グランドラウンド - 長崎大学病院...1. 問診は簡潔に:...

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Department of General Medicine, Nagasaki University Hospital 長崎大学病院 合診療科 助教 井上圭太 グランドラウンド 外来診療やってみようZe! ~症候診断入門~

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Department of General Medicine, Nagasaki University Hospital

長崎大学病院 総合診療科 助教

井上圭太

グランドラウンド

外来診療やってみようZe!

~症候診断入門~

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outline

1.

2. 症候診断入門

3.

4.

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プライマリケア現場における外来診療のポイント

1. 問診は簡潔に: 大学よりも典型例が多い

2. 診察は問診をもとに的を絞って: 全身診察する時間はない

3. 解釈モデルに気を使って: Dr shoppingは防ごう

4. 復習が大事!!:知らなかったものは仕方がないが次は見逃さない!

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問診のこつ:10分以内(5分以内?)で

最も重要なのは病歴:

問診で診断の80%は決まる!(身体所見10%, 検査10%)

全ての診察手技を行なうことは困難なため問診が最も重要

プライマリケアの場では、典型的症例の方が多いのでシンプルに!

多くの患者を診ることもプライマリの役割

国家試験問題と違って有用な情報と無用な情報が混在している

こちらの質問の意図と違う答えが返ってくる→聞き出すテクニックも必要

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Fagan’s nomogram聞いたことある人?

検査前確率(問診・診察)

尤度比(診察・検査)

検査後確率

例1:検査前確率1%

例2:検査前確率40%

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Fagan’s nomogram聞いたことある人?

つまり

いくら有用な検査をしても検査前確率が低ければダメ

きちんと問診を取り検査前確率を上げることが大切!

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情報収集

どんな主訴に対しても大きな聞き漏らしなく網羅的に情報を集めることが重要

覚え方「LQQTSFA」 「OPQRST」などがある

L:Location / 部位Q:Quality / 性状Q:Quantity/ 程度T:Timing / 時間経過S:Setting / 発症状況F:Factors/ 寛解・増悪因子A:Associated symptoms / 随伴症状

O:Onset / 発症P:Provocation Palliation/ 増悪・寛解因子Q:Quality / 性状・程度R:Radiation Region/ 放散・部位S:Severity・site / 重症度・部位T:Time course / 経過

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虎の巻

O/Q/S/Tの順で聞く:ここでプロブレムリストを挙げ

鑑別を3つ程度考える

鑑別疾患についてP/Rを具体的に聞き出すP:増悪寛解因子

悪)症状がこうしたら良くなるとか悪くなるとかありますか?

良)【消化器症状を念頭において】食事の前と後では症状は違いますか?

R:関連症状

悪)何か他に気になる症状はないですか?

良)【悪性リンパ腫を念頭において】寝汗をかきませんか?体重は減っていないですか?

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プロブレムリストから診断を考える:時短版

1. 個々のプロブレムから鑑別診断を考える

2. 鑑別の数が少なくて済むプロブレムから攻める

3. プロブレムをくくる(グループ化)

4. 直感的に認識する

鑑別診断の数が多くなってしまう

効率良いがいつも使えるとは限らない

グループ化のコツを掴むまで試行錯誤・経験が必要

グループ化に慣れてくると直感的にひらめくことも増えてくる星空を眺め、特徴的な星の並びから星座に気づくように

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鑑別疾患を挙げる:じっくり版患者が検査などに行っている間にじっくり考える!

「どこで(臓器)」+「何が起こっているのか(病因)」を考える

1. 臓器→解剖学的に考える

解剖学的位置、放散痛、神経支配、遠位・近位

2. 病因→機序を考える 覚え方「VINDICATE」が有名V

I

N

D

I

C

A

T

E

Vascular:血管性Inflammatory:炎症性Neoplasm:悪性腫瘍Degenerative:変性Intoxication:中毒性Congenital:先天性Autoimmune/Allergy:自己免疫性/アレルギー性Trauma:外傷性Endocrine:内分泌性

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鑑別疾患を挙げる:機序別に考える

例1:低蛋白血症

1. 蛋白が漏れている

2. 蛋白が摂取できていない

3. 蛋白が吸収できていない

4. 蛋白が合成できていない

5. 上記は正常でも、異化が亢進

例2:発熱

1. 炎症による発熱

2. 体温中枢異常

3. 交感神経緊張

4. 末梢での体温調節異常

5. 詐病

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情報収集 問診は患者が入ってくるその瞬間から始まっている

診断を絞り込むには陰性情報も確認しカルテに記載する。「所見が陰性であること」と「所見が陽性か陰性か分からない」では全く情報の質が異なる。

有病率を考慮する→可能性が高い疾患をリストの上の載せる

例)頭痛:片頭痛 約 %、群発頭痛 約 %、もやもや病 %

あらゆる情報を:Biopsychosocialモデルの考え方

→生物学的問題(bio)だけでなく、心理的問題(psycho)、社会性問題(social)にまで考慮する必要性がある

8 0.07 0.00035

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鑑別診断リストはいくつ必要?

最初から完璧を求めない

経過中にヒントが出てくる

最初に鑑別に入れるべき

見逃したくない疾患

頻度が多いプライマリ疾患

〜Too many differentials will kill you!~

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蹄の音を聞いたら rule of few zebras ‘’when you hear hoofbeats, think of horses, not

zebras’’

→「蹄の音を聞いたらシマウマではなく馬をまず考えろ」

しかし、シマウマを頭の片隅に置いておく必要がある

→どういう時?「アフリカにいるとき!(特殊な環境)」

有病率を考慮する→可能性が高い疾患をリストの上の載せる

例)頭痛:片頭痛 約8%、群発頭痛 約0.07%、もやもや病 0.00035%

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オッカムの剃刀&ヒッカムの格言(Occam’s razor & Hickam’s dictum)

Occam’s razor

「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきではない」

→プロブレムリストの大部分を説明できる疾患があれば、個別の疾患が多数あるよりもより疑わしい

Hickam’s dictum

「コモンな疾患は複数同時に併存することが多い」

→Saintの三徴(食道裂孔ヘルニア、胆石、憩室症)

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鑑別疾患を絞り込む

症状の時間経過を考慮する→スピード・トレンド・持続時間

1. スピード:発症から症状完成まで

2. トレンド:増悪・寛解・反復

3. 持続時間:秒・分・時~月・季・年まで

時間

症状経過のパターン

時間

症状経過のパターン

スピード:突発、トレンド:持続外傷・破裂・閉塞など物理的な原因が疑われる。内因性なら血管イベントをまず疑う。

スピード:ゆっくり、トレンド:増悪進行性の病態を考える。時間経過により、日単位:感染症、週~月単位:膠原病・悪性腫瘍、年単位:変性疾患が疑われる。

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鑑別疾患を絞り込む

時間

症状経過のパターン

時間

症状経過のパターン

スピード:さまざま、トレンド:反復可逆性の病態を考える。狭心症などの一部の血管性疾患を除き、器質的変化を伴わない機能性の障害が疑われる。

スピード:ゆっくり、トレンド:不変長期にわたり進行しないものは、緊急性は低い。先天性、心因性などを考える。

•上記のような発症のスピード・トレンドのパターンから鑑別診断を絞り込む

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解釈モデルに気を遣える医者になろう

診断および治療方針に患者が満足したかどうか、患者を観察しよう

→正しい治療でも患者が満足しているのとは別!!

→ここを間違うとDr.shoppingに繋がる

例:上気道症状でウイルス性が考えられるが抗生物質を欲しがっている

FIFE(かきかえ)

1. Feelings(感情:か 今どう感じているのか)

2. Ideas(解釈:か 自分の病気についてどう考えているのか)

3. Functions(影響:え 問題がどう生活に影響しているのか)

4. Expectations(期待:き 医師・病院に何を期待しているのか)

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復習が大事!!エビデンスを調べよう

教科書に載っているような典型例は少ない

経験した症例は、それぞれの症状や検査所見がどの程度の割合で認められるのかなどEBMを蓄積して行こう

自分が考えても思いつかない

稀な疾患は文献で検索するしかない

大学病院には気軽に調べることができる環境が揃っている!使わない手はない!

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復習 症状ごとの頻度を調べてみよう

例:発熱、咳 例:腰痛

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フローチャートを活用しよう

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復習 情報の解釈(SpPinとSNout) SpPin:Specificity Positive → rule in

→特異度の高い徴候あれば、病気あり

SNout:Sensitivity Negative → rule out

→感度の高い徴候なければ、病気なし

尤度比(lilelihood ratio):ある所見(所見がないこと)がその疾患の可能性をどれほど増加(減少)させるのか

・LR+:10以上で有意、5以下ではさほど有意でない

・LR−:0.1以下で有意、0.5以上ではさほど有意でない

所見ごとの感度・特異度を知っていると診断に非常に有用となる!

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復習 情報の解釈:具体例例

うつ病スクリーニングにおける2 questions(抑うつ気分、興味・喜びの喪失がほぼ1日中2週間以上続いているか)

→感度: %、特異度: % 当てはまらなければほぼ除外できる

インフルエンザ迅速検査 → 感度 、特異度

虫垂炎

発熱 LR+、LR−ともに1

筋性防御 感度46%、特異度92%、LR+:5.5、LR−:0.59

腹部CT 感度98%、特異度98%、LR+:49、LR−:0.05

58% 96%

96 57

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自分なりのClinical Pearlを蓄積していこう!

Clinical Pearlとは?

:臨床医の知識と経験から語り継がれてきた、現場での診断・治療に役立つ「格言」のようなもの

• 大先輩がまとめたpearlに触れるも良し• 自分なりのpearlや指導医からのpearlを蓄積し次回からの診療に活かす。

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1. 自己紹介

2. 症候診断入門

3. 時間がある限り症例紹介

4. 医局勉強会の紹介

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総合診療科 朝塾

月・水:8:00~8:30

月:プライマリ疾患のEBMを中心に

水:医療コミュニケーションを中心に

準備不要の勉強会、朝ご飯食べながらどうですか?

金:7:30~8:30

エコー手技の練習会(定員3名)

心・腹部エコーの基本的技術を繰り返し練習しています。

総合診療科の活動紹介

井上 圭太長崎大学病院 総合診療科

初期研修医家庭医コースの4名

家庭医療コース勉強会

1-2ヶ月に一度WS、ディスカッション形式で、コース登録者以外でも参加歓迎

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1.

2.

3. 時間がある限り症例紹介

4.

• プロブレムのグループ化• クリニカル・パールの蓄積

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症例168歳、男性主訴:発熱、腰痛現病歴:当科受診の約5週間前に上気道炎症状、発熱を認めたが、1週間で自然軽快した。数日後に山登りをした後から腰痛、右肩痛、38から39℃の発熱を認めるようになり整形外科を受診し、腰椎椎間板ヘルニア、右肩腱板断裂と診断された。発熱の改善はなく、腰痛は増強し歩行困難となったため精査加療目的にて当科紹介入院となった。

現症:体温38.6℃。胸部、腹部に異常なし。脊椎に叩打痛有り

検査成績:検尿;異常なし、WBC; 14200(Seg. 88%)、CRP; 7.88、AST37、ALT44

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症例251歳、男性

主訴:発熱

現病歴:12月20日より38.7℃の発熱と咽頭痛が出現。翌日近医を受診。胸部X線では異常なく、白血球12400、CRP10以上のため、抗生剤(クラビット)の投与を受けた。同22日改善が見られぬため、再受診。ロセフィンの点滴投与及び、プレドニン30mgの投与(3日間)を受け、その後解熱した。12月29日より再度熱発し、プレドニン30mgを再投与(3日間)したところ解熱した。1月4日より39℃の発熱を認め、1月6日精査目的で当科紹介となる。

現症:咽頭;発赤なし、頚部;リンパ節触知せず。比較的堅い甲状腺腫大あり、軽い圧痛なし。胸部、腹部に異常なし。

検査成績:検尿;異常なし、WBC; 14400(Seg. 77%)、CRP; 14.50、AST; 39、ALT; 95、FT3 7.97、FT4 3.14、TSH 0.014

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71才女性主訴;右耳介後部痛、微熱既往歴;X-2年2月 右側頭部皮下膿瘍 敗血症 肺塞栓同年5月 右頭部皮下膿瘍(Peptostreptococcus micros )同年8月 右眼瞼下垂(詳細不明 自然軽快)

現病歴;X年2月中旬頃より激しい右耳介後部痛出現。A耳鼻咽喉科、外科受診するも異常を指摘されず、3月12日B脳神経外科受診。採血上CRP:19mg/dlと著明な炎症反応を認めたが、頭部CT、MRI、髄液検査にて異常所見認めず、右乳突蜂巣の閉塞が疑われたため、C耳鼻咽喉科を紹介受診。頭頚部診察、頚部CTでも異常認めず、D病院紹介受診。胸部CTにて両肺に多発する小結節影を認めた。転移性肺腫瘍等が疑われ、精査加療目的にて3月19日当科紹介入院となった。現症;体温37.5℃、右耳介後部に圧痛を伴う索状物を触知検査成績;WBC 14700、CRP 25.83

症例3

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症例4

患者:22歳、女性

主訴:頭痛、発熱

現病歴:7/26に38.5℃の発熱および、頭痛出現。近医にて抗生剤、解熱鎮痛剤処方されるも、軽快せず、7/30当科受診。WBC5700/μl、CRP0.54、肝酵素上昇あり、neck stiffness認めず。ウイルス感染症を疑い、前医処方続行で経過見ていたが、改善せず、8/5に頭痛にて夜間救急外来受診。頭部CTで異常を認めなかった。8/6精査目的にて入院となる。

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既往歴、家族歴:特記事項なし診察上明らかな異常所見なし• 検査結果:

WBC:12300/μl(Stab:2, Seg:39, Lym:47, Mo:4, Eo:5, Ba:1, At-Ly:2), CRP:0.47mg/dl, T-Bil:0.5mg/dl, AST:70IU/l, ALT:137IU/l, ALP:406IU/l, LDH:355IU/l, γ-GTP:66IU/l,

甲状腺ホルモン正常, EBV:既感染,

HAV(-),HBV(-),HCV(-),

腹部CT:軽度の脾腫、その他異常なし

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症例5

患者 68歳 女性

主訴 繰り返す発熱

現病歴・2年前に発熱を認め他院入院.明らかな感染徴候を認めなかったが、炎症反応上昇を認め抗生剤にて治療したところ、解熱し退院となる.3カ月後に同様の発熱を認め、以後入退院を繰り返していた.半年前からは、抗生剤を使用せずとも、NSAIDs単独内服により数日で解熱することが分かり以後は抗生剤使用せずに経過している.各種検査行うも原因判明せず、精査目的で当科紹介入院となった.

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現症:眼瞼結膜 著明な貧血

左下腹部 圧痛ではないが違和感あり

検査:WBC:10200(seg:83%)、Hb:6.1、CRP:12.6、血沈169mm/hr

腫瘍マーカー、自己抗体:明らかな異常なし

培養検査(尿・血液・便):陰性

内視鏡検査:上部・下部消化管、耳鼻科領域異常なし

画像検査:各部CT、PET/CTでも異常なし

骨髄検査:異常なし

経過:血清陰性関節炎などを念頭にPSLで治療→反応なし

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症例6患者:75歳、女性

主訴:発熱

既往歴:2型糖尿病

現病歴:平成24年11月頃より悪寒、全身倦怠感が出現。近医受診し抗生剤での加療が行われたが改善なく、同年11月16日、病院紹介入院となった。血液検査で汎血球減少、高LDH血症、血中β2-MGの上昇あり、血球貪食症候群疑われEBV,CMVチェックされたがいずれも既感染のパタ

ーンであった。悪性リンパ腫疑われ骨髄穿刺施行されたがMDSの可能性がある程度で他に有意な所見なし。精査加療目的に当科紹介入院となった。

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検査所見

血液検査赤血球血色素ヘマトクリット血小板白血球

/μℓ

/㎗%/μℓ

/μℓ

257万8.3

24.5

7.0万1800

LDH

γ-GTP

CRP

sIL2-R

484

56

6.14

7448

IU/L

IU/L

mg/ml

U/L

造影CT

リンパ節腫脹の指摘なし。脾腫あり。脾臓内に腫瘤性病変は指摘できず。GIS

慢性胃炎の所見はあるが、悪性リンパ腫を示唆する所見なし。PET-CT検査施行脾臓、椎体~骨盤骨にFDG集積あり。肝臓に軽度のFDG集積あり

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第一部まとめ:不明熱診断のためのキーワード症例1:腰痛・脊椎叩打痛

症例2:甲状腺圧痛+腫大

症例3:右耳介後部痛+肺結節影

症例4:肝機能異常と異型リンパ球

症例5:無治療で軽快&再燃→遺伝子検査

症例6:汎血球減少や局所症状なし→血液疾患

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36才 女性主訴:嘔気、全身(特に下腹部)の疼痛現病歴:

X-1年暮れからX年1月にかけて忙しかった

X年 1/2長距離運転あり、1/3感冒様の全身関節痛あり

1/4 A病院受診、途中で嘔気・下腹部痛出現し入院、1週間後退院.退院後も嘔気持続し、かかりつけ医から2/8 当科紹介入院予定としてが、入院前に症状悪化ありB病院入院. 腹部CT、GIS、ECG、婦人科診察で異常なし.点滴のみで症状軽快し、退院.

3/3 症状軽度残存あり、精査目的で当科入院.

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既往歴:16才 卵巣一部摘出 24才 ANA高値で精査

家族歴:父 横隔膜腫瘍、母 心疾患、兄 下垂体腫瘍

生活歴:仕事 警察事務、喫煙なし、機会飲酒、未婚:0妊0産

アレルギー:喘息薬、卵黄

現症:体温36.7℃、血圧132/69mmHg、脈拍89/分、

結膜貧血・黄疸なし、心音・呼吸音:異常なし、腹部:平坦・軟、圧痛軽度あり、腸蠕動音弱、下腿浮腫+/-

・腹痛について:中学生頃から倦怠感があるときに出現し、年に2〜3回点滴治療を受けていた。強いときには嘔吐あり。入院後、同室者との関係で発症あり。

・頸部〜上肢痛、下肢痛:過去には腹痛・嘔吐時にあったが、入院後は関係なく発

症。朝、夕に多く、痺れるような痛みで、さすったり、温めると症状を忘れることができる。

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その後の経過

心療内科受診勧められ、2/20 SNRI、スルピリドで治療開始

当科での検査でも特に異常なく(頸部〜骨盤CT、CF、腹部

エコー、血液検査)、当院の精神科にも紹介し、身体表現性障害の診断となり3/13退院。

退院後、血圧高値が持続し、視野狭窄を認め4/3C病院入院

となり高血圧性脳症の診断も、高血圧の原因は特定できず。4/10より手のふるえ・脱力が出現し、四肢筋力低下が進行、4/14球麻痺症状出現、4/23より呼吸状態の悪化あり気管内挿管・人工呼吸管理となる。

4/28当院神経内科転院となる

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症例8

21歳、女性

主訴:右季肋部痛

現病歴:2週間前より心窩部より右季肋部にかけての腹痛が出現し、次第に増強するため近医を受診。胃内視鏡検査、エコー検査で異常を認めず、神経性胃炎として治療を受けていた。改善を認めないため、当科を受診した。腹痛は深呼吸時、体動時に増強し、仰臥位で眠れないほどであった。発熱は認められなかった。

現症:右季肋部に著明な圧痛あり。Murphy徴候陽性。

検査成績:検尿;異常なし、WBC; 6900(Seg. 65%)、CRP; 0.38、AST; 23、ALT; 12

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症例9

80歳、男性

主訴:便秘

現病歴:3週間前より便秘傾向(5日に1回)。1週間前より排便がないため心配となり来院した。

現症:体温37.2℃、脈拍70/分、心音清、呼吸音清、腹部著変無し。

検査成績:検尿;異常なし、WBC;18200 、

CRP; 16.63、AST; 81、ALT; 82

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症例10

症例 66歳、男性

主訴 胸水貯留

既往歴:僧帽弁閉鎖不全症、慢性心房細動

現病歴 他院にて僧帽弁閉鎖不全症に対してMaze手術を施行した。その1ヶ月後より右胸水が出現、原因不明であったが、ステロイド投与にて消失した。半年後に再度右胸水の出現、腹水、心嚢水の貯留を認め、精査目的にて当科入院となった。心エコー異常なし、血液各種検査でも異常なし

胸水:漏出性、細胞診陰性、細菌培養陰性

腹部エコーで肝静脈、下大静脈の拡張を認める

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症例11

症例 22才 女性

主訴 嘔気・嘔吐

既往歴・家族歴 特記事項なし

現病歴 受診日前日の昼食後より嘔気出現し、持続していた。同日夕方に嘔吐を認めた。腹痛・下痢・発熱は認めなかった。その後も症状改善なく持続し、翌日早朝にも嘔吐を認めた。その後も嘔気の改善認められないため当科受診となる。外来受診時にも嘔吐あり、嘔吐物には前日の食事内容物を含んでいた。生ものの摂食歴なし。

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現症・検査所見

現症 身長163cm 体重51kg BMI 19.2kg/m2

(5ヶ月前に就職してから10kg減)

職業 知的グループホーム勤務 (ヘルパー見習)

血圧121/81mmHg 心拍65bpm 体温36.0℃

腹部 軟 右上腹部軽度膨隆

normal bowel sound 聴診上振水音(+)

血液検査 WBC8600/μl, RBC490万/μl, Hb12.3g/dl, Plt33.9万/μl, CRP0.03mg/dl, Na141mEq/l, K3.7mEq/l, Cl108mEq/l, TP8.3g/dl, Alb5.0g/dl, BUN15mg/dl, Cr0.62mg/dl, Amy113IU/l, T-Bil0.7IU/l, AST19IU/l, ALT16IU/l, ALP217IU/l, LDH183IU/l, CK83IU/l

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症例12

症例:20歳、女性 (長崎大学看護学生)

主訴:心窩部痛

現病歴:7日前より心窩部痛の痛み、痛みに一致して索状物を触れることで近医病院外科を受診。デスモイド腫瘍などを疑われ造影CT施行するも診断に至らず、精査目的にて当科紹介となる。荷物を持って看護学部前の坂道を上ると疼痛部位が痛くタクシーで通学するほど。

現症:心窩部にかけて圧痛を伴う索状物を触知。

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症例13:42歳男性 理学療法士

主訴:吃逆(しゃっくり),体重減少,複視,左上下肢・前胸部のしびれ

現病歴:生来健康.2011年1月初頃より食事を摂ると吃逆が出現するようになった.吃逆は長時間持続し,苦痛を伴った.このため食事が摂れず体重減少を来すようになり,地元総合病院を受診.原因精査目的で入院後頭部MRI検査,消化器系の検査が行われるも,GISにてGERDの所見を認める以外には特に異常なし.その後複視や左鎖骨上部のしびれ(触れると左肩後部にビーンとつるような痛み)など多彩な症状を訴えるようになった.眼科では「開散不全」とされ,器質的異常については指摘されなかった.担当医の判断でプラセボを用いられ,吃逆の若干の効果を認めたことから心因性を疑われ退院.精神神経科に紹介され,全般性不安障害の診断のもと抗不安薬の処方を受けた.退院後再び吃逆出現.またしびれは左上下肢・左前胸部に移動し,別の病院を受診したところ,精査を勧められ,当科紹介入院となった.

既往歴・家族歴:特記事項なし

生活歴:機会飲酒,現在禁煙中(20~42歳,20本/日)

解釈モデル「いったいなんなんだ?逆流性食道炎でこんなにいろんな症状がでるものなのか?」

ストレスの自覚なし 仕事:楽しかった 家庭円満

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身体所見

身長 168cm 体重 52kg(2ヶ月間で12kg減)

BT 36.6℃ BP 148/101 mmHg Pulse 100 /min, regular.

るいそう著明 意識清明

貧血・黄疸なし 右方>左方注視時に複視を認める

対光反射:異常なし

頚部に異常なし Jackson試験:陰性

胸腹部に異常所見なし

皮膚に異常なし 四肢に異常なし 感覚異常:左上下肢し

びれ

深部腱反射:全体的に亢進

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診断へのキーワード まとめ

症例7:若年時からの症状、神経症状(中枢・自律)

症例8:若年女性右季肋部痛、肝酵素上昇なし

症例9:高齢者の問診・診察上の注意点

症例10:開心術後、右心不全

症例11:体重減少者の急性嘔吐 腹痛なし

症例12:皮下の索状物 snap diagnosis

症例13:持続する吃逆、その他神経症状

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急性の浮腫;どのような鑑別を考える?

イメージ

浮腫前 浮腫後

症例1:21歳女性 足背に出現1週間前に出現し消退しない症例2:48歳男性 10年以上前から年に1−2回出現。

今年に入り半年で4−5回出現

画像:http://www.haea.org/より

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Take home message

血管性(突発性)浮腫の鑑別疾患アレルギー性血管性浮腫→Quincke浮腫

遺伝性血管性浮腫

後天性血管性浮腫

ACE阻害薬による血管性浮腫

物理的刺激による血管性浮腫

好酸球増多をともなう好酸球性血管性浮腫

特発性血管性浮腫

堀内孝彦:日本医事新法 2011

それらに加え、RS3PE症候群などの膠原病疾患など

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25歳 男性 主訴:嘔吐

数年前から原因不明の嘔気嘔吐があっていたが、ここ数ヶ月悪化しており仕事にも影響している(実際に嘔吐もある)。頭部・腹部画像検査や胃カメラも行ったが異常なかった。思い当たることはないが紹介された心療内科で抑うつと診断され薬物治療行うも効果実感できず精査希望され受診となった。

既往歴 軽いアレルギー性鼻炎のみ

生活歴 CATV会社でインターネット部門勤務 デスクワークでストレスなし

血液検査 WBC(Eo6%)、CRP正常、その他血液で異常なし

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84歳 男性 主訴:傾眠、一過性意識消失

既往歴:肺血栓塞栓症、下垂体腺腫術後

現病歴:特養入所中で訪問診療を受けていた。8月より、一過性に血圧低下を伴った意識レベル低下が出現し、頻度が増えてきている(月1回→週1回)。11月に当院脳神経外科受診も、頭部CT・診察で異常無く経過観察となる。12月に入り傾眠傾向も出現し精査目的で当科紹介

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検査・診察所見

意識:呼びかけで開眼 JCS Ⅱ-20

vital sign: BP 105/65, PR:75bpm, BT37.2℃,

血液検査

CBC: WBC 8500, Hb13.3

生化: CRP 6.24, Na 134, K4.5, Cl94, Glu 166,

FT3 1.78, FT4 1.60, TSH<0.005, PT-INR 2.4

検尿:混濁2+, 潜血2+, 蛋白2+, 白血球3+

心電図:VPC散発

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診断がつかないこともあることを理解してもらう

・症状が少しでも軽減するよう対症療法を模索する。・今は診断つかないが、今後症状や所見が出てくる可能性があることを説明する

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