益率が高く、売上高構成比で見ると

まだ米国と差があるが、営業利益構成比では米国事業にかな

り接近してきている。

今後は、インド、ロシア、ブラジルなどの中国以外の

BRICS諸国への輸出、直接投資の拡大、また、中東などへ

の展開も加速しよう。

地域別業績動向

(注)年度半期ベース。対象は、NOMURA400(除く金融)構成銘柄のうち、04年度上期以降、

継続的にデータの取得が可能であった151社。

(出所)野村證券金融経済研究所

AN3666-00_02_本文_02.doc 2008/01/15

14

0

10

20

30

40

50

60

1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000

(%)

日本

中国

(年)

日本:1915~1970年中国:1950~2005年

(出所)中国国家統計局、日本内閣府、日本統計協会より野村證券金融経済研究所作成

2-4 中国の「サービス経済化」もチャンス

第二に、中国の「サービス経済化」もチャンスだろう。産

業構造からみた場合、現在の中国は1970年前後の日本と類似

している。

日本の第二次産業比率は、1970年をピークに低下し始め、

そこから「サービス化」が始まった。まさに、中国が近々そ

の発展段階に入る可能性が高い。

折りしも、日本の非製造業は、国内人口の減少という大き

な問題に直面している。今後、中国を視野に入れたグローバ

ルな経営を積極化することで、このチャンスをつかむことが

期待される。

その際、一人当たりGDPが3000ドルから2020年時点でも

7000ドル程度と予想されることも踏まえて、商品企画、マー

ケティングを展開する必要があろう。

GDPに占める第二次産業の割合:日中比較

AN3666-00_02_本文_02.doc 2008/01/15

15

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

1985

1987

1989

1991

1993

1995

1997

1999

2001

2003

2005

2007

OUT-IN

IN-OUT

IN-IN

2-5 国内は産業再編と M&A の活用

第三に、日本経済の成熟化に対応した国内での産業再編と

M&Aの活用がある。特に、食品、建設などの内需産業は市

場の飽和に直面し、産業組織の高度化とM&Aを活用した海

外進出が待ったなしとなろう。

日本のM&Aの形態別件数をみると、2005年以降IN-IN,

すなわち国内企業同士のM&Aが2000件に達することが確

認される。

同時に、IN-OUT、すなわち、国内企業の海外企業買収が

定着してきていることも確認される。この二つの流れは、内

需回復の遅れがはっきりする中、今後さらに鮮明になろう。

日本のM&Aの形態別件数

(注)2007年は1-11月実績の年率換算値

(出所)レコフ資料より野村證券金融経済研究所

AN3666-00_02_本文_02.doc 2008/01/15

16

-2

0

2

4

6

8

10

12

14

16

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006

(%)

(年)

米国

日本

英国

(注)1.3年移動平均値。

2.国民所得統計における家計部門の利回り・保険金収入を株式・出資金を除く家計金

融資産で除した収益率を試算し、株式収益率(代表的株価指数上昇率+国民所得統計

上の配当収入/家計保有の株式・出資金)との加重平均値(ウェイトは株式・出資金

比率とその他の資産)を計算。

3.日本の財産所得は06年1-3月期までしか公表されていないため、独自に季節調整を施

した上で、同期の収益率を元に試算。

4.財産所得から賃貸料収入は控除。

5.株価上昇率の計算にはTOPIX、S&P500、FTSE100を用いた。

(出所)内閣府、日本銀行、米国商務省、米国連邦準備制度理事会、英国統計局、トムソン・

データストリームより野村證券金融経済研究所作成

2-6 金融資産大国を生かす

第四に、金融資産のストックを生かすことも重要だろう。

日本の個人金融資産は1500兆円を超える。絶対額は米国より

小さいが、GDP比は、米英と同じ3倍程度と高く、金融資産

大国と言って良い。

ただ、米英の個人金融資産収益率が過去10年平均で、米国

7.4%、英国5.1%と高いのに対し、日本は2.4%にとどまって

いる。これは、低利率の預貯金が全体の50%と高いことから

来ている。

日本経済が今後成熟していく中にあって、この収益性を高

めていくことが大事だ。1%の収益率アップは15兆円の所得

増をもたらす。

「ものづくり」と並んで、金融サービス業の強化を国策と

して後押しし、貯蓄から投資への流れをさらに推進すること

も重要だろう。

日本・米国・英国の個人金融資産収益率の試算

AN3666-00_02_本文_02.doc 2008/01/15

17

0

1

2

3

4

5

0 5 10 15 20 25 30

(ROE、%)

(PBR、倍)

ブラジル

南アフリカ

オーストラリア

イギリスイタリア

米国

フランスドイツ

香港

シンガポール

韓国台湾

イスラエル

日本

2-7 割安圏にある株価、改善余地を残す ROE

第五に、財務・資本政策である。世界各国企業のROEと

PBRを見ると、日本については、割安圏にある株価と同時

に、まだまだ改善余地を残すROEの水準に気がつく。

昨年後半の日本株の下落は、サブプライム問題の影響とと

もに、参議院選挙の結果を受けた構造改革期待の剥落など政

治面の問題もあった。

しかし、日本株下落の底流には、企業経営の改革のスピー

ドが緩み、ROEの向上が十分でないと世界の投資家が見始

めていることも影響していると思われる。事業の収益力を高

めるとともに、増配、自社株買いなど財務・資本戦略のもう

一段の強化が必要だろう。

世界各国企業のROEとPBR

(注)バリュエーションは2007年10月末

(出所)野村證券金融経済研究所作成

AN3666-00_02_本文_02.doc 2008/01/15

18

0

1

2

3

4

5

1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006

(年度)

(兆円)

自社株買い(普通株式)

自社株買い解禁10

20

30

40

50

(%)

広義持ち合い比率

(出所)野村證券金融経済研究所

2-8 自社株買いの増加と株式持ち合いの一部復活

資本政策の面では、この10年余りで自社株買いが定着し、

年々それが大型化してきているのは、歓迎すべきことだ。

また、持ち合い比率も1990年当時の50%から20%以下へと

低下し、世界の投資家の評価するところとなった。

ただ、2006年度の持ち合い比率は、近年初めて増加に転

じたことがわかってきた。金融経済研究所のアナリストによ

れば、これは買収防衛のために株式持合いが復活した影響と

のことである。

様々な要因があるとはいえ、こういった傾向が強まること

は、資本効率の観点から、世界の投資家の批判を招く恐れが

ある。

日本企業の自社株買いと持ち合い比率

AN3666-00_02_本文_02.doc 2008/01/15

19

(万人) 米国

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

確定拠出 確定給付

5,216万人

2,059万人

確定拠出>確定給付

0

100

200

300

400

500

確定拠出 確定給付

英国(万人)

400万人

300万人

確定拠出>確定給付

日本

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

確定拠出 確定給付

(万人)

219万人

1,178万人

確定拠出<確定給付

2-9 改めて問われる企業年金運営のあり方

2008年の企業経営を巡るもう一つの重要なテーマとし

て、年金問題への対応がある。適格退職年金は、2011年度末

に廃止が決まっており、移行措置などを検討する時間も残り

少なくなってきた。また、確定給付型の企業年金に関する会

計制度は、「積立不足の即時認識(現在は遅延認識が可)」

などへの対応を求める国際会計基準への収斂が今後議論さ

れることも考えられる。

2005年に、こうした年金会計の厳格化があった英国では、確

定給付型の企業年金から確定拠出型への大きなシフトが生じ

た。米国では、企業年金の主流は確定拠出型になって久しい。

なお、中国では新たに設立される企業年金は確定拠出型のみが

認められ、既存の確定給付型からの移行も奨励されている。

PBO(年金債務)とは無縁な確定拠出型のさらなる普及

が、日本企業の国際競争力向上にとって改めて重要な課題に

なりつつある。

確定拠出年金と確定給付年金の加入者数比較

(注)1.米国は2004年、英国は2006年、日本は2007年のデータ

2.公務員年金は除外

3.確定給付と確定拠出の両方に加入している従業員もいる

4.日本の確定給付年金における厚生年金基金と適格退職年金の重複割合は、両者の事

業所数の重複割合を用いた

(出所)野村資本市場研究所作成

AN3666-00_03_表 3.doc 2008/01/15

当資料は、2008 年1月に実施される野村證券主催の新春懇談会「世界の中の日本」において使用される

スライド画面とスピーチ・ドラフトを編集したものであります。

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