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ホワイトペーパー 802.11AX

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802.11AX

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目次

Wi-Fi 市場と 802.11AX サービスの開始

3

802.11AX 技術仕様

7

使用モデル: 802.11AX でできること

27

後方互換性、導入に関する検討事項、およびアップグレード戦略

28

必須およびオプション機能

28

性能評価

29

チャネライゼーション

32

まとめ

32

付録 (既存の機能と Wave 2 に対応した新しい 802.11AX 機能) 33

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Wi-Fi 市場と 802.11AX サービスの開始

自宅や職場で PC や携帯電話からインターネットに接

続するのに、Wi-Fi は今や当たり前の存在となってい

図 1a:Wi-Fi デバイス年度別出荷数

ます。Wi-Fi Alliance の初会合から 19 年を経た 2018 年、Wi-Fi

はインターネットの全トラフィックの半分以上を担うに

至っています。

図 1b:Wi-Fi デバイス累計出荷数

すでに累計で約 180 億台の Wi-Fi デバイスが出荷され、

その内の 80 億台が現役で使用されており、さらに毎

年 30 億台が新しく出荷されています。今や、Wi-Fi 信

号が飛んでいない場所を見つけるほうが難しいくらい

です。LTE ネットワークの構築、スモールセル、定額

データプランで速度と容量を向上させてきた携帯電話

ネットワークでさえ、加入者のトラフィック要件を満

たすために Wi-Fi に依存しています。Wi-Fi 網との統合

あってこそ今日の携帯電話があると言っても決して過

言ではないでしょう。

図 2:事業者別月平均データ使用量

2018 年 1 月 (Android ユーザー、単位は MB)

Wi-Fi 規格は米国電気電子技術者協会 (IEEE) によって策定され

ます。そこでは 802.11 ワーキンググループが年 6 回会合し、

合間に専門家タスクグループで電話会議を持ちながら、Wi-Fi

の基盤となる技術規格の更新・拡張を進めます。IEEE が規

格を策定した後、焦点は Wi-Fi Alliance へと移ります。Wi-Fi

Alliance は「Wi-Fi」商標を所有する業界団体であり、一連の

プラグフェストを開催してテスト計画および相互運用性認定

プログラムの作成を推進します。こうして、エコシステムに

属するあらゆるベンダーの製品において、Wi-Fi クライアン

トと Wi-Fi アクセス・ポイントの連携が確保されます。

一番最近リリースされた大きな物理層 (PHY) レベル認定規

格は 802.11ac です。これは「第 1 世代 (Wave 1)」対応製品

の販売が 2014 年に開始し、「第 2 世代 (Wave 2)」対応製品

の販売が 2016 年に開始しました。ただし 802.11ac 策定プロ

ジェクトは 2008 年までさかのぼります。規格の素案から具

体化までにはとても時間のかかるものなのです。

ですから IEEE は早々に、それこそ 802.11ac Wave 2 対応機器

の出荷が始まる前から、次の「PHY」規格である「802.11ax」

の策定に着手しました。このプロジェクトは 2014 年 3 月に

正式にスタートし、2018 年の初めには一連の「レター・バ

ロット (Letter Ballot)」と呼ばれる手続き段階を経て進行し

ています。標準規格範囲は設定され、改訂を重ねるごとに

その内容はますます強化されています。IEEE による最終承

認は 2019 年後半を予定していますが、この規格はそれより

何ヶ月も前倒しして事実上制定されるでしょう。

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802.11 に対する以前の物理層の修正は、Wi-Fi Alliance が

IEEE と並行して作業を開始し、市場投入までの時間を短縮

するという先例を打ち立てました。802.11ax に対応する製

品の認定プログラム「Wi-Fi CERTIFIED AX™」はすでに進行

中で、最初のプラグフェストは 2018 年初旬に行われ、認

定は 2019 年中に開始される予定です。

認定パスと標準化に対する取り組みの重複は、市場投

入を早めるために非常に重要です。標準化団体や機器の

ベンダーは以前の物理層の修正を経験しているので、リ

スクを最小限に抑えられます。

802.11ax 設計における目標

現在のリリースを超えて Wi-Fi を改善する方法を決定する

際に、802.11ac、IEEE および Wi-Fi Alliance は Wi-Fi の展開

と使用方法を調査し、ユーザーコミュニティ間の広範な

使用と不満の原因に対する障害を特定しました。

結論は、「良い」フィールド条件下でのピークデータレー

トを向上させる以前のアップグレードパスから開始し、

「実際の」フィールド条件やピークパフォーマンスだけで

なく、実際の環境における平均の、また、最悪の場合のパ

フォーマンスの改善方法にも焦点を当てることでした。

こういった実際の状況は、Wi-Fi の成功によって少なから

ず変化してきました。今やアクセス・ポイントは至る所

に設置されており、多くの屋外スペースをカバーしてい

ます。そして、さまざまな場所で Wi-Fi の電波の混雑は深

刻な問題となっています。

例えば、人が混み合う空港や駅、集合住宅、学校、大学

のキャンパスなどです。

同じネットワークで管理されているかどうかにかかわらず、こ

のような場所では数多くのアクセス・ポイントからのカバレッ

ジが重複しており、そのすべてがクライアントデバイスに大量

のデータを送信しています。そのため、IEEE と Wi-Fi Alliance は、

特にカバレッジの重複問題において、すべてのユーザーのパ

フォーマンスを向上させることを目指していました。例えば、

ある場所では、アクセス・ポイントを調整することによって信

号の干渉を減らし、その他の場所では、プロトコルを強化して

Wi-Fi 信号を干渉に対してより強くします。

しかし、携帯電話や PC 用のインターネットサービスが Wi-Fi の

唯一の用途ではありません。モノのインターネット (IoT) セン

サーの成長市場では多くの場所でインターネット接続に Wi-Fi が

利用されていますが、いくつかの制約により、その採用は限定

的なものにとどまっています。802.11ax の新機能は、低データ

レート接続の効率的な割り当てや、IoT センサーのバッテリー寿

命の向上、および Wi-Fi 信号の範囲の拡大を可能にします。

Wi-Fi は、ワイヤレス・インターネット・サービス・プロバイ

ダー (WISP) や屋外のポイント・ツー・ポイントリンクにも使用

されています。802.11ax には、通信範囲の拡大、データレート

の向上、そして干渉の影響を減らす機能が含まれています。

タイムライン

802.11ax を開発するための手順の大枠は、802.11n および 802.11ac

のような「PHY」プロトコルの慣例に従いました。これにはいく

つかの手順を並行して開発が行われ、Wi-Fi Alliance は IEEE が基礎

となる仕様を完成させる前に認定テストの作業を開始しました。

従来の物理層プロトコルと同様に、商業的な圧力により、アクセ

ス・ポイントとデバイスのベンダーが、2019 年半ばに予定されて

いる Wi-Fi Alliance の認定に先立ち、2018 年後半には標準規格のデ

バイスを市場で先行発売できることが期待されています。

図 3:エンタープライズ・アクセス・ポイントの出荷

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この圧縮されたスケジュールは、複雑な新しいプロトコ

ルを展開するのに決して理想的な方法ではありません

が、私たちが今まで 802.11n と 802.11ac で得た経験上、

初期の 802.11ax デバイスが孤立するリスクは極めて低い

ことが分かります。ベンダーは今までに、そういった課

題にうまく対処してきました。

802.11ax は、802.11ac と同様に、すでに「Wave」と呼ばれ

る 2 つの規格に分割されています。機能の正確な分布はま

だ最終的なものではありませんが、このホワイトペー

パーでは、Wave 1 で採用されると予想されているものに

焦点を当て、付録では Wave 2 の機能についても説明しま

す。Wave 1 (上のタイムラインを参照) と Wave 2 が利用可

能になるまでには 2 年ほどかかるとみられています。

アップグレードのタイミング

新しく制定される物理層の Wi-Fi 標準規格では新しいハー

ドウェアが必要になるため、Aruba にはアップグレードに

適した時期についてよくご質問が寄せられます。その答え

は、802.11n から 802.11ac の Wave 1 や Wave 2 に変更された

ときと同じく、「いつでも準備ができたときにアップグ

レードすること」です。標準が更新されるにつれて、シリ

コンはより強力になり、機器のベンダーは機能を追加する

ので、ほぼ 2 年ごとに常に新しく改良された Wi-Fi アクセ

ス・ポイントが登場するでしょう。このような記事を読む

と、お客様の中には、必要な最新機能について知識を蓄

え、802.11ax が早く導入されないかと心待ちにされる方も

いらっしゃるでしょう。しかし、利用開始のスケジュール

は、ほとんどの場合、予算や工事の期限などによって決定

されます。ですから、購入を決めたら、利用可能な最善の

テクノロジーを利用することをおすすめします。

スペクトラムと規制

新しいスペクトルを増やし、Wi-Fi のような免許の要らない無

線技術の幅広い採用に対する制約を緩和するためのさまざま

な取り組みや活動がありますが、802.11ax に影響を与えるた

めの変更はほとんどなされていません。2.4 GHz および 5 GHz

帯域の規制は、802.11ac 以降大幅には変更されていません。

改良される点の 1 つとして、802.11ac は 5 GHz 帯域でのみ動作

するように指定されていますが (802.11n プロトコルは 2.4 GHz

に適用されます)、802.11ax は両方の帯域に適用されます。

2.4 GHz 帯は人口過密地域では使用できないほど過剰に使用さ

れていると言われていますが、Wi-Fi コミュニティは、特に

その優れた伝搬特性を活用できる IoT など、まだこの帯域に

は活用すべき多くの機会があると考えられています。

予想通り、規制の変更によって Wi-Fi に適した無免許または

軽ライセンスの使用に新しいスペクトルを割り当てることが

可能になれば、IEEE および Wi-Fi Alliance は、これらの環境で

の運用のために 802.11ax 仕様を拡張することができます。

そして、スペクトルについて議論を進めながらも、この第 3

の Wi-Fi 帯域に注目し続けることが重要です。60 GHz 帯域を

使用する「WiGig」と呼ばれるプロトコルは、現在、IEEE と

Wi-Fi Alliance の両方で採用されており、2.4 および 5 GHz の

Wi-Fi との共通点が非常に多く、異なる帯域間でシームレス

に接続を切り替えることができます。ただし、ミリ波周波数

での特性が異なるため、WiGig は物理層の仕様が異なり、

802.11ax の一部ではありません。

図 4:エンタープライズ・アクセス・ポイントの出荷

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LTE と 5G の収束

広域通信業界でかなりの激動の時がやってきました。携

帯電話 (モバイル) 事業者は 4G 導入増加の真っ只中にあり

ますが、そんな中、すでに 5G の準備を進めています。そ

して、従来のインターネット・携帯電話市場だけでな

く、IoT、スマートシティ、住宅への固定ワイヤレス・ブ

ロードバンド・アクセス、企業顧客向けのマネージド

サービスなど、他の多くの機会にもチャンスを見出して

います。さらに新たに認可されたスペクトラムと新技術

の利用可能性により、5G は以前の 2G、3G、4G 世代より

もかなり広範な周波数帯の電波を利用します。このよう

な新しいユースケースと市場に対応するために、5G 標準

化団体はその範囲を拡大しました。

一方、5G および 802.11ax 用に提案されている無線技術

は、マルチユーザー MIMO、空間ダイバーシティ、ビー

ムフォーミング、OFDMA、チャネル・アグリゲーション

など、多くの特性を共有しています。これは、スペクト

ル効率、高データレート、広範囲におよぶ通信範囲や優

れたバッテリー寿命を左右する要因が、セルラー、プラ

イベート、およびコンシューマーネットワークに共通し

ていること、そして、組み込むべき新しい無線規格が期

待される、最先端の無線技術であることによるものです。

しかし、5G は、さらに興味深い側面を持っているはずな

のです。新しい市場、特にエンタープライズ・ネット

ワーキング市場の開拓が進められている中、5G 標準には

現在、Wi-Fi と関連認証プロトコルを 5G ネットワークに

統合するための詳細な仕様が含まれています。これは、

LTE / 5G または Wi-Fi での使用に適した軽ライセンスのス

ペクトルとともに、将来のネットワークに幅広い可能

性を提供します。

そのため 5G と Wi-Fi は、無線とシステムの両方のレベル

において、3GPP と Wi-Fi Alliance がターゲットにしている

市場間での重複の増加によって促進されています。

関連した Wi-Fi の標準規格と認定

いくつかの MAC 変更を伴う新しい PHY として、802.11ax

はいくつかの前提条件を持っています。Wi-Fi Alliance は、

すべての Wi-Fi CERTIFIED AX™ 機器が Wi-Fi CERTIFIED AC™

および Wi-Fi CERTIFIED N™ という認定を受けることをほぼ

義務化します。また、Wi-Fi CERTIFIED Agile Multiband™ 認

定、クライアントがネットワーク負荷をより広く認識で

きるようにする機能のグループ、および最適なバンドと

アクセス・ポイントに移動する (または移動する) 機能も

必要になります。ほとんどのアクセス・ポイントとクラ

イアントデバイスは、アジャイル・マルチバンドに必要

な機能をすでにサポートしていますが、これは比較的最

近のプログラムであり、すべての最新の機器が認定を取

得しているわけではありません。

そして、すべての Wi-Fi 機器は、認証、承認、および暗号化

に関する新しいセキュリティ標準を満たす必要があります。

長年使用されてきた WPA2 認定は、2018 年に WPA3 に置き換

えられます。最良のセキュリティ・プラクティスをサポート

するには、すべての 802.11ax 機器が WPA3 準拠となることが

予想されます。

802.11ax の新機能

図 5:802.11ax の主な機能 (Wave 1 と 2 両方)

IEEE 802.11ax 規格には 50 以上の機能がありますが、すべてが

Wi-Fi Alliance によって採用されるわけではありません。以下は、

Wave 1 と Wave 2 の両方を対象とした機能の概要です

• ダウンリンクおよびアップリンク OFDMA: OFDMA は、

802.11ax のより複雑な機能の 1 つです。それは、単一の送

信 (ダウンリンク OFDMA については、アクセス・ポイント

が送信する) がチャネル内の周波数によって分割されるこ

とを可能にし、その結果、異なるクライアントデバイス

にアドレス指定されたさまざまなフレームはサブキャリ

アのグループを使用します。アップリンク OFDMA はダ

ウンリンク OFDMA と同等のものですが、この場合、複数

のクライアントデバイスが同じチャネル内の異なるグ

ループのサブキャリアで同時に送信します。アップリン

ク OFDMA は、さまざまなクライアントを調整する必要が

あるため、ダウンリンクよりも管理が困難です。アクセ

ス・ポイントは、各クライアントが利用できるサブチャ

ネルを示すためにトリガーフレームを送信します。

• ダウンリンク*およびアップリンクマルチユーザー MIMO:

ダウンリンクバージョンは、アクセス・ポイントがマル

チパスの条件により、1 つの時間間隔で異なるクライアン

トデバイスにフレームを送信できると判断する既存の

802.11ac 機能を拡張したものです。802.11ax はダウンリン

ク MU-MIMO グループのサイズを増やし、より効率的な動

作を可能にします。アップリンクマルチユーザ MIMO は

802.11ax の主な機能

ダウンリンクおよびアップリンク OFDMA

ダウンリンク*およびアップリンクマルチユーザー

MIMO

高次変調

高度な OFDM とコーディング

屋外操作

消費電力の削減

空間再利用

送信ビームフォーミング*

シングルユーザー操作*

(* 802.11ax の新機能ではありません)

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802.11ax に新しく追加されたものですが、Wave 2 に延

期されます。アップリンク OFDMA のように、アクセ

ス・ポイントは複数のクライアントの同時送信を調整

する必要があります。

• 送信ビームフォーミング: これは、アクセス・ポイン

トがいくつかの送信アンテナを利用して、受信機の

アンテナに極大信号を送信するというもう 1 つの既存

の機能です。これによりデータレートが向上し、通信

範囲が広がります。

• 高次変調: 802.11a/g は 64-QAM、および 802.11ac は

256 QAM のデータ変調方式をサポートしています。

802.11ax では、最高次の変調が 1024-QAM に拡張され

ています。これにより、良好な条件下でのピークデー

タレートが向上します (高度な SNR)。

• OFDM シンボル、サブキャリア間隔、および FFT サイ

ズはすべて、小さい OFDMA サブチャネルの効率的な

動作を可能にするために変更されます。こうした変更

は、シンボル効率を失うことなくガードインターバル

の長さの増加を可能にします。

• 屋外操作: 多くの機能が屋外でのパフォーマンスを向上させ

ます。最も重要なのは、構造安定性を実現するために最も機

密性の高いフィールドが繰り返される新しいパケットフォー

マットです。よりよい屋外操作に貢献する他の機能はより長

いガードインターバルおよびエラー回復を可能にするために

冗長性を導入する方式が含まれています。

• 消費電力の削減: 既存の省電力モードは、より長いスリープ

間隔とスケジュールされたウェイクアップ時間を可能にする

新しいメカニズムで補完されています。また、IoT デバイス

の場合は、20MHz チャネルのみのモードが導入され、それの

みをサポートする、よりシンプルで低電力のチップが使用さ

れています。

• 空間再利用: 送信機会を求めて競合する場合、デバイスは、

以前は強制的に待機させていたはずの、遠方への送信が許

可されます。これは既定の地理的領域においてより多くの

同時送信を可能にし、ネットワーク容量を増大させます。

いままでのバージョンを振り返ると、802.11ax の新機能

は、主に以前の作業の拡張または改良であることがわか

ります。しかし、新しい領域である OFDMA と空間再利

用という際立った例外はあります。

802.11AX の技術的特長

ここでは、主な技術的改善点について詳しく説明します。

新しいサブキャリア間の間隔とシンボル長

OFDM シンボルは、Wi-Fi 伝送の基本的な構成要素です。それ

は、情報を搬送するサブキャリアの変調波形の時間的に小さな

セグメントで、シンボルのより多くの変数が利用可能であるほ

ど、それがより多くの情報 (バイナリー・ビット) を搬送するこ

とができます。基本的な特性として、高速フーリエ変換 (FF

T) サイズ、サブキャリア間隔、および OFDM シンボル持続時間

は、固定されたチャネル幅が与えられると、リンクされる点が

挙げられます。802.11ax では、OFDM シンボル長が 4 倍になる一

方で、サブキャリア間隔は 4 分の 1 になります。

図 6:Wi-Fi 規格の進歩

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表 1:802.11ac から 802.11ax までの OFDM 特性

図 7:OFDM シンボル期間とサブキャリア

サブキャリア間隔の変更に対する主な推進力は、

OFDMA (後に詳しくお話します) を小さなサブチャネ

ルに拡張できるようにすることでした。各サブチャ

ネルは少なくとも 1 つ(通常は 2 つ) のパイロットサブ

キャリアを必要とし、2 MHz の最小サブチャネルサイ

ズでは、より小さいサブキャリア間隔はパイロット

に対する全帯域幅のかなり小さい割合を失います。

この他にも利点があります。チャネル全体のガード

サブキャリアとヌルサブキャリアの数は、使用可能

なサブキャリアの数のパーセンテージとして減らす

ことができます。これにより、特定のチャネルの実

効データレートが向上します。上の図は、4 倍の係

数を考慮した後、802.11ac と比較して使用可能なサブ

キャリアが約 10% 増加したことを示しています。

より長い OFDM シンボルは、スペクトル効率を犠牲

にすることなく巡回プレフィックス長の増加を可能

にし、それは特に屋外条件において、長い遅延拡散

に対する耐性を増加させることを可能にします。巡

回プレフィックスは、シンボル時間を削減すること

ができ、マルチパス条件に対してより堅牢でありな

がらスペクトル効率を高めることができます。そし

てそれはアップリンクマルチユーザモードのジッタ

感度を減少させます。

もちろん、いくつかのデメリットもあります。より狭い間隔

のサブキャリアを首尾よく復調するのに必要とされる周波数

精度は非常に高いものを要求されます。また、高速フーリエ

変換 (FFT) では、もう少し複雑なチップが必要です。しかし、

312.5 kHz / 64 ポイントの FFT が 802.11 で最初に使用されてか

ら約 20 年が経っているため、こういった影響は管理しやすい

と考えられています。

OFDMA の利点

直交周波数分割多元接続 (OFDMA) は、802.11ax における 2 つの

マルチユーザモードのうちの 1 つであり、もう 1 つは MU-MIMO

(Wave 1 におけるダウンリンクのみ) です。OFDMA は、セルラー

LTE のようなシステムで長年使用されてきた技術です。これ

は、送信を周波数の次元にわたって分割し、サブチャネルまた

はメイン RF チャネルのリソースユニット (RU) で送受信するよ

うに割り当てられたデバイスのペアを用いて機能します。

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図 8:シングルユーザー OFDM と比較した OFDMA

これにより、(ダウンリンク OFDMA 用の) アクセス・

ポイントは、単一の送信機会に異なるサブチャネル

に複数のフレームをまとめてバンドルできます。そ

の一方で、クライアントはそれぞれの送信を受信す

るために無線を異なるサブチャネルに調整します。

一見したところ、OFDMA はフルチャネルのシングル

ユーザー OFDM (802.11ax でもまだ利用可能です) を超

える利点はありません。送信リンク速度が異ならない

と仮定すると、多数の送信をカバーする長い期間を考

えれば、各ステーションは同じ量のデータを送信す

ることになります。OFDMA がチャネルの 2 分の 1 を

割り当てるとき、送信には 2 倍の時間がかかり、しか

も何も保存されません。ただし、綿密に調べてみる

と、効率が改善されていることがわかります。

802.11 CSMA/CA チャネルアクセスプロトコルでは、

各送信機会のネゴシエーションは競合するまでの時

間を失います。そして媒体上で時間が失われ、全体の

容量とスペクトル効率が低下します。OFDMA を使用す

ると、送信がまとめられ、一定量のデータを移動する

のに必要な送信機会の数が減り、効率が向上します。

また、クライアント数が増えると CSMA / CA の効率が

低下します。例えば、5 つのクライアントがそれぞれ

100 Mbps を達成できるとすると、50 は 10 Mbps を達成

できません。そして、802.11ax の目標の 1 つは、クラ

イアントの密度が高い大規模な展開でパフォーマン

スを向上させることです。OFDMA は、多数のクライ

アントを公平に管理する場合に特に役立ちます。そ

して、競合オーバーヘッドが減るということは、ク

ライアント数が増えてもキャパシティの低下はほ

とんどないことを意味します。

能力の低いステーションにとっても利点があります。リン

ク速度が速くなると、デバイスの中には最大速度で送信す

るのに苦労するものもあります。フルチャネル OFDM で

は、最善を尽くす必要があり、おそらくメディアを埋める

ことはしません。一方、OFDMA では最大レートに上限を設

けることができます。これにより、IoT センサー用の「20

MHz のみ」 (後に説明します) の概念と同様に、よりハード

ウェアの導入が簡単になり、潜在的により長いバッテリー

寿命が実現します。

OFDMA は、特に低遅延または低ジッタを要求するトラ

フィックに対して、QoS を適用する機会も提供します。

シングルユーザー OFDM システムでは、送信の機会を得る

ためにデバイスが長時間待たなければならない場合があり

ますが、OFDMA ではあまり頻繁に送信できないため、待ち

時間とジッタが減少します。

しかし、OFDMA はいくつか巧妙な点があります。上記で見

られるように、802.11 のフレームごとの送信は、アクセ

ス・ポイントが送信機会を競うとき、長さの異なる多数の

フレームを束ねて利用しなければなりません。フレームが

送信機会の長さより短い場合、パディングが追加されます

が、これは、すでにご存じかもしれませんが、帯域幅の損

失を使用可能にしてくれます。また、先ほど触れたよう

に、各 OFDMA サブチャネルは、パイロットトーン用に 1 ~

2 つのサブキャリアを予約しなければならず、データ送信

には使用できません。そのため、アクセス・ポイントは、

提供される負荷とバッファ内のフレーム、およびクライ

アントの分散とリンク速度を考慮し、OFDMA の最適な使用

方法を計算する必要があります。

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このように OFDMA はトラフィック管理に多くの新しい次

元を切り開きますが、アクセス・ポイントはサブチャネ

ルの割り当て方法を選択し、使用中のクライアントと調

整する必要があるため、より高度な制御メカニズムも必

要です。これらについては後に詳しく説明します。

ダウンリンクの OFDMA

802.11ax では OFDMA を初めて採用し、ダウンリンク・

アップリンクともに導入を予定しています。そこにはい

くつかの違いがあります。例えば、アクセス・ポイント

はダウンリンク OFDMA のすべての送信を制御しているの

で、実装するのがより簡単かもしれません。

最初にダウンリンク OFDMA 送信を処理し、後で制御をす

ると、アクセス・ポイントは最初に通常の方法で送信機

会を求めて競合することがわかります。それから異なる

クライアントのためにいくつかのフレームを組み立てま

すが、割り当てられたサブチャネル上で変調されます。

フレームがバンドルの最長フレームより短い場合は、長

さを助長するためにパディングが追加されます。失われ

た帯域幅は、より小さなサブチャネルをフレームに割り

当てることで減らすことができるので、送信に時間がか

かりますが、全チャネル帯域幅を使用するにはバンドル

にもっとフレームを追加する必要があります。

802.11ax で割り当てられている最小のサブチャネルは 26

本のサブキャリア (2 MHz) です。20 MHz チャネルには 9 つ

の 26 サブキャリアサブチャネルがあり、最大 9 つの異な

るフレームと受信者が送信を共有できます。

IEEE は、サブチャネルを指すために「リソースユニット」(RU) と

いう用語を使用しています。例えば、上記の 26 本のサブキャリア

ユニットは、「RU-26」とします。フルセットは、RU-26、RU-52、

RU-106、RU-242、RU-484、および RU-996 です。

割り当てられたサブチャネル

OFDMA では、アップリンクやダウンリンク、そしてサブチャネル

は規格で定義されています。チャンネルはバイナリー形式で細分

化され、チャネルが正確に分割されない場合は、26 本のサブキャ

リアの最小ブロックが穴埋めに使用されます。

図 9:ダウンリンクの OFDMA 伝送

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前世代の OFDM においては、チャネル内のすべてのサブ

キャリアをデータに使用で きるわけではありません。一

部のサブキャリアは、隣接チャネル内、またはサブチャネ

ル間での送信に干渉しないように、ガードバンド用には使

用されていません。周波数基準を提供し、信号の正確な復

調を可能にするために、DC トーンまたはパイロット

トーンに他のものが使用されます。

図 10:OFDMA サブチャネルの割り当て

図 11:OFDMA サブチャネルの割り当て

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802.11AX

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OFDMA に使用可能なサブチャネル、サブキャリア、

データレート

以下の表では、OFDMA における RU-N (RU-26 など) サ

ブチャネルに関するオプションメニューを挙げてい

ます。これらの RU は柔軟に割り当てることができます

が、802.11ax で指定されている特定の構成でのみ可能とな

ります。

アップリンクの OFDMA

OFDMA は、クライアントデバイスが送信し、アクセス・ポイントが受信することを除いて、ダウンリンクと同じようにアップ

リンク方向に機能します。

困難な機能は、アクセス・ポイントがクライアント

の最適なグループ分けを計算し、各クライアントが

いつ送信するべきか、そしてどのサブチャネルで送

信するかを通知するものです。それについては後程

さらに詳しくお話します。

また、各プリアンブルは全 20 MHz チャネルにわたっ

て送信されるので、アップリンク方向におけるプリ

アンブルシンボルの同期は複雑です。これは IEEE の

実装上の決定であり、すべてのプリアンブル波形は

AP のアンテナで受信されたときに時間、周波数、お

よび振幅が同期されている必要があります。これは、

信号強度測定値の校正、局部発振器の要件などを含む、Wi-Fi

デバイスに対する多くの新しい要件を生み出しており、他の

分野でも役立つ可能性があります。

OFDMA パケット本体内でも、トランスミッターが周波数精

度、トランスミッターおよび他のパラメータが隣接する RU

の送信に干渉をしないように維持することは非常に重要で

す。OFDMA の実装は、上の単純な図が示すよりも複雑なの

です。

表 2:OFDMA に使用可能なサブチャネル、サブキャリア、データレート

図 12:アップリンクの OFDMA 伝送

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802.11AX

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ダウンリンクのマルチユーザ MIMO 伝送

ダウンリンク MU-MIMO は 802.11ac (Wave 2) で導入され、

現在のアクセス・ポイントやクライアント機器で広く普

及しつつあります。AP から複数のクライアントへの同時

送信をサポートするために、空間ダイバーシティとビー

ムフォーミングの概念を拡張します。

図 13:ダウンリンクのマルチユーザ MIMO 伝送

MU-MIMO は、伝搬特性が、あるクライアントまたはクラ

イアントのグループに対して最適化された送信が他のク

ライアントによって著しい信号強度で聞こえないことを

AP が識別できる場合にのみ可能であり、逆もまた同様で

す。これらは各クライアントグループのために別々の

データフレームを構築し、それらを同時に送信するこ

とを可能にする条件です。

MU-MIMO の候補を識別するために、AP はサウンディン

グ動作を実行し、その全アンテナからクライアントに

NULL フレームを送信し、各 AP とアンテナをクライアント

対アンテナの組み合わせに、測定された受信レベルの

キューで応答しました。サウンディングは、MIMO と同

様にビームフォーミングにも使用されます。802.11ac で

のマルチユーザーサウンディングは、ビームフォーミン

グレポートマトリックスが大きくなり、クライアントデ

バイスが干渉を避けるために応答をずらさなければなら

ないため、時間がかかる可能性があります。新しい

802.11ax マルチユーザー制御プロトコルは、同時応答で

はるかに効率的になります。

図 14:ダウンリンク・サウンディング

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802.11AX

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実環境での 802.11ac MU-MIMO の使用経験から、いくつか

の制限が明らかになりました。例えば、使用可能なグルー

プを形成することが常に可能というわけではなく、4 アン

テナの AP を使用しても、シングルユーザーモード全体の

利得は時々それほど高くないことがありました。802.11ax

では、より大きい MU-MIMO グループ (4 から 8 クライアン

トに増加) が大きな改善を可能にします。

上の図からわかるように、802.11ax は、クライアントを

グループ化し、そのグループを順番に処理することによっ

て、多数のクライアントデバイスに対応することができ

ます。この例では、ビームフォーミングレポート用のク

ライアントのグループ化を示していますが、この概念は

他のパケットタイプにも拡張されています。

また、TCP/IP のように ACK を含むリンクレベルまたはト

ランスポートレベルのプロトコルであれば、ダウンリン

クのパフォーマンスは向上しますが、それでもアップ

リンクによってボトルネックになる可能性があります。

これは、802.11ax の Wave 2 にアップリンク MU-MIMO が

追加されれば解決します。

アップリンク MU-MIMO および MU-MIMO と OFDMA の組み

合わせ

アップリンク MU-MIMO、および OFDMA と MU-MIMO を組み合

わせたパケットはどちらも Wave 2 に延期されます。Wave 1 で

は、ダウンリンクの OFDMA と MU-MIMO の組み合わせもサ

ポートされていませんが、この組み合わせによって AP スケ

ジューラーの可能性はさらに広がります。

パケットプリアンブル

802.11 プロトコルでは、パケットプリアンブルは、受信機が

入力信号に同期するための情報を含み、そしてそれに続くパ

ケットのサブチャネルおよびフォーマットを識別します。次

の情報は、トランスミッターの PHY レイヤーによってエン

コードされています。

図 15:サウンディング ― 明確なフィードバックのビームフォーミング

図 16:プリアンブルとトレーニングシーケンス

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802.11AX

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802.11ax フレームは、下位互換性のためのレガシープリ

アンブルで始まります。これらのフィールドは、802.11n

より前から使用されています。古いデバイスはこれによっ

て 802.11 フレームが電波として飛んでいることが分かり

ます。これにより、CSMA/CA プロトコルは 802.11ax の送

信があっても変わらず機能し続けることができます。

次のフィールド RL-SIG は、802.11g のような古いプロトコ

ルのフレーム本体の始まりになります。それは、これに

従うフレームを 802.11n 以前ではなく、802.11ax として識

別します。レガシープリアンブルおよび RL-SIG フィール

ドは、後方互換性のために、後続の送信に使用されるす

べての 20-MHz サブチャネルで並行して送信されます。

後続のフィールドは、802.11ax の目的で使用され (「HE」

は「High Efficiency」の略語で、IEEE 802.11 は 802.11ax の

別名です)、低レートフィールドと下位互換性のために

レガシー変調が使用されているシンボルフォーマットを

混在させて使用します。その一方で、他のフィールドは

新しく狭いサブキャリア間隔と、より長い 802.11ax の

OFDMA シンボルを使用します。

1 つは HE-SIG-A フィールドで、ダウンリンクかアップ

リンクか、BSS カラー、変調 MCS レート、帯域幅と空間

ストリーム情報、送信機会の残り時間など、追跡するパ

ケットに関する情報が含まれています。このフィールドは、

シングルユーザー、マルチユーザー、およびトリガーベースの

フレームで異なる内容を持ち、802.11ax の「拡張範囲モード」

で繰り返されます。

HE-SIG-B フィールドは、マルチユーザーパケットにのみ含まれ

ています。すべての受信者に共通の情報、およびその他のユー

ザー固有のフィールドがあるため、その長さは伝送を受信して

いるユーザーの数によって異なります。OFDMA が使用される

とき、 HE-SIG-B クライアント固有フィールドは、後続のパケッ

ト送信に使用される各サブチャネルで同時に送信されます。こ

れについては後程詳しく説明します。

HE-STF トレーニングフィールドにより、受信機はパケット本

体をデコードする前に入力フレームのタイミングと周波数に同

期することができます。一方、HE-LTF はチャネル推定に重要で

あり、ビームフォーミングと MIMO 空間ダイバーシティを可能

にします。

パケットテール ― パディング、テールビット、およびパケッ

ト拡張

802.11ax の新しい構造とアプリケーションでは、パケットの末

尾にいくつかの新しいフィールドが追加されています。

図 17:パディング、テールビット、パケット拡張

パディングはパケットペイロードの後に追加することが

できます。OFDMA が使用され、送信機によって構築さ

れるようなフレームがネゴシエートされた送信機会を満

たすのに十分な長さではない場合に必要です。最適な帯

域幅使用率を決定する計算は AP によって実行され、す

べての送信が同時に開始および終了するように、送信に

グループ化されたフレームのサブチャネル、MCS レー

ト、および送信電力が変更されます。このような

CSMA/CA 競合メカニズムが正しく機能するためには、

802.11ax 以前のデバイスを含む、チャネル上の他のデバ

イスがチャネルを埋める特定の電力レベルの信号を認識

する必要があるため、非常に重要です。パディングは、

前方誤り訂正 (FEC) 計算に含めることも、計算後に追加す

ることもできます。

AP が効率よく動作しているなら (システムが最善の処理能力で

動作していると仮定して)、非常に少ないパディングが使用され

るでしょう。「短い」フレームがある場合は、常に MCS レー

トを下げて伝送のエラーレートを改善し、時間を長くすること

ができます。

データフィールドの後にテールビットを追加することができま

す。これらは BPC エラー訂正が LDPC のためではなく使用される

ときだけ必要となります。このフィールドは 802.11ax 以前のも

のです。(バイナリー畳み込み符号 (BCC) は、誤りの訂正のため

に初期の 802.11 規格において使用されました。データレートが

増加するにつれて、BCC デコーダは複雑になり、そして今やよ

り高いデータレートはより複雑さの低い代替案である低密度パ

リティチェック (LDPC) コーディングを使用します。)

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パケット拡張フィールドはフレームの終わりに追加される

場合があります。802.11 で初めて一部のチップが特定の機

能を高速計算ハードウェアではなく低速ソフトウェアレイ

ヤに移動させる可能性があることを認識して、受信機が独

自のフレームで応答する前にフレームの内容を処理するた

めの余分な時間を考慮します。受信したフレームを処理す

るために余分な時間を必要とするクライアントは、その要

件を AP に知らせる必要があります。パケット拡張の許容

値は 0、4、8、12、または 16 usec です。

パケット集約

パケットアグリゲーションは 802.11n で導入され、特にスト

リーミング動画が Wi-Fi を経由して送信される場合によく使用

されています。

図 18:MAC アグリゲーション

MAC アグリゲーションの価値は、より高いスループット

とより大きなキャパシティのために、空間をより効率的

に使用することにあります。これは 2 つの結果から生じ

ます。

A-MSDU アグリゲーションは、シーケンスの最初のパケッ

トにのみ完全な MAC ヘッダーを必要とし、ヘッダーの

オーバーヘッドを削減します。これは大きな効果ですが、

パケットごとの競合を排除することはより重要です。

A-MSDU と A-MPDU の両方のアグリゲーションで、送信機

は多くのパケットをカバーする送信機会をネゴシエートで

き、競合オーバーヘッドを大幅に削減できます。

パケット集約は 802.11ax でも変更されていませんが、そ

れでもネットワーク容量の最適化において重要な役割を

果たしています。これは MU-MIMO、および OFDMA と連

携して動作します。このホワイトペーパーに記載された

すべての OFDMA の図では、サブチャネル内のパケット

は頻繁に集約パケットとなっています。

マルチユーザーモードの制御

802.11ax には 2 つのマルチユーザーモードがあります。空間の

ダイバーシティを活用する MU-MIMO と、周波数次元の OFDMA

です。どちらのモードでも、AP と複数のクライアントデバイ

ス間で同時に双方向通信を行うことができ、802.11ax では共通

の制御メカニズムが提供されています。

ダウンリンクとアップリンクは異なります。前者は事前のシグ

ナリングを持たず、AP は適切なモードで送信を開始するだけ

で、パケットが到着すると受信機は同期します。しかし、マル

チユーザー・アップリンク・トラフィックには、AP が MU-

MIMO グループと OFDMA リソースユニットをクライアントに

割り当て、その割り当てを知らせる特別な「トリガー」フレー

ムが必要です。これには、AP がアップリンクトラフィック要

件についてクライアントにポーリングすることが必要です。

ダウンリンクマルチユーザーコントロール

ダウンリンクマルチユーザ制御のための事前のシグナリングは

ありません。すべての関連情報は、パケットヘッダーにあり、

具体的にはダウンリンク・マルチユーザー・フレームにのみ含

まれる HE-SIG-B フィールドに含まれます。

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HE-SIG-B は複雑なフィールドです。これは、AP がアドレ

ス指定しているクライアントの数や、一般的な情報と

ユーザー固有の情報の 2 種類の情報に応じて可変長にな

ります。

共通フィールドは、使用される OFDMA サブチャネルまた

は RU の構造を識別します (18× 26 RU または 2× 242 RU な

ど)。すべての送信に共通の他の情報が含まれています。

共通フィールドの後には、複数のユーザー固有フィール

ドが続きます。AP はこれらのフィールドを使用して、空

間ストリーム数、使用する MCS、およびビームフォー

ミングを使用するかどうかなど、各クライアントに送信

する方法を正確に識別します。

802.11ax の仕様は、トランスミッターが割り当てられた

チャネルの全帯域幅を占有しながら、複数の 20 MHz チャネ

ルにおいて同時に HE-SIG-B フィールドを形成することを要

求します。したがって、AP が 80 MHz チャネルを使用して

いる場合、AP は各 20 MHz サブチャネルに 1 つずつ、合計 4

つの HE-SIG-B フィールドを送信します。

HE-SIG-B フィールドは、それが従うべきフレームの意図さ

れた受信者であることをクライアント装置が発見するため

に必要とするすべての情報、およびそれが受信しそしてそ

のフレームを復号するために必要とする情報を提供します。

図 20 では、ダウンリンクはマルチユーザーフレームが単

純なフォーマットに従う方法を示しています。トリガー

やシグナリングフレームは不要です。ただし、確認応答

はアップリンク送信であり、マルチユーザーモードでは

AP からの調整とトリガーフレームを必要とするため、確

認応答を管理することはより困難になります。

トリガーフレームのオプションは、基本パケットプリアン

ブル内のブロック ACK 要求 (MU-BAR)、バッファステータス

レポート (BSRP)、帯域幅クエリレポート (BQRP)、およびアッ

プリンクマルチユーザ応答スケジューリング制御フィール

ドです。

図 20:マルチユーザーダウンリンクモードの制御

図 19:マルチユーザーダウンリンクモードの制御

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図 21:マルチユーザーダウンリンクモードの制御

ブロック ACK はダウンリンクMUモードと組み合わせ

て使用することができ、最大 4.096 ミリ秒の TXOP 限界

まで同じ送信機会で送信される一組の MU ブロック

ACK をダウンリンクデータフレームのグループの終わ

りまで延期することを可能にします。これにより、競

合と複数の ACK によるオーバーヘッドが最小限に抑え

られます。

(802.11ac はダウンリンクマルチユーザー MIMO を導入

しましたが、アップリンクマルチユーザーモードがな

かったので、ダウンリンク MU 伝送の受信者は次々に

確認応答しなければならず、トラフィックを無駄にし

ました。802.11ax アプローチは、802.11ac を改良した

ものです。)

アップリンクマルチユーザーコントロール

AP は最初にどのトラフィッククライアントが送信する準備がで

きているのかを発見する必要があるため、アップリンクはダ

ウンリンクよりも複雑です。これに続いて、MU-MIMO グループ

と OFDMA RU の最適な割り当てを計算し、割り当て情報をクラ

イアントに通知して、計算結果を同期し、同時に送信する必要

があります。

図 22:マルチユーザーアップリンクモードの制御

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トリガーフレームフォーマットを上に示します。以下の

情報が含まれています。

• アップリンク送信ウィンドウの長さ

• どのクライアントデバイスを送信するか

• 各クライアントデバイスでどの OFDMA RU を使用す

るか

• 各クライアントデバイスで使用される空間ストリー

ム数

• 各クライアントデバイスでどの MCS 変調レベルを使

用するか

• STBC のような機能をアップリンクで使用するかどうか

• クライアントの送信に必要な AP での信号強度 (これ

は、AP の送信電力レベル、クライアントの受信 RSSI

レベル、およびチャネルの相互依存性の仮定を使用

してクライアントによって計算されます)

• (アップリンク MU-MIMO は Wave 2 に延期されていま

すが、必要なフィールドはすべて 802.11ax 規格です

でに定義されています。)

以下に挙げたように、他の機能と連結することができる

ので、これは非常に広範に活用できるフレームです。

• 基本トリガーフレーム: これには追加機能はありま

せん。クライアントデバイスがいつどのように応答

するかを指定します。

• ビームフォーミングレポートポール (BRP): これ

は、クライアントデバイスからのビームフォーミン

グレポートを要求します。ユーザー情報のフィール

ドは、ビームフォーミングレポートのフォーマット

方法を指定するものです。このフレームには共通

フィールドはありません。

• マルチユーザーブロック ACK 要求 (MU-BAR): このトリガー

フレームは、複数のクライアントデバイスから同時にブ

ロック ACK を要求します。ユーザー情報のフィールドに

は、確認するフレームを指定します。

• マルチユーザー送信要求 (MU-RTS): このトリガーフレーム

は、シングルユーザー RTS-CTS と同様に、送信前に信号の衝

突が無いよう確認するために使用されます。

• バッファ・ステータスレポートポール (BSRP): このトリ

ガーフレームを使用すると、AP は、どのトラフィッククラ

イアントデバイスが送信待ちのキューに入っているかを検

出でき、AP はアップリンクトラフィックを効率的にスケ

ジュールできます。

• 帯域幅クエリレポートポール (BQRP): このトリガーフレー

ムは、クライアントデバイスに 20 MHz RF チャネルの占有状

況を報告するように要求し、AP がアップリンクチャネルの

使用を効率的に制御できるようにします。

• マルチユーザーブロック ACK 要求の再試行を用いるグループ

キャスト (GCR MU-BAR): この脅威的なフレームは、AP がマ

ルチキャストグループを構築していて、グループの各メン

バーからブロック Ack を要求するときに使用されます。

AP がアップリンクマルチユーザフレームのセットを開始したい

ときは、いつでも何らかの種類のトリガーフレームが必要とさ

れます。

図 23:マルチユーザーアップリンクモードの制御

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トリガーフレームは、クライアントを該当する OFDMA RU

および MU-MIMO グループにマッピングするために使用

され、タイミングと MCS 変調レート情報、および送信電

力ガイダンスを含みます。

指定された時間に、クライアントデバイスは割り当てら

れた RU または MIMO グループで送信を開始します。

AP は通常、アップリンクデータフレームに続いて確認応

答フレームを送信します。これは、ブロック ACK (BA) フ

レームでクライアントを個別にアドレス指定するマルチ

ユーザー送信、または 802.11ax 以前のフレームや、

802.11ax フレームに含まれる新しい「multi-STA BlockAck」

フレームのいずれかとなります。

802.11ax マルチユーザーモードの AP スケジューリング

OFDMA とアップリンク MU-MIMO の追加により、AP は前の世

代の 802.11 では必要とされなかった追加機能を実行する必要

があります。ダウンリンクトラフィックとアップリンクトラ

フィックのスケジューリングは、負荷の高いシステムで最適

なパフォーマンスを得るために重要になります。

802.11ac がダウンリンク MU-MIMO を導入すると、AP はダ

ウンリンクトラフィックのバッファーを監視し、さまざま

なパケットをグループ化して MU-MIMO グループのクライ

アントグループ全体で分散し、最大限に活用する方法を決

定します。たとえば、伝送グループを埋めるためにバッ

ファーを使用するのが最適な場合があります。

802.11ax では、グループの識別がより複雑になります。信

号強度 (AP からの遠近距離) を考慮すると、効率が向上する

可能性があります。将来的には、実際の配置からのデータ

が蓄積するにつれて、ビッグデータと機械学習がパフォー

マンスを分析し、スケジューリングアルゴリズムを向上さ

せる機会があるでしょう。

OFDMA を使用すると、ダウンリンクトラフィックグルー

ミング問題は新たな局面を見せます。AP はバッファーを予

測して、MU-MIMO グループと OFDMA チャネル (およびその

クライアントのどれが 802.11ax 対応であるか) を考慮し、パ

ケットを並べ替えてグループ化しなくてはなりません。

しかし、アップリンクはさらに複雑です。アップリンク MU-

MIMO は 802.11ax Wave 2 に延期されますが、アップリンク

OFDMA は 802.11ax 機器の初期 Wave の重要な機能となりま

す。マルチユーザ操作では、AP がクライアントのバッファ

状態とトラフィックストリームを学習し、次にアップリンク

と同等の計算を行い、次にアップリンクマルチユーザ伝送を

シグナリングして最適なシステムパフォーマンスを得るよう

に調整する必要があります。

この機能はすでにセルラーシステムで使用されており、基地

局はスケジューラアルゴリズムにかなりの専門知識と知的財

産を組み込んでいます。802.11ax AP でも同様の発展が見込

まれるはずです。

図 24:ダウンリンク・マルチユーザー・モードの AP スケジューリング

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図 25:ダウンリンク ― アップリンク・マルチユーザー・カスケードフレーム交換

AP に利用可能な最も効率的なマルチユーザ方式は、

MU-MIMO と空間的に多重化されたマルチユーザフレー

ムのアップリンクセットとダウンリンクセットとをカ

スケードします (上記のように電波のみのダウンリンク

および OFDMA)。ダウンリンクパケットには Ack とトリ

ガーが含まれ、アップリンクには ACK も含まれるトリ

ガーベースのフレームがあり、すべて AP によって制御

および調整されています。

興味深いのは、802.11ax の新しいマルチユーザーモー

ドと AP による効率的なスケジューリングによって、

Wi-Fi システムがセルラーに近い (TDD + TDM/TDMA +

OFDMA) 方式で動作できることです。AP は、アップ

リンクおよびダウンリンクのための連続的なマルチ

ユーザ送信機会をスケジュールすることができ、適切

なトラフィックを用いて、従来の 802.11 プロトコルに

関連するパケットごとのオーバーヘッドは、ほとんど

なくなってしまうほど小さくなります。一方、クライ

アント数のスケーリングと OFDMA 帯域幅割り当ての粒

度により、非常に広範囲のクライアント密度とトラ

フィックのシナリオに対応できます。

8 アンテナアクセス・ポイントとクライアントデバイス

802.11ac 規格は、アクセス・ポイントまたはクライ

アントが使用できる最大指定アンテナ数の 8 倍まで拡

張されました。この場合、4 アンテナの 802.11ac アク

セス・ポイントは多数ありますが、4 を超える機器

ベンダーはありません。

802.11ax 規格では 8 アンテナの上限が維持されており、5G が「大

規模 MIMO」を採用するのと同じように、最大 8 アンテナで革新

的な 802.11ax 製品を開発する可能性があります。MU-MIMO 以外

の利点には、より多くのアンテナを使用したビームフォーミング

および MRC、および AP による 1 および 2 アンテナクライアントデ

バイスのより効率的な空間グループ化が含まれます。

高密度の AP およびクライアントの状況、パフォーマンスに敏感

なアプリケーション、およびポイントツーポイントリンクが、考

えられるシナリオの一部です。4 本以下のアンテナを備えた消費

者用および企業用の量産アクセス・ポイントはまだありますが、

これらは現在ミッドレンジ製品になります。

クライアントがアンテナ数を増やす可能性は低いと見られます。

多くのスマートフォンやタブレットは 2 つの空間ストリームをサ

ポートしています。これはパフォーマンスのニーズを満たすには

十分で、追加のアンテナから得られるメリットは、AP がサポート

できる全体的な容量、つまり以前よりも高いデータレートでより

多くのクライアントが利用できるようになることです。

高次変調

新しい 802.11 物理層の修正が最高の変調レベルを向上させるのは

今では古く、802.11ax は 802.11ac に加えて 2 つの 1024 QAM レー

トを追加します。

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図 26:1024-QAM 変調

256 QAM から 1024 QAM に移行すると、25% のデータレー

トとスペクトル効率の向上のために、OFDM シンボルあた

りのビット数が 8 から 10 に増加します。しかし、以前と同

様に、この改善は信号レベルが高く、ノイズが低い最もき

れいな条件に対してのみ有効です。これは、256 QAM の場

合は 16、64 QAM の場合は 8 のいずれかではなく、各軸に

沿った 32 の状態 (振幅と位相または直交)のいずれかを選択

して、受信機が変調レベルについて決定する必要があるた

めです。

下のチャートは、80 MHz、1024 QAM 5/6、MCS-11) フ

レームをデコードするのに必要な受信電力レベルが -

45 dBm に近く、非常に高いレベルであることを示して

います。これはいくつかの 802.11ax レート表以下に示

します (160 MHz チャネルは 2 x 80 MHz です)。

最初の表は、20、40、80 MHz チャネルのデータレート (単位

Mbps、短いガードインターバル) を示しています。

図 27:802.11ax 受信感度の要件

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表 3:802.11ax 選択レート (Mbps、ショート GI)

(8x SS および MCS 11 の 160 MHz チャネルの最大レートは 9607.8 Mbps になりました。)

そして、以下の表はサブチャネルのデータレートを示しています (単位 Mbps、短いガードインターバルの場合)。

表 4:802.11ax 選択レート (Mbps、ショート GI)

マルチユーザーモードでの送信電力制御

802.11ax のマルチユーザーモードでは、送信電力レベ

ルをより詳細に制御でき、ほとんどの制御は AP にあ

ります。これは、クライアントのバッテリー寿命、お

よび同一チャネル干渉を制限するのに役立ちます。例

えば、クライアントは現在、高密度マルチ AP 展開で

AP の電力が低下している場合でも最大電力で送信す

る傾向にあり、干渉半径が増加します。

サウンディングにより得られた結果として、AP は、クライアン

トがどのように信号を受信してるかを学習します。これによ

り、パス損失と RF チャネル状態を推定できます。したがって、

クライアントの特定の信号レベル、または多くの場合は信号対

雑音干渉 (SINR) レベルをターゲットにして送信電力を調整でき

ます。MCS とエラーレートは SINR に関連しているため、エラー

レベルを下げるか、MCS や送信電力を上げてデータレートを上

げて放送時間を短縮することで最適化を選択できます。

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特定の OFDMA RU で送信される電力を増やす一方で、他

で使用される電力を減らすことができる実におもしろい

可能性があり、最も効果的な受信者にリソースを割り当

てる手法である「注水 (water-filling)」という、AP が特定

のサブキャリアの許容電力レベル (EIRP) を超えて送信しな

がら、他のサブキャリアの電力を削減する非常に興味深

いテクニックが利用できます。20 MHz チャネルの全体的

な EIRP が制限内である限り、この設定は規制によって許

可されます。

新しいマルチユーザーシグナリングメカニズムにより、

AP はクライアントの送信特性を制御できるようになりま

した。Wave 1 では、これは OFDMA にのみ適用可能です

が、Wave 2 では、アップリンク MU-MIMO も同様に制御

されます。アップリンクマルチユーザ動作を制御する

フィールドは、クライアントがパス損失のサウンディン

グ推定値から導出できる、AP において希望する SINR とし

て、AP が送信電力を間接的に指定できるようにします。

また、それだけでなく、AP は使用する空間ストリームの

数、MCS、OFDMA RU、その他の使用すべき機能を指定します。

AP は、OFDMA パケットのパッキングを最適化するために機能の

指定を行うことができますが、その代わり、バッテリー寿命また

は干渉最適化のために、特定のクライアントによって使用される

送信電力を低減することができます。

802.11ax の省電力メカニズム

802.11ax プロジェクトの目標の 1 つは、電力要件を変更しないか

改善しながら、パフォーマンスを 4 倍に向上させることです。新

興の IoT 市場では、パフォーマンススケールの反対側にある省電

力メカニズムも特に重視されていました。

以前の 802.11 規格には、いくつかの節電メカニズムがすでに存

在しています。これらは残っており、新しいメカニズムである

「ターゲット待機時間」(TWT) で補完されています。(TWT は、低電

力で長距離の IoT 伝送の改正である 802.11ah で導入されましたが、

802.11ah チップおよびデバイスは市場で広く採用されていないた

め、Wi-Fi 機器のユーザーにとっては新しいことです。)TWT は、通

信頻度が低いバッテリー駆動のデバイスに特に役立ちます。

既存のレガシー PS メカニズムは、802.11b、最初に広く使

用されている Wi-Fi 規格から使用されています。クライ

アントは、送信するデータがあるときにウェイクアップ

して AP ビーコンまたはビーコンの倍数の間でスリープし

(AP はスリープしません)、配信トラフィック情報マップ

(DTIM) を含むビーコンの場合はビットマップです。AP に

特定のクライアントへの送信用にバッファリングされた

ダウンリンクデータがあることを示します。DTIM ビット

がクライアントに設定されている場合、ビーコンの直後

に AP にトリガーフレームを送信することでデータを取得

できます。PS は効果的なメカニズムですが、クライアン

トは少数のビーコン間隔の間スリープすることしかでき

ません。通常、クライアントは DTIM を読み取るために毎

秒数回ウェイクアップする必要があります。

802.11e で明示的な Voice over Wi-Fi サポートが追加されたため、

IEEE は、音声パケットが通常 20 ミリ秒という短い時間間隔で送

信されるため、音声対応デバイスに新しい省電力メカニズムが

必要であることを認識しました。予定外の自動省電力配信 (U-

APSD) を使用すると、クライアントはビーコン期間内の間隔でス

リープすることができます。PS と同様に、AP はダウンリンクト

ラフィックをクライアントがウェイクアップし、要求するまで

バッファリングします。音声のような対称トラフィックでは、

クライアントは同じウェイクアップ間隔でフレームを送受信で

きます。

図 28:802.11ax 以前の省電力オプション

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ホワイトペーパー

802.11AX

25

図 29:802.11ax の TWT 省電力オプション

802.11ax の新しい TWT メカニズムにより、より柔軟で長

期的な、マルチクライアントのスリープ設定が可能にな

ります。

まず、クライアントと AP 間のネゴシエーションによっ

て、クライアントがウェイクアップして通信するために

合意されたスケジュールが設定されます。スケジュール

は通常定期的で、アクティビティ間のマルチビーコン間

隔は長くなります (数分、数時間または数日におよぶ場

合もあります)。指定された時間になると、クライアン

トはウェイクアップし、AP からのポーリングトリガー

フレームを待ち (マルチユーザーモードで必要)、デー

タを交換し、その後スリープ状態に戻ります。AP は各

クライアントと個別にネゴシエートするので、最高のト

ラフィック効率を達成したり、他のクライアントからの

トラフィック要件に対応するために、スケジュールされ

た送信をグループ化または分離することができます。

この規格では、上記の個々の TWT のいくつかのバリエー

ションが許可されています。クライアントの多くが受信

したいマルチキャストトラフィックは、ビーコンで公開

されたスケジュールに従って AP によって設定できます。

オポチュニスティックな節電により、AP は、たとえ

OFDMA 内であっても、任意のクライアントがウェイク

アップしてパケット交換を要求できるときに、インター

バルのスケジュールを発行できます。また、関連のない

クライアントが、関心のある情報がいつブロードキャス

トされるのかを学習するためのメカニズムがあります。

TWT ではさまざまなマルチユーザーモードも使用できる

ため、一部のオプションはかなり複雑になります。しか

し、直接的な目標は、柔軟で長期間のスリープ間隔を実

現することです。

802.11ax は非常に電力を意識した規格で、TWT に加え、IoT セン

サーや他のクライアントのバッテリー寿命を延ばすことができ

る多くの機能を備えています。

• アップリンクまたはダウンリンクビットは、AP またはクラ

イアントデバイスによって送信されたフレームを識別し、そ

れはすべてのプリアンブルに含まれています。クライアント

デバイスは他のクライアントからフレームを受信する必要が

なく、プリアンブルに「アップリンク」ビットが表示される

とすぐに無線回路をオフにできるため、大変便利です。

• 「20 MHz のみ」のオプションでは、長いバッテリー寿命に

最適化された、薄型化されたチップ用の新しい設計が利用

可能です。また、専用機器の主流の Wi-Fi チップに低消費電

力モードを備えています。

• マルチユーザシグナリングを使用すると、AP は、自らの送

信でどの信号強度を確認する必要があるかをクライアント

に示し、使用する MCS を指定できます。AP がそのクライ

アントに関する知識を持っている場合は、電力が制限され

ているデバイスに対してこれらの設定を最適化できます。

• BSS カラー機能を使用すると、クライアントはフレームの

受信を停止し、フレームが不要なことを認識するとすぐに

スリープモードに戻ることができます。これは Wave 2 の機

能です (付録を参照)。

• 「受信動作モード」と「送信動作モード」を使用すると、

クライアントはデータ送信に使用するアクティブな送受信

チェーン数とチャネル幅を減らすことができます。クライ

アントはこれにより、データの送受信に必要なピーク電

力を削減することができます。低データレートは送信時

間を長くしますが、これは IoT センサーにとって有意義な

節減になります。

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802.11AX

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「20 MHz のみ」の動作

802.11ax は IoT の時代に開発されて以来、低コストでバッ

テリー駆動のクライアントデバイスに非常に相応しい仕

様となっています。Wi-Fi チップの出荷台数は年間数十億

にのぼり、製造業者はそのような高度なチップの単価を

非常に低く抑えることができます。しかし、Wi-Fi は、

Bluetooth や Zigbee などの他の選択肢と比較して、IoT セン

サーにとってより高価な選択肢のままです。また、Wi-Fi

チップは数倍の電力を消費します。

長年の取り組みを経て専門的なチップベンダーが IoT アプ

リケーション (Wi-Fi アセットタグなど) のために修正され

た 802.11 のチップを発表し、できるだけ多くの方法で電

力に対する要件を最小に抑えました。しかし、このよう

な特別なチップの市場は小さく、設計はアクセス・ポ

イントを含む他の Wi-Fi 機器と相互運用する必要性によっ

て制限されていました。

そのため、チップベンダーで働く多くの 802.11ax の開発

者たちは、あらゆる方法でその複雑さとバッテリー寿命

のギャップを新しい標準規格で埋めようとしました。省

電力のために開発された新しい TWT プロトコルは、Wi-Fi

ベースの IoT センサーが極めて低い消費電力で動作するこ

とを可能にし、バッテリー寿命のギャップを狭めます。

しかし、Wi-Fi チップは複雑でフットプリントが大きいた

め、低コストのセンサーにとっては不利となります。

802.11ax は新しいクラスのチップへの扉を開くことで複雑

さを軽減しようとしています。ベンダーが IEEE からリード

し、この新しいクラスの Wi-Fi チップを構築すれば、非常

に有益な結果につながります。

「20 MHz のみ」デバイスは 2.4 または 5 GHz 帯域で動作で

きますが、指定されたプライマリチャネルでは一度に 20

MHz しか動作できません。しかし、OFDMA オプションを

含む、802.11ax の他のほぼすべての必須機能が適用され、

そのようなデバイスははるかに小さいサブチャネルで送受

信できます。もちろん、20 MHz のチャネル容量ではサ

ポートできるデータレートが制限されますが、これは IoT

アプリケーションにとって問題にならないはずです。

(アクセス・ポイントは、Wi-Fi Alliance による認定を受ける

には、2.4 GHz 帯域で 20 MHz のフルチャンネル、5 GHz で

20、40 および 80 MHz のチャンネルをサポートする必要が

あります。「20 MHz のみ」はクライアントデバイスにの

み適用されます。)

図 30:「20 MHz のみ」の動作

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802.11AX

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使用モデル:802.11AX でできること

図 31:使用モデル

高密度展開と重複するアクセス・ポイント

高密度ネットワークでのパフォーマンスの向上は、恐ら

く 802.11ax の主な目的です。高密度ネットワークはさま

ざまな形態をとります。狭い領域に多数のクライアント

がある場合、狭い間隔のアクセス・ポイントがある場

合、または共通またはまったく別の管理がなされている

可能性のある重複したアクセス・ポイントがあります。

新しい標準および認定は、これらすべてのシナリオに対

するソリューションを提供します。

少数の高速クライアントを持つ独立アクセス・ポイントの

場合、802.11ax は、同時伝送のために可能な限り増加した

データレートおよび改善されたマルチユーザ MIMO 動作を

サポートします。データストリームが多数の短いフレー

ムを含む場合、マルチユーザー OFDMA ははるかに低い競

合およびプリアンブルオーバーヘッドを可能にします。

アクセスポイントが重複すると、BSS カラーリングによる

空間再利用により、アクセス・ポイントの共通チャネル

干渉半径が減少し、広域にわたる同時伝送が向上し、

ネットワーク容量が向上します。

また、アクセス・ポイントからの OFDMA およびマルチ

ユーザーアップリンク制御は、データレートとフレーム

長が変化してもクライアントの数が不均一である状況で

は、パフォーマンスの向上を促進するはずです。

低電力かつ大規模:モノのインターネット(IoT)

それが「 IoT」であるかどうかにかかわらず、業界は

802.11ax 時代のはるかに広い範囲の Wi-Fi 接続クライアン

トに期待しています。新しい認定で定義されている省電

力機能、特に「20 MHz のみ」の TWT、一部のマルチユー

ザー制御機能や OFDMA でさえも、新興の IoT 市場に参入

するのに十分なほどバッテリー寿命の延長に貢献するこ

とが期待されます。

その低消費電力の要求に加えて、IoT は確実に家、オフィスビ

ル、さらには小売店においても Wi-Fi デバイスの数を増やしま

す。802.11ax のいくつかの機能は、アクセス・ポイントに関

連付けることができるクライアントデバイスの数を拡張し、

さらに重要なことには、同時にアクティブなクライアントの

数を拡張します。特に、OFDMA を使用すると、周波数領域を

はるかに薄くスライスすることが可能になり、IoT の定義の 1

つである、低いデータレートと長いスリープ時間を持つ多数

のデバイスが有利になります。

長距離の屋外操作

屋外のポイントツーポイント、ポイントツーマルチポイン

ト、およびメッシュ市場は、家庭用およびビジネス用の

WLAN セグメントによってその存在感が薄くなっています。

しかし、それらは Wi-Fi 機器のための非常に大きく一貫した市

場を示しており、802.11ax のいくつかの改善により利益を得

るでしょう。

さらに、携帯電話業界による 5G プロジェクトの最も重要な目

標の 1 つは、ワイヤレスメッシュネットワークがブロードバン

ドインターネットサービスを都市部と農村部の家庭に提供す

る「固定ワイヤレスアクセス」(FWA) です。この市場では、長

距離リンク、高データレート、低コストの機器が必要です。

802.11ax は最初の 2 つをすでに改良し、3 つ目は常に Wi-Fi の

強みの 1 つとなっています。確かに、初期の FWA の参加者

は、実際に周波数シフトされた 802.11ac を使用しているとき

に、その機器を「予備規格の 5G」として売り込んでいます。

802.11ax では、Wi-Fi チップを使用する可能性がさらに高くな

ります。802.11ax での長距離屋外操作の改善が、この市場や

他の新しい市場への浸透を促進することが期待されます。

802.11ax の主な使用例

空港や駅

教育

ショッピングモール

ワイヤレスオフィス

スマートカー

スタジアム

スマートシティ

密集したアパートやマンション

密集した郊外の家

802.11ax のビジネス上の利点

総ネットワーク・スループットの向上

特定の範囲での増加率

ピークリンクスループットの向上

オーバーヘッドの削減

高密度ネットワークでの効率性の向上

屋外での堅牢性の向上

消費電力の削減

強化された Wi-Fi 共存

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802.11AX

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後方互換性、導入に関する検討事項、およびアッ

プグレード戦略

Wi-Fi は、ほぼ完璧な後方互換性の記録を誇っています。

すべてのパケットのプリアンブルにある従来のトレー

ニングフィールドのおかげで、15 年前の 802.11g 機器で

も 802.11ax フレームをデコードできます。802.11n 規格

にはオプションの「グリーンフィールド」モードが含ま

れていましたが、出荷機器には採用されていませんでし

た。それ以来、「グリーンフィールド」オプションはあ

りませんでした。

デュアルビーコンやその他の特別なフレームのために旧

式の機器との互換性がなくなるという、拡張範囲の屋外

機能でも、「従来の」AP ビーコンを同じ場所に配置する

ことで保護されます。

802.11ax Wave 1 と Wave 2

802.1ax が Wave 1 と Wave 2 で展開されることはすでに確

立されていますが、機能の正確な分割は決定されていま

せん。これは執筆時 (2018 年初旬) 現在の見解です。

表 6:802.11ax Wave 1 および Wave 2 の機能

これにより、802.11n または 802.11ac WLAN を 802.11x にアップ

グレードするときにさまざまな戦略が可能になります。色々と

入り交ざったトポロジで新しい AP を点在させることを好む人も

いれば、建物のフロア全体または一部を一度にアップグレード

する人もいますが、どちらでも動作します。

802.11ax AP の持続的なスループットの向上は、バックホールアッ

プグレードも促進する可能性があります。多くの AP がデュアル 1

Gbps イーサネット接続をサポートしていますが、2.5 および 5

Gbps イーサネットへの移行は長期的には魅力があるようです。

この記事では、Wave 2 の機能を取り上げ、付録にしました。

おそらく、その機能は 2020 年まで実現しないでしょう。

802.11ax の Wi-Fi Alliance 認定

2018 年初めの時点で、Wi-Fi Alliance は「Wi-Fi CERTIFIED AX」

認定の下で 4 種類の機器を認定する予定です (これらの計画

は変更される可能性があります。2019 年半ばに開始される

予定です)。

• Wave 1 の AP: これは、住居環境または企業環境でよく

知られているアクセス・ポイントです。

• Wave 1 クライアントデバイス スマートフォン、PC、そ

の他の消費者向けおよび企業向けデバイスの通常のク

ライアント。

必須およびオプションの機能

表 5:802.11ax の主な機能: 必須およびオプション

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802.11AX

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• モバイル AP: 802.11ac の認定には、AP 機能を含む低

電力の小型デバイス用の特別なオプションが含まれ

ており、802.11ax には引き続きこのカテゴリーが含ま

れています。機能とパフォーマンスが制限される可

能性があるバッテリ駆動のモバイルアクセス・ポ

イントに主に適用されます。モバイル AP は「アジャ

イルマルチバンド」認定を必要とせず、OFDMA およ

び MIMO に関する要件の多くは緩和されているた

め、モバイル AP は最大 MCS 5 のデータレートを持つ

シングルストリームデバイスになることができま

す。モバイル AP は 2.4 GHz のみ、またはデュアルバン

ドにすることができますが、デュアルバンドの場

合、20、40、および 80 MHz のチャネルをサポートす

る必要があります。

• 20 MHz のみのクライアントデバイス: このカテゴリは、

IoT センサー市場への扉を開きます。繰り返しになります

が、標準のクライアントデバイスに必須の機能の多くはオ

プションになっているため、バッテリー寿命が長く機能性

が低いシンプルなデバイスが可能になります。

パフォーマンスの見積もり

802.11ax はピークデータレートを明示的にターゲットにしてい

ませんが、総合的なパフォーマンスは最も重要な目標です。こ

の目的のために、次のセクションでは、Wi-Fi パフォーマンス

における現在の課題について説明し、パフォーマンスがどのよ

うに向上すると予想されるかについても説明します。

図 32:ネットワーク (BSS) 容量とクライアント数

クライアントデバイスの数が増えると、アクセス・ポ

イントの合計データスループットが低下することはよく

知られています。これは競合のオーバーヘッドで説明さ

れます。送信機会を求めて競合するクライアントの数が

増えると、平均待機時間も増え、データ送信に使用され

るエアタイムの量が減少します。

上のグラフは、クライアント数が少ないと利用可能な帯域幅を

満たすことができないため、最初はネットワーク容量が増加し

ていることを示しています。このしきい値を超えると、100 人

のクライアントが存在するときにキャパシティが 40% も低下

し、その後もさらなる低下傾向が続きます。オレンジのシリー

ズは、Aruba のモデルが 802.11ax 以降の大幅な改善を予測して

いることを示しています。(これ以降のグラフは 2x SS 動作で測

定されています)。

多数のクライアント

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802.11AX

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ショートパケット

図 33:ネットワーク (BSS) 容量とパケット長

パケット長が減少しても、プリアンブルと競合のオー

バーヘッドはパケットごとに一定のままです。これによ

り、オーバーヘッドが増加し、アクセス・ポイント全体

の容量が減少します。

802.11ax には、小さなパケットサイズで容量の削減を改

善するための対策が含まれています。上のオレンジ色の

シリーズは、Aruba のモデルの結果を示しています。

ナローチャネル (OFDMA)

図 34:容量対チャンネル幅

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802.11AX

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総スループットを最大にするには、40 または 80 MHz

チャネルの数を少なくするのではなく、狭い領域に多数

の AP とクライアントを持つ高密度 WLAN を多数の 20 MHz

チャネル用に設定することが一般的です。

これは BSS カラーリングによって対処される同一チャネ

ルの干渉問題のためでもありますが、AP ごとのクライ

アント装置の数を減らし、オーバーヘッドを最小にする

ためでもあります。OFDMA は、この傾向の継続と見なす

ことができます。また、OFDMA は、さまざまなメカニズ

ムを通じて、データ容量のシステムレベルでの改善に貢

献するでしょう。

上のグラフは厳密に言えば一貫しているわけではありま

せん。OFDMA によってもたらされる容量の増加は、小さ

いチャネルの傾向とはまったく同じではありませんが、

ネットワーク容量に対する OFDMA の影響を示すのに役

立ちます。

MIMO とマルチユーザー効果

異なるアンテナやデバイスとの間でデータを同時に送信

する機能は非常に強力です。802.11n ではシングルユー

ザー MIMO で最初に導入され、802.11ac Wave 2 ではダ

ウンリンクマルチユーザー MIMO、802.11ax では双方向

の OFDMA で拡張されました。

シミュレーションは、MU-MIMO が長いパケットと高い SNR に

対して最も効果的であるのに対し、OFDMA はクライアント密度

とパケット長分布の全範囲にわたって効果的であることを示し

ています。

節電とバッテリー寿命

シミュレーションでは、特に「20 MHz のみ」の動作および

OFDMA と組み合わせて TWT を使用すると、バッテリー寿命を延

ばすことができると予測されています。Wi-Fi センサーのバッテ

リー寿命が Bluetooth 低エネルギー (BLE) に近づく可能性がある

との推定もありますが、これはチップが出荷され、機器が製造

されてそれがテストされるまでは全く予想できません。

長年にわたる 802.11 のスペクトル効率、bps/Hz

ライセンス不要のスペクトルにおける LTE および 5G 波形が最近

注目されていることにより、スペクトル効率 (スペクトルの Hz

あたりに達成できるデータレート) の話題が新たな関心を集めて

います。

Wi-Fi は、スペクトル効率において強い実績がありますが、以下

に示すように、この数値は MIMO 効果に大きく依存しています。

図 35:802.11 の歴史的なスペクトル効率、bps/Hz

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802.11AX

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チャネライゼーション

802.11ac が導入されて以来、ほとんどの国で利用可能な

RF チャネルはあまり変わっていません。米国では、FCC は

2014 年に、変更された DFS テストを条件として、5150 ~

5250 MHz 帯域での屋外運用を許可し、5600 ~ 5650 MHz で

の運用の一時的な禁止を解除することを発表しました。

しかし、将来を見据え、Wi-Fi 業界では、Wi-Fi で使用され

る可能性のある無認可のスペクトルに対する活動を行う

ためにいくつかの取り組みを行っています。

図 36:802.11ax (USA) に利用可能な 5 GHz チャネル

まとめ

今後数年間は Wi-Fi のための多くの明るい見通しが得られ

ましたが、一方で大きな不確実性もあります。802.11ax

は、あらゆる機会と課題に対する Wi-Fi 業界の対応策で

あり、2019 年から 2024 年までの今後 5 年間、および次

の 802.11 の改訂版を導きます。

Wi-Fi チップの出荷台数は年間 80 億で、年間 30 億の割合

で出荷されています。すべてのスマートフォンと PC には

Wi-Fi チップが付属し、すべてのブロードバンドホームイン

ターネット接続は Wi-Fi によって終焉を迎えます。この技

術は、屋外のポイントツーポイント接続で確立され、自

動車産業や関連工場への導入をもたらします。

しかし、いままでに成功したすべての業界と同様に、Wi-Fi

はさらに迅速な成長を求めています。そこにはいくつも

の道が開かれていますが、それらのニーズを満たすため

には変更が必要になります。

モノのインターネット (IoT) が今後数年間で巨大な市場に

成長することは広く認められています。しかし、IoT に

はバッテリー駆動の機器、数百メートルにも及ぶ無線接

続、そして非常に低コストで設置面積の小さいチップが

必要です。

この市場に対して Wi-Fi が最初に行ったのは、「拡張範囲

Ah」(IEEE 802.11ah をベースにしたもの) でした。これは包括

的な規格ですが、ここ数年停止しています。いくつかの理由

から、現在チップメーカは「Ah」チップを作っていま

せん。その結果、Wi-Fi は IoT 市場の大部分を見逃す危険性

があります。802.11ax のいくつかの機能は IoT によって更に

魅力を増しますが、Wi-Fi がこの市場で大きな足跡を残せる

かどうかはまだはっきりとは分かりません。

その間に、規制の変更がどんどん進んでいます。具体的な例

として、米 FCC からの「市民ブロードバンド無線サービス」

(CBRS) の取り組みは、民間組織が 3.5 GHz 帯のスペクトラムを

使用するための準排他的ライセンスを簡単に購入できることを

望んだ、軽ライセンスが必要なバンドを提供します。CBRS に

関しては多くの活動が行われてきましたが、ルールがまだ最

終的なものではないため、いくつかの不確実性があります。

それにもかかわらず、Wi-Fi が製品計画を持っておらず、イニ

シアチブを譲っている間、それは公的および私的な LTE と 5G

サービスがこのバンドを使用するように思われます。

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802.11AX

33

他の、より広範囲な変化は、スペクトルと規制の動きに

あります。より多くの 5G スペクトラムを求めている携

帯電話事業者による大衆的な関心の中で、政府と軍の、

衛星利用者、レーダーなどの現存する者たちはスペクト

ラム共有の提案を押し進めています。例えば、2.4 GHz と

5 GHz では、比較的広い範囲のスペクトラムを持ってい

ますが、ますます混雑しています。実際、Wi-Fi に対する

脅威の 1 つは、2.4 GHz 帯域が高層ビルや都心部では使い

すぎのために「がらくた」であるという認識が高まって

いることです。業界は怠けてはいません。2017 ~ 2019

年は 6 GHz 帯の帯域を広げようと堅実に活動しており、

その努力は規制当局の共感を得ています。しかし、これ

らすべてのスレッドの結果は不確実です。継続的な成功

のために Wi-Fi が必要とするスペクトルを確保するとい

う競争は決して終わったわけではありません。

そして強力で、過激で、説得力があり、そして包括的と

いう 5G のビジョンは、Wi-Fi のすべての短期および中期

計画に迫ります。LTE の強みを活かして、モバイル通信

事業者は、家庭用ブロードバンド、コネクテッドカー、

工場や都市、企業ネットワーキングなど、今日の Wi-Fi

が支配する多くの市場に 5G を使用してコンシューマ

フォン市場から抜け出します。多くの点で、802.11ax は

5G のビジョンに対応する Wi-Fi の答えですが、Wi-Fi と携

帯電話事業者のエコシステムの違いにより、それは視野

が狭く詳細ではありません。Wi-Fi 企業は、5G が断片的

に対処している多くの問題に対する包括的な答えである

という短期的な認識に直面しています。

これらの課題にもかかわらず、Wi-Fi は大きな楽観的な見

方で未来に直面する可能性があります。20 年の間に、誰

もが知るおなじみの名前になると知らず、テクノロジーは

至るところで使用されています。Wi-Fi をサポートする企

業の間でかなりの議論が続いた 802.11ax に含まれている

機能は、最良の条件下での見出しデータレートの高速化だ

けではなく、実際の現実的な問題に対する対応であり、こ

れは多くの場合 Wi-Fi の大きな成功によるものです。

BSS カラーリング、マルチユーザースケジューリング、

下位互換性などの機能により、密集していない多くの

Wi-Fi アクセス・ポイントとクライアントデバイスが近接

して動作する輻輳地域でのパフォーマンスが大幅に向上

します。

スポーツスタジアム、空港、講義室、コンベンションセンター

のようにアクセス・ポイントが共通の管理下にある場合、新し

い機能はより高い制御性を提供し、より高いネットワーク容量

とユーザー人口全体にわたるより均一なパフォーマンスを実現

します。

OFDMA は、短いパケットを送信するクライアントや、TWT など

の新しい省電力機能の恩恵を受ける IoT センサーなどの低帯域幅

デバイスに最適です。これらおよび「20 MHz のみ」の機能は、

この市場に合わせた世代の超低電力チップを生み出すはずです。

そして、Wi-Fi 機器、屋外のポイントツーポイントワイヤレスお

よびポイントツーマルチポイントワイヤレスの市場では、見過

ごされがちな市場が拡大しています。確かに、農村部への家庭

用ブロードバンドサービスのための 5G をターゲットとした固定

無線アクセスネットワークの新しい波の初期の競争相手は、そ

れらの優れた価格と性能のために 4G または 5G よりも Wi-Fi チッ

プを使用しています。

それは今後どのようになるのでしょうか。連係も組織化も携帯

電話の世界よりはるかに緩やかな Wi-Fi エコシステムは、予期し

ない組み合わせで機能を組み立てて新しい問題を解決できるこ

とを示してきました。802.11ax の機能は、現在 Wi-Fi テクノロジ

の深い専門知識を持っている企業に、すでに出現している市場

に参入し、新しい機会に対応するためのツールを提供します。

最も可能性の高い結果は、歴史がそれ自体を繰り返し、Wi-Fi が

今後の変化の中でその成長を続けるということです。

付録 (既存の機能と Wave 2 に対応した新しい 802.11AX 機能)

802.11ax に引き継がれる 802.11ac の既存の MIMO 機能

802.11ac で MIMO およびビームフォーミングに使用されるすべ

ての機能は、802.11ax にも引き継がれています。802.11ax は、

Wave 1 にダウンリンク MU-MIMO (新しい制御構造を持つ) を実

装し、Wave 2 にアップリンク MU-MIMO を実装します。

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図 37:SU MIMO 技術、マルチアンテナクライアント

802.11ax のビームフォーミングでは、常に最適な送信信号の重み付けを計算するために、クライアントデバイスから AP への明

示的なフィードバックが使用されます。これは 802.11ac から変更されていません。

図 38:ビームフォーミング・フィードバック

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付録 802.11ax Wave 2 の機能 ― アップリンク MU-MIMO

アップリンクマルチユーザ MIMO は、ダウンリンクの多様性よりも単純であり、サウンディングおよびアンテナ重み付けは必

要とされません。

図 39:Uplink multi-user MIMO transmission

アップリンクマルチユーザ MIMO で最も困難なタスク

は、さまざまなクライアントからの波形を AP のアンテ

ナに到達するときに同期させることです。

そのようなグループを識別するとき、AP はそれらの信

号とトラフィックのいくつかの側面を考慮してから、必

要に応じて同時に送信するように指示します。

この機能は、アップリンク方向で OFDMA と同じ制御メ

カニズムを使用しますが、その複雑さのために Wave 2

に延期されます。

付録 802.11ax Wave 2 の機能 ― MU-MIMO と OFDMA の

組み合わせ

上記のように、単一パケット内の MU-MIMO と OFDMA

の組み合わせは、理論的には可能ですが、実際には複

雑で、サポートは Wave 2 に延期されます。

付録 802.11ax Wave 2 の機能 ― 空間再利用

当初から、Wi-Fi は CSMA/CA と呼ばれるメディアアクセ

スプロトコルを使用していました。AP を含むすべての

デバイスは、送信するパケットがあるときに電波を感

知します。

特定の電力しきい値を超えるエネルギー、または無線の Wi-

Fi フレームを感知した場合、それらは送信を延期し、後に

なって空中に戻るためにバックオフアルゴリズムを使用

し、送信前にそれが明確であることを再度確認します。

CSMA/CA プロトコルは、Wi-Fi に対して成功しています。こ

れは分散されているため、各デバイスが独立して送信を決

定することになります。これにより、調整されていないさ

まざまな基本サービスセット (BSS またはセル、それぞれに

アクセス・ポイントがあります) が重複します。

CSMA/CA が原因で、Wi-Fi アクセス・ポイントは、チャネル

やその他の設定を調整することなく、互いに隣接して設定

でき、それぞれがクライアントとの正常な通信をサポート

できます。Wi-Fi は無線を共有するのに非常に優れており、

セルラーネットワークなどのセルごとの管理を必要としま

せん。しかし、都心やアパートの建物のように、調整され

ていない BSS の多くがスペースで重なっている場合、

CSMA/CA はネットワーク容量の点で非常に非効率的になる

可能性があります。

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802.11AX

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図 40:BSS カラーリング: 同一チャネル干渉

その理由は、無線信号は、よく円や六角形で描かれるよ

うにきちんと閉じ込められているのではなく、遠くに広

がっているからです。AP とクライアントデバイスが十分

な送信電力を使用して BSS の半径を超えて信頼性の高い通

信を行っても、それらの信号は「セル」のエッジでまだ

かなり高く、遠くに減衰するにつれて隣接セルに拡散し

ます。AP が管理されている企業ネットワークでは、RF

チャネルプランは周波数再利用の分離を試みているた

め、同じチャネル上の AP は遠く離れた状態に保たれ、互

いに干渉しません。しかし、80MHz チャネル (802.11ac で

導入された) が広く使用されているので、5 GHz 帯域でも、

重複しない少数のチャネルしかサポートされていません。

したがって、企業ネットワークでも、同じチャネル上の隣

接 AP が避けられない場合があり、AP が調整されていない

場合、同じチャネルまたは同一チャネルの干渉が一般的に

なる可能性があります。そのようなシナリオでは、2 つ以

上の AP と多くのクライアントデバイスが存在していても、

CSMA/CA によって他のすべてのデバイスが遅延するため、

一度に送信できる AP またはデバイスは 1 つだけです。

BSS カラーリングは、「同じ BSS」送信と「遠方の BSS」

送信を区別し、異なる CSMA/CA 電力しきい値を適用する

ことによって機能します。これにより、2 つのパワース

レッショルドに加えて、各クライアントデバイスは、メ

ディアが占有される期間を示す 2 つのネットワーク割り

当てベクトル (NAV) を保持するため、異なるセルでの同時

送信が可能になります。

この変化は明確に前向きなものではありません。SINR (信

号対雑音干渉比) が低下しているために、同時送信が一方

または両方のフレームを受信側で失敗させることがあり

ます。しかし、この機能により、再送信によってエラー

回復が可能になり、シミュレーションでは実際の Wi-Fi 配

置における大幅な容量の向上が予測されます。

802.11ax 伝送で「BSS カラー」ラベリングを使用するオプ

ションは標準の一部ですが、適切な「カラー」を使用し

て AP を設定するためのアルゴリズムとメカニズムは機器

ベンダーに任されています。802.11ax が発表されるにつれ

て、さまざまな自動および半自動設定機能が見られる可

能性があります。

付録 802.11ax Wave 2 の機能 - 屋外および長距離運用

802.11ax には、主にポイントツーポイントリンクを目的と

した、屋外および長距離の運用に役立つ多数の機能が含

まれています。主な技術革新は、シングルユーザーの拡

張範囲フレームです。

図 41:BSS カラーリング: ビフォー・アンド・アフター

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802.11AX

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図 42:シングルユーザー拡張範囲フレーム

フレームはプリアンブルに HE-SIG-A フィールドが繰り返

し含まれているため、信号のフェージングや干渉に対す

る耐性が向上しています。同様の理由から、空間スト

リームを 1 つだけ使用し、データレートを低くすることが

仕様に記されています。

長距離動作では、より長い巡回プレフィックスオプション

(1.6 および 3.2 usec) をこのフレームで使用し、長い遅延の

マルチパスと競うことができます。

範囲を拡大するための他の手段には以下が含まれます。

• パケットに 10 MHz の帯域幅を使用するオプション

(106 RU サブチャネル)

• デュアルビーコン、繰り返しビーコン (主流のデバイ

スでは読み取ることができないため、これには従来

のビーコンが必要です)

• 同じ信号が 2 つのサブキャリアにまたがって複製され

るデュアルサブキャリア変調 (DCM)。これは 802.11ax

の新機能です。

これらのテクニックはすべて一緒になっており、おそら

くそれらはすべて Wave 2 に延期されます。

付録 ― 略語

3GPP 3rd Generation Partnership Project (第三世代携帯電

話の無線通信技術に関する標準化プロジェクト)

AC Access Category (アクセス・カテゴリ)

AID Association Identifier (アソシエーション識別子)

A-MSDU Aggregated MAC Service Data Unit (集約 MAC サー

ビス・データ・ユニット)

A-MPDU Aggregated Protocol Service Data Unit (集約 MAC プ

ロトコル・データ・ユニット

AP アクセス・ポイント

BAR Block-Ack Request (ブロック ACK 要求)

BCC Binary Convolutional Coding (バイナリ畳み込み符号)

BQRP Bandwidth Query Report Poll (帯域幅クエリレポー

トポール)

BRP ビームフォーミング レポート ポール

BSRP バッファ ステータス レポート ポール

CP Cyclic Prefix (巡回プレフィックス)

CSI Channel State Information (チャネル状態情報)

CSMA/CA 搬送波感知多重アクセス/衝突回避

CTS Clear To Send (送信可)

DCM Dual sub-Carrier Modulation (デュアル サブキャリ

ア変調)

DFS Dynamic Frequency Selection (動的周波数選択)

DL ダウンリンク

EIRP Effective Isotropic Radiated Power (等価等方放射電力)

ER 広域な信号範囲

FCC Federal Communications Commission (連邦通信委

員会)

FDD Frequency Division Duplex (周波数分割双方向)

FFT Fast Fourier Transform (高速フーリエ変換)

GCR Group Cast with Retries (再試行を用いるグルー

プキャスト)

GI ガードインターバル

HE 高効率

HT High Throughput (高スループット)

HEW High Efficiency Wireless (高効率ワイヤレス)

LTF ロング・トレーニング・フィールド

MIMO Multiple-Input, Multiple-Output (多入力・多出力)

NDP NULL データ・パケット

OFDM Orthogonal Frequency-Division Multiplexing (直交

周波数分割多重)

OFDMA Orthogonal Frequency-Division Multiple Access (直交

周波数分割多重接続)

L- レガシー

LDPC Low Density Parity Check (低密度パリティ検査)

MAC Medium Access Control (媒体アクセス制御)

MCS Modulation and Coding Scheme (変調および符号

化方法)

MU マルチユーザー

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RF 無線周波数

RSSI 受信信号強度

RTS 送信要求

RU リソース ユニット

SINR 信号対干渉雑音比

SNR 信号対雑音比

STA ステーション

STF ショート・トレーニング・フィールド

STS 時空間ストリーム

STBC 時空間ブロック符号化

SU シングルユーザー

TCP/IP トランスミッション コントロール プロト

コル/インターネット プロトコル

TDD 時分割複信

NAV Network Allocation Vector (ネットワーク割当

ベクトル)

TDM Time Division Multiplexing (時分割多重化)

NDP NULL データ・パケット TDMA Time Division Multiple Access (時分割多元接続)

NDPA NULL データパケット・アナウンスメント UL アップリンク

PE Packet Extension (パケット拡張) VHT Very High Throughput (超高速スループット)

PLCP Physical Layer Convergence Protocol (物理層

コンバージェンス・プロトコル)

Wi-Fi 略語ではありません

PPDU PLCP プロトコル データ ユニット WISP Wireless Internet Service Provider (無線インター

ネット サービス プロバイダー)

3333 SCOTT BLVD | SANTA CLARA, CA 95054

1.844.473.2782 | 電話: 1.408.227.4500 | FAX: 1.408.227.4550 | [email protected]

www.arubanetworks.com WP_802.11ax_053018

付録―参考資料

• IEEE「TGax のための 15 / 0132r15 仕様フレームワーク」、

2016 年 5 月

• IEEE「P802.11ax™ および D2.0 に関する情報技術標準草

案」、2017 年 11 月

• Wi-Fi Alliance 「Wi-Fi ax の相互運用性テストのためのマー

ケティング要件文書」、バージョン 1.1、2017 年 11 月

(非公開)

• Wi-Fi Alliance 「認定された ax 対応製品の相互運用性テスト

のためのマーケティング要件文書、ドラフト付録:ax 機能

の説明」、バージョン 1.4、2017 年 (非公開)