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フランスにおけるサービス産業基礎調査 2011 3 日本貿易振興機構(ジェトロ) パリ事務所

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フランスにおけるサービス産業基礎調査

2011年 3月

日本貿易振興機構(ジェトロ)

パリ事務所

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目次

第1章 流通・小売 .............................................................................................................. 4

1.全体像 ......................................................................................................................... 4

2.流通 ............................................................................................................................ 6

3.卸 ................................................................................................................................ 8

4.小売 ............................................................................................................................ 9

第2章 外食産業................................................................................................................ 11

1.外食産業の概要・構造 .............................................................................................. 11

2.市場規模、将来性 ..................................................................................................... 13

3.市場シェア................................................................................................................ 16

4.外資規制、法的制約、商慣習 ................................................................................... 16

5.ケーススタディ ........................................................................................................ 17

6.参考資料 ................................................................................................................... 17

第 3 章 対人サービス産業 ................................................................................................. 18

1.理容・美容(Coiffure) .......................................................................................... 18

2.エステティック Soins de beauté .......................................................................... 21

3.ケーススタディ ........................................................................................................ 22

第 4 章 教育産業................................................................................................................ 24

1.業界の概要・構造 ..................................................................................................... 24

2.業界の市場規模・将来性・シェア ............................................................................ 25

3.外資規制・法的制約・商習慣等 ................................................................................ 26

4.ケーススタディ ........................................................................................................ 27

第5章 輸送 ....................................................................................................................... 31

1.概要・構造................................................................................................................ 31

2.市場規模、将来性 ..................................................................................................... 32

3.市場シェア(地場企業、外資[日系含む]) .......................................................... 37

4.外資に対する規制・法的制約、商慣習等.................................................................. 38

5.代表的企業の簡単なケーススタディ ......................................................................... 39

第 6 章 建設 ....................................................................................................................... 41

1.概要・構造................................................................................................................ 41

2.市場規模 ................................................................................................................... 42

3.市場のシェア ............................................................................................................ 44

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4.外資に対する規制、法的制約、商慣行など .............................................................. 45

5.ケーススタディ:Vinci ............................................................................................ 46

6.参考資料 ................................................................................................................... 47

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第1章 流通・小売

・フランスにはいわゆる「総合商社」はなく(例外的に PPR 系のアフリカ諸国向け商社 CFAO)、

「流通」のカテゴリーに入るのは「grande distribution」と呼ばれるハイパー・スーパー網=大

流通、あるいは「commerce de gros」と呼ばれる卸売りとなる。

・本稿では主に「grande distribution(大型流通=ハイパー・スーパー・デパートチェーン)」、

「commerce de gros(卸)」、「commerce de détail(小売)」に関しての考察を行う。INSEE(フ

ランス国立統計経済研究所)のデータではしばしば「commerce de détail(小売)」 が「commerce

et réparation d’automobiles et de motocycles(自動車二輪車販売・修理)」部門と一対で論じられ

る。また「grande distribution」が「commerce de détail」に含まれることも多い。また「commerce

et réparation d’automobiles et de motocycles(自動車二輪車販売・修理)」を含めた 4 分野を合わ

せて大きく「commerce(商業)」というくくりを採用するデータもある。

1.全体像

・12 万 6,090 社を対象とした verif(オンラインの企業データベース http://www.verif.com)

の調査によると、「自動車販売・修理」以外の「小売(流通含む)」部門では、以下が現在の

「小売(流通含む)」部門の国内売上高トップ 30 社(2009 年度売上高データ)となる。

社名 仏国内の売上高

(単位:ユーロ 、100 万以下切捨)

1 CARREFOUR HYPERMARCHES(カルフール・

ハイパー)

165 億 2000 万

2 オーシャン・フランス 138 億 1900 万

3 CSF 134 億 3300 万

4 カジノ 98 億 9000 万

5 CORA(コラ) 49 億 1400 万

6 ルルワ・メルラン 41 億 2600 万

7 モノプリ 37 億 5400 万

8 ATAC(アタック) 34 億 6400 万

9 DECATHLON(デカトロン) 26 億 3600 万

10 CASTORAMA(カストラマ) 26 億 2700 万

11 BRICO DEPOT(ブリコ・デポ) 22 億 6500 万

12 IKEA France(イケア) 22 億 6100 万

13 CONFORAMA France(コンフォラマ) 21 億 5300 万

14 DARTY(ダルティ) 21 億 1700 万

15 CARREFOUR STATION SERVICE(カルフー

ル・スタシオン・セルビス)

16 億 7400 万

16 GALERIES LAFYETTE(ギャラリー・ラファイ

エット)

14 億 3800 万

17 THEVENIN DUCROT DISTRIBUTION 13 億 7700 万

18 RELAIS FNAC(フナック) 13 億 7300 万

19 BOULANGER(ブランジェ) 12 億 3800 万

20 SOGARA(ソガラ) 11 億 7700 万

21 LA DOUTE(ラ・ドゥット) 11 億 6300 万

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22 PICARD SURGELES

(ピカール・シュルジュレ)

11 億 3400 万

23 BOLLORE ENERGIE

(ボロレ・エネルジー)

10 億 5000 万

24 KIABI EUROPE(キアビ) 9 億 5800 万

25 SOCIETE ANONYME DES GALERIE

LAFAYETTE

9 億 800 万

26 PRINTEMPS(プランタン) 9 億 800 万

27 LABO BIO VEGET Y. ROCHER 8 億 5800 万

28 HYPARLO 8 億 3600 万

29 CDISOUNT 8 億 300 万

30 BUT FRANCE 7 億 6400 万

・上記の上位 30 社をみると、「Grande distribution」と呼ばれる全国に店舗をチェーン展開す

る大型流通が占めている。

・INSEE によると、「流通・卸・小売(自動車販売・修理を含む)」に入る企業数は 67 万 7,000

社となる(出典: « Le commerce en France, édition 2010 »)。2008 年度時点で「流通・卸・小売

(自動車販売・修理を含む)」の売上総額は 1 兆 3,740 億ユーロ。付加価値は 2,070 億ユーロ

に達する(出典: « Le commerce en France, édition 2010 »)。

2010 年の「流通・卸・小売(自動車販売・修理を含む)」業界景況感

・不景気のあと、2010 年第 2 四半期から「流通・卸・小売(自動車販売・修理を含む)」部

門(以下、「流通・小売部門」と呼ぶ)は盛り返しを見せ、0.7%増のプラス成長をみせた(第

1 四半期は 0.1%減)。これには企業の設備投資と家計消費の回復が背景にある。世界的には

2010 年の消費は停滞傾向にあったが、フランスでは内需が拡大した。

・卸売りは、2008 年半ばから 2009 年半ばにかけて大きな景気後退に見舞われたが、2009 年

第 3 四半期から景気回復の兆しが見え始め、2010 年 7 月には業界の景況感も安定した。小売

に関しては、景況感が底を打った 2008 年 12 月から徐々に上向き傾向がみられ、2010 年 9 月

時点でも上昇を見せている。全体としては、危機をへて 2010 年末にかけて流通・小売部門で

は楽観的な雰囲気が見られた。

3000人の卸売り業者にインタビューした景況感 3750人の小売業者にインタビューした景況感

(出典)INSEE « Le commerce en France, édition 2010 »

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仏経済の中で付加価値創出の産業別割合

*「 製造業 」に農産品・食品を含める

*「サービス」には輸送、金融、不動産、企業向けサービス、

その他サービスが含まれる

出典:INSEE, 2008 年

2.流通

・2011 年に入り原料価格の高騰とともにインフレが顕著になるにつれ、流通各社に対して消

費者からの値下げ要求が高まっている。ここ数年、大手流通は活路を求めて新興国への進出

傾向を強めていたが、2011 年はそれに拍車がかかる見込みである。

・カルフール、オーシャン、カジノなどの仏主要ハイパー、スーパーグループが加盟する FCD

は、2011 年仕入れ価格に関するメーカーとの交渉を終え、食品価格の値上げ率は最大で 2-3%

に留まるとの見通しを示した。ただし、原材料価格の高騰を受けて、メーカー品のなかには

価格が急騰する食品があることも認めた。小麦粉では 15-20%、パスタは 5-10%、コーヒー

10-20%、バター4-8%、パン 6-7%といった値上げが予想される。メーカーと大手流通側の価

格設定交渉は厳しい展開を見せ、カジノは英蘭ユニリーバの食品を、また FCD には加盟して

いないルクレールでは仏ラクタリス(カマンベール、モッツァレラなどのチーズ製品)の商

品取扱いを断念した。一方、流通ブランド食品については当初見込まれていた 2%の値上げ

ではなく 3%の値上げとなる可能性が高い。食品価格の値上がりがもたらす顧客減尐の影響

を緩和するには、新たな顧客獲得が必要ということから、小売側が販促を活発化し、競争が

さらに輪をかけて厳しくなることが見込まれる。

・ 仏大型流通大手オーシャン、カルフール、カジノの 2010 年業績を見ると、 売上高はカル

フール 901 億ユーロ(前年比 5.5%増)、オーシャン 425 億ユーロ(7.1%増)、カジノ 291 億

ユーロ(8.7%増)と 3 社ともに伸びた。営業利益はカルフール 29 億 7,200 万ユーロ(9.3%

増)、オーシャン 13 億 3,400 万ユーロ(2.1%増)、カジノ 13 億ユーロ(7.5%増)となった。

ただし、増収増益は主に国外事業が貢献したもので、仏国内部門では 3 社ともに苦戦してい

る。仏国内の既存店ベースの売上高はオーシャンが 0.8%増、カルフールがほぼゼロ、カジノ

で 0.6%増に留まっている。販促や値下げで販売をようやく維持した格好で、その分、利益率

は縮小した。2011 年もこうした努力の継続が予測される。なお、仏小売業界では、ハイパー

への客足が遠のく一方で、市内のスーパーや小型ハイパーが勢いを盛り返している。

・2011 年 3 月 21 日のレ・ゼコー紙が報じているところによると、国内ハイパーに出かける

人が減尐する中、インターネットで注文した商品を客が店舗または倉庫へ取りにゆくという

「ドライブ・スルー」が普及し始めている。大手ハイパーはこの業務の将来性に期待してい

る。

このサービスはオーシャンが 2006 年に開始した。店舗付属の「オーシャン・ドライブ」35

ヵ所、店舗とは別組織の「クロノドライブ」28 ヵ所を展開、このサービスが 2010 年には国

内事業の成長の重要部分を担ったと説明している。システム U は 230 ヵ所でサービスを展開、

27%

9%

44%

20%

製造業

建設

サービス

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売上高は 1 億ユーロを大きく超えるという。ルクレールは 65 ヵ所でサービスを提供、その合

計売上高は 1 億 7,900 万ユーロで、2015 年をめどに 400 ヵ所までサービスを拡大すると発表

している。カジノは、国内にある 115 軒のハイパーのすべてでトライブ・スルーを早期に開

始したい考えで、今夏には店舗と別組織によるサービスのテストも予定されている模様。カ

ルフールはテスト段階にあるが、ドライブ・スルーが将来的に食品売上高の 4.5%を占めると

の予測も取り沙汰されている。利用者に関する民間調査会社の調べ(仏西部在住者 983 人を

対象、2010 年末実施)によると、利用者は 25-39 才で子供のいる事務職、管理職が多く、68%

が女性で占められる。最も近場(10 分または 8km 圏内)のサービスを利用し、年間購入額は

3,200 ユーロとハイパーの平均購入額を上回る。よく売れているのは、ボトルウォーター、小

麦粉、砂糖、牛乳、パスタ、家庭用清掃剤など。

関連新聞記事:

創設 50 年を迎える仏流通大手のオーシャンは、競合他社から頭一つ抜け出しそうな勢いだ。2 年前に同じ

く創設 50 年を祝ったカルフールは、現在のところ大型流通世界第 2 位の地位を誇っており、売上高だけ

見るとオーシャンはカルフールの半分を実現しているにすぎないが、純利ではカルフールの 2 倍の数字を

出している(オーシャン 2010 年純利=7 億 500 万ユーロ)。

オーシャンの秘密は中国とロシアでのプレゼンスにある。2011 年も投資予算 14 億ユーロの 40%が、中国

とロシアに向けられる。

仏国内でもオーシャンはカルフールを凌駕する勢いだ。オーシャンは一店舗を拡大する戦略をとり、店舗

のハイパー化(1 万 2000 平米以上)を進めている。また専門家の間では、カルフールよりも店舗の立地選

択がよいという評価が高い。

とはいえ、店舗規模を大きくすれば成功するというわけでもない。パリ南のクレムラン=ビセートルにオ

ープンしたハイパーの業績は今ひとつに終わった。そこでパリの近郊に関しては、より店舗規模の小さい

(4,000 ㎡程度)都市型ハイパー「オーシャン・シティ」のオープンをすすめる。またインターネットで

注文し、自家用車で注文品を取りにくるシステム「オーシャン・ドライブ」も始動した(上記)。

オーシャンがカルフールやカジノなどの競合に务っている点は、町中の小型スーパーにおいてであろう。

同社は 2011 年初頭、試験的に町中のスーパー「A2Pas」一号店をオープンした。

2011 年 1 月 31 日付けのレ・ゼコー紙によると、フランスでは、都市郊外型の大規模店舗(ハイパー)が

長らく消費生活の主流だったが、最近ではこの種の店舗の客足が鈍っており、大手各社はいずれもより小

規模で便利な都市型店舗の展開に力を入れている。郊外型店舗と都市型店舗の価格格差は、20 年前には

15%にまで上っていたが、現在では 5%にまで縮小、燃料価格の上昇もあり、自家用車で買い出しに出る

利益は薄れており、カルフールやオーシャンなどの郊外型店舗を得意とした大型流通も都市型の小型スー

パーの展開を始めている。また、世帯当たりの成員数が減ったことなどからまとめ買いをする消費者が減

ったことも作用している(2011 年 3 月 9 日ル・フィガロ記事、2011 年 1 月 31 日レ・ゼコー記事参考)。

都市型のスーパーはカジノ・グループ(リーダープライスとフランプリ、さらにモノプリの 50%資本を保

有)が市場シェア 50%程度を確保しており、競争当局はカジノの優越的地位に懸念を表明している。カジ

ノはモノプリ、リーダープライス、フランプリ、ナチュラリアなど 398 店を市内で展開、合計売場面積は

26 万㎡に達しているとされる。カジノに次ぐカルフールは 156 店を展開し、市場シェアは 20%と推定さ

れる。カジノとカルフールが競って市内に小型スーパーを開設、このあおりを受けて自動車修理場、ガソ

リンスタンドなどが姿を消す現象が起きており、パリ市議会はこれにブレーキをかけるため、競争当局に

訴えた。パリ市議会は、売場面積 1000 ㎡以下の商業施設については、開設を拒否する権限を持っていな

い。区によってはカジノがほぼ支配的立場にあり、価格競争がない状態で、パリ市の商業担当助役は、パ

リ市民が高い買物を余儀なくされているとしている(2010 年 12 月 23 日レ・ゼコー記事参考)。

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大型流通における製品価格の年間推移 (出典)INSEE « Le commerce en France, édition 2010 »

大型流通

(単位:%)

その他の販売形式

(単位:%)

大型流通とその他の販売形式との間の格差

2002 年 1.4 1.6 -0.2

2003 年 2.1 1.8 0.3

2004 年 -0.4 0.5 -0.9

2005 年 0.2 1.0 -0.8

2006 年 1.1 1.9 -0.8

2007 年 2.3 3.7 -1.4

2008 年 3.6 4.8 -1.2

2009 年 -0.2 0.7 -0.9

・ 調査会社の OC&C が 2010 年 9 月に発表した流通ブランド集客力ランキングでは、冷凍食

品のピカールが首位になる。同調査の分析によると、買い物の楽しさを演出できるブランド

が上位を占めた。調査は 2,500 人の仏消費者を対象に、50 ブランドについて行われた。実際

に利用したことがある消費者に、価格、コスト・パフォーマンス、品揃え、快適さ、サービ

ス、品質などを基準に評価してもらい、その結果を集計した。これによると、首位はピカー

ル(冷凍食品)で総合点は 81(100 点満点)、同社の場合は特に、実用性と利用しやすい店舗

設計、そして豊富で魅力的な品揃えが人気の決め手となっている。以下、2 位はイケア(77.5

点)、3 位は化粧品・香水販売のセフォラとスポーツ用品販売のデカトロン(共に 76.5 点)で、

これら各社はいずれも、低価格の PB 商品、シンプルで特色のあるコンセプト、消費者の信

頼感の高さという共通点がある。その一方で、やはり同点で 3 位にはアマゾンが入っており、

消費行為にネットショップが浸透していることを改めて窺わせた。反面、食品小売は、安値

が評価されてルクレールが 6 位に入った以外は振るわず、ブランドイメージの点で改善の余

地が大きいことを印象付けた(2010 年 9 月 2 日ル・フィガロ紙参考)。

3.卸

・2008 年時点で、仏には「卸売り」部門に含まれる企業が 15 万 5,000 社あり、96 万 1,000 人

を雇用している。売上総額は 7,790 億ユーロとなり、平均マージン率は 19.6%となる。

・INSEE の分類では卸売り業者はさらに「仲介業者」、「農産物・畜産物卸」、「食品・飲料・

タバコ」、「家庭用品」、「情報・通信機器」、「その他機器」、「特殊な製品の卸」にわけられる。

それぞれの売上高トップ 5 企業は以下のとおり。

仲介業者* 農産物・畜産物 食品・飲料・タバコ 家庭用品

1 アルセロール・ミタル カーギル・フランス ALTADIS

DITRIBUTION France

ALLIANCE

HEALTHCARE

REPARTITION

2 CARFUEL CHAMPAGNE

CEREALES

DISTRIBUTION

LEADER PRICE ENC

CIE D’EXPLOITATION

ET DE REPARTITION

PHARMA D EROUEN

3 EURACHAN COOPERATIVE DES

AGRICULTUURS DE

BRETAGNE

LACTALIS

FROMAGES

CONFRAT EXPLOIT

ET REPART

PHARMACERUTIQUE

4 FNAC SA EPIS CENTRE METRO CASH &

CARRY France

DECATHLON

5 HARMONY PRECIOU

METALS SERVICSE

NIFERA FRANCE POMONA LOUIS VUITTON

MALLETIER

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9

情報・通信機器 その他機器 特殊な製品

1 ACER COMPUTER

France

BERGERTA

MONNOYEUR

AS 24

2 DELL BROSSETTE BP France

3 ETC METROLOGIE キヤノン・フランス DYNEFF SAS

4 ヒューレット・パッカ

ード・フランス

CFM

INTERNATIONAL

EGEDIS

5 INGRAM MICRO CGE DISTRIBUTION ERAMET

*「仲介業者」には、売手と買手の間に入り、自身が商品を所有することなく第 3 者のために代理で商業活動を行

う者のこと。例えばコミッショナー、ブローカー、セールスマン、共同購入組織など

(出典)INSEE « Le commerce en France, édition 2010 »

4.小売

・「小売」部門の企業が「商業」全体の企業総数に占める割合は 66%(出典: « Le commerce

en France, édition 2010 »)。しかし、小売部門が商業全体の総売上に占める割合は 32%(卸部

門は 57%)。雇用に占める女性の割合が 64%と非常に高い(「卸売り」部門では 34%)。

・INSEE の « Panorama du commerce de détail, édition 2010 »によると、2008 年時点では小売部

門の企業数は 44 万 6,000 社、売上高は 4,340 億ユーロ、フルタイムの正規職員雇用数は 160

万人となる。小売マージン(「パン・菓子職人/豚肉加工業(artisanat commercial)」除く)の平

均は 27.6%で、卸の 19.6%大きく上回る。

ちなみに INSEE の「commerce de détail(小売)」カテゴリーには以下のものが含まれる。

・食品全般、百貨店、スーパー/ハイパー(全体の 44%)

・専門食品、パン・菓子職人/豚肉加工・販売(全体の 7%)

・燃料

・通信・情報処理用品

・家具・建具(全体の 11%)

・文化・娯楽用品

・その他の専門品(全体の 23%)

・露天・市場スタンド

・通販・訪問販売・自動販売

・企業規模としては、全体の 54%が従業員 0 の個人・家族経営であり、98%が 20 人以下の

企業であるが、反対に百貨店、スーパー/ハイパーなどは非常に大きなグループになる。

・2009 年に小売全体の売上は前年比 0.5%減と微減した。しかし細かく見ると、文化・娯楽

用品(4.4%減)、家具・建具(2.6%減)などの分野の売上減が大きく、反対に通信・情報処

理用品などは 12.3%増となっている。

以下に各分野のトップ 10企業をあげる(出典:« Panorama du commerce de détail, édition 2010 »、

2008 年データ)。

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10

食品全般、百貨店、ス

ーパー/ハイパー

専門食品、パン・菓子

職人/豚肉加工・販売

通信・情報処理用品 家具・建具

1 ATAC Aéroboutique France Autobacs France BOULANGER

2 AUCHAN France AR Cobra Son BRICO DEPOT

3 Carrefour Hypermarchés BLADIS CORDIREP SNC CASTORAMA

4 CORA BOUCHERIES J’M FNAC PERIFHERIE CONFORAMA

5 CSF CARNIVAR MAGMA

DISTRIBUTION

DARTY OUEST

6 Distribution Casino

France

DIFFUSION

DESPINASSE

VIANDES

MACROMANIA ETABLISSEMENT

DARTY ET FILS

7 LIDL ETABLISSEMENT

NICOLAS

PC CITY LEROY MERLIN

France

8 Magasins Galeries

Lafayette

NATURALIA France SERAP MEUBLES SATURN

France

9 Monoprix PHYTHEA SURCOUP IKEA France

10 SAS ED* Société des Boucheries

Discount

THE PHONE HOUSE SOCIETE

D’EXPLOITATION

RAPP

文化・娯楽用品 その他の専門品 通販・訪問販売・自動

販売

1 COURIR France BOLLORE ENERGIE 3 SUISSES France

2 DECATHLON France CIE EUROPEENNE DE

LA CHAUSSURE

CAMIF

PARTICULIERS

3 Foot Locker France FNAC France CDISCOUNT

4 Lexisnexis SA H&M Hennes & Mauritz COMPAGNIE

INTERNATIONAL

VENTE A DISTANCE

5 LUDENDO France KIABI Europe DAMART

SERVIPOSTE

6 Relais France LA HALLE EDITION ATLAST

7 SOC

DIVERTISSEMENT

ARTICLES DE

LOISIRS

Relais FNAC LA REDOUTE

8 TOYS R’US SEPHORA MAXIMO

9 VIRGIN STORES THEVENIN DUCROT

DISTRIBUTION

QUELLE LA SOURCE

10 ? INSEE の資料に抜け VETIR VENTE.PRIVE.COM

* このデータは 2008 年のもので、2009 年以降カルフール・グループ傘下の「ED」店舗はハードディ

スカウントの「DIA(ディア)」となっている。ちなみにカルフールは 2011 年 3 月 1 日、「ディア」と、

保有不動産を管理する「カルフール・プロバティ(仏および欧州諸国の不動産を保有)」の上場計画を

発表した。 他方、カルフールの労組は、事業基盤の脆弱化を招くとして、この計画に反対しており、

3 月末に尐数株主の米投資会社も反対を表明している。

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11

第2章 外食産業1

1.外食産業の概要・構造

1.1 概要

2008 年の外食産業の売上は 720 億ユーロ(税抜き)で、年間 80 億食を提供した。

1.2. 構造

レストラン事業、給食事業、その他の外食事業(パン屋、総菜屋など)の 3 種類に分けられ

る。

・ レストラン事業が最も規模が大きく 38 億食を提供し、売上は 464 億ユーロ(税抜き)で、

シェアはそれぞれ 42.5%、64.5%。約 16 万社を数える。

・ 企業、学校、病院等の集団に食事を提供する給食事業は 36 億食を提供し全体の 40.5%を

占める。給食事業はフランスの社会的伝統であり、他の欧州諸国に比べその数は非常に多

い(7 万件以上)。同事業は低い価格におさえなければならないことから売上は全体の 1/4

を占めるにとどまる。

・ 「その他」のカテゴリーは、外食を主要な事業でなく副業として行っているグループを指

す。パン屋、惣菜屋のほか、サービス・ステーション、スーパーなどがこの範疇に入る。

16 万件で 15 億食を提供、売上は 74 億ユーロに達している。

1数値について:同じ年の数値でも出所により異なることを予め断っておく。

2008 年の売上:720 億ユーロ(税抜き)

・ 仏 GDP の 3.7%に相当

・ 世帯の食費予算の 1/3 に相当

・ 住民 1 人当たり年間 1,300 ユーロ(税込み)

の週 25 ユーロの支出に相当

・ 1世帯当たり、年間 2,900ユーロ、週 56ユー

・89 億食/年

・住民 1 人当たり約 150 食/年→

週 3 食、月 12 食

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12

図表 1:事業別内訳

出所:GIRA Foodservice, le Marché de la Restauration en France

レストラン

65%

給食

25%

その他

10%

図表2:事業部門別の売上シェア

出所:GIRA Foodservice, le Marché de la Restauration en France より作成

レストラン

38 億食

売上:464 億ユーロ

給食 その他

36 億食 15 億食

183 億ユーロ 74 億ユーロ

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2.市場規模、将来性

2.1. 市場規模

・ 2008 年度の外食産業(レストラン+給食+その他)の売り上げは 720 億ユーロで前年より

わずかな伸び(+0.87%)を示した。年間の食事提供数は 80 億食で、2002 年以来初めて前

年度レベルを下回った。これは、価格の上昇および経済危機の影響で消費が低下したため。

・ レストラン部門の売上は前年より 0.43%減尐した。このうち、チェーン・レストランの売

上は前年比+8.3%と好調であったが、café-bar-Brasseries は-7.3%、独立系は-1.19%とそ

れぞれ後退した2。

・ 給食事業は好調で前年比+4%を記録した。不況の中で、消費者は支出を抑える傾向にあり、

給食部門は「確かな価値」を持った部門とみなされている。ちなみに 1 食の平均支出は 4

ユーロと安い。

[レストラン部門]

Insee によると、2006 年のレストラン総数は 11 万 2,221 件、売上は 307 億 9,900 万ユーロ

である。

図表 3:2006 年の市場規模

総件数 112,221

売上(単位:百万ユーロ) 30,799

付加価値(単位:百万ユーロ) 14,582

就業者総数(フルタイム換算) 392,239

付加価値/売上(%) 47.3

投資(単位:百万ユーロ) 1,055

出所:INSEE-EAE Services Exercice 2006

2 出所:GIRA ; Le Marché de la Réstauration en France

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14

図表 4:従業員・売上別にみた企業分布

10~49人

26%

50~249人

5%

250人以上

10%不明

1%

2人以下

21%

3~9人

37%

従業員数によるレストランの分布

5万ユーロ未満

2%

5万~50万ユーロ

45%50万~500万

ユーロ36%

500万~1,000

万ユーロ3%

1,000万

ユーロ以上14%

売上規模によるレストランの分布

出所:INSEE-EAE Services Exercice 2006

・ 従業員別でみると 1994 年から 2007 年の間で伝統的なレストランで従業員が 3 人未満の

小規模レストランの数は減尐し、売上全体に占めるこれらの小規模レストランの売り上げ

は 1994 年の 29%から、2007 年には 20%にまで後退した。これは、外部への支出が大き

く増えたこと、従業員への費用が嵩んだことが原因で、2002 年以降は企業の採算性も悪化

した。これに対して従業員が 3-9 名、および 10 名以上は安定している。

・ 2000 年に営業していた従業員 0 の個人・家族経営のレストランのうち、70%が 2007 年

には消滅していた。ただし、新規開店の数も多く、消滅したレストランの一部を補足する

形となっている。

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図表 5:2000 年から 2007 年の推移

レストラン件数

2000-2007 年に消滅

したレストランの割

2000 年 2007 年

0 70% 20 892 17 761

1-2 名 64 28 178 34 880

3-9 名 51 22 840 31 410

10-99 名 36 3 499 5 794

100 名以上 11 66 87

合計 61% 75 475 89 932

出所:INSEE、fichiers Suse

図表 6:2000 年以降のチェーン・レストラン3の推移

01/00 02/01 03/02 04/03 05/04 06/05

件数 +361 +404 +360 +220 +159 +240

推移(%) +7% +8% +6.7% +4% +2.8% +4.2%

出所:L’Hôtellerie-Restaurant, Coach Omnium

図表 7:チェーン・レストランの件数

2006 年 1 月現

在の商号の数

2005 年 1 月の

時点での店舗

2006 年 1 月の

時点での店舗

06/05 の推移

(件数)

06/05 の推

移(%)

レストラン 49 2689 2782 +93 +3.5%

カフェテリア 5 550 561 +11 +2%

ファーストフー

24 2427 2563 +136 +5.6%

合計 78 5666 5906 +240 +4.2%

出所:L’Hôtellerie-Restaurant, Coach Omnium

チェーン・レストランは店舗数では全体の 4.4%(13 万 3,000 件のうちの 5,890 件)を占め

るにすぎないが、売上の 17.1%、提供する食事の回数の 26.6%を占めている。(Coach

Omnium ;2008 年)

2.2. 将来性

・ フランスでは食事全体に占める外食の割合が 1958 年は 5%であったが 2008 年には 17%

に達している。

a. 女性の社会ヘの進出の割合が増加: 1970 年には 48%だったが 2008 年には 66%へ。

b. 通勤時間の増加:1978 年の 28 分から 2008 年には 47 分へ、このため自宅での昼食の

機会が減尐

c. 不況のため食事への予算は減尐傾向に

・上記の理由から、レストラン部門ではファースト・フードが今後も堅調な伸びを期待され

3 店内での食事を提供するレストランのみ

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ている。給食部門は人口の老齢化などによるサービスの強化が予想され、今後も着実な伸び

が予想される。

3.市場シェア

3.1. レストラン

図表 8:従業員数別でみるシェア

注: 0 a 2 slanes 従業員 2 人以下

3 a 9 salanes 従業員 3~9 人

10 salanes et plus 従業員 10 人以上

出所:Insee Première , N)1286-mars 2010

図表 9:店舗数でみるファースト・フード上位 5 社

商号(店名) 所有グループ 店舗数 06/05 の推移

・ Mc Donald’s

France

McDonald’s 1,062 店 +27

・Quick Quick 315 店 +3

・Brioche Dorée Le DUff 256 店 +30

・La Croissanterie 129 店 +12

・Relais H Lagardère 123 店 変化なし

出所:L’Hôtellerie-Restaurant, Coach Omnium

3.2. 給食部門

・ SodexhoCommpass Group、Elior の 3 社で市場の 80%を占めている。

・ セクター別では、企業 55%、教育 23%、保健・社会 15%、その他 5%4。

4.外資規制、法的制約、商慣習

特になし

4 2004年の数字、出所:GIRA Foodservice

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5.ケーススタディ

Buffaro Grill

・ Buffaro Grill は焼き肉部門のチェーン・レストランの最大手である。

・ 310 の店舗を展開している。1984 年以降、フランチャイズ方式を採り入れ、元従業員が

新店舗を設立することが可能となっている。

・ 1999 年から 2002 年は毎年 10-20 店舗が新規開店し、2003 年以降フランチャイズ店の数

は一定している。2005 年、Buffalo Grill は Colony Capital および Colzeo に買収された。

今後店舗数を 400 とすることを目指している。

・ 2008 年の売上は 6 億ユーロ(税抜き)で前年比 2.5%減、ただし、専門レストラン全体の

売上は前年より 4.4%後退しているため、減尐幅を最小限に食い止めるのに成功した格好だ。

・ リーズナブルな価格に抑えてあるため、多くの顧客を動員する必要が有り、1 店舗の収用

可能人数は 220 名、と他のチェーン・レストランより多い(ピザハット 150 名、Chez

Clément 150、Léon de Bruxelles 200)。

・ 売上と投資の割合が 1 と申し分なく地味ではあるが確実に売上を伸ばしている専門レス

トランである。今後は直営店を拡大する意向である。

図表 10:店舗数の推移

2006 年 2007 年 2008 年 2009 年

店舗総数 277 291 295 310

うちフランチャイズ

109 109 109 104

出展:www.franchise-magazine.com

6.参考資料

・INSEE : Caractéristiques du sous secteur, 55.3 Restaurants, 2006

・INSEE Première, N°1286 Mars 2010 “Les petits restaurants ne sont pas dans leur assiette.

・GIRA Foodservice, le Marché de la Restauration en France

・ Asspciation Régionale des Industries Agro-Alimentaires Languedoc+Roussillon ;

“ Le Marché de la Restauration hors foyer en France “

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第 3 章 対人サービス産業

INSEE では、対人サービス産業(Services personnels)を 9 業態に分類している。

すなわち「業者向けクリーニング・染色(Blanchisserie - teinturerie de gros)」、「個人向けクリ

ーニング・染色(Blanchisserie - teinturerie de gros)」、「理容・美容(Coiffure)」、「エステティ

ック(Soins de beauté)」、「死体処置・エンバーミング(Soins aux défunts)」、「葬儀(Pompes

funèbres)」、「温泉・タラソセラピー(Activités thermales et de thalassothérapie)」、「その他の

ボディケア(Autres soins corporels)」、「その他の対人サービス(Autres services personnels)」

である。

本項では、これらの内「理容・美容」と「エステティック」に的を絞り解説を行う。

1.理容・美容(Coiffure)

日本で見られるような「理容」と「美容」の法律上の区分はフランスには存在せず、両者を総称

して「Coiffure」と定義されている。

フランス国内(海外県を含む)の当業界における業者数は、2009 年 1 月1日現在、6 万 6,124 を

数える。全国平均では、人口約 1000 名につき 1 業者が存在する計算である。この内 5 万 5,942

業者は店舗を有する業態、残りの 1 万 182 業者は店舗を持たない業態で営業を行っている。

フランス国内における理容・美容業者数の変遷(各年 1 月 1 日現在)

年度 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

店舗を持たない業者 5983 6490 7038 7726 8271 10227 10182

店舗を有する業者 53009 53250 53267 53485 54446 55763 55942

合計 58992 59740 60305 61211 62717 65990 66124

業者数を地域圏別に見ると、イル=ド=フランス地域圏の 8,850 業者を筆頭に、2 位ローヌ=ア

ルプ地域圏(6,663 業者)、3 位プロバンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏(5,933 業者)、

4 位ノール=パ・ド・カレー地域圏(4,133 業者)、5 位アキテーヌ地域圏(4,031 業者)と続く。

それぞれ、パリ、リヨン、マルセイユ、ニース、ボルドーといった大都市圏を抱えており、業者

数は人口比率と比例している。

当業界に従事する人員数は約 16 万名で、うち給与所得者数は、2008 年 1 月 1 日現在 11 万 8,552

名を数える。更にこの内、2 万 4,263 名は、見習い訓練生である。地域圏別では、イル=ド=フラ

ンス地域圏(2 万 2,292 名)、ローヌ=アルプ地域圏(1 万 816 名)、プロバンス=アルプ=コー

ト・ダジュール地域圏(9,232 名)、ノール=パ・ド・カレー地域圏(6,614 名)、ペイ・ド・ラ・

ロワール地域圏(6,430 名)が上位を占める。

53009 53250 53267 53485 54446 55763 55942

5983 6490 7038 7726 8271 10227 10182

0

10000

20000

30000

40000

50000

60000

70000

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

店舗を持たない業者

店舗を有する業者

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フランス国内理容・美容業界における給与所得者数の変遷(各年 1 月 1 日現在)

年度 2004 2005 2006 2007 2008

店舗を持たない業者 2213 2358 2531 2683 3353

店舗を有する業者 114933 113337 112761 112179 115199

合計 117146 115695 115292 114862 118552

事業規模別では、従業員を置かない業者(即ち個人事業主)が 37.3%、1 ないし 5 名の従業員を

雇用する業者が 56.4%を占める(2009 年 1 月 1 日現在)。すなわち、全体の 9 割以上が従業員数

5 名以下の規模である。6 ないし 19 名の業者が 6.2%、20 名以上の従業員を擁する業者は 0.1%

にすぎない。1 業者あたりの平均雇用人数は 2.9 人である。

年度 1995 2005 2007 2008 2008

従業員数 0 名 34.5% 35.0% 38.3% 38.3% 37.3%

同 1 乃至 5 名 58.7% 57.4% 56.3% 55.9% 56.4%

同 6 乃至 19 名 1.1% 1.4% 5.3% 5.7% 6.2%

同 20 名以上 0.2% 0.3% 0.1% 0.1% 0.1%

合計 100% 100% 100% 100% 100%

業界全体の市場規模は 56 億 4,000 万ユーロ(2007 年)である。1 業者あたり平均の年間売上額

は 8 万 5,000 ユーロという計算になる。

ここ 20 年ほどの傾向として、大小チェーンによるフランチャイズ化が進んでいることが挙げられ

るが、全事業者に占めるフランチャイジーの割合は、2008 年現在 10%前後に留まっている。逆に

フランチャイザー側の視点に立てば、残り 90%を占める独立経営の事業者はフランチャイジーと

なる潜在性を秘めていることになり、各フランチャイザーが市場獲得にしのぎを削っている。

フランス国内における主なフランチャイズチェーンを以下の表に示す。

仏 国 内

店舗数

うち、フ

ラ ン チ

ャ イ ジ

ー数

フ ラ ン

チ ャ イ

ズ 展 開

開始年

本部所在地 特色 グループ

Franck

Provost

475 310 1976 パリ 中価格帯

Provalliance グル

ープ

Jean-Louis

David

409 390 1979 パリ 中〜上価格帯 Provalliance グル

ープ

Tchip

Coiffure

377 346 1996 パリ 低価格帯。

高級チェーン VOG

が展開する低価格

店。

VOG Coiffureグル

ープ

Saint Algue 275 265 1977 パリ 女性向け中価格帯

「ミス・フランス」

コンテスト公式サロ

Provalliance グル

ープ

Camille

Albane

226 223 1994 パリ 女性向け中価格帯

調髪のみならずフェ

イスケアも行う

Dessange が 1994 年

より展開。

OFI Private

Equity

Dessange 216 212 1975 パリ 高価格帯 OFI Private

Equity

Coiff & Co 207 201 1995 パリ 低価格帯 Provalliance グル

ープ

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20

Shampoo 207 171 1980 リール近郊

Marcq-en-Baroeul

(59)

中価格帯

リール近郊に本拠を

置く高級美容院チェ

ーン、Michel Dervyn

が展開する中価格帯

チェーン。

Michel Dervyn グ

ループ

Frédéric

Moreno

203 188 1993 パリ 低〜中価格帯

2002 年、Dessange

が買収。

OFI Private

Equity

Jean-Claude

Biguine

184

(2009

年)

178

(2009

年)

1989 パリ 中価格帯。

ボディケアも行う。

Pascal Coste

Coiffure

150 80 1997 ニース 低価格帯。

都市中心部や、ショ

ッピングセンターへ

の出店が特色。

有名チェーンである Jacques Dessange、Franck Provost、Jean-Louis David、Jean-Claude

Biguine 等は、いずれも日本を含む世界各地にもフランチャイズ展開を行っている。

フランスにおけるフランチャイズ業態による理容・美容室チェーンの嚆矢は、Jacques Dessange

で、1975 年にこの業態による展開を開始した。続いて Jean-Louis David も 1980 年頃に同業態

への参入を始めている。Frank Provost は比較的後発で、チェーン展開の開始は 1995 年であった

が、2006 年には 600 店舗を数えるまでに成長し、同年の年商は 2 億 2,000 万ユーロとなってい

る。

2002 年は当業界にとって大きな変化があった年である。世界最大の理容・美容企業である米国の

Regis Corporation が、Jean-Louis David や、Gérard Glémain グループに属するチェーン

(Saint-Algue、Intermède など)を矢継ぎ早に買収し、仏国内進出への足掛かりを得た。またこ

の年、Jacques Dessange が Frédéric Moreno を買収、Franck Provost でも Jean-Claude Aubry

の公開株式買付を行うなど、業界の再編が加速した。

2007 年、Feanck Provost は米国グループ Regis の英国を除く欧州事業部門を獲得し、売上 9 億

5,000 万ユーロ、顧客総数 2,500 万人の欧州最大、世界第 2 位の新グループ Provalliance が誕生、

Provost が資本の 70%、Regis が 30%をそれぞれ出資した。新グループは理容・美容サロン 2,223

店舗(うちフランスが 1500 店舗でこのうち 218 が支店)、8 ブランドを保有する。主なブランド

はジャン=ルイ・ダビッド、フランク・プロボスト、サンタルグなど。Provalliance は今後支店の

増加および地方の小規模の理容・美容サロン・ネットワークの買収などによりフランスでのシェア

を 2007 年の 12%から 2012 年には 20%としてポジションの強化を狙っている。ちなみにグルー

プは 2009 年 5 月、フランスの地方の高級サロンネットワークであるジャン=マルク・マニアテ

ィスを買収した。ジャン=マルク・マニアティスはジャック・デッサンジュの元アシスタントで

フランスに 4 サロン、日本に 20 余りのサロンを展開している。

また、この業界にも低価格化の波が押し寄せており、Coiff&Co、Self'Coiff といった格安店のチ

ェーンが勢力を拡大しつつある。

一方、2003 年以降の業者数の推移を見ると、無店舗形式の業者数の伸びが著しい。これは、顧客

の絶対数が限られる地方を中心に、出張サービス方式による業者数が大きく増加しているからで

ある。理容師・美容師の派遣も行う、人材派遣企業 Viadom グループ例もある。

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21

2.エステティック Soins de beauté

フランスではエステティックサロンのことを「Salon de beauté」または「Institut de beauté」と

称する。INSEE では、当業態の内容を、美容カウンセリング、フェイスケア、スキンケア、メイ

クアップ、皺取り、ネイルケア等と定義している。

2008年現在、フランスでは、当業界における最低 1名の従業員を雇用する業者数は約 7,100社で、

店舗(サロン)数は約 7,700 軒となっている。1 業者当りの平均店舗数は 1.1 軒である。

事業規模別では、従業員 1 ないし 2 名を雇用する業者が約 5,900、3 ないし 5 名が約 1,500、6 名

以上を雇用する業者が約 300 となっている。

業界の年間売上総額は 7 億 9000 万ユーロ(税抜。2008 年)である。

5400 6050

6600 7100

5800 6500

7100 7700

0

2000

4000

6000

8000

10000

2004 2006 2007 2008

最低1名の雇用を行う業者数

店舗数

4550 5000 5450 5900

1000 1250

1400 1500

250 250

250 300

0

2000

4000

6000

8000

10000

2004 2006 2007 2008

6名以上

3ないし5名

雇用従業員数1ないし2名

620 695

750 790

0

200

400

600

800

2004 2006 2007 2008

業界全体の年間売上(百万

ユーロ)

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22

取扱サービス別の売上区分を以下に示す。

フランス国内における主なフランチャイズチェーンを以下の表に示す。

仏国内店

舗数

うち、フ

ランチャ

イジー数

フランチ

ャイズ展

開開始年

本部所在地 特色

YVES

ROCHER

550 172 1969 パリ郊外

Issy-les-Moulineaux

(92)

コスメティック、香水販売がメインだが、

店内でのエステ施術も実施

BODY

MINUTE

248 235 1997 パリ 予約無しでの施術を売りとする総合エス

テティックサロン。店舗数は 2005 年から

の5年間で倍増。

ESTHETIC

CENTER

163 158 1998 パリ 予約無しでの施術を行うチェーン。元来は

「Epil Center」の商号で展開しており、

脱毛に強み。「ミス・フランス」コンテス

ト公式サロン。

3.ケーススタディ

(1)理容・美容室:フランク・プロボスト

サルト県の人口 4,000 人という小さな村に生まれたフランク・プロボスト氏は、地元の美容室で

修業を行い 19 歳でパリに上京した。1975 年に最初の理容・美容室をパリ近郊のサンジェルマンア

ンレに開設したが、パリ市内にサロンを開くことが必要と感じた同氏は 4 年後に、凱旋門に近い

フランクリン・ルーズベルト通りに理容・美容室を開いた。当初ビジネスは捗々しくなかったが、

やがて軌道にのり 1975 年から 1985 年までの 10 年間で 20 余りの支店をオープンした。ただし、

フランチャイズ業態による展開を開始したのは 1995 年で他社に比較して遅い。

2000 年以降積極的に企業の買収を進め、2000 年には Coiffrerie、2002 年にジャン=クロード・

オブリ、2005 年 Espace coiffure、2006 年 Elexia、2007 年ジャン=ルイ・ダビッド、2009 年ジ

ャン=マルク・マニアティスを買収した。2007 年には、米国グループ Regis と欧州事業部門で提

携し欧州で最大、世界で第 2 位の Provalliance グループが誕生した。Provost は支店とフランチ

26%

24% 18%

17%

8%

4% 2%

1%

製品販売

除毛・脱毛

フェイスケア

ボディケア

ネイルケア

メイクアップ

スパ

その他

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23

ャイズの両業態で企業の発展を進めているが、Regis については支店の形で経営権を獲得した。

グループは、ブランド・イメージの若干の修正はするものの、今後も全ブランドを維持する意向で

ある。

1998 年に初めて国外に進出、現在ベルギーで 20 理容・美容室、チェコでは 5 理容・美容室、日本

で 20 理容・美容室を展開するほか、スペイン、イタリア、フィリピン、カナダ、アルジェリア、

ポーランド、スイス、ベルギー、韓国、モロッコ、ロシアなどでフランチャイズ形式により業務

を展開している。

グループの価格帯は『中の上』と位置づけることができる。「高級ではあるが、顧客の手の届く範

囲の料金を提供し、出来るだけ幅広い顧客層にオファーすることを心がけている」と Provost 氏

は語る。

フランチャイズの場合従業員養成は完璧でなければならないことから、1999 年にフランク・プロ

ボスト理容アカデミーをパリ 17 区に設立、ここでは理容技術はもとより、販売、応対、などブラ

ンドの全てのノウハウを教えている。アカデミーは無料で全ての従業員およびフランチャイジー

に受講の道が開かれている。

(http://www.observatoiredelafranchise.fr、2007 年 12 月のプロボスト氏のインタビューなどか

ら作成)

(2)エステ・サロン:エステティック・センター

フランツ・ラルマン氏は 1998 年 4 月にペサック(ジロンド県)でエピル・センターを創設した。

当初はむだ毛の脱毛のみのサービスを提供、フランチャイズ業態で事業を進め、2003 年には全国

で 38 のセンターを展開するまでに成長した。同年ラルマン氏は、フランチャイズ開発会社である

インターナショナル・エステティック社の全資本を買収した。これを機会に同氏はエピル・センタ

ーを、手ごろな価格で様々なサービスを提供する総合的なエステ・サロンにすることを決めた。

2005 年には、仏国内で予約のいらないエステ・サロンの NO.1 にのし上がり、フランチャイジー

は 100 店を超えた。2006 年には「エステティック・センター」と商標を変更した。2006 年には

中小企業省より急速に成長を遂げている企業に与えられる「ガゼルラベル」賞を受賞した。同年

店舗数は 120 に迫り、エステ・サロンで欧州のリーダーとなった。

2007 年には、フランツ・ラルマンの名で 100 以上の化粧品ラインを制作、2008 年には、米国に

エステ・サロンのフランチャイズ・ネットワーク Beuty full Days を設置した。米国での店舗数は

4 サロン。

エステティック・センターは世界中にノウハウを輸出しており、米国のほか南米、中国、カナダ、

アラブ首長国連合、スペインにも進出している。予約のいらない仏エステ・サロンとしては唯一

外国に進出している企業である。

エステティック・センターは 2008 年から 3 年連続でフランスの最も優れたエステ・サロンに選

ばれた。2011 年には「ミス・フランス」のオフィシャル・エステ・サロンとなった。

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第 4 章 教育産業

1.業界の概要・構造

■学業支援市場 日本の「塾」や「家庭教師派遣」に相当する市場は、仏では「soutien scolaire

(学業支援)」市場と呼称される。一般には、学校の成績が芳しくない生徒や難関学校の受験

を目指す生徒を対象に、訪問個人指導、センターでの小グループ指導を行う民間企業を指す。

■フォーマル・セクターはシェア 20% 市場規模は 25 億ユーロ。訪問型対人サービス産業

の形成を支援する国の施策もあり、正規の法人によるフォーマル・セクターのシェアは近年

20%まで拡大した。しかし、インフォーマル・セクターが依然 80%を占める。フォーマル・

セクターは約 5 億ユーロで、うち 3 分の 1(約 1 億 5,000 万ユーロ)を大手 6 社が、残りを

約 300社が分け合っている。

■大手金融・サービス企業の参入 業界企業は独立系の起業家による創業がほとんどである。

業界上位 6社のうちトップの Acadomia を含む 4 社は創業者、あるいは創業者に近い人物が経

営権を維持している。他方、政府の訪問型対人サービス支援策をきっかけとして、金融・保

険会社、バウチャーチケット発行のノウハウを持つサービス企業の参入が目立ち始めた。

業界 3 位の Cours Legendre がアクサ保険グループの Domiserve 社傘下に入ったほか、業界 5

位の Domicours は共済保険大手 3 社と食事バウチャー発行の 1 社が出資している。企業向け

サービスバウチャー大手のソデクソも 2008年に、ベルギーの学業支援業界トップ Educadomo

に 36%出資した。

■プリペイド CECU 仏政府が 訪問型対人サービス市場の発展とフォーマル・セクター化促

進のため導入した「プリペイド CESU(汎用サービス雇用小切手)」は家庭教師派遣の支払に

も利用できる。Cours Legendre を買収した Domiserve はプリペイド CESU発行認可機関の一つ

である。

■フランチャイズ・提携 業界上位 6社のうち 4社がフランチャイズを併用している。Cours

Legendre は 2010 年からフランチャイズを導入し、現在 8 店のエージェンシー網を 2015 年に

は 50店まで拡大することを計画。1998年にフランチャイズを導入した Acadomia は約 100の

エージェンシーのうちほぼ半数をフランチャイズで展開している。 他方、金融・流通大手が

訪問型対人サービスに参入する場合、学業支援企業大手と提携することが多い。例えば、 都

市型スーパーのモノプリは訪問型対人サービスの一環として 2008 年に Complétude と提携し

た。

■mandataire(受託者)と prestataire(サービス業者) 業界大手 6 社のうち、会社自体が家

庭教師の雇用主となってサービスを提供する方式(prestataire)をとるのは 1 社のみで、他は受

託者方式(mandataire)である。つまり、サービスを利用する個人が派遣される講師の雇用主と

なり、業者は両者間の雇用手続等を代行する受託者にとどまる。

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2.業界の市場規模・将来性・シェア

■需要増の継続 学業支援市場は、両親の多忙、学校教育への不信感の増大、高失業率下で

の安全を求める高学歴志向と教育熱の高まりを背景に近年拡大が著しい。この傾向は今後も

継続すると見られる。また、就学人口の伸びが年 2〜3%であるのに対し、学業支援企業の総

売上は 10〜20%の成長が続いてきた。これはインフォーマル・セクターのフォーマル化が進

行しているため。訪問型個人サービスの発展を支援する政府施策も市場成長を刺激した。

■高学歴志向の定着 国内の生徒・学生数は 1,500万人弱で、過去 10年以上にわたってほぼ

横ばいが続いている。2009年の内訳は、幼稚園 250万人、小学生 400万人、中学生 310万人、

高校生 210万人、大学生が 230万人。資格水準を見ると、1980年には全体の 1/3に満たなか

ったバカロレア(大学入学資格)以上の資格取得者の割合が 2000年頃に全体の 2/3にまで上

昇し、同水準が現在も継続している。

■集中化と多角化の進行 総額 5 億ユーロ規模のフォーマル・セクターを約 300 企業が分け

合っている現状から見て、業界大手を中心とする集中化加速は必至。人材確保の困難や教材

などの初期投資に耐えられない小規模企業が倒産、買収されるケースは多い。

他方、学業支援企業が他の訪問型個人サービス業に乗り出すケース、あるいは訪問型個人サ

ービス企業が学業支援企業を買収するケースの双方が見られ、多角化も進行している。

前者の例では、最大手 Acadomia が 2004 年にハウスヘルパー派遣の Shiva を開設した例があ

る。

■授業オファーの多様化 大手業者を中心に、新顧客開拓を狙ったオファーの多様化が活発

化している。「放課後の託児と宿題支援」を組み合わせた 3〜11才向けの家庭教師派遣のほか、

スキー教室と組み合わせたバカンス先での補習授業、 中国語の授業、成人向けの語学や情報

処理・会計などの技能講座、ピアノなど音楽の講師派遣がある。ただし、こうした新事業の

売上比率はまだ低い。中国語の家庭教師派遣を始めた Complétude では、数学の受講者年間 1

万 2000人に対し、中国語受講者は 13人。

■センター授業のみは不利 米国系の世界大手 Sylvan は、家庭教師派遣は行わず、センター

でのグループ授業のみを行う方式を採用した。これに対して他の大手は、家庭教師派遣のみ、

あるいは、家庭教師派遣とセンターでの授業を併用している。政府の対人サービス支援は訪

問型サービスのみを対象としているため、センターでの授業はその恩恵を受けられない。運

営負担が大きいセンター授業のみの学業支援企業は仏では経営が難しく、SYLVANの仏でのフ

ランチャイザー企業は 2008 年末に倒産した。Sylvan は 2000 年代に入って仏でセンターを試

験展開し、フランチャイズ方式で早期に 100を超えるエージェンシー展開を見込んでいた。

■オンライン授業も急成長 インターネットを使ったオンライン授業も成長株である。最大

手 Maxicours は 2000 年創業、2009 年の総売上が 300 万ユーロ。2006 年創業のスタートアッ

プClassipはウェブカム等を使って生徒がリアルタイムで遠隔授業を受けるプラットホームを

提供し、一回限りで利用できる宿題支援サービス「ポップ・エキスプレス」も開始した。

■訪問型対人サービス市場の伸び悩み 2005年の政府支援策導入を機に訪問型対人サービス

事業に乗り出した共済保険系の SERENA はその後リストラを余儀なくされ、ラ・ポスト(郵

便局)の同サービスも事実上消滅するなど、訪問型対人サービス市場の発展は必ずしも順調

でない。ラ・ポストは Acadomia ら 2社と提携して家庭教師派遣も予定していた。

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3.外資規制・法的制約・商習慣等

■外資規制はなし 学業支援市場について特に外資規制はないと思われる。

■品質認証取得が大手の標準 学業支援企業の「内幕」を報道する TVルポが放送され、日本

の塾の例を挙げて民間学業支援市場の過剰成長による学校教育の地位低下を懸念する声も出

るなか、業界大手においては品質認証取得が新たな標準となりつつある。ラベルは、SGS の

対人サービス品質認証 Qualicert、AFNOR-AFAQ による ISO9001基準の在宅学業支援サービス

品質認証(パフォーマンスと効率を評価)の 2種。

■大手教育出版との提携 品質保証アピールという観点から、大手の中には教科書・参考書

出版大手と提携して教材を確保する企業もある。Acadomia は教育出版大手の Nathan と、

Anacours も教育出版大手 Hatier と提携。米 Sylvan は仏進出に当たって Hachette 出版と提携し

た。

■講師の資格 特に規制はないが、業界大手は高等教育履修 3年以上の資格を基準に採用。

■料金 特に規制はない。業界大手平均は時間当たり 15〜20 ユーロ(学生講師の場合)、30

〜35ユーロ(教員が講師の場合)。

■税制優遇措置と認可 2005 年に制定された訪問型対人サービスの発展を目指すボルロー

法により、個人雇用主に向けの税制優遇措置が盛り込まれ、支払った料金の 50%が所得税減

学業支援市場 市場規模 25億ユーロ

生徒 100 万人が年間平均 40 時間を受講 : 中学生の 5 人に 1 人、高校生の 3 人に 1

インフォーマル・セクターが 8割 フォーマル・セクターを 300社がシェア

上位 6位企業がフォーマル・セクターの 3割を占有

上位 1〜3位 : Acadomia Complétude Cours Legendre

上位 4〜6位 : Keepschool Domicours Anacours

フォーマル・セクター上位 6社の料金収入比較(単位:億ユーロ)

その他企業300社

Anacours

Domicours

Keepschool

Cours Legendre

Complétude

Acadomia

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税の対象となる。手続簡素化のための CESU(汎用サービス雇用小切手)も導入された。ただ

し、業者が認可を受けていなければ利用者は所得税減税やプリペイド CESU による支払を利

用できない。業者は所在地の県の企業局に認可を申請し、2 ヵ月以内に返答がない場合には

認可が降りたと見なされる。認可は 5年間、全国で有効。認可企業のサービスにかかる VAT(付

加価値税率)は 5.5%の割引税率が適用される。

プリペイド CESU は、仏企業が社員の昼食費用支援に利用しているチケ・レストランと同様

のシステム。定額バウチャーの形で支給され、その一部又は全部を企業が社員の福利厚生向

け負担する。社会保険機関が給付金の替わりに配布することもある。

4.ケーススタディ

■Acadomia

・ビジネススクールの学生だったマクシム・アイアシュ氏が、自身の家庭教師のアルバイト

経験から、巨大なインフォーマル市場をフォーマル市場に転換できるとの確信を持って 1989

年に起業した。 会社設立 9 年目の 1998 年にはフランチャイズ方式による展開を導入、2000

年には上場した。創業者を中心とする経営陣が株式の 51%を保有している。

・設立当初から二桁台の急成長を続け、2006/07年には売上(料金収入総計)1億ユーロを突

破。業界 2位の Complétude を大きく引き離す業界トップ企業。事業は仏国内のみ。

・経済危機とテレビの内幕ルポで企業イメージが悪化したことなどから、2008年以降は売上

げが停滞し(2009/10 年が総売上は 1 億 250 万ユーロ)、2 年連続で赤字を計上したものの、

回復の兆しが見え始めている。

・年間では受講者数 10万人、講師数 2万 5,000人、講座時間数 300万時間。全国に約 100の

エージェンシーを展開し(うち半分がフランチャイズ)、教育アドバイザー400人が顧客に対

応する。

・小学校から高等教育までの学業支援(家庭教師派遣 + センターでの尐人数グループ事業)

の他に、模擬試験や、 TEFL/TOEIC試験準備、 子ども・成人向けの語学個人授業、音楽の授

業も提供している。ピアノなど音楽の講師派遣に別会社 Mélocad、成人向け技能講座にやは

り別会社 Acadéos が設置されている。

・2004 年にはハウスキーパー派遣の Shiva を傘下に納め、学業支援、個人教授以外の訪問型

対人サービス事業への進出を果たした。

・業界のパイオニアを持って任ずるアイアシュ氏は業界内の論客としても知られ、「学業支援

は教育という公共サービスの一端を担う」ものであるとして、減税措置などの優遇措置を 90

年代から提唱してきた。アイアシュ会長は 2009 年に FESP(個人向けサービス連盟、2006 年

に発足)の会長に就任した。

・教材に関しては 2002年に教育出版大手 Nathan との提携を導入。

・講師確保が難しいのは業界共通の悩みであるが、Acadomia では講師向けに、Nathan 社専用

サイトの無償利用、新規顧客を紹介した場合には映画配給会社 UGC の年間入場無料カードな

どの特権を付けている。

・大手マーケティング会社出身の CEO の下、広報、広告キャンペーンに積極的で、パリの地

下鉄ホーム上での広告キャンペーン、テレビの CM放送などの実績がある。

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広告キャンペーンボスター

キャッチフレーズは「それぞれの子どものポテンシャルを信じる」。子どもの顔の半分が物理

学者のアインシュタイン、詩人のヴィクトル・ユゴーといった偉人の顔になっている。

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29

学業支援上位 6社の概要

Acadomia Complétude Cours

Legendre

Keepschool Domicours Anacours

料 金 収

( 2007

年)*

1 億 100万€ 2900万€

1600万€ 550 万€ 530 万€ 500 万€

年 間 受

講 者

( 2007

年)*

100 000 26 000 30 000 5 000 7 000 5 000

エ ー ジ

ェ ン シ

ー 数

(2009 〜

2011)

115 37 16

今後 5年間に 50

への拡大を計

約 100

73

18

株主

独立系

家庭教師経験

者の起業(ビジ

ネススクール)

独立系

家庭教師経験者

の起業(エンジ

ニア)

2006年にアク

サ保険グルー

プ傘下に

独立系

学生時代のネ

ット知識交流

をから起業

(ビジネスス

クール)

共済 3組合と 食

事バウチャー1社

(Macif, Matmut,

Mutualité

Française,

Chèque Déjeuner)

独立系

家庭教師経験

者の起業(エ

ンジニア)

設立年 1989年 1984年 1957年 2000年 2003年

母体は 1994 年に

発足

1999年

契 約 方

式(家庭

教 師 派

遣)

受託者 受託者 受託者 受託者 サービス業者

受託者

フ ラ ン

チ ャ イ

活用 1998年

から

- 活用 2010年

から

- 活用 活用 2006

年から

品 質 認

Qualicert Qualicert

ISP9001

Qualicert ISP9001

取得手続中

Qualicert と

ISP9001

Qualicert

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30

教 材 提

Nathan 出版 - - - - Hatier 出版

授 業 方

訪問 + センタ

ーでのグルー

プ授業

訪問 + センタ

ーでのグループ

授業

訪問 + センタ

ーでのグルー

プ授業 + 通信

教育

訪問のみ 訪問 + センター

でのグループ授

訪問 + セン

ターでのグル

ープ授業 +

通信教育

多角化 広範な多角化

音 楽 の

Mélocad、成人

向け技能講座

の Acadéos、語

学講座

ハウスキーバ

ー派遣の Shiva

を傘下に

2010年から

3-11才向け託

児・宿題支援に

進出

語学講座、林間

学校、外国での

語学研修、通信

教育などオフ

ァーを多様化。

3-11才向け託

児・宿題支援

も。

成人向け技能

講座、語学講座

あり

成人向け技能講

座。

2008年にセンタ

ー授業専門の

2AMath を買収。受

託者方式の

Allocours も傘下

に。

成人向け語学

講座、公務員

試験準備。

3-11才向け

託児・宿題支

料金(家

庭 教 師

派遣)

30€/時間 42€/時間〜

- 26〜31€/時間 15€/時間〜 〜30€/時間

* 全 6 社比較可能な年。出典は「 Entreprises /2007」。 2008 年以降は、経済危機の影響で

収入・受講者数共に減尐している場合が多い。

その他は各社ホームページ等より情報を収集。

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第5章 輸送

1.概要・構造

フランスの輸送部門は、エコロジー・持続可能な発展・輸送・住宅省付き運輸閣外担当大

臣が管轄する。輸送部門は、鉄道輸送、道路輸送、航空輸送、水運(海運・内陸水運)に

大別される。政府は目下、経済回復と環境政策の枠組みで、2007 年 10 月に開催された環境

グルネル会議(環境全体会議)の合意に沿った、トラック輸送や航空輸送から鉄道輸送や

水運へのモーダルシフトを優先課題とする方針を後押ししている。

■鉄道輸送:鉄道網は全長 2 万 9,473km(2008 年 12 月末)に及ぶ。このうち 1,881km を占

める高速鉄道網(TGV 路線)の発展は、旅客部門の成長を促した。 鉄道規制機関 ARAF

(Autorité de Régulation des activités ferroviaires)は、市場自由化の本格化を視野に 2010 年に

設立された。インフラ部門は、インフラ所有・管理公社 RFF(Réseau Ferré de France)が管

轄する。旅客部門は、国際線が 2009年 12 月 13 日に自由化されたが、国鉄(SNCF:Société

Nationale des Chemins de fer France)がほぼ独占する。貨物部門は 2003 年に国際線が、2006

年に国内線が自由化されて以来、新規参入企業が市場シェアを伸ばしている。貨物輸送に

鉄道が占める比率は 1 割程度に過ぎない。

■道路輸送:貨物輸送の現状はトラック輸送が 8 割以上を占める。この背景には、歴代政

府が推進してきた高速道路網の発展がある。高速道路網は全長 1 万 1,000km 以上(2008 年

末)に及ぶ。トラック輸送は供給チェーンの一環に組み込まれ、部門上位は大手輸送・ロ

ジスティクス企業が占める。運送業者は 3 万社以上を数えるが、このうち大手は僅か 100

社程度で、大半は従業員 50 人以下の中小企業である。1998 年の市場自由化を機に外国企業

との競争に晒された仏企業の競争力は低下しており、その市場シェアは国内・国外市場と

も後退している。旅客・個人の移動は、乗用車が圧倒的な地位を占める。

■航空輸送:約 80(1999 年)の空港があるが、その規模ではパリ空港(シャル ル・ド・

ゴール国際空港 CDG とオルリー国際空港)が最大。安全・規制監督機関は DGAC(Direction

générale de l’Aviation civile)。欧州航空市場は 1992 年から自由化された。主要航空会社は旅

客・貨物部門で欧州 1 位のエール・フランス KLM グループのほか約 15 社がある。市場自

由化に伴い格安航空会社の台頭とグローバル・アライアンスの発展を見たが、近年は大手

も格安航空市場に参入しつつある。仏航空領域を使用する格安航空会社は 25社(2010年 7

月)を数える。 格安航空会社の台頭は、航空チケットの値下げと客層の拡大による旅客部

門の民主化に繋がった。

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■水運(海運・内陸水運): 世界有数の海岸線を有するフランスは伝統的に海運国である。

全国 9 自治港(マルセイユ、ル・アーブル、ダンケルク、ナント・サンナザール、ルーア

ン、ボルドー、ラロシェルの海港とパリ、ストラスブールの河川港)の貨物取扱高は年々

増加している。海運最大手はコンテナ輸送世界 3 位の CMA CGM。フランスはまた全長

8500km に及ぶ欧州最長の内陸水路網を有し、このうち 全長 6,700km は仏水路管理庁 VNF

(Voies Navigables de France)が管轄する。内陸水路の大半は老朽化が進んでいる。交通量

は欧州全体の 5.7%(独は 53%)を占めるに過ぎず、国内輸送市場シェアは微々たるもので

ある。

2.市場規模、将来性

2-1 市場規模

■鉄道輸送:鉄道部門(旅客・貨物部門)の市場規模(2007 年)は、年商 174 億 7,700 万

ユーロ、雇用総数 16 万 2,500人、企業数 12社 。主要運行事業者は、旅客部門は仏国鉄 SNCF、

パリ交通公団 RATP。貨物部門は SNCF他新規参入企業約 10社。

仏国内の鉄道貨物輸送量

単位:10 億 t-km 2007 2008

国内線 25.2 26 .2

国外線 12 .7 11.0

トランジット 4.8 3.5

合計 42 .6 40.6

出典:SOeS、CCTN

国鉄 SNCF の旅客輸送実績

単位:10 億旅客キロ 2007 2006-2007(%) 2008 2007-2008(%)

全交通量 80.3 1.9 85.0 5.9

幹線鉄道 69.1 1.4 73.6 6.5

TGV 46.6 5.8 50.6 8.6

Corails(従来線長距離急行列車) 11.2 -13.7 10.3 -8.2

TER(地域急行列車) 11.6 4.2 12.7 9.5

Transilien(首都圏郊外列車) 11.1 4.3 11.4 2.7

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パリ交通公団 RATP の旅客輸送実績

単位:100 万人 2007 2006-2007(%) 2008 2007-2008(%)

メトロ 5.0 2.0 5.0 0.6

RER(首都圏高速交通網) 1.7 6.3 1.6 -5.9

トラム 0.3 17.9 0.4 12.1

バス(パリ市内) 1.2 3.8 1.2 1.7

バス(パリ郊外) 2.2 3.8 2.3 3.7

合計 10.4 3.3 10.5 0.7

出典:RATP

■道路輸送: 貨物部門(旅客・貨物部門)の市場規模(2007年)は、年商 385億 8,800万

ユーロ、雇用総数 36 万 5,000 人、運送業者 3 万 5,230 社。このうち大手は僅か 100 社程度

で、97%は従業員 50 人以下の中小企業である。部門上位を占めるのは輸送・ロジスティク

ス大手のジェオディス(国鉄子会社)、ジェフコ(PSA・プジョーシトロエン傘下)、 ノル

ベール・ダントレサングル 、STEF-TFE、ボロレ・ロジスティクスなど。旅客部門の市場規

模は、年商 57 億 500 万ユーロ、雇用総数 57 万 6,800 人、企業数 3,356 社。乗用車台数は

3,000 万台強(仏人口は 2010年に 6,466 万 7,000 人)。

仏国内の道路貨物輸送量

単位:10 億 t-km 2007 2008 2007(%) 2008(%)

仏籍運送業者 229.2 217.5 65.0 64.9

外国籍運送業者 123.3 117.8 35.0 35.1

カボタージュ 4.9 4.6 1.4 1.4

合計 352.5 335.3 100.0 100.0

出典:SOeS、CCTN

輸送形態別の旅客輸送実績

単位:10 億旅客キロ 2007 2008 2007(%) 2008(%)

乗用車 727.8 720.8 83.9 83.1

バス・観光バス 47.1 48.6 5.4 5.6

鉄道 92.9 98.3 10.7 11.3

合計 867.8 867.7 100.0 100.0

出典:SOeS、CCTN

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■航空輸送:空輸部門(旅客・貨物部門)の市場規模(2007年)は、年商 185億 3400万ユ

ーロ、雇用総数 7 万 1400 人(航空会社のみ)、企業数 281 社。主要航空会社はエールフラ

ンス KLM グループと地域航空会社(コルシカ航空、CCM Airlines、Star Airlines、Air

Méditerranéen など)合わせて約 15社。

仏航空旅客輸送需要

単位:1000 人 推移(%) 旅客数 飛行機の発着本数

2009 08/09 2009 08/09

本土 - 国外(国外線) 93 323 -4.6 956 -7.5

本土 - 本土(国内線) 22 028 -3.2 325 -5.8

合計(海外領土除く) 115 351 -4.3 1280 -7.0

出典:DGAC

主要空港の旅客数

単位:1000 人 2007 2008 07-08(%)

本土と海外領土 156 563 156 545 O.0

本土 146 611 146 722 0.1

海外領土 9 952 9 823 -1.3

出典:DGAC

主要空港の貨物取扱量

単位:トン 2007 2008 07-08(%)

本土と海外領土 1 787 820 1 740 817 -2.6

本土 1 693 808 1 652 256 -2.5

海外領土 94 012 88 561 -5.8

出典:DGAC

■水運: 海運部門(沿岸海運含む)の市場規模(2007 年)は、年商 104 億 6,900 万ユーロ、

雇用総数 1万 4,600人、企業数 506社。2010 年 1月の仏籍海運商船隊は 216隻(総トン数:

636 万 5,824トン、平均船齢:7.4年 )。 主要海運会社は、コンテナ海運で世界 3 位の CMA

CGM、ルイドゥレフュス、ボロレグループなど。英仏海峡海運はブリタニー・フェリーズ、

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コルシカ海運は SNCM がそれぞれトップ。内陸水運部門の市場規模(2007 年)は、年商 6

億 3,300 万ユーロ、雇用総数 3,800人、企業数 964社。

本土港の旅客輸送実績

単位:1000 人 2007 2006-2007(%) 2008(%) 2007-2008(%)

英仏海峡-北海 1 18 261 2.7 17 837 -2.3

地中海 2 9 682 4.1 9 992 3.2

合計 27 943 3.2 27 829 -0.4

1.ダンケルク、カレー、ブローニュ、ディエップ、ル・アーブル、カーン、シェルブール、サン・マロ、ロスコフ 2.

セット、マルセイユ、トゥーロン、ニース、バスティア、ルス島、アジャクシオ、ボニファシオ

出典:DGITM/DST

本土港の貨物取扱実績

単位:100 万トン 2007 2006-2007(%) 2008(%) 2007-2008(%)

本土港 384.2 0.4 383.4 0.0

大規模港 304.3 0.2 307.0 0.9

地元に管轄権が移譲された港 79.8 1.1 76.4 -3.5

出典:DGITM/DST

仏船籍海運商船隊

1 国際測定システム

2007 07-06 (%) 2008 08-07 (%) 2009 09-08 (%)

100UMS1 超の船舶数 211 -0.9 211 0.0 216 2.4

UMS で総トン数 5 882 042 -0.3 5 875 256 -0.1 6 365 824 8.3

積載重量トン 7 573 277 -0.3 7 557 247 -0.2 8 467 478 12.0

出典:DGITM/DAM

仏船籍河川運航船隊

船舶数 2007 2007-2006 (%) 2008 2008-2007 (%)

現役船 1369 -1.7 1372 0.2

一般貨物 1292 -1.8 1289 -0.2

液体貨物 77 0.0 83 7.8

出典:DGITM/DST

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河川旅客輸送

旅客数(千人) 2007 2008 2008-2007 (%)

レジャーボート 159 158 -0.6

遊覧船 10 000 10 672 6.7

宿泊施設付き河川船 25 21 -15.2

出典:VNF

2 – 2 将来性

■鉄道輸送: 政府は経済回復と環境政策の枠組みで、2007年に開催された環境グルネル会

議の合意に沿って、2020 年までに高速鉄道専用路線を 2,000km 分整備する計画を推進して

いる。しかし、老朽化したインフラ使用料の値上げを背景に、旅客部門を牽引してきた仏

国鉄 SNCF の TGV の採算性は低下している。成長が期待されるのは都市交通。政府は 2011

年 2 月に首都圏以外のバス、トラム、メトロ整備計画を骨子とする総額 79億ユーロの大規

模環境プロジェクトを発表した。また、環境サービス世界大手ヴェオリアと都市交通トラ

ンスデブの合併で、年商 80 億ユーロ以上の都市交通世界大手ヴェオリア・トランスデブが

誕生した。SNCF の貨物部門の発展は、政府が 2009 年に発表した大規模な再建計画の成功

が前提となる。中期・長期的には、本格化する市場自由化への対応が鍵となる 。SNCF の独

自調査によると、ローカル線(地域急行列車 TER)の運行費用は欧州平均を約 30%上回る。

2009 年 12 月 13 日の国際線旅客市場自由化に伴い、トレンイタリアなどは仏進出計画を具

体化しつつある。貨物部門ではすでに 10 社以上の新規参入企業が市場進出を果している。

■道路輸送: 道路貨物輸送は食品輸送需要の増大に伴い年間 2%〜3%の成長を遂げるとい

われる。 1998 年の市場自由化に伴い、EU 企業との競合に晒された仏企業は、税制、労働

条件、人件費などで不利な立場に置かれ、年々競争力を失っている 。特に国際市場では、

欧州道路輸送の国際化を背景に、独、西および東欧企業に市場シェアを浸食されている。

道路輸送の将来は、燃料価格上昇と環境規制強化(2013 年施行の外国籍車両を含む仏国内

通過重量車両の道路通行税など)に絡むコスト問題の解決と、市場自由化で生じた不均衡

是正を通じた競争力強化にかかっている。

■航空輸送:世界情勢にことさら敏感な航空輸送の将来は、安全強化(テロ対策など)、燃

料価格上昇、環境規制強化(2012 施行予定の EU 航空温暖化ガス排出規制強化など)に絡

むコスト問題の克服と、格安航空会社の台頭、空港の手狭の問題解決と並んで、運航本数

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増加と大型機の導入およびファーストクラス廃止などによる輸送力増強、アライアンス拡

大(アリタリアがエールフランス KLM とデルタのアライアンスに合流)と合併・提携(欧

州航空業界の再編は続いている)によるシナジー効果を通じた競争力強化が左右する。長

距離路線では中東・アジアの新興工業国籍の航空会社との競合が始まった。国内および EU

域内の短・中距離市場では、特に TGV(TGV 東線開通によりストラスブール空港の利用客

数が減尐)と格安航空会社への対抗戦略が必要。

■水運(海運・内陸水運): 政府は水運の発展に向けた包括的な部門戦略の策定を目指し

ている。海運の将来性は、燃料価格上昇と環境規制強化、便宜置籍に絡むコスト問題の解

決などを通じた海運会社の競争力強化と、港湾整備(大型コンテナ埠頭建設、港湾ロジス

ティクス増強など)と港湾自由化(マルセイユ自治港などで頻発する自由化抗議行動は政

治・経済問題に発展している )が鍵となる。トレーラーを船で運ぶ「海上高速路」は政府

が環境政策の一環で後押ししている。内陸水運の発展は、大型船の通過と欧州の基幹内陸

水路への接続を可能にする水路網の近代化・拡張が前提となる。目下、2012 年を目処に国

内貨物輸送量を 130億 tkに引き上げることを目標とした、内陸水路近代化計画が進行中( セ

ーヌ川を北部欧州の内陸水路に接続する大規模運河「セーヌ・ノール計画(全長 106km)」

など)。長期にわたって軽視されてきた内陸水運は、燃料価格の高騰と環境意識の向上につ

れて見直されつつある。

3.市場シェア(地場企業、外資[日系含む])

83%

2% 10%

5%

輸送手段別の貨物輸送市場シェア

道路 水路 鉄道 パイプライン

82%

5%11%

2%

輸送手段別の旅客輸送市場シェア

乗用車 バス 鉄道 航空機

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■鉄道輸送:旅客部門は 2009 年 12 月 1 月から国際線市場が自由化されたが、 仏国鉄 SNCF

の独占状態が続く。国内線市場の自由化日程は未定。貨物市場は 2006 年に自由化された。

市場シェアは仏国鉄 SNCF が 84.4% と圧倒的だが、新規参入企業の市場シェアは 2009 年末

に約 16%を占めた(ドイツ鉄道子会社 EuroCargoRail:10.4% 、ユーロトンネル子会社 Europrte

France:3.6%、その他ベルギー国鉄子会社 B-Cargon、 Colas Rail、CFL Cargo など:1.6% )。

(出所:SNCF、RFF)

■道路輸送: 国内市場は大手輸送・ロジスティクス企業(仏国鉄子会社ジェオディス、プ

ジョーシトロエン子会社ジェフコ、ラ・ポスト、ノベール・ドントゥルサングル、STEF-TFE、

ボロレ・ロジスティクスなど)が圧倒的に強い。仏と EU 加盟国間の二国間輸送市場に占め

る仏企業のシェアは年々後退して 2008 年は 15.5%となった。取引相手国籍企業のシェアは

64.7%、第 3国籍企業のシェアは 19.8%となった。国外市場(仏を通過しない EU加盟国間の

輸送市場)における仏企業のシェアは年々後退して 2008 年は僅か 2.4%に留まった。

■空輸輸送:仏国籍航空会社の国際市場進出内訳(2004 年)は、欧州が 30.3%(うち EUは

29.8%)、アフリカ(45.4%)、アメリカ(60.9%)、アジア(41.2%)、オセアニア(0%)。仏国

内市場における航空会社上位 3社は、エールフランス KLM、イージージェット、ライアンエ

アー。格安航空会社の市場シェアは、仏国内線が 20%(短・中距離ラインは約 30%)、仏と

EU 域内を結ぶ国際線が 35%、仏と世界各国を結ぶ国際線の 10%を占めた(2010年)。旅客輸

送量別の国内市場ランキングは、1)エールフランス(仏)、2)イージージェット、3) ライ

アンエアー、4) ブリティッシュ・エアウェイズ 、5)ルフトハンザ、6)コルシカ航空(仏)、

7)イベリア、 8)アリタリア、9)ロイヤル・エア・モロッコ、10)CCM Airlines(仏)。

■水運(海運、内陸水運):コンテナ海運で世界 3 位の CMA CGM が圧倒的。英仏海峡海

運 はブリタニー・フェリーズ(2008 年市場シェアは旅客輸送:78.6%、観光バス:76.2%、

トラッック:72.2%)、コルシカ海運は SNCM(2008 年市場シェアは 62%)がそれぞれトッ

プ。

4.外資に対する規制・法的制約、商慣習等

鉄道:外資に対する規制・法的制約はなし。貨物輸送市場自由化により外国大手による仏

国内進出が始まった。国内旅客市場の自由化日程は未定。

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道路:外資に対する規制・法的制約 なし。 市場自由化進行中。外国企業による仏企業買

収進む。

空輸: 外資に対する規制・法的制約なし。市場自由化進行中。

水運: 外資に対する規制・法的制約なし。 経営難にある仏海運最大 CMA CGM は 2010年

11 月、トルコのユルドゥルム・グループ(石油輸送、化学、鉱山開発、エネルギー)によ

る出資を決定した。ユルドゥルムは 5 億ユーロを投資して同社の 5 年物転換社債(資本の

20%に相当)を取得し、取締役会の 10 ポストのうち 3 ポストを占める見通し。

5.代表的企業の簡単なケーススタディ

■鉄道輸送:仏国鉄 SNCF(2010年年商 300 億ユーロ、従業員数 23万 5,000人) の 貨物

輸送子会社ジェオディスは 2010 年 11 月、高速鉄道貨物輸送サービスのローリーレイルへの

出資比率を 12.5%から 50.1%に引き上げた。ローリーレイルは仏ペルピニャンとルクセン

ブルクを結ぶ 1050km の鉄道路線でフェルタージュ(Ferrutage)と呼ばれるピギーバック輸

送(トラックヘッドを切り離してトレーラーごと鉄道に搭載する方法)サービスを行う。

ほかにルクセンブルク鉄道(33.34%)、モダロール (特殊車両製造)(16.65%)などが株

主。

■都市交通:パリ交通公団 RATP(2009年年商 44億 3,267万 7,000 ユーロ、従業員数 4万

5,466 人)は国外業務に力を入れており、2010 年 2 月 14 日、国外事業専門子会社 RATP Dev

を通じて、イタリアのフィレンツェで路面電車 1 号線(全長 7.4km、14 駅)の運行を開始

した。RATP はすでに外国輸送企業への出資は果していたが、パリ首都圏以外で実際に輸送

事業に携わるのは初めて。RATP は、また、ヴェオリアとトランスデブの合併条件として両

社から譲り受けた諸事業を通じて、仏地方・国外市場に飛躍的な進出ができる。

■仏陸運・ロジスティクス大手のノルベール・ダントルサングル社は 2010 年 11 月、英同業

TDG(2010 年年商 7 億ポンド、従業員数 6,000 人)の買収計画を発表した。2011 年 1 月半

ばを目処に買収を完了する。売上高の 74%を英国で達成する TDG は、ベネルクス諸国、ス

ペイン、アイルランド、独、ハンガリーに進出している(2009 年実績)。TDG 買収後のノ

ルベール・ダントルサングルの売上高は 36 億ユーロ(前年は 27 億ユーロ)に増え、国外

売上高は全体の 57%に達する見込み。また買収により、1 年前に開始したフォワーダー部

門の売上高は 1 億ユーロを突破する見通し。

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■エールフランス KLM は、欧州市場において、格安航空会社ライアンエアーを公正競争の

観点から提訴する一方で、短・中距離空路の運営コスト削減と客のニーズに応えたサービ

ス拡充、料金体系の変革を通じて、格安航空市場に参入した。欧州以外の地域では、すで

に格安航空会社と提携している(ブラジルの GOL、カナダのウエストジェット、オーストラ

リアのジェットスター、 英フライビーとの提携)。 将来的には、マルセイユ、ニース、ト

ゥールーズ、ボルドーに格安航空市場向けての拠点を置いて、パイロットと乗員を常時待

機させる。ただし、2011 年にグループ内に格安航空サービス専門子会社「 Air France

Express」を設立する計画は、当面は断念した模様。

■海運:コンテナ海運世界 3 位の CMA CGM(2009 年年商 105億ドル、保有船隊 400 隻、

拠点数 650、従業員数 1 万 7,200 人)は、2009 年 3 月にコンテナ船としては世界で初め、油

濁汚染防止を目的とした「Fast Oil recovery System」を装備した環境保護船「Andromeda (1

万 1400TEU)」を船隊に投入した。同システムは、事故時に、船体に穴をあけることなく、

パイプによる迅速な炭化水素の回収を可能にする。この装置は当初は石油タンカー向けに

開発されたが、CMA CGMの新造船部門が開発元の仏企業 JLMD Ecologic Groupと協力して、

コンテナ船に適用した。Andromeda はこの他に、燃料消費量削減を可能にする電子制御エ

ンジン、船舶の流体学的性能を向上させる船体設計などの先端技術を駆使している。

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第 6 章 建設

1.概要・構造

・ フランス建設連盟(Fédérarion Française du Batiment)によると 2009 年の建造物

(Batiment)部門のみの企業総数は 35 万 1,000 社、従業員総数は 153 万でこのうち

120 万人が給与所得者、売上は 1,290 億ユーロ(税抜き)、内訳は新規工事が 600 億

ユーロ、改良・維持工事が 690 億ユーロであった。

・ このうち従業員が 0-10 人の企業件数は 32 万 9,000 社で企業全体の 94%、売上は

540 億ユーロで全体の 42%、従業員数は 48 万 5,000 人で全体の 40%を占める。

従業員 11-50人ではそれぞれ、2万200社(5.8%)、400億ユーロ(31%)、39万人(32.4%)

従業員 51-200 人ではそれぞれ、1,600 社(0.46%)、170 億ユーロ(13.2%)、16 万人

(13.3.%)

従業員 201 人以上ではそれぞれ、200 社(0.6%)、180 億ユーロ(14.0%)、17 万人(14.1%)

となっている。

329

20.21.6

0.2

485

390

160 170

540

400

170 180

図表1:主要業務分野が建造物の企業の概要

企業数(千社)

合計35万1000社

従業員数(千人)

合計120万5000人

売上(億ユーロ)

合計1290億ユーロ

出所:Fédération Française du Batiment

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・ 全国公共土木工事連盟(Fédération Nationale de Travaux Public)によると、2009

年度の国内売上は 385 億ユーロ(前年比 7%減)で、企業数は 8,300 社、従業員総数

は 26 万人である。

2.市場規模

2009 年の建設部門(建造物+公共土木工事)の市場規模は 1,675 億ユーロ(税抜き)で

あった。

内訳は建造物が 1,290 億ユーロ、公共土木工事が 385 億ユーロである。

図表 2:2009 年の建設部門の売上

2009 年度の建造物部門の売上 1,290 億ユーロの内訳は以下のとおりである。

住宅部門(Logement)の売上は 770 億ユーロで、そのうち新規(Neuf)住宅工事が 360

億ユーロ、住宅の維持・改良工事(Amélioration-entretien)が 410 億ユーロとなってい

る。一方住宅以外の建造物の新規工事は 240 億ユーロ、維持・改良工事が 280 億ユー

ロである。最も売上が多いのは住宅の維持・改良部門で全体の 31.8%、以下新規住宅

工事 27.9%、住宅以外の建造物の維持・改良工事 21.7%、住宅以外の新規工事 18.6%

の順。

385 億ユー

ロ 1290億ユーロ 建 造

物 公共土木工事

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新築

240億€18%

改築・維持

280億€22%改築・維持

410億€32%

新築

360億€28%

図表3:建造物部門の売上の内訳

住宅部門非住宅部門

出所:Fédération Française du Bâtiment

将来性

・ 仏では 1975 年以来、通称「熱効率規制(RT)」と呼ばれる省令(アレテ)により、

新たに建設される建物の遵守すべきエネルギー効率が規定されており、5 年毎に見直

されている。現在は、「RT2005」が 2006 年 7 月より適用されており、エネルギー効

率を尐なくとも前回の「RT2000」の規定より 15%改善し、2020 年のエネルギー消

費量を 2000 年のレベルより 40%減とすることを目標としている。

・ 既存の建物については、断熱効果を挙げるために二重窓にするなどの目標が掲げら

れている。このような背景から、熱効率改善工事市場は、近年 6-7%/年の割合で拡大

しており、今後は低家賃住宅(公団住宅)、および公共の建物で熱効率改善工事も本

格的となるため、同市場は長期的には大きく成長すると予測される。

・ 一方、建造物の寿命は 100 年以上とされており建造物の更新は年に 1%の割合で行

われているため、2050 年までに CO2 排出量およびエネルギー消費量を 1/4 にすると

いう目標達成のためには、年間 40 万戸の住宅の刷新が必要という計算になり 6,000

億ユーロから 1 兆 2,000 億ユーロ程度の投資規模となることが期待され、今後数十年

間は建造物部門の市場の伸びは堅調と予想される。ちなみに 2009 年経済危機の影響

から大きく縮小した建設市場は 2010 年回復の兆しを見せており、同年の住宅着工件

数は前年比+3.3%の 30 万 9,744 件、新規住宅建設許可件数は前年比+14.7%の 39 万

6,046 件を記録した。

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今後の課題

・ フランス企業は歴史的経緯からアフリカでのプレゼンスは依然として高いが、優先

的な進出先ではなくなりつつある。仏企業は利益性の高いセクターヘの進出を優先し

ている。今後仏企業を含め西欧の大手企業が市場での優位を維持するためには、技術、

管理能力を維持し R&D ヘの投資を積極的に進めなければならない。フランスの場合

は競争力拠点を通じて R&D の推進を図るべきことが指摘されている。

3.市場のシェア

・ 建設・土木(Batiment et BTP)企業の世界上位 10 位 (2006 年)をみると、総売り上

げ高では仏大手グループの Vinci および Bouygues が上位 1、2 位を占めるが、輸出

額のみでみると、Vinci が 3 位、Bouygues が 5 位、Technip が 9 位となっており、

ライバルの Hochtief AG(独)、Skanska AB(スウェーデン)の業績を下回っている。

総売上でみると上位 10 社に最も多く進出しているのは中国企業である。

図表 4:売上でみる世界上位 10 社(2006 年) 図表 5:輸出売上でみる世界上位 10 社

(2006 年)

企業名 企業名

1 Vinci(仏) 1 Hochtief AG(独)

2 Bouygues(仏) 2 Skanska AB(スウェーデン)

3 CREC(中) 3 Vinci(仏)

4 Hochtief AG(独) 4 Stabag(墺)

5 Grupo ACS(西) 5 Bouygues(仏)

6 CRCC(中) 6 Bechtel(米)

7 CSCEC(中) 7 Technip(仏)

8 Skanska AB(スウェーデン) 8 KBR(米)

9 Bechtel(米) 9 Belfinger Berger AG(独)

10 CCCG(中) 10 Fluor Corp(米)

出所:Engineering News Record,2007 ,Notes de synthèse du SESP N° special juillet

2008

・ 仏市場では、最大手の Vinci、Bouygues のほか Effage, Spie Batignolles が市場を

牛耳っている。2007 年の各社の売上は以下のとおり。

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図表 6:仏企業上位 5 社

企業 欧州のランキング 売上 国内シェア

・Vinci-France 1 位 260 億ユーロ 14%

・Bouygues 2 位 220 億ユーロ 12%

・Eiffage 6 位 126 億ユーロ 6.7%

・Spie Batignolles 49 位 15 億ユーロ 0.8%

出所:調査会社 Deloitte の発表した欧州建設企業上位百社

4.外資に対する規制、法的制約、商慣行など

外資に対する規制は特になし。

仏では1975年以来、新規建築に対しては通称「熱効率規制(RT)」と呼ばれる省令(ア

レテ)を通じ、新たに建設される建物が遵守すべきエネルギー効率を規定しており、5

年毎に見直される。現在は、「RT2005」が2006年7月より適用されており、エネルギー

効率を前回の「RT2000」の規定より15%改善し、2020年のエネルギー消費量を2000

年のレベルより40%減とすることを目標としている。また、新規建物のエネルギー消費

を現在の1/3に削減することを定めた「RT2012」が非住居用建物では2011年11月より、

住居では2013年1月より導入される。したがって、新たに建設される建物はこのエネル

ギー効率を満たしていなければならない。

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5.ケーススタディ:Vinci

Vinci の前身である SGE(Société Générale d’Entreprise)は 1899 年に 2 名のエンジニ

アにより設立され、2000 年に現在の社名 Vinci に変更した。同社の主要事業はコンセ

ッション(VinciConsession)、エネルギー(Vinci Energies)、道路工事(Eurovia)、建設

(Vinci Construction)など。2010 年のグループの連結売上は前年比+9.0%の 348 億

ユーロに達した。

このうち、建造物の建設、交通インフラ、パーキング等の建設にあたる Vinci

Constructionの売上は 145億 4,900万ユーロで 1.1%減(前年と同じ条件下)となった。

従業員総数は 72000 名。国内の売上は 68 億 9,400 万ユーロで、4.3%減(同)となっ

た。これは上半期のビジネスが鈍化したため。公共建造物(保健、スポーツ施設)およ

び住宅部門が好調だったため公共土木工事及び民間の非住宅部門の不振を一部埋め合

わせた格好となった。一方、国外での売上は 73 億 8,000 万ユーロで+2.2%(同)を記

録した。2010 年 12 月末の時点での受注額は 157 億ユーロに達し前年同期比+4%とな

った。これは建設部門の 13 ヶ月分の売上に相当する。

Vinci Construction は、仏市場のリーダーであり、欧州建設企業のトップに君臨してい

る。Vinci Construction は、仏本土の Vinci Construction France をはじめ、海外領土

(30 余りの子会社)、英国(、Vinci ConstructionUK)ドイツ(SKE)、東欧(Warbud、

Prumstav-FCC、SMP)、アフリカ(Sogea-Satom)などに進出している。同社では、子

会社がそれぞれ自立して事業を展開すると同時に子会社同士のネットワーク、人材の評

価などを重視している。

Vinci Construction は今後ともコストおよび採算性の管理を徹底して行い、採算のため

に、時には数量を自主的に抑える方針を進める。事業の多様化は顧客および地理的な多

様化にも繋がり、危機に強い体質をつくっている。ちなみに総売上に占める国際市場で

の売上の割合は 2008 年の 48%から、2009 年は 50%に拡大した。また、輸出の事業分

野も技術性の高い事業が大きく成長している。

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図表:Vinci Construction の事業内訳

出所:Vinci ,Communiqué de presse, 2011 年 1 月 27 日

6.参考資料

・Commissariat Général au Développement Durable, Chiffres & statistiques,

N° août 2009

・ MEEDDAT/DAEI : Notes de synthèse du SESP N° special, “La percée des

enterprises chinoises sur marché mondial du BTP “ juillet 2008

・ 仏土木建設連盟:http://www.fntp.fr

・ Vinci : http://www.vinci-construction.fr、Communiqué de Presse 2011 年 1 月 27 日

建造物

土木工事

専門性の高い土木

工事

水関連

施設管理

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