デコポンのコハン症発生 軽減に向けた取組みデコポンのコハン症発生...
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デコポンのコハン症発生
JA熊本うき 西営農センター 長尾 守将
軽減に向けた取組み
◆ 始めに
試験研究機関等と連携し、問題解決に取り組んでい
る「コハン症」は、平成25年産デコポン生産において、販売計画量20%減(被害金額140,000千円)の甚大な被害をもたらした。これまでも、幾度と甚大な被害を経験してきたが、その発生メカニズムは未だ特定されておらず、大きな生産課題となっている。そのため、25年産発生状況の検証を踏まえ、コハン症発生の要因と軽減予防に向けた生産対策を調査した。
1.25年産の発生状況を検証
◆調査内容
2.過去の発生状況と比較
3.アンケート調査の実施
コハン症(ヤケ症)とは・・・?
果皮が斑点状、
また不定形・不規則に褐変する症状
生理的障害
※ミドリヒメヨコバイによる虫害的障害もあり
コハン症の生理と生態
■ 未熟・成熟果の低温障害
■ 果皮からの水分損失
■ 油胞破裂による揮発成分障害
未成熟果実時に5℃以下の低温に遭遇したり低温・寒風などにより乾燥し易い ・・・etc
果皮の成熟・着色・粗さ等の状態で、水分蒸散量が激しくなる ・・・・etc
夏秋期の乾燥後や成熟前の温暖な降雨・結露等でクチクラ(ワックス)が劣化する ・・・・etc
《発生時期》 年内の収穫時点から発生が見受けられた
■ 12月下旬から1月にかけて乾燥状態が続いた
■ 1月から2月上旬に平年を上回る気温となった
■ 着色が早く果皮の老化が早かった
◎平成25年産
1.25年産の発生状況検証
《発生時期》 年内収穫時点からコハン症が発生
■ 12~1月の降水量が少なく、乾燥状態が続いた
■ 2月上旬に極めて強い寒波が襲来した
■ 鳥害被害が極めて多かった
◎平成23年産
■ 着色開始時期が遅く果皮が荒かった
◎平成22年産
《発生時期》 年内よりも年明け収穫での発生が多かった
■ 1~2月の降水量が極めて少なく乾燥が続いた
■ 年末・年始に積雪、果実に凍害が発生した
■ 着色開始時期が遅く果皮が荒かった
■ 最低気温が氷点下を下回る日が多かった
20年 21年 22年 23年 24年 25年
3/21 4/5 3/24 4/7 4/4 3/24
5/10 5/2 5/8 5/15 5/9 5/10
50日 27日 45日 38日 35日 47日
中~やや少 中 中~やや少 多 やや多 中~やや多
並 並 並 大玉 小玉 大玉
11/25 11/22 11/20 11/26 11/19 11/16
多 多 少 多 中 多
低糖低酸 高糖高酸 高糖高酸 高糖中酸 高糖中酸 高糖中酸
235日 243日 237日 230日 236日 235日
多 多 少 多 中 中
少 少 大 中 少 甚大
4月~5月 350 117 502 184 183 195
6月~8月 1,178 670 814 1,227 1,177 959
9月~12月 703 444 358 335 438 541
計 2,231 1,231 1,674 1,746 1,798 1,695
0時間 5時間 5時間 2時間 8時間 19時間
果実内容
着花量
肥大状況
着色時期
生産量
年 産
発 芽
開 花
開花期間
生育日数
水腐れ
コハン症
高温時間(35℃以上)
降水量
◆ 年次別生育経過とコハン症発生の検証
2.過去の発生状況と比較
22年産熊本県調査
32
19 20
0
10
20
30
40
50
60
不知火 M-16A 肥の豊
こはん症割合
(%
)
■ 品種の違いによる比較
22年産は「不知火」、25年産は「肥の豊」での発生が多かった
22年産熊本県調査
2116
30
22
32
0
5
10
15
20
25
30
35
40
内陸部 海岸部近 窪地 段畑 高標高地
こはん症割合
(%
)
22年産は「窪地・高標高地」、25年産は全体的に発生が多かった
■ 園地位置と地形による発生状況 25年産JA熊本うきアンケート
1916
2219
24
0
5
10
15
20
25
30
35
40
内陸部 海岸部近 窪地 段畑 高標高地
こはん症割合
(%
)
25年産JA熊本うきアンケート
12
36
52
0
10
20
30
40
50
60
不知火 M16A 肥の豊
こはん症割合
(%
)
3.アンケート調査の実施
■ 収穫前かん水の実施有無
22・25年産ともに「無かん水」での発生が多かった
■ 予措程度の強弱による発生状況
22・25年産ともに5%以上の強い予措ほど発生が多かった
22年産熊本県調査
2313
0
10
2030
40
50
6070
80
90
無 有
こはん症割合
(%
)
22年産熊本県調査
20 1825
0
10
20
30
40
50
60
70
3%未満 3~5% 5%以上
こはん症割合
(%
)
25年産JA熊本うきアンケート
15
24
61
0
10
20
30
40
50
60
70
3%未満 3~5% 5%以上
こはん症割合
(%
)
25年産JA熊本うきアンケート
77
23
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
無 有
こはん症割合
(%
)
今後のコハン症対策について
コハン症の発生パターン
■ 収穫前に発生するパターン
■ 収穫後に発生するパターン
◆ 収穫前に発生する主な要因
・果実(皮)体質が弱い
・樹勢が弱い
・乾 燥 ・寒 風 ・収穫前10℃以上での降雨
・急激な気温低下 ・積 雪
・クラッキングの発生 ・・・etc
■ 樹体や果実など条件として
■ 気象的条件として
・果皮が粗い
・結 露 etc
◆ 収穫後に発生する要因として
・果皮の結露 ・乾燥し易い状況で放置 ・・・etc
・乾燥 ・低温 ・寒風 ・温度上昇 ・多湿 ・・・etc
・果実の取扱いが煩雑 ・予措時の急激な乾燥
■ 果実条件として
■ 予措・貯蔵条件として
■ 気象的条件として
・未熟果や粗皮による乾燥や蒸散 ・収穫時の衝撃
・過熟によるクラッキング ・・・etc
■ 有機物の投入による健全な土作り
■ 剪定による樹勢維持や強化
■ 収量に応じた適切な施肥
■ 適正な摘果(結実量)の実施
コハン症を軽減する技術対策
健全な樹体の維持対策を行う!!
ポイント 1
■ カルシウム剤による細胞分裂の促進
■ 幼果期から収穫期まで果実品質を
考慮したかん水の実施
■ 収穫前の乾燥防止
■ GA剤の散布によるクラッキング防止
ポイント 2
果皮強化対策とかん水の徹底!!
■ 果実(皮)に衝撃を与えない
■ コンテナに果実を詰めすぎない
■ 青みの残る状態(早期収穫)を行わない
ポイント 3
果実は区分収穫・丁寧な取扱いを!!
■ コンテナ重量や庫内温湿度を必ず確認する
ポイント 4
適正な予措・貯蔵管理を実施!!
■ 果皮のしなつき具合に応じた予措を実施する
■ 貯蔵庫内への寒風侵入や温度格差による結露防 止等の庫内環境を整備する
■ 予措終了後は早急に本貯蔵を(ポリ個装の徹底)
■ コンテナの並び変えを定期的に行う
■ 出荷時期を考慮し貯蔵を実施する。基本的にポリ
個装を行うが、期間を要する場合は簡易貯蔵にて
対応する(新聞紙・多孔質マルチなど)
コハン症を軽減する技術対策ポイントは・・・
技術対策の1つを疎かにすると、
コハン症は、繰り返し発生すると思われる。
1.健全な樹体の維持対策
2.果皮強化対策とかん水
3.区分収穫・丁寧な取扱い
4.適正な予措・貯蔵管理
検証結果やアンケート調査を基に軽減対策をまとめ、全生産者へ資料の配布を行った。
さまざまな発生要因が考えられるコハン症は、一つ一つの生産対策を確実に実施し、継続する事が求められが、問題解決には多くの時間と技術対策が必要になると思われる。
発生メカニズムの検証や生産対策の検討は、今後も継続し、安定生産に繋がる取組みを実施する。
◆ 最後に